JP3656516B2 - 封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置 - Google Patents

封止用エポキシ樹脂組成物及び電子部品装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーマーク性、電気特性、成形性、信頼性及びパッケージ表面の外観に優れた封止用エポキシ樹脂組成物及びこれにより封止された素子を備えた電子部品装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、ノート型パソコン等の普及に伴い、電子機器の高性能化及び軽薄短小化の傾向があり、電子部品装置の分野においても、コスト削減等のために、IC、LSI等の半導体素子などの素子の小型化、高集積化、パッケージに対する占有体積の拡大、半導体パッケージ等の電子部品装置の多ピン化、小型化、薄型化等が進んでいる。これに伴い、電子部品装置のインナーリード間やパッド間、ワイヤー間などのピッチ間距離が狭くなってきており、例えば、パッケージ内のボンディングパッドの間隔は、現行は100μm程度であるが40μmまで狭まりつつある。
一方、電子部品装置に用いられる封止材には、着色剤として一般にカーボンブラックが使用されており、導電性物質であるカーボンブラックの粗大な凝集物が金線ワイヤー間に挟まった場合には、電気特性の不良が発生する。特に狭パッドピッチの半導体装置では、50μm以上のカーボンブラック凝集物が存在すると、電気特性の不良が発生しやすくなる。このため、着色剤としてカーボンブラックの代わりに有機染料や顔料等を用いる検討がなされている(特開昭63−179921号公報、特開平11−60904号公報)が、レーザーマーク性の低下、信頼性の低下、高コスト化等の問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたもので、レーザーマーク性や電気特性に優れ、パッド間やワイヤー間距離が狭い半導体装置等の電子部品装置においても、カーボンブラックによる電気特性の不良が発生せず、かつ成形性、信頼性、パッケージ表面の外観等に優れた封止用エポキシ樹脂組成物及びこれにより封止した素子を備えた電子部品装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、封止用エポキシ樹脂組成物に特定のカーボンブラックを配合することにより上記の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)カーボンブラック及び(D)無機充填材を必須成分とし、(C)カーボンブラックのDBP吸油量が10〜200cm/100gで、かつpHが7.0〜10.5である封止用エポキシ樹脂組成物、
(2)封止用エポキシ樹脂組成物の成形品に含まれるカーボンブラック凝集物の最大長径が50μm以下である上記(1)記載の封止用エポキシ樹脂組成物、
(3)封止用エポキシ樹脂組成物を直径50mmの円板成形品に成形した場合に、成形品に含まれるカーボンブラック凝集物のうち最大長径25μm以上のものが成形品10枚中に10個以下である、上記(1)又は(2)記載の封止用エポキシ樹脂組成物、
(4)(C)カーボンブラックの含有量が、封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜1重量%である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物、及び
(5)(A)エポキシ樹脂が、下記一般式(I)〜( IV )のいずれかにより示される化合物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物、並びに
【化5】
Figure 0003656516
(ここで、R 〜R は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化6】
Figure 0003656516
(ここで、R 〜R 12 は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化7】
Figure 0003656516
(ここで、R 13 〜R 16 は水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべて同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示す。)
【化8】
Figure 0003656516
(ここで、Rは水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
)上記(1)〜()のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置
に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂としては特に制限はないが、例えば、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されている、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹指をはじめとするフェノール類とアルデヒド類から合成されるノボラック樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂、アルキル置換又は非置換のビフェノール型エポキシ樹脂、アルキル置換又は非置換のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンとフェノール類及び/又はナフトール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0006】
具体的には、下記一般式(I)〜(IV)のいずれかにより示される化合物などが挙げられ、中でも信頼性の観点からは下記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂が好ましい。
【化9】
Figure 0003656516
(ここで、R〜Rは水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化10】
Figure 0003656516
(ここで、R〜R12は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
【化11】
Figure 0003656516
(ここで、R13〜R16は水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべて同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示す。)
【化12】
Figure 0003656516
(ここで、Rは水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
【0007】
上記一般式(I)中のR1〜R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アミノメチル基、アミノエチル基等のアミノ基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれるが、中でも水素原子又はメチル基が好ましい。上記一般式(I)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられ、中でも、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂がより好ましい。
【0008】
上記一般式(II)中のR5〜R12は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アミノメチル基、アミノエチル基等のアミノ基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれるが、中でも水素原子又はメチル基が好ましい。上記一般式(II)で示されるビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、R5、R7、R10及びR12がメチル基で、R6、R8、R9及びR11が水素原子であり、n=0を主成分とするESLV−80XY(新日鉄化学株式会社製商品名)が市販品として入手可能である。
【0009】
上記一般式(III)中のR13〜R16は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、イソブチル等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基メトキシエチル基等のアルコキシアルキル基、アミノメチル基、アミノエチル基等のアミノ基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれるが、中でもアルキル基が好ましく、メチル基又はt−ブチル基がより好ましい。上記一般式(III)で示されるフェニルスルフィド型エポキシ樹脂としては、入手性及び流動性の観点から、R13及びR16がt−ブチル基で、R14及びR15がメチル基で、nが0である化合物を主成分とするビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチル)チオエーテルのエポキシ化物が好ましい。
【0010】
上記一般式(IV)中のRとしては、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基置換アルキル基、メルカプト基置換アルキル基などの炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基が挙げられ、中でもメチル基、エチル基等のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記一般式(IV)で示されるノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、中でもオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
本発明において用いられる(B)硬化剤としては特に制限はないが、例えば、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているもので、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂、フェノール・アラルキル樹脂、ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂などが挙げられ、中でも信頼性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。これらの硬化剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)硬化剤は、上記(A)エポキシ樹脂のエポキシ基当量に対して、フェノール水酸基当量が0.5〜1.5当量となる量で配合されることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.2当量で配合される。0.5当量未満ではエポキシ樹脂の硬化が不十分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性並びに電気特性が劣る傾向があり、1.5当量を超えると硬化剤成分が過剰になり硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、電気特性並びに耐湿性が悪くなる傾向がある。
【0012】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、エポキシ基とフェノール性水酸基とのエーテル化反応を促進するため、硬化促進剤を配合することが好ましい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進させるような触媒機能を持つ化合物であれば特に制限はないが、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン類及びこれらのホスフィン類に無水マレイン酸、ベンゾキノン等の上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどのπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルテトラフェニルホスホニウム−テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体、トリフェニルホスホニウム−トリフェニルボランなどが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも成形性及び信頼性の観点からは有機ホスフィンとキノン化合物との付加物が好ましい。
硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましく、0.1〜3重量部がより好ましい。0.01重量部より少ないと促進効果が小さく、5重量部より多いと保存安定性が悪くなる傾向にある。
【0013】
本発明において用いられる(C)カーボンブラックとしては、DBP吸油量が10〜200cm3/100gで、かつpHが7.0〜10.5の規定を満たせば特に制限はなく、例えば、天然ガスを熱分解させるサーマル法、アセチレンを熱分解させるアセチレン法、天然ガス・芳香族油を不完全燃焼させるチャンネル法、鉱物油・植物油を不完全燃焼させるランプ法、天然ガスを不完全燃焼させるガスファーネス法、芳香族炭化水素油を不完全燃焼させるオイルファーネス法等の一般的手法で製造されたカーボンブラックを用いることができる。
(C)カーボンブラックのDBP吸油量が10〜200cm3/100gで、かつpHが7.0〜10.5であることにより、封止用エポキシ樹脂組成物中の樹脂成分とカーボンブラックの濡れ性が改善され、カーボンブラック凝集物が混練中に解砕され易くなる。DBP吸油量が200cm3/100gを超えるとカーボンブラックの分散性が悪化し、電気特性の不良が発生しやすくなる傾向があり、DBP吸油量が10cm3/100g未満のカーボンブラックは製造が困難である。pHが7.0未満ではカーボンブラックの分散性が悪化し、電気特性の不良が発生しやすくなる傾向があり、pHが10.5を超えるカーボンブラックは製造が困難である。DBP吸油量は10〜150cm3/100gが好ましく、10〜70cm3/100gがより好ましい。pHは7.5〜10.0が好ましく、8.5〜9.5がより好ましい。ここで、カーボンブラックのDBP吸油量はJIS K6221 A法により測定され、pHはJIS K6221の規定に従って測定される。
樹脂成分との濡れ性、及び封止用エポキシ樹脂組成物中への分散性の観点からは、酸性官能基の指標である(C)カーボンブラックの揮発分は2重量%以下であることが好ましい。ここで、カーボンブラックの揮発分はJIS K6221の規定に従って測定される。同様の観点から、カーボンブラックに表面の酸性官能基を増やすために空気酸化法、硝酸、窒素酸化物と空気の混合ガス、オゾン等の酸化剤を用いる手法等により酸化処理を施しているものは好ましくなく、本発明においては酸化処理を施していないカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0014】
(C)カーボンブラックの形態としては、粉、粉を造粒して得られるビーズ等が挙げられ特に制限はないが、封止用エポキシ樹脂組成物中への分散性の観点からは、粉が好ましい。
(C)カーボンブラックの粒子径は、封止用エポキシ樹脂組成物中への分散性の観点から20nm以上が好ましく、30〜85nmがより好ましい。同様の観点から、(C)カーボンブラックのBET窒素比表面積は3〜130m2/gが好ましく、3〜90m2/gがより好ましい。ここで、BET窒素比表面積はASTM D3037 D法により測定される。
また、カーボンブラック中に微小球状炭化物、炉煉瓦の剥離片、鉄錆等の異物の尺度であるふるい残分(325mesh)の量が多いと、電子部品装置の電気特性の不良を引き起こす可能性があるため、(C)カーボンブラックのふるい残分は100ppm以下であることが好ましい。
電子部品装置の耐湿性の観点からは、(C)カーボンブラックに含まれる不純物イオンが少ない方が好ましく、(C)カーボンブラックに含まれる不純物イオンの尺度である灰分は1重量%以下が好ましく、0.1重量%以下がより好ましい。
(C)カーボンブラックの導電性指標は、電子部品装置の電気特性の不良低減の観点から50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。導電性指標が低いほど、成形物中のカーボンブラック凝集物の抵抗値が大きくなるため、電子部品装置の電気特性の不良は起きにくくなる。導電性指標は次式により求められる。
導電性指標=(比表面積×DBP吸油量)1/2/(1+揮発分)
【0015】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物の成形品中のカーボンブラック凝集物の最大長径は50μm以下であることが好ましく、40μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。成形品中のカーボンブラック凝集物の最大長径が50μmより大きいと、特に狭パッドピッチの電子部品装置で電気特性の不良が起きやすくなる。封止用エポキシ樹脂組成物を直径50mmの円板成形品に成形した場合に、成形品に含まれるカーボンブラック凝集物のうち最大長径25μm以上のものが成形品10枚中に10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。成形品中のカーボンブラック凝集物の測定方法は、次の通りである。本発明のエポキシ樹脂組成物を直径50mm×2mm厚の円板成形品に成形し、成形品表面をサンドペーパー等で研磨後、倍率125倍の金属顕微鏡を用いて成形品表面を観察して、規定値以上の最大長径を有するカーボンブラック凝集物の総数が測定される。
【0016】
(C)カーボンブラックの含有量は、封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜1重量%が好ましく、0.05〜0.6重量%がより好ましく、0.1〜0.3重量%がさらに好ましい。含有量が0.01重量%未満ではパッケージ表面の外観が損なわれたり、遮光性及びレーザーマーク性が不十分となったりする場合があり、1重量%を超えると流動性が不十分となり、電気特性の不良が起き易くなる傾向がある。
(C)カーボンブラックは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、表面処理を施したカーボンブラックを用いてもよい。表面処理方法としては、特に制限はないが、シランカップリング剤及びカーボンブラック分散剤を用いる方法等が挙げられる。
【0017】
充填材としては、吸湿性低減及び強度向上の観点から無機充填材を用いることが必要である。本発明に用いられる(D)無機充填材としては特に制限はないが、例えば、封止用エポキシ樹脂組成物に一般に使用されているもので、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア等の粉体、又はこれらを球形化したビーズ、チタン酸カリウム、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等の単結晶繊維、ガラス繊維などが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、難燃効果のある無機充填材としては水酸化アルミニウム、棚酸亜鉛等が挙げられ、これらは単独で用いても併用してもよい。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましく、無機充填材の形状は、成形時の流動性及び金型摩耗性の点から球形が好ましい。
(D)無機充填材の配合量としては、吸湿性、線膨張係数の低減、強度向上及び半田耐熱性の観点から、封止用エポキシ樹脂組成物全体に対し70〜98重量%が好ましい。より好ましくは、75〜95重量%の範囲である。
【0018】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、無機充填材と樹脂成分との親和性をはかる観点からはカップリング剤を添加することが好ましい。用いられるカップリング剤としては特に制限はなく、例えば、封止用エポキシ樹脂組成物で一般に使用されているもので、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロビルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルーアミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチルー1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
その他の添加剤として、高級脂肪酸例えばカルナバワックスとポリエチレン系ワックス等の離型材、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の改質材、ハイドロタルサイト、アンチモン−ビスマス等のイオントラッパーなどを必要に応じて、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて配合することができる。また、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物には、本発明の効果が達成される範囲内であれば、(C)カーボンブラック以外に、アジン系染料、アントラキノン系染料、ジスアゾ系染料、ジイミニウム系染料、アミニウム系染料、ジイモニウム系染料、Cr錯体、Fe錯体、Co錯体、Ni錯体、Fe,Cu、Ni等の金属化合物、Al,Mg,Fe等の金属酸化物、雲母、近赤外吸収材、フタロシアニン系顔料、フタロシアニン系染料、ポリマー焼成カーボン、グラフトカーボン、カーボン内包シリカ、表面処理カーボンブラック等の非導電性カーボンなどの着色剤を1種又は2種以上併用することができる。特に、レーザーマーク性、流動性、硬化性の観点からはフタロシアニン系染料を併用することが好ましく、電気特性の観点からは、非導電性カーボンを併用することが好ましい。
【0020】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、上記各原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できるが、一般的な方法としては、所定の配合量の原材料をミキサー等によって充分混合した後、熱ロール、押出機等によって混練し、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると使いやすい。また、カーボンブラックの封止用エポキシ樹脂組成物への分散性を向上させるため、カーボンブラックをあらかじめ、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂とともにニーダーやロールで練ることによってマスターバッチ化して用いても良い。
【0021】
本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は、レーザーマーク性、電気特性に優れ、かつ成形性、信頼性、スケルトン防止に優れており、IC、LSI等の封止に好適に用いることができる。
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂組成物により封止した素子を備えた電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止した、電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物を用いてトランスファ成形などにより封止してなる、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤーボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の封止用エポキシ樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などが挙げられる。また、プリント回路板にも本発明の封止用エポキシ樹脂組成物は有効に使用できる。
本発明で得られる封止用エポキシ樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形、圧縮成形、注型等の方法を用いてもよい。
【0022】
【実施例】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1〜3
まず、表1に示す配合成分を予備混合(ドライブレンド)した後、二軸ロール(ロール表面温度80℃)で10分間混練し、冷却粉砕して実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂組成物を製造した。用いたカーボンブラックA〜Gの特性を表2に示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003656516
【0024】
【表2】
Figure 0003656516
【0025】
なお、表1記載の配合成分は次の通りである。
ビフェニル型エポキシ樹脂:油化シェルエポキシ株式会社製商品名YX−4000H
臭素化エポキシ樹脂:東都化成株式会社製商品名YDB−400
アラルキル型フェノール樹脂:三井化学株式会社製商品名XL−225−3L
エポキシシラン:日本ユニカー株式会社製商品名A−187
ポリエチレンワックス:クラリアントジャパン株式会社製商品名PED−191
溶融シリカ:マイクロン株式会社製商品名S−CO
【0026】
実施例及び比較例の封止用エポキシ樹脂組成物を次に示す各試験により評価した。評価結果を表3に示す。
なお、封止用エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファ成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行なった。また、後硬化(ポストキュア)は175℃で6時間行った。
(1)スパイラルフロー
EMM11−66に準じた金型をトランスファ成形機にセットし、上記条件で封止用エポキシ樹脂組成物を成形し、流動距離(cm)を求めた。
(2)熱時硬度
バリ測定金型(幅5mm、深さ50、30、20、10、5、2μmのスリットを設けた金型)をトランスファ成形機にセットし、上記条件で封止用エポキシ樹脂組成物を成形し、金型開放10秒後、樹脂溜り部分をショア硬度計にて測定した。
(3)耐湿性
耐湿性の評価に用いた電子部品装置はSOP−28ピンのSOP28ピンの樹脂封止型半導体装置(外形寸法18×8.4×2.6mm)であり、リードフレームは42アロイ材(加工ディンプル)で9.6×5.1mmのTEGチップ(Al配線10μm及び20μm幅、ギャップ10μm及び20μm、パッシベーションなし)を有するもので、上記条件でトランスファ成形、後硬化を行って作製した。85℃/85RH%で72時間吸湿した後、240℃/10秒(IRリフロー)の前処理後、PCT処理(121℃/0.2MPa)してチップ上配線の断線の有無を確認し、断線パッケージが試験パッケージ中の50%に達するまでのPCT処理時間で評価した。
(4)半田耐熱性
半田耐熱性の評価に用いた電子部品装置は、QFP−80ピンの樹脂封止型半導体装置(外形寸法20×14×2.0mm)であり、リードフレームは42アロイ材(加工なし)で8x10mmのチップサイズを有するもので、上記条件でトランスファ成形、後硬化を行って作製した。
このようにして得られた樹脂封止型半導体装置を、85℃/85RH%で所定の時間吸湿した後、240℃/10秒の処理を行なった時のクラック発生を観察し、外観クラックが発生するまでの吸湿時間により半田耐熱性を評価した。
(5)レーザーマーク性
レーザーマーク性の評価に用いた電子部品装置は、QFP−54ピンの樹脂封止型半導体装置であり、パッケージ表面をYAGレーザーマーキング装置で、YAGレーザー波長1064nm、レーザーパワー5Jの条件で印字し、目視でマーク性を評価した。表3中の○は、マーク性の良好なものを示す。
(6)カーボンブラック凝集物の最大長径、及び長径25μm以上のカーボンブラック凝集物の個数
封止用エポキシ樹脂組成物を、上記条件で直径50μm、厚さ2mmの円板成形品に成形し後硬化した後、成形品表面をサンドペーパーで研磨し、倍率125倍の金属顕微鏡でカーボンブラック凝集物を観察した。観察は円板成形品10枚について行ない、成形品10枚中の長径25μm以上のカーボンブラック凝集物の総数を測定した。また、成形品10枚中で観察された最も大きい凝集物の長径を測定し、カーボンブラック凝集物の最大長径とした。
(7)電気特性
電気特性の評価に用いた電子部品装置は、LQFP(Lowprofile Quad Flat Package)176ピンの樹脂封止型半導体装置であり、リーク電流の有無で評価した。
(8)黒色度
黒色度は、円板金型をトランスファ成形機にセットし、封止用エポキシ樹脂組成物を上記条件で表面が梨地である直径100mm、厚さ2mmの円板に成形し後硬化した後、色差計にて測定した。黒色度は値が小さいほど黒色を示す。
【0027】
【表3】
Figure 0003656516
【0028】
着色剤として本発明の(C)カーボンブラックを用いていない比較例1〜3は、いずれも満足な特性が得られない。すなわち、DBP吸油量が10〜200cm3/100gの規定を満たさないカーボンブラックを用いた比較例2では、粒径の大きなカーボンブラック凝集物が多く、リーク電流が発生している。pHが7.0〜10.5の規定を満たさないカーボンブラックを用いた比較例1及び比較例3でも、粒径の大きなカーボンブラック凝集物が多く、リーク電流が発生している。
これに対して、実施例1〜3はいずれも、耐湿性、半田耐熱性等の信頼性及び電気特性に優れ、レーザマーク性、黒色度も良好である。
【0029】
【発明の効果】
本発明になる封止用エポキシ樹脂組成物は、実施例に示したように成形性が良好で、レーザーマーク性、電気特性、信頼性、パッケージ表面の外観に優れる電子部品装置が得られるので、その工業的価値は大である。

Claims (6)

  1. (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)カーボンブラック及び(D)無機充填材を必須成分とし、(C)カーボンブラックのDBP吸油量が10〜200cm/100gで、かつpHが7.0〜10.5である封止用エポキシ樹脂組成物。
  2. 封止用エポキシ樹脂組成物の成形品に含まれるカーボンブラック凝集物の最大長径が50μm以下である請求項1記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  3. 封止用エポキシ樹脂組成物を直径50mmの円板成形品に成形した場合に、成形品に含まれるカーボンブラック凝集物のうち最大長径25μm以上のものが成形品10枚中に10個以下である、請求項1又は請求項2記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  4. (C)カーボンブラックの含有量が、封止用エポキシ樹脂組成物に対して0.01〜1重量%である請求項1〜3のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
  5. (A)エポキシ樹脂が、下記一般式(I)〜( IV )のいずれかにより示される化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物。
    Figure 0003656516
    (ここで、R 〜R は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
    Figure 0003656516
    (ここで、R 〜R 12 は水素原子及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよい。nは0〜3の整数を示す。)
    Figure 0003656516
    (ここで、R 13 〜R 16 は水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、すべて同一でも異なっていてもよい。nは0〜10の整数を示す。)
    Figure 0003656516
    (ここで、Rは水素及び炭素数1〜10の置換又は非置換の一価の炭化水素基から選ばれ、nは0〜10の整数を示す。)
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の封止用エポキシ樹脂組成物により封止された素子を備えた電子部品装置。
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