JP3657503B2 - 均圧用シリンダ装置およびその均圧用シリンダ装置の組付方法 - Google Patents

均圧用シリンダ装置およびその均圧用シリンダ装置の組付方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプレス機械の均圧クッション装置に係り、特に、複数の流体シリンダのピストンロッドがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を略均等に伝達する均圧用シリンダ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械の一種に、(a) しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドと、(b) そのクッションパッドに配設されるとともに圧力室が互いに連通させられた複数の流体シリンダと、(c) その流体シリンダのピストンロッドとしわ押え型との間に介在させられた複数のクッションピンとを備え、(d) 前記移動抵抗に基づいて前記しわ押え型とダイス型との間でプレス素材を挟圧してしわ押えする際に、前記ピストンロッドがそれぞれ中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を略均等に伝達する均圧クッション装置を有し、(e) そのしわ押え型およびダイス型が前記プレス素材を挟圧した状態で前記クッションパッドと共に前記移動抵抗に抗してポンチ型に対してプレス方向へ相対移動させられることにより、そのポンチ型の成形面に沿ってそのプレス素材を成形(絞り加工)するものがある。実開平1−60721号公報に記載されている装置や図10のプレス機械8はその一例で、このようなプレス機械においては、クッションピンの長さ寸法のばらつきやクッションパッドの傾き等に拘らず、油圧シリンダの油圧を介してしわ押え荷重が略均等にクッションピンに伝達されるため、クッションピンの配設形態に応じて所望するしわ押えの荷重分布が得られるようになる。
【0003】
図10のプレス機械8について具体的に説明すると、ポンチ型10が取り付けられるボルスタ12はプレスキャリア14を介してベース16上に配設されている一方、ダイス型18が取り付けられるプレススライド20は図示しない駆動機構により上下方向へ駆動されるようになっている。ボルスタ12には、クッションピン22を配設するために多数の貫通孔24が碁盤目状に設けられており、ボルスタ12の下方には、それ等のクッションピン22を支持するクッションパッド26が略水平な姿勢で配設されている。クッションピン22は、上記ポンチ型10と共に配設されるしわ押え型(しわ押えリング)28を支持するもので、そのしわ押え型28の形状に応じて予め定められた所定の位置に任意の数だけ配設される。ポンチ型10には、クッションピン22の配設位置に対応して複数の貫通孔が設けられている。また、クッションパッド26は、上記貫通孔24に対応して多数の油圧シリンダ30を備えており、クッションピン22の下端部はそれぞれその油圧シリンダ30のピストンロッドに当接させられるようになっている。上記ポンチ型10はプレス下型に相当し、ダイス型18はプレス上型に相当し、油圧シリンダ30は流体シリンダに相当する。
【0004】
上記クッションパッド26は、前記プレスキャリア14内に上下方向の移動可能に配設されており、常にはエアシリンダ32により上方へ付勢されている。エアシリンダ32の圧力室はエアタンク34に連通させられているとともに、そのエアタンク34には、エア圧源36からエア圧制御回路38を介して圧力エアが供給されるようになっている。エアタンク34には、開閉弁37およびエア圧センサ39が接続されており、上記エア圧制御回路38および開閉弁37により、エアタンク34やエアシリンダ32内のエア圧Paがしわ押え荷重に応じて調圧される。すなわち、前記ダイス型18がプレススライド20と共に下降させられると、エアシリンダ32のエア圧Paに基づく付勢力に従ってダイス型18としわ押え型28との間でプレス素材40の周縁部が挟圧されてしわ押えされ、その状態でしわ押え型28およびダイス型18がクッションパッド26と共にエアシリンダ32の付勢力に抗して更に下降させられると、ポンチ型10の成形面に沿って絞り加工が行われるのである。本実施例ではエアシリンダ32,エアタンク34,エア圧源36,およびエア圧制御回路38等を含んでしわ押え荷重付与手段42が構成されており、エアシリンダ32の付勢力すなわちエア圧Paはクッションパッド26の移動抵抗に対応する。また、エアシリンダ32はガスシリンダ、更には圧縮性流体を用いた流体シリンダに相当する。
【0005】
前記複数の油圧シリンダ30の油圧室(圧力室)は、油路46を介して互いに連通させられているとともに、油路46はフレキシブルチューブ48を介して配管50に接続され、エア駆動式の油圧ポンプ52によってタンク54から汲み上げられた作動油が逆止弁56を経て供給されるようになっている。配管50には、リリーフ弁等を備えた油圧制御回路58が接続されており、この油圧制御回路58および上記油圧ポンプ52により配管50や油圧シリンダ30内の作動油の油圧Psが、絞り加工時にしわ押えに関与する総ての油圧シリンダ30、すなわち前記クッションピン22が配設された油圧シリンダ30のピストンロッドが中立状態となるように調圧される。これにより、複数のクッションピン22からしわ押え型28にしわ押え荷重が均等に伝達される。上記油圧Psは、油路46に接続された油圧センサ60によって検出されるようになっている。本実施例では、クッションピン22、クッションパッド26、油圧シリンダ30、前記しわ押え荷重付与手段42を含んで均圧クッション装置44が構成されている。
【0006】
上記油圧Ps、前記エア圧Paの調圧制御は、図示しない制御装置により行われるようになっており、プレス金型の段替え時などプレス加工に先立ってそれぞれ所定の圧力Ps0 、Pa0 に調圧される。油圧Ps0 は、プレス加工時に油圧シリンダ30のピストンロッドが中立状態となるように、試打や演算式などによって設定される。演算式によって求める場合、例えば油圧シリンダ30のピストンロッドの平均追い込み寸法をXav、油圧シリンダ30の受圧面積をAs、使用する作動油の体積弾性係数をK、油量をV、しわ押え荷重をFs、クッションピン22の使用本数すなわちしわ押えに関与する油圧シリンダ30の数をnとすると、油圧Ps0 は次式(1) を満足するように定められる。平均追い込み寸法Xavは、総てのクッションピン22をしわ押え型28に当接させるためのピストンロッドの追い込みストロークであり、クッションピン22の長さ寸法のばらつきやクッションパッド26の傾き等に拘らず、総てのピストンロッドがクッションピン22によってシリンダ内へ押し込まれるとともに、プレス加工時の衝撃等に拘らずストローク端に達することがないように、予め実験等によって定められる。また、油量Vは、総ての油圧シリンダ30のピストンロッドが突き出し端に位置させられた状態において、その油圧シリンダ30の油圧室内やその油圧室に連通している一連の油圧回路内の作動油の全容量である。
Xav=(Fs−n・As・Ps0 )V/n2 ・As2 ・K ・・・(1)
【0007】
また、エア圧Pa0 は、所定のしわ押え荷重Fsが得られるように、例えばエアシリンダ32の受圧面積Aa、クッションパッド26の重量Wc、クッションパッド26の摺動抵抗ΔFc、クッションピン22の使用本数n、クッションピン22の重量Wp、しわ押え型28の重量Wrを用いて次式(2) に従って求められる。しわ押え荷重Fsは、所望するプレス品質が得られるように予めトライプレスなどによって設定される。なお、プレス加工時には、クッションパッド26の下降に伴ってエア容積が減少し、それに伴ってエア圧Paは上昇するため、プレス下死点で所望のエア圧Paが得られるように初期エア圧Pa0 を設定することも可能である。
Pa0 =(Fs+Wc+n・Wp+Wr−ΔFc)/Aa ・・・(2)
【0008】
一方、図11に示すように、前記油路46が設けられた平板状のマニホールド64に複数の油圧シリンダ30を一体的に組み付けた均圧用シリンダ装置62を用いて、複数の油圧シリンダ30をクッションパッド26上に容易且つ迅速に配設することが考えられている。マニホールド64には、油路46に連通するように複数の取付穴66が設けられ、油圧シリンダ30のシリンダハウジング68に突設された嵌合凸部70が取付穴66内に嵌め入れられた状態で、図示しないボルト等によって一体的に固設されるようになっている。また、シリンダハウジング68には有底穴72が設けられており、シリンダロッド74を軸方向の摺動可能に保持しているロッドガイド76が一体的に螺合されることにより、油路46に連通する油圧室(圧力室)78が形成されるようになっている。シリンダロッド74の下端部には大径部80が一体に設けられ、ロッドガイド76との係合によって上方への抜出しが阻止されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようにマニホールド64上に油圧シリンダ30を配設すると、均圧用シリンダ装置62の全体の高さ寸法Hが大きくなり、油圧シリンダ30等の均圧化装置を備えていない従来のプレス機械にそのまま適用することができない場合があった。すなわち、従来の均圧化装置を備えていないプレス機械は、クッションパッド26上にウェハープレートが固設され、そのウェハープレート上にクッションピン22が載置されるようになっているため、そのウェハープレートを取り外して均圧用シリンダ装置62を配設することになるが、高さ寸法Hが大きくてそのまま取り付けることができない場合には、例えばクッションパッド26を取り外して薄くしたり作り替えたりするなど、大掛かりで面倒な作業が必要であった。
【0010】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、マニホールドに複数の流体シリンダを組み込んだ均圧用シリンダ装置の高さ寸法をできるだけ小さくすることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、圧力室が互いに連通させられた複数の流体シリンダが設けられ、しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドに配設されるとともに、その流体シリンダのピストンロッドとしわ押え型との間にクッションピンが介在させられ、前記移動抵抗に基づいてそのしわ押え型とダイス型との間でプレス素材が挟圧される際に、前記ピストンロッドがそれぞれ前記圧力室内に押し込まれて中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を略均等に伝達するプレス機械の均圧用シリンダ装置であって、(a) 平板状の共通のマニホールドを備えており、そのマニホールドには、複数の有底穴が形成されているとともに、その複数の有底穴を互いに連通させるように連通路が設けられている一方、(b) 前記ピストンロッドを軸方向の摺動可能、且つ突出方向への抜出し不能に保持しているロッドガイドが、前記有底穴の開口部に一体的に固設されることにより、その複数の有底穴部分に、それぞれその有底穴が前記圧力室として機能するように前記流体シリンダが一体的に組み込まれていることを特徴とする。
【0012】
第2発明は、第1発明の均圧用シリンダ装置において、前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面には、所定の流体量を確保できるように凹所が設けられていることを特徴とする。
【0013】
第3発明は、第2発明の均圧用シリンダ装置において、前記凹所の底部には前記ピストンロッドの側面に開口するエア抜き穴が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第4発明は、第1発明〜第3発明の何れかの均圧用シリンダ装置において、前記流体シリンダは、前記ピストンロッドが鉛直方向の上向きになる姿勢でプレス機械に配置されて使用されるもので、前記ロッドガイドから上方へ突き出しているそのピストンロッドの先端部には、そのロッドガイドとピストンロッドとの間の摺動部へ異物が侵入することを防止するカバー装置が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5発明は、第4発明の均圧用シリンダ装置において、前記カバー装置は、前記ピストンロッドから外周側へ延び出して前記ロッドガイドの外周縁部に達する底部と、その底部の外周縁から下方へ延び出して前記ロッドガイドの外周側に位置するそのロッドガイドの外周形状に対応する形状の筒状部と、を一体的に備えている有底筒形状のダストカバーであることを特徴とする。
【0016】
第6発明は、第4発明の均圧用シリンダ装置において、前記カバー装置は、円環形状の伸縮可能な薄肉弾性体製のダストシールで、そのダストシールの内周縁部は、前記ロッドガイドから上方へ突き出している前記ピストンロッドの外周部に取り付けられている一方、そのダストシールの外周縁部は、そのピストンロッドの上下変位に拘らず前記ロッドガイドに接触する状態に保持されて前記摺動部への異物の侵入を防止するものであることを特徴とする。
【0017】
第7発明は、第6発明の均圧用シリンダ装置において、前記ダストシールの内周縁部は、前記ピストンロッドの外周面に設けられた環状の装着溝に嵌め込まれて取り付けられている一方、そのダストシールの外周縁部は、そのピストンロッドの上下変位に拘らず自重で前記ロッドガイドの上端面に接触する状態に保持されるものであることを特徴とする。
【0018】
第8発明は、第6発明または第7発明の均圧用シリンダ装置において、前記ダストシールの内周縁部および外周縁部の何れか一方または両方に厚肉部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
第9発明は、第1発明〜第8発明の何れかの均圧用シリンダ装置の組付方法であって、(a) 前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、その複数の有底穴および前記連通路に流体を充填する流体充填工程と、(b) その流体が充填された前記有底穴内に、エアが混入しないように前記ピストンロッドを挿入するとともに、前記ロッドガイドを該有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
第10発明は、前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面に凹所が設けられている第2発明または第3発明の均圧用シリンダ装置の組付方法であって、(a) 前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、その複数の有底穴および連通路に流体を充填するとともに、前記ピストンロッドの前記凹所内に流体を充填してその凹所の開口部を閉塞部材で閉塞する流体充填工程と、(b) その流体が充填された前記凹所が下向きになる姿勢で前記ピストンロッドを前記有底穴の上方へ移動し、前記閉塞部材がその有底穴内の流体に接するか埋没する状態で、その閉塞部材を取り除いてそのピストンロッドをその有底穴内に挿入するとともに、前記ロッドガイドをその有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
第11発明は、前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面に凹所が設けられているとともに、その凹所の底部にエア抜き穴が設けられている第3発明の均圧用シリンダ装置の組付方法であって、(a) 前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、その複数の有底穴および連通路に流体を充填する流体充填工程と、(b) その流体が充填された前記有底穴内に、前記エア抜き穴がその流体内に埋没するまで前記ピストンロッドを挿入することにより、そのエア抜き穴および前記凹所内のエアを放出させつつその凹所およびエア抜き穴内にその有底穴内の流体を流入させるとともに、前記ロッドガイドをその有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
【発明の効果】
このような均圧用シリンダ装置においては、マニホールドに設けられた有底穴によって流体シリンダの圧力室が構成され、その有底穴の開口部にロッドガイドが一体的に固設されることにより、ピストンロッドを軸方向の摺動可能且つ抜出し不能に保持するようになっているため、マニホールドを含めた均圧用シリンダ装置の全体の高さ寸法が低くなり、従来のプレス機械にそのまま設置できる可能性が高くなる。また、マニホールドがシリンダハウジングを兼ねているため、流体シリンダの分布密度を低下させることなく、ピストンロッドの受圧面積(前記受圧面積Asに相当)すなわちロッドガイドで保持される部分の径寸法を大きくすることが可能で、それだけ流体圧(前記油圧Ps0 に相当)を低下させることができるようになり、各部の要求強度やシール性能などが緩和される。
【0023】
第2発明では、ピストンロッドの端面に凹所が設けられて所定の流体量(前記油量Vに相当)を確保できるようになっているため、有底穴を浅くして薄肉のマニホールドを採用することにより、高さ寸法を一層小さくできるとともに、共通のマニホールドを使用しつつ、ピストンロッドの凹所の大きさを変更することにより、しわ押え荷重Fsやクッションピンの使用本数n、流体の体積弾性係数Kなどに応じて、ピストンロッドが中立状態になるように流体量を調整することができる。
【0024】
第3発明では、上記凹所の底部に、ピストンロッドの側面に開口するエア抜き穴が設けられているため、例えば第11発明のように前記有底穴内に予め流体を充填するなどしてピストンロッドおよびロッドガイドをマニホールドに一体的に組み付ける際に、凹所内にエアが残留しないように容易に組付作業を行うことができる。
【0025】
第4発明では、ピストンロッドの先端部にカバー装置が設けられ、ピストンロッドとロッドガイドとの間の摺動部への異物の侵入が防止されるようになっているため、異物の侵入による疵付などで流体漏れを生じることが抑制され、優れた耐久性が得られるようになる。
【0026】
第6発明では、カバー装置として、円環形状の伸縮可能な薄肉弾性体製のダストシールが用いられているため、安価に構成される。第7発明では、ピストンロッドの外周面に環状の装着溝が設けられて、ダストシールの内周縁部はその装着溝に嵌め込まれて取り付けられ、ダストシールの外周縁部は、ピストンロッドの上下変位に拘らず自重でロッドガイドの上端面に接触する状態に保持されるようになっているため、取付作業や交換作業が簡単である。
【0027】
第8発明では、上記ダストシールの内周縁部および外周縁部の何れか一方または両方に厚肉部が設けられているため、内周縁部については、その強度が高くなって、例えば第7発明の装着溝への嵌め込み作業などが容易になるとともに、装着溝からの離脱が良好に防止される。外周縁部についても強度が高くなるため、例えば外周縁部をロッドガイドの上端面に設けられた装着溝に嵌め入れて固定する場合には、その嵌め込み作業が容易になる。また、例えば第7発明のように自重でロッドガイドの上端面に接触させられる場合は、重量の増加で上端面に密着して載置されるようになり、異物の侵入が一層効果的に防止される。
【0028】
第9発明では、マニホールドの複数の有底穴および連通路に流体を充填した状態で、ピストンロッドを挿入するとともにロッドガイドを固設するため、エアの混入を防止しつつそれ等を組み付けることができる。
【0029】
第10発明、第11発明は、実質的に第9発明の一実施態様に相当するもので、第9発明と同様の効果が得られるとともに、第10発明では、ピストンロッドの凹所内に流体を充填して組み付けるようになっているため、その凹所内にエアが残留する恐れがない。また、第11発明では、凹所の底部にエア抜き穴が設けられていることから、組付時に凹所内のエアがエア抜き穴から放出されるようになり、第10発明のように凹所内に流体を充填することなく、容易に組付作業を行うことができる。
【発明の実施の形態】
本発明の均圧用シリンダ装置は、例えば前記図10のプレス機械8に好適に適用される。すなわち、ダイス型18がプレス上型で、プレス下型である位置固定のポンチ型10に対して下方へ向かって上下駆動されるとともに、移動抵抗として下降抵抗が付与されるクッションパッド26上に均圧用シリンダ装置が配置され、各流体シリンダのピストンロッド上にそれぞれクッションピン22が配置されて、その上端部でしわ押え型28を支持するように構成される。但し、ダイス型或いはポンチ型を水平方向など上下以外の方向へ移動させてプレス加工を行うものであっても良い。
【0030】
しわ押え荷重付与手段としては、圧縮性流体を用いた流体シリンダ、例えば前記図10のプレス機械8におけるエアシリンダ32等のガスシリンダが好適に用いられ、移動抵抗はエア圧等の流体圧によって付与されるように構成されるが、スプリング等のばね力を利用したものや、油などの流体を所定のリリーフ圧で流出させて移動抵抗を付与するものなど、種々のしわ押え荷重付与手段を採用できる。
【0031】
流体シリンダとしては、油圧シリンダが好適に用いられるが、作動油以外の液体やゲル状の流体などを用いた流体シリンダを使用することも可能である。複数の流体シリンダに連通する一連の流体回路は、例えば前記図10のプレス機械8のように逆止弁などによって遮断され、プレス加工時には逆止弁からの流入を除いて流体の出入りは阻止されるとともに、その容積は、プレス加工(しわ押え)に伴う流体シリンダの容積変化を除いて一定に保持されるように構成されるが、プレス加工時に流体をリリーフしてピストンロッドを中立状態にするなど、種々の態様を採用できる。要するに、プレス加工時にピストンロッドが中立状態とされることにより、流体を介してしわ押え荷重が略均等に伝達されるようになっておれば良い。
【0032】
ピストンロッドは、例えば圧力室側の端部に大径部が一体に設けられ、その大径部がロッドガイドと係合させられることによって突出方向への抜出しが阻止されるように構成されるが、突出方向への抜出しを阻止する種々の係合形態が可能である。
【0033】
マニホールドには、例えば碁盤目状に有底穴が設けられて流体シリンダが組み込まれるが、流体シリンダの配設形態は適宜定められ、長手状のマニホールドに複数の流体シリンダを一列で組み込むだけでも良い。
【0034】
第3発明では、ピストンロッドに凹所が設けられるとともに、その凹所に連通してエア抜き穴が設けられているが、第2発明の実施に際してはエア抜き穴が無くても差し支えなく、例えば第10発明のようにして凹所内にエアが残留しないようにピストンロッド等を組み付けることが可能である。第1発明の実施に際しては、必ずしも凹所やエア抜き穴は必須でない。
【0035】
第4発明では、ピストンロッドが鉛直方向の上向きになる姿勢でプレス機械に配置されて使用されるが、他の発明の実施に際しては必ずしもそのように限定されない。
【0036】
第5発明のダストカバーの筒状部とロッドガイドとの間には隙間が生じることが避けられないが、筒状部の開口端とロッドガイドの外周面との間に伸縮可能なゴム等の弾性シール部材を取り付けて略密閉することもできる。筒状部の形状は、ロッドガイドの外周形状に対応して円筒形状や角筒形状など適宜設定される。
【0037】
第5発明のダストカバーは有底円筒形状を成しており、その底部がピストンロッドの先端を完全に覆蓋する状態でボルト等によって固定され、その底部上にクッションピンが載置されるように構成することもできるが、底部の中心に貫通穴を形成し、ピストンロッドの先端面がその貫通穴から露出する状態で取り付けて、クッションピンがピストンロッドの先端面に当接する状態で載置されるようにしても良い。
【0038】
第6発明のダストシールは、例えばピストンロッドが押し込まれた状態において平坦な一平面内に略位置させられ、ピストンロッドが上方へ突き出した状態では截頭円錐形状になるように装着されるが、ダストシールの初期形状、すなわち成形形状は、平坦な一平面内に位置するものでも截頭円錐形状であっても良い。截頭円錐形状の場合は、外周縁部がロッドガイドの上端面に一層良好に密着させられる。なお、ピストンロッドが押し込まれた状態においても、内周縁部が盛り上がった截頭円錐形状を成すようになっていても良い。
【0039】
第7発明では、ダストシールの内周縁部は、ピストンロッドの外周面に設けられた環状の装着溝に嵌め込まれて取り付けられている一方、ダストシールの外周縁部は、ピストンロッドの上下変位に拘らず自重でロッドガイドの上端面に接触する状態に保持されるが、第6発明の実施に際しては、例えばロッドガイドの上端面に円環状の装着溝を設けて、その装着溝内にダストシールの外周縁部を嵌め入れて取り付けることもできるし、ボルトなどの固定手段を用いて固定することもできるなど、内周縁部および外周縁部の取付形態は適宜定められる。
【0040】
ロッドガイドの上端面は、ピストンロッドの軸心に対して垂直な平坦面であっても良いが、ピストンロッドから離間するに従って下方へ傾斜するテーパ面とすることも可能で、その場合は、油や埃等の異物が上端面に堆積することなく外周側へ滑り落ちるようになり、ロッドガイドとピストンロッドとの摺動部への異物の侵入が一層効果的に防止される。
【0041】
第8発明の厚肉部としては、例えば断面が略円形の円形リップが好適に採用されるが、他の断面形状とすることもできる。また、肉厚の上下方向へ略均等に増肉するものでも良いが、外周縁部の厚肉部については、ロッドガイドの上端面に接する下面側へのみ増肉すれば、ダストシール上に異物が堆積することが防止されるとともに、上端面に載置するだけの第7発明においても、外周縁部の上方への反り返り(まくれ上がり)が防止されてシール性能が一層向上する。ピストンロッドの上下変位に伴って外周縁部が縮径および拡径する場合、特にピストンロッドの下降に伴って外周縁部が拡径させられる際に、摺動抵抗で上方へ反り返る可能性があるが、下面側へのみ増肉して断面を略L字形状にすると、自身の弾性で反対側への反り返りが良好に抑制されるのである。
【0042】
第9発明〜第11発明の組付方法は一例であり、他の組付方法を用いて本発明の均圧用シリンダ装置を組み付けることも可能である。
【0043】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である均圧用シリンダ装置100を示す図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB−B断面を示す図であり、前記図10のプレス機械8において多数の油圧シリンダ30の代わりにクッションパッド26上に一体的に配置されて使用される。この均圧用シリンダ装置100は、平板状の共通のマニホールド102の上面に、碁盤目状に多数(実施例では16)の油圧シリンダ104を一体的に組み付けたもので、各油圧シリンダ104は図2に示すように構成されている。組み付ける油圧シリンダ104の数は適宜定められるとともに、単一のプレス機械8のクッションパッド26上に均圧用シリンダ装置100を複数配置して使用することもできる。油圧シリンダ104は流体シリンダに相当する。
【0044】
図2の(a) は平面図で、(b) は(a) におけるB−B断面図であり、前記マニホールド102には、油圧シリンダ104を組み付ける部分にそれぞれ有底穴106が形成されているとともに、その複数の有底穴106を互いに連通させるように複数の連通路108が設けられている。連通路108は、図1から明らかなようにマニホールド102の側面から穴明け加工によって形成したもので、開口部にはそれぞれ雄ねじなどの止め栓110が設けられて密閉されるとともに、一部の連通路108が前記フレキシブルチューブ48に接続されて油圧制御が行われる。
【0045】
油圧シリンダ104のピストンロッド112は、円柱形状のロッド本体114と、そのロッド本体114の一端部に一体に設けられたロッド本体114よりも大径の大径部116とを備えており、大径部116側が下側になって有底穴106内に挿入される姿勢で配置されている。ピストンロッド112のロッド本体114の外周側には、嵌合穴を有するロッドガイド118が軸方向の摺動可能に嵌合され、そのロッドガイド118が複数(図では12本)のボルト120によって有底穴106の開口部に一体的に固設されることにより、ピストンロッド112が軸方向の摺動可能、且つ突出方向(上方)への抜出し不能に保持されており、これにより、有底穴106が圧力室122として機能するように油圧シリンダ104がマニホールド102に一体的に組み込まれている。図2(b) の中心線より左側は、ピストンロッド112の大径部116がロッドガイド118に係合する突出端(上昇端)に保持された状態で、右側はピストンロッド112が有底穴106の底面に当接する押込み端(下降端)に保持された状態である。
【0046】
上記ロッドガイド118には、有底穴106内に嵌合される嵌合凸部119が一体に突設されており、この嵌合凸部119が有底穴106に嵌合されることにより、ロッドガイド118更にはピストンロッド112が有底穴106と同心に位置決めされる。また、ロッド本体114の外周面にはロッドシール124が嵌着され、ロッドガイド118の嵌合穴との間が液密にシールされているとともに、ロッドガイド118の下面にはOリング126が配設され、マニホールド102との間が液密にシールされている。
【0047】
ピストンロッド112の大径部116側の端面には凹所128が設けられ、その凹所128によって前記油量Vを確保できるようになっているとともに、その凹所128の底部にはピストンロッド112の側面に開口するようにエア抜き穴130が設けられ、ピストンロッド112およびロッドガイド118をマニホールド102に組み付ける際に、凹所128内にエアが残留しないように容易に組付作業を行うことができるようになっている。図3は組付手順の一例を説明する図で、(a) では有底穴106が上向きに開口するようにマニホールド102を保持して、その有底穴106および連通路108内に作動油を充填し、(b) では有底穴106の底面に当接するまでピストンロッド112を挿入する。この時、凹所128内に作動油が流入するとともに、凹所128内のエアはエア抜き穴130からピストンロッド112の外部へ流出する。ピストンロッド112の大径部116側の端部が有底穴106の底面に当接した状態で、エア抜き穴130は寸法dだけ有底穴106内に埋没するように設けられており、凹所128およびエア抜き穴130内は作動油で満たされる。寸法dは0より大きければ良い。そして、その状態で(c) のようにロッドガイド118の嵌合凸部119を有底穴106内に嵌合してボルト120により一体的に締結することにより、完全にエア抜きされた状態でピストンロッド112およびロッドガイド118がマニホールド102に組み付けられる。(a) の状態の作動油の充填量は、少なくとも(b) の状態で有底穴106の上端開口付近まで達するように定められれば良い。マニホールド102の有底穴106および連通路108内に作動油を充填する(a) の工程が流体充填工程で、有底穴106内にピストンロッド112を挿入するとともにロッドガイド118をボルト120により有底穴106の開口部に一体的に締結する(b) および(c) の工程が挿入固設工程である。
【0048】
図4は、組付手順の別の例を説明する図で、(a) では例えばピストンロッド112を上下反転するなどして凹所128およびエア抜き穴130内に作動油を充填し、凹所128の開口部を薄肉シート132によって閉塞する。ピストンロッド112のロッド本体114に予めロッドガイド118が嵌合され、嵌合凸部119が大径部116に当接させられることにより、エア抜き穴130の開口部はロッドガイド118によって略閉塞され、凹所128およびエア抜き穴130内に作動油が保持される。一方、有底穴106が上向きに開口するようにマニホールド102を保持して、その有底穴106および連通路108内に作動油を充填し、(b) に示すように上記ピストンロッド112を凹所128が下向きになる姿勢でロッドガイド118と共に有底穴106の上方へ移動し、薄肉シート132が有底穴106内の作動油に接するか埋没する状態で、その薄肉シート132を引き抜いてロッドガイド118の嵌合凸部119などを有底穴106内に挿入し、ボルト120によりマニホールド102に一体的に締結する。この場合も、エア抜きした状態でピストンロッド112およびロッドガイド118をマニホールド102に一体的に組み付けることができるが、このような組付態様においては、エア抜き穴130は必ずしも必要でない。上記ピストンロッド112の凹所128およびエア抜き穴130内に作動油を充填するとともに、マニホールド102の有底穴106および連通路108内に作動油を充填する工程が流体充填工程で、薄肉シート132を引き抜いてロッドガイド118の嵌合凸部119などを有底穴106内に挿入し、ボルト120によりマニホールド102に一体的に締結する工程が挿入固設工程である。上記薄肉シート132は閉塞部材に相当する。
【0049】
図2に戻って、ピストンロッド112は、図2(b) の中心線よりも右側に示すように押込み端(下降端)に保持された状態においても、上端部がロッドガイド118の上端面134よりも僅かに上方へ突き出すようになっており、その上端部には、カバー装置として円環形状を成す伸縮可能な薄肉弾性体製(本実施例ではゴム製)のダストシール136が装着されている。図5の拡大図から明らかなように、ピストンロッド112の上端部には比較的深い環状の装着溝138が設けられており、ダストシール136の内周縁部140は、その装着溝138内に嵌め込まれて取り付けられている。ピストンロッド112の上端には、装着溝138の溝底径よりも小径の載置面144が上方へ僅かに突き出すように設けられて、その載置面144上にクッションピン22が載置されるようになっており、プレス加工時の衝撃で載置面144がへたっても、クッションピン22がダストシール136に接触して損傷することが防止される。
【0050】
また、ダストシール136の外周縁部142は、ピストンロッド112の上下変位に拘らず自重でロッドガイド118の上端面134に接触する状態に保持されて、ピストンロッド112とロッドガイド118との摺動部(嵌合部)へ異物が侵入することが防止される。ピストンロッド112が押込み端に保持された状態において、ダストシール136は、ピストンロッド112の軸心に対して略垂直な上端面134に沿って平坦な一平面内に略位置させられ、ダストシール136の初期形状すなわち成形形状は、平坦な一平面内に位置するように定められているが、ピストンロッド112が上方の突出端へ移動させられると、ダストシール136は図2(b) の中心線よりも左側に示すように自重によって截頭円錐形状に弾性変形させられ、外周縁部142がロッドガイド118の上端面134に接触する状態に保持される。
【0051】
上記ダストシール136の内周縁部140および外周縁部142は、他の部分よりも肉厚が厚い厚肉部とされており、本実施例では、それぞれ肉厚の上下方向へ略均等に増肉する断面が略円形の円形リップが設けられている。内周縁部140が円形リップとされることにより、強度が高くなって装着溝138に対する嵌め込み作業が容易になるとともに、装着溝138からの離脱が良好に防止される。また、外周縁部142が円形リップとされることにより、その重量が重くなってロッドガイド118の上端面134に確実に密着して載置されるようになり、異物の侵入が一層効果的に防止される。なお、図2の(b) では、内周縁部140および外周縁部142の厚肉部が省略されている。
【0052】
このように、本実施例の均圧用シリンダ装置100は、マニホールド102に設けられた有底穴106によって油圧シリンダ104の圧力室122が構成され、その有底穴106の開口部にロッドガイド118が一体的に固設されることにより、ピストンロッド112を軸方向の摺動可能且つ抜出し不能に保持するようになっているため、マニホールド102を含めた均圧用シリンダ装置100の全体の高さ寸法H(図2(b) 参照)が図11の装置に比較して低くなり、従来のプレス機械にそのまま設置できる可能性が高くなる。
【0053】
また、マニホールド102がシリンダハウジングを兼ねているため、油圧シリンダ104の分布密度を低下させることなく、ピストンロッド112の受圧面積Asすなわちロッドガイド118で保持されるロッド本体114部分の径寸法を大きくすることが可能で、それだけ油圧Ps0 を低下させることができるようになり、各部の要求強度やシール性能などが緩和される。これにより、加工条件によっては例えば中圧(350×9.8×104 Pa程度以下)の領域を使用できるようになる。
【0054】
また、ピストンロッド112の端面に凹所128が設けられて所定の油量Vを確保できるようになっているため、有底穴106を浅くして薄肉のマニホールド102を採用することにより、高さ寸法Hを一層小さくできるとともに、共通のマニホールド102を使用しつつ、ピストンロッド112の凹所128の大きさを変更することにより、しわ押え荷重Fsやクッションピン22の使用本数n、作動油の体積弾性係数Kなどに応じて、ピストンロッド112が中立状態になるように油量Vを調整することができる。
【0055】
また、凹所128の底部には、ピストンロッド112の側面に開口するエア抜き穴130が設けられているため、例えば図3に示すように、有底穴106内に予め作動油を充填するなどしてピストンロッド112およびロッドガイド118をマニホールド102に一体的に組み付ける際に、凹所128内にエアが残留しないように容易に組付作業を行うことができる。
【0056】
また、ピストンロッド112の先端部に環状の装着溝138が設けられて、円環形状の薄肉弾性体製のダストシール136の内周縁部140がその装着溝138に嵌め込まれて取り付けられ、そのダストシール136の外周縁部142は、ピストンロッド12の上下変位に拘らず自重でロッドガイド118の上端面134に接触する状態に保持されるようになっているため、ピストンロッド112とロッドガイド118との間の摺動部への異物の侵入が良好に防止され、異物の侵入による疵付などで油漏れを生じることが抑制されて優れた耐久性が得られるようになる。
【0057】
また、ダストシール136は円環形状の薄肉弾性体製で、成形形状が平坦な一平面内に位置するようになっているため、簡単且つ安価に製造されるとともに、その内周縁部140をピストンロッド112の装着溝138に嵌め込むだけで良いため、取付作業や交換作業が簡単である。
【0058】
また、ダストシール136の内周縁部140および外周縁部142はそれぞれ厚肉の円形リップとされているため、内周縁部140の強度が高くなって装着溝138への嵌め込み作業が容易になるとともに、装着溝138からの離脱が良好に防止される一方、外周縁部142が重くなってロッドガイド118の上端面134に密着して載置され、異物の侵入が一層効果的に防止される。
【0059】
また、本実施例ではピストンロッド112の外周面に環状溝が設けられてロッドシール124が配設されているため、ロッドガイド118の強度(肉厚)を確保し易く、コンパクトに構成できる。
【0060】
次に、本発明の他の実施例を説明する。
図6は、ピストンロッド112の装着溝138に取り付けられるダストシールの別の例を示す図で、(a) のダストシール150は、前記ダストシール136と同様に成形形状が略平坦な一平面内に位置するとともに、円形リップの内周縁部140を有するものであるが、外周縁部152には、ロッドガイド118の上端面134に接する下面側へのみ増肉するように円形リップが設けられている。このようにすれば、ダストシール150上に異物が堆積することが防止されるとともに、外周縁部152の上方への反り返り(まくれ上がり)が防止されてシール性能が一層向上する。すなわち、ピストンロッド112の上下変位に伴って外周縁部152が縮径および拡径し、特にピストンロッド112の下降に伴って外周縁部152が拡径させられる際に、摺動抵抗で上方へ反り返る可能性があるが、下面側へのみ増肉して断面を略L字形状にすると、自身の弾性で反対側への反り返りが良好に抑制されるのである。
【0061】
図6の(b) のダストシール154は、前記ダストシール136と同様に円形リップの内周縁部140および外周縁部142を備えているが、図2(b) の中心線よりも左側に示すように、ピストンロッド112の大径部116がロッドガイド118に係合する突出端(上昇端)に保持された状態を基準として、成形形状が截頭円錐形状とされたものである。また、図6の(c) のダストシール156は、(a) のダストシール150と同様な内周縁部140および外周縁部152を備えているが、上記(b) と同様にピストンロッド112が突出端(上昇端)に保持された状態を基準として成形形状が截頭円錐形状とされたものである。これ等のダストシール154、156によれば、ピストンロッド112の上下変位に伴う伸び縮みの追従性が向上し、外周縁部142、152がロッドガイド118の上端面134に一層良好に密着させられるようになり、ロッドガイド118とピストンロッド112との摺動部への異物の侵入が一層効果的に防止される。
【0062】
なお、材質によっては、ピストンロッド112の上下変位に拘らず外周縁部142、152が上端面134上の一定位置に保持され、中間部分の弾性変形のみでピストンロッド112の上下変位が吸収されるようにすることもできる。その場合は、外周縁部142、152を単に上端面134上に自重で載置するだけでなく、上端面134に環状溝を設けて外周縁部142、152を嵌め込んで位置固定に取り付けるようにしたり、ボルトなどの固定手段で固定したりするなど、外周縁部142、152を上端面134に密着する状態で固着するようにしても良い。
【0063】
また、上例では、内周縁部140および外周縁部142、152が何れも厚肉部とされていたが、何れか一方だけを厚肉部としても良いし、両方の厚肉部を無くした肉厚が一定のダストシールを採用することもできる。
【0064】
図7は、前記図2(b) に対応する図で、前記ロッドガイド118の上端面158を、ピストンロッド112から離間するに従って下方へ傾斜するテーパ面としたもので、この場合には、油や埃等の異物がダストシール136や上端面158に堆積することなく外周側へ滑り落ちるようになるため、ロッドガイド118とピストンロッド112との摺動部への異物の侵入が一層効果的に防止される。なお、上端面158の全面をテーパ面としても良いが、図7に示すように、ダストシール136で覆蓋されている内周側部分については、前記実施例と同様の平坦面であっても差し支えない。
【0065】
また、図7の装置では、ボルト120がダストシール136よりも外周側に配設されるため、ダストシール136をピストンロッド112に装着したままボルト120を着脱することが可能で、ピストンロッド112とロッドガイド118とを組み付けた状態でマニホールド102に対して着脱できる。前記実施例では、図2から明らかなようにダストシール136の外周部がボルト20に被さっているため、ダストシール136の無い状態でボルト20を着脱するか、ダストシール136の外周部をめくり上げてボルト20を着脱する必要がある。
【0066】
図8は、前記図5に対応する図で、ピストンロッド112の上端部に比較的開き角度が大きいV字形状の装着溝160が設けられて、ダストシール136の内周縁部140が装着されるようになっている。装着溝160の底部は、内周縁部140の円形リップの曲率と略同じ曲率の円弧形状を成しており、ピストンロッド112の上下変位に伴ってダストシール136は内周縁部140を中心として実線および一点鎖線で示す間を回動するように弾性変形させられる。また、下側の壁面の軸心に対する傾斜角度Aは、前記ロッドシール124の組付性を考慮して30°以下とすることが望ましく、上側の壁面の軸心に対する傾斜角度Bは、内周縁部140の離脱を防止する上で45°以上とすることが望ましい。
【0067】
図9は、前記図2(b) に対応する図で、前記ダストシール136の代わりに有底角筒形状の金属製のダストカバー162をピストンロッド112の上端部に一体的に固設したものである。このダストカバー162は、ピストンロッド112から外周側へ延び出してロッドガイド118の外周縁部に達する底部162aと、その底部162aの外周縁から下方へ延び出してロッドガイド118の外周側に位置するロッドガイド118の外周形状に対応する形状の筒状部162bと、を一体的に備えている。底部162aには、ピストンロッド112の先端面と略同一径寸法の貫通穴が中心部に設けられ、ピストンロッド112の先端面が露出する状態で段部に嵌め込まれるようになっており、クッションピン22はそのピストンロッド112の先端面上に載置されるようになっている。この場合は、ダストカバー162とロッドガイド118との間に隙間が生じることが避けられず、前記ダストシール136に比較して埃等の異物の侵入防止性能が低いが、必要に応じて筒状部162bの下端開口端とロッドガイド118の外周面との間に伸縮可能なゴム等の弾性シール部材を取り付けて略密閉することも可能である。また、ダストカバー162を外した状態でボルト120を着脱する必要がある。なお、ダストカバー162をねじ等の固設手段でピストンロッド112に一体的に固定するようにしても良い。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である均圧用シリンダ装置を示す概略図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図である。
【図2】図1の均圧用シリンダ装置の一つの流体シリンダを示す図で、(a) は平面図、(b) は(a) におけるB−B断面図である。
【図3】図1の均圧用シリンダ装置の組付手順の一例を説明する図である。
【図4】図1の均圧用シリンダ装置の組付手順の別の例を説明する図である。
【図5】図2の流体シリンダのピストンロッドのダストシール装着部分を拡大して示す断面図である。
【図6】ダストシールの別の例を示す断面図である。
【図7】ロッドガイドの上端面にテーパ面が形成された実施例を示す断面図で、図2(b) に対応する図である。
【図8】ダストシールの装着溝の別の例を示す断面図で、図5に対応する図である。
【図9】ダストシールの代わりにダストカバーを用いた実施例を示す断面図で、図2(b) に対応する図である。
【図10】本発明が好適に適用されるプレス機械の一例を説明する構成図である。
【図11】従来の均圧用シリンダ装置の構成を説明する断面図である。
【符号の説明】
8:プレス機械 22:クッションピン 26:クッションパッド 42:しわ押え荷重付与手段 100:均圧用シリンダ装置 102:マニホールド 104:油圧シリンダ(流体シリンダ) 106:有底穴 108:連通路 112:ピストンロッド 118:ロッドガイド 122:圧力室 128:凹所 130:エア抜き穴 132:薄肉シート(閉塞部材) 134、158:上端面 136、150、154、156:ダストシール(カバー装置) 138、160:装着溝 140:内周縁部(厚肉部) 142、152:外周縁部(厚肉部) 162:ダストカバー(カバー装置)

Claims (11)

  1. 圧力室が互いに連通させられた複数の流体シリンダが設けられ、しわ押え荷重付与手段により所定の移動抵抗が付与されるクッションパッドに配設されるとともに、該流体シリンダのピストンロッドとしわ押え型との間にクッションピンが介在させられ、前記移動抵抗に基づいて該しわ押え型とダイス型との間でプレス素材が挟圧される際に、前記ピストンロッドがそれぞれ前記圧力室内に押し込まれて中立状態とされることにより流体を介してしわ押え荷重を略均等に伝達するプレス機械の均圧用シリンダ装置であって、
    平板状の共通のマニホールドを備えており、該マニホールドには、複数の有底穴が形成されているとともに、該複数の有底穴を互いに連通させるように連通路が設けられている一方、
    前記ピストンロッドを軸方向の摺動可能、且つ突出方向への抜出し不能に保持しているロッドガイドが、前記有底穴の開口部に一体的に固設されることにより、該複数の有底穴部分に、それぞれ該有底穴が前記圧力室として機能するように前記流体シリンダが一体的に組み込まれている
    ことを特徴とする均圧用シリンダ装置。
  2. 前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面には、所定の流体量を確保できるように凹所が設けられている
    ことを特徴とする請求項1に記載の均圧用シリンダ装置。
  3. 前記凹所の底部には前記ピストンロッドの側面に開口するエア抜き穴が設けられている
    ことを特徴とする請求項2に記載の均圧用シリンダ装置。
  4. 前記流体シリンダは、前記ピストンロッドが鉛直方向の上向きになる姿勢でプレス機械に配置されて使用されるもので、前記ロッドガイドから上方へ突き出している該ピストンロッドの先端部には、該ロッドガイドと該ピストンロッドとの間の摺動部へ異物が侵入することを防止するカバー装置が設けられている
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の均圧用シリンダ装置。
  5. 前記カバー装置は、前記ピストンロッドから外周側へ延び出して前記ロッドガイドの外周縁部に達する底部と、該底部の外周縁から下方へ延び出して前記ロッドガイドの外周側に位置する該ロッドガイドの外周形状に対応する形状の筒状部と、を一体的に備えている有底筒形状のダストカバーである
    ことを特徴とする請求項4に記載の均圧用シリンダ装置。
  6. 前記カバー装置は、円環形状の伸縮可能な薄肉弾性体製のダストシールで、該ダストシールの内周縁部は、前記ロッドガイドから上方へ突き出している前記ピストンロッドの外周部に取り付けられている一方、該ダストシールの外周縁部は、該ピストンロッドの上下変位に拘らず前記ロッドガイドに接触する状態に保持されて前記摺動部への異物の侵入を防止するものである
    ことを特徴とする請求項4に記載の均圧用シリンダ装置。
  7. 前記ダストシールの内周縁部は、前記ピストンロッドの外周面に設けられた環状の装着溝に嵌め込まれて取り付けられている一方、該ダストシールの外周縁部は、該ピストンロッドの上下変位に拘らず自重で前記ロッドガイドの上端面に接触する状態に保持されるものである
    ことを特徴とする請求項6に記載の均圧用シリンダ装置。
  8. 前記ダストシールの内周縁部および外周縁部の何れか一方または両方に厚肉部が設けられている
    ことを特徴とする請求項6または7に記載の均圧用シリンダ装置。
  9. 請求項1〜8の何れか1項に記載の均圧用シリンダ装置の組付方法であって、
    前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、該複数の有底穴および前記連通路に流体を充填する流体充填工程と、
    該流体が充填された前記有底穴内に、エアが混入しないように前記ピストンロッドを挿入するとともに、前記ロッドガイドを該有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、
    を有することを特徴とする均圧用シリンダ装置の組付方法。
  10. 前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面に凹所が設けられている請求項2または3に記載の均圧用シリンダ装置の組付方法であって、
    前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、該複数の有底穴および連通路に流体を充填するとともに、前記ピストンロッドの前記凹所内に流体を充填して該凹所の開口部を閉塞部材で閉塞する流体充填工程と、
    該流体が充填された前記凹所が下向きになる姿勢で前記ピストンロッドを前記有底穴の上方へ移動し、前記閉塞部材が該有底穴内の流体に接するか埋没する状態で、該閉塞部材を取り除いて該ピストンロッドを該有底穴内に挿入するとともに、前記ロッドガイドを該有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、
    を有することを特徴とする均圧用シリンダ装置の組付方法。
  11. 前記ピストンロッドの前記有底穴側の端面に凹所が設けられているとともに、該凹所の底部にエア抜き穴が設けられている請求項3に記載の均圧用シリンダ装置の組付方法であって、
    前記有底穴が上向きに開口するように前記マニホールドを保持して、該複数の有底穴および連通路に流体を充填する流体充填工程と、
    該流体が充填された前記有底穴内に、前記エア抜き穴が該流体内に埋没するまで前記ピストンロッドを挿入することにより、該エア抜き穴および前記凹所内のエアを放出させつつ該凹所およびエア抜き穴内に該有底穴内の流体を流入させるとともに、前記ロッドガイドを該有底穴の開口部に固設する挿入固設工程と、
    を有することを特徴とする均圧用シリンダ装置の組付方法。
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