JP3654659B2 - 高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、例えば、ワークを誘導加熱して焼入したり、丸鋸台金にチップをロウ付けする際等に使用される、高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置としては、例えば、特開昭61−4305号公報に開示のものが知られている。このトランジスタインバータ装置は、プッシュプル接続された一対のトランジスタと、このトランジスタのコレクタにその一次側が接続されたトランスと、トランスの二次側に接続された共振コンデンサ、帰還用コンデンサ及び出力トランスと、この出力トランスの二次側に接続された加熱コイル等を具備している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このトランジスタインバータ装置にあっては、装置自体が大型化してコストがアップすると共に、加熱効率が劣るという問題点があった。即ち、共振コンデンサ及び帰還用コンデンサは、それぞれ複数個のコンデンサを並列使用するが、その際、各コンデンサは銅板で接続するものの、例えば帰還用コンデンサとトランジスタ、共振コンデンサとトランス等は、一般的にリード線で接続している。このため、装置内の空間が有効利用されず、装置が大型化することになり、装置のコストがアップする。
【0004】
また、リード線の使用により、その引き回しによる抵抗やインダクタンンスが大きくなって、伝達ロスが発生する等、回路に悪影響が生じる。特に、帰還用コンデンサとトランジスタ間のリード線による伝達ロスは、トランジスタのスイッチグ動作に悪影響し、正確なスイッチング動作が得られず、装置の加熱効率が劣ることになる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、装置自体を小型にし得てコストダウンが図れると共に、装置の加熱効率を向上させかつ結露による誤動作を防止し得る、高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成すべく、請求項1記載の高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置は、複数のトランジスタが並列接続された少なくとも一対のトランジスタユニットと、該ユニットの出力側に接続されるコイルと、該コイルの両端に接続された共振コンデンサ及びカレントトランスを有する共振回路と、該共振回路と前記トランジスタユニットの入力間に接続される帰還用コンデンサと、前記共振回路の出力側に接続される加熱コイルとを具備する高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置において、前記トランジスタユニットの各トランジスタをそれぞれ垂直状態で配置し、該ユニットの上方に、パターンを有し抵抗が半田付けされた基板と該基板の端子に接続された複数枚の第1の導電板を垂直状態で配置すると共に、該導電板に前記共振コンデンサ及び帰還用コンデンサを一体的に接続してなることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載のトランジスタインバータ装置は、前記トランジスタが、支柱に支持された一対の放熱板間に挟持された状態でかつその各端子が上方を向くように垂直状態で配置されると共に、該トランジスタの上方に、前記基板、共振用コンデンサ及び帰還用コンデンサが配置されていることを特徴とする。
【0008】
【作用】
請求項1または2に記載の高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置によれば、垂直状態で配置されたトラジスタユニットの上方に、抵抗が半田付けされた基板と複数枚の第1の導電板を垂直状態で配置する。この導電板には、共振コンデンサと帰還用コンデンサが電気的に接続され、装置内の空間が有効利用されて、装置の小型化が図れると共に、リード線による引き回しが少なくなり、伝達ロス等が低減された、加熱効率が向上すると共に、トランジスタの下方に基板等が存在しなくなり、結露の落下による基板の誤動作が防止される。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係わる高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置の回路図を示している。図1において、トランジスタインバータ装置1(以下、単に装置1という)は、一対のトランジスタユニット2、3と、このトランジスタユニット2、3の出力側に接続されたコイル4と、このコイル4の両端に接続された共振コンデンサ5及びカレントトランス6と、トランジスタユニット2、3を作動させるドライブ回路7等を有している。
【0011】
トランジスタユニット2、3は、電界効果トランジスタ8(以下、単にFET8という)と、このFET8のゲートとソースに、それぞれ接続された抵抗9、10からなる回路を、例えば、8個それぞれ並列に接続して構成されている。そして、このトランジスタユニット2、3の、ドレイン端子2a、3aはコイル4の接続端子4b、4cに接続され、ゲート端子2b、3b(抵抗9の一端)は、ドライブ回路7に接続されている。また、トランジスタユニット2、3のソース端子2c、3c(抵抗10の一端)は、ドライブ回路7のマイナス端子13に接続されている。
【0012】
コイル4は、後述する如く空芯コイルで構成され、その中間端子4aには、直流電源のプラス端子14に接続された直流リアクル15が接続されている。そして、コイル4の中間端子4aの両側には、上記接続端子4b、4cが固定され、この接続端子4b、4cに、トランジスタユニット2、3のドレイン端子2a、3aがそれぞれ接続されている。また、コイル4の両端とトランジスタユニット2、3のゲート端子2b、3b間には、帰還用コンデンサ16、17がそれぞれ接続されている。
【0013】
カレントトランス6は、円筒状の銅板で形成された二次コイル6bと、この二次コイル6bの内部に収納され、銅パイプを所定回数巻回させた一次コイル6aからなり、一次コイル6aの両端がコイル4の両端に接続されている。また、二次コイル6bの両端には、加熱コイル19が接続され、この加熱コイル19にはワーク20が近接配置される。
【0014】
ドライブ回路7は、例えば、ダイオードユニット(図示せず)からなる直流電源のプラス端子12とマイナス端子13間に接続されたコンデンサ21と、このコンデンサ21に並列接続された、2個の抵抗22、23及び抵抗24、25の直列回路等を有している。抵抗24、25の接続点は、トランジスタユニット2のゲート端子2bに接続され、抵抗22、23の接続点は、トランジスタユニット3のゲート端子3bに接続されている。
【0015】
この装置1は、図2及び図3に示す如く組み立てられている。即ち、8個のFET8を、リード端子が上方を向くようにして、一対の放熱板27、28間に位置させ、ネジ29によって挟持した状態で取り付ける。そして、放熱板28に支柱30の上端を固定すると共に、放熱板28の上部に、取付板31を介して基板32を垂直状態で固定する。この基板32には、所定形状のパターンが形成され、このパターンには上記抵抗9、10が予め半田付けされている。
【0016】
FET8は、ゲートとソースが基板32のパターンに半田付けされ、ドレインが放熱板28の上面に半田付けもしくはネジ止めされている。これにより、8個のFET8が並列接続されることになる。放熱板27、28には、両端にホースコネクタ33が固定された冷却パイプ34、35がそれぞれロウ付け固定されている。この基板32、放熱板27、28等は、一体的に組み付けられてユニット化され、このユニットは左右対称に構成されている。そして、支柱30の下端を、装置1の底板36に固定することにより、一対の基板32が所定間隔を有して垂直状態で配置される。
【0017】
この基板32の上方には、3枚の銅板38〜40(第1の導電板)が垂直状態で配置されている。また、基板32の上端部にその長手方向に形成されたパターン(ゲート端子2b、3b)には、銅板41(第2の導電板)の下端が、ネジ42によってそれぞれ固定されている。そして、銅板41と銅板39間及び銅板41と銅板40間には、例えば、同一静電容量の高周波電力用の磁器コンデンサからなる2個のコンデンサ16a、16b(16bは図示せず)及びコンデンサ17a、17bが、ネジ43によって固定されている。この並列接続された2個のコンデンサ16a、16b及びコンデンサ17a、17bにより、上記帰還用コンデンサ16、17が構成され、該コンデンサ16、17とトランジスタユニット2、3とが銅板41によって接続されることになる。
【0018】
また、銅板38と銅板39間及び銅板38と銅板40間には、4個のコンデンサ5a〜5dがネジ45によって固定されると共に、銅板39、40の外側には、2個のコンデンサ5e、5fがネジ45によって固定されている。このコンデンサ5eとコンデンサ5fの一端は、3枚の比較的薄い銅板46a〜46cによって銅板38に接続されている。これにより、6個のコンデンサ5a〜5fは並列接続されて、上記共振コンデンサ5が構成される。なお、6個のコンデンサ5a〜5fは、例えば、同一静電容量を有すると共に、帰還用コンデンサ16a、16b、17a、17bと同様、高周波電力用の磁器コンデンサで構成されている。
【0019】
銅板39、40の後端部には、一対の銅板48a、48b(第3の導電板)の前端部がネジ50によって固定され、この銅板48a、48bの後端部には、上記コイル4の接続板49がネジ51によって固定されている。これにより、コイル4は、銅板48a、48bによって、その両端部が銅板39、40に電気的が接続されると共に、機械的に固定保持されることになる。なお、コイル4は、絶縁チューブが嵌装された銅パイプを所定回数巻回した空芯コイルで構成され、その両端部には、ホースコネクタ52が固定されると共に、上記接続板49がそれぞれ固定されている。
【0020】
また、銅板39、40の前端部には、一対の銅板53a、53b(第4の導電板)の後端部がネジ54によって固定され、この銅板53a、53bの前端部には、図4及び図5に示す如く、カレントトランス6が固定されている。即ち、カレントトランス6の二次コイル6b内に、絶縁シート55を介して収納された一次コイル6aの上方に延びた両端部に、銅板からなる接続板56a、56bを固定し、この接続板56a、56bと上記銅板53a、53bとを図示しないネジによって固定する。なお、一次コイル6aの両端には、ホースコネクター57が固定されている。
【0021】
また、二次コイル6bの両端部には、絶縁板58を介して圧接固定された一対の銅板59a、59bの後端部が固定され、この銅板59a、59bの前端部は、装置1の前面板60から外部に突出している。銅板59a、59bには、取付板61a、61bが固定され、この取付板61a、61bを前面板60に固定したベーク板62に、ネジ63によって固定することによって、カレントトランス6が装置1の所定位置に配設される。
【0022】
また、銅板59a、59bの内部には冷却水の流路Rが形成され、この流路Rは、二次コイル6bの外周に固定された冷却パイプ64に連結されている。冷却パイプ64の両端にはホースコネクタ65が固定され、このホースコネクタ65から、冷却水が循環供給されることにより、二次コイル6b及び銅板59a、59bの発熱が抑えられる。銅板59a、59bの先端部には、コイル部19aと、取付部19bからなる加熱コイル19が取り付けられる。この加熱コイル19にも、冷却水が循環供給される。
【0023】
次に、このトランジスタインバータ装置1の動作について説明する。まず、ドライブ回路7により、トランジスタユニット2のFET8がオンすると、直流電流が、直流リアクトル15からコイル4の中間端子4aに供給され、コイル4、トランジスタユニット2のFET8、抵抗10等を介して、マイナス端子13に流れる。また、コイル4に電流が流れることにより、共振コンデンサ5とカレントトランス6の一次コイル6aからなる共振回路が共振し、カレントトランス6の二次コイル6bには、カレントトランス6の巻数比に応じた大電流が流れ、加熱コイル19に所定方向(図1の上から下)の電流が流れることになる。
【0024】
そして、帰還用コンデンサ16、17を介して、トランジスタユニット2、3の各FET8のゲートに電流が帰還されることにより、ある時点で、トランジスタユニット2のFET8がオフして、トランジスタユニット3のFET8がオンする。これにより、コイル4、トランジスタユニット3のFET8、抵抗10を介して電流が流れると共に、共振回路に上記と逆方向の共振電流が流れる。この共振電流により、加熱コイル19に、逆方向(図1の下から上)の電流が流れ、装置1は、この動作を繰り返す。これにより、加熱コイル19には、FET8のオンオフに対応した高周波の大電流が流れ、この電流により、ワーク20に渦電流が誘起されて誘導加熱される。
【0025】
このように、上記実施例によれば、基板32の上方に3枚の銅板38〜40を垂直状態で配置し、この銅板38〜40に共振コンデンサ5a〜5fを取り付けると共に、基板32のパターンに固定した銅板41と銅板38、40間に帰還用コンデンサ16a、16b、17a、17bを取り付けているため、装置1内の空間を有効に利用することができる。特に、共振コンデンサ5及び帰還用コンデンサ16、17は、静電容量的に複数個並列に接続する必要があるが、上記の配置により、これらのコンデンサを小スペース内に納めることができ、装置1の小型化が図れて、コスタダウンが可能になる。なお、上記実施例の構成によれば、従来例の構成に対して、容積比で約50〜80%の小型化が可能であることが確認されている。
【0026】
また、帰還用コンデンサ16、17が、銅板41等によって、最短距離で接続されるため、引き回しによる抵抗及びインダクタンスを最小にすることができ、伝達ロス等による回路への悪影響がなくなる。これにより、トランジスタユニット2、3のFET8のスイッチング動作が確実に行われ、回路損失が少なくなって、加熱効率が向上する。さらに、銅板48a、48b及び銅板53a、53bによって、銅板39、40に、コイル4とカレントトランス6を、電気的に接続すると共に機械的に保持するため、専用の取付部材が不要になる等、部品点数の削減が図れ、装置1の一層の小型化及びコストダウンが可能になる。
【0027】
また、共振コンデンサ5及び帰還用コンデンサ16、17に、高周波電力用の磁器コンデンサを使用しているため、負荷能力が大きく部品自体が小型になって、装置1の小型化を一層図ることができると共に、部品の取り扱いが便利で、組み立て作業及び交換作業等を容易に行うことができる。また、トランジスタユニット2、3は、FET8の上方に基板32を垂直状態で配置しているため、FET8に生じる結露が、基板32上に落下するのを防止することができて、基板32の誤動作が防止される等、信頼性の高い装置1が得られると共に、FET8等がユニット化されるため、その組み立て作業も容易になる。
【0028】
さらにまた、上記実施例に示すような、自励式のトランジスタインバータ回路にあっては、図1に二点鎖線で示すように、トランジスユニット2、3のゲート端子2b、3bとマイナス端子13間に、コンデンサCを接続するのが一般的であるが、上記実施例においては、適宜規格のFET8を使用して、トランジスタユニット2、3内の浮遊容量等を利用することにより、このコンデンサCを省略している。これにより、部品点数が削減されて、より一層のコストダウンが可能になる。
【0029】
なお、上記実施例においては、トランジスタとしてFETを使用したが、本発明にこれに何等限定されず、例えばパワートランジスタ、IGBT等の他のトランジスタ(ユニットも含む)を使用しても良いし、並列接続するトランジスタの個数も、装置の出力に応じて適宜増減し得る。また、上記実施例においては、基板の上方に3枚の導電板を配置したが、使用するコンデンサの個数によっては、2枚でも良いし4枚以上でも良い。また、上記実施例における、ドライブ回路、トランジスタユニット、コイル、カレントトランス等の構成は一例であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置によれば、装置内の空間を有効利用することができ、装置自体を小型にし得てコストダウンが図れると共に、銅板を効果的に使用することにより、引き回しによる影響を少なくし得て、装置の加熱効率を向上させることができる。また、トランジスタの下方に基板等が存在しなくなり、トランジスタから落下した結露による基板の誤動作等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置の回路図
【図2】同要部の一部破断斜視図
【図3】同要部の正面図
【図4】同要部の側面図
【図5】同その平面図
【符号の説明】
1 トランジスタインバータ装置
2、3 トランジスタユニット
4 コイル
5、5a〜5f 共振コンデンサ
6 カレントトランス
8 FET
16、16a、16b、17、17a、17b 帰還用コンデンサ
19 加熱コイル
20 ワーク
32 基板
38〜39 銅板(第1の導電板)
41 銅板(第2の導電板)
48a、48b 銅板(第3の導電板)
53a、53b 銅板(第4の導電板)
Claims (2)
- 複数のトランジスタが並列接続された少なくとも一対のトランジスタユニットと、該ユニットの出力側に接続されるコイルと、該コイルの両端に接続された共振コンデンサ及びカレントトランスを有する共振回路と、該共振回路と前記トランジスタユニットの入力間に接続される帰還用コンデンサと、前記共振回路の出力側に接続される加熱コイルとを具備する高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置において、前記トランジスタユニットの各トランジスタをそれぞれ垂直状態で配置し、該ユニットの上方に、パターンを有し抵抗が半田付けされた基板と該基板の端子に接続された複数枚の第1の導電板を垂直状態で配置すると共に、該導電板に前記共振コンデンサ及び帰還用コンデンサを一体的に接続してなることを特徴とする高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置。
- 前記トランジスタは、支柱に支持された一対の放熱板間に挟持された状態でかつその各端子が上方を向くように垂直状態で配置されると共に、該トランジスタの上方に、前記基板、共振用コンデンサ及び帰還用コンデンサが配置されていることを特徴とする請求項1記載の高周波誘導加熱用のトランジスタインバータ装置。
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