JP3656385B2 - 調光型遮光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、窓面に取り付ける調光型遮光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図10に示すように、階高の限定されたオフィス空間において室内1の照明に自然光を積極的に利用しようとする場合、(a)に示すように、窓面2を完全開放すると直射日光が眩しすぎるので、(b)、(c)に示すように、窓面2に反射板(ライトシェルフ)3やプリズム4を設置する等の方法が提案されている。しかし、建物形態が大きく変化することや、メンテナンス及びイニシャルコストの問題から、あまり採用されなかった。従って、通常はブラインドを窓面に設置して、採光を調節している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の調光型遮光体には、以下のような問題が存在する。
まず、太陽の位置は、一日の間で時々刻々と変化するものであり、また季節によっても変化するのは周知の通りである。このため、室内で太陽光による眩しさ(グレア)を感じたり、コンピュータのモニターに太陽光が反射したりする場合には、太陽光の位置の変化に応じてブラインドのスラットの角度を手動で調節しなければならない。これが、居住者にとっては非常に煩わしく、また業務自体に支障が生じることもあるため、ブラインドを手動で調節していたのでは、室内への採光を常に最適な状態に維持するのは困難であるのが現状である。
【0004】
このような問題を解決するため、近年、ブラインドを自動的に制御するものも提供されつつある。このような自動制御型のブラインドとしては、時間に対応させてブラインドを「開閉」させるよう制御するもの、太陽高度に基づいてブラインドのスラットを、太陽光を「遮蔽」する角度に調整するもの等、があるが、これらはいずれもブラインドの開閉あるいはスラット角度の調整により太陽光を「遮蔽」する構成のものであるため、これでは室内に自然光が導かれないこととなってしまう。
【0005】
これに対し、室内の居住者が太陽光の影響を受けず、かつ室内に積極的に「採光」を行って自然光を導くものとして、室外や室内に照度センサーを設置し、センサーで検出した照度に基づいてブラインドのスラット角を調整するものも開発されている。しかしながらこのようなブラインドは、使用する照度センサーが非常に高価であった。しかも、特に照度センサーを室外に設置した場合、照度センサーで単にその場所の照度を測定しているだけであるため、例えば曇りや雨の日の昼間や、場所によっては白夜の場合等、直射光が無くても天空が明るい場合には照度が高く検出され、この結果ブラインドのスラット角を閉じる方向に調整するようになっていた。ところが、直射光が無く天空光のみであれば、光を直に取り込んでも眩しくなく、方向性がないために影も発生せず、また暑くなることもない。すなわち、従来の照度センサーを用いて制御するブラインドでは、高価な照度センサーを用いながらも、その機能が十分に高いとは言えず、コストとの機能とが釣り合っていないために割高なものとなっていた。
【0006】
さらに、従来のブラインドはスラット角が上から下まで一定であるため、開度調整しても窓際と室奥の照度に大きな差が出たり、室奥まで光を届かせようと大きく開放すると窓際の作業者にとって眩しすぎたりするという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、室内への採光を常に最適な状態に維持することができ、しかも眩しすぎずに窓際から室奥にまで均一に昼間の自然光を届かせることのできる調光型遮光体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、太陽光の射し込む窓面に取り付けることで、室内への採光を調節する調光型遮光体において、該調光型遮光体は、水平方向に延びるスラットを鉛直方向に間隔を持って多数配列したブラインドであって、これを開閉する開閉機構と、前記スラットをその幅方向の前側と後側で上下方向に間隔を持って保持するラダーと、前記スラット全体の傾斜角度を前記ラダーのラダーテープを操作することで変動させる駆動機構と、前記開閉機構および前記駆動機構の動作を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、直射光検出手段により直射光の有無を検出し、その結果に基づいて前記調光型遮光体を開閉するよう前記開閉機構を制御するとともに、太陽高度に基づいて採光スラット角度および遮光スラット角度を算出し、前記駆動機構で前記スラットの傾斜角度を変動させて最適傾斜角度となるよう前記駆動機構を制御する構成とされ、前記直射光検出手段は、照度または日射量を検出する二個一対のセンサーと、これらのセンサーでの検出結果を比較し、これに基づいて直射光の有無を判定する判定手段とを備え、前記二個一対のセンサーは、第一のセンサーと、北側の一部を残し、他の部分に直射光が当たらないよう遮蔽した第二のセンサーとからなり、前記多数のスラットは、前記スラットに反射した太陽光が、上部のスラットほど室奥の天井に向かい、下部のスラットほど窓際の天井に向かうように、前記スラットの傾斜角度が、上部のスラットから下部のスラットにかけて順次変化させて、かつ、太陽光が室内に直接入射しないような角度に予め設定されて設けられていることを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る調光型遮光体の実施の形態の一例を、図1ないし図9を参照して説明する。
図1はブラインド(調光型遮蔽体)10を窓面2に取り付けた状態を示す側面図、図2はブラインド10の要部拡大図である。
【0013】
このブラインド10は、水平方向に延びるスラット11を鉛直方向に間隔を持って多数配列したものであり、スラット11に反射した反射光Hが、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かうように、各スラット11の傾斜角度(スラット角)βを、上部のスラット11から下部のスラット11にかけて順次変化させたものである。即ち、上方のスラット11から下方のスラット11に行くに従い、順次スラット角βを小さく設定することにより、上記の反射の態様を達成している。このように設定することで、居住者Kに直接スラット11からの反射光Hが当たらないようになり、室奥Bまで自然光が届くことになる。
【0014】
この場合、スラット11は図2に示すように、ラダー(はしご紐)12で上下方向に間隔を持って保持されているので、ラダー12のスラット幅方向の前側のラダーテープ(前側の紐)12Aのスラット支持ピッチPAを一定にした場合、前側のラダーテープ12Aによるスラット支持位置を基準として、後側のラダーテープ(後側の紐)12Bのスラット支持位置のずらし寸法dkを順次計算に基づいて変化させることで、スラット角βを変化させることができる。あるいは、計算により後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkを求めて、そのピッチPBkでスラット11の後端を支持してもよい。
【0015】
次に、スラット11の傾斜角度の設定の仕方について述べる。
図3は太陽からの入射光とスラット11による反射光Hの関係を示す図である。ここでは、太陽光線のプロフィール角度をP(°)、スラット角度をβ(°)、反射光Hが天井面に達した位置の窓面からの距離をd、反射スラットの天井面からの距離をhとしてある。但し、プロフィール角度Pについては、太陽高度hs、太陽方位αs、窓面方位αwより、下式で定義されている。
tan(P)=tan(hs)/cos(αs−αw)
【0016】
上記P、β、d、hの関係を求めるため、図4の反射の原理を考えると、
γ=P+90°−β
θ=γ+90°−β
であるから、
θ=180°−2β+P ・・・・・・・・・・・・・・・(1)
となる。図3より
tanθ=h/d ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
であるから、(1)、(2)式より、
tan(180°−2β+P)=h/d ・・・・・・・・・・・(3)
となる。
【0017】
上記の値d、P、hが定まっていて、βを求める場合は、(3)式より
180°−2β+P=tan-1(h/d)
となる。ゆえに
β=〔180°+P−tan-1(h/d)〕/2 ・・・・・・・(4)
となる。
【0018】
後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkは、前側のラダーテープ12Aのスラット支持ピッチPAとラダーテープの差〔dk−d(k−1)〕より、次式によって求めることができる。
PBk=PA−〔dk−d(k−1)〕 ・・・・・・・・・(5)
【0019】
従って、このスラット支持ピッチPBkに基づいて、各スラット11を支持していけば、目的のスラット角度βの変化が得られることになる。ところで、本出願人が既に出願した特願平9−127659号にも記載のように、このようにスラット角度βを変化させた場合、後側のラダーテープ12Bの差〔dk−d(k−1)〕は太陽高度が変化してもあまり大きな差がない。つまり、スラット支持ピッチPBkが太陽高度によりあまり大きな差を生じないため、一度このピッチでスラット11を取り付けたブラインド10を作成すれば、太陽高度が変化しても、スラット間隔を変化させる必要はない。そして、このブラインド10は、通常のブラインドと同様に、ラダーテープ12を操作して全体のスラット11の角度を変動させれば、スラット11からの反射光Hが居住者Kに直接当たらず、室奥Bまで自然光が届く状態を維持できるようになっている。
【0020】
図2に示したように、上記したようなブラインド10には、スラット11の傾斜角度を調整するコントローラ15が備えられている。このコントローラ15は、スラット11の傾斜角度を変動させるためにラダーテープ12を操作するモータ(開閉機構,駆動機構)16と、このモータ16の作動を制御する制御装置(制御手段)17と、直射光の有無を検出する直射光検出装置(直射光検出手段)18とから構成されている。そしてこのブラインド10は、制御装置17による自動制御モードと、手動でスラット11の傾斜角度を調整できる手動モードとで切り替え自在な構成となっている。
【0021】
図5に示すように、直射光検出装置18は、照度または日射量をそれぞれ検出する、二個一対の第一センサー18Aと第二センサー18Bとが、箱体19に設置された構成となっている。この箱体19は、例えば略立方体状の箱の四分の一を切り欠いたような形状をなしており、この箱体19の切欠き部Nが、北側を向くよう設置されている。
【0022】
第一センサー18Aは、例えば箱体19の上面19a上に設置されて、上方の全方向からの光を受けて照度または日射量を検出するようになっている。
また、第二センサー18Bは、箱体19の底面19b上に設置されており、鉛直上方から見ると、箱体19の切欠き部Nによって北側の1/4のみが露出し、残りの東−南−西側の3/4が、四分の一が切り欠かれて略L字状をなした上面19aによって覆われた構成となっている。これにより、この第二センサー18Bでは、北側方向のみからの光を受けて照度または日射量を検出するようになっている。すなわち、第二センサー18Bには太陽光が直接照射されず、いわば「日陰」の部分の照度または日射量が検出されるようになっている。
【0023】
これら第一センサー18A,第二センサー18Bで検出された照度または日照量の検出データE1,E2は制御装置17に出力され、この検出データE1,E2を基に、この制御装置17において、予め入力されている直射光有無判定プログラム(判定手段)によって直射光の有無を判定し、その結果によってブラインド10の開閉制御をするようになっている。
【0024】
また、図2に示したように、制御装置17にはクロック20が内蔵されており、上記直射日光検出装置18の検出データによる制御に加え、クロック20から出力される月日時間のデータを基に、予め入力されている太陽高度計算プログラムと、採光スラット角度計算プログラムと、遮光スラット角度計算プログラムとによってモータ16の作動を制御するようになっている。
【0025】
以下に、制御装置17におけるより具体的な制御内容について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0026】
(ステップS1)
まず、クロック20から出力された月日時間のデータに基づき、制御時間か否かを判断する。すなわち、就業時間内等、室内に人がいる時間のみブラインド10を作動させるため、予め設定したブラインド作動時間であるかどうかを判定する。
【0027】
(ステップS2)
次いで、制御時間であれば、例えば1分おき等、所定時間毎に制御を行うため、新たな制御実行時間であるかどうかを判定する。
【0028】
(ステップS3)
さらに、ブラインド10が自動制御モードになっているか否かを判定する。
【0029】
(ステップS4;直射光有無判定プログラム)
以上のステップS1〜S3の条件を満たした場合、以下のようにして直射光の有無を判定する。
制御装置17においては、直射光検出装置18の第一センサー18Aで検出した照度または日射量の検出データE1と、第二センサー18Bで検出した照度または日射量の検出データE2とを比較し、
a・E1>4・E2 ・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
の条件を満たすか否かを判定する。
ここで、上記(6)式において、第二センサー18Bからの検出データE2は北側1/4のみの照度または日照量であるためこれを4倍した。また、aは予め設定する係数であり、これは、使用するセンサーの精度,箱19の形状や設置位置の精度,その他各種条件から経験的(実験を含む)に設定されるものである。
【0030】
上記ステップS4において、式(6)の上面を満たす場合、すなわち、第一センサー18Aで検出した「日なた」の部分の照度または日射量が、第二センサー18Bで検出した「日陰」の部分の照度または日射量よりも所定以上高い場合、太陽からの直射光が「有る」(例えば影が発生する程度)と判定し、後述するステップS6以降で、ブラインド10のスラット11を最適な角度に変動させるための制御信号(χ=1)を出力する。
【0031】
一方、上記ステップS4において、式(6)の上面を満たさない場合、すなわち、第一センサー18Aで検出した「日なた」の部分の照度または日射量が、第二センサー18Bで検出した「日陰」の部分の照度または日射量よりも所定以上高くない場合、太陽からの直射光が「無し」と判定し、ブラインド10を「開く」ための制御信号(χ=0)を出力する。
【0032】
(ステップS5)
上記ステップS4で直射光「無し」と判定した場合には、制御装置17では、制御信号(χ=0)を受け、モータ16を駆動させてスラット11の傾斜角度を、所定角度(例えばβ=90゜;水平)に変動させ、ブラインド10を開いた状態とする。このとき、直射光が無ければ、天空光のみであり、この天空光は拡散光であるため、ブラインド10を開いて外部の光を直に取り込んでも眩しくなく、方向性がないために影も発生せず、また暑くなることもない。
【0033】
(ステップS6)
一方、ステップS4において、直射光が「有り」と判定された場合には、以下のようにしてブラインド10のスラット11の傾斜角度を制御する。まず、このステップS6においては、太陽高度の計算を以下のようにして行う。
【0034】
ここで、一般に、天空上の太陽位置は、太陽高度hsと太陽方位角αsとで表現されるが、これら太陽高度hsおよび太陽方位角αsと、緯度ψ,日赤緯δ,時角ιとの間には球面上の三角公式から、
sin(hs)=sin(ψ)sin(δ)+cos(ψ)・cos(δ)・cos(ι) ・・(7)
という関係がある。
ただし、
太陽方位角αs;真南を0゜とし、西方向を正、東方向を負とする。
緯度ψ;北緯を正とする。
日赤緯δ;天球の赤道面からの太陽高度を示し、天球の北側を正とする。
時角ι;子午線と時円(天球の北極と太陽を含む大円)のなす角度、子午線上を0゜とし、西側へ正とする。
【0035】
ところで、太陽が子午線を出発し、次に子午線と交わるまでが1日(これを「真太陽日」と言う)であり、このときの時角ι=360゜である。この真太陽日は1年を通じ日々異なるため、1年を通じて平均的な長さの1日を平均太陽日として用いている。そして、真太陽日、平均太陽日から定められる時刻を、それぞれ真太陽時τ、平均太陽時τmと呼び、その差を均時差εとしており、その関係は、
ε=τ−τm ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
となっている。
【0036】
また、各地においては、特定の土地の平均太陽時をその地域の標準時として用いている(日本の場合、東経135゜の兵庫県明石市における平均太陽時を日本標準時として全国で用いている)。そして、経度Lsの土地の平均太陽時τmを経度Lの土地においても標準時として用いるのであれば、平均太陽時τmと標準時Tには、
τm=T+(L−Ls)/15 ・・・・・・・・・・・・・・(9)
の関係が成り立つ。ただし、L,Lsは東経を正、西経を負とする。
【0037】
上記(8)および(9)の関係より、
τ=T+(L−Ls)/15+ε ・・・・・・・・・・・・・(10)
となる。さらに、時角ιと真太陽時τとの間には、
ι=15(τ−12) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)
の関係があることから、
ι=15(T−12)+L−Ls+15ε ・・・・・・・・・(12)
の関係が成り立つ。
【0038】
前記(7)〜(12)の関係から、月日時間のデータに対応した太陽高度hsを算出するプログラムを入力しておき、このプログラムによって、前記ステップS3を経てクロック20から出力された月日時間のデータから、当該時間の太陽高度を算出する。なお、上記(7)〜(12)の関係に基づいて、例えば東京のある1日における太陽高度hsを算出した結果(1時間毎)を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
なお、上記ステップS6において、月日時間のデータに基づいて太陽高度hsを算出するようにしたが、これに代えて、例えば、予め月日日時(例えば1分ごと)に対応した太陽高度のデータを予め作成し、記憶させておいても良い。その場合には、クロック20から出力された月日時間のデータに対応する太陽高度データを出力するようにする。
【0041】
(ステップS7)
このステップS6において太陽高度を算出した後は、ステップS7以降においてブラインド10の採光スラット角度(図1参照;最適傾斜角度;スラット11に反射した反射光Hが、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かうスラット11の角度)β1を計算するが、このときには便宜的に、特定のスラット11(例えば最上段のスラット11A)を対象とする。
ステップS6で算出した太陽高度hsに対応する採光スラット角度β1は、前記(4)式において、プロフィール角度Pに、算出した太陽高度hsを代入すれば求められる。その結果の一例を図7に示す。
【0042】
(ステップS8)
ところで、上記ステップS7において求めた採光スラット角度β1では、居住者Kにはスラット11での反射光Hが当たらないようになってはいても、太陽高度によっては、直接光がスラット11,11の隙間を通過して室内に直接入射してしまう場合がある。この場合は、図8に示すように、スラット11の角度を直射光が直接入射しない角度(最適傾斜角度;これを「遮光スラット角度」と称する)β2に設定する必要がある。言い換えれば、「遮光スラット角度」<「採光スラット角度」である場合(図7中矢印(イ)で示した範囲)、以下のステップS8において、スラット11の角度を遮光スラット角度β2に設定する必要がある。
【0043】
(ステップS9)
このような場合、図8において成り立つ、
s・tan(P)・cos(90゜-β2)=PBk−PA・sin(90゜-β2) …(13)の関係から遮光スラット角度β2を求める。
【0044】
(ステップS10以降)
この後は、ステップS6で算出された採光スラット角度β1、またはステップS8で算出された遮光スラット角度β2のデータをブラインド10のコントローラ15に出力し(ステップS10,S11)、そのデータに基づいてモータ16の作動を制御し、スラット11を所定のスラット角度(採光スラット角度β1または遮光スラット角度β2)に調整する(ステップS12)。
【0045】
上述したブラインド10によれば、スラット11の傾斜角度を変化させるモータ16と、このモータ16を制御する制御装置17と、直射光検出装置18とを備え、制御装置17では、全方向の光が当たるようにした第一センサー18Aと、直射光が当たらないようにした第二センサー18Bとで検出した照度または日射量のデータに基づき、直射光の有無を検出し、その結果に基づいてモータ16を制御してブラインド10を開閉する構成となっている。このようにして、直射光検出装置18で直射光の有無を検出し、その結果に基づいてブラインド10を開閉することにより、例えば曇りや雨の日の昼間、場所によっては白夜等、直射光が無く拡散光のみである場合には、ブラインド10を開いて自然光を室内に導入することができ、単に照度等により制御していた従来のブラインドに比較して、より良い室内環境を作り出すことが可能となる。また、室外に高価な照度センサーを単に設置する従来の技術に比較して高機能化を図ることができ、ブラインド10をコストと性能とが釣り合ったものとすることができる。
【0046】
また、このブラインド10は、スラット11の傾斜角度を上部のスラット11から下部のスラット11にかけて順次変化させ、スラット11,11,…に反射した太陽光が、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かう構成となっている。そして、制御装置17では、太陽高度に基づいてスラット11の採光スラット角度β1を算出し、スラット11の傾斜角度がこの採光スラット角度β1となるようモータ16を制御する構成となっている。
このようにして、直射光が有る場合であっても、スラット11の角度を太陽高度に対応させて時々刻々と制御することによって、最適な状態、すなわち、ブラインド10からの反射光Hが居住者Kに直接当たらず、かつその反射光Hが天井5に当たった上で室内を照らす間接光となるため眩しくなく、しかも柔らかい光で室内を窓際Aから室奥Bまで均一に照らす状態、を自動的に維持することができる。この結果、遮光でなく「採光」を目的とした自動制御型のブラインド10を実現することができる。
しかも、上記スラット角を変化させたブラインド10を用いることによって、常時室内グレア(眩しさ)が生じず、その結果、室内にグレアを感知する室内光センサーを設けて制御する必要もなく、価格上昇を抑えてよりコストパフォーマンスに優れたものとすることができる。さらに、上記構成により、照明制御と完全に分けることができ、したがって、施工時、改修時、メンテナンス時等の対応が容易となり、また照明の制御方法の種類を問わず、ブラインドをいかなる方式の照明にも組み合わせて設置することが可能となる。
【0047】
さらに、上述したブラインド10によれば、制御装置17では、スラット11の傾斜角度を、スラット11に反射した太陽光が、上部のスラット11ほど室奥Bの天井5に向かい、下部のスラット11ほど窓際Aの天井5に向かい、かつ、太陽光が室内に直接入射しないような遮光スラット角度β2に設定する構成となっている。これにより採光と直射光の遮断とを兼ね備えた機能を有するブラインド10を実現することができ、より一層優れた室内環境を作り出すことが可能となる。
【0048】
なお、上記実施の形態に挙げた直射光検出装置18の構成については、直射光の有無を検出するという所要の機能を果たすことができるのであれば、箱体19の形状,第一センサー18A,第二センサー18Bの設置位置、用いるセンサーの種類等、何ら問うものではない。例えば、第二センサー18Bに代えて、図9に示すような第二センサー18B’を採用しても良い。この第二センサー18B’は、センサー部の表面を、北側1/4を残して他の部分を銀製のシート25等で覆ったものである。このような第二センサー18B’を用いることにより、箱体19を廃した構成とすることもできる。もちろん、シート25については、直射光を確実に遮蔽できるので有ればその材質を問うものではない。
また、上記実施の形態では、第二センサー18B(18B’)を、北側1/4を残して他の部分を遮蔽する構成としたが、もちろん、遮蔽する部分の割合等は適宜設定すればよい。
【0049】
さらに、上記実施の形態では、ブラインド10の開閉手段として、スラット11の傾斜角を変動させるためのモータ16を用い、直射光検出装置18での検出結果に基づいて直射光「無し」と判定した場合には、スラット11の傾斜角度を変動させてブラインド10を開く構成としたが、これに限るものではなく、例えばスラット11の傾斜角度を変動させずに、ラダーテープ12を引張操作してブラインド10全体を「全開」状態とするようにしても良い。
【0050】
また、ブラインド10を、前側のラダーテープ12Aのスラット支持ピッチPAを一定にし、後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPBkを変化させる場合について示したが、後側のラダーテープ12Bのスラット支持ピッチPB(後述するように変化させないから、符号中の「k」を省く)を、前側のスラット支持ピッチPAよりも小さな一定値(例えばスラット幅=25mm、前側のスラット支持ピッチPA=21mmの場合、後側のスラット支持ピッチPB=20.7mmとする)に設定しても、スラット傾斜角度を段階的に変化させることができる。但し、この場合は、スラット幅や前側のスラット支持ピッチPAに応じて、後側のスラット支持ピッチPBの最適値を求める必要がある。また、ブラインド10自体の構成については、上記以外の他のものを採用しても良い。
【0051】
また、制御装置17での制御方法は、上記実施の形態で示したものに何ら限定する意図はなく、本願発明の主旨、すなわち直射光の有無や太陽高度によってブラインドを制御するのであれば、例えば制御条件、計算式、制御の優先順位、制御プログラム等、他のものを採用しても良いのは言うまでもない。
【0052】
さらに、一台の制御装置17で複数台のブラインド10を制御する場合には、コントローラで算出したスラットの傾斜角度を各ブラインド10に出力して各ブラインド10のモータ16を制御すればよい。
【0053】
加えて、上述した実施の形態では、本発明に係る調光型遮光体としてブラインドを例に挙げたが、直射光の有無を検出して遮光体を開閉させるよう制御する技術は、例えばロールスクリーン、カーテン等、他の開閉可能な調光型遮光体にも同様に適用することが可能である。
【0054】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、いかなる構成を採用しても良く、また上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものとしても良いのは言うまでもない。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る調光型遮光体によれば、調光型遮光体を開閉する開閉機構と、開閉機構の動作を制御する制御手段とが備えられ、制御手段では、直射光検出手段により直射光の有無を検出し、その結果に基づいて調光型遮光体を開閉するよう制御する構成となっている。また、直射光検出手段が、照度または日射量を検出する第一のセンサーと、北側の一部を残し他の部分に直射光が当たらないよう遮蔽した第二のセンサーと、これらのセンサーでの検出結果に基づいて直射光の有無を判定する判定手段とを備えた構成となっている。このようにして、直射光検出手段で直射光の有無を検出し、その結果に基づいて調光型遮光体を開閉することにより、例えば曇りや雨の日の昼間等、直射光が無い場合には調光型遮光体を開いて自然光を室内に導入することができ、単に照度等により制御していた従来のブラインドに比較して、より良い室内環境を作り出すことが可能となる。また、室外に高価な照度センサーを単に設置する従来の技術に比較して高機能化を図ることができ、調光型遮光体をコストと性能とが釣り合ったものとすることができ、コストパフォーマンスに優れたものとすることができる。
【0056】
また、請求項1に係る調光型遮光体によれば、調光型遮光体がブラインドであり、このブラインドには、スラット全体の傾斜角度を変動させるための駆動機構が備えられるとともに、制御手段では、太陽高度に基づいて採光スラット角度および遮光スラット角度を算出し、スラットの傾斜角度をラダーテープを操作することで変動させて最適傾斜角度となるよう駆動機構を制御する構成とされ、さらに、このブラインドの多数のスラットは、スラットに反射した太陽光が、上部のスラットほど室奥の天井に向かい、下部のスラットほど窓際の天井に向かうように、スラットの傾斜角度が、上部のスラットから下部のスラットにかけて順次変化させて、かつ、太陽光が室内に直接入射しないような角度に予め設定されて設けられた構成となっている。このような調光型遮光体によれば、制御手段で、太陽高度に対応させてスラット全体の傾斜角度を調整するための駆動機構を時々刻々と制御することによって、スラットの傾斜角度を常に最適な角度に調整するができるので、最適な採光状態を自動的に維持することができる。これにより、採光と直射光の遮断とを兼ね備えた機能を有するブラインドが実現でき、優れた室内環境を作り出すことが可能となる。
また、上記構成により、照明制御と完全に分けることができ、したがって、施工時、改修時、メンテナンス時等の対応が容易となり、また照明の制御方法の種類を問わず、調光型遮光体をいかなる方式の照明にも組み合わせて設置することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る調光型遮光体の一例を示す図であって、前記ブラインドの概略構成を示す側面図である。
【図2】 前記ブラインドの要部拡大側面図である。
【図3】 同ブラインドにおける入射光と反射光の関係を示す図である。
【図4】 同ブラインドの各スラットにおける入射光と反射光の関係を示す図である。
【図5】 同ブラインドに備えた直射光検出手段の構成を示す概略図である。
【図6】 同ブラインドに備えた制御手段における制御方法を示すフローチャートである。
【図7】 前記制御手段で算出した太陽高度とスラットの最適傾斜角度との関係を示す図である。
【図8】 前記スラットにおける直接光を遮蔽するときのスラットの傾斜角度と入射光との関係を示す図である。
【図9】 前記直射光検出手段に用いるセンサーの他の一例を示す斜視図である。
【図10】 従来の採光の方式を示す図である。
【符号の説明】
5 天井
10 ブラインド(調光型遮蔽体)
11 スラット
16 モータ(開閉機構,駆動機構)
17 制御装置(制御手段)
18 直射光検出装置(直射光検出手段)
18A 第一のセンサー
18B,18B’ 第二のセンサー
A 窓際
B 室奥
β1 採光スラット角度(最適傾斜角度)
β2 遮光スラット角度(最適傾斜角度)
Claims (1)
- ブラインド、ロールスクリーン、カーテン等、太陽光の射し込む窓面に取り付けることで、室内への採光を調節する調光型遮光体において、
該調光型遮光体は、水平方向に延びるスラットを鉛直方向に間隔を持って多数配列したブラインドであって、これを開閉する開閉機構と、前記スラットをその幅方向の前側と後側で上下方向に間隔を持って保持するラダーと、前記スラット全体の傾斜角度を前記ラダーのラダーテープを操作することで変動させる駆動機構と、前記開閉機構および前記駆動機構の動作を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、直射光検出手段により直射光の有無を検出し、その結果に基づいて前記調光型遮光体を開閉するよう前記開閉機構を制御するとともに、太陽高度に基づいて採光スラット角度および遮光スラット角度を算出し、前記駆動機構で前記スラットの傾斜角度を変動させて最適傾斜角度となるよう前記駆動機構を制御する構成とされ、
前記直射光検出手段は、照度または日射量を検出する二個一対のセンサーと、これらのセンサーでの検出結果を比較し、これに基づいて直射光の有無を判定する判定手段とを備え、前記二個一対のセンサーは、第一のセンサーと、北側の一部を残し、他の部分に直射光が当たらないよう遮蔽した第二のセンサーとからなり、
前記多数のスラットは、前記スラットに反射した太陽光が、上部のスラットほど室奥の天井に向かい、下部のスラットほど窓際の天井に向かうように、前記スラットの傾斜角度が、上部のスラットから下部のスラットにかけて順次変化させて、かつ、太陽光が室内に直接入射しないような角度に予め設定されて設けられていることを特徴とする調光型遮光体。
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