JP3659496B2 - 小麦製品の改良剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は小麦製品の改良剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、粉体の粒度や粒度分布に着目した小麦製品を製造する際に用いる改良剤や改良方法が提案されている。例えば、特開2000−060468号公報、特開平11−318322号公報、特開平05―000061号公などを挙げることができる。しかしこれらは小麦製品に健康機能食材を混入する場合に起こる欠陥を補うことを目的とした提案であり、小麦製品そのものの改良方法ではない。
【0003】
また、小麦粉の粒径分布(特開2000−157148号公報)や小麦蛋白の見かけ比重(特開2001−161294号公報)などに着目した提案はなされているが、小麦蛋白質粉末の粒径分布に着目したものはない。
【0004】
特に、小麦製品は小麦粉に水を加えて加工することが基本的な製造方法であり、その製造過程において、小麦蛋白質のうち水不溶性小麦蛋白質の挙動は小麦製品の価値を大きく左右する要因であるにもかかわらず、小麦製品に小麦蛋白質を添加される場合においても、小麦蛋白質の挙動に大きく関係する粒度について着目した提案は無い。
【0005】
また、小麦蛋白質粉末の製造方法として、通常はフラッシュ乾燥方法やスプレー乾燥方法などの粉末化方法がとられているが、これらの乾燥方法を用いて製造される粉末小麦蛋白質については、粒度分布を考慮せずに製造しているため、その粒径分布は一定ではなく、吸水性や吸水速度にばらつきが出ることにより、必ずしもその特性を十分に発揮することができないなどの問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の小麦蛋白質を利用した小麦製品の改良剤では添加した小麦蛋白質の特性を十分に活用できるものではなかった。そこで、本発明においては、小麦蛋白質の特性を十分に発揮できる小麦製品の改良剤を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、レーザ回析式粒度分布測定装置によって測定した粒度分布のピークが100〜30μmの領域にあり、90μm以下30μm以上の粒径のものを40重量%以上含む小麦蛋白質を小麦製品の改良剤として利用することにより、従来の小麦蛋白質では困難であった物性改良が容易にできることを見出し本発明に達した。
【0008】
すなわち、レーザ回析式粒度分布測定装置によって測定した粒度分布のピークが100〜30μmの領域にあり、90μm以下30μm以上の粒径のものを40重量%以上含む小麦蛋白質を30〜100重量%含むことを特徴とする小麦製品の改良剤を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の対象となる小麦製品はその種類の如何を問わず、例えばパン類としてブレッド、ロールパン、フランスパン、スイートドウ、デニッシュペストリー、バンズ、菓子パン類など、菓子類としては洋菓子系のスポンジケーキ、パウンドケーキ、シホンケーキ、クッキー、ビスケット、蒸しケーキなど、和菓子系として蒸し饅頭、焼饅頭など、麺類としてうどん、日本そば、中華麺、パスタ、皮物及びこれらに熱処理や乾燥処理を施した乾麺類、即席麺類、冷凍麺類、LL麺類など、バッター類としててんぷらの衣、フライ用バッターなどが挙げられる。
【0010】
本発明の小麦蛋白質の製造方法は限定されない。例えば、小麦粉から分離された小麦蛋白質を気流乾燥機(フラッシュドライヤー)、噴霧乾燥機(スプレイドライヤー)、真空凍結乾燥機、ドラムドライヤーなどの乾燥装置で乾燥された乾燥小麦蛋白質を直接篩分け又は粉砕後篩分けをする方法、小麦粉から分離された乾燥又は未乾燥の小麦蛋白質を溶媒に溶解分散させた後、多くの不溶解部分を遠心分離機などで分離した後、低粘度溶液を噴霧乾燥機で乾燥する方法、小麦蛋白質を溶媒に溶解分散させた後、ホモミキサーのようなせん断力を有する装置で不溶性部分を微粒化した低粘度溶液を噴霧乾燥機で乾燥する方法、前記した各方法を組み合わせた方法などを挙げることができる。好ましくは小麦蛋白質を溶媒に分散させ、又はホモミキサーのようなせん断力を有する攪拌機で、不溶性部分を微粒化した後、遠心力で粒径の大きい不溶解部分を取り除いた後、噴霧乾燥を行う方法(以後、溶解分離乾燥法と称する)である。さらにはその乾燥物を篩い分けする方法である。これらの方法において、小麦蛋白質分散液の粘度、分離時の遠心力、乾燥条件などを適宜組み合わせることにより本発明の粒度分布、粒径分布の小麦蛋白質粉末を得ることができる。
【0011】
一つの方法として、B型粘度計で測定した粘度が約1000〜10cp(固形分濃度10〜15重量%)の小麦蛋白質溶液を噴霧乾燥する方法を挙げることができる。また、その他の方法として、上記各種方法による乾燥後、篩い分けを行うか、乾燥品を粉砕後篩い分けをする方法が挙げられる。
【0012】
本発明に用いる小麦蛋白質は小麦から分離された蛋白質であればよくその成分には限定されない。例えば、小麦から分離される蛋白質として小麦グルテンや小麦プロラミン、小麦グルテリン、小麦アルブミン、小麦グロブリンなどを挙げることができる。好ましくは小麦グルテンや小麦プロラミンである。
【0013】
また、溶解分離乾燥法において溶媒にアルカリ溶液や酸性水溶液を用いることで、小麦蛋白質を効率よく回収することができ、小麦蛋白質の成分をある程度選択することも可能である。例えば、分離前の溶解分散液のpHを3〜5の範囲で調整することで小麦低分子蛋白質やプロラミン系蛋白質に富む溶解分散溶液を得ることができる。
【0014】
また、溶解分離乾燥法において溶媒にpH9以上のアルカリ溶液やpH3以下の酸性水溶液を用いることで、小麦蛋白質を効率よく回収することができる。
【0015】
本発明の乾燥小麦蛋白質は、レーザ回析式粒度分布測定装置の粒度分布において100μm〜30μmの範囲に粒度分布のピークがあり、90μm以下30μm以上の粒径が40重量%以上あればよく、さらに好ましくはそのピークが60〜40μmの範囲にあることがよい。すなわち、中力小麦粉や薄力小麦粉で現れる二つのピークの谷間の粒度、すなわち100μm〜30μmに、乾燥小麦蛋白質の粒径分布の最大ピーク粒径をあわせることにより、効率よく小麦蛋白質の特性を発揮することができる。すなわち、添加する小麦蛋白質の粒径を前記谷間の粒径より小さい粒径(30μm未満)にするとままこ現象が現れ、結果的に吸水速度を抑制してしまい、該粒径より大きく(100μmを超える)すると吸水速度が遅くなるなどの現象が起こるものと推定される。
【0016】
特に生地のドウ形成に直接関与する小麦蛋白質、例えばグルテンや小麦プロラミン、小麦グルテリンなど水不溶性蛋白質粉末を小麦粉に添加する場合、小麦粉の粒度分布の主ピーク(約100μm前後)より30〜80%程度小さい粒径に揃えることで小麦粉との混和性を向上させ、添加した小麦蛋白質の吸水速度を小麦粉より僅かに早くすることで、ドウ形成性を向上させることができるものと考えられる。
【0017】
また、アルブミンのように水に溶けやすい成分においては、粒径を小麦粉にあわせる必要性はあまりない。しかし、前記水不溶性の小麦蛋白質が混在している場合には吸水性を向上させるため本発明の粒度にあわせる必要がある。
【0018】
すなわち、一般的な小麦粉の粒度分布(強力小麦粉で150μm以下10μm以上が80重量%以上を占め、100μm前後にそのピークがある)から見て、使用する乾燥小麦蛋白質は100〜30μmの範囲に粒度分布のピークがあり、好ましくは100μm以下の粒径が70重量%以上で、90μm〜30μmの範囲の粒径を40重量%以上含み、さらに好ましくは90〜30μmの範囲にシャープなピークを形成する粒度分布とすることで、添加した小麦蛋白質の吸水を小麦粉より早くすることができ、小麦粉のドウ形成を効率よく早く、均一に形成することができるものと考えられる。
【0019】
本発明で用いられる小麦蛋白質の粒径組成によって、加工上のドウ形成の改良効果以外に小麦製品の物性を改良する効果もより顕著に現れる。
【0020】
例えば、小麦プロラミンを多く含む小麦蛋白質を用いると小麦製品にソフトで弾性の強い食感を向上させることができ、小麦グルテリンを多く含む小麦蛋白質を用いると歯切れの良い食感を向上させることができ、小麦グルテンを用いるとこれらの中間の食感に向上させることができる。
【0021】
本発明の小麦製品の改良剤はその改良剤中にレーザ回析式粒度分布測定装置によって測定した乾燥小麦蛋白質の粒度分布のピークが100〜30μmの領域にあり90μm以下30μm以上の粒径を40重量%以上含む小麦蛋白質を30〜100重量%含んでいればよく、該小麦蛋白質単独でもその他の成分を含んでいてもよく、少なくとも該小麦蛋白質を改良剤中に30重量%以上含んでいればよい。
【0022】
例えば、本発明の小麦製品の改良剤には該小麦蛋白質以外の成分として、卵白、卵黄などの動植物性蛋白質類及びその分解物、クチナシ色素、ビタミンB1色素、ビタミンB2色素、カロブジャム色素などの色素類、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチンなどの乳化剤類、グアガム、キサンタンガム、タマリンド種子ガム、ペクチン、寒天、カラギーナン、アラビノキシラン、アラビノガラクタン、水溶性ヘミセルロース、アラビアガムなどの増粘多糖類、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、炭酸、燐酸などの有機酸類及びナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどその塩類、還元糖、オリゴ糖、乳糖、ブドウ糖、砂糖、麦芽糖、トレハロース、サイクロデキストリンなどの糖類、ポリオール類、油脂、粉末油脂などの油脂類、脱脂粉乳、ビタミンC、グルタチオン、グルタチオン含有酵母エキス、システイン、シスチンなどの還元剤類、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、パーオキシターゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、その他酵素などの酵素類、グリシン、アラニンなどのアミの酸類、澱粉及び化工澱粉類、デキストリン、カゼイン、水などの賦形剤類、イーストフード、穀粉を配合することができる。また、このような改良剤には小麦蛋白質を2種類以上用いてもよい。
【0023】
本発明の小麦製品の改良剤の使用方法は限定されない。例えば、添加量として小麦製品に使用される小麦粉又は穀粉類、澱粉類などの主要粉原料に対して該小麦蛋白質粉末を0.2重量%〜20重量%、添加方法として予め主要粉原料にプレミックスする方法、小麦製品製造時に粉原料に混合する方法、小麦製品の製造過程で混合する方法などを挙げることができる。好ましくは添加量として主要粉原料に対して該小麦蛋白質粉末を0.5重量%〜5重量%、添加方法として予め主要粉原料にプレミックスする方法、小麦製品製造時に粉原料に混合する方法である。
【0024】
本発明の改良剤を製菓製パンに用いることにより、短時間の混捏でもボリュームが出て、老化の遅いパンを得ることができる。また大量製パンでは乳化剤に頼ることなく安定した製パン工程を得ることができる。さらに溶解分散液のpHを3〜5に調整した溶解分離乾燥法で得られた該小麦蛋白質を用いたものは製パン性の向上はもとより、老化の遅いソフトなパンを得ることができる。
【0025】
本発明の改良剤を製麺に用いることにより、麺類のように少ない水で数回のロール圧延作業でドウ形成をするものではより安定したドウ形成をすることができる。その結果生麺類では茹で伸びが抑制されるとともに粘弾性のある麺質の麺類を得ることができる。
【0026】
本発明の改良剤をバッター類に用いるとバッターの粘度を安定化できるとともに、クリスビー感に優れた食感の衣とすることができる。
【0027】
本発明の小麦製品の改良剤は、小麦粉を原料とする小麦製品に添加する以外に、小麦粉代用品又は澱粉類や穀粉類の多い食品でドウ形成を伴う製品や水産練り製品や畜産練り製品のように小麦蛋白質のドウの粘弾性を利用する食品類にも使用することができる。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を示す。実施例中、特に断らない限り、%は重量基準である。
【0029】
参考例1〜4
フラッシュドライ乾燥法で粉末化された乾燥グルテン(参考例3)100kgに0.5%の有機酸水溶液(乳酸、リンゴ酸、クエン酸を10:5:1の配合)1000Kgに溶解分散し、約1時間攪拌混合を行った後、連続式の遠心分離機(3000〜6000G)で沈殿物を取り除いた溶液をディスクタイプの噴霧乾燥機で乾燥し、乾燥粉末を得た。(参考例1)
【0030】
さらに、沈殿物をフラッシュタイプの乾燥機で乾燥した乾燥粉末を粉砕機で粉砕後、篩分けを行い乾燥粉末を得た。(参考例2)
【0031】
さらに、市販されているスプレー乾燥機で乾燥されたグルテン粉末(参考例4)を入手した。
【0032】
参考例1〜4の小麦蛋白粉末のレーザー回析粒度分布測定装置(株式会社島津製作所:SALD−2000A)で測定した粒度分布を図1に、30〜90μmの範囲にある粒径の積算値を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1、2 比較例1、2
前記参考例1〜4の乾燥粉末(小麦蛋白質)を用いて、製パン試験を行った。
【0035】
製パン試験は表2の配合で、70%中種4時間発酵法を用いて、ミキシング条件L1:3分、H:2分で中種を作り、温度27℃湿度75%で4時間発酵後、本捏ねでショートニングを除く残りの原料を加えL1:3分、H1:3分捏ねたところでショートニングを加えさらにL2:3分、H2:5分捏ね生地を作り、フロアータイム:25分後、350gに分割・丸めを行い、分割生地をベンチタイム:18分とった後にモルダーを通した生地(N字及びU字)を山型にN字2個U字1を詰め、24℃・75%のホイロで、生地が膨らみ食型の上部まで発酵させた後、上火210℃/下火215℃:37分の条件で焼成した。
【0036】
【表2】
【0037】
上記製パン試験で焼成したパンに付いて、焼減率、比容積、老化、官能試験を行った。その結果を表3に示す。
なお、焼減率(%)、比容積(ml/g)は3次元体積計測器を用いて測定し、老化については経時的にパンのクラムの柔らかさを、レオメーターによる押し込み荷重を測定することにより判断した。また、官能試験は食感について、口溶け、香り、甘味、柔らかさ、歯切れの5項目について、経験あるパネラー10名が評価を行った。
【0038】
ただし、レオメーターの測定条件は下記の条件で行った。
試料:パンのクラムの厚さ2cm
プランジャー:直径25mmの円形平板プランジャー
押し込み速度:2cm/min
押し込み荷重:クラムの厚さが1/4になるまでの荷重を測定
パンの保存温度:20℃
【0039】
【表3】
【0040】
結果から分かるよう、同一な製パン条件からみて、本発明品は焼減率、比容積、老化、官能試験とも比較例より優れており、製パン性が向上している。さらに、実施例1は柔らかくソフト感があり、実施例2は多少硬さがあり、歯切れのよい食感と、組成の相違により、食感を変化できることも確認できた。
【0041】
実施例3、4 比較例3、4
参考例1〜4の小麦蛋白質を小麦粉に添加して、製麺試験を行った。製麺試験はグルテン形成の差が出やすい中華麺を対象とした。
【0042】
製麺試験は表4の配合で、室温で20分間混捏した後、成型ロールで6〜8mmの厚さの2枚の麺帯としたものを重ね、約50%の圧延率で7mmの麺帯とし、麺帯が乾かないようにビニール袋で覆い室温で約1時間麺帯熟成をとった。その後4段の圧延ロールで麺帯を1.5mmの厚さまで圧延し、20番の切り歯で麺線として、生中華麺を得た。
【0043】
【表4】
【0044】
上記方法で作られた生中華を同一条件で3分間茹でた後、温かいスープの入った丼に移し、グルテン形成に一番関連する伸びを、茹で直後と10分後の食感を官能試験で評価した。その結果を表5に示す。
【0045】
なお食感は中華麺の食感を硬さ、粘弾性、滑らかさを5段階評価し、時間経過と食感変化より伸びの状態を判断した。なお、5段階評価は比較例3の配点を基準とし、より強いを+1点、非常に強い+2点、より弱い−1点、非常に弱い−2点とし、それぞれを加算した。
【0046】
【表5】
【0047】
表5から分かるように、実施例3、4は比較例3、4に比較して茹で伸びが遅いことより、グルテン形成が十二分に行われたことが分かる。また、その組成の違いにより、実施例3はソフトで粘弾性の在る食感となり、実施例4は硬さと粘弾性の在る食感となり、その組成の相違によって異なる食感を作ることができることを確認した。
【0048】
参考例5
参考例3の小麦蛋白質を篩分けし、100μm以下の粒径を集め、参考例4を篩分けし40μm以上の粒径を集め、32:25の割合で混合し、参考例5の小麦蛋白質を得た。得られた小麦蛋白質の粒度分布を図2に、90〜30μmの差分値合計を表6に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
実施例5〜7 比較例5〜6
参考例1〜5の小麦蛋白質を用いて、活性小麦蛋白質粉末の活性度(吸水速度の速さと保水量の多さ)を測定するため、活性グルテンの活性度の測定に用いられるWet backとWater binding capacityの測定を行った。その測定結果を表7に示す。
【0051】
なお、Wet backは10gの小麦蛋白質粉末と蒸留水25mlを100mlのビーカーに入れ、薬匙で攪拌し、小麦蛋白質粉末が一塊になるまでの時間(秒)で現し、Water binding capacityはその塊の余分な水を絞り、10gの小麦蛋白粉末が保持した水の量をml/gの単位で現したものである。
【0052】
【表7】
【0053】
表7からわかるように、実施例5、6は吸水速度も保水量も比較例よりよく、比較例5は実施例7との対比から分かるように、吸水速度は速いがままこ現象を起こした結果、保水量が低下したのに対し、実施例7はままこ現象がほとんどなく、吸水速度も保水量も優れたものであった。
【0054】
実施例8 比較例7、8
実施例3,4と同様に中華麺で、参考例5の小麦蛋白質を用いた場合の製麺試験を行った。
【0055】
製麺試験においては表8の配合で、室温で20分間混捏した後、成型ロールで6〜8mmの厚さの2枚の麺帯としたものを重ね、約50%の圧延率で7mmの麺帯とし、麺帯が乾かないようにビニール袋で覆い室温で約1時間麺帯熟成をとった。その後4段の圧延ロールで麺帯を1.5mmの厚さまで圧延し、20番の切り歯で麺線として、生中華麺を得た。
【0056】
【表8】
【0057】
上記方法で作られた生中華を同一条件で3分間茹でた後、温かいスープの入った丼に移し、グルテン形成に一番関連する伸びを茹で直後と10分後の食感を官能試験で評価した。また、評価方法は実施例3、4と同様とした。その結果を表9に示す。
【0058】
【表9】
【0059】
表9から分かるように、実施例8は比較例7、8に比較して茹で伸びが遅いことから、グルテン形成が十二分に行われたことが分かる。
【0060】
実施例9 比較例9
参考例1と参考例4の小麦蛋白質を用いて、表10の配合でバッター液を調製し、そのバッター液をプロペラでゆっくりと攪拌しながらバッター液の粘度の変化を測定するとともに、各時間ごとに該バッター液を用いて海老フライを試作し、その食感を官能試験した。その結果を表11および下記に官能評価結果として示す。
【0061】
バッター液の調製は表10の配合に従い、氷水の中に水以外の粉原料を予め混合したものを加え、高速の攪拌機で1〜2分間攪拌して調製した。なお、バッター液の調製においては、調製後のバッター液の温度が10℃±2℃になるように氷水中の氷の量を調整した。
【0062】
また、バッター液の粘度の測定は、バッター液をその水分蒸発を防止するように蓋付の攪拌装置付容器中に約10℃で保存し、ゆっくり攪拌をしながら、その粘度をB型粘度計で経時的に測定した。
【0063】
【表10】
【0064】
【表11】
【0065】
官能評価結果
実施例9:バッター液の保存時間による衣の食感の変化は少なく、バッタ ー液の経過時間に関係なくフライ後30分が経過してもクリス
ピー感があった。
比較例9:バッター液の保存時間が長くなると、衣の食感が変化し、長く なるとクリスピー感に欠け、重い食感の衣となり、フライ後の
クリスピー感もすぐになくなり、へたりの早い衣であった。
【0066】
表11からわかるように実施例はバッター液の粘度変化が比較例に対し少なく、その結果、海老に付着するバッター液が時間経過に左右されず、時間経過による食感の変化が非常に少なかった。
【0067】
【発明の効果】
本発明によると、特定の粒径を有する小麦蛋白質を30重量%以上含むことにより、吸水性や吸水速度にばらつきが少なく、小麦蛋白質の特性を十分に発揮できる小麦製品用改良剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1〜4の小麦蛋白質粉末のレーザー回析粒度分布測定装置で測定した粒度分布を示すブラフである。
【図2】参考例1〜5の小麦蛋白質粉末の同装置で測定した粒度分布を示すグラフである。
Claims (4)
- レーザ回析式粒度分布測定装置によって測定した粒度分布のピークが100〜30μmの領域にあり、90μm以下30μm以上の粒径のものを40重量%以上含む小麦蛋白質を30〜100重量%含むことを特徴とする小麦製品の改良剤。
- 小麦製品が菓子またはパンであることを特徴とする請求項1記載の小麦製品の改良剤。
- 小麦製品が麺類であることを特徴とする請求項1記載の小麦製品の改良剤。
- 小麦製品がバッター類であることを特徴とする請求項1記載の小麦製品の改良剤。
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