JP3653635B2 - 意匠性に優れた強化複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、意匠性に優れた強化複合材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、強化繊維とマトリックス樹脂とからなる強化複合材料は、軽量であると共に高い強度を有するため、各分野で活用されており、特に、近年においては、環境保護を目的として開発された生分解性を有する複合材料に注目が集まっている。
【0003】
前記生分解性を有する複合材料としては、例えば、後出特許文献1に、生分解性プラスチックに植物性繊維や動物性繊維などの天然有機繊維からなる短繊維を配合した高強度生分解性プラスチック組成物が開示されており、後出特許文献2に、生分解性樹脂と竹繊維もしくはその繊維束とを含有してなる生分解性複合材料が開示されている。
【0004】
一方、後出特許文献3には、マトリックス樹脂を透して見える強化繊維織物の意匠性を生かした繊維強化複合材料が開示されており、当該繊維強化複合材料は、炭素繊維や窒化ケイ素繊維などを用いた強化繊維織物とエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などの構造用マトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料の外表面に透光性樹脂層が形成され該透光性樹脂層は、膜厚30μmにおいて、L*C*h表色系における彩度C*が1≦h≦2、色相角度hが-135°≦h≦-45°、かつ、明度L*がL*≧90の範囲内の3条件を同時に満たす樹脂のものである。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−302235号公報(第2頁)
【特許文献2】
特開2000−160034号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2002−210881号公報(第2頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記特許文献3に開示されている繊維強化複合材料においては、強化繊維織物、マトリックス樹脂及び透光性樹脂として自然環境を配慮した材料が使用されていないため、埋立処分した場合には、生分解されずに半永久的に自然界に残ってしまい、また、焼却処分した場合には、高温で燃焼して焼却炉が破損する恐れがある外、有毒ガスやダイオキシンなどが発生することもあり、決して自然環境に優しいものではなかった。
【0007】
そこで、本発明者等は、環境保護が叫ばれる現代のニーズに応えるべく、自然環境に配慮した材料のみからなる意匠性に優れた強化複合材料を得ることを技術的課題し、試験・研究を重ねた結果、ポリプロピレン、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸から選ばれる熱可塑性樹脂からなる層と絹織物からなる層とが交互になるように重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持することによって一体化させれば、当該熱可塑性樹脂からなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れた意匠性に優れていると共に実用に充分な強度も具備している強化複合材料を得られるという刮目すべき知見を得て前記技術的課題を解決したものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって解決できる。
【0009】
即ち、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料は、ポリプロピレンからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように175〜220℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れるものである。
【0010】
即ち、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料は、ポリブチレンサクシネートからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように120〜160℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れるものである。
【0011】
即ち、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料は、ポリ乳酸からなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように185〜220℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れるものである。
【0012】
また、本発明は、前記いずれかの意匠性に優れた強化複合材料において、真空に引きながら加熱圧縮させた後、真空に引きながら圧縮状態を保持して放冷するものである。
【0013】
また、本発明は、前記いずれかの意匠性に優れた強化複合材料において、熱可塑性樹脂からなる最外層の全光線透過率が50%以上のものである。
【0014】
さらに、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料の製造方法は、ポリプロピレンからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように175〜220℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化することを特徴とするものである。
【0015】
さらに、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料の製造方法は、ポリブチレンサクシネートからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように120〜160℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化するものである。
【0016】
さらに、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料の製造方法は、ポリ乳酸からなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように185〜220℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化するものである。
【0017】
また、本発明は、前記いずれかの意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、真空に引きながら加熱圧縮した後、真空に引きながら圧縮状態を保持して放冷するものである。
【0018】
図1は本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料を製造するための圧縮成形装置の一例を示した説明図であり、図2は図1に示す圧縮成形装置を用いて意匠性に優れた強化複合材料を製造する手順を示した説明図であり、図1及び図2において、1は、真空ポンプ(図示せず。)へ通じる排出口2が設けられた成形台3と、成形台3上に配置される積層体を被覆する真空バック4と、成形台3に真空バック4を密着させるシーラント5と、成形台3下方と真空バック4上方とに対向するように設けられた一対のプレスヒーター6,6とからなる圧縮成形装置である。
【0019】
次に、本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料の製造方法を図2に基づき説明する。
【0020】
先ず、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンサクシネート(PBS)及びポリ乳酸(PLA)から選ばれる熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」という。)からなる層と絹織物からなる層とが交互になるように重ね合わせて積層体を形成する。この時、熱可塑性樹脂からなる層が最外層になるように積層する。
【0021】
次に、図2の(a)に示すように、積層体7を成形台3上に配置し、積層体7上に圧力プレート8を重ねる。そして、圧力プレート8を重ねた積層体7を真空バック4により完全に被覆し、真空バック4をシーラント5により成形台3に密着させて真空バック4内を密閉する。
【0022】
続いて、図2の(b)に示すように、成形台3に設けられた排出口2から真空ポンプにより真空バック4内の空気をある程度抜いた後、一対のプレスヒーター6,6により積層体7を加熱圧縮する。
【0023】
最後に、一対のプレスヒーター6,6により加熱圧縮された積層体7を真空ポンプを稼働させながら圧縮状態を保持して放置冷却することにより意匠性に優れた強化複合材料を製造することができる。
【0024】
熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを選択した場合には、加熱温度を175℃より低くすると、融点が165℃であるポリプロピレンが溶融し難くなってポリプロピレンが絹織物内に完全に浸透しなくなり、また、加熱温度を220℃より高くすると、絹織物が劣化及び変色するため、加熱温度は175〜220℃とすればよく、好ましくは180〜200℃とすればよい。
【0025】
熱可塑性樹脂としてポリブチレンサクシネートを選択した場合には、加熱温度を120℃より低くすると、融点が113℃であるポリブチレンサクシネートが溶融し難くなってポリブチレンサクシネートが絹織物内に完全に浸透しなくなり、また、加熱温度を160℃より高くすると、ポリブチレンサクシネートが沸騰し始めて層内に気泡が生じるため、加熱温度は120〜160℃とすればよく、好ましくは130〜150℃とすればよい。
【0026】
熱可塑性樹脂としてポリ乳酸を選択した場合には、加熱温度を185℃より低くすると、融点が178℃であるポリ乳酸が溶融し難くなってポリ乳酸が絹織物内に完全に浸透しなくなり、また、加熱温度を220℃より高くすると、絹織物が劣化及び変色するため、加熱温度は185〜220℃とすればよく、好ましくは190〜210℃とすればよい。
【0027】
熱可塑性樹脂として選択されるポリプロピレン、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸は、いずれも厚み20〜100μmにおいて50%以上の全光線透過率を有しているため、当該熱可塑性樹脂からなる最外層を透して該最外層に隣接する内層に積層された絹織物が意匠として現れる。
【0028】
なお、ポリプロピレンは、焼却処分した際に燃焼温度が低いので焼却炉を破損することがなく、ダイオキシンや有毒ガスを発生することもない。また、ポリブチレンサクシネート及びポリ乳酸は、生分解性を有しており、土中などにおいて微生物により生分解される。
【0029】
加熱時間は、加熱温度や積層体の厚みなどを考慮して調節する必要があり、加熱温度が高い場合には、加熱時間を長くすると絹織物が劣化・変色する傾向にあり、加熱温度が低い場合には、加熱温度を長くしないと絹織物内に熱可塑性樹脂が十分に含浸しない傾向にある。また、積層体が厚くなると加熱温度を長くしないと絹織物内に熱可塑性樹脂が十分に含浸しない傾向にある。
【0030】
熱可塑性樹脂はフィルム状に成形されたものを使用すればよく、熱可塑性樹脂からなる層を分厚くする場合には、分厚いフィルムを一枚使用するよりも、薄いフィルムを複数使用する方が、熱可塑性樹脂を効率良く溶融することができる。
【0031】
絹織物としては、平織、斜文織又は朱子織など多様な織組織に製織されたものを使用すればよく、また、染色や紋組織が施されたものを使用してもよい。特に、熱可塑性樹脂からなる最外層を透して現れる絹織物には、美しい模様を有する絹織物を使用することが好ましい。
【0032】
また、絹織物としては、未利用の絹織物(製織後に着物などに仕立てられることなく放置されていたものや着物などに仕立てられた後に着用されることなく放置されていたもの)を用いることが好ましく、長年利用(使用)された古絹織物を使用することもできるが、この場合には、絹織物が劣化しているために得られる複合材料の強度が低下する。
【0033】
絹織物を構成する絹繊維としては、生絹繊維又は練り絹繊維のいずれを使用してもよい。
【0034】
生絹繊維を使用する場合には、複合材料における絹織物の重量比率が15%未満であると、絹織物の不足が原因となって複合材料の強度が低下し、また、50%を越えると絹織物内に熱可塑性樹脂が完全に含浸せず、各層が密着せずに隙間が生じて複合材料の強度が低下するため、複合材料における絹織物の重量比率は15〜50%とすることが好ましく、より好ましくは30〜40%とすればよい。
【0035】
練り絹繊維を使用する場合には、複合材料における絹織物の重量比率15%未満であると絹織物の不足が原因となって複合材料の強度が低下し、65%を越えると、圧縮成形が困難になるため、複合材料における絹織物の重量比率は15〜65%とすることが好ましく、より好ましくは25〜40%とすればよい。
【0036】
熱可塑性樹脂からなる層と絹織物からなる層との積層数は限定されない。なお、交互に複数層を積層させてなるものは、積層数が増加するにつれて圧縮成形が困難になるので使用する圧縮成形装置の能力に応じて適切な積層数を選ぶ必要がある。
【0037】
【実施例】
実施例1〜4及び比較例1〜3.
【0038】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリプロピレンフィルムを420枚用意した。絹織物として経糸に21中2本諸撚糸を使用すると共に緯糸に21中//2×2本諸//4本引き揃えを使用して経糸密度35本/cm、緯糸密度23本/cmにて平織に製織した紹巴帯地を7枚用意した。そして、当該ポリプロピレンフィルムを10枚で一層とし、このポリプロピレンフィルム1層(フィルム10枚)からなる表層とポリプロピレンフィルム5層(フィルム50枚)からなる裏層との間に当該紹巴帯地を1枚挟んでなる積層体を7枚作成した。
【0039】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記7枚の積層体をそれぞれ圧縮圧力8MPaにおいて加熱温度及び加熱時間を表1に示すとおりに変更して圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより各積層体を一体化し、絹織物の重量比率が65%である厚さ2mmの複合材料を7枚得た。
【0040】
ここに得た前記7枚の複合材料について、JIS K7118−1995に準ずる試験片を作成して引張強度を測定した結果及びJIS K7105に基づき全光線透過率を測定した結果並びに樹脂の含浸状態と絹織物の状態とを目視観察した結果を表1に示す。
【0041】
なお、表1、後出表2、後出表3及び後出表4において、樹脂の含浸状態は、各層が強固に一体化しているものを◎印、各層間がやや剥離しているものを○印、各層間が完全に剥離しているものを×印にて表示しており、また、絹織物の状態は、絹織物が全く変色していないものを◎印、絹織物がやや変色しているものを○印、絹織物が完全に変色しているものを×印にて表示している。さらに、樹脂の含浸状態及び絹織物の状態が明らかに悪いために引張強度及び全光線透過率を測定しなかったものは−印にて表示している。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例5〜8及び比較例4〜6.
【0044】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリブチレンサクシネートフィルムを490枚用意した。絹織物として経糸に28中//2本引き揃えの生糸を使用すると共に緯糸に28中//4本引き揃えの生糸を使用して経糸密度55本/cm、緯糸密度32本/cm、目付け60g/m*2(14匁目付)にて平織に製織した絹羽二重生機を42枚用意した。そして、当該ポリブチレンサクシネートフィルムを10枚で一層とし、当該絹羽二重生機を1枚で一層とし、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と絹羽二重生機一層とを交互に積層した13層からなる積層体を7枚作成した。
【0045】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記7枚の積層体をそれぞれ圧縮圧力7MPaにおいて加熱温度及び加熱時間を表2に示すとおりに変更して圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより各積層体を一体化し、絹織物の重量比率が20%である厚さ2mmの複合材料を7枚得た。そして、当該7枚の複合材料について、実施例1〜4及び比較例4〜6と同じ手法により、引張強度と全光線透過率とを測定した結果及び樹脂の含浸状態と絹織物の状態とを目視観察した結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例9〜12及び比較例7〜9.
【0048】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリブチレンサクシネートフィルムを490枚用意した。絹織物として経糸に28中2本駒撚糸を使用すると共に緯糸における地緯糸に21中4本強撚糸、絵緯糸に28中4本諸撚糸を使用して経糸密度48本/cm、緯糸密度53本/cm、目付け120g/m*2(28匁目付)にて破れ斜文織に製織した駒紋綸子意匠縮緬(練上り)を42枚用意した。そして、当該ポリブチレンサクシネートフィルムを10枚で一層とし、当該駒紋綸子意匠縮緬を1枚で一層とし、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と駒紋綸子意匠縮緬一層とを交互に積層した13層からなる積層体を7枚作成した。
【0049】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記7枚の積層体をそれぞれ圧縮圧力7MPaにおいて加熱温度及び加熱時間を表3に示すとおりに変更して圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより各積層体を一体化し、絹織物の重量比率が30%である厚さ2mmの複合材料を7枚得た。そして、当該7枚の複合材料について、実施例1〜4及び比較例4〜6と同じ手法により、引張強度と全光線透過率とを測定した結果及び樹脂の含浸状態と絹織物の状態とを目視観察した結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
実施例13〜16及び比較例10〜12.
【0052】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリ乳酸樹脂フィルムを700枚用意した。絹織物として経糸に21中//2×2本諸(羽二重)を使用すると共に緯糸に21中6本片を使用して経糸密度3色×40本/cm、緯糸密度20本/cm、目付け160g/m*2(38匁目付)にて平芯入経二重組織に製織した平地経錦を7枚用意した。そして、当該ポリ乳酸樹脂フィルムを10枚で一層とし、このポリ乳酸樹脂フィルム5層(フィルム50枚)からなる表層とポリ乳酸樹脂フィルム5層(フィルム50枚)からなる裏層との間に平地経錦を1枚挟んでなる積層体を7枚作成した。
【0053】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記7枚の積層体をそれぞれ圧縮圧力8MPaにおいて加熱温度及び加熱時間を表4に示すとおりに変更して圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより各積層体を一体化し、絹織物の重量比率が55%である厚さ2mmの複合材料を7枚得た。そして、当該7枚の複合材料について、実施例1〜4及び比較例4〜6と同じ手法により、引張強度と全光線透過率とを測定した結果及び樹脂の含浸状態と絹織物の状態とを目視観察した結果を表4に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例17.
【0056】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリブチレンサクシネートフィルムを70枚用意した。絹織物として経糸に21中4本諸撚糸を使用すると共に緯糸に21中4本強撚糸(右撚りのみ)を使用して経糸密度38本/cm、緯糸密度26本/cm、目付け78g/m*2(18匁目付)にて平織に製織した絹楊柳羽尺縮緬の襤褸(ぼろ:使用済品)を6枚用意した。そして、当該ポリプロピレンフィルムを10枚で一層とし、当該絹楊柳羽尺縮緬を1枚で一層とし、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と絹楊柳羽尺縮緬一層とを交互に積層して13層からなる積層体を作成した。
【0057】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記積層体を圧縮圧力6MPaにおいて加熱温度130℃・加熱時間2分にて圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより積層体を一体化し、絹織物の重量比率が20%である厚さ2mmの複合材料を得た。
【0058】
前記複合材料について、実施例1〜4及び比較例4〜6と同じ手法により、引張強度及び全光線透過率を測定すると共に樹脂の含浸状態及び絹織物の状態を目視観察したところ、引張強度は60MPaであってポリブチレンサクシネートのみの引張強度35MPaよりも向上しており、全光線透過率は60%であり良好であった。また、樹脂の含浸状態及び絹織物の状態は共に良好であった。
【0059】
実施例18.
【0060】
熱可塑性樹脂として厚さ20μmのポリブチレンサクシネートフィルムを130枚用意した。実施例17と同じ絹楊柳羽尺縮緬の襤褸を12枚用意した。そして、当該ポリブチレンサクシネートフィルムを10枚で一層とし、当該絹楊柳羽尺縮緬を1枚で一層とし、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と絹楊柳羽尺縮緬一層とを交互に積層して25層からなる積層体を作成した。
【0061】
続いて、図1に示した圧縮成形装置を使用して図2に示した態様により、前記積層体を実施例17と同様に一体化し、絹織物の重量比率が35%である厚さ2mmの複合材料を得た。
【0062】
前記複合材料について、実施例1〜4及び比較例4〜6と同じ手法により、引張強度及び全光線透過率を測定すると共に樹脂の含浸状態及び絹織物の状態を目視観察したところ、引張強度は70MPaであり、ポリブチレンサクシネートのみの引張強度35MPaよりも向上しており、全光線透過率は60%であり良好であった。また、樹脂の含浸状態及び絹織物の状態は共に良好であった。
【0063】
実施例19,20.
【0064】
熱可塑性樹脂として実施例18と同じポリブチレンサクシネートフィルムを274枚用意した。絹織物として経糸に28中//2本引揃えの生糸を使用すると共に緯糸に28中//4本引揃えの生糸を使用して経糸密度55本/cm、緯糸密度32本/cm、目付け60g/m*2(14匁目付)にて平織に製織した絹羽二重生機を23枚用意した。
【0065】
そして、前記ポリブチレンサクシネートフィルムを12枚で一層とし、前記絹羽二重生機を1枚で一層として11枚用意し、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と絹羽二重生機一層とを交互に積層して23層からなる積層体を作成し、続いて、当該積層体を圧縮圧力7MPaにおいて加熱温度130℃・加熱時間5分にて圧縮成形した後、圧縮状態を保持して放置して室温まで冷却することにより積層体を一体化し、絹織物の重量比率が20%である厚さ3mmの複合材料を得た(実施例19)。
【0066】
次に、前記ポリブチレンサクシネートフィルムを10枚で一層とし、前記絹羽二重生機を1枚で一層として12枚用意し、これらポリブチレンサクシネートフィルム一層と絹羽二重生機一層とを交互に積層して25層からなる積層体を作成し、続いて、当該積層体を実施例19と同様に一体化し、絹織物の重量比率が30%である厚さ3mmの複合材料を得た(実施例20)。
【0067】
そして、両複合材料をJIS K7113に準ずる大きさに切り取り2つの試験片を作成した。
【0068】
前記2つの試験片を温度27℃±2℃、湿度90%以上の恒温恒湿槽内で土中生分解させ、生分解の進行状況を観察した結果を図3のグラフに示す。なお、図3中、縦軸の重量減少割合WL%は、WL=(W0−W)/W0×100なる式にて表される数値であり、W0は生分解試験前における試験片の重量であり、Wは生分解試験後における試験片の重量である。また、横軸は経過した期間を週tにて示している。
【0069】
図3より時間が経過するにつれて両複合材料の生分解が進行していることが確認できる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、マトリックス樹脂として透明熱可塑性樹脂を使用し、該熱可塑性樹脂からなる最外層を透して絹織物が意匠として現れるように積層したので、絹織物に施された模様等が意匠として生かされた芸術性の高い強化複合材料が得られる。また、強化繊維として絹織物を使用し、熱可塑性樹脂として低温燃焼性を有するポリプロピレンや生分解性を有するポリブチレンサクシネート又はポリ乳酸を使用するため、自然環境に優しい強化複合材料が得られる。さらに、絹織物として繊維業界におけるデッドストックや一般消費者から廃棄される襤褸などを使用すればリサイクルすることもできる。
【0071】
従って、本発明の産業上利用性は非常に高いといえる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る意匠性に優れた強化複合材料を製造するための圧縮成形装置の一例を示した説明図である。
【図2】 図1に示す圧縮成形装置を用いて意匠性に優れた強化複合材料を製造する手順を示した説明図である。
【図3】 生分解の進行状況を観察した結果を示したグラフである。
【符号の説明】
1 圧縮成形装置
2 排出口
3 成形台
4 真空バック
5 シーラント
6 プレスヒーター
7 積層体
8 圧力プレート
Claims (9)
- ポリプロピレンからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように175〜220℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れることを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料。
- ポリブチレンサクシネートからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように120〜160℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れることを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料。
- ポリ乳酸からなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とが当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねられた積層体を当該絹織物が劣化しないように185〜220℃で加熱圧縮させた後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化させてなり、当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層を透して当該絹織物が意匠として現れることを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料。
- 真空に引きながら加熱圧縮させた後、真空に引きながら圧縮状態を保持して放冷してなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の意匠性に優れた強化複合材料。
- フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる最外層の全光線透過率が50%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の意匠性に優れた強化複合材料。
- ポリプロピレンからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように175〜220℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化することを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料の製造方法。
- ポリブチレンサクシネートからなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量 比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように120〜160℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化することを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料の製造方法。
- ポリ乳酸からなるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂と強化繊維としての絹織物とからなる意匠性に優れた強化複合材料の製造方法において、フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層と絹織物からなる層とを当該フィルム状の熱可塑性樹脂を複数重ねてなる層が最外層になると共に当該熱可塑性樹脂に対する当該絹織物の重量比率が15〜65%になるように交互に複数層重ねた積層体を当該絹織物が劣化しないように185〜220℃で加熱圧縮した後、圧縮状態を保持して放冷することで当該絹織物内に当該熱可塑性樹脂を十分に含浸させることにより一体化することを特徴とする意匠性に優れた強化複合材料の製造方法。
- 真空に引きながら加熱圧縮した後、真空に引きながら圧縮状態を保持して放冷する請求項6乃至8のいずれか1項に記載の意匠性に優れた強化複合材料の製造方法。
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