JP3659041B2 - 強度変動の極めて小さい高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水焼き入れ方式の連続焼鈍法による高強度冷延鋼板、特に強度変動の極めて小さい高強度冷延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の安全対策や燃費向上を図るために、ドアやフードなどの外板のみならずインパクトバーなどの補強部材にも板厚の薄い高強度冷延鋼板が使用される機会が増えている。特に補強部材には、その用途上引張強度が60kgf/mm2以上の著しく強度の高い冷延鋼板が適用されている。
【0003】
こうした著しく強度の高い冷延鋼板を製造するには種々の方法が提案されているが、高価な合金元素を添加しないで簡便に製造できる方法として、水焼き入れ方式の連続焼鈍法がある。この方法で製造される高強度冷延鋼板はフェライト相とマルテンサイトのような低温変態相からなる複合組織を有し、変態強化により強度の発現が図られているため加工性のみならず溶接性にも優れている。しかし、この水焼き入れ方式の連続焼鈍法には、低温変態相を適量にコントロールすることが難しいためコイル内やコイル間の強度変動が大きく、安定して所望の強度の鋼板を製造できないという問題がある。
【0004】
コイル内やコイル間の強度変動を小さくする方法として、特公平2-35013号公報には、強度変動の要因である変態強化の寄与分を減少させ、その分Nb、V、Tiの析出強化元素を加えて析出強化により強度を補う連続焼鈍による超高強度冷延鋼板の製造方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特公平2-35013号公報に記載された方法では、強度変動をある程度小さくすることはできるが、5kgf/mm2以内に抑えることは難しく、また、Nb、V、Tiの合金元素を添加する必要があるためコスト高にもなる。
【0006】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、特殊な合金元素を添加することなく強度変動を5kgf/mm2以内に納めることのできる水焼き入れ方式の連続焼鈍法による高強度冷延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、Nb 、 V 、 Ti の析出強化元素および Cr 、 Mo 、 Cu 、 Ni などの合金元素を添加しないC−Si−Mn系の単純成分系の鋼板を用いて、水焼き入れ方式の連続焼鈍法により、均熱温度を(Ac1変態点〜Ac3変態点)の範囲内とし、均熱後水焼き入れ開始温度まで冷却速度20℃/sec以下で冷却して水焼き入れを行うことにより、60kgf/mm 2 級高強度冷延鋼板を製造するに際し、強度TS(kgf/mm2)、板厚t(mm)、炭素当量Ceq(mass%)、水焼き入れ開始温度TQ(℃)の間に成り立つ下記の関係式(2)を60kgf/mm 2 級の強度レベルに対して予め求めておき、実測の出鋼成分から計算した炭素当量、実測の板厚および目標の強度を式(2)に代入して求まる水焼き入れ開始温度〜 ( 前記水焼き入れ開始温度 +50 ℃ ) の範囲内の温度から水焼き入れする強度変動が5kgf/mm2以内の60kgf/mm 2 級高強度冷延鋼板の製造方法により解決される。
TS=-3.5 × t+343 × (C+Mn/9-Si/14+P/22+S/1.2)+0.11 × TQ-62 … (2)
【0008】
本発明者等が製造条件における強度変動の要因を検討したところ、鋼板の板厚、炭素当量および連続焼鈍における水焼き入れ開始温度が主要因であり、強度変動を小さくするには鋼板の板厚、炭素当量に合わせて最適な水焼入れ開始温度を設定する必要のあることが明らかになった。
【0009】
そこで、予め所定の強度レベルに対して、強度TS(kgf/mm2)、板厚t(mm)、炭素当量Ceq(mass%)、水焼入れ開始温度TQ(℃)の間に成り立つ下記の関係式(1)を求めておき、実測の出鋼成分から計算した炭素当量、実測の板厚および目標の強度を式(1)に代入して求まる水焼き入れ開始温度から水焼き入れすれば、原理的に強度変動の ない高強度冷延鋼板を製造できることになる。実際には、式(1)の定数a、b、c、dの誤差により強度変動を完全に0kgf/mm2とすることはできないが、5kgf/mm2以内に極めて小さくすることはできる。
TS =a × t+ b× Ceq+ c× TQ+ d … (1)
a 、b、c、d:強度レベルに依存する定数
【0010】
上記式(1)を強度60kgf/mm2に対して求めた式が下記の式(2)で、実測の出鋼成分から計算した炭素当量、実測の板厚および強度60kgf/mm2を式(2)に代入して求まる水焼き入れ開始温度と(その水焼入れ開始温度+50℃)の範囲内の温度から水焼き入れすると、強度変動が5kgf/mm2以内の60kgf/mm2級高強度冷延鋼板を製造できる。
TS=-3.5×t+343×(C+Mn/9-Si/14+P/22+S/1.2)+0.11×TQ-62 …(2)
【0011】
本発明法により製造する高強度冷延鋼板の成分は、水焼き入れ方式の連続焼鈍法を用いているため、特殊元素が添加されないC−Si−Mn系の単純成分系で十分である。
【0012】
熱延条件は、通常行われている条件と同様に、加工性の観点よりAr3変態点以上で圧延し、冷間加工性と加工性の観点より500〜650℃で巻き取ればよい。
【0013】
連続焼鈍における水焼き入れ開始温度以外の条件も通常行われている条件と同様でよい。すなわち、複合組織を得るため均熱温度を(Ac1変態点〜Ac3変態点)の範囲内に、均熱後水焼き入れ開始温度までの冷却をフェライトとオーステナイトの分離を促進するため20℃/sec以下に、水焼き入れ後の焼き戻し温度を低温焼き戻し脆化を防ぐため300℃以下にする。
【0014】
【実施例】
表1に示す60kgf/mm2級高強度冷延鋼板用のC−Si−Mn系の冷間圧延ままの鋼板を用い、任意の水焼き入れ開始温度TQmesから水焼き入れして強度TSmesの測定を行った。そして、成分系から計算した炭素当量、冷間圧延後の実測板厚および目標強度(この場合、60kgf/mm2)を上記式(2)へ代入して水焼き入れ開始温度TQcalを計算し、(TQmes-TQcal)と(TSmes-60)の関係を調査した。
【0015】
結果を表1に示す。
本発明法に従い、実測の水焼き入れ開始温度TQmesを(TQmes-TQcal)」50℃を満足するように設定した試料3,6,7,8,9では、いずれにおいても(TSmes-60)が5kgf/mm2以内になり、目標強度60kgf/mm2に対し極めて強度変動の小さい鋼板が得られることがわかる。
【0016】
【表1】
【0017】
【発明の効果】
本発明は以上説明したように構成されているので、特殊な合金元素を添加することなく強度変動を5kgf/mm2以内に納めることのできる水焼き入れ方式の連続焼鈍法による高強度冷延鋼板の製造方法を提供できる。
Claims (1)
- Nb 、 V 、 Ti の析出強化元素および Cr 、 Mo 、 Cu 、 Ni などの合金元素を添加しないC−Si−Mn系の単純成分系の鋼板を用いて、水焼き入れ方式の連続焼鈍法により、均熱温度を(Ac1変態点〜Ac3変態点)の範囲内とし、均熱後水焼き入れ開始温度まで冷却速度20℃/sec以下で冷却して水焼き入れを行うことにより、60kgf/mm 2 級高強度冷延鋼板を製造するに際し、強度TS(kgf/mm2)、板厚t(mm)、炭素当量Ceq(mass%)、水焼き入れ開始温度TQ(℃)の間に成り立つ下記の関係式(2)を60kgf/mm 2 級の強度レベルに対して予め求めておき、実測の出鋼成分から計算した炭素当量、実測の板厚および目標の強度を式(2)に代入して求まる水焼き入れ開始温度〜 ( 前記水焼き入れ開始温度 +50 ℃ ) の範囲内の温度から水焼き入れする強度変動が5kgf/mm2以内の60kgf/mm 2 級高強度冷延鋼板の製造方法。
TS=-3.5 × t+343 × (C+Mn/9-Si/14+P/22+S/1.2)+0.11 × TQ-62 … (2)
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EP2390373B1 (en) * | 2008-12-31 | 2020-11-25 | Baoshan Iron & Steel Co., Ltd. | Method for manufacturing grain oriented silicon steel with single cold rolling |
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JP4848722B2 (ja) * | 2005-09-30 | 2011-12-28 | Jfeスチール株式会社 | 加工性に優れた超高強度冷延鋼板の製造方法 |
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