JP3660596B2 - 貝処理方法とそれに使用される貝処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は帆立貝をはじめとする各種貝の身(貝柱を含む)や、ヒモ、ラン等の付随部を殻から取出す貝処理方法と、それに使用される貝処理装置に関するものであり、例えば、帆立貝の貝柱を市場へ出荷するのに先立って、貝柱や付随部を帆立貝の殻から液体で自動的に取出すのに適するものである。
【0002】
【従来の技術】
貝類、特に帆立貝は各種商品形態で市場に出荷されている。帆立貝の場合は、例えば、次のような商品形態がある。
1.殻付きのままの生の商品。
2.一方の殻を開いて取り外し、中腸腺(通称、ウロ)、貝柱、ラン、ヒモ等を他方の殻に残した生の商品。
3.ウロ、生殖巣(通称、ラン)、外套膜(通称、ヒモ)、心臓、鰓、触手といった付随部だけの生の商品。
4.生の貝柱(閉殻筋とも、有紋筋部ともいう)のみの商品。
5.生のランのみの商品(但し、ランは産卵時しかない)。
6.生のヒモと鰓のみの商品。
【0003】
殻付きのまま市場に出荷される商品以外のものは、ラン、ヒモ、貝柱等を殻から取出さなければならない。その取出し作業を手作業により行うと、多くの労力と時間がかかるため、短時間で効率良く行うために、貝を自動的に開いて貝柱を取出す方法が開発されている。その一つとして図11(a)〜(d)に示す貝柱取出し方法があった。それは次の様な方法である。
【0004】
(1)ベルトコンベアに取付けられている作業テーブルの上に作業者が帆立貝90を水平に1個づつセットする。この場合、帆立貝90の2枚の殻91、92のうち、通常、上殻と呼ばれている殻(湾曲が浅く、褐色で、通常、右殻と呼ばれている殻)91を下にしてセットする。
(2)ベルトコンベアにより搬送されてくる帆立貝90の2枚の殻91、92の先端部93を、図11(a)の仮想線に沿ってダイヤモンドカッターにより切断して図11(b)の様に先端部を除去し、図11(c)の様に殻91、92に開口部94を形成する。切断時にダイヤモンドカッターに冷却水をかけて殻91、92が熱くなるのを防止すると共に当該カッターを長持ちさせ、更には切り粉の飛散を防止している。ちなみに殻91、92が熱くなるとその熱が内部の貝柱95に伝達して貝柱95の鮮度、品質が劣化する。
(3)図11(d)の様に開口部94から帆立貝90の内側にへらの様な分離具96を、一方の殻91の内面に沿って押込んでその殻91を貝柱95から分離する。殻91が分離された帆立貝90は作業テーブルから外部に送り出される。 (4)送り出されてきた帆立貝90の他方の殻(湾曲が深く、白色で、通常、左殻と呼ばれている殻)92に付着しているウロ、心臓、ヒモ、鰓、ラン等の貝柱95以外の部分(以下これらを総称して付随部という)を手作業により除去する。
(5)分離具96を殻92の内面に沿って押込んで、殻92から貝柱95の他方を分離して貝柱95を取出す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記貝柱取出し方法は、全工程を手作業で行うよりは省力化、効率化できるが、分離具を押込んで貝柱を殻から分離するため、貝柱に傷が付いたり、貝柱が欠けたり、裂けたりすることがあり、貝柱の品質や等級が低下する一因となり、貝柱を無駄なく確実に取出すことが難しい、という難点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は貝の身(貝柱を含む)に傷が付きにくく、貝柱が欠けにくく、裂けにくく、貝柱を損傷することなくきれいに、容易に取出し可能であり、しかも処理が衛生的であり、所望の商品形態に合わせて貝柱、ヒモ、ラン等を取り出し可能な貝の処理方法とその処理装置を提供することにある。
【0007】
本発明の請求項1記載の貝処理方法は、貝1の2枚の殻2の隙間から、又は殻2の二箇所以上に開口した開口部5から、一方の殻2の内側とそれに付いている貝1の閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射して、その殻2と身(貝柱をも含む、以下同じ)3とを分離して当該殻2を開き、下方の殻2についている貝1の中腸腺(通称、ウロ)、生殖巣(通称、ラン)、外套膜(通称、ヒモ)、心臓、鰓、触手といった付随部(以下、付随部という)4を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去し、その後に、下方の殻2の内側とそれに付いている貝1の閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射して、その下方の殻2と身3を分離して、身3を取出す方法である。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
本発明の請求項2記載の貝処理方法は、請求項1記載の貝処理方法において、殻2を刃物で切除して、又は殻2に孔をあけて、又は殻2を加圧して破損して、2枚の殻2の一方又は双方の二箇所以上に開口部5を開口する方法である。
【0014】
本発明の請求項3記載の貝処理方法は、請求項1又は請求項2記載の貝処理方法において、殻2に開口部5を形成することにより発生する殻2の破片、粉末等を吸引して、又は液体により洗い流して除去する方法である。
【0015】
【0016】
【0017】
本発明の請求項4記載の貝処理装置は、2枚の殻2を上下にして貝1を固定する保持機構と、貝1の2枚の殻2の隙間から、又は2枚の殻2の二箇所以上に開口部5を形成する開口機構12と、上方の殻2の内側とそれに付いている貝1の閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射して当該殻2と身3とを分離する第一の分離機構13と、下方の殻2に付着している貝1の付随部4を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去する付随部除去機構10と、下方の殻2の内側とそれに付いている貝1の閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射して、当該殻2と身3とを分離する第二の分離機構14を備え、第一の分離機構13と第二の分離機構14を貝1の外側に設けた装置である。
【0018】
本発明の請求項5記載の貝処理装置は、請求項4記載の貝処理装置において、開口機構12が貝1の殻2の一部を刃物で切除して、又は殻2に孔をあけて、又は殻2を加圧して破損して、2枚の殻2の一方又は双方の二箇所以上に開口部5を形成する装置である。
【0019】
【0020】
本発明の請求項6記載の貝処理装置は、貝1をその2枚の殻2を上下にしてセットして間欠搬送する搬送体11を備え、搬送体11の搬送ライン上に、搬送体11で搬送される貝1の一方又は双方の殻2の二以上の箇所に開口部5を形成する開口機構12と、開口部5から貝1の上の殻2の内側と閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射してその殻2と身3とを分離して当該殻2を開く第一の分離機構13と、貝1の付随部4を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去する付随部除去機構10と、貝1の下の殻2の内側とそれに付いている閉殻筋(無紋筋部)60側に液体を噴射してその他方の殻2と身3とを分離して当該他方の殻2を開く第二の分離機構14とを備えた装置である。
【0021】
【発明の実施の形態】
(貝処理方法の実施形態1)
本発明の貝処理方法の実施形態の一つを図1に基づいて詳細に説明する。この実施形態は貝1が2枚の殻2を備えた帆立貝の場合であり、貝柱と付随部の取出し方法に関するものである。
【0022】
この実施形態では、貝1を図1(a)に示す様に、搬送体11の受皿20の上に載せて搬送する。受皿20の上に貝1を載せる作業は手作業で行うことも、機械で自動的に行うこともできる。この場合、貝1の向きと、貝1の上下を一定に揃える。例えば貝1のうち2枚の殻2が連結されている連結側21(図1a)を搬送体11の幅方向同一方向に揃える。通常、上殻と呼ばれている湾曲度が浅い扁平な殻(褐色の殻:右殻)を下にしてセットしてもよく、それとは逆に湾曲度が深い殻(白色の殻:左殻)を下にしてセットしてもよい。
【0023】
受皿20の上に載せた貝1は搬送体11により搬送され、所定位置まで搬送されると図3(a)の様に搬送体11の上方に配置されているベルトコンベアを利用した保持具22の下に進入し、当該保持具22と搬送体11の受皿20との間に挟まれる。搬送体11と保持具22とは同速で間欠走行し、同期して停止・始動する。貝1が刃物23の上まで搬送されると搬送体11及び保持具22が停止し、停止中に下の殻2の連結側21と先端側24とが図3(b)に示す様に2枚の刃物23により切断除去されて開口部5が形成される。その後に搬送体11と保持具22とが同期して走行を開始し、受皿20の上の貝1を搬送する。貝1が第一のノズル25(図1c、図4)の近くまで搬送されると搬送体11及び保持具22が停止する。
【0024】
前記停止中に受皿20に内蔵されている吸引装置により貝1が受皿20に吸引保持される。この状態で図4に示す様に第一の分離機構13のノズル(噴射体)25から高圧で噴出される液体26を殻2の開口部5から上の殻2の内面に沿って噴射し、身(貝柱)3と殻2との付着部分に当てて当該殻2を貝柱3の上面から取外す(殻を開く)。この場合、図8、図9に示す様に、貝1の閉殻筋(無紋筋部)60の外側から殻2の内面に沿って、身(貝柱:閉殻筋とも有紋筋部ともいう)3と殻2との付着部分に向けて噴射すると、当該殻2が貝柱3の上面から外れ易くなる(殻が開き易くなる)。これは貝柱3から褐色の殻(右殻)、白色の殻のいずれから取外す場合でも同様である。ノズル25の構造やサイズ、ノズル25から噴射される液体26の噴射圧(液圧)、ノズル25から噴射される液体26の噴射量(液量)等は任意に選択することができる。例えば、ノズル25としては図10に示す様に横長の噴射口61を備えたものが適し、液圧は200kg/cm2、液量は11.2l/min 程度とすることができる。液体26の噴射は開口部5からとは限らず、他の箇所から行うこともできる。例えば、殻2の蝶つがい(靭帯)より少し内側にある上下の貝の隙間からノズル25を差込んで、貝1の閉殻筋(無紋筋部)60の外側から液体を噴射するとか、他の箇所からノズル25を差込んで噴射することもできる。ノズル25からの液体の噴射角度は任意に選択することができる。
【0025】
図示したものはノズル25が1本であるが、ノズル25を貝1の外周に複数本配置し、それらから噴射される液体26を殻2の内面に沿って、身3と殻2との付着部に多方向から当てて貝柱3と殻2とを分離するとか、1本のノズル25を首振りさせたり貝柱3の外周方向に回転させたりして、ノズル25から噴射される液体26を殻2の内面に沿って、貝柱3と殻2との付着部に多方向から当てる等して貝柱3と殻2とを分離することができる。液体26には水とか他の液体を使用することができる。この場合、液体26を高圧の細いジェット状にすると貝柱3と殻2とが分離し易くなる。上の殻2を開いたら搬送体11が走行を再開して貝1を搬送する。貝1が付随部除去機構(吸引装置)10の近くまで搬送されると搬送体11が再度停止する。
【0026】
前記停止中に図1(d)、図5に示す様に下の殻2が第一の保持具27により受皿20に押し付けられて受皿20に保持される。この状態で貝柱3が付着している下の殻2に付随部除去機構(吸引装置)10の吸引口28を近付けてウロ、ヒモ、ラン等の付随部4を吸引除去する。吸引された付随部4は排出路29内を通ってタンク30内に投入され、投入された付随部4に含まれている水分や微細な塵芥等がタンク30内のフィルタ31を通過してタンク30の外部に排出される。タンク30内に溜った付随部4は必要に応じてウロ、ヒモ、ラン等の種類別に分類され、ウロは廃棄され、ヒモ、ラン等の食用に適するものは後加工されて食用に提供される。付随部4を殻2から取外す場合は、ウロのみを除去して廃棄したり、残りの付随部4をまとめて取外して商品化したり、ヒモと鰓を一緒に取外したり、といったように、商品形態に合わせて付随部4を個別に、或は二以上をまとめて、或は全てをまとめて取外したりすることができる。
【0027】
前記のように付随部4の吸引除去が終了する搬送体11が走行を再開して、付随部4が除去された貝1が図1(e)、図6の第二の分離機構14のノズル32の近くまで搬送されると搬送体11が再度停止する。この停止中に下の殻2が第二の保持具33により受皿20に押し付けられて受皿20に保持される。この状態で図6に示す様にノズル32から高圧で噴出される液体34を下の殻2の内面に沿って噴射して貝柱3と殻2との付着部に当てて当該殻2から貝柱3を分離する。このとき図6の様に貝柱3の上部に貝柱吸引装置35を近付けて貝柱3を上方に吸引すると、液体で分離される貝柱3が下の殻2から分離され易くなる。この場合も図8、図9に示す様に、貝1の閉殻筋(無紋筋部)60の外側から殻2の内面に沿って、身(貝柱:閉殻筋とも有紋筋部ともいう)3と殻2との付着部分に向けてノズル32から液体を噴射すると、当該殻2が貝柱3の上面から外れ易くなる(殻が開き易くなる)。この場合も、ノズル32からの液体の噴射角度は任意に選択することができる。ノズル32の本数も任意に選択することができる。
【0028】
殻2と分離された貝柱3は貝柱吸引装置35により吸引されて搬送体11の外部に送り出される。この貝柱3は洗浄液で洗浄された後、そのまま或は冷凍してから出荷される。洗浄液には通常の水とか、オゾン水、UV処理水等を使用することができる。
【0029】
(貝処理方法の実施形態2)
図7(a)〜(g)に示すものは他の貝処理方法である。貝の詳細は図8に図解してある。この実施形態図7(a)の様に貝1を搬送体11で搬送し、図7(b)の様に刃物23で殻2を切断して開口部5を形成し、図7(c)の様に水圧で上の殻2を貝柱3から取外し、図7(d)の様に付随部除去機構10によりウロ45を吸引除去し、図7(e)の様にラン46を付随部除去機構10により吸引除去し、図7(f)の様にヒモ47を吸引除去し、それから図7(g)の様に水圧で下の殻2を貝柱3から取外すようにしたものである。図7では説明の便宜上、ウロ45とラン46を180度ずれた位置に表示してあるが、ウロ45とラン46は実際は図8の様に貝柱3の外周のほぼ90度ずれた位置にある。そこで図7(d)〜(f)ではウロ45を吸引除去する付随部除去機構10とラン46を吸引除去する付随部除去機構10とを兼用にし、その付随部除去機構10を図7(d、e)の様に90度、往復回転可能とし、更に、付随部除去機構10がウロ45とラン46のいずれか一方を吸引除去したら自動的に90度回転して他方を吸引除去するようにしてある。
【0030】
図7(d)の装置には色判別センサ48が取付けられている。このセンサ48はラン46の色を判別して、ラン46が雄貝のものであるか、雌貝のものであるかを判別することができる。ちなみに、雄貝のランは白色、雌貝のランは赤色である。この色判別をすることにより、ラン46を雄貝のものと雌貝のものとに分けて後処理することができるため、便利である。
【0031】
(貝処理装置の実施形態1)
図1の搬送体11は図3に明示する様に、チェーンとか他のベルトといった走行体36の上に受皿20を取付けてなり、受皿20は2つの受片37を一対として構成され、夫々の受片37の上面に半円弧状の凹状湾曲部38が形成され、夫々の受片37は凹状湾曲部38が対向するように走行体36に取付けてある。搬送体11は所定位置まで進行すると自動的に停止し、所定時間経過すると自動的に走行を開始して、一定距離ずつ間欠走行するようにしてある。
【0032】
図1、図3の保持具22は無端ベルト状であり、その内側に保持具22の下側走行部40(図1b、図3a)を下方に押すための押し具41が配置されている。この押し具41は保持具22の下側走行部40を挟んで受皿20と対向する位置に配置されて、受皿20の上の貝1を受皿20との間に挟着保持できるようにしてある。保持具22の軸の外周にはスプリング42が配置されており、そのスプリング42は押し具41を下方に押すものであり、保持具22の下側走行部40の下に受皿20の上の貝1が進入すると上に押し戻されるようにしてある。
【0033】
図1の刃物23は円盤状のダイヤモンドカッターであり、搬送体11の幅方向両外側に配置されており、図示されていない駆動装置により回転されるようにしてある。刃物23には殻2を切断するのに適する他の材質のカッターとか、他の形状のカッター等を使用することができる。刃物23は常時回転していてもよく、切断時にのみ回転するようにしてもよい。
【0034】
貝1の保持機構として図5に示すものは受皿20の両外側に2本のアーム状の第一の保持具27を配置し、その保持具27が図示されていない駆動装置により内側に閉じられると、保持具27の上端の内向きの係止片43が受皿20に載せてある下の殻2の上縁に係止して、当該殻2を受皿20に押しつけて保持し、保持具27が駆動装置により外側に開くと保持具27の係止片43が下の殻2の上縁から外れて受皿20への押しつけが解除されるようにしたものである。保持機構はこの他のものでもよい。
【0035】
図5に示す様に付随部除去機構10の吸引機構50には真空吸引装置が使用されている。吸引機構50は真空ポンプ51の作動により排出路29及び付随部除去機構(バキュームノズル)10内を真空にし、付随部除去機構10の吸引口28を殻2に付着している付随部4に近付けて付随部4を吸引し、殻2から除去する。付随部除去機構10内に吸引された付随部4は排出路29内を通ってタンク30内に投入される。タンク30内に投入された付随部4に含まれている水分や微細な塵芥等はタンク30内のフィルタ31を通過してタンク30の外部に排出される。タンク30内に溜った付随部4は必要に応じて種類別に分類されて他の用途に活用されたり、廃棄されたりする。第一の保持具27は図示されていない駆動機構により左右に開閉される。下の殻2から付随部4が除去されると第一の保持具27が開いて殻2の保持が解除される。
【0036】
図5の付随部除去機構10の吸引口28はリング状に形成されているが、吸引口28は図6に示す貝柱吸引装置35の様な単なる筒状でもよく、径の小さな丸孔状とか、細長孔状等であってもよく、また、その孔径サイズは付随部4の夫々を個別に又は同時にまとめて吸引し易い任意のサイズとすることができる。
【0037】
(貝処理装置の実施形態2)
図1では下の殻2にのみ開口部5を形成してあるが、開口部は上下両方の殻2に形成することもできる。開口箇所も図示した箇所以外でも良く、例えば、殻2の幅方向一端又は両端といったように任意の箇所に、二以上開口することができる。二以上の開口部5を形成した場合、一方の開口部5から噴射した液体が、他方の開口部5から抜ける、噴射された液体が殻2の内側に溜りにくくなり、貝の身3が損傷したり、水浸しになったりしにくくなる。
【0038】
図1には円盤状の回転刃23が示されているが、刃物23は他の形状のものでも、他の動き(例えば往復運動)をするものでもよい。例えば円筒状の刃物23を回転させて殻2に丸い孔をあけて開口部5とすることもできる。また、刃物を使用せずに、ハンマーのように重い物を殻2に上方から落として殻2の一部を破損させて開口部を形成することもできる。この場合、発生する殻2の破片、粉末等を、切断しながら吸引除去装置で吸引除去したり、液体(例えば水)で洗い流したりするのが望ましい。
【0039】
図1では搬送体11を間欠移動させて、停止時に回転刃23で殻2を切断するようにしてあるが、搬送体11を連続走行させて走行中に開口部5を形成したり、他の処理をしたりすることもできる。その場合は作業し易い走行速度に設定する。
【0040】
図1では貝柱3から上の殻2を分離するときに、受皿20に内蔵された吸引式の保持機構により受皿20の上の貝1を下方に吸引して受皿20に保持できるようにしてあるが、その保持機構は走行停止時にその停止位置に設置されている吸引装置と自動的に連結されて吸引できるようにし、移動開始前に吸引装置が自動的に分離するようにしておくと便利である。受皿20に吸引式の保持機構を内蔵した場合は、夫々の停止位置に吸引装置を設置しておき、その吸引装置が保持機構と自動的に連結されたり分離されたりするようにしておけば、夫々の停止時に第一の保持具27、第二の保持具33を使用しなくとも受皿20の上の貝を受皿20に吸引保持することができる。また、受皿20に吸引式の保持機構を内蔵せずに、第一の保持具27、第二の保持具33のような保持具を夫々の工程に設けることもできる。
【0041】
実施形態1では上の殻2を開いてから下の殻2に付着している付随部4を吸引除去するようにしてあるが、本発明では開口部5を形成してから上の殻2を開かずに、その開口部5に付随部除去機構10の吸引口(例えば、ノズル)28をあてがって貝1からウロ45のみを吸引除去することもできる。
【0042】
図1(d)ではウロ、ヒモ、ラン等の付随部4全体をまとめて一つの付随部除去機構10により同時に吸引除去するようにしてあるが、付随部4はヒモ、ラン、ウロといったように種類別に吸引除去することもできる。特にウロは廃棄され、他の部分は商品化されるので、ウロは他の部分と別に吸引除去するのが望ましい。そのため、ウロ除去専用の吸引除去装置及び吸引機構を設けるとか、ヒモ用の吸引除去装置、ラン用の吸引除去装置といったように、吸引除去装置及び吸引機構を個別に設けて付随部を種類別に吸引除去することもできる。ランは通年してあるわけではなく、産卵期にしかないため、ある時のみ吸引除去する。
【0043】
図1(c)、(e)、図4、図6、図7(c)(g)におけるノズル25、34は、貝1の閉殻筋(無紋筋部)60の外側から殻2の内側に液体を噴射して殻2と身3とを分離することができるように、貝1の閉殻筋(無紋筋部)60側の外側に設置してある。その設置位置は他の場所とすることもできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明の貝処理方法は次のような効果がある。
1.殻と貝柱の分離に液体を使用するので貝柱が損傷しにくくなる。
2.貝柱が全く加熱されないため、貝柱を生のまま品質が劣化させずに取出すことができ、市場で生物商品として取引きされる。
3.貝柱に開口時の殻の破片、切り屑、粉末等が付着しても液体で洗浄されるので、切り屑が付着していない貝柱を取出すことができる。
4.付随部を吸引除去するので付随部の除去が容易且つ確実になる。また、付随部が損傷しないので、付随部の商品価値も低下しない。
5.殻を液体で切り離し、付随部は吸引装置で吸引除去するため、貝を搬送体に載せた後は貝柱や付随部に手が触れる必要がなく、衛生的である。
6.貝の閉殻筋(無紋筋部)の外側から殻の内側に液体を噴射して殻と身とを分離するため、分離し易くなり、弱い液圧でも分離でき、貝の身が液圧で崩れたり損傷したりしにくくなり、身本来の形状が確保される。また、殻と身とが分離し易くなるため、分離作業も容易になり、作業効率も良い。
【0044】
本発明の貝処理装置は、貝を搬送する搬送体、貝の殻に開口部を形成する開口機構、殻から付随部を吸引除去する吸引除去装置、貝柱と殻とを液体の噴射により分離する分離機構を備えているので、開口部の形成、付随部の除去、貝柱の取り出し迄が自動化され、大幅な省力化とコストダウンが可能となる。また、貝の閉殻筋(無紋筋部)の外側から殻の内側に液体を噴射して殻と身とを分離するためのノズルを、閉殻筋(無紋筋部)の外側に設けたので、閉殻筋(無紋筋部)の外側から液体を噴射し易くなり、殻と身とを分離し易くもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)〜(e)は本発明の貝処理方法の工程説明図。
【図2】 (a)は本発明の貝処理方法において搬送体に貝を載せるときの平面説明図、(b)はその概略を示す正面図。
【図3】 (a)は本発明の貝処理方法の開口機構の説明図、(b)はその正面図。
【図4】 本発明の貝処理方法の第一の分離機構の説明図。
【図5】 本発明の貝処理方法の付随部除去機構の説明図。
【図6】 本発明の貝処理方法の第二の分離機構の説明図。
【図7】 (a)〜(g)は本発明の貝処理方法の他例の工程説明図。
【図8】 一方の殻を取り外した帆立貝の閉殻筋(無紋筋部)の外側から液体を噴射した状態の平面説明図。
【図9】 一方の殻を取り外した帆立貝の閉殻筋(無紋筋部)の外側から液体を噴射した状態の側面説明図。
【図10】 本発明の貝処理方法似使用されるノズルの一例を示す正面図。
【図11】 (a)〜(d)は従来の貝柱取出し方法の説明図。
【符号の説明】
1 貝
2 殻
3 身
4 付随部
5 開口部
10 付随部除去機構
11 搬送体
12 開口機構
13 第一の分離機構
14 第二の分離機構
60 貝の閉殻筋(無紋筋部)
Claims (6)
- 貝(1)の2枚の殻(2)の隙間から、又は殻(2)の二箇所以上に開口した開口部(5)から、一方の殻(2)の内側とそれに付いている貝(1)の閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射して、その殻(2)と身(貝柱をも含む、以下同じ)(3)とを分離して当該殻(2)を開き、下方の殻(2)についている貝(1)の中腸腺(通称、ウロ)、生殖巣(通称、ラン)、外套膜(通称、ヒモ)、心臓、鰓、触手といった付随部(以下、付随部という)(4)を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去し、その後に、下方の殻(2)の内側とそれに付いている貝(1)の閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射して、その下方の殻(2)と身(3)を分離して、身(3)を取出すことを特徴とする貝処理方法。
- 請求項1記載の貝処理方法において、殻(2)を刃物で切除して、又は殻(2)に孔をあけて、又は殻(2)を加圧して破損して、2枚の殻(2)の一方又は双方の二箇所以上に開口部(5)を開口することを特徴とする貝処理方法。
- 請求項1又は請求項2記載の貝処理方法において、殻(2)に開口部(5)を形成することにより発生する殻(2)の破片、粉末等を吸引して、又は液体により洗い流して除去することを特徴とする貝処理方法。
- 2枚の殻(2)を上下にして貝(1)を固定する保持機構と、貝(1)の2枚の殻(2)の隙間から、又は2枚の殻(2)の二箇所以上に開口部(5)を形成する開口機構(12)と、上方の殻(2)の内側とそれに付いている貝(1)の閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射して当該殻(2)と身(3)とを分離する第一の分離機構(13)と、下方の殻(2)に付着している貝(1)の付随部(4)を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去する付随部除去機構(10)と、下方の殻(2)の内側とそれに付いている貝(1)の閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射して、当該殻(2)と身(3)とを分離する第二の分離機構(14)を備え、第一の分離機構(13)と第二の分離機構(14)を貝(1)の外側に設けたことを特徴とする貝処理装置。
- 請求項4記載の貝処理装置において、開口機構(12)が貝(1)の殻(2)の一部を刃物で切除して、又は殻(2)に孔をあけて、又は殻(2)を加圧して破損して、2枚の殻(2)の一方又は双方の二箇所以上に開口部(5)を形成するものであることを特徴とする貝処理装置。
- 貝(1)をその2枚の殻(2)を上下にしてセットして間欠搬送する搬送体(11)を備え、搬送体(11)の搬送ライン上に、搬送体(11)で搬送される貝(1)の一方又は双方の殻(2)の二以上の箇所に開口部(5)を形成する開口機構(12)と、開口部(5)から貝(1)の上の殻(2)の内側と閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射してその殻(2)と身(3)とを分離して当該殻(2)を開く第一の分離機構(13)と、貝(1)の付随部(4)を個別に又は二種類以上をまとめて又は全部をまとめて吸引除去する付随部除去機構(10)と、貝(1)の下の殻(2)の内側とそれに付いている閉殻筋(無紋筋部)(60)側に液体を噴射してその他方の殻(2)と身(3)とを分離して当該他方の殻(2)を開く第二の分離機構(14)とを備えたことを特徴とする貝処理装置。
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