JP3659665B2 - 発想促進剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は発想促進剤及びそれを含有する香料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
優れた発想を得ることは、発明や発見の礎であり、研究、生産、販売等の社会活動に於いて非常に重要な要素である。これが故に、書店等の書棚には各種の発想法に関する書物が並んでいるし、発想法に関する講習会なども高価な講習会費用を支払わなければならないにもかかわらず、盛況を呈している。逆に言えば、この様な事態は発想について有効な手段が存在していないことを証明するものでもある。
【0003】
従って、新しい発想を求める人が発想することに行き詰まっても、それに対して為し得ることは、僅かに、睡眠や休養を取ることにより鋭気を回復したり、散歩やスポーツ等により気分を新たにしたり、ヨガや座禅等により精神を集中したりすることやコーヒーやタバコ、酒などにより気分をやわらげたりすることぐらいであり、これらもその効果の程は甚だ怪しかったりする。
【0004】
一方、ハーブ或いは植物について、それらの香りが人間に及ぼす影響としては、例えば、フランスで就寝前に菩提樹のハーブティーを喫し安眠を願ったり、中国に於いて、ジャスミンティーを精神安定の為に喫したりする様に、主として鎮静作用が知られていた。更に、シソ科の植物については、ラベンダーの香りに於いて、鎮静作用及び分泌型免疫グロブリン分泌促進作用が知られている限りで、発想を促進する作用があることは全く知られていなかった。
【0005】
【課題が解決しようとする課題】
本発明はかかる状況を踏まえて為されたものであり、手軽に発想を促進する手段を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、嗅覚を介しての刺激が脳の活動に与える影響を研究している際に、ある種の嗅覚刺激が脳の活動を活発にさせる現象を発見した。これから、香りによる嗅覚刺激が脳の活動を活発にさせ、その結果、発想の促進をする作用があるのではないかと考え、各種香りについて、発想促進作用を指標にスクリーニングを重ねた結果、シソ科植物がその様な作用を有する物質を含有していることを見いだし発明を完成させるに至った。
【0007】
(1)本発明の発想促進剤は、シソ( Perilla frutescens )、セージ( Salvia offinalis )、スペアミント( Mentha spicata )、ペパーミント( Mentha piperita )、タイム( Thymus vulgalis )、ハッカ( Mentha arvensis )、マジョラム( Origanum majorana L. )、オレガノ( Oruganum vulgare L. )、ローズマリー( Rosmarinus officinaris L. )及びラベンダー( Lavandula officinalis L. )から選択されるシソ科植物の低沸点エッセンスからなる。これらの植物の低沸点エッセンスは何れも嗅覚を刺激して発想を促進させる物質を含んでいる。
【0008】
本発明で低沸点エッセンスとは、植物体の全部、一部、或いは乾燥物等の加工物を溶媒で抽出した抽出物、抽出物の溶媒除去物、その精製、分画物のの内、低沸点成分を多く含有するものの総称を意味する。
【0009】
植物体より抽出物を得る方法であるが、植物体或いは植物体の加工物に溶媒を植物体に対して同量から10倍量加えて、室温であれば数日、沸点付近の加熱条件下では数時間浸漬すれば良い。適宜攪拌を加えても構わない。その後濾過して不溶物を取り除いたり、減圧留去等して溶媒を除去しても構わない。但し、この際に、低沸点の成分が損失しないように注意しなければならない。更に、抽出物或いはその溶媒除去物を液液抽出やカラムクロマトグラフィーで精製、分画しても良い。抽出に用いる溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、クロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、酢酸エチル等のエステル類、ノルマルヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類等の有機溶媒が例示でき、これらを単独で用いたり、2種以上を混合して用いれば良い。これらの内で好ましいものは沸点の低いノルマルヘキサン、エーテル、塩化メチレン等の溶媒である。
【0010】
斯くして得られたエッセンスは常法に従って、各種香料組成物へと剤形化できる。香料組成物の例としては、具体的にはオーデコロンや香水などの化粧品、ルームフレグランスやカーフレグランス、線香や練り香等が挙げられる。
【0011】
(2)本発明の発想促進剤の作用
本発明の発想促進剤は後記実施例に示すように、嗅覚刺激を介して、脳の活動を活性化し発想を促すものである。従って、本発明の効果を最大限に生かすには本発明の発想促進剤を鼻孔より効果的に吸収せしめれば良い。かかる方法としては、エアゾールで噴霧したり、香の様に熱により気化させて吸入させる方法が例示できる。この様に臭覚を刺激させることにより本発明の発想促進剤は、発想の質を高めさせることができる。この様な作用を得るのに必要な本発明の発想促進剤の用量は、0.01〜10mg/m2程度に空気中に拡散させて吸入せしめるのが好ましく、更に好ましい用量は、0.1〜5mg/m2の濃度で吸入せしめることである。又、本発明の発想促進剤は、基源が何れもハーブであるので安全性の問題は極めて少ない。
【0012】
【実施例】
以下に実施例を挙げて更に詳しく本発明について説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは言うまでもない。
【0013】
実施例1
製造例1
ローズマリーの全草1Kgにノルマルヘキサン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤1を125g得た。
【0014】
実施例2
製造例2
セージの全草1Kgにジエチルエーテル5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤2を109g得た。
【0015】
実施例3
製造例3
ラベンダーの全草1Kgにジエチルエーテル5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤3を235g得た。
【0016】
実施例4
製造例4
スペアミントの全草1Kgにジエチルエーテル5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤4を113g得た。
【0017】
実施例5
製造例5
ペパーミントの全草1Kgにノルマルヘキサン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤5を161g得た。
【0018】
実施例6
製造例6
オレガノの全草1Kgに塩化メチレン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤6を186g得た。
【0019】
実施例7
製造例7
マジョラムの全草1Kgにテトラヒドロフラン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤7を204g得た。
【0020】
実施例8
製造例8
シソの全草1Kgに石油エーテル5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤8を151g得た。
【0021】
実施例9
製造例9
タイムの全草1Kgにアセトン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤1を119g得た。
【0022】
実施例10
製造例10
バジルの全草1Kgにジエチルエーテル5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤1を107g得た。
【0023】
実施例11
製造例11
ハッカの全草1Kgにシクロヘキサン5lを加え2時間加熱還流して抽出した後、濾過で不溶物を除去し溶媒を減圧留去し、発想促進剤1を162g得た。
【0024】
実施例12
発想促進テスト
任意に選択した男子23名、女子22名のパネラー(年齢18〜50歳)を片寄りがないように約10名づつ4群にわけ、課題として、カンヅメの空き缶の使い方について、思いつくまま自由にできるだけ多く挙げるように指示した。開始12分後1群には実施例1の発想促進剤1を、1群には実施例5の発想促進剤5を、1群には対照品としてオレンジエッセンス(市販品)を0.3mg/m2の濃度で空気中に拡散させ、呼気を介して8分間投与した。残る1群は何もせず、ブランク群とした。この20分間に得られた回答をTCT創造性検査手引書に基づき4つに分類した。
【0025】
(1)課題依存反応(Td):課題として設定されている情報をそのままの形で受け入れ、常識的な枠組みの中で課題解決を図ろうとしている場合。(実例:花瓶、灰皿、虫入れ)
(2)課題変形反応(Tm):設定課題の情報を受け入れながら、常識的な枠組みを打破し、視点変換を行って課題解決を図ろうとしている場合。(実例:カンケリ、花壇の囲い、イス、ガラガラ)
(3)同態再生反応(Ho):課題が示している種々の情報の内、特定の情報に着目し、不必要な情報は捨て、課題が設定している枠組みの中で課題解決を図ろうとしている場合。(実例:タイコ、重し、フリスビー、アクセサリー)
(4)異態再生反応(He):課題が設定している枠組みに全く拘束されないで課題解決を図ろうとしている場合。(実例:ナイフ、ビス、靴底、電気抵抗器)
【0026】
ここで、TmとTdは反応の量的側面を表し、HoとHeは反応の質的側面を表すものだとされている。従って、発想促進の指標としてはHoとHeの和を用いれば良いことが判る。そこで、発想促進剤の投与前後のHoとHeの増減率を次式より求めた。
【0027】
増減率(%)=(Hoa+Hea−(Hop+Hep))/S*100
Hoa:投与後のHo、Hea:投与後のHe、Hop:投与前のHo、Hep:投与前のHe、S:総回答数
【0028】
各群の増減率の平均値を図1に示す。これより、本発明の発想促進剤が優れた発想促進作用を有していることが明白である。又、発想促進作用は香料の様に嗅覚を刺激するものであれば良いと言うわけではなく、特定の香りしかこの作用を有していないことも判る。
【0029】
実施例13
脳波への影響
実施例12の被験者の脳波を脳波トポグラフ測定装置(DP1100)を用いてモニターした。脳波としては、発想等の創造的な脳の活動状態の指標になると言われているベータ波についてモニターした。発想促進剤は発想促進剤1を用い、発想促進剤投与前、投与直後、投与後30秒、投与後1分をモニターした。結果を図2に示す。これより、発想促進剤の投与によりベータ波が脳の右半球に活発に現れ、発想を促進しているのが判る。
【0030】
実施例14
脳波への影響
実施例2〜11の発想促進剤を0.3mg/m2空気中に拡散させ、呼気を介して被験者に投与し、投与前と投与後1分後のベータ波を測定した。結果を図3に示す何れもベータ波が脳の右半球に活発に現れ、発想を促進していることが判る。
【0031】
実施例15
脳波への影響
実施例1の発想促進剤1とローズマリーの香りの成分の内、低沸点成分の少ないものについて、脳波に対する影響を実施例14と同様の方法で調べた。低沸点成分の少ない分画はローズマリーの全草を水蒸気蒸留する事によって得た。結果を図4に示す。これより、発想促進剤1に比して低沸点成分の少ない分画は脳波に対する影響が少ない事が分かる。
【0032】
実施例16
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 50
イソプロパノール 40
発想促進剤1 10
【0033】
実施例17
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 50
イソプロパノール 45
発想促進剤2 5
【0034】
実施例18
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 59
イソプロパノール 40
発想促進剤3 1
【0035】
実施例19
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 50
イソプロパノール 40
発想促進剤4 5
発想促進剤5 5
【0036】
実施例20
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 50
イソプロパノール 40
発想促進剤6 10
【0037】
実施例21
製剤例
下記の成分を室温で攪拌可溶化し、綿芯を装着したガラス瓶に充填しルームフレグランスを作成した。以下、数値は重量部を表す。
エタノール 50
イソプロパノール 40
発想促進剤7 10
【0038】
実施例22
製剤例
下記成分を室温で攪拌可溶化してオーデコロンを得た。
エタノール 50
水 40
発想促進剤8 10
【0039】
実施例23
製剤例
下記成分を室温で攪拌可溶化してオーデコロンを得た。
エタノール 50
水 45
発想促進剤9 5
【0040】
実施例24
製剤例
下記成分を室温で攪拌可溶化してオーデコロンを得た。
エタノール 50
水 40
発想促進剤10 10
【0041】
実施例25
製剤例
下記成分を室温で攪拌可溶化してオーデコロンを得た。
エタノール 50
水 49
発想促進剤11 1
【0042】
【発明の効果】
本発明の発想促進剤は手軽に発想を促進し得るので、創造的活動に大変有益である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 発想の増減率の図である。
【図2】 脳波(ベータ波)のトポグラフである。
【図3】 脳波(ベータ波)のトポグラフである。
【図4】 脳波(ベータ波)のトポグラフである。

Claims (1)

  1. ローズマリー及びペパーミントから選択されるシソ科植物の低沸点エッセンスからなる質的発想を促進する発想促進剤。
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