JP3657026B2 - スパッタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えば半導体装置の製造工程において配線等の各種の薄膜をスパッタにより形成するための装置に係り、特にスパッタ粒子の飛散を防止するシールド部材を備えたスパッタ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のスパッタ装置の従来例を図5に示す。薄膜の母材であるターゲット1を搭載した電極2と、薄膜を形成する基板である例えばシリコンウェーハ3を保持した電極4とが、チャンバー5内に所定間隔を隔てて対向配置されている。そして、排気管6からチャンバー5内を真空引きしてガス導入管7より例えばArガスを導入し、例えば直流電源8により電極2及び4間に電圧を印加する。
【0003】
これにより、チャンバー5内で加速されたAr+ イオンがターゲット1の表面に衝突し、これに伴ってターゲット1の表面からスパッタ粒子が放出される。このスパッタ粒子がウェーハ3の方向へ飛来し、ウェーハ3上に堆積することによってスパッタ膜が形成される。
【0004】
このとき、スパッタ粒子がウェーハ3の表面以外の不必要な方向へ飛散しないように、チャンバー5内にシールド部材10が設けられている。このシールド部材10は開口部11を有するリング状のカバーであり、ターゲット1の周縁部1aの上方及び外方を覆うように配置されている。シールド部材10の開口部11はウェーハ3の方向へ進行するスパッタ粒子のみを通過させ、他の方向へ進行するスパッタ粒子をシールド部材10の内壁に付着させて飛散を防止する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来のスパッタ装置におけるシールド部材10は、その機能から当然であるが、図6(a)に示すように、シールド部材10の先端部12及び内壁部13にスパッタ粒子が付着してスパッタ膜14が堆積する。この堆積が次第に厚くなると、図6(b)に示すように、スパッタ膜14にクラックが生じてそのスパッタ膜14が剥がれてしまう。
【0006】
この原因は必ずしも明らかではないが、シールド部材10の先端部12では、その角部で応力集中が起きると考えられ、スパッタ膜14にクラックが生じて剥離する。また、シールド部材10の平坦な内壁部13では、シールド部材10とスパッタ膜14との熱膨張率の違いにより、スパッタ膜14にクラックが生じて各々の微小片が次第に曲がっていくと考えられ、最終的には剥離する。
【0007】
このようにシールド部材10から剥離したスパッタ膜14の微粉は、スパッタ粒子よりも桁違いに大きいので、チャンバー5内におけるパーティクル発生の原因となる。そして、微粉が飛散してウェーハ3上に異物として付着することにより、配線等の形成不良を引き起こし、不良品が生じて製品歩留りが大幅に低下することになる。
【0008】
そこで本発明は、シールド部材に堆積したスパッタ膜が剥離し難く、剥離微粉の飛散を有効に防止できるスパッタ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ターゲットを搭載した電極と基板を保持した電極とをチャンバー内に対向配置し、前記両電極間への電圧の印加により前記ターゲットをスパッタリングして前記基板にスパッタ膜を形成するように構成し、前記ターゲットから前記基板の方向以外へのスパッタ粒子の飛散を防止するシールド部材を前記ターゲットの周縁部近傍に設けたスパッタ装置において、前記ターゲットの周縁部外方を囲繞する前記シールド部材の内壁部を一定半径の円弧状に形成し、且つその円弧状の部分の厚さを一定にしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、ターゲットを搭載した電極と基板を保持した電極とをチャンバー内に対向配置し、前記両電極間への電圧の印加により前記ターゲットをスパッタリングして前記基板にスパッタ膜を形成するように構成し、前記ターゲットから前記基板の方向以外へのスパッタ粒子の飛散を防止するシールド部材を前記ターゲットの周縁部近傍に設けたスパッタ装置において、前記ターゲットの周縁部上方に延在する前記シールド部材の先端部を一定半径の円弧状に形成し、前記ターゲットの周縁部外方を囲繞する前記シールド部材の内壁部を一定半径の円弧状に形成し、その円弧状の部分の厚さを一定にし、且つ前記シールド部材の先端部と内壁部との変曲点部分を滑らかに形成したことを特徴とする。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図1〜図4を参照して説明する。図1はスパッタ装置の概略構成図、図2はターゲット及びシールド部材の部分拡大断面図、図3はシールド部材の先端の部分拡大断面図、図4は実験例におけるシールド部材の部分拡大断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施例におけるスパッタ装置の概略構成は前述した従来例とほぼ同様であり、本実施例において実質的に従来例と同一の構成部分には同一の符号を付してその説明を省略する。本実施例においても、開口部21を有するリング状のシールド部材20がチャンバー5内に設けられており、ターゲット1の周縁部1aの上方及び外方を覆うように配置されている。このシールド部材20の特徴は、先端部22の形状、内壁部23の形状、及び溶射による表面処理である。
【0018】
まず、図2に示すように、シールド部材20の先端部22はターゲット1の周縁部1aの上方に延在され、その先端部22は断面状態で一定半径rの円弧状に形成されている。この例では、先端部22の半円の直径2rがそのままシールド部材20の厚さとなっている。
【0019】
次に、シールド部材20の内壁部23はターゲット1の周縁部1aの外方を囲繞し、その内壁部23は断面状態で一定半径Rの円弧状に形成されている。この例では、内壁部23が略四分円となっており、その円弧の下端は少なくともターゲット1の表面よりも下位置まで形成する。これは、少なくともターゲット1の表面と同一面方向までスパッタ粒子が飛来するからである。なお、内壁部23の半径Rの中心は、ターゲット1の周縁部1aにおける表面の外端近傍に位置させる。これは、内壁部23に対して、ターゲット1の表面中央部付近から飛来するスパッタ粒子は非常に少なく、ターゲット1の表面外端近傍から飛来するスパッタ粒子が大部分を占めるからである。
【0020】
また、図3に示すように、先端部22の円弧と内壁部23の円弧とは、その変曲点25において両方の接線Tが一致するように接続されている。即ち、先端部22と内壁部23との変曲点25部分は滑らかに連続するように形成されている。シールド部材20の実際の加工では、NC切削によって先端部22と内壁部23との一定半径を形成するが、特に、先端部22と内壁部23との変曲点25部分においては、微視的にいうと、その部分の曲率半径をNC制御により例えば30点分割で変化させながら連続的に形成する。
【0021】
このように、シールド部材20の先端部22を一定半径rの円弧状に形成することによって、その先端部22の形状係数が良好になって応力集中が緩和されるので、そこに堆積したスパッタ膜24が剥がれ難くなる。また、シールド部材20の内壁部23を一定半径Rの円弧状に形成することによって、そこに堆積したスパッタ膜24とシールド部材20との熱膨張率の違いによるスパッタ膜24の曲がりが、内壁部23の湾曲によるアーチ効果によって抑えられるので、スパッタ膜24が剥がれ難くなる。なお、内壁部23の半径Rの中心をターゲット1の表面の外端近傍とすることによって、その内壁部23へのスパッタ粒子の付着状態が均一化されるので、この点からもスパッタ膜24が剥がれ難くなる。
【0022】
さらに、先端部22の円弧と内壁部23の円弧とを連続的に形成することによって、先端部22と内壁部23との変曲点25部分が微視的に極めて滑らかになるので、この変曲点25部分においてもスパッタ膜24が剥離し難くなる。なお、これは先端部22及び内壁部23についても同様にいえることである。即ち、先端部22及び内壁部23を単なる曲線ではなく特に一定半径r及びRの円弧状に形成するということは、先端部22及び内壁部23を曲率半径が徐々に変化する不連続曲線ではなく微視的に極めて滑らかな一定の連続曲線にするということである。従って、先端部22及び内壁部23に堆積したスパッタ膜24は剥離し難くなる。
【0023】
なお、先端部22の半径rは1.5mm以上5mm以下とするのが好ましい。1.5mmより小さいと応力集中を緩和し難くてスパッタ膜24の剥離が起こり易く、5mmより大きいとシールド部材20の厚みの増加により熱変形が大きくなってスパッタ膜24の剥離が起こり易い。また、内壁部23の半径Rは5mm以上50mm以下とするのが好ましい。5mmより小さいと湾曲が小さすぎてスパッタ膜24の剥離が起こり易く、50mmより大きいとシールド部材20全体が大きすぎて実用的でない。なお、本実施例のシールド部材20のように、内壁部23の反対側も円弧状に形成して全体を一定厚にすると、シールド部材20に生じる熱応力が全体的に均一化されるので好ましい。
【0024】
次に、本実施例のシールド部材20において、表面に溶射処理を施した実験例について説明する。ここでは、ターゲット1として直径200mmのTiW(チタン・タングステン)を用いた。
【0025】
〔実験例1〕
図4(a)に示すように、シールド部材20の基材20aの材料としてTi(チタン)を用いて、先端部22の半径rを2mm、内壁部23の半径Rを15mmとした。この例の場合、スパッタ膜24の剥離を起こすことなく、電極の負荷にして250kw・hrの連続使用が可能になった。
【0026】
〔実験例2〕
図4(b)に示すように、実験例1と同様なシールド部材20において、Ti基材20aの表面にMo(モリブデン)の溶射20bを行った。この例の場合、スパッタ膜24の剥離を起こすことなく、電極の負荷にして350kw・hrの連続使用が可能になった。
【0027】
実験例1に対して、実験例2のようにシールド部材20の基材20aの表面に溶射を行った場合、この溶射層20bは多孔性(ポーラス)を有するので、付着するスパッタ粒子に対してクッション性及びアンカー効果を発揮する考えられる。これにより、スパッタ膜24の剥離防止の効果を向上させることができる。
【0028】
〔実験例3〕
図4(c)に示すように、実験例1と同様なシールド部材20において、Ti基材20aの表面にTiの溶射20cを行った。この例の場合、スパッタ膜24の剥離を起こすことなく、電極の負荷にして400kw・hrの連続使用が可能になった。
【0029】
実験例2と実験例3とを比較すると、実験例2のMo溶射層20bの熱膨張率よりも実験例3のTi溶射層20cの熱膨張率の方が、堆積するTiWスパッタ膜24の熱膨張率に近いので、さらにスパッタ膜24の剥離防止の効果を向上させることができる。なお、溶射層20b及び20cの厚さは、例えば50〜100μm程度が好ましい。
【0030】
ところで、上述のように基材の表面に溶射層を形成したシールド部材を使用する場合は、スパッタ装置を一定時間で稼働させた後、表面の溶射層を例えばサンドブラスト加工等により剥がして除去し、再度、基材の表面に溶射処理を行って使用する。このため、溶射層の除去し易さが問題となる。
【0031】
これに関し、実験例3におけるTi溶射層20cは、TiWスパッタ膜24の剥離防止効果が高い反面、Ti溶射層20cをTi基材20aから除去するのが難しく、シールド部材20の再処理使用が困難になる。これに対して、実験例2におけるMo溶射層20bは、TiWスパッタ膜24の剥離防止効果は実験例3より若干劣るものの、Mo溶射層20bをTi基材20aから除去するのは比較的容易で、シールド部材20の再処理使用が容易になる。従って、剥離防止性能と再使用コストとの両方を考慮して、溶射層の材質を選択すればよい。
【0032】
なお、シールド部材における基材の材料や溶射の材料は、上記以外にもターゲット材料に応じて適宜な選択が可能であるが、基本的に考慮するのはターゲット材料との熱膨張率の違いである。例えば、上述のようなTiWターゲットの場合、アルミニウムの溶射は熱膨張率が違いすぎるので好ましくない。なお、上記実験例のようにMo溶射層20bまたはTi溶射層20cを形成する場合は、Ti基材20aの代わりにステンレス材(SUS304等)の基材を用いることも可能である。また、実験例では溶射層20bまたは20cを基材20aの表面全体に形成したが、基材20aの少なくとも先端部22及び内壁部23の表面に形成したものであってもよい。
【0033】
このようにして、本実施例のシールド部材20によれば、特にスパッタ膜24が剥離し易いTiWターゲットの場合でも、スパッタ膜24の堆積厚みが従来に比較して5割増でも剥離することがなく、本実施例のスパッタ装置によれば、生産性を従来に比べて約30%向上させることが可能となった。
【0034】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の有効な変更並びに応用が可能である。なお、実施例では2極放電型のスパッタ装置について説明したが、スパッタ装置の基本的構成としては各種の方式を採用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、シールド部材を備えたスパッタ装置において、シールド部材に堆積したスパッタ膜が剥離し難くなり、剥離微粉の飛散を有効に防止することができる。従って、半導体装置等の製品歩留りを著しく向上させることができると共に、シールド部材の清掃や交換等の保守回数を大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるスパッタ装置の概略構成図である。
【図2】上記実施例におけるターゲット及びシールド部材の部分拡大断面図である。
【図3】上記実施例におけるシールド部材の先端の部分拡大断面図である。
【図4】上記実施例の実験例におけるシールド部材の部分拡大断面図である。
【図5】従来のスパッタ装置の概略構成図である。
【図6】上記従来例におけるターゲット及びシールド部材の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 ターゲット
1a 周縁部
2 電極
3 ウェーハ
4 電極
5 チャンバー
6 排気管
7 ガス導入管
8 直流電源
20 シールド部材
20a Ti基材
20b Mo溶射層
20c Ti溶射層
21 開口部
22 先端部
23 内壁部
24 スパッタ膜
25 変曲点
r 先端部の半径
R 内壁部の半径

Claims (3)

  1. ターゲットを搭載した電極と基板を保持した電極とをチャンバー内に対向配置し、前記両電極間への電圧の印加により前記ターゲットをスパッタリングして前記基板にスパッタ膜を形成するように構成し、前記ターゲットから前記基板の方向以外へのスパッタ粒子の飛散を防止するシールド部材を前記ターゲットの周縁部近傍に設けたスパッタ装置において、
    前記ターゲットの周縁部外方を囲繞する前記シールド部材の内壁部を一定半径の円弧状に形成し、且つその円弧状の部分の厚さを一定にしたことを特徴とするスパッタ装置。
  2. ターゲットを搭載した電極と基板を保持した電極とをチャンバー内に対向配置し、前記両電極間への電圧の印加により前記ターゲットをスパッタリングして前記基板にスパッタ膜を形成するように構成し、前記ターゲットから前記基板の方向以外へのスパッタ粒子の飛散を防止するシールド部材を前記ターゲットの周縁部近傍に設けたスパッタ装置において、
    前記ターゲットの周縁部上方に延在する前記シールド部材の先端部を一定半径の円弧状に形成し、前記ターゲットの周縁部外方を囲繞する前記シールド部材の内壁部を一定半径の円弧状に形成し、その円弧状の部分の厚さを一定にし、且つ前記シールド部材の先端部と内壁部との変曲点部分を滑らかに形成したことを特徴とするスパッタ装置。
  3. 前記シールド部材の基材がチタンであり、その基材の表面にモリブデン又はチタンを溶射したことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタ装置。
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