JP3654658B2 - 圧力変動吸着式酸素製造方法及び装置 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、圧力変動吸着式酸素製造方法及び装置に関し、詳しくは、分子篩活性炭等の酸素吸着剤により原料空気中の酸素を粗濃縮し、得られた粗濃縮酸素を原料としてゼオライト等の窒素吸着剤により酸素を高濃度に濃縮する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から、空気から酸素ガスや窒素ガスを分離採取する装置として、圧力変動式空気分離装置(PSA装置)が広く用いられている。このPSA装置は、周知のように、採取するガスの種類に応じた吸着剤を充填した複数の吸着筒を、基本的には、吸着工程,均圧工程,再生工程,均圧工程に順次切換えながら製品ガスを採取するものである。
【0003】
上記PSA装置を使用して空気から酸素を分離する方法は、ゼオライトを吸着剤として広く行われている。この場合、ゼオライトの窒素に対する高い選択吸着性を利用して空気から酸素を分離するが、酸素とアルゴンとが略同一の吸着性能を持つため、分離した酸素はアルゴンを含み、酸素の最高濃度は、概ね95%である。
【0004】
酸素の用途として、電気炉を用いた製鋼等は、95%以下の酸素濃度で十分であるが、金属の切断では、酸素濃度が99.5%程度ないと、切断スピード及び切断面の滑らかさの点で問題がある。また、病院等で用いられている医療用の酸素は、薬事法で99.5%以上の酸素濃度が指定されているなど、高純度酸素は、多くの分野で需要がある。
【0005】
上記のような高純度酸素は、深冷液化分離法で製造した液体酸素や酸素ガスを、ローリーやシリンダーで供給しているが、輸送コスト,高圧ガス設備となるための必要人員,安全上の諸対策等の点から、簡便な高濃度(高純度)酸素の製造法の開発が期待されていた。
【0006】
これに対し、酸素とアルゴンが吸着性能差を有する分子篩活性炭(MSC)を利用してアルゴンを分離し、高純度の酸素を得る方法が特開昭54−132476号公報に提案されている。この方法は、上記MSCを吸着剤とした第1の酸素濃縮部と、ゼオライトを吸着剤とした第2の高濃縮部とにより構成されている。
【0007】
上記第1の酸素濃縮部は、空気から酸素を吸着する吸着工程と、酸素濃縮ガスによるパージ工程と、真空ポンプによる酸素濃縮ガスの脱着回収工程とを順次繰り返し行い、第2の高濃縮部は、第1の酸素濃縮部から供給される酸素分を比較的多量に含むガスを原料として99.5%以上の高純度酸素を得る吸着工程と、真空ポンプによる脱着回収工程とを順次繰り返し行うように構成されている。
【0008】
そして、同公報の記載によれば、上記第1の酸素濃縮部において発生するガスを第2の高濃縮部の原料ガスとするか、パージ用ガスとするかは、次のように規定している。
【0009】
すなわち、第1の酸素濃縮部から真空排気によって脱着するガスの組成が、初めは酸素分が少なく、途中でピークを示し、再び低下するとし、この真空排気工程における中間部のガスのみを第2の高濃縮部の原料ガスとして用いるとしている。このとき、第2の高濃縮部に供給される原料ガスの酸素濃度は、平均値で80%であり、パージ用に使用するガスの平均酸素濃度は、50%であるとしている。
【0010】
また、同公報には、高純度酸素を得るための具体的なプロセスの記載がなく、単に吸着剤としてゼオライトとMSCとを組み合わせて使用することにより、空気から酸素を高純度で分離することができることを示したに過ぎないものであって、商業的な装置としての具体性に欠け、経済性等についての適格な判断を下すことができなかった。
【0011】
そこで本発明は、酸素濃度が95%以上の高純度酸素を圧力変動吸着式で経済的に得ることができる方法及び装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するため、本発明の圧力変動吸着式酸素製造方法は、第1の構成として、分子篩活性炭等の酸素吸着剤を充填した吸着筒を有する酸素粗濃縮部で原料空気中の酸素を粗濃縮し、次いで、ゼオライト等の窒素吸着剤を充填した吸着筒を有する酸素高濃縮部で前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として酸素を濃縮することにより高濃度酸素を製造する圧力変動吸着式酸素製造方法において、前記酸素粗濃縮部における吸着筒の脱着回収工程で得られるガスの一部と、前記酸素高濃縮部における吸着筒の再生工程から得られるガスとを混合し、前記酸素粗濃縮部における吸着筒のパージ工程のパージガスとして用いることを特徴としている。
【0013】
また、本発明方法の第2の構成は、前記酸素粗濃縮部における、原料空気を吸着筒に導入する吸着工程、該吸着工程後の吸着筒と脱着回収工程後の他の吸着筒との均圧工程、吸着工程及び均圧工程を終えた吸着筒に脱着回収工程にある他の吸着筒からの粗濃縮酸素ガスの一部と前記酸素高濃縮部の脱着再生工程にある吸着筒からの酸素富化ガスとを混合したパージガスを導入して行うパージ工程、該パージ工程後の吸着筒を真空ポンプにより吸引して粗濃縮酸素ガスを得る脱着回収工程、該脱着回収工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して粗濃縮酸素ガスを得る酸素粗濃縮段階と、前記酸素高濃縮部における、前記酸素粗濃縮部で得た粗濃縮酸素を吸着筒に導入して高濃度酸素を得る吸着工程、該吸着工程後の吸着筒とパージ再生工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒を真空ポンプにより吸引して酸素富化ガスを得る脱着再生工程、該脱着再生工程後の吸着筒に吸着工程にある他の吸着筒からの製品ガスを導入してパージを行いつつ該吸着塔内の真空吸引を行うパージ再生工程、該パージ再生工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒に吸着工程にある他の吸着筒からの製品ガスを導入する製品加圧工程の各工程を順次繰り返して高濃度酸素を得る酸素高濃縮段階とにより高濃度酸素を製造することを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明方法の第3の構成は、前記酸素粗濃縮部における、原料空気を吸着筒に導入する吸着工程、該吸着工程後の吸着筒に脱着回収工程にある他の吸着筒からの脱着ガスの一部と前記酸素高濃縮部からの脱着ガスとを混合したパージガスを導入して行うパージ工程、該パージ工程後の吸着筒と脱着回収工程後の他の吸着筒との均圧工程、均圧工程後の吸着筒内の粗濃縮酸素ガスを真空ポンプにより吸引してバッファタンクに貯留する脱着回収工程、該脱着回収工程の吸着筒内のガスを真空ポンプにより吸引してパージ工程にある他の吸着筒に導入する脱着回収工程、該脱着回収工程後の吸着筒とパージ工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して粗濃縮酸素ガスを得る酸素粗濃縮段階と、前記酸素高濃縮部における、前記酸素粗濃縮部のバッファタンクに貯留されている粗濃縮酸素を吸着筒に導入して高濃度酸素を得る吸着工程、該吸着工程後の吸着筒と脱着再生工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒内のガスを真空ポンプにより吸引してバッファタンクに貯留する脱着再生工程、該脱着再生工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して高濃度酸素を得る酸素高濃縮段階とにより高濃度酸素を製造することを特徴としている。
【0015】
加えて、本発明方法は、上記各構成において、前記酸素高濃縮部の吸着筒に充填した窒素吸着剤の粒径が5〜60メッシュであること、上記第2,第3の構成において、前記酸素粗濃縮部における均圧工程は、該均圧工程時、前記吸着工程を終えた側の吸着筒の圧力が吸着工程における最高圧力の50〜80%の圧力になるように行うこと、前記酸素粗濃縮部における均圧工程は、各吸着筒のガス出口側を連通させて行うことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の圧力変動吸着式酸素製造装置は、分子篩活性炭等の酸素吸着剤を充填した吸着筒を用いて原料空気中の酸素を粗濃縮する酸素粗濃縮部と、ゼオライト等の窒素吸着剤を充填した吸着筒を用いて前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として高濃度酸素を得る酸素高濃縮部とを備えた圧力変動吸着式酸素製造装置において、前記酸素粗濃縮部における脱着回収工程で得られるガスの一部と、前記酸素高濃縮部における再生工程から得られるガスとを混合するバッファタンクと、該バッファタンク内の混合ガスを前記酸素粗濃縮部におけるパージ工程にある吸着筒にパージガスとして導入する経路を設けたことを特徴としている。
【0017】
【作 用】
上記第1の構成のように、酸素粗濃縮部の吸着筒のパージを、酸素粗濃縮部の脱着回収工程で得られるガスの一部と酸素高濃縮部の再生工程から得られるガスとの混合ガスで行うことにより、酸素粗濃縮部から酸素高濃縮部に供給する原料ガスの酸素濃度を高めることができ、製品酸素ガスの収率を向上させることができる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明を、図面に示す実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す系統図であって、酸素粗濃縮部及び酸素高濃縮部をそれぞれ3筒式のPSA装置により構成した例を示している。
【0019】
この高純度酸素製造用の圧力変動吸着式酸素製造装置は、3個の吸着筒11a,11b,11cからなる酸素粗濃縮部10と、同じく3個の吸着筒21a,21b,21cからなる酸素高濃縮部20とにより構成されており、酸素粗濃縮部10の各吸着筒11a,11b,11c内には、酸素を優先的に吸着する分子篩活性炭(MSC)等の酸素吸着剤がそれぞれ充填され、酸素高濃縮部20の各吸着筒21a,21b,21cには、窒素に対する吸着能が高いゼオライト等の窒素吸着剤がそれぞれ充填されている。
【0020】
上記酸素吸着剤のひとつである分子篩活性炭は、平衡吸着量としては酸素,窒素,アルゴンのそれぞれについて略同程度であるが、吸着速度で比較すると酸素,窒素,アルゴンの順序になり、吸着速度の速い酸素を優先的に吸着する性質を持っている。このため、適当な吸着時間を設定すれば、ほとんど酸素だけを吸着して窒素及びアルゴンを吸着しない条件を設定することが可能である。
【0021】
酸素粗濃縮部10は、このような分子篩活性炭の性質を利用して空気に含まれる窒素及びアルゴンと酸素とを分離する目的を担っており、特に酸素とアルゴンとを分離することが重要な要件となっている。
【0022】
一方の窒素吸着剤のひとつであるゼオライト、特にMS−5A,MS−13X,MS−10X,モルデナイト等は、窒素に対する親和力が大きく、酸素の平衡吸着量に対して2〜3倍の窒素吸着量を持っている。しかし、ゼオライトの場合、アルゴンについては酸素と同程度の平衡吸着量であるため、このゼオライトでは、酸素とアルゴンとを分離することができない。
【0023】
したがって、後段の酸素高濃縮部20では、前段の酸素粗濃縮部10でアルゴンを分離した酸素・窒素の混合ガスから窒素を除去して酸素を高濃度に濃縮する目的を担っている。
【0024】
また、前記圧力変動吸着式酸素製造装置には、各吸着筒に原料ガスやパージガスを供給したり、各吸着筒を所定の工程に切換えるための機器として、原料空気を酸素粗濃縮部10に供給するための圧縮機1、酸素粗濃縮部10及び酸素高濃縮部20の脱着回収工程を行うための2台の真空ポンプ2,3、両真空ポンプ2,3で吸引された脱着ガスを保持する2基のバッファタンク4,5、酸素粗濃縮部10側のバッファタンク4内のガスを酸素高濃縮部20側のバッファタンク5に導入する経路に設けられた逆止弁6、酸素高濃縮部20から導出される製品酸素ガスを保持する製品貯槽7、各吸着筒の入口側及び出口側に取付けられた多数の切換弁等が設けられるとともに、前記バッファタンク5内に保持されているガスを酸素粗濃縮部10にパージガスとして供給するパージ経路8とが設けられている。
【0025】
各吸着筒は、基本的には、所定のガスを吸着する吸着工程と、吸着したガスを脱着して吸着剤の再生を行う脱着再生工程とを繰返すものであるが、両工程間に所定の均圧工程やパージ工程を行うことにより、製品の高純度酸素の収率を向上させるようにしている。
【0026】
次に、図2乃至図4に示す各段階におけるガスの流れの一例を参照しながら各工程を説明する。なお、図中□印は、吸着筒入口及び出口部で開いている弁を示しており、このとき、その他の弁は閉じている。また、各段階の時間は、1サイクルを180秒とした場合の継続時間を表している。
【0027】
まず、図2(A)に示す第1段階では、圧縮機1で所定の圧力に昇圧された原料空気が除湿器1a及び入口弁12aを経て酸素粗濃縮部10の第1の吸着筒11aに導入されており、吸着筒11aでは、空気が流入して酸素吸着剤に酸素が吸着し、窒素及びアルゴンが出口弁13aから流出する吸着工程が行われている。
【0028】
このとき、酸素粗濃縮部10の第2の吸着筒11bでは、前記バッファタンク5内のガスがパージガスとしてパージ経路8を経てパージ弁14bから流入し、出口弁16b,調節弁、18を経てパージ弁17から流出するパージ工程が行われている。また、第3の吸着筒11cでは、該筒内を再生弁15cを介して真空ポンプ2で真空排気し、酸素吸着剤に吸着している酸素を脱着回収する脱着回収工程が行われており、脱着回収された酸素及び筒内に残存している窒素からなる混合ガス(粗濃縮酸素)は、真空ポンプ2を経てバッファタンク4に貯留される。
【0029】
一方、酸素高濃縮部20の第1の吸着筒21aには、上記バッファタンク4内の粗濃縮酸素が入口弁22aを介して導入されており、該吸着筒21aでは、粗濃縮酸素中の窒素が窒素吸着剤に吸着し、出口弁23aから高濃度に濃縮された製品高純度酸素が流出する吸着工程が行われている。この製品高純度酸素は、前記製品貯槽7を介して使用先に供給される。
【0030】
また、酸素高濃縮部20の第2の吸着筒21bには、加圧元弁24及び吸着筒21b出口側の加圧弁25bを介して製品貯槽7内の製品高純度酸素を導入し、筒内圧力を吸着工程圧力まで高める製品加圧工程が行われており、第3の吸着筒21cは、筒内を真空ポンプ3により真空排気し、窒素吸着剤に吸着している窒素を脱着して窒素吸着剤を再生する脱着再生工程が行われ、脱着した窒素及び筒内に残留している酸素からなる混合ガスが再生弁26cから真空ポンプ3を介してバッファタンク5に貯留されている。
【0031】
上記バッファタンク5には、前記酸素粗濃縮部10側のバッファタンク4内の粗濃縮酸素の一部も逆止弁6を介して流入しており、この粗濃縮酸素と上記吸着筒21cからの脱着再生ガスとは、該バッファタンク5から前記パージ経路8を経てパージ工程にある酸素粗濃縮部10の第2の吸着筒11bに送られている。
【0032】
上記第1段階を10〜20秒間、例えば15秒間行った後、図2(B)に示す第2段階に移る。この第2段階は、酸素高濃縮部20の第3の吸着筒21cのみの工程が切換わり、他の吸着筒はそれぞれ第1段階と同じ工程を継続している。吸着筒21cでは、真空ポンプ3で筒内を真空排気する操作を継続した状態で出口側のパージ弁27cが開き、製品貯槽7内の製品高純度酸素をパージ元弁28,調節弁29及びパージ弁27cを介して吸着筒21cに逆流させるパージ再生工程が行われる。
【0033】
上記第2段階は、30〜40秒間、例えば40秒間行われ、次いで図2(C)に示す第3段階に移る。この第3段階における酸素粗濃縮部10では、吸着工程を終えた第1の吸着筒11aの均圧弁16aと、脱着回収工程を終えた第3の吸着筒11cの均圧弁16cとが開き、吸着筒11aの筒内ガスを吸着筒11cに移送する均圧工程が行われるとともに、第2の吸着筒11bは、再生弁15bが開いて脱着回収工程に入り、酸素吸着剤に吸着している酸素及び筒内に残存している窒素が真空ポンプ2を経てバッファタンク4に回収される。
【0034】
また、酸素高濃縮部20では、吸着工程を終えた第1の吸着筒21a及び第3の吸着筒21cの出口側の弁27a,27c(あるいは弁25a,25c)と、両筒の入口均圧弁29a,29cとがそれぞれ開状態となり、吸着筒21aの筒内ガスを入口出口双方から吸着筒21cに移送する均圧工程が行われるとともに、第2の吸着筒21bの入口弁22bと出口弁23bとが開き、バッファタンク4内の粗濃縮酸素を吸着筒21bに導入して製品高純度酸素を流出する吸着工程が行われる。
【0035】
上記第3段階は5秒間行われ、続いて図3(A)に示す第4段階に移る。この第4段階は、前記第1段階と同様の工程を吸着筒を切換えたかたちで行うもので、酸素粗濃縮部10では、前記脱着回収及び均圧加圧の工程を終えた第3の吸着筒11cは、入口弁12c及び出口弁13cが開いて吸着工程に、吸着及び均圧減圧の工程を終えた第1の吸着筒11aは、入口弁14a及び出口弁16a,調節弁18,パージ弁17が開いてパージ工程にそれぞれ入り、第2の吸着筒11bは、第3段階の脱着回収工程を継続する。
【0036】
一方の酸素高濃縮部20では、第2の吸着筒21bは吸着工程を継続しており、第3の吸着筒21cは、再生弁26cが閉じられ、加圧元弁24及び加圧弁25cが開いて製品高純度酸素を導入する製品加圧工程に、第1の吸着筒21aは、再生弁26aが開いて筒内を真空ポンプ3により真空排気する脱着再生工程にそれぞれ入る。
【0037】
第4段階が第1段階と同じ15秒間行われた後、図3(B)に示す第5段階に移ると、前記第2段階と同様に酸素粗濃縮部10の各吸着筒と、酸素高濃縮部20の第2の吸着筒21b及び第3の吸着筒21cとは、それぞれ前段階の状態を継続し、酸素高濃縮部20の第1の吸着筒21aのみ、パージ元弁28,調節弁29及びパージ弁27aが開いてパージ再生工程に切換わる。
【0038】
上記第5段階が40秒間行われた後、図3(C)に示す第6段階に入り、酸素粗濃縮部10の第1の吸着筒11aは、再生弁15aが開いて脱着回収工程に、第2の吸着筒11bと第3の吸着筒11cとは、均圧弁16b,16cが開いて均圧工程にそれぞれ入り、酸素高濃縮部20の第1の吸着筒21aと第2の吸着筒21bとは、弁27a,27b(あるいは弁25a,25b)及び入口均圧弁29a,29bが開いて均圧工程に、第3の吸着筒21cは、入口弁22cと出口弁23cとが開いて吸着工程に入る。
【0039】
すなわち、図3に示す各工程は、図2における吸着筒11aの工程を吸着筒11cが、吸着筒11bの工程を吸着筒11aが、吸着筒11cの工程を吸着筒11bが、また、吸着筒21aの工程を吸着筒21bが、吸着筒21bの工程を吸着筒21cが、吸着筒21cの工程を吸着筒21aが、それぞれ同様に行うように設定されている。
【0040】
さらに、上記第6段階が5秒間行われた後、図4に示す各工程に入る。図4(A)に示す第7段階は、酸素粗濃縮部10の第2の吸着筒11bは、入口弁12b及び出口弁13bが開いて吸着工程に、第3の吸着筒11cは、パージ弁14c,出口弁16c,調節弁18及びパージ弁17が開いてパージ工程にそれぞれ入り、第1の吸着筒11aは脱着回収工程を継続するとともに、酸素高濃縮部20の第3の吸着筒21cが吸着工程を継続し、第1の吸着筒21aの加圧元弁24と弁25aが開いて製品加圧工程に、第2の吸着筒21bは再生弁26bが開いて脱着再生工程にそれぞれ入る。
【0041】
上記第7段階が15秒間行われた後、図4(B)に示す第8段階に移る。この第8段階では、酸素粗濃縮部10の各吸着筒と、酸素高濃縮部20の第1の吸着筒21a及び第3の吸着筒21cとが、それぞれ前段階の状態を継続し、酸素高濃縮部20の第2の吸着筒21bのみが、パージ元弁28,調節弁29及びパージ弁27bが開いてパージ再生工程に切換わる。
【0042】
上記第8段階が40秒間行われた後、図4(C)に示す最後の第9段階に入り、酸素粗濃縮部10の第3の吸着筒11cが脱着回収工程に、第1の吸着筒11aと第2の吸着筒11bとが均圧工程にそれぞれ入り、酸素高濃縮部20の第2の吸着筒21bと第3の吸着筒21cとが均圧工程に、第1の吸着筒21aが吸着工程に入る。
【0043】
したがって、図4に示す各工程は、図2における吸着筒11aの工程を吸着筒11bが、吸着筒11bの工程を吸着筒11cが、吸着筒11cの工程を吸着筒11aが、また、吸着筒21aの工程を吸着筒21cが、吸着筒21bの工程を吸着筒21aが、吸着筒21cの工程を吸着筒21bが、それぞれ同様に行うように設定されている。
【0044】
上記第9段階を5秒間行うと1サイクルが完了して最初の第1段階に戻り、上記各段階を順次繰返しながら製品高純度酸素を製造する。すなわち、本実施例においては、酸素粗濃縮部10の各吸着筒は、吸着工程を55秒,均圧減圧工程を5秒,パージ工程を55秒,脱着回収工程を60秒,均圧加圧工程を5秒、それぞれ行って1サイクル180秒となり、また、酸素高濃縮部20の各吸着筒は、吸着工程を60秒,均圧減圧工程を5秒,脱着再生工程を15秒,パージ再生工程を40秒,均圧加圧工程を5秒,製品加圧工程を55秒、それぞれ行って1サイクル180秒となるように設定されている。
【0045】
ここで、酸素粗濃縮部10における吸着工程は、真空ポンプ2による真空排気から均圧加圧工程を終えた吸着筒に所定圧力の原料空気を導入するので、吸着筒内は中間圧力から次第に昇圧し、大気圧を超えたところで出口弁が開いて窒素及びアルゴンに富んだガスが流出する状態になる。この吸着工程における最高圧力は、筒出口部に調節弁を設けることにより任意に設定することができるが、圧縮機1の動力費を考慮すると、500〜1000mmAqの範囲が適当である。
【0046】
また、酸素粗濃縮部10の脱着回収工程における真空排気の程度は、吸着工程での空気処理量や脱着回収工程で得られる脱着ガス(粗濃縮酸素)の酸素濃度に影響する。低い真空度では処理量が少なくなり、脱着ガスの酸素濃度も低くなる。一方、高い真空度では処理量が増加し、酸素濃度も上昇させることができるが、真空ポンプ2の排気量が大きくなることや、これに伴って動力の消費量が増大することから、経済的な最適真空度が存在する。これらのことから、真空度は、通常は、100〜300Torr、特に150〜250Torrの範囲に設定することが好ましい。
【0047】
上記脱着回収工程で粗濃縮酸素を回収する前に行われるパージ工程は、前述のように、バッファタンク5内のガス、すなわち、バッファタンク4からの粗濃縮酸素の一部と、酸素高濃縮部20の脱着再生及びパージ再生工程で吸着筒から回収したガスとの混合ガスを、原料空気流入方向と並流方向に略一定流量で導入して行われる。このパージ工程が始まる前の吸着筒内は、酸素吸着剤に酸素分が多く吸着し、吸着剤間の空間(気相)に空気が存在している状態、すなわち吸着相のガス成分は酸素が高く、気相のガス成分は窒素及びアルゴンが富んだ状態になっている。
【0048】
したがって、パージ工程では、気相の窒素やアルゴンを筒外に排出して筒内のガスを酸素濃度の高いガスで置換し、脱着回収工程で回収するガス中の酸素濃度を高めるとともに、酸素高濃縮部20の脱着再生工程で吸着筒から流出する比較的酸素分の高いガスから酸素を優先的に回収し、該ガス中の窒素を放出することができる。特に、このパージ工程で筒内のアルゴンを筒外にパージすることにより、酸素高濃縮部20での分離が困難なアルゴンが粗濃縮酸素中に混入する量を大幅に低減することができるので、製品酸素中のアルゴン濃度を極微量とすることが可能となる。
【0049】
このように、酸素粗濃縮部10における吸着筒の脱着回収工程で得られるガスと、酸素高濃縮部20における吸着筒の再生工程で得られる再生排ガスとを、酸素粗濃縮部における吸着筒のパージ工程のパージガスとして用いることにより、次の脱着回収工程で回収する粗濃縮酸素の酸素濃度を、平均70%程度まで高めることができるとともに、通常は排出されている酸素高濃縮部20からの再生排ガス中の比較的高濃度の酸素分も回収することができ、酸素収率を向上させることができる。
【0050】
次に、図5は、本発明の第2実施例を示す系統図であって、酸素粗濃縮部及び酸素高濃縮部をそれぞれ2筒式のPSA装置により構成した例を示している。
【0051】
本実施例に示す高純度酸素製造用の圧力変動吸着式酸素製造装置は、酸素粗濃縮部50に2個の吸着筒51a,51bを、酸素高濃縮部60に同じく2個の吸着筒61a,61bをそれぞれ設けたものであって、酸素粗濃縮部50の両吸着筒の入口側には、入口弁52a,52b、パージ弁53a,53b、調節弁58、パージ放出弁57、再生弁54a,54bが、出口側には、出口弁55a,55b、パージ弁を兼ねる均圧弁56a,56bが、それぞれ設けられており、酸素高濃縮部60の両吸着筒の入口側には、入口弁62a,62b、再生弁63a,63b、入口側均圧弁64a,64bが、出口側には、出口弁65a,65b、出口側均圧弁66a,66b、パージ弁67、調節弁68が、それぞれ設けられている。
【0052】
また、前記第1実施例と同様に、原料空気を供給する圧縮機1及び除湿器1a、脱着回収工程を行うための2台の真空ポンプ2,3、両真空ポンプ2,3で吸引された脱着ガスを保持する2基のバッファタンク4,5、酸素粗濃縮部10の脱着ガスをバッファタンク4と酸素高濃縮部20側のバッファタンク5に切換え導入するための一対の切換弁6a,6b、製品酸素ガスを保持する製品貯槽7、バッファタンク5内に保持されているガスを酸素粗濃縮部50にパージガスとして供給するパージ経路8等が設けられている。
【0053】
本実施例に示す装置も、基本的には前記同様に吸着工程と脱着再生工程とを順次繰返しながら製品の高純度酸素を製造するものであって、図6及び図7に示す各段階をそれぞれ行う。
【0054】
まず、図6(A)に示す第1段階は、酸素粗濃縮部50及び酸素高濃縮部60が共に均圧工程を行っている状態である。すなわち、酸素粗濃縮部50では、両筒の均圧弁56a,56bが開いて吸着筒51bから吸着筒51aに筒内ガスが出口側で移送されている段階であり、酸素高濃縮部60では、同様に両筒の出口側均圧弁66a,66bが開いて吸着筒61bから吸着筒61aに筒内ガスが出口側で移送されている段階である。
【0055】
図6(B)に示す第2段階は、酸素粗濃縮部50では、第1の吸着筒51aの入口弁52a及び出口弁55aが開き、圧縮機1からの原料空気が流入して酸素吸着剤に酸素が吸着し、窒素及びアルゴンが流出する吸着工程が行われ、第2の吸着筒51bは、再生弁54bが開いて筒内を真空ポンプ2で真空排気する脱着回収工程が行われる。この脱着回収工程で回収された粗濃縮酸素は、切換弁6aを通ってバッファタンク4に貯留される。
【0056】
一方の酸素高濃縮部60では、第1の吸着筒の出口側均圧弁66aが閉じて入口側均圧弁64aが開き、吸着筒61bの出口から吸着筒61aの入口にガスが移送される均圧工程になる。なお、図6(B′)に示すように、前記第1段階と同じ出口側均圧工程を継続した状態であってもよい。
【0057】
図6(C)に示す第3段階は、酸素粗濃縮部50は第2段階を継続した状態であり、酸素高濃縮部60の第1の吸着筒61aが吸着工程に、第2の吸着筒61bが脱着再生工程に入る。すなわち、第1の吸着筒61aの入口弁62a及び出口弁65aが開いてバッファタンク4内の粗濃縮酸素が筒内に導入され、該粗濃縮酸素中の窒素が窒素吸着剤に吸着して高濃度に濃縮した製品高純度酸素が流出する段階になる。また、第2の吸着筒61bでは、再生弁63bが開いて筒内が真空ポンプ3により真空排気され、窒素吸着剤の脱着再生が行われる。吸着筒61bからの再生排ガスは、バッファタンク5に貯留される。
【0058】
図6(D)に示す第4段階は、酸素粗濃縮部50の第2の吸着筒51b及び酸素高濃縮部60は第3段階を継続した状態であり、酸素粗濃縮部50の第1の吸着筒51aがパージ工程に入る。吸着筒51aでは、入口弁52aが閉じるとともにパージ弁53aが開き、バッファタンク5内のガスがパージ経路8を経てパージガスとして吸着筒51a内に流入し、パージ弁56a,調節弁58を経てパージ放出弁57から流出する工程になる。このとき、真空ポンプ2の下流の切換弁6a,6bが切換え開閉し、真空ポンプ2からのガスは、切換弁6bを通って上記パージガスとして用いられる。
【0059】
次に、図7に示す各段階は、図6に示す各段階を吸着筒を切換えて行うものであって、図7(A)に示す第5段階は、酸素粗濃縮部50は、両筒の均圧弁56a,56bが開いて吸着筒51aから吸着筒51bに筒内ガスが出口側で移送される均圧工程であり、酸素高濃縮部60は、両筒の出口側均圧弁66a,66bが開いて吸着筒61aから吸着筒61bに筒内ガスが出口側で移送される均圧工程を行っている。
【0060】
図7(B)に示す第6段階は、酸素粗濃縮部50では、第2の吸着筒51bの入口弁52b及び出口弁55bが開いて吸着工程が行われ、第1の吸着筒51aでは、再生弁54aが開いて筒内を真空ポンプ2で真空排気する脱着回収工程が行われる。また、酸素高濃縮部60では、第2の吸着筒の出口側均圧弁66bが閉じて入口側均圧弁64bが開き、吸着筒61aの出口から吸着筒61bの入口にガスが移送される均圧工程になる。なお、この場合も、図7(B′)に示すように、前記第5段階と同じ出口側均圧工程を継続した状態であってもよい。
【0061】
図7(C)に示す第7段階では、酸素高濃縮部60の第2の吸着筒61bの入口弁62b及び出口弁65bが開いて吸着筒61bが吸着工程になり、第1の吸着筒61aは、再生弁63aが開いて筒内が真空ポンプ3により真空排気される脱着再生工程になる。この段階では、酸素粗濃縮部50は第6段階を継続した状態である。
【0062】
図7(D)に示す第8段階では、酸素粗濃縮部50の第2の吸着筒51bは、入口弁52bが閉じるとともにパージ弁53b,パージ弁56b,調節弁58,パージ放出弁57が開き、パージガスが筒内に流入・放出するパージ工程になる。このとき、酸素粗濃縮部50の第1の吸着筒51aは脱着回収工程であり、真空ポンプ2により排気された脱着ガスは、バッファタンク5を経て吸着筒51bのパージガスとして使用される。このとき、酸素高濃縮部60は第7段階を継続している。
【0063】
例えば、サイクルタイムを120秒とした場合、酸素粗濃縮部50の吸着筒は、均圧加圧工程2秒,吸着工程25秒,パージ工程33秒,均圧減圧工程2秒,脱着回収工程58秒の各工程を、それぞれが位相を変えて順次繰り返し、酸素高濃縮部60の吸着筒は、均圧加圧工程4秒,吸着工程56秒,均圧減圧工程4秒,脱着再生工程56秒の各工程を、それぞれが位相を変えて順次繰り返す。
【0064】
上記工程中、酸素粗濃縮部50において、パージ工程実施後の吸着筒と脱着回収工程を完了した吸着筒との出口端同士を連結して均圧工程を行うが、これは、パージ工程実施後の吸着筒内の吸着相の酸素濃度に比べ、気相にあるガス中の酸素濃度が低いためである。すなわち、均圧操作を行わずに真空排気する工程に移ると、最初に排気されるガスは気相に存在する低酸素濃度のガスであり、次第に吸着相の高酸素濃度のガスが脱着して排出されるので、回収する粗濃縮酸素の酸素濃度の変動が激しくなるためである。
【0065】
また、気相のガスは、分子篩活性炭等の酸素吸着剤に対して難吸着成分である窒素,アルゴンに富んではいるが、パージ工程実施後の気相のガスは、空気に比べれば1.5〜2倍の酸素を含んでいるため、この気相のガスを排出することなく均圧操作で回収することにより、酸素の回収率を向上させることができる。
【0066】
均圧操作の方法としては、出口端同士,入口端同士の他、入口出口両方を同時に行う方法、出口側から入口側に向けて行う方法等、種々考えられるが、装置構成の簡略化に加え、送出し側の次の工程の回収時における難吸着成分ガスの筒内での残留の状態、受入れ側の次の工程での難吸着成分ガスの排出の容易さなどから、上記のような出口端同士が最も好ましい。
【0067】
さらに、均圧工程時の均圧量として、吸着の最高圧力と真空の到達圧力の平均値まで圧力が達することを最大均圧として、吸着工程の最高圧力に対して80〜50%の圧力まで回収することが可能であるが、この均圧量は、原料空気処理量に影響するため、均圧量をコントロールする必要があり、最適量は吸着の最高圧力に対して60〜70%の圧力まで下げることが適当である。
【0068】
また、高純度酸素を得るためには、酸素粗濃縮部50において空気中のアルゴンを除去することが重要である。吸着工程で入口から筒内に流入した空気は、主として酸素が分子篩活性炭等の酸素吸着剤に吸着し、気相には窒素,アルゴンが残留する。筒内均一に酸素吸着を行うということは、気相が略空気組成となることであるから、いわゆる完全混合状態で空気送入が行われる。
【0069】
このような筒内の状況に対し、パージガスは、筒の出口側,入口側のいずれからも導入することができるが、脱着回収工程のガスの流れを考慮すると、入口側から導入することが好ましい。なお、このパージ工程では、吸着工程の圧力を保ったまま、比較的酸素分に富んだガス、すなわち、酸素粗濃縮部50における吸着筒の脱着回収工程で得られるガスと、酸素高濃縮部60における吸着筒の再生工程から得られるガスとをパージガスとして流し、難吸着成分である窒素,アルゴンを排出する。
【0070】
さらに、このパージ工程では、吸着筒から流出する排出ガス量を筒出口側に設けた調節弁(18,29,58,68)等でコントロールし、パージガス量を一定に保つことが望ましい。このパージガス量が一定しないと、適切な排気状態を設定することが困難になり、窒素,アルゴンが十分に排出できなかったり、濃縮された酸素が排出されて製品の収率を低下させたりする。
【0071】
酸素粗濃縮部50側だけで、パージガス量を一定に保つようにするためには、脱着ガスを一旦ガス溜めに貯留するとか、真空ポンプで排気される最低ガス量に合わせてパージガス量を設定することが考えられるが、ガス溜めの容量が著しく大きくなったり、パージ量が最適値に設定できないなどの問題を生じることがある。
【0072】
そこで、上述のように、酸素粗濃縮部50の脱着回収工程から得られる酸素に富んだガスと、酸素高濃縮部60の再生工程から得られる酸素に富んだガスとを合流させることにより、最適なパージガス流量を維持することが容易になる。なお、パージガスの流速として4〜6m/secを維持するようにパージを行うことが好ましい。
【0073】
このパージ工程により、酸素粗濃縮部50の脱着ガスの概ね50%は、一旦酸素粗濃縮部50に戻され、窒素,アルゴンを除去する工程を経てから脱着されて次の酸素高濃縮部60に送られることになる。これにより、アルゴンの除去を略完全に行うことが可能になり、酸素高濃縮部60における酸素の高純度化が容易になる。
【0074】
また、吸着筒に充填する吸着剤についても、最適な条件が存在する。まず、酸素粗濃縮部10,50に使用する分子篩活性炭等の酸素吸着剤の時間−吸着量(平衡吸着量に対する相対値)の関係の測定値から、酸素と窒素の吸着量比が最も大きくなる時間を指標として、望ましい分子篩活性炭を規定することができる。すなわち、上記値が30〜200秒となるような酸素吸着剤、望ましくは、40〜150秒となるような酸素吸着剤が適当である。この値が短いということは、酸素の吸着速度が速いことを示すが、同時に窒素も比較的早く吸着するため、吸着工程で酸素と窒素,アルゴンを十分に分離することが困難になる。また、短いサイクルタイムで切換えを行う必要があり、他の工程、例えばパージ工程で適切な流速を選定して運転できなくなるなどの不都合を生じる。一方、前記値が大きいということは、酸素の吸着速度が遅いこととなり、ゆっくりしたサイクルタイムを選定する必要が生じる。このことは、多くの吸着剤量を必要とするので、経済性の面から適当ではない。
【0075】
これらを勘案すると、上記値が40〜150秒の範囲であることが適当であり、また、このときのサイクルタイムは、略上記値と同程度にすることが適当である。さらに、酸素吸着剤の平衡吸着容量については、大きいほど使用する吸着剤量を削減できるので望ましい。
【0076】
一方、酸素高濃縮部20,60に使用する窒素吸着剤は、前述のように、MS−5A,MS−13X,MS−10X,モルデナイト等、酸素に比べて窒素をより多く吸着する吸着剤を利用することができ、平衡吸着量として大きな窒素吸着容量をもつ吸着剤が、使用する吸着剤量を削減できるので望ましい。
【0077】
また、窒素吸着剤の粒径を小さくすることは、窒素の吸着速度を大きくし、ひいては、物質移動帯(MTZ)の長さを短くするため、吸着剤当たりの酸素発生量を大きくする上で有効である。すなわち、窒素吸着剤の粒径を、5〜60メッシュ、好ましくは10〜40メッシュの範囲にすることにより、吸着剤当たりの酸素発生量を大きくできるので、装置の大幅な小型化が図れる。
【0078】
なお、上記両実施例では、酸素粗濃縮部及び酸素高濃縮部がそれぞれ3筒式の場合と2筒式の場合で説明したが、吸着筒の数は装置の仕様に応じて適当に設定することができ、一方を2筒、他方を3筒としたり、4筒以上の吸着筒を使用することも可能である。
【0079】
次に、図5に示す構成の装置を使用して酸素を濃縮する実験を行った結果を説明する。
【0080】
但し、この場合、製品酸素は、酸素高濃縮部の出口に設けた圧縮機により吸引して取り出した。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、圧力変動吸着式で酸素濃度95%以上の高純度酸素を容易に得ることができ、しかも、酸素粗濃縮部の吸着筒のパージを、酸素粗濃縮部の脱着回収工程で得られるガスの一部と酸素高濃縮部の再生工程から得られるガスとの混合ガスで行うので、酸素粗濃縮部から酸素高濃縮部に供給する原料ガスの酸素濃度を高めることができるとともに、これらのガス中に比較的高濃度で含まれている酸素の回収も行えるので、製品酸素ガスの収率を大幅に向上させることができ、電力消費量も低減できる。
【0082】
加えて、窒素吸着剤の粒径を小さくすることにより、更に酸素回収率を向上でき、装置の大幅な小型化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す系統図である。
【図2】 第1実施例の各段階におけるガスの流れを示す説明図である。
【図3】 同じく各段階におけるガスの流れを示す説明図である。
【図4】 同じく各段階におけるガスの流れを示す説明図である。
【図5】 本発明の第2実施例を示す系統図である。
【図6】 第2実施例の各段階におけるガスの流れを示す説明図である。
【図7】 同じく各段階におけるガスの流れを示す説明図である。
【符号の説明】
1…圧縮機、2,3…真空ポンプ、4,5…バッファタンク、7…製品貯槽、8…パージ経路,10,50…酸素粗濃縮部、11a,11b,11c,51a,51b…吸着筒、14a,14b,14c,53a,53b…パージ弁,20,60…酸素高濃縮部、21a,21b,21c,61a,61b…吸着筒
Claims (7)
- 酸素吸着剤を充填した吸着筒を有する酸素粗濃縮部で原料空気中の酸素を粗濃縮し、次いで、窒素吸着剤を充填した吸着筒を有する酸素高濃縮部で前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として酸素を濃縮することにより高濃度酸素を製造する圧力変動吸着式酸素製造方法において、前記酸素粗濃縮部における吸着筒の脱着回収工程で得られるガスの一部と、前記酸素高濃縮部における吸着筒の再生工程から得られるガスとを混合し、前記酸素粗濃縮部における吸着筒のパージ工程のパージガスとして用いることを特徴とする圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 酸素吸着剤を充填した複数の吸着筒を用いて原料空気中の酸素を粗濃縮する酸素粗濃縮部と、窒素吸着剤を充填した複数の吸着筒を用いて前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として高濃度酸素を得る酸素高濃縮部とにより高濃度酸素を製造する圧力変動吸着式酸素製造方法において、前記酸素粗濃縮部における、原料空気を吸着筒に導入する吸着工程、該吸着工程後の吸着筒と脱着回収工程後の他の吸着筒との均圧工程、吸着工程及び均圧工程を終えた吸着筒に脱着回収工程にある他の吸着筒からの粗濃縮酸素ガスの一部と前記酸素高濃縮部の脱着再生工程にある吸着筒からの酸素富化ガスとを混合したパージガスを導入して行うパージ工程、該パージ工程後の吸着筒を真空ポンプにより吸引して粗濃縮酸素ガスを得る脱着回収工程、該脱着回収工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して粗濃縮酸素ガスを得る酸素粗濃縮段階と、前記酸素高濃縮部における、前記酸素粗濃縮部で得た粗濃縮酸素を吸着筒に導入して高濃度酸素を得る吸着工程、該吸着工程後の吸着筒とパージ再生工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒を真空ポンプにより吸引して酸素富化ガスを得る脱着再生工程、該脱着再生工程後の吸着筒に吸着工程にある他の吸着筒からの製品ガスを導入してパージを行いつつ該吸着塔内の真空吸引を行うパージ再生工程、該パージ再生工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒に吸着工程にある他の吸着筒からの製品ガスを導入する製品加圧工程の各工程を順次繰り返して高濃度酸素を得る酸素高濃縮段階とにより高濃度酸素を製造することを特徴とする圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 酸素吸着剤を充填した複数の吸着筒を用いて原料空気中の酸素を粗濃縮する酸素粗濃縮部と、窒素吸着剤を充填した複数の吸着筒を用いて前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として高濃度酸素を得る酸素高濃縮部とにより高濃度酸素を製造する圧力変動吸着式酸素製造方法において、前記酸素粗濃縮部における、原料空気を吸着筒に導入する吸着工程、該吸着工程後の吸着筒に脱着回収工程にある他の吸着筒からの脱着ガスの一部と前記酸素高濃縮部からの脱着ガスとを混合したパージガスを導入して行うパージ工程、該パージ工程後の吸着筒と脱着回収工程後の他の吸着筒との均圧工程、均圧工程後の吸着筒内の粗濃縮酸素ガスを真空ポンプにより吸引してバッファタンクに貯留する脱着回収工程、該脱着回収工程の吸着筒内のガスを真空ポンプにより吸引してパージ工程にある他の吸着筒に導入する脱着回収工程、該脱着回収工程後の吸着筒とパージ工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して粗濃縮酸素ガスを得る酸素粗濃縮段階と、前記酸素高濃縮部における、前記酸素粗濃縮部のバッファタンクに貯留されている粗濃縮酸素を吸着筒に導入して高濃度酸素を得る吸着工程、該吸着工程後の吸着筒と脱着再生工程後の他の吸着筒との均圧工程、該均圧工程後の吸着筒内のガスを真空ポンプにより吸引してバッファタンクに貯留する脱着再生工程、該脱着再生工程後の吸着筒と吸着工程後の他の吸着筒との均圧工程の各工程を順次繰り返して高濃度酸素を得る酸素高濃縮段階とにより高濃度酸素を製造することを特徴とする圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 前記酸素粗濃縮部における均圧工程は、該均圧工程終了時、前記吸着工程を終えた側の吸着筒の圧力が吸着工程における最高圧力の50〜80%の圧力になるように行うことを特徴とする請求項2又は3記載の圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 前記酸素粗濃縮部における均圧工程は、各吸着筒のガス出口側を連通させて行うことを特徴とする請求項2又は3記載の圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 前記酸素高濃縮部の吸着筒に充填した窒素吸着剤の粒径が5〜60メッシュであることを特徴とする請求項1,2又は3記載の圧力変動吸着式酸素製造方法。
- 酸素吸着剤を充填した吸着筒を用いて原料空気中の酸素を粗濃縮する酸素粗濃縮部と、窒素吸着剤を充填した吸着筒を用いて前記酸素粗濃縮部からの粗濃縮酸素を原料として高濃度酸素を得る酸素高濃縮部とを備えた圧力変動吸着式酸素製造装置において、前記酸素粗濃縮部における脱着回収工程で得られるガスの一部と、前記酸素高濃縮部における再生工程から得られるガスとを混合するバッファタンクと、該バッファタンク内の混合ガスを前記酸素粗濃縮部におけるパージ工程にある吸着筒にパージガスとして導入する経路を設けたことを特徴とする圧力変動吸着式酸素製造装置。
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