JP3655359B2 - 含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物 - Google Patents

含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、コンタクトレンズの洗浄および消毒の分野に関するものであり、さらに詳しくは、酵素反応を利用した含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズに大別される。更に、ハードコンタクトレンズには、ポリメタクリル酸メチルを主成分とする非酵素透過性ハードコンタクトレンズと種々のジメチルシロキサングループやフッ素原子を含有する材料を用いた酵素透過性ハードコンタクトレンズに分類される。一方、ソフトコンタクトレンズには、ポリヒドロキシメタクリレートを主成分とする含水性ソフトコンタクトレンズとケイ素やフッ素を含有した合成ゴム、アクリルゴムを用いた非含水性ソフトコンタクトレンズがある。
【0003】
こららのコンタクトレンズの使用上の共通した問題は、コンタクトレンズの汚れである。一般的なこの種の汚れは、涙液由来のタンパク質、粘性多糖類、脂質などの有機物やカルシウムなどの無機物が蓄積し固着したものである。その中の涙液由来タンパク質がとくに問題となる。この涙液由来タンパク質がコンタクトレンズ表面に蓄積し固着すると、コンタクトレンズに曇りが生じ、光学的透明度が失われ装用者に不快感をもたらす。最悪の場合には、コンタクトレンズ表面の固着物で角膜を傷つけ、充血、炎症等の眼障害を引き起こし、その装用を中止しなければならない事態となる。
【0004】
そのため、コンタクトレンズの種類に関係なく、その汚れを取り除く共通した方法が開発されている。代表的な方法は、界面活性剤を含む洗浄剤で「こすり洗い」することである。この「こすり洗い」は日常の手入れには有効であるが、コンタクトレンズ表面に固着した涙液由来タンパク質を取り除くには適当でない。しかも、「こすり洗い」の際にコンタクトレンズの紛失や破損を起こす危険性がある。最近では、このコンタクトレンズの汚れをより安全で確実に取り除くため、酵素を利用した洗浄方法が開発された。例えば、特開平1−167726号公報には、微生物由来のプロテアーゼを利用した保存液が開示されているが、このようにコンタクトレンズの汚れを酵素で取り除く方法は、業界で一般的に広く普及している。
【0005】
コンタクトレンズの中でも含水性の素材からなる含水性ソフトコンタクトレンズは、約30〜約80%の水を含むヒドロゲルで良好な装用感を有している。しかしながら、レンズ内部に水を含むため微生物が成育する温床となる。そのため、微生物学的な汚染防止を目的とする消毒が義務づけられている。このような日常的な消毒の義務は、含水性ソフトコンタクトレンズに限定されている。
【0006】
含水性ソフトコンタクトレンズの消毒には、熱による煮沸消毒法と化学薬品による化学消毒法がある。煮沸消毒法は、一般に電気による加熱手段が採られている。一方、化学薬剤を使った化学消毒法は、過酸化水素を利用したものが開発されている。例えば、特開昭63−286158号公報には、過酸化水素による消毒と過酸化水素の分解に固定化酸素を利用した方法が開示されており、特開昭63−199799号公報には、過酸化水素発生化合物と還元剤と緩衝液を含有する錠剤を組み合わせたものが開示されている。また、特開平4−226666号公報には、過酸化水素をアルカリ条件下で用いる消毒工程および還元剤と緩衝液を含有する液状中和剤を用いた中和工程とからなる方法が開示されている。
【0007】
過酸化水素以外の薬剤を利用したものも開発されている。例えば、特開昭61−59420号公報には、消毒剤としてトリメトプリムとベンジルアルコールを組み合わせた方法が開示されている。特開昭63−131124号公報には、ジアミン類とジハロゲン化合物を主成分とする縮合体による洗浄、保存または消毒のために使用する液剤が開示されている。更に、特開平4−234723号公報には、二酸化塩素前駆物質を含有する電解液に電流を通して二酸化塩素を発生させて消毒する方法が開示されている。
【0008】
また、コンタクトレンズの洗浄と消毒を同時に実施するために提案された幾つかの方法がある。例えば、特開平2−289255号公報には、タンパク質分解酵素と重合体型抗菌剤および約200〜約600mOsm/kg水の浸透圧値を有する組成物と方法が開示されている。この使用条件では、ヒドロゲルレンズを装用する時の浸透圧が配慮されておらず、生理食塩水の浸透圧に戻す工程が必要である。更に、ヒドロゲルレンズに対する抗菌剤の取り込みに関しては何ら触れられていない。特開平4−231054号公報には、第4級アンモニウム塩やビグアナイドの重合体型抗菌剤と錯化剤および酵素からなる組成物、並びに同組成物を用いる洗浄・殺菌方法が開示されているが、ここには、第4級アンモニウム塩やビグアニドの重合体型抗菌剤の殺菌力は、C.albicansとA.fumigatusに対して有効でないことが記載されている。また、重合体型抗菌剤と酵素の間の結合を錯化剤によって抑制しているが、不十分であり、洗浄と消毒を同時に実施することは難しい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
熱を利用したコンタクトレンズの煮沸消毒は、電源が必要であり、使用範囲が限定される。しかも、熱によるタンパク質の変性物がレンズ表面に蓄積される可能性がある。一方、前述した化学薬剤を利用した過酸化水素に代表される消毒は、過酸化水素が眼にとって危険なものであるため、消毒が完了した時点で、過酸化水素を分解して中和しなければならない。その中和操作は、使用者にとって極めて煩わしいものであった。
【0010】
本発明は、従来存在しなかった、一液で含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄と消毒を同時に実施できる組成物、特に、電源等の熱源を必要とせず、洗浄成分や消毒成分が含水性ソフトコンタクトレンズ内部に取り込まれず、取扱が容易で、しかも安全かつ短時間で洗浄と消毒を同時に実施できる含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、pH緩衝剤、微生物の細胞壁に作用する酵素、微生物の細胞膜に作用する酵素、抗菌性タンパク質およびピマリシンを含有することを特徴とする含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物に関するものである。
【0012】
我々は、一般的に普及した酵素洗浄を発展させ、安全性の高い酵素反応を利用した消毒用組成物について鋭意研究した結果、微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素を用いて、微生物のうち病原性のあるものを感染力価以下にまで低減させて感染の危険性を除く条件を見いだし、本発明を完成した。
【0013】
本発明は、微生物の溶菌現象に関与するある種の酵素、いわゆる溶菌酵素による酵素反応を利用したものである。ただし、溶菌酵素には溶菌現象に関与する酵素反応のほかにも、解明されていない非酵素的な因子による溶菌作用も含まれる。この溶菌酵素は、種々の微生物をある程度溶菌することができるが、消毒効果に匹敵する作用を得ることは難しい。意外にも、抗菌性タンパク質およびピマリシンをこの酵素反応中に共存させると、それらの協同作用によって格段の消毒効果が得られることがわかった。しかしながら、これらの作用機構は必ずしも完全に解明されているわけではない。
【0014】
本発明における酵素的な消毒作用は、微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素によって達成される。微生物の細胞壁を溶解するためには、微生物の細胞壁を構成する主要成分であるペプチドグリカン、キチン、グリカン、キトサンに作用する酵素が有効である。このような酵素は、動物起源のリゾチームまたはその塩、微生物起源のN−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ、キチナーゼおよびキトサナーゼからなる群から選択できるもので、これらは1種で使用されても2種以上併用されてもよい。この群において、特に実用性ある酵素は、動物起源のリゾチームまたはその塩、微生物起源のN−アセチルグルコサミニダーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼを有するリソスタフィン(シグマ社製)、β−1,3−グルカナーゼを主とするキタラーゼ(和光純薬工業社製)、β−1,3−グルカナーゼやキチナーゼを有するファンセラーゼ(ヤクルト社製)、β−1,3−グルカナーゼやキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼを有するナカノザイム−LE01(中埜酢店製)などである。これらの溶菌酵素の使用量は、酵素の起源と種類、反応pH、作用時間などによって変化する。通常は、使用状態の水性液体組成物中、0.001〜5重量%となるように使用するのがよい。
【0015】
微生物の細胞膜に作用する酵素としては、微生物の細胞膜を構成する成分であるタンパク質や脂質の加水分解酵素が有効である。このような酵素は、動物起源または微生物起源のプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、微生物起源のセルラーゼ、ペクチナーゼからなる群から選択でき、これらは1種で使用されても、2種以上併用されてもよい。特に好ましい酵素は、微生物起源のバチルスおよびストレプトマイセス並びにアスペルギルス属から誘導されるプロテアーゼや微生物起源のシュードモナスおよびアスペルギルス属から誘導されるリパーゼである。このような酵素は、通常の市販品として入手可能であり、例えばプロレザー(天野製薬社製)、ビオプラーゼ(ナガセ生化学工業社製)、リパーゼP(天野製薬社製)、リリパーゼ(ナガセ生化学工業社製)などが使用できる。粉末、錠剤あるいはグリセリン等の酵素安定剤を含む液状のもの等、いずれが使用されてもよい。
【0016】
プロテアーゼやリパーゼは、溶菌反応に関与するほか、含水性ソフトコンタクトレンズのタンパク質汚れや脂質汚れに対する洗浄作用が期待できる。これらの酵素の使用量は、酵素の起源と種類、反応pH、洗浄時間、使用頻度などによって変化するが、通常は、使用状態の水性液体組成物中、0.001〜10重量%となるように使用されるのがよい。
【0017】
本発明における抗菌性タンパク質は、天然物や微生物による醗酵生成物から得られるもので、通常は食品の保存料として利用されている。この抗菌性タンパク質は、微生物に対して広範な増殖抑制効果が確認されている。しかし、その作用は、消毒作用とは明らかに異なる。ところが、意外にも、この抗菌性タンパク質を微生物の細胞壁に作用する酵素および微生物の細胞膜に作用する酵素と共存させると、一般の細菌や糸状菌に対する消毒作用が増強される。このような抗菌性タンパク質は、プロタミンまたはその塩、ポリアルギニンおよびポリリジンの群から選ばれる。その使用量は、特に限定されないが、通常、使用状態の水性液体組成物中、0.0001〜10重量%となるように使用されるのがよい。
【0018】
本発明におけるピマリシンは、抗真菌剤であり、眼科領域で問題となるフザリウム、カンジダ、アスペルギルス属に有効とされている。カビなどの胞子形成した部分は、特に細胞壁に胞子特有の壁素材物質が細胞壁の表面被覆物質として既存の壁層内に取り込まれ溶菌酵素が容易に作用しにくい状況を作りだしている。このような特殊なカビの胞子に対しては溶菌酵素の作用に加えてピマリシンを併用することが有効である。ピマリシンは、通常、使用状態の水性液体組成物中、0.05〜5重量%、特に0.1〜2重量%となるような割合で使用するのが好ましい。
【0019】
これらの酵素反応はpH5〜8の範囲で行われる。これを制御し調整するための緩衝剤は、酵素活性を阻害せず、酵素活性の最適pHを維持するもので、眼科生理学的に許容されるものであれば特に制限はない。このような緩衝剤には、リン酸、クエン酸、ホウ酸またはそれらのナトリウム塩が挙げられる。これらは1種で使用されても2種以上併用されてもよい。また、その使用量は、使用状態の水性液体組成物中、0.01重量%〜10重量%、特に0.1〜5重量%となるような割合であるのが好ましい。
【0020】
これにより、眼科領域で問題となる病原性微生物を少なくとも感染力価以下にまで低減させて感染の危険を除くことができる。しかも、プロテアーゼやリパーゼを併用しているので、含水性ソフトコンタクトレンズのタンパク質あるいは脂質汚れを取り除く洗浄効果も期待できる。
【0021】
本発明には、必要に応じて、金属キレート剤、等張調整剤、界面活性剤、親水性高分子等のその他の成分を含有することができる。例えば、金属キレート剤は、タンパク質汚れに含まれるカルシウムイオンなどの作用を弱めるために使用される。このような作用を得るには、エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩および二ナトリウム塩などを、使用状態の水性液体組成物中、0.01〜0.5重量%となる割合で使用するのが好ましい。
【0022】
前述の如き、本発明の組成物は、そのまま使用可能な水性の液体組成物として提供されてもよいが、水で希釈又は溶解して使用できる濃厚な液体組成物、あるいは錠剤、顆粒、粉末又は凍結乾燥物等の如き固体組成物で提供されてもよい。なお、本発明の組成物における微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素の配合比率は、重量割合で15:85〜65:35であるのが好ましく、また、抗菌性タンパク質の使用量は、微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素の合計量に対して5〜85重量%であるのが好ましい。
【0023】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を更に詳しく説明する。なお、実施例において%とあるのが、特に断らない限り、重量%を示す。
実施例1
50mM pH7.5ホウ酸緩衝液 70 ml
リソスタフィン(シグマ社) 0.01g
キタラーゼ(和光純薬工業) 0.02g
硫酸プロタミン(ナカライテスク) 0.10g
プロレザー(天野製薬) 0.05g
リリパーゼ(ナガセ生化学工業) 0.05g
塩化ナトリウム 0.35g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.05g
上記試薬を順次溶解後、水酸化ナトリウムの適量でpHを7.5に調整し、精製水で、全量を75mlとする。これを濾過滅菌して、滅菌済の2.5%ピマリシン懸濁液(シグマ社)25mlを加えた。
【0024】
実施例2
50mM pH6.5クエン酸緩衝液 70 ml
塩化リゾチーム(ナカライテスク) 0.10g
キチナーゼ(和光純薬工業) 0.02g
ポリリジン(チッソ) 0.10g
ビオプラーゼ(ナガセ生化学工業) 0.03g
塩化ナトリウム 0.35g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.05g
上記試薬を順次溶解後、水酸化ナトリウムの適量でpHを6.5に調整し、精製水で、全量を75mlとする。これを濾過滅菌して、滅菌済の2.5%ピマリシン懸濁液(シグマ社)25mlを加えた。
【0025】
比較例1
この例は、眼科領域で使用される化学消毒剤と溶菌酵素を組み合わせた、消毒効果を確認するための比較処方である。
ホウ酸 1.0 g
クエン酸 0.05g
塩化リゾチーム(ナカライテスク) 0.10g
塩化ナトリウム 0.40g
5%グルコン酸クロルヘキシジン 0.2g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.05g
上記試薬を順次溶解後、水酸化ナトリウムの適量でpHを5.5に調整し、精製水で、全量を100mlとし、これを濾過滅菌した。
【0026】
比較例2
この例は、微生物の細胞膜に作用する酵素の効果を確認するための比較処方である。
50mM pH6.5リン酸緩衝液 75 ml
リソスタフィン(シグマ社) 0.01g
キチナーゼ(和光純薬工業) 0.02g
ポリリジン(チッソ) 0.10g
塩化ナトリウム 0.35g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.05g
上記試薬を順次溶解後、水酸化ナトリウムの適量でpHを6.5に調整し、これを濾過滅菌して、滅菌済の2.5%ピマリシン懸濁液(シグマ社)25mlを加えた。
【0027】
比較例3
この例は、ピマリシンの効果を確認するための比較処方である。
50mM pH7.5クエン酸緩衝液 90 ml
塩化リゾチーム(ナカライテクス) 0.1 g
キチナーゼ(和光純薬工業) 0.02g
硫酸プロタミン(ナカライテクス) 0.05g
ビオプラーゼ(ナガセ生化学工業) 0.05g
リパーゼP(天野製薬) 0.05g
塩化ナトリウム 0.35g
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.05g
上記試薬を順次溶解後、水酸化ナトリウムの適量でpHを7.5に調整し、精製水で全量を100mlとし、これを濾過滅菌した。
【0028】
実施例および比較例における殺菌効果および洗浄効果は、下記の方法で測定した。
〔大腸菌の殺菌効果の試験方法〕
試験菌株として、大腸菌IFO3301をミューラー・ヒントン培地(Difco)に接種し、37℃で24時間培養する。これを滅菌生理食塩水で菌数を約10cells/mlとなるように調整し、試験菌液とした。次に、実施例1〜2および比較例1〜3の溶液10mlに、この試験菌液を100μl接種し、試験液とした。これを20℃に保存し、保存2時間後に試験液中の生菌数をミューー・ヒントン寒天培地を用いた混釈平板培養法(培養温度37℃、培養期間7日)により測定した。対照として、滅菌生理食塩水を用いて同様に試験した。
【0029】
〔黒こうじカビの殺菌効果の試験方法〕
試験菌株として黒こうじカビIFO4414をポテトデキストロース寒天培地(日水製薬)に接種し、37℃で7日間培養する。この胞子部分を0.05%Tween80含有滅菌生理食塩水に採取して胞子懸濁液を作り、菌数を約106 cells/mlとなるように調整し、試験菌液とした。次に、実施例1〜2および比較例1〜3の溶液10mlに、この試験菌液を100μl 接種し、試験液とした。これを20℃に保存し、保存2時間後に試験液中の生菌数をポテトデキストロース寒天培地を用いた混釈平板培養法(培養温度37℃、培養期間7日)により測定した。対照として、滅菌生理食塩水を用いて同様に試験した。
【0030】
〔洗浄効果の試験方法〕
涙液とほぼ同様の下記組成からなる人工汚れ液を調製する。
アルブミン(牛血清) 1.44g
γ−グロブリン(牛血清) 0.42g
リゾチーム(卵白製) 0.36g
牛脂 1.00g
塩化ナトリウム 0.90g
精製水 全量 100ml
【0031】
この人工汚れ液に含水ゲル(約10×50×1mm、含水率39%)を室温で一昼夜浸漬する。浸漬後、この含水ゲルを取り出して20℃で一昼夜乾燥する。これを3回繰り返して含水ゲル表面に人工汚れを付着させた。この汚れの付着した含水ゲルの285nmでの吸光度を分光光度計(島津製UV−160A)で測定した。この時の吸光度をAとする。この汚れの付着した含水ゲルを実施例1〜2および比較例1〜3の溶液に所定時間浸漬し、その後、含水ゲルを各溶液から取り出して軽く水洗して、再び285nmでの吸光度を分光光度計で測定した。この時の吸光度をBとする。この測定結果から、汚れ除去率を次式で求めた。
人工汚れ除去率(%)=〔(A−B)/A〕×100
殺菌効果試験および洗浄効果試験の結果を表1および表2に示す。
【0032】
Figure 0003655359
【0033】
Figure 0003655359
【0034】
表1および表2の結果から次のことが明らかとなる。
a)比較例1は、黒こうじカビに対する殺菌力が低く、洗浄効果がない。しかも殺菌剤が含水性ソフトコンタクトレンズに取り込まれる危険性が高い。
b)比較例2は、微生物の細胞膜に作用する酵素が存在しないため、完全に溶菌せず、洗浄効果も全くない。
c)比較例3は、洗浄効果は認められるものの、黒こうじカビに対する殺菌力が弱い。
つまり、比較例1〜3は、殺菌効果および洗浄効果がともに満足できない。一方、本発明の実施例1〜2は、殺菌効果および洗浄効果のいずれも満足できる結果が得られた。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、含水性ソフトコンタクトレンズを、pH緩衝剤、微生物の細胞壁および細胞壁が溶解して露出した細胞膜に作用する酵素、抗菌性タンパク質およびピマリシンの存在する溶液に浸漬処理するだけで、酵素的に洗浄と消毒を同時に効果的に実施できる。このような酵素的な洗浄および消毒組成物は、化学薬剤が含水性ソフトコンタクトレンズの内部に取り込まれる心配がなく、操作性及び取扱上、安全である。

Claims (10)

  1. pH緩衝剤、微生物の細胞壁に作用する酵素、微生物の細胞膜に作用する酵素、抗菌性タンパク質およびピマリシンを含有することを特徴とする含水性ソフトコンタクトレンズの洗浄および消毒用組成物。
  2. 微生物の細胞壁に作用する酵素が、動物起源のリゾチームまたはその塩、微生物起源のN−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、β−1,3−グルカナーゼ、キチナーゼおよびキトサナーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1の組成物。
  3. 微生物の細胞膜に作用する酵素が、プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1または2の組成物。
  4. 上記抗菌性タンパク質が、プロタミンまたはその塩、ポリアルギニンおよびポリリジンからなる群から選ばれるものである請求項1〜3いずれか1項の組成物。
  5. 上記組成物が水性の液体組成物である請求項1〜4いずれか1項の組成物。
  6. 上記組成物が、錠剤、顆粒、粉末又は凍結乾燥した固体組成物である請求項1〜4いずれか1項の組成物。
  7. 金属キレート剤、等張調整剤、界面活性剤および親水性高分子からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を含有し、使用時の水性液体組成物とした際のpHが5〜8となるように調整されている請求項1〜6いずれか1項の組成物。
  8. 微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素の配合比率が重量割合で15:85〜65:35である請求項1〜7いずれか1項の組成物。
  9. 抗菌性タンパク質が、微生物の細胞壁に作用する酵素と微生物の細胞膜に作用する酵素の合計量に対して5〜85重量%である請求項1〜8いずれか1項の組成物。
  10. 微生物の細胞壁に作用する酵素を0.001〜5重量%、微生物の細胞膜に作用する酵素を0.001〜5重量%、抗菌性タンパク質を0.0001〜10重量%、ピマリシンを0.05〜5重量%、緩衝剤を0.01〜10重量%の割合で含有する請求項5の組成物。
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