JP3659142B2 - 硬貨整列装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワンマンバス等に設置される料金収納機の内部に設けられ、一度に多数枚投入された硬貨を1枚ずつ順に送り出す硬貨整列装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の料金収納機においては、釣り銭が必要な場合の釣り銭専用の硬貨投入口と、釣り銭が必要でない場合の通常の硬貨投入口との2つの硬貨投入口を備えており、前者の硬貨投入口は硬貨を1枚ずつ投入するように構成され、後者の場合には整理券と一緒に複数枚の硬貨を同時に投入できるように構成されている。したがって、投入された硬貨の金種をコインセンサで検出するときに、前者の釣り銭専用の硬貨投入口から投入された硬貨については整列させる必要がないが、後者の場合には同時に投入された複数枚の硬貨を1枚ずつ整列させる硬貨整列装置が必要になる。
【0003】
この種の硬貨整列装置としては特許第2844658号公報に開示されたものがある。ここに開示されたものは、転動通路の硬貨転動方向の上、下流側に互いの周面が対向する上下一対のローラが設けられ、下流側の一対のローラの周面間の間隔を硬貨の厚みよりもわずかに大きい間隔に形成するとともに、この下流側の一対のローラのうち一方のローラを硬貨を送り出す方向に回転させ、他方のローラを硬貨を戻す方向に回転させ、かつ上流側の一対のローラを共に硬貨を送り出す方向に回転させたものである。
【0004】
このような構成とすることにより、券銭分離装置から送られてきた硬貨は、上流側のローラの大きな周面速度による引き込み作用によって、自重による転動速度で整列されるのでなく、強制的に整列処理され下流側のローラに導かれる。下流側に導かれた硬貨は、戻しローラから戻し力を受けるが、この戻しローラからの戻し力を打ち消す送り力を送りローラから受けるので、転動の勢いでそのまま送り出される。また、複数個の硬貨が重なり合って転動してきた場合は、端面を送りローラに接触させている硬貨だけが通過し、他の硬貨は戻しローラにより止められるが、この戻しローラにより止められた硬貨も、送りローラによる硬貨の送り出しにより順に1枚ずつ送りローラに接触して送り出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の硬貨整列装置においては、整理券と硬貨とを分ける券銭分離装置から送られてきた硬貨を整列させて下流側のローラに送るのに、上流側のローラの周面速度による引き込み作用によって行う構造としている。したがって、一度に大量の硬貨が券銭分離装置から送られてくると、整列可能な限度を越え、引き込み作用によって複数枚の硬貨が一度に下流側の送りローラと戻しローラに送られるので、硬貨詰まりを起こすおそれがあった。特に、釣り銭専用の硬貨投入口が設けられていない料金収納機においては、1つの硬貨投入口に釣り銭が必要な硬貨も投入されるため、2つの硬貨投入口を備える場合と比較して硬貨の整列時間をより短縮させ、コインセンサによる金種の判別時間を速くしたいという要望もあった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、第1の目的は一度に大量の硬貨を処理することにある。第2の目的は硬貨の整列時間を短縮することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、硬貨を落下させる硬貨通路と、この硬貨通路の下方に設けられ互いの周面が硬貨の1枚分の厚みよりも大きく2枚分の厚みよりも小さい間隔を隔てて対向する一対の下部ローラと、この下部ローラよりも上方に設けられ互いの周面が下部ローラの周面間の間隔よりも大きい間隔を隔てて対向する一対の上部ローラとからなり、前記一対の下部ローラのうち、一方のローラを硬貨を送り出す方向に回転させ、他方のローラを硬貨を戻す方向に回転させるとともに、前記上部ローラを共に硬貨を戻す方向に回転させる硬貨整列装置であって、前記一対の上部ローラを共に偏心ローラとするとともに、これら上部ローラの回転を互いに異なる速度としたものである。
したがって、上部ローラによって落下してきた硬貨の大部分を一旦上方に戻すように撹拌され硬貨が整列する。また、上部ローラの硬貨通路内への突出量が変化するので、撹拌作用が向上する。さらに、上部ローラの互いに対向する部位が回転毎に常に変化するので、撹拌作用がさらに向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1は本発明に係る硬貨整列装置の正面図、図2は図1におけるII-II 線断面図である。図3は図1におけるIII 矢視図、図4(a)は要部を拡大して示す正面図、同図(b)は同図(a)におけるIV(b)-IV(b) 線断面図である。
【0012】
図1において、符号2で示すものは、硬貨1が投入される硬貨投入口であって、複数枚の硬貨1を同時に投入可能な開口を有している。この硬貨投入口2の下方には、左右一対の側板3A,3Bが設けられ、これら側板3A,3Bによって硬貨投入口2から投入された硬貨1が落下する硬貨通路4が形成されている。これら左右の側板3A,3Bの下端には、券銭分離手段としての左右一対のローラ5A,5B(ローラ5Aは不図示)が取り付けられており、これら両ローラ5A,5Bは、互いの周面間にわずかな隙間を設けるようにして並設され、図中左下がりに傾斜している。したがって、硬貨投入口2から硬貨1と不図示の整理券を同時に投入すると、整理券は両ローラ5A,5B間の隙間から下方に落下し、硬貨1は両ローラ5A,5B上を図中左方に転動して、硬貨通路4を下方に落下する。
【0013】
全体を符号8で示すものは、本発明の特徴である硬貨整列装置であって、硬貨通路4の下方側に設けられ、この硬貨整列装置8の下方には、この硬貨整列装置8から1枚ずつ排出される硬貨1の金種を判別するコインセンサ9が設けられている。
【0014】
次に、図1、図2および図4を用いて硬貨整列装置8について説明する。
図2に示すように、硬貨整列装置8は、左右の側板3A,3Bの下端に設けられた左右一対の下部ローラ11,12と、これら下部ローラ11,12の上方に設けられた左右一対の上部ローラ13,14とによって構成されている。このうち、左側の下部ローラ11はステンレスによって形成され、右側の下部ローラ12はゴムによって形成され、上部のローラ13,14は金属によって形成され、周面には周面方向に沿って高さの小さい多数の凹凸が設けられている。左右一対の下部ローラ11,12は、互いの周面が、硬貨1の1枚分の厚みよりも大きく2枚分の厚みよりも小さい間隔αだけ隔てるようにして並設され、後述するように互いに異なる方向に回転駆動する。すなわち、ローラ11は硬貨1を送る方向である図中時計方向に回転駆動し、ローラ12は硬貨1を戻す方向である図中時計方向に回転駆動する。
【0015】
上部ローラ13,14は、側板3A,3Bに穿設した窓16,16から周面の一部が進出するようにして設けられ、互いの周面が上述した間隔αよりも大きい間隔、すなわち複数の硬貨1の厚み分だけ隔てるようにして並設され、共に硬貨1を戻す方向に回転駆動する。すなわち、ローラ13は図中反時計方向に回転駆動し、ローラ14は図中時計方向に回転駆動し、ローラ13の回転速度はローラ14の回転速度よりも遅く設定されている。また、これら上部ローラ13,14は、図示を省略した偏心軸受によって回転自在に支持されており、回転にともない図中実線と二点鎖線で示すように、硬貨通路4内への進出量が変化する。
【0016】
次に、図4を用いて上部ローラ13,14の形状と窓16の形状について説明する。上部ローラ13,14は共に同じ形状を有しているので、ここでは一方のローラ13について説明する。
同図(a)に示すように、上部ローラ13は軸線方向に4個の大径部13aと3個の小径部13bとが交互に形成されており、4個の大径部13aに対応して4個の窓16が設けられている。これら窓16と大径部13aのとの間には、図4(b)に示すように、間隔βのクリアランス16aが設けられており、これら4個の窓16から4個の大径部13aがそれぞれ硬貨通路4内に進出するように構成されている。したがって、これら4個の窓16間には、3個の小径部13bに対応して、これら4個の窓16間を仕切る仕切部(図中便宜上ハッチングした部位)17が設けられている。なお、上述した下部ローラ11,12も軸線方向に大径部と小径部とが交互に形成されている。また、これら4個のローラ11,12,13,14の大径部の径は同一に形成されている。
【0017】
次に、図3を用いて上部ローラ13,14および下部ローラ11,12を回転駆動させるための構造について説明する。
20はモータであって、モータ軸20aにプーリ21が軸着され、このプーリ21と、右側の上部ローラ14の側面に一体に形成したプーリ22と、右側の下部ローラ12の側面に一体に形成したプーリ23との間にベルト25が張架されている。右側の下部ローラ12の側面にはギア部26が一体に形成され、このギア部26と符号27で示す中間ギア27を介して左側の下部ローラ11の側面に一体形成されたギア部28が噛合している。左側の上部ローラ13の側面には、ギア部28よりも大径のギア部29が一体に形成され、これらギア部28,29が噛合している。
【0018】
したがって、モータ20のモータ軸20aが図中時計方向に回転することにより、プーリ22,23がベルト25を介して時計方向に回転するので、左側の上部ローラ14と左側の下部ローラ12も時計方向に回転する。すなわち、上述したように、これら上部ローラ14と下部ローラ12は硬貨通路4内を落下してきた硬貨1を戻す方向に回転する。この下部ローラ12の回転は、ギア部26に噛合している中間ギア27を介してギア部28に伝達されるので、左側の下部ローラ11が図中時計方向に回転する。すなわち、この左側の下部ローラ11は硬貨通路4内を落下してきた硬貨1を送り出す方向に回転し、その回転速度は、固定側の下部ローラ12と同じ速度となる。この左側の下部ローラ11の回転は、ギア部28に噛合するギア部29に伝達され、左側の上部ローラ13が図中反時計方向に回転する。すなわち、この左側の上部ローラ13は硬貨通路4内を落下する硬貨1を戻す方向に回転するとともに、対向する右側の上部ローラ14の回転速度よりも遅く回転する。
【0019】
次に、このような構成の硬貨整列装置における硬貨の整列動作について説明する。
図1に示すように、複数枚の硬貨1と不図示の整理券とが同時に硬貨投入口2に投入されると、整理券は両ローラ5A,5Bの隙間から落下し分離され、硬貨1は両ローラ5A,5B上を転動し、図2において硬貨通路4内を落下する。図2に示すように、複数枚の硬貨のうち、左側の上部ローラ13に当接する硬貨1Aは、この上部ローラ13によって図中上方に戻される。同様に、右側の上部ローラ14に当接する硬貨1Bも、この上部ローラ14によって図中上方に戻される。すなわち、硬貨通路4内を落下してきた複数枚の硬貨は、これら左右の上部ローラ13,14によって撹拌され、大部分の硬貨が一旦上方に戻されるので、複数枚の硬貨1が一度に硬貨通路4の下方側に落下することなく、一部の硬貨が順に整列して下方側に落下する。
【0020】
このように、左右の上部ローラ13,14を共に硬貨1を戻す方向に回転するようにしたことにより、大量の硬貨が一度に硬貨通路4内に落下してきても、必要な一部の硬貨のみを下方に導き、大部分の硬貨を攪拌して上方に戻すことができるので、大量の硬貨を一度に処理することが可能となる。また、硬貨通路4が上下方向に延在していることにより、硬貨1の落下速度が速いにもかかわらず、これら左右の上部ローラ13,14によって硬貨を整列させることができるので、処理速度が向上する。
【0021】
ここで、左右の上部ローラ13,14が偏心ローラであることにより、これらローラ13,14の硬貨通路4内への進出量が変化する。したがって、撹拌作用が硬貨通路4の左右方向において偏ることなく、均一に行われるので、撹拌作用の効率が向上し、硬貨の整列効果が向上するだけでなく、硬貨詰まりも防止できる。しかも、左右の上部ローラ13,14の回転速度が互いに異なるので、これら上部ローラ13,14の対向する部位が回転毎に常に変化するので、より撹拌作用の効率が向上する。また、図4(b)に示すように、落下してきた硬貨1Aが、上部ローラ13と窓16との間のクリアランス16a内に侵入しようとするが、同図(a)に示すように、窓16がローラ13の軸線方向に4個に分割され、それぞれの窓16間に3個の仕切部17が設けられている。したがって、硬貨1Aはこれら3個の仕切部17によって側板3A内に侵入することが阻止される。
【0022】
硬貨通路4の下方側に落下した2枚の硬貨のうち、右側の下部ローラ12に当接する硬貨1Cは、上方に戻される。このとき、下部ローラ12が摩擦係数の大きい材料であるゴムによって形成されているので、硬貨1Cが確実に上方に戻される。左側の下部ローラ11に当接する硬貨1Dは、下方に送り出されるので、結局コインセンサ9には硬貨1が1枚ずつ送られる。
【0023】
上部ローラ13,14は共に偏心ローラとしたが、少なくともいずれか一方を偏心ローラとしてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、大量の硬貨を一度に処理することが可能となるだけでなく、処理速度が向上する。また、撹拌作用が向上するので、整列作用も向上するだけでなく硬貨詰まりも防止できる。さらに、撹拌作用がより向上するので、より整列作用も一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る硬貨整列装置の正面図である。
【図2】 図1におけるII-II 線断面図である。
【図3】 図1におけるIII 矢視図である。
【図4】 図4(a)は要部を拡大して示す正面図、同図(b)は同図(a)におけるIV(b)-IV(b) 線断面図である。
【符号の説明】
1…硬貨、2…硬貨投入口、4…硬貨通路、8…硬貨整列装置、9…コインセンサ、11,12…下部ローラ、13,14…上部ローラ、16…窓、17…仕切部、20…モータ。

Claims (1)

  1. 硬貨を落下させる硬貨通路と、この硬貨通路の下方に設けられ互いの周面が硬貨の1枚分の厚みよりも大きく2枚分の厚みよりも小さい間隔を隔てて対向する一対の下部ローラと、この下部ローラよりも上方に設けられ互いの周面が下部ローラの周面間の間隔よりも大きい間隔を隔てて対向する一対の上部ローラとからなり、前記一対の下部ローラのうち、一方のローラを硬貨を送り出す方向に回転させ、他方のローラを硬貨を戻す方向に回転させるとともに、前記上部ローラを共に硬貨を戻す方向に回転させる硬貨整列装置であって、前記一対の上部ローラを共に偏心ローラとするとともに、これら上部ローラの回転を互いに異なる速度としたことを特徴とする硬貨整列装置。
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