JP3658571B2 - 冷凍装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば空気調和機や冷蔵庫等に組み込まれる冷凍装置に係り、特に最も有力な代替冷媒とされているハイドロフルオロカーボン系の冷媒を使用する冷凍装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
オゾン層の破壊に繋がるフロンの使用が規制されるとともにオゾン層を破壊しないハイドロフルオロカーボン系の冷媒を使用した冷凍装置の開発が早急に必要とされている。冷凍装置は、蒸発、圧縮、凝縮、膨脹の4つの作用からなる冷凍サイクルが組込まれた空気調和機や冷蔵庫等に代表される。冷凍サイクルにおいて、冷媒は液体から気体へ、気体から液体へ変化を繰り返しながら循環している。また、冷凍機油は冷媒を圧縮する圧縮機構において必須の要素となっている。
【0003】
従来の冷凍サイクル内における冷媒圧縮機を図1をもとに説明する。図1は密閉型回転式圧縮機の例を示す。密閉されたケーシング1内にステータ2とロータ3とで構成されるモータ機構4が設置されている。またモータ機構4の下部に圧縮機構5を設け、シャフト8を介してモータ機構4により圧縮機構5を駆動する。圧縮機構5によって、図示しないアキュームレータを介して供給管6から導入された冷媒を圧縮し、ケーシング1内に一旦吐出させた後、ケーシング1の上部に設けられた吐出管7から冷凍機側に冷媒を供給する。なお、圧縮機構5を潤滑するために冷凍機油20が収容されている。図1において、9は軸受け、10はシリンダ、11はサブベアリング、12はクランク、13はローラ、14はブレード、15はスプリングを表す。図2は密閉型往復運動式冷媒圧縮機であり、密閉型回転式圧縮機とともに冷凍装置に多用されている。圧縮機構5はピストン16と往復運動式用シリンダ17によって構成され、冷凍機油20によって潤滑されている。
【0004】
冷媒圧縮機で圧縮された冷媒は冷凍サイクル内を循環する。冷蔵庫を例にとり、冷凍サイクルを図3により説明する。冷媒は圧縮機構である圧縮機23により圧縮され、凝縮機構である受台パイプ24、放熱パイプ25、クリーンパイプ26を通り冷却され、膨脹機構であるキャピラリーチューブ21を通り膨脹し、蒸発機構である蒸発器22において蒸発し、冷蔵庫27内を冷却する。その後再び圧縮機23で圧縮される。
【0005】
従来、このような密閉型冷凍サイクルの冷媒としては、ジクロロジフルオロエタン(以下、CFC12と称する)やモノクロロジフルオロメタン(以下、HCFC22と称する)が主に用いられており冷凍サイクル内を循環している。また圧縮機23の潤滑性を保つために封入される冷凍機油としては、CFC12やHCFC22 に対して溶解性を示すナフテン系やパラフィン系鉱油が用いられている。
【0006】
しかしながら、最近上記冷媒(CFC12)等のフロン放出がオゾン層の破壊に繋がり、人体や生物系に深刻な影響を与えることがはっきりしてきたため、オゾン破壊係数(CFC12の場合は1.0)の高いCFC12等は段階的に使用が削減され、将来的には使用しない方向に決定している。このような状況下にあって、CFC12の代替冷媒として、塩素を含有しないフロンとして 1,1,1,2-テトラフルオロエタン(以下、HFC134aと称する)や1,1-ジフルオロエタン(以下、HFC152aと称する)等のハイドロフルオロカーボン系の冷媒が開発されており、この冷媒に適した冷凍機油の開発が望まれている。ここで、冷凍機油の必要な特性として、サイクル内の油戻りなどから冷媒との相溶性が挙げられる。HFC134a等は、従来の冷凍機油である鉱油にはほとんど溶解しないため、溶解性を示すポリエステル系油、ポリエーテル系油、ふっ素系油などの合成油の使用が試みられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリエステル系油などの合成油とハイドロフルオロカーボン系の冷媒は、それぞれの分子構造中に極性基を有するため、従来の冷媒や非極性である冷凍機油に比較して溶解特性が全く異なる。図4にハイドロフルオロカーボンと脂肪族化合物のうち非極性物質であるパラフィン系炭化水素との溶解性を示す。図4によると、従来の冷媒であるCFC12やHCFC22では溶解度が比較的高いのに対し、HFC134aでは溶解度が極めて低くなっていることがわかる。また図5に冷凍機油とパラフィン系炭化水素との溶解性を示す。図5によると、従来の冷凍機油である鉱物油ではパラフィン系炭化水素との溶解度が高いのに対してポリエステル系油では溶解度が極めて低くなっていることがわかる。したがって、ポリエステル系油等の合成油とハイドロフルオロカーボン系の冷媒を使用する冷凍サイクル内に溶解度の低い脂肪族化合物が存在すると、冷媒や油とともに冷凍サイクル内に沈殿物となって運ばれることになる。
【0008】
これらが原因となって生成した物質(以下、デポジットと称す)は、圧縮された冷媒とともに図3に示すサイクル内を循環し、極めて内径の小さい(例えばφ1.0mm以下)キャピラリーチューブ21内に堆積するという問題がある。このキャピラリーチューブ21内にデポジットが堆積すると冷媒の循環が妨げられ、冷却不良を生じることとなる。
【0009】
例えば、冷媒としてHFC134aおよびHFC152aを、冷凍機油としてポリエステル系油を用いたコンプレッサを冷蔵庫用として4000時間の実機耐久試験を行い、その冷凍サイクルを分析した結果について説明する。実機耐久試験後、冷凍サイクル内のキャピラリーチューブを分解したところ、HFC134aおよびHFC152aいずれの場合においても、銅(Cu)製のキャピラリーチューブの内部にデポジットが堆積しているのが認められた。このデポジット成分のフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)による分析結果を図6に、試料をクロロホルムに溶解し、ガスクロマトグラフィ分析(GC)による分析結果を図7に示す。また、耐久試験後の冷媒のガスクロマトグラフィ分析(GC)による分析結果を表1に示す。
【0010】
【表1】
【0011】
図6に示すFT−IR分析結果から、脂肪族炭化水素に起因する2950cm-1、2900cm-1、2840cm-1、1470cm-1、1460cm-1、800cm-1付近の吸収がデポジット成分にみられた。
【0012】
また、図7に示すGC分析結果からもデポジット成分にパラフィン系炭化水素の存在が認められた。一方、表1に示す冷媒のガス分析結果から、HFC134a、HFC152aとも冷媒自身はほとんど分解していないことが認められた。以上の分析結果から、デポジットの生成は主に脂肪族化合物が関与し、パラフィン系炭化水素等の脂肪族化合物が冷媒または冷凍機油に溶解しないことにより生成したものと考えられる。
【0013】
このようにCFC12等に代替される冷媒であるHFC134a等とポリエステル系油等の合成油の冷凍サイクルへの適用に際して、これまでと同様のポリエステル系の冷凍機油を使用すると、構成部品に欠陥が生じて品質ならびに耐久性が大きく低下するという問題があった。
【0014】
さらに最近では、CFCと分類されるフロンの他にHCFCと分類される水素と塩素が含有されるフロンについても規制の方向となってきている。したがって、HCFC系の冷媒、例えばHCFC22についてもその代替としてジフルオロメタン(以下、HFC32と称する)や、混合冷媒としてHFC32/ペンタフルオロエタン(以下、HFC125と称する)、HFC32/HFC152a、HFC32/HFC134a、またはHFC32/ HFC134a/HFC125等が候補として挙げられている。これらの冷媒は、すべてハイドロフルオロカーボン系であり、極性を持った冷媒である。したがって、ハイドロフルオロカーボン系の冷媒と組合わせて使用することができるポリエステル系油等の合成油の特性を安定化させることは重要である。
【0015】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたもので、冷媒としてハイドロフルオロカーボンを、冷凍機油としてハイドロフルオロカーボンと相溶性を有する合成油とを冷凍サイクルに使用した場合、系内異物の生成を抑えることにより構成部品に支障を生じさせず、耐久性と信頼性を向上させることのできる冷凍装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の冷凍装置は、ハイドロフルオロカーボン系の冷媒と、前記冷媒と相溶性を有する冷凍機油とを含有し、前記冷媒を低圧より高圧に圧縮する圧縮機構と、前記高圧に圧縮された冷媒を冷却する凝縮機構と、前記凝縮された冷媒を膨脹させる膨脹機構と、前記膨脹した冷媒を蒸発させ低圧の冷媒とする蒸発機構とからなる密閉された冷凍サイクルを有する冷凍装置であって、前記冷凍サイクルを構成する部品として有機材料からなる部品を備える冷凍装置において、前記冷凍サイクル内における前記冷凍機油に対して、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物の濃度が50ppm以下であり、かつ、前記有機材料部品には、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物が実質的に含まれていないことを特徴とする。
【0017】
本発明に係わる脂肪族化合物は冷凍サイクル内に組み込まれている各種の構成部品に含まれている。構成部品としては、第一に圧縮機構を構成するモータ部品が挙げられる。モータ部品を構成する際に、ステータ部のコアに巻線をコイル巻するが、緊密にコイル巻するとともに成形時に巻線を傷つけないために巻線用潤滑油などの巻線油を使用する。この巻線油は巻線自身の製造の際にも巻線同士の滑り性を上げるために使用される。このような巻線油中に融点が -50℃から 150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物が含まれていると、モータ部品とともに冷凍サイクル内に持ち込まれデポジットが生成しやすくなる。したがって、巻線油としては、上述のような脂肪族化合物を全く含まないエステル系やエーテル系やアルキルベンゼン系等の合成油が好ましい。
【0018】
また、冷凍サイクル部品のうち、冷凍サイクル配管や圧縮機内金属機械部品についても、最終形状に成形加工する際、切削油やプレス油などの加工油や、加工後の防錆油が使用される。したがって、これらの油中にも上述の脂肪族化合物が全く含まれていない合成油が好ましい。
【0019】
さらに、冷凍サイクル部品のうち、有機材料部品については冷凍機油中に分離する成分として上述の脂肪族化合物が全く含まれていない有機材料で構成する。よって、有機材料部品を射出成型で得る場合には、上述の脂肪族化合物を全く含まない離型剤等を使用することが好ましい。
【0020】
以上の冷凍サイクル部品に使用する巻線油、加工油、有機材料部品の冷媒およびポリエステル系油中に分離する成分の析出挙動について調査するため、次のようなシールドチューブ試験を行った。耐熱性ガラス製の試験管を9本準備し、それぞれに冷媒10gおよびポリエステル系油を100gずつ各試験管に入れる。ついで巻線油A、B、Cと加工油D、E、Fをそれぞれポリエステル系油に対して 1wt%ずつ、有機材料部品GからLを5gずつ個別に各試験管に入れる。この各試験管を温度が175℃に保たれた恒温槽内に14日間入れエージングする。エージング後、ポリエステル系油1mlを抜き取り別に準備した耐熱性ガラス製の試験管に冷媒9mlとともに封入し、-50℃から150℃の温度範囲における沈殿物の有無を調べる。このシールドチューブ試験の結果を表2に示す。
【0021】
【表2】
【0022】
-50℃から150℃の温度範囲としたのは、この範囲が冷凍装置が稼働するときの冷凍サイクル内の温度範囲になるためである。巻線油Aおよび有機材部品Iには全範囲にわたり白濁し沈殿物がみられた。また巻線油B、加工油DおよびE、有機材部品GおよびKには一部の温度範囲に沈殿物がみられた。一方、巻線油C、加工油F、有機材部品H、J、Lには全温度範囲にわたり沈殿物がみられなかった。沈殿物がみられたポリエステル系油を調査したところ、いずれも融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が 1.2g/ml以下である脂肪族化合物を50ppmをこえて含有していた。また、沈殿物がみられないポリエステル系油にはこれら脂肪族化合物の含有量が50ppm以下であった。
【0023】
脂肪族化合物は、25℃での密度が1.2g/ml以下であり冷媒および冷凍機油に溶解しないで冷凍サイクル内に存在すると、一般に冷媒の液密度が表3に示すように 0.9から 1.2g/ml(25℃)であるので、冷媒とともに容易にサイクル内を循環してキャピラリーチューブ内でデポジットが生成しやすくなる。なお、脂肪族化合物の25℃での密度が0.6g/ml以上あるとデポジットが生成しやすい。したがって脂肪族化合物の25℃での密度は0.6g/mlから1.2g/mlである。
【0024】
【表3】
【0025】
上述の条件を満たす脂肪族化合物としては、ノルマルデカンや高級パラフィンなど炭素数が10から70のパラフィン系炭化水素化合物を挙げることができる。炭素数が10から70のパラフィン系炭化水素化合物は単独または混合物であってもよい。このような脂肪族化合物は、機械部品および/または絶縁部品の表面に付着して、あるいは内部に含まれていて冷媒や冷凍機油により抽出されるものであっても、冷凍機油中での濃度が50ppm以下であればデポジットが生成し難くなる。
【0026】
本発明に係わる冷凍機油は、冷媒のハイドロフルオロカーボンと相溶性を有する合成油を使用することができる。合成油にはポリエステル系油、ポリエーテル系油、ふっ素系油、アルキルベンゼン系油などがあるが、従来の鉱油と比較すると吸湿性の点において劣っているが、ポリエーテル系油より改善されており、またふっ素系油より製造コストが安価であり、ハイドロフルオロカーボン系冷媒と相溶性のあるポリエステル系油が好ましい。
【0027】
そのようなポリエステル系油は、水酸基とカルボキシル基との反応によって生成するエステル結合を分子内に有し、ハイドロフルオロカーボンの単独または混合物を溶解させることができ、かつ冷凍サイクル内において摺動部材間の潤滑性を保つ化合物をいう。これらポリエステル系油のなかでも、ネオペンタンジオール、ネオペンタントリオール、ペンタエリトリトールなどのヒンダードアルコール類とモノカルボン酸類またはジカルボン酸類との反応生成物であるコンプレックスエステル(ポリエステル)系油がハイドロフルオロカーボンとの相溶性に優れ、また冷凍サイクル内における摺動部材間の潤滑性にも優れているため好適である。
【0028】
また、これら冷凍機油は、必要に応じて硫黄系、燐系、ハロゲン系の極圧添加剤、もしくは耐摩耗性向上剤や酸化防止剤、耐熱性向上剤、腐食防止剤(特に銅用金属不活性化剤)、加水分解防止剤、消泡剤などを含んでもよい。
【0029】
本発明に係わるハイドロフルオロカーボン系冷媒は、炭素、弗素、水素からなる化合物であって、従来の冷媒であるCFC12、HCFC22を代替しうるものをいう。例えばHFC134a、HFC152a、HFC32、HFC125、HFC143aを例示することができる。これらのハイドロフルオロカーボンは単独でも、2種以上の混合物としても使用することができる。
【0030】
【作用】
冷凍サイクル内における冷凍機油に対して、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物の濃度が50ppm以下とし、かつ、有機材料部品に、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、有機材料部品に、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物が実質的に含まれていないようにすることによって、冷凍装置稼働に際して、冷凍機油中でデポジットの生成を抑えることができる。したがって、信頼性が高く良好な性能を維持する冷凍サイクルが得られる。また、従来の冷凍サイクルを大幅に変更することなく使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、圧縮機内有機材料部品を成形加工し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、圧縮機内有機材料部品は原料や添加剤として炭素数10から70の脂肪族化合物を含まないものを使用した。例えば、絶縁フィルムとしては添加剤の入っていない芳香族ポリエステルフィルムを使用した。また、成形加工する際の離型剤も炭素数10から70の脂肪族化合物を含まない、例えば揮発性の炭化水素油を使用した。なお、冷凍サイクルの冷凍機油中の脂肪族化合物の濃度は20ppm以下であった。
【0032】
運転に伴うキャピラリーチューブ部のデポジット生成量を測定する手段として、キャピラリーチューブに窒素ガスを導入して、その流速を測定した。デポジット生成量が増加するにつれ窒素ガス流速が低下するので、窒素ガス流速を測定し、初期値に対する割合(%)を求めることによりデポジット生成量を知ることができる。測定結果を図8に示す。
【0033】
参考例1
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、巻線油として100%合成油であるポリエステル系油を用いたモータ部品を準備し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍サイクルの冷凍機油中の脂肪族化合物の濃度は20ppm以下であった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0034】
参考例2
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、冷凍サイクル配管部品、圧縮機内金属機械部品を100%合成油であるポリエステル系油を用いて加工し、防錆油も同一のポリエステル系油を用いて冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍サイクルの冷凍機油中の脂肪族化合物の濃度は20ppm以下であった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0035】
比較例1
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、巻線油としてパラフィン系炭化水素油(炭素数20〜50の混合物)を用いたモータ部品を準備し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍機油に対して残存するパラフィン系炭化水素油は100ppmであった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0036】
比較例2
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、冷凍サイクル配管部品、圧縮機内金属機械部品を、パラフィン系炭化水素油(炭素数20〜50の混合物)を50重量%含有する合成油を用いて加工し、防錆油も同一の合成油を用いて冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍機油に対して残存するパラフィン系炭化水素油は200ppmであった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0037】
比較例3
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、圧縮機内有機材料部品を成形加工し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、圧縮機内有機材料部品は原料や添加剤として炭素数10から 70 の脂肪族化合物を含まないものを使用した。例えば、クラスター材としては添加剤の入っていない芳香族ポリエステル(PBT)を使用した。一方、成形加工する際の離型剤はパラフィン系炭化水素油(炭素数20〜50の混合物)を使用した。比較例3において残存するパラフィン系炭化水素油は冷凍機油に対して 250ppmであった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0038】
比較例4
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、巻線油としてパラフィン系炭化水素油を用いたモータ部品を、冷凍サイクル配管部品、圧縮機内金属部品をパラフィン系炭化水素油を含有する合成油を用いて加工したものを、防錆油も同一の合成油を用いたものを、圧縮機内有機材料部品としてパラフィン系炭化水素油を離型剤として使用したクラスター材(PBT)をそれぞれ準備し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍機油に対して残存するパラフィン系炭化水素油(炭素数20〜50の混合物)は600ppmであった。
実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を図8に示す。
【0039】
図8によると、実施例1、参考例1、2は5000時間の運転後であっても窒素ガス流速は殆ど低下しなかった。一方、比較例1から比較例4は実施例1や参考例1、2に比較して大きく低下した。また運転終了後、冷凍サイクル内のキャピラリーチューブを分解しデポジットの生成状況を調査したが、実施例1、参考例1、2はいずれもデポジットの生成は殆ど認められなかった。
【0040】
さらに、運転終了後、圧縮機構部を構成するモータの電線被覆材および絶縁紙、さらには冷凍機油そのものについて調べたところ、実施例1、参考例1、2は全てについて異常はなく(冷凍機油の全酸価は0.01mgKOH/g)、いずれも非常に良好であることが判明した。
【0041】
参考例3
ハイドロフルオロカーボン系冷媒としてHFC134a、冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを準備する一方、巻線油としてパラフィン系炭化水素油とエステル油との混合油を用いたモータ部品を準備し、冷凍サイクルを構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において5000時間の運転を行った。なお、冷凍機油に対してパラフィン系炭化水素油は45ppmであった。実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した結果、5000時間の運転後であっても窒素ガス流速は殆ど低下せず、デポジットの生成も殆ど認められなかった。また、運転終了後、圧縮機構部を構成するモータの電線被覆材および絶縁紙、さらには冷凍機油そのものについて調べたところ、全てについて異常はなく(冷凍機油の全酸価は0.01mgKOH/g)、いずれも非常に良好であることが判明した。
【0042】
実施例2〜10、参考例4〜21
冷凍機油としてポリエステル系油であるヒンダードエステルを用い、冷媒として種々のハイドロフルオロカーボン系冷媒を用いた例について以下に説明する。参考例1と同一のモータ部品を用いた冷凍サイクル、参考例2と同一のサイクル配管部品、圧縮機内金属機械部品および防錆油を用いた冷凍サイクル、実施例1と同一の圧縮機内有機材料部品を用いた冷凍サイクルをそれぞれ構成し、冷蔵庫を組み立て、25℃において2000時間の運転を行った。組み合わせを表4に示す。実施例1と同一の条件で窒素ガスの流速を測定した。測定結果を表4に示す。
【0043】
表4によると、実施例2〜10、参考例4〜21は2000時間の運転後であっても窒素ガス流速は初期値に比較して殆ど低下しなかった。また運転終了後、冷凍サイクル内のキャピラリーチューブを分解しデポジットの生成状況を調査したが、いずれもデポジットの生成は殆ど認められなかった。
【0044】
さらに、運転終了後、圧縮機構部を構成するモータの電線被覆材および絶縁紙、さらには冷凍機油そのものについて調べたところ、実施例2〜10、参考例4〜21は全てについて異常はなく(冷凍機油の全酸価は0.01mgKOH/g)、いずれも非常に良好であることが判明した。
【0045】
【表4】
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の冷凍装置によれば、冷凍サイクル内における冷凍機油に対して、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物を50ppm以下の濃度とし、かつ、有機材料部品に、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、有機材料部品に、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物が実質的に含まれていないようにしたので、冷凍サイクル内で発生する異物(デポジット)が冷凍サイクル配管へ堆積することを抑えることができる。また、CFC12やHCFC22を用いる従来の冷凍サイクルを大幅に変更することなく使用することができる。したがって、本発明の冷凍装置は、ハイドロフルオロカーボン系冷媒を用いた冷凍サイクルを有する冷蔵庫等に最適であり、耐久性ならびに信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の密閉型回転式冷媒圧縮機を破断して示す図。
【図2】従来の密閉型往復動式冷媒圧縮機を破断して示す図。
【図3】冷蔵庫用の冷凍サイクルを示す図。
【図4】冷媒と脂肪族化合物との溶解性を示す図。
【図5】冷凍機油と脂肪族化合物との溶解性を示す図。
【図6】デポジット成分のフーリエ変換赤外分光分析(FT−IR)による分析結果をす図。
【図7】デポジット成分のガスクロマトグラフィ分析(GC)による分析結果を示す図である。
【図8】キャピラリーチューブの窒素ガス流速を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1………ケーシング、2………ステータ、3………ロータ、4………モータ機構、5………圧縮機構、6………供給管、7………吐出管、8………シャフト、9………軸受、10………シリンダ、11………サブベアリング、12………クランク、13………ローラ、14………ブレード、15………スプリング、16………ピストン、17………往復運動式用シリンダ、20………冷凍機油、21………キャピラリーチューブ、22………蒸発器、23………圧縮機、24………受台パイプ、25………放熱パイプ、26………クリーンパイプ、27………冷蔵庫。
Claims (1)
- ハイドロフルオロカーボン系の冷媒と、前記冷媒と相溶性を有する冷凍機油とを含有し、前記冷媒を低圧より高圧に圧縮する圧縮機構と、前記高圧に圧縮された冷媒を冷却する凝縮機構と、前記凝縮された冷媒を膨脹させる膨脹機構と、前記膨脹した冷媒を蒸発させ低圧の冷媒とする蒸発機構とからなる密閉された冷凍サイクルを有する冷凍装置であって、前記冷凍サイクルを構成する部品として有機材料からなる部品を備える冷凍装置において、
前記冷凍サイクル内における前記冷凍機油に対して、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物の濃度が50ppm以下であり、かつ、前記有機材料部品には、融点が-50℃から150℃の範囲にあり、25℃での密度が1.2g/ml以下である脂肪族化合物が実質的に含まれていないことを特徴とする冷凍装置。
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