JP3657868B2 - タイミング検出装置およびタイミング検出方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル復調器で使用するタイミング検出装置に関するものであり、特に、符号間干渉下でも動作可能なタイミング検出装置およびそのタイミング検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来のタイミング検出装置について説明する。たとえば、図15は、Hideo SUZUKI他著:「MODEM and FEC LSIs for Highly Functional Compact Earth Station」(IEEE GLOBECOM 1987)に記載された従来のタイミング誤差検出回路(以降、従来のタイミング検出装置と呼ぶ)の構成を示す図である。図15において、1は受信信号入力端子であり、2はタイミング誤差検出値出力端子であり、101は受信信号にシンボル周期の半分の遅延を与える第1の半周期遅延回路であり、102は受信信号にシンボル周期の半分の遅延を与える第2の半周期遅延回路であり、103は受け取った2つの信号間における極性の変化の有無を調べる極性検出回路であり、104はタイミングの進み遅れ情報を出力するタイミング誤差算出回路である。
【0003】
ここで、上記従来のタイミング検出装置の動作について説明する。このタイミング検出装置では、まず、第1の半周期遅延回路101および第2の半周期遅延回路102が、受信信号に対してシンボル周期の半分の遅延を与える。
【0004】
つぎに、2つの半周期遅延回路にて1シンボル周期分の遅延を与えられた受信信号と、遅延のない元の受信信号と、の2系統の信号を受け取った極性検出回路103では、2系統の信号間の時間差(1シンボル周期分)に判定データの極性変化がない場合に、タイミング誤差算出回路104におけるタイミング誤差検出操作を停止させるための指示を出力する。一方、判定データの極性変化がある場合は、遅延のない受信信号の判定データが負極性のときにだけ極性を反転させるための指示を出力し、判定データが正極性のときには極性を反転させるための指示を出力しない。
【0005】
その後、タイミング誤差算出回路104では、動作停止指示の有無を確認し、動作停止指示がある場合、タイミング誤差検出値を出力しない。一方、動作停止指示がない場合は、極性反転指示を確認し、極性反転指示がない場合は半シンボル周期遅延させた受信信号をタイミング誤差検出値として出力し、極性反転指示がある場合は半シンボル周期遅延させた受信信号の極性を反転させ、反転後の信号をタイミング誤差検出値として出力する。
【0006】
図16は、遅延のない受信信号の判定データと1シンボル周期遅延を与えられた受信信号の判定データとの間に極性変化があり、遅延のない受信信号が正極性時の動作を示す図である。この場合、ナイキスト点の想定値が本来のナイキスト点に対して進んでいるため、タイミング誤差検出値として正の値が出力される。
【0007】
また、図17は、遅延のない受信信号の判定データと1シンボル周期遅延を与えられた受信信号の判定データとの間に極性変化があり、遅延のない受信信号が負極性時の動作を示す図である。この場合、半シンボル周期遅延させた受信信号は負の値となるが、極性検出回路103から極性反転指示が出力されているため、図16の場合と同様にタイミング誤差検出値として正の値が出力される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記、従来のタイミング検出装置においては、たとえば、符号間干渉により波形歪みが発生した場合に、以下に示すような問題があった。図18は、符号間干渉により波形歪みが発生した条件で、遅延のない受信信号の判定データと1シンボル周期遅延を与えられた受信信号の判定データとの間に極性変化があり、遅延のない受信信号が正極性時の動作を示す図である。このような場合、従来のタイミング検出装置では、図16と同一の標本化タイミング誤差が存在するにもかかわらず、半周期遅延させた受信信号が負値となり、さらに、検出極性回路103から極性反転指示が出力されないため、誤ったタイミング誤差値が出力されてしまう、という問題があった。
【0009】
このように、図16および図17のように、ナイキスト条件を満足する環境(波形歪みのない条件)においては、正しくタイミング誤差を検出できるが、図18のように、伝送路がナイキスト条件を満足しないような場合には、すなわち、符号間干渉が存在するような環境においては、符号間干渉によって受信波形が歪んでしまい、標本化誤差検出値の精度が低下する、という問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、符号間干渉が存在するような環境においても、高い検出精度と分解能を確保することが可能なタイミング検出装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるタイミング検出装置にあっては、先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出する構成とし、受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化手段(後述する実施の形態のオーバーサンプル標本化器3に相当)と、標本化後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配手段(受信系列出力回路4に相当)と、前記各信号系列単位に複数の伝送路メモリ長を有するブラインド等化器を用意し、前記ブラインド等化器が出力する判定データを用いて検出したユニークワード検出結果と、前記ブラインド等化器が出力するデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値と、を出力する複数の情報生成手段(信頼度情報作成/タイミング検出回路5−1〜7−nに相当)と、前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択し、さらに、前記ユニークワード検出結果を用いて、前記選択により決定される伝送路メモリ長によって発生するシンボル単位のタイミングのずれを補正するデータ選択手段(タイミング検出処理回路8に相当)と、を備えることを特徴とする。
【0012】
つぎの発明にかかるタイミング検出装置にあっては、先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出する構成とし、受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化手段と、異なるタップ係数を保有し、標本化後の信号をフィルタリングする2種類のフィルタ手段(受信フィルタ21A,21Bに相当)と、前記フィルタリング処理後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配回路(受信系列出力回路4,4Aに相当)と、前記各信号系列単位に、ユニークワード検出結果とデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値とを出力する複数の情報生成手段(信頼度情報作成/タイミング検出回路5−1〜7−n,22,23に相当)と、前記ユニークワード検出結果および前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択するデータ選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
つぎの発明にかかるタイミング検出装置にあっては、受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化ステップと、標本化後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配ステップと、前記各信号系列単位に複数の伝送路メモリ長を有するブラインド等化器を用意し、前記ブラインド等化器が出力する判定データを用いて検出したユニークワード検出結果と、前記ブラインド等化器が出力するデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値と、を出力する情報生成ステップと、前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択し、さらに、前記ユニークワード検出結果を用いて、前記選択により決定される伝送路メモリ長によって発生するシンボル単位のタイミングのずれを補正するデータ選択ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
つぎの発明にかかるタイミング検出装置において、前記データ選択ステップにあっては、Ts精度で受け取ったすべてのメトリック累積値のなかから最も信頼度の高いメトリック累積値のタイミングをAとした場合、先行波のタイミングをA−Ts/2、A、A+Ts/2の3つに絞り込む第1のステップと、A−TsとA+Tsにおけるメトリック累積値の大小比較を行い、A−Tsのメトリック累積値の方が小さい場合、Ts/2精度のタイミング候補をA−Ts/2とAの2つに絞り込み、一方、A+Tsのメトリック累積値の方が小さい場合、当該タイミング候補をAとA+Ts/2の2つに絞り込む第2のステップと、A、A−Ts、A+Tsにおけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、A−Ts/2またはA+Ts/2のメトリック累積値を推定する第3のステップと、補間処理後のメトリック推定値を用いて、2つのタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして絞り込む第4のステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
つぎの発明にかかるタイミング検出方法にあっては、受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化ステップと、異なるタップ係数を保有し、標本化後の信号をフィルタリングする2種類のフィルタステップと、前記フィルタリング処理後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配ステップと、前記各信号系列単位に、ユニークワード検出結果とデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値とを出力する情報生成ステップと、前記ユニークワード検出結果および前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択するデータ選択ステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
つぎの発明にかかるタイミング検出方法において、前記データ選択ステップにあっては、Ts精度で受け取ったすべてのメトリック累積値のなかから最も信頼度の高いメトリック累積値のタイミングをAとした場合、先行波のタイミングをA−Ts/4、A、A+Ts/4の3つに絞り込む第1のステップと、A−Ts/2とA+Ts/2におけるメトリック累積値の大小比較を行い、A−Ts/2のメトリック累積値の方が小さい場合、Ts/4精度のタイミング候補をA−Ts/4とAの2つに絞り込み、一方、A+Ts/2のメトリック累積値の方が小さい場合、当該タイミング候補をAとA+Ts/4の2つに絞り込む第2のステップと、A、A−Ts/2、A+Ts/2におけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、A−Ts/4またはA+Ts/4のメトリック累積値を推定する第3のステップと、補間処理後のメトリック推定値を用いて、2つのタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして絞り込む第4のステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかるタイミング検出装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかるタイミング検出装置の実施の形態1の構成を示す図である。図1において、1は受信信号入力端子であり、2はタイミング誤差検出値出力端子であり、3はオーバーサンプル標本化器であり、4は受信系列出力回路であり、5−1〜5−nは信頼度情報作成/タイミング検出回路であり、6−1〜6−nは信頼度情報作成/タイミング検出回路であり、7−1〜7−nは信頼度情報作成/タイミング検出回路であり、8はタイミング検出処理回路である。
【0019】
また、図2は、上記各信頼度情報/タイミング検出回路の構成を示す図である。図2において、11はブラインド等化器であり、12はUW(ユニークワード:同期語)検出回路であり、13は平均化回路である。
【0020】
また、図3は、オーバーサンプルの原理を示す図である。たとえば、図3は、8倍オーバーサンプルに対応し、1シンボル周期に8回標本化を行う例である。ここでは、標本化時刻を整数値で表現し、この標本化時刻が対応するオーバーサンプルタイミング番号を0から7で示している。すなわち、オーバーサンプルタイミング番号が1の系列は、時刻1のつぎに、時刻9のデータがシンボルデータとして出力される。また、等化器が2倍オーバーサンプリングに基づいて動作する場合、オーバーサンプルタイミング番号が1の系列は、時刻1のつぎに、時刻5のデータがオーバーサンプルデータとして出力される。以後、本発明における受信系列は、シンボルレートデータを用いて説明を行うが、オーバーサンプルデータも同様の概念で扱うことが可能である。
【0021】
以下、上記のように構成されるタイミング検出装置の動作について説明する。まず、入力された受信信号は、オーバーサンプル標本化器3において、シンボルレート以上の速度で標本化される。つぎに、受信系列出力回路4では、オーバーサンプリング後の受信信号を複数の受信系列(たとえば、オーバーサンプルタイミング番号の異なった系列)に分配する。
【0022】
その後、各信頼度情報作成/タイミング検出回路では、受け取った上記受信系列に基づいてUW検出情報と信頼度情報とを出力する。なお、信頼度情報とは、シンボル毎の信頼度ではなく、データ系列全体の信頼度を示すものとする。また、各タイミングに対して、推定伝送路メモリ長が異なる複数の信頼度情報作成/タイミング検出回路を配置することができる。また、上記推定伝送路メモリ長とは、遅延波の遅延量に相当する値である。最後に、タイミング検出処理回路8では、受け取った信頼度情報とUW検出情報に基づいて、先行波タイミングをタイミング番号出力端子2から出力する。
【0023】
ここで、上記信頼度情報作成/タイミング検出回路の動作について説明する。まず、ブラインド等化器11では、上記受信系列を処理し、判定データ、および信頼度情報としてパスメトリック正規化値、それぞれを出力する。なお、本ブラインド等化器11の詳細な動作については、久保他著:「状態毎伝送路推定による適応形最尤系列推定を用いたブラインド復調方式」(電子情報通信学会 信学技報 vol.RCS99-185,pp37−44,2000-01)に詳しく述べられている。
【0024】
その後、UW検出回路12では、受け取った判定データとUWとの相関を取ることで、判定データ中のUW先頭位置をシンボルレート精度で検出し、その検出結果をUW検出情報として出力する。また、平均化回路13では、受け取ったパスメトリック値を入力系列長にわたって累積し、その累積結果をメトリック累積値として出力する。たとえば、図4は、メトリック累積値の分布の一例を示す図である。図4に示すように、受信信号のオーバーサンプル数を4としてTsの精度(8倍オーバーサンプル)で見た場合、伝送路メモリ長毎に、メトリック累積値が分布する。なお、このメトリック累積値は信頼度が高いほど小さくなる。
【0025】
つぎに、上記タイミング検出処理回路8の動作について説明する。タイミング検出処理回路8では、まず、受け取ったすべての(推定伝送路メモリ長の候補数とオーバーサンプリング数の積)メトリック累積値のなかから最も信頼度の高いメトリック累積値を選択する(伝送路メモリ長はこの選択により候補のなかから1つに決定される)。たとえば、最も信頼度の高いタイミングがタイミングAであるとき、検出したいTs/2精度の先行波のタイミングは、A−Ts/2,A,A+Ts/2の3つのなかのいずれかである、と絞り込むことができる。
【0026】
その後、タイミング検出処理回路8では、タイミングAの前後Tsにおけるメトリック累積値の大小比較を行う。たとえば、タイミングA−Tsのメトリック累積値の方がタイミングA+Tsのメトリック累積値より小さい場合、Ts/2精度のタイミング候補を、タイミングA−Ts/2とタイミングAの2つに絞り込むことができ、一方、タイミングA+Tsのメトリック累積値の方が小さい場合、タイミング候補を、タイミングAとタイミングA+Ts/2に絞り込むことができる。
【0027】
しかしながら、ここでは、タイミングA−Ts/2(もしくはタイミングA+Ts/2)に関するメトリック累積値がないので、このままでは、2つ残ったタイミングの候補から1つを選び出すことができない。そこで、本実施の形態においては、タイミングA,タイミングA−Ts,タイミングA+Tsにおけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、タイミングA−Ts/2(もしくはA+Ts/2)のメトリック累積値を推定する。図5は、補間処理によるメトリック累積値選択の一例を示す図である。
【0028】
最後に、タイミング検出処理回路8では、補間処理後のメトリック推定値を用いて、2つのタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして絞り込む。ここで、先行波のタイミングの判定方法を具体的に説明する。図6は、タイミング候補がタイミングAとA+Ts/2に絞り込まれた場合を示す図である。たとえば、メトリック累積値が直線上に分布すると仮定すると、タイミングA−TsとタイミングAを通る直線(1)と、メトリックA+Tsを通りかつタイミング直線(1)と傾きの大きさが同じで符号が異なる直線(2)と、の交点を、メトリック累積値が最小になる点と考えることができる。しかしながら、このままでは、ML,MRの値を知ることはできないので、たとえば、MLとMRを近似して交点の位置を求めることとする。なお、図7は、近似したMLとMRを示す図である。
【0029】
図8は、先行波のタイミングの判定方法を示す図である。図8に示すように、直線の交点がタイミングAとA+Ts/2の境界にあり、さらに、図8のように、直線(1)と直線(2)との交点をメトリック累積値が最小になる点と考えた場合、MLおよびMRは、
ML:MR=x:y=5:3 (1)
となり、この関係を用いると、
ML+MR:ML−MR=4:1 (2)
となる。
【0030】
したがって、先行波のタイミングは、上記(1)式および(2)式の関係から、
・ML−MR<(ML+MR)/4のとき → タイミングA
・それ以外のとき → タイミングA+Ts/2
と判定できる。ここでは、説明の便宜上、タイミング候補がAとA+Ts/2に絞り込まれた場合について説明したが、たとえば、タイミング候補がA−Ts/2とAに絞り込まれた場合についても同様に判定可能である。
【0031】
なお、各標本化タイミングに対して、複数の伝送路メモリ長を有するブライド等化器を用意したため、伝送路メモリ長の選択によっては、タイミングがシンボル単位でずれることがある。そこで、タイミング検出処理回路8では、最後に、各信頼度情報作成/タイミング検出回路から受け取ったUW先頭位置情報に基づいて、このシンボル単位のずれを補正する。
【0032】
また、補間処理を用いて先行波のタイミングを判定する方法としては、上記の手法に限定されるわけではなく、その他の手法を用いることとしてもよい。たとえば、図9および図10は、タイミング候補がAとA+Ts/2に絞り込まれた場合の先行波のタイミングの判定方法を示す図である。
【0033】
ここでは、まず、図9に示すように、2つのタイミング境界における直線(1)と直線(2)を求める。このとき、三角形の相似の関係より、図9中のs,t,uの比は、
s:t:u=1:4:3 (3)
となる。ここで、タイミングA−Ts/2,A,A+Ts/2における累積メトリック値を各々MA,MB,MCとすると、上記tは、
t=MA−MB (4)
となり、上記sは、
s=t/4=(MA−MB)/4 (5)
となり、上記uは、
u=s×3=3(MA−MB)/4 (6)
となる。
【0034】
また、タイミングAとA+Ts/2の境界において、直線(1)および直線(2)は、
となる。
【0035】
したがって、先行波のタイミングは、上記(3)式および(8)式の関係から、
・直線(1)<直線(2)のとき → タイミングA
・それ以外のとき → タイミングA+Ts/2
と判定できる。ここでは、説明の便宜上、タイミング候補がAとA+Ts/2に絞り込まれた場合について説明したが、たとえば、タイミング候補がA−Ts/2とAに絞り込まれた場合についても同様に判定可能である。また、上記図7および図8の場合と異なり、判定処理に伴う近似がないため、検出精度をより高めることができる。
【0036】
このように、本実施の形態においては、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な複数の信頼度情報作成/タイミング検出回路を準備しているので、符号間干渉下においても先行波のタイミングを高い精度で推定することができる。
【0037】
また、本実施の形態においては、たとえば、Tsの分解能であるメトリック累積値において、補間処理を用いて分解能をTs/2に細かくする構成としたため、先行波のタイミングの検出精度を高めることができる。
【0038】
実施の形態2.
以下、実施の形態2について説明する。なお、以降の説明においては、前述の実施の形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0039】
前述の実施の形態1では、信頼度情報作成/タイミング検出回路の数をオーバーサンプル数と推定伝送路メモリ長の候補数の積とすることにより、符号間干渉下のタイミング検出の精度と分解能を高めていたが、本発明では、以下のように、たとえば、オーバーサンプル標本化器の後段に信号のサンプリングレートを高めるための受信フィルタを設けることで、タイミング検出の分解能をさらに高める構成とした。
【0040】
図11は、本発明にかかるタイミング検出装置の実施の形態2の構成を示す図である。図11において、21A,21Bは受信フィルタであり、4,4Aは受信系列出力回路であり、22,23は信頼度情報作成/タイミング検出回路である。なお、前述の実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
また、図12は、上記各受信フィルタのインパルス応答を示す図である。受信フィルタ21Aおよび21Bは、図12に示すように、設計条件が同じで、かつインパルス応答が互いにTs/2だけ異なるフィルタであり、両フィルタに同一標本化データを入力すると、片方のフィルタからTs/2だけ遅れた信号が出力される。したがって、同じサンプリングレートの信号をこの2つのフィルタに入力した場合、すなわち、Ts周期でサンプリングした信号を2つのフィルタで処理した場合は、Ts/2周期でサンプリングした信号を得ることができる。
【0042】
以下、上記のように構成されるタイミング検出装置の動作について説明する。まず、入力された受信信号は、オーバーサンプル標本化器3において、シンボルレート以上の速度に標本化される。つぎに、受信フィルタ21Aでは、サンプリング後の信号にフィルタをかけて第1の処理系列を生成する。また、受信フィルタ21Bでは、サンプリング後の信号にフィルタをかけて第1の処理系列に対してTs/2ずれた第2の処理系列を生成する。
【0043】
その後、第1の処理系列を受け取った受信系列出力回路4では、オーバーサンプリング後の受信系列を複数の受信系列に分配する。そして、信頼度情報作成/タイミング検出回路5−1〜7−nでは、UW検出情報と信頼度情報とを出力する。また、第2の処理系列を受け取った受信系列出力回路4Aでは、受信フィルタ21Bから出力されたオーバーサンプリング後の受信系列を、2つの受信系列に分配する。そして、信頼度情報作成/タイミング検出回路22,23では、上記信頼度情報作成/タイミング検出回路5−1〜7−nと同じ伝送路メモリ長、およびビタビアルゴリズムを用いて処理し、UW検出情報と信頼度情報とを出力する。最後に、タイミング検出処理回路8では、受け取った信頼度情報をもとに、最も信頼度の高いタイミングと伝送路メモリ長の組み合わせが選ばれる。
【0044】
つぎに、上記タイミング検出処理回路8の動作について説明する。図13は、実施の形態2におけるメトリック累積値の分布の一例を示す図である。たとえば、オーバーサンプル数を4としてTs/4分解能(16倍オーバーサンプル)で見た場合、図13のように、メトリック累積値が分布する。
【0045】
タイミング検出処理回路8では、すべての(第1の処理系列と第2の処理系列における信頼度情報作成/タイミング検出回路の合計)のメトリック累積値のなかから最小のメトリック累積値を選択する。たとえば、図14は、補間処理によるメトリック値推定の一例を示す図である。図14のように、最も信頼度の高いタイミング、すなわち、メトリック累積値が最小のタイミング、がタイミングAであるとき、検出したいTs/4精度の先行波のタイミングは、A−Ts/4,A,A+Ts/4の3つのなかのいずれかである、と絞り込むことができる。
【0046】
その後、タイミング検出処理回路8では、A±Ts/2のメトリック累積値の大小比較を行う。たとえば、タイミングA−Ts/2のメトリック累積値の方がA+Ts/2のメトリック累積値より小さい場合、Ts/4精度のタイミング候補を、A−Ts/4とタイミングAの2つに絞り込むことができ、一方、タイミングA+Ts/2のメトリック累積値の方が小さい場合、タイミング候補を、タイミングAとタイミングA+Ts/4の2つに絞り込むことができる。
【0047】
しかしながら、ここでは、タイミングA−Ts/4(もしくはタイミングA+Ts/4)に関するメトリック累積値がないので、このままでは、2つ残ったタイミングの候補から1つ選び出すことができない。そこで、本実施の形態においては、図14に示すように、タイミングA,タイミングA−Ts/2,タイミングA+Ts/2におけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、タイミングA−Ts/4(もしくはA+Ts/4)におけるメトリック累積値を推定する。
【0048】
最後に、タイミング検出処理回路8では、前述の実施の形態1と同様に、補間処理後のメトリック累積値を用いて、2つに絞り込んだタイミングの候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選び出す。なお、各標本化タイミングに対して、複数の伝送路メモリ長を有するブライド等化器を用意したため、伝送路メモリ長の選択によっては、タイミングがシンボル単位でずれることがある。そこで、タイミング検出処理回路8では、各信頼度情報作成/タイミング検出回路から受け取ったUW先頭位置情報に基づいて、このシンボル単位のずれを補正する。
【0049】
このように、本実施の形態においては、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な複数の信頼度情報作成/タイミング検出回路を準備しているので、符号間干渉下においても先行波タイミングを高い精度で推定することができる。
【0050】
また、本実施の形態においては、たとえば、Tsの分解能であるメトリック累積値において、インパルス応答が互いにTs/2だけ異なる受信フィルタの追加する構成とし、さらに、補間処理を用いて分解能をTs/4に細かくする構成としたため、先行波のタイミングの検出精度を、実施の形態1よりもさらに高めることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上、説明したとおり、本発明によれば、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な複数の情報生成手段を備える構成としたため、符号間干渉下においても先行波のタイミングを高い精度で推定することが可能なタイミング検出装置を得ることができる、という効果を奏する。
【0052】
つぎの発明によれば、インパルス応答が互いに異なるフィルタ手段の追加する構成とし、さらに、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な複数の信頼度情報作成/タイミング検出回路を備える構成としたため、符号間干渉下において、先行波タイミングをさらに高い精度で推定することが可能なタイミング検出装置を得ることができる、という効果を奏する。
【0053】
つぎの発明によれば、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な情報生成ステップを含むこととしたため、符号間干渉下においても先行波のタイミングを高い精度で推定することができる、という効果を奏する。
【0054】
つぎの発明によれば、たとえば、Tsの分解能であるメトリック累積値において、補間処理を用いて分解能をTs/2に細かくすることとしたため、先行波のタイミングの検出精度を高めることができる、という効果を奏する。
【0055】
つぎの発明によれば、インパルス応答が互いに異なるフィルタステップと、推定伝送路メモリ長の候補数に対応可能な情報生成ステップと、を含むこととしたため、符号間干渉下において、先行波タイミングをさらに高い精度で推定することができる、という効果を奏する。
【0056】
つぎの発明によれば、たとえば、Tsの分解能であるメトリック累積値において、インパルス応答が互いにTs/2だけ異なるフィルタを追加し、補間処理を用いて分解能をTs/4に細かくすることとしたため、先行波のタイミングの検出精度を、さらに高めることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるタイミング検出装置の実施の形態1の構成を示す図である。
【図2】 信頼度情報/タイミング検出回路の構成を示す図である
【図3】 オーバーサンプルの原理を示す図である。
【図4】 メトリック累積値の分布の一例を示す図である。
【図5】 補間処理によるメトリック累積値選択の一例を示す図である。
【図6】 タイミング候補がタイミングAとA+Ts/2に絞り込まれた場合を示す図である。
【図7】 近似したMLとMRを示す図である。
【図8】 先行波のタイミングの判定方法を示す図である。
【図9】 タイミング候補がAとA+Ts/2に絞り込まれた場合の先行波のタイミングの判定方法を示す図である。
【図10】 タイミング候補がAとA+Ts/2に絞り込まれた場合の先行波のタイミングの判定方法を示す図である。
【図11】 本発明にかかるタイミング検出装置の実施の形態2の構成を示す図である。
【図12】 各受信フィルタのインパルス応答を示す図である。
【図13】 メトリック累積値の分布の一例を示す図である。
【図14】 補間処理によるメトリック値推定の一例を示す図である。
【図15】 従来のタイミング検出装置の構成を示す図である。
【図16】 遅延のない受信信号の判定データと1シンボル周期遅延を与えられた受信信号の判定データとの間に極性変化があり、遅延のない受信信号が正極性時の動作を示す図である。
【図17】 遅延のない受信信号の判定データと1シンボル周期遅延を与えられた受信信号の判定データとの間に極性変化があり、遅延のない受信信号が負極性時の動作を示す図である。
【図18】 問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
1 受信信号入力端子、2 タイミング誤差検出値出力端子、3 オーバーサンプル標本化器、4,4A 受信系列出力回路、5−1〜5−n,6−1〜6−n,7−1〜7−n 信頼度情報作成/タイミング検出回路、8 タイミング検出処理回路、11 ブラインド等化器、12 UW(ユニークワード)検出回路、13 平均化回路、21A,21B 受信フィルタ、22,23 信頼度情報作成/タイミング検出回路。
Claims (6)
- 先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出するタイミング検出装置において、
受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化手段と、
標本化後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配手段と、
前記各信号系列単位に複数の伝送路メモリ長を有するブラインド等化器を用意し、前記ブラインド等化器が出力する判定データを用いて検出したユニークワード検出結果と、前記ブラインド等化器が出力するデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック値を用いて計算したパスメトリック累積値と、を出力する複数の情報生成手段と、
前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択し、さらに、前記ユニークワード検出結果を用いて、前記選択により決定される伝送路メモリ長によって発生するシンボル単位のタイミングのずれを補正するデータ選択手段と、
を備えることを特徴とするタイミング検出装置。 - 先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出するタイミング検出装置において、
受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化手段と、
異なるタップ係数を保有し、標本化後の信号をフィルタリングする2種類のフィルタ手段と、
前記フィルタリング処理後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配回路と、
前記各信号系列単位に、ユニークワード検出結果とデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値とを出力する複数の情報生成手段と、
前記ユニークワード検出結果および前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択するデータ選択手段と、
を備えることを特徴とするタイミング検出装置。 - 先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出するタイミング検出方法にあっては、
受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化ステップと、
標本化後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配ステップと、
前記各信号系列単位に複数の伝送路メモリ長を有するブラインド等化器を用意し、前記ブラインド等化器が出力する判定データを用いて検出したユニークワード検出結果と、前記ブラインド等化器が出力するデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック値を用いて計算したパスメトリック累積値と、を出力する情報生成ステップと、
前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択し、さらに、前記ユニークワード検出結果を用いて、前記選択により決定される伝送路メモリ長によって発生するシンボル単位のタイミングのずれを補正するデータ選択ステップと、
を含むことを特徴とするタイミング検出方法。 - 前記データ選択ステップにあっては、
Ts精度で受け取ったすべてのメトリック累積値のなかから最も信頼度の高いメトリック累積値のタイミングをAとした場合、
先行波のタイミングをA−Ts/2、A、A+Ts/2の3つに絞り込む第1のステップと、
A−TsとA+Tsにおけるメトリック累積値の大小比較を行い、A−Tsのメトリック累積値の方が小さい場合、Ts/2精度のタイミング候補をA−Ts/2とAの2つに絞り込み、一方、A+Tsのメトリック累積値の方が小さい場合、当該タイミング候補をAとA+Ts/2の2つに絞り込む第2のステップと、
A、A−Ts、A+Tsにおけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、A−Ts/2またはA+Ts/2のメトリック累積値を推定する第3のステップと、
補間処理後のメトリック推定値を用いて、2つのタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして絞り込む第4のステップと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載のタイミング検出方法。 - 先行波(遅延波がない場合も含む)のタイミングを検出するタイミング検出方法において、
受信信号をシンボルレート以上の速度で標本化する標本化ステップと、
異なるタップ係数を保有し、標本化後の信号をフィルタリングする2種類のフィルタステップと、
前記フィルタリング処理後の信号を単一の信号系列または複数の標本化タイミングの異なる信号系列に分配する信号系列分配ステップと、
前記各信号系列単位に、ユニークワード検出結果とデータ系列全体の信頼度情報であるパスメトリック累積値とを出力する情報生成ステップと、
前記ユニークワード検出結果および前記パスメトリック累積値に基づいて、複数のタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして選択するデータ選択ステップと、
を含むことを特徴とするタイミング検出方法。 - 前記データ選択ステップにあっては、
Ts精度で受け取ったすべてのメトリック累積値のなかから最も信頼度の高いメトリック累積値のタイミングをAとした場合、
先行波のタイミングをA−Ts/4、A、A+Ts/4の3つに絞り込む第1のステップと、
A−Ts/2とA+Ts/2におけるメトリック累積値の大小比較を行い、A−Ts/2のメトリック累積値の方が小さい場合、Ts/4精度のタイミング候補をA−Ts/4とAの2つに絞り込み、一方、A+Ts/2のメトリック累積値の方が小さい場合、当該タイミング候補をAとA+Ts/4の2つに絞り込む第2のステップと、
A、A−Ts/2、A+Ts/2におけるメトリック累積値を用いて補間処理を行い、A−Ts/4またはA+Ts/4のメトリック累積値を推定する第3のステップと、
補間処理後のメトリック推定値を用いて、2つのタイミング候補のなかからいずれか1つを先行波のタイミングとして絞り込む第4のステップと、
を含むことを特徴とする請求項5に記載のタイミング検出方法。
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