JP3653484B2 - センサ回路及びそれを用いた電動ハイブリッド自転車 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明はセンサ回路及びそれを用いた電動ハイブリッド自転車に関し、特にたとえば可動部の挙動を検出するセンサからの信号を摺動接点(スリップリング)を介して計測する測定回路を備えるセンサ回路及びそれを用いた電動ハイブリッド自転車に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、電動ハイブリッド自転車によるトルクアシストを行う場合、従来は図8に示すように回転側に設置された超磁歪センサ1によるインダクタンス変化をスリップリング2を介してトルク検知を行い、検知したトルク値に従ってモータ3から車輪4にアシストトルクを出力するようにしている。
【0003】
そして、インダクタンス変化の測定にはコイル励振回路5からのパルス波形による励振を行い、インダクタンスによりなまった波形を平準化して得られた電圧信号から測定する。
【0004】
通常、図9の(A)に示されるように超磁歪センサ1を加圧(減圧)することによりインダクタンスが減少(増加)し、パルス波形の「なまり」が減少(増加)する。そして、この「なまり」波形をフィルタ6で平滑化した図9の(B)に示される信号の電圧値の変化を測定することによって、超磁歪センサ1への加圧、減圧を検知し、その測定値に従ってアシストトルクをモータ3に指令し、出力する。
【0005】
この際、信号伝達を行うスリップリング2の接触状態は、経時変化、・異物混入・摺動接点の磨耗或いはばね材の金属疲労等に伴う接触圧の変化等により変化する。そして、接触状態の変化によってスリップリング2の抵抗値が変化したとき、トルク検知は図10の(A)及び(B)に示すようになり、パルス波形の電圧が増減することによって平滑化信号の電圧値が増減する。
【0006】
つまり、超磁歪センサ1にかかるトルク変化での信号変化なのか、スリップリング2の抵抗値変化による信号変化なのか見分けがつかない状態となる。
【0007】
図10のように、抵抗値が減少した場合はトルク増加と同様の信号変化を示し、アシストトルクが意図するよりも強く働くことが考えられる。また、抵抗値が増加した場合はトルク減少と同様の信号変化を示し、アシストトルクが意図するよりも弱くなり、十分なアシストトルクが得られないこととなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
それ故に、この発明の主たる目的は、摺動接点の状態を検知し得る、センサ回路及びそれを用いた電動ハイブリッド自転車を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は、可動部の挙動を検出するセンサと、前記センサからの信号を摺動接点を通して取り出す測定回路とを備え、前記測定回路は、前記摺動接点に直流電圧を印加して該摺動接点の直流抵抗を測定して前記摺動接点の状態を検知する、センサ回路。である。
【0010】
また、他の発明は、ペダル駆動部に設置された超磁歪センサと、前記超磁歪センサにより検出されたインダクタンス変化を摺動接点を通して取り出す測定回路と、前記摺動接点に直流電圧を印加して該摺動接点の直流抵抗を測定して前記摺動接点の状態を検知する摺動接点状態検知回路と、前記摺動接点状態検知回路により検知された前記摺動接点の状態に基づいて前記測定回路で検出された踏力トルク値を補正する補正回路と、を備え、前記補正回路で補正された踏力トルク値に応じて駆動モータから車輪にアシストトルクを出力するようにした、電動ハイブリッド自転車である。
【0011】
【作用】
たとえば、磁歪センサの場合、センサによるインダクタンス変化を検知するためにパルス信号を印加するが、そのパルス信号のON時間を長くして直流電圧として印加し、摺動接点の抵抗値を計測することによって、接触状態を判断し、センサのインダクタンス変化と摺動接点の抵抗変化を切り分けた測定を行う。
【0012】
その結果、磁歪センサにかかるトルク変化に基づく信号変化だけを測定回路より出力する。
【0013】
【発明の効果】
この発明によれば、摺動接点の状態を判断し、センサ値の有効性を認識することができる。また、摺動接点の状態が変化した場合もセンサ値の変化だけを計測できる。そして、踏力トルクの変化に応じた十分なアシスト力をモータより車輪に付与することができ快適な走行が可能となる。
【0014】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して以下に行う実施例の詳細な説明により一層明らかとなろう。
【0015】
【実施例】
図1はこの発明の一実施例である電動ハイブリッド自転車のトルクアシスト構成を示すブロック回路図である。
【0016】
図1において、センサ回路10は、回転側に設けられるペダル12に対するペダル踏力を検出する超磁歪センサ14と、固定側に設けられて超磁歪センサ14からの検出信号をスリップリング(摺動接点)16を通して取り出す測定回路18を含む。
【0017】
超磁歪センサ14はペダルからの加圧力により透磁率を変化する円柱状の超磁歪素子20と、この素子の周囲に配置される検出コイル22を含み、この検出コイル22は超磁歪素子20の透磁率の変化によりインダクタンスが変化する。
【0018】
そして、ペダル12に付与されたペダル踏力はチェーン機構24を介して踏力トルクとして自転車の車輪(後輪)26に伝達される。
【0019】
また、測定回路は18、マイクロコンピュータ(マイコン)28、コイル励振回路30、フィルタ32、および抵抗値変化検出回路34を含む。マイコン28からコイル励振回路30にパルス指令が入力されるとコイル励振回路30からは図2に示すような励振パルスと直流電圧(数十msec)を含むインダクタンス測定用励振パルス波形が出力され、このパルス波形は摺動接点16を通して検出コイル22に印加される。その結果、検出コイル22からは摺動接点16を通して図3に示すインダクタンス変化によるなまり波形が出力される。このなまり波形の出力信号はフィルタ32により平滑化信号となりマイコン28に入力される。一方、直流電圧が印加された部分から摺動接点16の直流抵抗を抵抗値変化検出回路34で検出し、その検出信号をマイコン28に入力する。
【0020】
そして、マイコン28ではその内のROMに基準抵抗値を予め設定しており、フィルタ32からの平滑化信号および抵抗値変化検出回路34からの検出信号に基づきアシスト用のトルク演算が行われてトルク指令がモータドライバ36を介してモータ38に出力される。モータ38からはアシストトルクが車輪26に伝達される。コイル励振回路30およびモータドライバ36にはバッテリ(直流電源)40より駆動電圧が付与されている。
【0021】
その結果、電動ハイブリッド自転車は搭乗者による踏力トルクとモータ38によるアシストトルクにより快適に走行することができる。
【0022】
図4には摺動接点の状態を検知する測定回路18としてのインダクタンス検出回路が示されている。
【0023】
この図4において、超磁歪センサ14の内部抵抗Rgmmを含むインダクタンスLは両端にそれぞれ摺動接点16の接触抵抗Rsrを介して抵抗R1とダイオードDの直列回路が並列に接続され、さらにダイオード側は励振信号の入力素子42を介して5Vの定電圧電源端子に接続され、抵抗側は抵抗Rsを介して接地されている。また、抵抗R1とRsの接続点にはコンデンサCと抵抗Rにより構成されるフィルタ32が接続されている。
【0024】
そして、入力素子42から印加される超磁歪センサ14の励振信号(図2参照)の一部でON時間を長くすることによって一時的に超磁歪センサ14、摺動接点16に直流状態を作る。この直流状態の間、測定される電圧値は、超磁歪センサ14のインダクタンスLと無関係な超磁歪センサ14、摺動接点16および抵抗Rsの各抵抗成分のみに依存するため、図4におけるフィルタ32の入力端の位置における電圧図は、図3に示されるように直流状態で安定した電圧値となる。
【0025】
また、図4の超磁歪センサ14の抵抗Rgmm、抵抗Rsは予め把握されている固定値であるので、この電圧値から摺動接点16の抵抗Rsrを算出することができる。
【0026】
次に図6に示す動作フローチャートに基づいて電動ハイブリッド自転車のアシストトルク生成アルゴリズムを説明する。
【0027】
先ず、スタートしてステップS1でアシストSWがONか否かを判断し、その結果“NO”であればスタートに戻り、“YES”であれば、ステップS3に進む。
【0028】
ステップS3ではコイル励振回路30より励振パルス波形を出力しスリップリング16を介して超磁歪センサ14の検出コイル22に印加し、ステップS5でインダクタンス値を測定する。
【0029】
そして、ステップS7では図2に示すようにインダクタンス測定用励振パルスの励振をハイ側で停止させ、一時的に直流電圧(数十msec)をかけ、ステップS9で超磁歪センサ14のインダクタンスの測定からスリップリングの抵抗変化の測定を行う。
【0030】
ステップS11ではマイコン28によりステップS9で測定された抵抗値が基準抵抗値と等しいか否かを判断する。この場合、出荷時に測定した初期抵抗値を基準抵抗値としているが、一定時間安定したときの抵抗値を基準抵抗値としてもよく、あるいは電源オン時の抵抗値を基準抵抗値としてもよい。また、判断基準としては、基準抵抗値に一定範囲の許容値を設け、その範囲内にあれば抵抗値は基準値に等しいと判断する。
【0031】
ステップS11の判断結果が“YES”であれば、ステップS13でマイコン28によりインダクタンス値よりアシストトルクを算出し、このアシストトルクをステップS15でモータドライバ36からモータ38に出力する。
【0032】
そして、ステップS17でアシストOFFか否かを判断し、その結果“YES”であれば一連の動作はエンドとなるが、“NO”であれば、ステップS3に戻り、先に説明した一連の動作を継続する。
【0033】
ステップS11で測定された抵抗値が基準抵抗値と等しくないとして“NO”と判断された場合、ステップS19で換算表に基づく正常なインダクタンス値を算出し、ステップS21でこの算出値に置き換えてステップS13に進み、以後は先に説明したステップを実行する。
【0034】
尚、図7に示されるように使用するセンサ系における抵抗値ごとの電圧―インダクタンス特性を予め測定しておき、グラフ、テーブル、関係式等を換算表としてマイコン28内のROM(図示せず)に予め用意しておく。
【0035】
また、ステップS19における抵抗値が基準抵抗値と異なる場合の処理方法としては、以下のものが考えられる。
(1)予めROMに用意しておいたグラフ、テーブル、関係式などから基準抵抗値からの抵抗値のずれを考慮し、インダクタンス値の補正を行う。
(2)抵抗値が基準抵抗値から外れた場合をエラーとし、測定インダクタンス値を採用せずアシストを行わない。アシスト電源又はアシスト出力をオフにする。
(3)アシストトルクが減少する方向にエラーが働いた場合には、そのままのインダクタンス値を採用し、十分でないが一応はアシストする。
(4)抵抗値エラーを操作者(搭乗者)に伝える。
(5)上記の組み合わせによる処理を行う。
【0036】
尚、実施例ではセンサによる検出信号を、回転式摺動接点を通して取り出すようにしたが、往復動式摺動接点を用いても同様の効果を得ることができる。ここでは励振信号自体のON時間を長くとり、直流状態を各励振パルスで作るようにすることによって、図5に示すように平滑化信号は常に安定した状態となり、超磁歪センサ14のインダクタンス値の測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明によるセンサ回路を備えた電動ハイブリッド自転車のトルクアシスト構成を示すブロック回路図である。
【図2】図1におけるコイル励振回路から検出コイルに印加されるインダクタンス測定用励振パルス波形図である。
【図3】図1におけるフィルタ回路に入力される検出コイルから摺動接点を通して取り出されるインダクタンスによるなまり波形図である。
【図4】図1における要部の電気回路図である。
【図5】図4のフィルタからの平滑信号の波形図である。
【図6】図1に示す電動ハイブリッド自転車のアシストトルク生成アルゴリズムを説明するための動作フローチャートである。
【図7】抵抗値ごとの電圧―インダクタンス特性図である。
【図8】図1に相当する従来例の電動ハイブリッド自転車のトルクアシスト構成を示すブロック回路図である。
【図9】図8における超磁歪センサにスリップリングを介して励振パルス波形を印加した場合の加圧(インダクタンス変化)による出力信号変化を示す電圧波形図で、(A)は平滑前の状態、(B)は平滑後の状態である。
【図10】図8における超磁気歪センサにスリップリングを介して励振パルス波形を印加した場合の抵抗値変化による出力信号変化を示す電圧波形図で、(A)は平滑前の状態、(B)は平滑後の状態である。
【符号の説明】
10 ・・・センサ回路
14 ・・・超磁歪センサ
16 ・・・スリップリング(摺動接点)
18 ・・・測定回路
20 ・・・超磁歪素子
22 ・・・検出コイル
28 ・・・マイクロコンピュータ(マイコン)
30 ・・・コイル励振回路
32 ・・・フィルタ(平滑フィルタ)
34 ・・・抵抗値変化検出回路
Claims (7)
- 可動部の挙動を検出するセンサと、
前記センサからの信号を摺動接点を通して取り出す測定回路とを備え、
前記測定回路は、
前記摺動接点に直流電圧を印加して該摺動接点の直流抵抗を測定して前記摺動接点の状態を検知する、センサ回路。 - 前記測定回路は、
前記直流抵抗の抵抗値により前記センサによるセンサ値を補正する、請求項1記載のセンサ回路。 - 前記測定回路は、
前記摺動接点を介して前記超磁歪センサの検出コイルに直流電圧部分を含む励振パルスを印加するコイル励振回路と、
前記検出コイルから前記摺動接点を介して出力されるインダクタンスによるなまり波形を平滑化するフィルタと、
前記インダクタンスによるなまり波形を入力してスリップリングの抵抗値変化を検出する抵抗値変化検出回路と、
前記抵抗値変化検出回路と前記フィルタからの入力信号と基準抵抗値とに基づいてインダクタンス変化を演算する演算部とを有する、請求項1又は2記載のセンサ回路。 - 前記直流抵抗の抵抗値の異常を検出したときのセンサ値を測定結果より除去する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセンサ回路。
- 前記センサは超磁歪センサを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載のセンサ回路。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセンサ回路と、
前記測定回路で検出された踏力トルク値に応じて駆動モータから車輪に
アシストトルクを出力するようにした、電動ハイブリッド自転車。 - ペダル駆動部に設置された超磁歪センサと、
前記超磁歪センサにより検出されたインダクタンス変化を摺動接点を通して取り出す測定回路と、を備え、
前記測定回路は、
前記摺動接点に直流電圧を印加して該摺動接点の直流抵抗を測定して前記摺動接点の状態を検知する検知回路と、
前記検知回路により検知された前記摺動接点の状態に基づいて前記測定回路で検出された踏力トルク値を補正する補正回路と、を備え、
前記補正回路で補正された踏力トルク値に応じて駆動モータから車輪にアシストトルクを出力するようにした、電動ハイブリッド自転車。
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