JP3658850B2 - 共役ジエン系重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シランカップリング剤などのフィラーの表面処理剤を使用しなくても、主としてシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの白色充填剤を含むゴム製品に適した、破壊強度、反撥弾性、耐摩耗性に優れ、さらに詳細には、転がり抵抗性およびウエットスキッド特性を同時に満足し得るタイヤ用トレッド部分にも適した、エポキシ化された共役ジエン系重合体を含む共役ジエン系重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、共役ジエン、さらに必要に応じて芳香族ビニル化合物を(共)重合して得られる共役ジエン系重合体は、合成ゴムとして汎用されている。
しかしながら、この重合体にシリカや炭酸マグネシウムなどの白色充填剤を配合した加硫物は、引張強度が低いため、この引張強度を向上させる目的でさらに補強助剤として多量のシランカップリング剤やチタンカップリング剤が用いられている。
一方、自動車分野では、省エネルギーや省資源の社会的要請に伴って、自動車の燃費を向上させることが必要となっている。低燃費化の方法の1つとして、タイヤの転がり抵抗を小さくすることが良く知られている。
【0003】
ところで、タイヤの転がり抵抗を小さくするには、トレッドゴムとして、ヒステリシスロスの小さいゴムを用いることが有効である。しかしながら、ヒステリシスロスの小さいゴムを用いることは、湿潤路面での摩耗抵抗、すなわちウエットスキッド抵抗が低下する傾向にあり、両者は二律背反の関係にある。このため、タイヤの転がり抵抗とウエットスキッド抵抗の2つの特性を同時に満足させることは、従来困難であった。
【0004】
最近になり、タイヤの転がり抵抗やウエットスキッド抵抗とゴム組成物の粘弾性的対応付けが理論的に示されている。これによれば、タイヤ走行時の転がり抵抗を小さくするには、トレッドゴムのヒステリシスロスを小さくする、すなわち50〜70℃(走行温度)の温度における動的損失(tanδ)を低くすることが、低燃費性に有効であることが示されている。これに対して、ウエットスキッド抵抗性は、路面での凹凸をフォローするために、変形の周波数が大きく、このため、粘弾性的には低温、実際には0℃付近の動的損失と良く相関する。従って、タイヤのグリップ性能を改良するには、0℃付近のtanδを大きくする必要がある。
【0005】
これまで、上記の二律背反特性を満足させる方法として、数多くの提案がなされている。例えば、カーボンブラックを補強剤として用いるゴム組成物の場合、初期にはカーボンブラックの比率を低下させる方法が提案されている。
また、米国特許第4,822,844号明細書には、ヨウ素(IA)およびチッ素(N2 SA)の吸収比表面積と、カーボンブラック粒子の平均粒径とによって正確に表示される特性を有するカーボンブラックとを使用する方法が提案されている。
【0006】
さらに、特開昭57−55912号公報、特開昭57−87407号公報、特開昭59−117514号公報、特開昭61−103902号公報、特開昭61−14214号公報、特開昭61−141741号公報などには、ポリマーの分子鎖中に、スズ化合物、ベンゾフェノン、イソシアナートなどの官能基を導入した変性ポリマーを用いることによって、発熱性を低減させることが提案されている。また、特開平3−239737号公報には、特定のスチレン連鎖を持つスチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を使用することが提案されている。
しかしながら、上記したいずれの提案も、未だに性能的に上記特性を充分に満足させるものではない。
【0007】
近年、上記特性を満たす方法として、例えば特開昭61−218404号公報には、補強剤にシリカを配合することが提案されている。しかしながら、この配合物は、引張強度や耐摩耗性が問題である。
また、特開平3−252431号公報、特開平7−196850号公報では特定の構造を有するスチレン−ブタジエン共重合体を、特開平7−70369号公報ではイソプレン−ブタジエン共重合体ゴムを、それぞれシリカとシランカップリング剤とを組み合わせることが提案されている。さらに、特開平7−90123号公報には、スチレン−ブタジエン共重合体に、一定量のエポキシ化天然ゴムを混合したゴムとシリカおよびシランカップリング剤を組み合わせることが、また特開平7−149955号公報には、ポリイソプレン、エポキシ化天然ゴム、シリカおよびシランカップリング剤の組み合わせが、転がり抵抗性、ウエットスキッド特性、耐摩耗性を並立させることが可能であることが示されている。
しかしながら、いずれの提案も、充分な補強性を得るために、シランカップリング剤を多量に配合し、また、充填剤とゴムとの混練りも、一定の温度範囲内で行なうという制限がある。また、従来のシランカップリング剤は、大気中で不安定であるため、取り扱いに細心の注意を要するという欠点もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の欠点を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、共役ジエン、さらに必要に応じてこれと芳香族ビニル化合物とで構成され、共役ジエン部分がエポキシ化された共役ジエン系重合体とシリカなどの白色充填剤の組み合わせが、破壊強度、反撥弾性、耐摩耗性の各特性に優れていることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、有機リチウム化合物または有機バリウム化合物を開始剤とし、芳香族ビニル化合物0〜50重量%および共役ジエン100〜50重量%で構成された共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の0.5〜20重量%がエポキシ化された共役ジエン系重合体であって、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)が20〜200であるエポキシ化共役ジエン系重合体を少なくとも20重量部含むゴム成分100重量部に対し、シリカ、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種の白色充填剤10〜120重量部を配合してなる共役ジエン系重合体組成物を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のゴム組成物に用いられるエポキシ化共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル化合物0〜50重量%および共役ジエン100〜50重量%で構成される重合体の共役ジエン部分をエポキシ化したものである。
【0011】
本発明に使用されるエポキシ化共役ジエン系重合体は、共役ジエン部分の0.5〜20重量%、好ましくは3〜15重量%がエポキシ化されている必要があり、エポキシ化率が0.5重量%未満では、補強性が充分ではなく、一方20重量%を超えると、未加硫時の加工性が極めて困難となる。
また、エポキシ化共役ジエン系重合体中、芳香族ビニル化合物の含量は、0〜50重量%、好ましくは5〜45重量%であり、50重量%を超えると、低燃費性や耐摩耗性が劣り好ましくない。
さらに、エポキシ化共役ジエン系重合体のムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)は、20〜200、好ましくは20〜100であり、20未満では、破壊強度が劣り、一方200を超えると、加工性が劣り好ましくない。
【0012】
本発明に使用されるエポキシ化共役ジエン系重合体の製造方法は、特に限定されるものではない。エポキシ化法としては、共役ジエン系重合体を、▲1▼過酢酸、過安息香酸などの過酸で処理する方法、▲2▼過酸化水素とギ酸で処理する方法などが挙げられる。
また、共役ジエン系重合体を、▲3▼タングステン酸を触媒に過酸化水素で処理する方法(J.Polym.Sci.,C.,28,285,1990)、▲4▼マンガンのポルフィリン錯体を触媒に、ヨードシルベンゼンまたは次亜塩素酸ナトリウムで処理する方法(Polymer,33,1771,1992)、▲5▼モリブデン錯体を触媒にt−ブチルヒドロペルオキシドで処理する方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1686,1989)などが挙げられる。
【0013】
ここで、エポキシ化に用いられる共役ジエン系重合体としては、有機リチウム化合物を開始剤として、炭化水素溶媒中で製造される芳香族ビニル化合物および共役ジエンとの共重合体、あるいは共役ジエン単独重合体である。この共役ジエン系重合体としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。また、スチレン−ブタジエン−イソプレン三元共重合体(特開平4−272901号公報)、ブタジエン−イソプレン共重合体(特開平7−149841号公報)なども挙げられる。
さらに、バリウム化合物を開始剤として製造した、芳香族ビニル化合物−共役ジエン系共重合体、または共役ジエン系重合体(特開平2−265902号公報)が挙げられる。
これらの共役ジエン系重合体の中で、有機リチウム化合物を開始剤として、炭化水素溶媒中で製造される共役ジエン系重合体が好ましい。
【0014】
ここで、芳香族ビニル化合物としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられ、好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、さらに好ましくはスチレンである。
また、共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエンなどの1種または2種以上が挙げられるが、工業的に利用でき、また物性の優れた組成物を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、さらに好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレンである。
【0015】
なお、共役ジエン系重合体は、重合反応を行ったのち、2〜6官能性のカップリング剤を添加し、重合体末端を変性することもできる。
ここで、2〜6官能性のカップリング剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンなどのジアルケニル芳香族化合物、四塩化スズ、ジブチルスズジクロライド、ブチルスズトリクロライド、フェニルスズトリクロライド、ジフェニルスズジクロライドなどのハロゲン化スズ化合物、四塩化ケイ素、ブチルトリクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素などのハロゲン化ケイ素化合物、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナートなどのイソシアナート化合物、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビス(2−ピリジル)ケトン、ビス(4−ピリジル)ケトンなどの芳香族複素チッ素含有化合物などが挙げられる。これらのカップリング剤は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0016】
また、上記有機リチウム化合物を開始剤として製造した共役ジエン系重合体中の共役ジエン部分の1,2−結合および/または3,4−結合(以下「ビニル結合」ともいう)含量は特に限定されないが、15〜90%の範囲で任意に決定することができる。ビニル結合含量が15〜40%では、破壊強力、耐摩耗性、低ヒステリシスロス性の改良に有効であり、また30〜70%では、特に低ヒステリシスロス性とウエットスキッド抵抗とのバランスに優れる。さらに、ビニル結合含量が50〜90%では、ウエットスキッド抵抗が向上し、操縦安定性の改良に効果がある。
【0017】
さらに、上記バリウム系化合物を開始剤として製造された共役ジエン系重合体のミクロ構造も特に限定されないが、破壊強力と耐摩耗性の改良に有効な範囲は、共役ジエン部分のトランス結合含量が70〜90%、ビニル結合含量が3〜10%である。
また、芳香族ビニル化合物を共重合する場合、芳香族ビニル化合物結合含量が5〜45重量%の範囲にあると、破壊強力と反撥弾性の改良に効果がある。
【0018】
なお、本発明のゴム組成物に使用されるエポキシ化共役ジエン系重合体は、エポキシ化されても、共役ジエン系重合体が本来有するエラストマー弾性を失うことがないが、エポキシ化後のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−100℃〜−10℃、さらに好ましくは−90℃〜−20℃の範囲である。
【0019】
本発明のゴム組成物において、エポキシ化共役ジエン系重合体は、ゴム成分として単独で用いてもよいし、また後述の他のゴム状重合体をブレンドして用いることもできるが、ゴム成分中に20重量%以上、好ましくは30重量%以上含有させることが必要である。ゴム成分中に、エポキシ化共役ジエン系重合体が20重量%未満では、白色充填剤に対する補強性が不充分となる。
【0020】
ここで、他のゴム状重合体としては、天然ゴム、高シスポリイソプレン、乳化重合スチレン−ブタジエン系共重合体、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体、高シスポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ハロゲン化ブチルゴムなどが挙げられる。これらの他のゴム状重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を併用することができる。
【0021】
本発明のゴム組成物に使用される白色充填剤は、シリカ、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種である。
ここで、シリカとしては、BET表面積が150m2 /g以上、好ましくは200m2 /g以上、嵩比重が0.15g/l以上、好ましくは0.18g/l以上、吸油量が150cc/100g以上、細孔容積が1.5cc/g以上であることが望ましい。
白色充填剤の使用量は、ゴム成分100重量部に対し、10〜120重量部、好ましくは30〜80重量部である。10重量部未満では、白色充填剤の補強性が小さく、一方120重量部を超えると、加工性と破壊特性が劣り好ましくない。
【0022】
なお、本発明のゴム組成物において、白色充填剤を使用する際、一般に表面処理剤として使用されるシランカップリング剤を用いなくても、エポキシ化共役ジエン系重合体は白色充填剤と反応する。従って、本発明のゴム組成物においては、シランカップリング剤を用いなくても、エポキシ化共役ジエン系重合体と白色充填剤とが化学結合を形成し、補強性が向上するうえ、白色充填剤の分散性も良くなり、良好な物性を与えることができる。
しかしながら、本発明のゴム組成物において、上記シランカップリング剤を使用することもできる。
【0023】
本発明のゴム組成物には、上記白色充填剤のほかに、SAF、ISAF、HAF、FEFなどのカーボンブラックを配合することにより、さらに補強効果が向上する。
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100重量部対し、5〜110重量部、好ましくは5〜90重量部である。5重量部未満では、カーボンブラックによる補強効果が小さく、一方110重量部を超えると、加工性と破壊特性が劣り好ましくない。
【0024】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて、ゴム工業で通常使用される配合剤、例えばイオウなどの加硫剤、加硫促進剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、上記以外の充填剤、などを適宜配合することができる。
【0025】
本発明のゴム組成物の調製は、通常の加工装置、例えばロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどで混練りすることにより得られる。
また、加硫は、130〜200℃の温度で所定時間行なう。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の%および部は、特に断らない限り、重量基準である。
また、実施例中の各種の測定は、下記に従った。
【0027】
エポキシ化率
一定量の重合体をクロロホルムに再溶解させ、この溶液に指示薬であるクリスタルバイオレット入りの臭化テトラエチルアンモニウム/酢酸溶液を一定量加え、1/10N−過塩素酸/酢酸溶液で滴定し、下記式よりエポキシ化率を求めた。
エポキシ当量=〔1,000×ゴムサンプル量(g)〕/〔1/10N−過塩素酸/酢酸溶液の滴定量(ml)〕
エポキシ化率=〔(70/エポキシ当量)×100〕/〔ゴムサンプル中の共役ジエン部分の含有率(%)/100〕
【0028】
ムーニー粘度(ML 1+4 ,100℃)
予熱1分、測定時間4分、温度100℃で測定した。
ガラス転移温度(Tg)
理学電機(株)製、低温DSC本体;CN8208A2型、低温DSC,DTA,UNIT;CN8059L2型、プログラム温度コントローラーPTC−10A型を用い、あらかじめ求めておいた検量線により算出した。
【0029】
ブタジエン部分のミクロ構造(ビニル結合含量)
赤外法(モレロ法)および 1H−NMR法によって求めた。
結合スチレン含量
699cm-1のフェニル基の吸収に基づいた赤外法により、あらかじめ求めておいた検量線により算出した。
【0030】
引張特性
JIS K6301に準拠した。
内部損失(tanδ)
メカニカルスペクトロメーター(レオメトリックス社製)を用い、各測定温度で測定した。
ランボーン摩耗指数
ランボーン摩耗試験機〔島田技研(株)製〕を用い、スリップ比60%、室温下で測定した。
【0031】
参考例
ポリマーA
攪拌機、ジャケット付きの内容積5リットルの反応器(オートクレーブ)をチッ素置換し、あらかじめ精製乾燥したシクロヘキサン2,500g、1,3−ブタジエン175g、スチレン175gおよびテトラヒドロフラン0.30gを仕込んだのち、n−ブチルリチウム0.4gを加えて、上昇温度下で約10分間重合を行い、重合転化率が80%に達した時点で、1,3−ブタジエンを150g添加し、10分間引き続き重合を行った。
次いで、反応器に、n−ブチルリチウム1モルあたり、1/8モルの四塩化ケイ素を添加し、15分間反応を行った。その後、n−ブチルリチウムの2倍当量のメタノールを加え反応させ、さらに老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100g(固形ゴム換算)に対して0.7g添加して、常法に従って脱溶乾燥を行った。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0032】
ポリマーB
攪拌機、ジャケット付きの内容積5リットルの反応器(オートクレーブ)をチッ素置換し、あらかじめ精製乾燥したシクロヘキサン2,500g、1,3−ブタジエン390g、スチレン100gおよびテトラヒドロフラン25gを仕込んだのち、n−ブチルリチウム0.3gを加えて、上昇温度下で約10分間重合を行い、重合転化率が95%に達した時点で、1,3−ブタジエンを10g添加し、10分間引き続き重合を行った。
次いで、反応器に、n−ブチルリチウム1モルあたり、1/5モルの四塩化ケイ素を添加し、15分間反応を行った。その後、n−ブチルリチウムの2倍当量のメタノールを加え反応させ、さらに老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100g(固形ゴム換算)に対して0.7g添加して、常法に従って脱溶乾燥を行った。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0033】
ポリマーC
攪拌機、ジャケット付きの内容積5リットルの反応器(オートクレーブ)をチッ素置換し、あらかじめ精製乾燥したシクロヘキサン2,500g、1,3−ブタジエン365g、スチレン125gおよびテトラヒドロフラン5.0gを仕込んだのち、n−ブチルリチウム0.33gを加えて、上昇温度下で約10分間重合を行い、重合転化率が95%に達した時点で、1,3−ブタジエンを10g添加し、10分間引き続き重合を行った。
次いで、反応器に、n−ブチルリチウム1モルあたり、1/8モルの四塩化ケイ素を添加し、15分間反応を行った。その後、n−ブチルリチウムの2倍当量のメタノールを加え反応させ、さらに老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100g(固形ゴム換算)に対して0.7g添加して、常法に従って脱溶乾燥を行った。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0034】
ポリマーD
攪拌機、ジャケット付きの内容積5リットルの反応器(オートクレーブ)をチッ素置換し、あらかじめ精製乾燥したシクロヘキサン2,500g、1,3−ブタジエン350g、スチレン75gおよびテトラヒドロフラン50gを仕込んだのち、n−ブチルリチウム0.28gを加えて、上昇温度下で約10分間重合を行い、重合転化率が95%、85℃に達した時点で、1,3−ブタジエンを75g添加し、10分間引き続き重合を行った。
次いで、反応器に、n−ブチルリチウム1モルあたり、1/8モルの四塩化ケイ素を添加し、15分間反応を行った。その後、n−ブチルリチウムの2倍当量のメタノールを加え反応させ、さらに老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100g(固形ゴム換算)に対して0.7g添加して、常法に従って脱溶乾燥を行った。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0035】
ポリマーE
攪拌機、ジャケット付きの内容積5リットルの反応器(オートクレーブ)をチッ素置換し、あらかじめ精製乾燥したシクロヘキサン2,500g、1,3−ブタジエン175g、スチレン175gおよびテトラヒドロフラン0.3gを仕込んだのち、n−ブチルリチウム0.28gを加えて、上昇温度下で約10分間重合を行い、重合転化率が80%、85℃に達した時点で、1,3−ブタジエンを150g添加し、10分間引き続き重合を行った。
次いで、反応器に、n−ブチルリチウム1モルあたり、1.9モルのジフェニルメタンジイソシアナートを添加し、15分間反応を行った。その後、n−ブチルリチウムの2倍当量のメタノールを加え反応させ、さらに老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールをゴム100g(固形ゴム換算)に対して0.7g添加して、常法に従って脱溶乾燥を行った。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0036】
ポリマーF
乾燥チッ素雰囲気下で、回転子入りの内容積100mlの耐圧ビンに、マグネチックスターラーで攪拌しながら、ジノニルフェノキシバリウム0.12mmolを添加し、トリエチルアルミニウム、n−ブチルリチウム、ジエチルアミノエタノールを1/4/5/2のモル触媒組成比、触媒添加順序で添加し、80℃で15分間予備反応して触媒調製を行った。
次に、乾燥チッ素雰囲気下で、内容積300mlの耐圧ビンに、シクロヘキサン175g、1,3−ブタジエン25gを添加した。これに、上記で調製した触媒組成物を全量添加し、70℃で90分間重合した。
反応終了後、老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールを固形ゴム換算で100gに対し0.7g添加し、メタノールで凝固したのち、40℃で減圧乾燥した。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
【0037】
実施例1
充分に乾燥した内容積5リットルのセパラブルフラスコに、トルエン3,000g、水76gおよびポリマーAを200g仕込み、80℃まで昇温したのち、タングステン酸4gと過酸化水素水16gを加え、1時間反応させた。その後、水2,000gを反応容器に加え、5分間攪拌し、1時間静置したのち、水層を取り除いた。
次いで、老化防止剤として、ジ−t−ブチル−p−クレゾールを、ゴム固形分100gに対し0.5g添加したのち、エタノール凝固を行い、100℃のロール上で乾燥させた。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0038】
実施例2
過酸化水素水を46g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0039】
実施例3
過酸化水素水を32g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0040】
比較例1
過酸化水素水を101g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0041】
比較例2
過酸化水素水を0.7g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0042】
実施例4
ポリマーBを200gおよび過酸化水素水を18g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0043】
実施例5
過酸化水素水を14g使用する以外は、実施例4と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0044】
実施例6
過酸化水素水を7g使用する以外は、実施例4と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0045】
実施例7
ポリマーCを200gおよび過酸化水素水を18g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0046】
実施例8
過酸化水素水を14g使用する以外は、実施例7と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0047】
実施例9
過酸化水素水を7g使用する以外は、実施例7と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0048】
実施例10
ポリマーDを200gおよび過酸化水素水を14g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0049】
実施例11
ポリマーEを200gおよび過酸化水素水を14g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0050】
実施例12
ポリマーFを10gおよび過酸化水素水を0.7g使用する以外は、実施例1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の特性を測定した結果を表1に示す。
得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0051】
比較例3〜8
ポリマーA〜Fを用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0052】
実施例13
実施例3で得られた重合体とSBRとを用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0053】
比較例9
実施例3で得られた重合体とSBRとを用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
比較例10
エポキシ化天然ゴムとSBRとを用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。
【0054】
実施例14
実施例1で得られた重合体を用い、表2に示す配合割合でゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の物性結果を表3に示す。ただし、本実施例では、充填剤として、シリカ(45部)のみを用いた例である。
【0055】
実施例1〜3は、比較例3に対し、破壊強度、耐摩耗性に優れ、かつ転がり抵抗性を損なうことなく、ウエットスキッド特性も向上し、ポリマーAの共役ジエン部分をエポキシ化すると、シリカに対する補強性が改良されることが分かる。
しかしながら、エポキシ化率が高すぎる比較例1では、配合ムーニー粘度が高く、加工性が困難となり、重合体自体の伸び(EB )も低下する。また、エポキシ化率が低すぎる比較例2では、シリカに対する補強性が充分に得られない結果となっている。同様に、実施例1〜3は比較例3に、実施例4〜6は比較例4に、実施例7〜9は比較例5に、実施例10は比較例6に、実施例11は比較例7に、実施例12は比較例8に対し、いずれの場合も、重合体中の共役ジエン部分をエポキシ化した方が、破壊強度、耐摩耗性およびウエットスキッド特性が優れていることが分かる。
【0056】
また、実施例13の結果が示すとおり、スチレン−ブタジエン共重合体100部中、エポキシ化した実施例3の重合体50部に置換すると、破壊強度、耐摩耗性、ウエットスキッド特性に優れたゴム組成物を与えることが分かる。しかしながら、比較例9では、エポキシ化した重合体の置換部数が少なすぎるため、充分な効果は得られなかった。また、比較例10では、実施例3の重合体の代わりに、25%エポキシ化した天然ゴムを用いたが、実施例13に較べて、改良効果は得られていない。一方、実施例14から明らかなように、シリカのみを充填剤として使用しても、破壊強度、耐摩耗性、ウエットスキッド特性が比較例3に較べて向上することが分かる。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
*1)日本シリカ工業(株)製、ニプシルAQ(商品名)
*2)N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン
*3)1,3−ジフェニルグアニジン
*4)N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド
【0060】
なお、表2において、ゴム組成物の調製方法、加硫条件は、下記のとおりである。
ゴム組成物調製方法;
250ccラボプラストミルで混練り配合を行なった。
加硫条件;
150℃で15〜40分間行なった。
【0061】
【表3】
【0062】
*1)結合スチレン含量35%、ビニル結合含量21%、四塩化スズで変性したスチレン−ブタジエン共重合体
*2)数値が大きいほど、ウエットスキッド特性が良好
*3)数値が小さいほど、転がり抵抗性が良好
*4)耐摩耗性は、比較例3を100とし、その数値が大きいほど良好
*5)エポキシ化天然ゴム(エポキシ化率25%)
*6)シリカ(45部)のみを充填剤に使用した加硫ゴム
【0063】
【発明の効果】
本発明のエポキシ化共役ジエン系重合体に白色充填剤を配合したゴム組成物は、従来のゴム組成物に較べて、破壊特性、反撥弾性、耐摩耗性に優れており、しかも取り扱いの面倒なシランカップリング剤を用いなくても充分に補強性が得られるため、生産性にも優れている。従って、本発明のゴム組成物は、タイヤ、工業用品などの好適である。
Claims (5)
- 有機リチウム化合物または有機バリウム化合物を開始剤とし、芳香族ビニル化合物0〜50重量%および共役ジエン100〜50重量%で構成された共役ジエン系重合体の共役ジエン部分の0.5〜20重量%がエポキシ化された共役ジエン系重合体であって、ムーニー粘度(ML1+4 ,100℃)が20〜200であるエポキシ化共役ジエン系重合体を少なくとも20重量部含むゴム成分100重量部に対し、シリカ、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの群から選ばれた少なくとも1種の白色充填剤10〜120重量部を配合してなる共役ジエン系重合体組成物。
- 共役ジエン系重合体中の芳香族ビニル化合物含量が5〜45重量%である請求項1記載の共役ジエン系重合体組成物。
- エポキシ化共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体をタングステン酸を触媒に過酸化水素で処理して得られたものである請求項1または2記載の共役ジエン系重合体組成物。
- シランカップリング剤を含まない請求項1〜3いずれかに記載の共役ジエン系重合体組成物。
- ゴム成分100重量部に対し、白色充填剤として、シリカを30〜80重量部配合してなる請求項1〜4いずれかに記載の共役ジエン系重合体組成物。
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