JP3658582B2 - 既設杭の撤去方法及び引上装置 - Google Patents

既設杭の撤去方法及び引上装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設杭の撤去方法及び引上装置に係り、特に、既設杭の長さ方向の一部を撤去する既設杭の撤去方法及び引上装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
地盤中にシールド工法によりトンネルを構築する場合、都市部などにおいては、シールドの通過予定路線途上に既設杭が埋まったまま残されている場合がある。この場合、シールドを通過させる前に、この既設杭を撤去しておく必要がある。
【0003】
既設杭の撤去方法としては、既設杭の側周の地盤を掘削して空中に露出させ撤去する方法や、既設杭より径の大きい鋼管等のケーシングを既設杭と同心となるように地盤中に埋設し、このケーシングを引き上げることにより、ケーシングと既設杭との間の土砂による摩擦抵抗を利用して既設杭をケーシングと一体に引き上げる方法、ケーシング内に水やベントナイト等を加えケーシング内の土砂を泥濘化することによって既設杭の引き上げの際の摩擦抵抗を軽減し、既設杭のみを引き上げる方法などがある。
この種の技術は、例えば特許文献1などに開示されている。
【0004】
これら各方法では、地盤中に埋没している既設杭の長さが長い場合、地盤の掘削深さや、ケーシングの打ち込み深さが長くなり、多大な労力や費用を要し、工期も長びく。
また、上記のようにシールドの通過予定路線途上の既設杭を撤去する場合、必ずしも既設杭全体を撤去する必要はなく、既設杭のうち、シールドの通過予定位置と干渉する部分のみを撤去すればよい。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−41960号公報(図1〜図3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、既設杭の撤去すべき部位が、既存杭の長さ方向途上の一部である場合、特に、この撤去すべき部位が地盤の表面より下方に位置する場合に、この既設杭の撤去に要する労力や費用を軽減できる、既設杭の撤去方法、及びこの既設杭の撤去方法に好適に使用できる既設杭の引上装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、例えば図1、図3に示すように、既設杭1,2の長さ方向の少なくとも一部を上方に移動して撤去する既設杭の撤去方法であって、
前記既設杭1,2を、その撤去すべき部位1R,2Rの下端の位置1Rb,2Rbで横断方向に切断してこの既設杭1,2を引抜部11,21と残置部12,22とに分断し、前記引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2、すなわち撤去すべき部位R1,R2の高さだけ移動させ
前記引抜部11,21を、その上端から前記撤去すべき部位1R,2Rの高さだけ下方の位置で切断すること
を特徴とする。
ここで、既設杭を引抜部と残置部とに分断するには、例えば、図1(b)に示すように、既存杭1の内部に穿設された貫通孔1Hに挿入したカッタ(図示せず)や、図3(d)に示すように、既存杭2とその側周を取り巻くケーシング71との間の空隙に挿入したワイヤソー82などによって、既存杭をその撤去すべき部位の下端の位置で切断するなどの方法を採る。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、既設杭を、その撤去すべき部位の下端の位置で横断方向に切断してこの既設杭を引抜部と残置部とに分断し、引抜部を地盤の上方へ所望の高さ、すなわち撤去すべき部位の高さだけ移動させ、引抜部を、その上端から撤去すべき部位の高さだけ下方の位置で切断するので、既存杭の撤去すべき部位以外の部位を地盤中に残して、撤去すべき部位のみを撤去することができる。
また、既設杭のうち引抜部のみを上方へ移動させるので、この引抜部を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが、既設杭全体を上方へ移動させる場合よりも小さくて済む。したがって、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭の撤去を簡便に行える。
特に、この撤去すべき部位が、既存杭の長さ方向途上の一部であって、かつ地盤の表面より下方に位置する場合、既存杭の撤去すべき部位とこれより上方の部位をともに撤去する場合よりも、撤去すべき部位の高さだけ上方に移動させる方が既存杭を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが小さくて済み、既存杭を撤去するための労力や費用を大幅に軽減できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1、図4に示すように、請求項1に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜部11,21を所定長p1,p2だけ地盤Gの上方へ移動させ、引抜部11,21をその上端11t,21tより前記所定長p1,p2だけ下方の位置11a,21aで横断方向に切断して短縮することを繰り返して、前記引抜部11,21を地盤Gの上方へ移動させること
を特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部を所定長だけ地盤の上方へ移動させ、引抜部をその上端よりこの所定長だけ下方の位置で横断方向に切断して短縮することを繰り返して、引抜部を地盤の上方へ移動させるので、引抜部を上方へ移動させる機械のストロークが短くて済む。
したがって、既設杭の上方の空間に制約があるような狭隘な箇所でも、既設杭の撤去すべき部位の撤去を行いやすい。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図4〜図7に示すように、請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜部21をその縦断方向に切断して複数の引抜ブロック21A〜21Hに分割し、各引抜ブロック21A〜21Hを順次地盤Gの上方へ移動させることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部をその縦断方向に切断して複数の引抜ブロックに分割するが、各引抜ブロックの重量やこれと周面の地盤との摩擦力は、引抜部全体の重量やこれと周面の地盤との摩擦力に対して、およそ上記分割数分の1である。つまり、これら引抜ブロックを順次地盤Gの上方へ移動させるのに必要な力は、引抜部全体を同時に地盤の上方へ移動させるのに必要な力に対して、およそ上記分割数分の1である。そして、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させるので、これら引抜ブロックの移動を行う機械(引上装置)は、引抜ブロックのうち一つを上方に移動させることができる出力を備えていれば良く、引抜部全体を同時に上方へ移動させる場合に比べて小型の機械を用いて、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
この効果は、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭の撤去を行う場合に、顕著に現れる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
前記既設杭1の内部に、この既設杭1の上端1tから前記残置部12の途中まで到達する貫通孔1Hを穿設し、この貫通孔にロッド3を挿入してその先端3aを前記残置部12内の前記貫通孔1Hの底面1Hbに当接させ、このロッド3に反力を負担させながら前記引抜部11を地盤Gの上方へ移動させること
を特徴とする。
ここで、引抜部11を地盤Gの上方へ移動させると、引抜部11と残置部12との間に空洞が形成され、空洞の内部でロッド3が露出する。このロッド3の座屈を防ぐ観点から、例えば図1に示すように、引抜部11を地盤Gの上方へ所定長移動させる毎に、この空洞に埋戻し土などの充填材4を充填することが好ましい。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、既設杭の内部に、この既設杭の上端から前記残置部の途中まで到達する貫通孔を穿設し、この貫通孔にロッドを挿入してその先端を残置部内の貫通孔の底面に当接させ、このロッドに反力を負担させながら引抜部を地盤の上方へ移動させるので、引抜部を地盤の上方へ移動させる時に、反力を負担させるための支持面を地盤の表面の既存杭の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図4,図7に示すように、請求項3に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜ブロック21A〜21Hの少なくとも一つ21A,21C,21Eに反力を負担させながら他の少なくとも一つの引抜ブロック21Gを地盤Gの上方へ移動させることを繰り返して、各引抜ブロック21A〜21Hを順次地盤Gの上方へ移動させること
を特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜ブロックの少なくとも一つに反力を負担させながら他の少なくとも一つの引抜ブロックを地盤の上方へ移動させることを繰り返して、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させるので、各引抜ブロックを引き上げる時に、反力を負担させるための支持面を地盤の表面の既存杭の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図2、図3に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜部11,21を地盤Gの上方へ移動させる時、この引抜部11,21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を絶つか又は低減させておくこと
を特徴とする。
ここで、引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を絶つためには、例えば図4に示すように、既設杭2の引抜部21の側周を覆うように、地盤中にケーシング71を挿入するなどの方法を採る。
また、引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を低減させるためには、例えば図2に示すように、既設杭1の引抜部11の側周の地盤中に、滑材62などの摩擦減少剤を注入するなどの方法を採る。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部を地盤の上方へ移動させる時、この引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を絶つか又は低減させておくので、引抜部を地盤Gの上方に移動させる機械の出力が小さくて済み、使用するエネルギーも低減できる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図1,図3に示すように、請求項1〜6のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜部11,21が上方に移動することによって形成される空洞Vに、充填材(高流動性土)4を充填すること
を特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部が上方に移動することによって形成される空洞に、充填材を充填するので、地盤の上方へ移動された引抜部が、この充填材に載置されて支持される。したがって、引抜部を地盤中の一定の高さに安定させることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
前記引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2だけ移動させた後、この引抜部11,21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にすること
を特徴とする。
ここで、引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を所定値以上にするには、例えば、既設杭の引抜部の側周の地盤中に、セメントミルクなどの摩擦増加剤を注入するなどの方法を採る。
また、請求項6に記載のように、引抜部を地盤の上方へ移動させる時、この引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を絶つか又は低減させていた場合、引抜部を地盤の上方へ移動させた後でこの引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を所定値以上にするには、以下のような方法を採る。
まず、図4に示すように、既設杭2の引抜部21の側周を覆うように地盤中にケーシング71を挿入して、引抜部21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を絶っていた場合には、このケーシング71を除去し、既設杭2の引抜部21とケーシング71との間に形成されていた空隙に例えば高流動性土を充填した後、この充填部分にセメントミルクを注入したりするなどして、引抜部21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にする。
また、図2に示すように、既設杭1の引抜部11の側周の地盤中に滑材62などの摩擦減少剤を注入して、引抜部11とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を絶っていた場合には、この滑材62として、時間が経過すると硬化するものを用いれば、引抜部11を地盤Gの上方へ移動させた後で格別な処理をすることなく、引抜部11とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にできる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2だけ移動させた後、この引抜部11,21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にするので、地盤Gの上方へ移動された引抜部11,21が、この摩擦力によって地盤G中の一定の高さに安定する。
【0023】
請求項9に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項4に記載の既設杭の撤去方法において用いられる既設杭の引上装置5であって、
前記ロッド3を押し引き可能なロッド押引手段(ジャッキ)51と、
前記ロッド押引手段51に取り付けられ、このロッド押引手段51の側方を所定間隔で取り囲む複数本の引抜部押引手段(ジャッキ)52と、
前記各引抜部押引手段52によって前記ロッド3と平行に押し引きされるアーム53と、
前記各アーム53の先端に取り付けられ、前記引抜部11の側面を挟み込んで挟持可能な挟持手段(チャック)53aと
を備え
前記既設杭1の内部に穿設されて、この既設杭1の上端から前記残置部12の途中まで到達する貫通孔1Hに、前記ロッド3を挿入してその先端を前記残置部12内の前記貫通孔1Hの底面1Hbに当接させ、前記ロッド3に反力を負担させながら前記引抜部11を地盤Gの上方へ移動させることを特徴とする。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0025】
請求項10に記載の発明は、例えば図4,図7に示すように、請求項5に記載の既設杭の撤去方法において用いられる既設杭の引上装置9であって、
前記各引抜ブロック21A〜21Hを押し引き可能なブロック押引手段(ジャッキ)91〜94が、2本以上備えられ、
前記各ブロック押引手段91〜94は、それぞれに連結された前記引抜ブロック21A〜21Hを、互いに独立な動作で同時に押し引き可能な状態に、互いに平行に固定されていること
を特徴とする。
【0026】
請求項10に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の既設杭の撤去方法の実施の形態を、図面を参照して説明する。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態に記載の既設杭の撤去方法は、ともに、既設杭の長さ方向の一部を上方に移動して撤去する既設杭の撤去方法であって、図1、図3に示すように、既設杭1,2を、その撤去すべき部位1R,2Rの下端の位置1Rb,2Rbで横断方向に切断してこの既設杭1,2を引抜部11,21と残置部12,22とに分断し、前記引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2だけ移動させるものである。
【0028】
〔第1の実施の形態〕
図1(a)〜(i)は、本実施の形態の既設杭の撤去方法の手順を示す縦断面図である。図2(a)〜図2(d)は、本実施の形態で、既設杭1の引抜部11の側周の地盤との間の摩擦力を低減させる手順を示す縦断面図であり、図2(e)は、図2(d)におけるA−A断面図である。
【0029】
[1] 図1(a)に示すように、既設杭1のうち、シールド通過予定断面Sと干渉する部位を含むように、撤去すべき部位1Rを設定する。この撤去すべき部位の下端1Rbより上方が、引抜部11となる。そして、図2(a)〜図2(d)に示すように、既設杭1の引抜部11の側周の地盤G中に注入ロッド61を挿入し、これに高圧ポンプ6から滑材52を送り込んで、注入ロッド61に設けられた噴射口から滑材62を噴射する。これにより、図2(e)に示すように、引抜部11の側周で地盤Gの土と滑材62とが混合し、引抜部11とその側周の地盤Gとの摩擦力が低減される。
ここで、滑材62としては、時間が経過すると硬化するものを用いる。
この後、以下に示す手順で、既設杭1の引抜部11を地盤Gの上方へ高さh1だけ移動させる。
【0030】
[2] 図1(b)に示すように、既設杭1の内部に、その上端1tから撤去すべき部位1Rの下の残置部12の途中まで到達するように、貫通孔1Hを穿設する。そして、この貫通孔1Hに、カッタ(図示せず)を挿入し、既設杭1をその撤去すべき部位1Rの下端の位置1Rbで横断方向に切断して、引抜部11と残置部12とに分断する。
【0031】
[3] 図1(c)に示すように、貫通孔1Hにロッド3を挿入し、その先端3aを残置部12内の貫通孔1Hの底面1Hbに当接させる。そして、引抜部11とロッド3との上方に、既設杭の引上装置5を設置する。
既設杭の引上装置5は、ロッド3を押し引きするジャッキ(ロッド押引手段)51と、このジャッキ51を取り囲むように四方に等間隔で配置された4本のジャッキ(引抜部押引手段)52とが互いに連結されて、概略構成されたものである。ジャッキ52は、先端にチャック(挟持手段)53aが備えられたアーム53を押し引きする。そして、対向する2本のアーム53のチャック53aは、その間に引抜部11の側面を挟みこんで、引抜部11を挟持できるようになっている。ここでは、4本のアーム53全てのチャック53aで、引抜部11の上端11t直下の側面を挟みこんでおく。
【0032】
[4] この状態で、ジャッキ52を停止したまま、ジャッキ51でロッド3を長さp1だけ押し出す。このとき、図1(d)に示すように、引抜部11の荷重と、既設杭の引上装置5の荷重と、引抜部11と地盤Gとの間の摩擦力との合力がロッド3にかかり、この力でロッド3の先端部3aが残置部12を押し付ける。また、その反力によって、既設杭の引上装置5とそのチャック53aに挟持された引抜部11とが、高さp1だけ上昇する。また、このとき、引抜部11と残置部12とが互いに離隔され、その間に空洞Vが形成される。そこで、引抜部11を上昇させながら、貫通孔1Hの内周面とロッド3の外周面との隙間から、空洞V内に高流動性土(充填材)4を充填する。
【0033】
[5] 次に、引抜部11の上端の側面を挟持する4つのチャック53aのうち、引抜部11を間に挟んで対向する一対(2つ)のチャック53aを解放して、このチャック53aが備えられたアーム53をジャッキ52で長さp1だけ下方へ伸ばし、再びこのチャック53aで引抜部11の側面を挟み込む。この状態で、他の一対(2つ)のチャック53aを解放し、同様にこのチャック53aが備えられたアーム53をジャッキ52で長さp1だけ下方へ伸ばし、再びこのチャック53aで引抜部11の側面を挟み込む。これで、4つのチャック53aが、引抜部11の上端11tより高さp1だけ下方の位置11a直下の側面を挟持する状態になる。
【0034】
[6] この状態で、図1(e)に示すように、上記の位置11aで引抜部11を横断方向に切断して、引抜部11を長さp1だけ短縮する。
そして、図(f)に示すように、ジャッキ51とジャッキ52とを同時に動作させて、ロッド3とアーム53を長さp1だけ引き込み、既設杭の引上装置5を高さp1だけ下降させる。
【0035】
[7] この後、図1(g)、図1(h)に示すように、上記[4]〜[6]と同様の工程をもう一度繰り返す。すると、引抜部11がさらに長さp1だけ地盤Gの上方へ移動され、引抜部11の上端11tから高さp1だけ下方の位置11aで引抜部11が横断方向に切断され、引抜部11が長さp1だけさらに短縮される。また、引抜部11がさらに上昇したことにより拡大した空洞部Vに、高流動性土4が充填される。これで、引抜部11が地盤の上方へ高さh1だけ移動された状態となる。
【0036】
[8] この状態で時間を経過させ、滑材62が硬化するのを待ち、引抜部11との側周の地盤Gとの間の摩擦力が所定値以上になるようにする。そして、引上装置5とロッド3とを撤去し、図1(i)に示すように、引抜部11のうち地盤Gの表面から突出して残った部分を必要に応じて切断し除去する。
【0037】
〔第2の実施の形態〕
図3(a)〜図3(e)は、本実施の形態の既設杭の撤去方法の手順を示す縦断面図である。図4は、本実施の形態における、既設杭2の引抜部21の上端21t及び既設杭の引上装置9の詳細を示す縦断面図である。図5、図6はそれぞれ、図4におけるA−A矢視図、B−B断面図である。図7は、既設杭の引上装置9によって、後述する引抜ブロック21Gが上昇された状況を示す縦断面図である。
本実施の形態について、第1の実施の形態と同様の事項については、その記載の一部を省略する。
【0038】
[1] まず、図3(a)に示すように、既設杭2のうち、シールド通過予定断面Sと干渉する部位を含むように、撤去すべき部位2Rを設定する。この撤去すべき部位の下端2Rbより上方が、引抜部21となる。そして、図3(b)、図3(c)に示すように、既設杭2の引抜部21の側周を覆うように、地盤G中に全周回転オールケーシング機7でケーシング71を挿入する。そして、既設杭2の引抜部21とケーシング71との間に水やベントナイト等を加えて、ケーシング71内の土砂を泥濘化し、これをポンプで吸い上げて除去する。これで、引抜部21とその側周の地盤Gとの摩擦力が絶たれた状態となる。
【0039】
[2] 図3(d)に示すように、引抜部21の側面とケーシング71との間の空隙に、ワイヤソー82を挿入する。そして、ワイヤソー機8の駆動部81を駆動させ、ワイヤソー82で既設杭1を撤去すべき部位1Rの下端の位置1Rbで横断方向に切断して、引抜部21と残置部22とに分断する。
【0040】
[3] 次に、図3(e)に示すように、引抜部21を後述する引上装置9で地盤Gの上方へ高さh2だけ移動させる。引抜部21が上昇することによって、引抜部21と残置部22との間に形成される空洞Vには、が形成される。そこで、引抜部11を上昇させながら、引抜部21の側面とケーシング71との間の空隙から、高流動性土(充填材)4を充填する。
ここで、[3]において、引抜部21を既設杭の引上装置9で地盤Gの上方へ移動させる方法について、以下に詳述する。
【0041】
[3−1] ワイヤソー82で、既設杭1を引抜部21と残置部22とに分断したら、図6に示すように、引抜部21を、その縦断方向に切断して、8つの引抜ブロック21A〜21Hに分割する。
【0042】
[3−2] 図4に示すように、各引抜ブロック21A〜21Hの上端部に貫通孔2Hを穿設する。そして、各貫通孔2Hに、異形PC鋼棒96を挿入した状態で、貫通孔2H内に早強セメントモルタルを充填して硬化させ、異形PC鋼棒96を各引抜ブロック21A〜21Hに固定する。
【0043】
[3−3] そして、引抜部2(すなわち引抜ブロック21A〜21H)の上方に、既設杭の引上装置9を設置する。
既設杭の引上装置9は、図4〜図6に示すように、8つの引抜ブロック21A〜21Hにそれぞれ固定された異形PC鋼棒96のうち4本を押し引き可能なジャッキ(ブロック押引手段)91〜94が、十字枠90で互いに連結されて、概略構成されたものである。各ジャッキ91〜94のシリンダ91a〜94aの先端部には、チャック(図示せず)が設けられ、このチャックで異形PC鋼棒96の先端を挟持し、引抜ブロック21A〜21Hを押し引き可能になっている。図4、図5は、引抜ブロック21A,21C,21E,21Gに固定された異形PC鋼棒96が、既設杭の引上装置9のジャッキ91〜94のシリンダ91a〜94aに挟持された状態を示している。
【0044】
[3−4] この状態で、図7に示すように、ジャッキ91〜93を停止したまま、ジャッキ94で引抜ブロック21Gを高さp2だけ引き上げる。このとき、引抜ブロック7の荷重と、既設杭の引上装置9との荷重と、引抜ブロック7と地盤Gとの間の摩擦力との合力が、3つの引抜ブロック21A,21C,21Eによって負担される。また、このとき、引抜ブロック21Gと残置部22とが互いに離隔され、その間に空洞Vが形成される。そこで、引抜ブロック21Gを上昇させながら、引抜部21の側面とケーシング71との間の空隙から、空洞V内に高流動性土(充填材)4を充填する。
【0045】
[3−5] 上記[3−4]と同様に、他の3つの引抜ブロック21A,21C,21Eを順次上昇させ、そのとき拡大する上記空洞V内に高流動性土4を充填する。このとき、反力を負担する引抜ブロックの下方にすでに充填されている高流動性土が締め固められる。
【0046】
[3−6] 既設杭の引上装置9をクレーンで吊りながら、各シリンダ91a〜94aのチャックを解放し、引抜ブロック21A,21C,21E,21Gを引抜ブロック21A,21C,21E,21Gから取り外す。
そして、既設杭の引上装置9を45度回転させ、各シリンダ91a〜94aのチャックで、引抜ブロック21B,21D,21F,21Hに固定された異形PC鋼棒96にそれぞれ挟持する。そして、各ジャッキ91〜94のシリンダ91a〜94aを、図4に示すような元の位置に伸ばしておく。
そして、[3−4]、[3−5]と同様の工程を、引抜ブロック21B,21D,21F,21Hについて行う。これで、引抜ブロック21A〜21Hの全て(すなわち引抜部21全体)が、高さp2だけ地盤の上方へ移動されたことになる。この状態で、引抜部21の上端21tより高さp2だけ下方の位置21aで、引抜部21を横断方向に切断して、引抜部21を長さp2だけ短縮する。
【0047】
[3−7] 引抜部21が当初の位置から地盤Gの上方へ高さh2だけ移動されるまで、上記[3−2]〜[3−6]の工程を繰り返す。このとき、引抜部21が高さp2ずつ地盤Gの上方へ移動されるとともに、引抜部21がその上端21tから高さp2だけ下方の位置21aで切断されて長さp2ずつ短縮されていく。引抜部21(引抜ブロック21A〜21H)がさらに上昇することにより拡大する空洞部Vには、逐次高流動性土4を充填するようにする。
【0048】
[4] この状態で、ケーシング71を撤去し、既設杭2の引抜部21とケーシング71との間に形成されていた空隙に高流動性土を充填した後、この充填部分にセメントミルクを注入して、引抜部21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にする。
【0049】
上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態に記載の既存杭の撤去方法によれば、既設杭1,2を、その撤去すべき部位1R,2Rの下端の位置1Rb,2Rbで横断方向に切断してこの既設杭1,2を引抜部11,21と残置部12,22とに分断し、引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2だけ移動させるので、既存杭1,2の撤去すべき部位1R,2R以外の部位を地盤G中に残して、撤去すべき部位1R,2Rのみを撤去することができる。
また、既設杭1,2のうち引抜部11,21のみを上方へ移動させるので、この引抜部11,21を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが、既設杭1,2全体を上方へ移動させる場合よりも小さくて済む。したがって、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭の撤去を簡便に行える。
特に、この撤去すべき部位1R,2Rが、既存杭1,2の長さ方向途上の一部であって、かつ地盤Gの表面より下方に位置しているので、既存杭1,2の撤去すべき部位1R,2Rとこれより上方の部位をともに撤去する場合よりも、既存杭1,2を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが小さくて済み、既存杭1,2を撤去するための労力や費用を大幅に軽減できる。
【0050】
また、引抜部11,21を所定長p1,p2だけ地盤Gの上方へ移動させ、引抜部11,21をその上端11t,21tよりこの所定長p1,p2だけ下方の位置11a,21aで横断方向に切断して短縮することを繰り返して、引抜部11,21を地盤Gの上方へ移動させるので、引抜部11,21を上方へ移動させる引上装置4,9のストロークが短くて済む。
したがって、既設杭1,2の上方の空間に制約があるような狭隘な箇所でも、既設杭1,2の撤去すべき部位1R、2Rの撤去を行いやすい。
【0051】
また、引抜部11,21を地盤Gの上方へ移動させる時、この引抜部11,21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を絶つか又は低減させておくので、引抜部11,21を地盤Gの上方に移動させる引上装置4,9の出力が小さくて済み、使用するエネルギーも低減できる。
【0052】
また、引抜部11,21が上方に移動することによって形成される空洞Vに、高流動性土4を充填するので、地盤Gの上方へ移動された引抜部11,21が、この充填材に載置されて支持される。したがって、引抜部11,21を地盤G中の一定の高さに安定させることができる。
【0053】
また、第1の実施の形態に記載の既設杭の撤去方法によれば、引抜部11とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を低減させるために、既設杭1の引抜部11の側周の地盤中に注入する滑材62として、時間が経過すると硬化するものを用いているので、引抜部11を地盤Gの上方へ移動させた後で、時間が経過するにつれて、この引抜部11とその側周の地盤Gとの間の摩擦力が所定値以上になり、地盤Gの上方へ移動された引抜部11が、この摩擦力によって地盤G中の一定の高さに安定する。
【0054】
また、第1の実施の形態に記載の既設杭の撤去方法、及び既設杭の引上装置5によれば、既設杭1の内部に、この既設杭1の上端1tから前記残置部12の途中まで到達する貫通孔1Hを穿設し、この貫通孔1Hにロッド3を挿入してその先端3aを残置部12内の貫通孔1Hの底面1Hbに当接させ、このロッド3に反力を負担させながら引抜部11を地盤Gの上方へ移動させるので、引抜部11を地盤Gの上方へ移動させる時に、反力を負担させるための支持面を地盤Gの表面の既存杭1の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭1の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部11を地盤Gの上方へ移動させることができる。
【0055】
また、第2の実施の形態に記載の既設杭の撤去方法によれば、引抜部21をその縦断方向に切断して複数の引抜ブロック21A〜21Hに分割するが、各引抜ブロック21A〜21Hの重量やこれと周面の地盤との摩擦力は、引抜部全体の重量やこれと周面の地盤との摩擦力に対して、およそ上記分割数分の1である。つまり、これら引抜ブロック21A〜21Hを順次地盤Gの上方へ移動させるのに必要な力は、引抜部21全体を同時に地盤Gの上方へ移動させるのに必要な力に対して、およそ上記分割数分の1である。そして、各引抜ブロック21A〜21Hを順次地盤Gの上方へ移動させるので、これら引抜ブロック21A〜21Hの移動を行う引上装置9は、引抜ブロック21A〜21Hのうち一つを上方に移動させることができる出力を備えていれば良く、引抜部21全体を同時に上方へ移動させる場合に比べて小型の引上装置を用いて、引抜部21を地盤Gの上方へ移動させることができる。
また、既設杭2が、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭である場合、上記の効果が、顕著に現れる。
【0056】
また、引抜部21を地盤Gの上方へ移動させた後で、このケーシング71を除去し、既設杭2の引抜部21とケーシング71との間に形成されていた空隙に高流動性土を充填した後、この充填部分にセメントミルクを注入するので、引抜部21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力が所定値以上になり、地盤Gの上方へ移動された引抜部21が、この摩擦力によって地盤G中の一定の高さに安定する。
【0057】
また、第2の実施の形態に記載の既設杭の撤去方法、及び既設杭の引上装置9によれば、引抜ブロック21A〜21Hの少なくとも一つ21A,21C,21Eに反力を負担させながら他の少なくとも一つの引抜ブロック21Gを地盤Gの上方へ移動させることを繰り返して、各引抜ブロック21A〜21Hを順次地盤Gの上方へ移動させるので、各引抜ブロック21A〜21Hを引き上げる時に、反力を負担させるための支持面を地盤Gの表面の既存杭1の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭2の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部21を地盤Gの上方へ移動させることができる。
【0058】
なお、本発明の既設杭の撤去方法は、上記の実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、上記各実施の形態では、既存杭1,2のうち、その長さ方向の一部であって、かつ地盤Gの表面より下方に位置する部位1R,2Rのみを撤去しているが、本発明によれば、既存杭のうち、その長さ方向の任意の部位を撤去することが可能である。
その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0059】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、既設杭を、その撤去すべき部位の下端の位置で横断方向に切断してこの既設杭を引抜部と残置部とに分断し、引抜部を地盤の上方へ所望の高さ、すなわち撤去すべき部位の高さだけ移動させ、引抜部を、その上端から撤去すべき部位の高さだけ下方の位置で切断するので、既存杭の撤去すべき部位以外の部位を地盤中に残して、撤去すべき部位のみを撤去することができる。
また、既設杭のうち引抜部のみを上方へ移動させるので、この引抜部を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが、既設杭全体を上方へ移動させる場合よりも小さくて済む。したがって、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭の撤去を簡便に行える。
特に、この撤去すべき部位が、既存杭の長さ方向途上の一部であって、かつ地盤の表面より下方に位置する場合、既存杭の撤去すべき部位とこれより上方の部位をともに撤去する場合よりも、撤去すべき部位の高さだけ上方に移動させる方が既存杭を上方へ移動させるのに必要な力やエネルギーが小さくて済み、既存杭を撤去するための労力や費用を大幅に軽減できる。
【0060】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部を所定長だけ地盤の上方へ移動させ、引抜部をその上端よりこの所定長だけ下方の位置で横断方向に切断して短縮することを繰り返して、引抜部を地盤の上方へ移動させるので、引抜部を上方へ移動させる機械のストロークが短くて済む。
したがって、既設杭の上方の空間に制約があるような狭隘な箇所でも、既設杭の撤去すべき部位の撤去を行いやすい。
【0061】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部をその縦断方向に切断して複数の引抜ブロックに分割するが、各引抜ブロックの重量やこれと周面の地盤との摩擦力は、引抜部全体の重量やこれと周面の地盤との摩擦力に対して、およそ上記分割数分の1である。つまり、これら引抜ブロックを順次地盤Gの上方へ移動させるのに必要な力は、引抜部全体を同時に地盤の上方へ移動させるのに必要な力に対して、およそ上記分割数分の1である。そして、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させるので、これら引抜ブロックの移動を行う機械(引上装置)は、引抜ブロックのうち一つを上方に移動させることができる出力を備えていれば良く、引抜部全体を同時に上方へ移動させる場合に比べて小型の機械を用いて、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
この効果は、比較的径が大きい場所打ちコンクリート杭の撤去を行う場合に、顕著に現れる。
【0062】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、既設杭の内部に、この既設杭の上端から前記残置部の途中まで到達する貫通孔を穿設し、この貫通孔にロッドを挿入してその先端を残置部内の貫通孔の底面に当接させ、このロッドに反力を負担させながら引抜部を地盤の上方へ移動させるので、引抜部を地盤の上方へ移動させる時に、反力を負担させるための支持面を地盤の表面の既存杭の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
【0063】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜ブロックの少なくとも一つに反力を負担させながら他の少なくとも一つの引抜ブロックを地盤の上方へ移動させることを繰り返して、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させるので、各引抜ブロックを引き上げる時に、反力を負担させるための支持面を地盤の表面の既存杭の側周部などに確保する必要がない。
したがって、既設杭の側周部に作業余地が確保できない狭隘な箇所でも、引抜部を地盤の上方へ移動させることができる。
【0064】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部を地盤の上方へ移動させる時、この引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を絶つか又は低減させておくので、引抜部を地盤Gの上方に移動させる機械の出力が小さくて済み、使用するエネルギーも低減できる。
【0065】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部が上方に移動することによって形成される空洞に、充填材を充填するので、地盤の上方へ移動された引抜部が、この充填材に載置されて支持される。したがって、引抜部を地盤中の一定の高さに安定させることができる。
【0066】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、引抜部11,21を地盤Gの上方へ所望の高さh1,h2だけ移動させた後、この引抜部11,21とその側周の地盤Gとの間の摩擦力を所定値以上にするので、地盤Gの上方へ移動された引抜部11,21が、この摩擦力によって地盤G中の一定の高さに安定する。
【0067】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0068】
請求項10に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の既設杭の撤去方法の一例の手順を示す縦断面図である。
【図2】上記例における、引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を低減させる手順を示す図である。
【図3】本発明の既設杭の撤去方法の他の一例の手順を示す縦断面図である。
【図4】上記例における、引抜部の上端及び引上装置の詳細を示す縦断面図である。
【図5】図4におけるA−A矢視図である。
【図6】図4におけるB−B断面図である。
【図7】上記例における、引抜ブロックの上昇状況を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1,2 既設杭
1H 貫通孔
1R,2R (既設杭の)撤去すべき部分
1Rb,2Rb (撤去すべき部分の)下端の位置
1h,2h (引抜部の)上昇高さ
3 ロッド
4 充填材(高流動性土)
5,9 既設杭の引上装置
11,21 引抜部
12,22 残置部
21A〜21H 引抜ブロック
51 ロッド押引手段(ジャッキ)
52 引抜部押引手段(ジャッキ)
53 アーム
53a 挟持手段(チャック)
91〜94 ブロック押引手段(ジャッキ)
G 地盤
V 空洞

Claims (10)

  1. 既設杭の長さ方向の少なくとも一部を上方に移動して撤去する既設杭の撤去方法であって、
    前記既設杭を、その撤去すべき部位の下端の位置で横断方向に切断してこの既設杭を引抜部と残置部とに分断し、前記引抜部を地盤の上方へ撤去すべき部位の高さだけ移動させ
    前記引抜部を、その上端から前記撤去すべき部位の高さだけ下方の位置で切断すること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  2. 請求項1に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜部を所定長だけ地盤の上方へ移動させ、引抜部をその上端より前記所定長だけ下方の位置で横断方向に切断して短縮することを繰り返して、前記引抜部を地盤の上方へ移動させること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  3. 請求項1又は2に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜部をその縦断方向に切断して複数の引抜ブロックに分割し、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記既設杭の内部に、この既設杭の上端から前記残置部の途中まで到達する貫通孔を穿設し、この貫通孔にロッドを挿入してその先端を前記残置部内の前記貫通孔の底面に当接させ、このロッドに反力を負担させながら前記引抜部を地盤の上方へ移動させること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  5. 請求項3に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜ブロックの少なくとも一つに反力を負担させながら他の少なくとも一つの引抜ブロックを地盤の上方へ移動させることを繰り返して、各引抜ブロックを順次地盤の上方へ移動させること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜部を地盤の上方へ移動させる時、この引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を絶つか又は低減させておくこと
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜部が上方に移動することによって形成される空洞に、充填材を詰めること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の既設杭の撤去方法において、
    前記引抜部を地盤の上方へ所望の高さだけ移動させた後、この引抜部とその側周の地盤との間の摩擦力を高めること
    を特徴とする既設杭の撤去方法。
  9. 請求項4に記載の既設杭の撤去方法において用いられる既設杭の引上装置であって、
    前記ロッドを押し引き可能なロッド押引手段と、
    前記ロッド押引手段に取り付けられ、このロッド押引手段の側方を所定間隔で取り囲む複数本の引抜部押引手段と、
    前記各引抜部押引手段によって前記ロッドと平行に押し引きされるアームと、
    前記各アームの先端に取り付けられ、前記引抜部の側面を挟み込んで挟持可能な挟持手段と
    を備え
    前記既設杭の内部に穿設されて、この既設杭の上端から前記残置部の途中まで到達する貫通孔に、前記ロッドを挿入してその先端を前記残置部内の前記貫通孔の底面に当接させ、前記ロッドに反力を負担させながら前記引抜部を地盤の上方へ移動させることを特徴とする既設杭の引上装置。
  10. 請求項5に記載の既設杭の撤去方法において用いられる既設杭の引上装置であって、
    前記各引抜ブロックを押し引き可能なブロック押引手段が、2本以上備えられ、
    前記各ブロック押引手段は、それぞれに連結された前記引抜ブロックを、互いに独立な動作で同時に押し引き可能な状態に、互いに平行に固定されていることを特徴とする既設杭の引上装置。
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