JP3650049B2 - 流体管の拡径工具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、給水又は給湯管等の合成樹脂材料製の流体管の接続端部を拡径するための拡径工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、図10に示すように、水栓設備(図示せず)と給水管等の合成樹脂材料製の流体管101とは継手102により接続されている。前記継手102はその一端側に形成された雄ねじ部103により前記水栓設備に螺合接続され、他端側の鍔部104に突設されたインナーコア部105に流体管101が外嵌されている。その流体管101に対して割りリング106が外嵌され、さらに、その割りリング106の外面に締め付けリング107が外嵌されてその締め付けリング107により割りリング106が縮径されている。そして、割りリング106の縮径により割りリング106とインナーコア部105との間に流体管101の端部が挟持され、インナーコア部105を介して継手102に流体管101が接続されている。
【0003】
上記接続方法において、流体管101と継手102との接続部分における流量損失を防止するため、流体管101の内径とインナーコア部105の内径とが略同一となるよう流体管101の接続端部は拡径されている。図11に示すように、流体管101の接続端部を拡径するために使用される拡径工具108は側面視逆L字状をなす本体部109を備え、その本体部109には把持部109aが延設されているとともに、押圧部材111が同本体部109内を摺動自在に内設されている。また、本体部109の一端部には前記押圧部材111の摺動を操作する回動部材112が回動可能に設けられ、他端部には6分割体よりなる拡径部110が設けられている。
【0004】
そして、上記拡径工具108を使用して流体管101の接続端部を拡径するには、まず、一方の片手で把持部109aを把持し、他方の片手で回動部材112を把持し、回動部材112が本体部109から離間する方向へ回動部材112を回動させる。次に、非拡径状態にある拡径部110に流体管101の接続端部を嵌める。次いで、回動部材112を把持部109a側へ近づけるように回動させて押圧部材111を拡径部110方向へ摺動させる。すると、押圧部材111は6分割された拡径部110の内部中心を押圧するとともに、各拡径部110を放射方向へそれぞれ離間させる。すると、拡径部110が拡径され、その拡径した拡径部110により流体管101の接続端部が拡径される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の拡径工具108において、押圧部材111の摺動量は回動部材112の回動量により決定され、回動部材112の回動は作業者の手作業により行われる。そのため、拡径部110の拡径量にばらつきが生じやすく、流体管101の内径とインナーコア部105の内径とが略同一となるように回動部材112の回動量を調整して流体管101の接続端部を拡径する作業を行うことが非常に煩雑であるという問題があった。
【0006】
また、押圧部材111の摺動量を多くするには回動部材112の回動量を多くしなければならず、拡径工具108が大型化してしまうという問題があった。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、小型化を図ることができるとともに、拡径部の一定量ずつの拡径を可能として流体管の拡径作業を容易に行うことができる流体管の拡径工具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、合成樹脂材料製の流体管を被接続体に接続させるために当該流体管の接続端部を拡径するための拡径工具であって、工具本体と、前記工具本体の端部に設けられ、流体管の接続端部に挿入可能に形成された複数の分割体よりなる拡径部と、前記工具本体に移動可能に設けられ、前記拡径部側へ移動することにより各分割体を外方に向けて放射状に移動させ、流体管の接続端部内に挿入された拡径部を拡径させて当該流体管の接続端部を拡径させる移動体と、流体管の接続端部内に拡径部を挿入した状態で、前記移動体を拡径部内へ速やかに移動させるための押圧操作される摘み部材と、ハンドル体の反復操作により前記移動体を拡径部方向へ一定量ずつ移動させる移動手段と、拡径部側に移動した移動体を拡径部から離間する方向へ付勢する付勢手段と、を備え、前記摘み部材を押圧することにより移動体を拡径部側へ移動させ、前記移動手段の一定量ずつの動作によりその移動した移動体を拡径部側へ一定距離ずつ移動させて拡径部を一定量ずつ拡径可能に形成するとともに、拡径部側へ移動した移動体を付勢手段の付勢力により当該拡径部から離間する方向へ移動させて拡径部を拡径状態から非拡径状態に変位可能に形成したことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流体管の拡径工具において、前記摘み部材は、前記移動体の端部に取り付けられると共に工具本体の他端部に突出して設けられていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の流体管の拡径工具において、前記拡径部側へ移動した移動体に係止して付勢手段の付勢力による当該移動体の拡径部から離間する方向への移動を規制する規制手段を設け、移動体に対する規制手段の係止を解除する解除手段を備えていることを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体管の拡径工具において、前記移動手段を移動体に形成されたラチェット歯と、同ラチェット歯に係止可能なラチェット爪を備えたラチェット板と、同ラチェット板が回動可能に取り付けられ、当該ラチェット板を回動させて移動体を移動させるべく工具本体に回動可能に取り付けられたハンドル体とより形成し、ハンドル体の反復操作により移動体を拡径部側へのみ移動可能に形成したことを要旨とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した流体管の拡径工具の一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
【0012】
図1に示すように、合成樹脂材料製の流体管11を被接続体としての継手(図示せず)に接続させるために当該流体管11の接続端部を拡径するための拡径工具12は工具本体13を備えている。その工具本体13の上部の一端には流体管11の接続端部に挿入可能に形成された拡径部14が設けられている。
【0013】
また、図2(a)に示すように、工具本体13内には、同工具本体13内を移動可能に設けられ、前記拡径部14側へ移動することにより拡径部14を拡径させて当該流体管11の接続端部を拡径させる移動体としての拡径ピン体15が設けられている。さらに、工具本体13内には一定量ずつの動作により前記拡径ピン体15を拡径部14方向へ一定距離ずつ移動させる移動手段16が設けられている。加えて、拡径部14側に移動した拡径ピン体15を拡径部14から離間する方向へ付勢する付勢手段としてのコイルスプリング20が設けられている。
【0014】
まず、前記工具本体13について説明すると、金属材料製の工具本体13は側面視逆L字状をなし、内部に空間が形成されているとともに、下方へ延びる部分には固定ハンドル13aが形成されている。工具本体13の上部一端には円盤状をなし、中央部が貫通形成されたフランジ21が取り付けられ、そのフランジ21には略円筒状をなす取付基台22が取り付けられている。その取付基台22の外端側内周縁には同取付基台22の内方中心へ延設された係止縁部22aが形成されている。
【0015】
この係止縁部22aには、側断面略T字状をなし、その一端側が略円筒状をなす筒体を4分割することにより形成された断面略扇形状をなす分割体23の他端側外周面に形成された係止溝23aが係止され、取付基台22に4つの分割体23が取り付けられている。各分割体23の係止溝23aと係止縁部22aとの間には隙間が形成され、各分割体23はその隙間分だけ外方へ移動可能に形成されている。
【0016】
図2(b)に示すように、各分割体23の外周面にはそれぞれゴム材料製のリング体24が嵌着されて、そのリング体24により4つの分割体23は取付基台22の中心方向へ付勢されている。そして、それら4つの分割体23及びリング体24により工具本体13の一端部に拡径部14が形成されている。リング体24による4つの分割体23の付勢状態において、図1に示すように、拡径部14の先端側は略円柱状をなし非拡径状態にあり、流体管11の接続端部の内側に挿入可能な大きさに形成されている。
【0017】
図2(a)に示すように、工具本体13の上部他端には筒状をなすゴム材料を蛇腹状に折り曲げて形成された被覆部材19が取り付けられ、その被覆部材19には摘み部材19aが取り付けられている。次に、前記拡径ピン体15について具体的に説明すると、拡径ピン体15は棒状をなし、その一端部に、拡径ピン体15の一端側に向かうに連れて縮径し、先細形状をなす円錐形状のピン部15aが形成されている。拡径ピン体15の中央部外周面には拡径ピン体15の一端側から他端側へ向けて外方へ斜めに傾斜するラチェット歯15bが一定間隔おきに複数段に形成されている。
【0018】
工具本体13の上部内側に配設された前記拡径ピン体15の他端側は被覆部材19内に配設されているとともに、他端面が前記摘み部材19aに取付固定されている。工具本体13の他端部と摘み部材19aとの間には付勢部材としてのコイルスプリング20が配設されている。そのコイルスプリング20の一端部は摘み部材19aに取付固定され、他端部は工具本体13に取付固定されている。そして、拡径ピン体15を拡径部14側へ押圧すると、コイルスプリング20は収縮され、摘み部材19aを介して拡径ピン体15を拡径部14から離間する方向へ付勢する。
【0019】
また、前記拡径ピン体15の一端側は非拡径状態にある拡径部14内部中心に位置し、各分割体23は拡径ピン体15の一端側外周面に圧接するようになっている。そして、拡径ピン体15が非拡径状態にある拡径部14内を一端側へ移動すると、その拡径ピン体15により拡径部14の内部中心が押圧されて各分割体23はそれぞれ放射方向へ移動され、拡径部14は拡径状態となる。一方、拡径状態にある拡径部14から拡径ピン体15が後退すると各分割体23はリング体24の付勢力により元の状態に戻り非拡径状態となる。即ち、拡径部14は拡径ピン体15の移動により非拡径状態又は拡径状態に変位可能に形成されている。
【0020】
前記拡径ピン体15の移動を可能とする移動手段16を形成するハンドル体17について説明すると、金属材料により棒状に形成されたハンドル体17はその上端が工具本体13の下側中央部に支軸25により取り付けられている。そして、ハンドル体17は支軸25を回動中心として回動可能に形成されている。このハンドル体17には前記固定ハンドル13aの内側に取り付けられた巻きバネ26の一端部が当接し、その巻きバネ26によりハンドル体17は固定ハンドル13aから離間する方向へ付勢されている。
【0021】
ハンドル体17の上部には前記ラチェット歯15bに噛合係止可能なラチェット爪27を一端に備えたラチェット板28が規制手段として回動可能に取り付けられている。このラチェット板28は前記ラチェット爪27がラチェット歯15bに噛合係止可能な方向に配置された状態で、中央部が取付軸29により取り付けられ、その取付軸29を回動中心として回動可能に形成されている。
【0022】
また、ラチェット板28の他端側には同ラチェット板28の一端側とはほぼ180度反対方向へ延びる当接板30が形成されている。そして、前記支軸25に巻装された付勢ばね37によりラチェット爪27がラチェット歯15bに噛合係止する方向へラチェット板28は付勢されている。また、ラチェット爪27のラチェット歯15bへの係止によりラチェット板28は拡径部14側へ移動した拡径ピン体15が拡径部14から離間する方向への移動を規制している。それと同時に、付勢ばね37により前記当接板30が工具本体13に設置された回転軸体31に対して上方から近づく方向へ付勢されている。
【0023】
前記拡径ピン体15のラチェット歯15b、ラチェット板28、ハンドル体17により拡径ピン体15を拡径部14側へ一定距離ずつ移動させる移動手段16が形成されている。そして、ハンドル体17を固定ハンドル13aに近づける操作及び固定ハンドル13aに近づけられたハンドル体17を元に戻す操作、即ちハンドル体17の反復操作により拡径ピン体15の拡径部14側への一定距離ずつの移動が可能になっている。
【0024】
工具本体13の上部内側において、前記ラチェット板28よりも被覆部材19側には側面視略T字状をなし、前記ラチェット歯15bに係止可能な係止爪32を一端に備え、中央部下端から下方へ延びる案内板33を備えた規制部材34が規制手段として設けられている。この規制部材34は前記係止爪32がラチェット歯15bに係止可能な方向に配置された状態で、他端部が回動軸35により回動可能に工具本体13に取り付けられている。また、工具本体13の内側に設置された付勢ばね37により係止爪32がラチェット歯15bに係止するとともに、案内板33が前記回転軸体31に下方から近づく方向へ規制部材34は付勢されている。
【0025】
そして、前記拡径部14側へ移動した拡径ピン体15のラチェット歯15bに係止爪32が係止することによりコイルスプリング20の付勢力による当該拡径ピン体15の拡径部14から離間する方向への移動を規制するようになっている。
【0026】
解除手段としての前記回転軸体31は中央部がクランク状をなし、両端部が工具本体13の相対向する側壁を貫通して工具本体13に取り付けられ、図1に示すように、各側壁から突出した回転軸体31の両端部に解除レバー36が取り付けられている。図4に示すように、工具本体13内における回転軸体31の一端側には、断面半円状をなす第1当接部31aが形成され、その第1当接部31aに対して前記案内板33が下方から当接する方向へ付勢ばね37に付勢されている。一方、図8に示すように、工具本体13内における回転軸体31の中央部他端側は、断面半円状をなす第2当接部31bが形成され、その第2当接部31bに対して前記当接板30が上方から当接する方向へ付勢ばね37に付勢されている。
【0027】
解除レバー36の操作により回転軸体31を回転させると、第1当接部31aにより案内板33を介して規制部材34を回動させ、第2当接部31bにより当接板30を介してラチェット板28を回動させることができる。そして、規制部材34及びラチェット板28の回動により係止爪32及びラチェット爪27とラチェット歯15bとの係止を同時に解除することができる。
【0028】
上記構成の拡径工具12を使用した流体管11の接続端部の拡径作業を作用とともに説明する。
まず、拡径工具12を一方の片手で把持し、他方の片手で把持した流体管11内に非拡径状態にある拡径部14を挿入する。流体管11の内径よりも拡径部14の直径が小さい場合は、図3に2点鎖線に示す位置にある摘み部材19aを工具本体13内方へ押圧して図3に実線に示す位置にまで移動させる。拡径ピン体15の移動に伴い、ラチェット爪27及び係止爪32はそれぞれラチェット歯15b外面に沿って下方へ案内され、ラチェット歯15bとの係止が解除されるが付勢ばね37の付勢力によりラチェット歯15bに再度係止される。
【0029】
ピン部15aは拡径部14内へ入り込み、拡径部14はピン部15aにより内部中心が押圧されるとともに、各分割体23は放射方向へそれぞれ離間される。すると、非拡径状態の拡径部14が若干拡径され、拡径部14外面が流体管11内周面に圧接される。
【0030】
なお、実施形態では、拡径ピン体15を押圧して拡径部14を予め拡径させた状態から拡径作業を行うが、拡径部14外面が流体管11内周面に圧接されるまでハンドル体17を操作して拡径ピン体15を移動させて拡径部14を拡径させてもよい。
【0031】
続いて、図4に2点鎖線に示す位置にあるハンドル体17を、一方の片手の指で巻きバネ26の付勢力に抗して実線に示す位置にまで移動させて固定ハンドル13aに近づける。すると、ハンドル体17の移動に伴い、ラチェット板28が図4に2点鎖線に示す位置から実線に示す位置へ、即ち拡径部14側へ移動する。
【0032】
このとき、ラチェット板28は付勢ばね37の付勢力によりラチェット爪27がラチェット歯15bに係止したまま移動される。そして、ラチェット板28の移動に伴い拡径ピン体15が1つのラチェット歯15b分だけ、即ち一定距離だけ拡径部14側へ移動される。それと同時に、図4に2点鎖線に示す位置にある係止爪32はラチェット歯15bにより下方へ案内されて図4に実線に示すように、ラチェット歯15bに対する係止が解除される。
【0033】
さらに、図5に2点鎖線に示す位置にあるハンドル体17が巻きバネ26の付勢力により図5に実線に示す位置にまで移動されて固定ハンドル13aから離れる。ハンドル体17の移動に伴いラチェット板28は拡径部14から離れる方向へ移動されるとともに、ラチェット歯15bにより下方へ案内されてラチェット爪27とラチェット歯15bとの係止が解除され、図5に2点鎖線に示す位置へ移動される。すると、ラチェット板28が付勢ばね37の付勢力により図5に2点鎖線に示す位置から実線に示す位置へ移動され、ラチェット爪27が再度ラチェット歯15bに係止される。
【0034】
そして、ハンドル体17の操作を繰り返してラチェット歯15bを一段ずつ、即ち一定距離ずつ移動させて拡径ピン体15を拡径部14側へ一定量ずつ均等に移動させると、ピン部15aは拡径部14内へ一定量ずつ入り込む。すると、ピン部15aにより拡径部14の内部中心は一定量ずつ押圧されるとともに、各分割体23は放射方向へそれぞれ一定量ずつ離間され、拡径部14が一定量ずつ拡径される。その結果、図6に示すように、流体管11の接続端部の内周面が各分割体23により外方へ押圧されて拡径される。このとき、各分割体23は円錐形状をなすピン部15aにより押圧されるため、各分割体23の内周面はピン部15aにより均等に押圧され、それら分割体23により流体管11の接続端部は均等に拡径される。
【0035】
また、図7に示すように、拡径ピン体15の拡径部14側への移動によりコイルスプリング20は押し縮められ、その収縮されたコイルスプリング20により拡径ピン体15が拡径部14側から離間する方向へ付勢される。それと同時に、付勢ばね37の付勢力により係止爪32及びラチェット爪27がラチェット歯15bに係止されるため、拡径ピン体15が拡径部14から離間する方向への移動が規制される。
【0036】
流体管11の接続端部が所望するサイズに拡径された後、解除レバー36を回転させる。すると、図7に示すように、第1当接部31aの回転により案内板33は押し出され、同案内板33は図7に2点鎖線に示す位置から実線に示す位置にまで移動されるとともに、規制部材34が回動される。そして、規制部材34の回動により係止爪32のラチェット歯15bに対する係止が解除される。
【0037】
それと同時に、図8に示すように、第2当接部31bの回転により当接板30は押し出され、同当接板30は図8に2点鎖線に示す位置から実線に示す位置にまで移動されるとともに、ラチェット板28が回動される。そして、ラチェット板28の回動によりラチェット爪27のラチェット歯15bに対する係止が解除される。
【0038】
すると、図9に示すように、拡径ピン体15がコイルスプリング20の付勢力により拡径部14から離間するように後退される。そして、拡径ピン体15の移動が停止すると、付勢ばね37の付勢力により規制部材34及びラチェット板28は回動し、ラチェット爪27及び係止爪32はラチェット歯15bに係止される。
【0039】
また、拡径部14からピン部15aが後退すると、各分割体23はそれぞれリング体24の付勢力によりそれぞれ取付基台22の内方中心へ移動され、非拡径状態となる。拡径部14が非拡径状態となることにより、流体管11の接続端部の内周面と拡径部14の外周面との間に隙間が形成されて、拡径部14による流体管11の内周面への圧接が解除される。その結果、拡径部14から流体管11が離脱し、接続端部が拡径された流体管11が拡径工具12から取り外される。
【0040】
実施形態の拡径工具12によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1) ハンドル体17の反復操作により拡径ピン体15を一定距離ずつ移動させることができ、拡径部14を一定量ずつ拡径させることができる。そのため、拡径部14を一定量ずつ拡径することができなかった従来と異なり、流体管11の内径と継手のインナーコア部の内径とが略同一となるように流体管11の接続端部を拡径する作業を容易に行うことができる。
【0041】
(2) ハンドル体17の反復操作により拡径ピン体15を移動させることができる。そのため、流体管11の接続端部を拡径させるために押圧部材111を多量に摺動させるべく回動部材112を多量に回動させる必要があった従来と異なり、拡径工具12を小型化することができる。そのため、拡径工具12の運搬を容易に行うことができるとともに、拡径工具12による流体管11の拡径作業を狭い空間で行うことができる。
【0042】
(3) 固定ハンドル13aを片手で把持し、さらにその片手の指でハンドル体17を操作することにより拡径工具12を操作して流体管11の拡径作業を行うことができる。従って、拡径部14を拡径させるために油圧機構等の大規模な構成が拡径工具12に設けられている場合と比較して流体管11の拡径作業を容易に行うことができる。また、一方の片手で拡径工具12を操作することができるため、他方の片手で流体管11の把持、摘み部材19aの操作、解除レバー36の操作等を行うことができ、流体管11の拡径作業を円滑に行うことができる。
【0043】
(4) 流体管11の拡径作業が終了した後、解除レバー36を操作することにより、拡径ピン体15を拡径部14から後退させて拡径部14を拡径状態から非拡径状態へ変位させることができ、拡径部14による流体管11の内周面の押圧を解除することができる。従って、拡径部14が流体管11内に入り込んだままで、無理やり流体管11を拡径部14から離脱させる場合と異なり、拡径工具12から流体管11を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0044】
(5) コイルスプリング20の付勢力により拡径ピン体15は自動的に拡径部14から後退するため、拡径ピン体15を手動で後退させる場合と比較して流体管11を拡径部14から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0045】
(6) ラチェット歯15bは複数段に形成されているため、拡径部14は一定量ずつ、複数段階に拡径可能に形成されている。そのため、管径の異なる複数種類の流体管11の拡径作業を行うことができる。従って、管径毎に別の拡径工具12を必要とする場合と比較して流体管11の施工現場に搬入される拡径工具12を減らすことができる。
【0046】
(7) 摘み部材19aを押圧することにより拡径ピン体15を拡径部14側へ移動させて拡径部14を予め拡径させることができる。そのため、ハンドル体17を操作して拡径部14外周面を流体管11の内周面に圧接させ、その後、流体管11の拡径作業を行う場合と比較して流体管11の拡径作業を速やかに行うことができる。
【0047】
(8) また、拡径部14の外周面を流体管11の内周面に圧接させることにより流体管11が拡径部14から落下しない状態となる。そのため、流体管11を一方の片手で把持しながら拡径工具12を操作する必要がなくなり、流体管11の接続端部の拡径作業の簡便性を向上させることができるとともに、他方の片手の自由に使用することが可能となる。
【0048】
(9) 解除レバー36を操作することによりラチェット板28及び規制部材34を同時に回動させることができ、ラチェット歯15bに対するラチェット爪27及び係止爪32の係止を同時に解除することができる。そのため、ラチェット歯15bに対するラチェット爪27及び係止爪32の係止をそれぞれ別部材を操作して解除する場合と比較して拡径部14を拡径状態から非拡径状態へ変位させる作業を容易かつ速やかに行うことができる。
【0049】
(10) ラチェット板28の移動により、拡径ピン体15を拡径部14側へ一定距離ずつ確実に移動させることができる。
(11) 付勢ばね37の付勢力によりラチェット板28のラチェット爪27及び規制部材34の係止爪32がラチェット歯15bに係止される。そのため、流体管11の拡径作業中に拡径ピン体15が拡径部14から離間する方向へ移動するのを防止することができ、流体管11の拡径作業を確実に行うことができる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 解除レバー36の操作によりラチェット歯15bに対するラチェット爪27及び係止爪32の係止を同時に解除してもコイルスプリング20の付勢力により拡径ピン体15が拡径部14側から離間しないとき、拡径ピン体15を手で拡径部14側から離間する方向へ移動させてもよい。各分割体23がピン部15a外周面を押圧し、コイルスプリング20の付勢力により拡径ピン体15が拡径部14側から離間しない場合、手で拡径ピン体15を移動させることができる。そのため、拡径部14を非拡径状態へ確実に変位させることができ、拡径部14が流体管11内に入り込んだままで、無理やり流体管11を拡径部14から離脱させる場合と異なり、拡径工具12から流体管11を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0051】
・ 実施形態では、拡径部14を4つの分割体23により形成したが、2つ又は3つの分割体23により拡径部14を形成してもよく、5つ以上の分割体23により拡径部14を形成してもよい。
【0052】
・ 拡径ピン体15を拡径部14から離れる方向へ手動で移動させてもよい。
・ 実施形態では、付勢手段としてコイルスプリング20に具体化したが、付勢手段を板ばね、油圧シリンダ等に具体化してもよい。
【0053】
・ 実施形態では、解除レバー36を操作することによりラチェット板28及び規制部材34を同時に回動可能に形成したが、ラチェット板28及び規制部材34をそれぞれ別部材により同時又は別々に回動させてもよい。
【0054】
・ 実施形態では、移動体を拡径ピン体15に具体化したが、拡径ピン体15の一端部を四角錐状、三角錐状をなすピン部15aとしてもよい。
・ 実施形態では、被接続体として継手に具体化したが、被接続体としてのヘッダー、水栓器具に流体管11を接続する際に拡径工具12を使用してもよい。
【0055】
次に上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
・ 前記工具本体に、同工具本体を一方の片手で把持可能な固定ハンドルを形成するとともに、前記ハンドル体を固定ハンドルを把持した前記一方の片手の指で操作可能な位置に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体管の拡径工具。このように構成した場合、流体管の拡径作業を片手で容易に行うことができる。
【0056】
・ 前記拡径部側へ移動した移動体の付勢手段の付勢力による拡径部から離間する方向への移動を補助すべく移動体の拡径部側から離間する方向への手による移動を可能に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体管の拡径工具。このように構成した場合、拡径部内周面により移動体の外周面が押圧され、付勢手段の付勢力により移動体が拡径部側から離間しない場合、手で移動体を移動させることができる。そのため、拡径部を非拡径状態へ確実に変位させることができ、拡径部が流体管内に入り込んだままで、無理やり流体管を拡径部から離脱させるといった煩雑な作業を省略することができる。
【0057】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1,2に記載の発明によれば、小型化を図ることができるとともに、拡径部の一定量ずつの拡径を可能として流体管の拡径作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、拡径部を予め拡径させて外周面を流体管の内周面に圧接させた状態から拡径作業を行うことができる。従って、移動体を一定距離ずつ拡径部側へ移動させ、拡径部を拡径させて拡径部外周面を流体管の内周面に圧接させた後、流体管の接続端部を拡径させる場合と比較して流体管の拡径作業を速やかに行うことができる。
【0059】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、解除手段により移動体を自動的に移動させて拡径部を拡径状態から非拡径状態へ変位させることができる。そのため、拡径部を拡径状態から非拡径状態へ変位させる作業を手動で行う場合と比較して拡径部の変位作業を容易かつ速やかに行うことができる。
【0060】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、移動体を一定距離ずつ拡径部側へ確実に移動させることができるとともに、流体管の拡径作業中に移動体が拡径部側から離間する方向へ移動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の拡径工具を示す斜視図。
【図2】(a)は実施形態の拡径工具を示す図1の2−2線断面図、(b)は実施形態の拡径工具を示す正面図。
【図3】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図4】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図5】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図6】拡径部を拡径ピン体により拡径させた状態を示す正面図。
【図7】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図8】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図9】実施形態の拡径工具の動作を示す部分側断面図。
【図10】従来の継手と流体管との接続状態を示す部分断面図。
【図11】従来の拡径工具を示す部分断面側面図。
【符号の説明】
11…流体管、12…流体管の拡径工具、13…工具本体、14…拡径部、15…移動体としての拡径ピン体、15b…移動手段を形成するラチェット歯、17…移動手段を形成するハンドル体、20…付勢手段としてのコイルスプリング、23…分割体、27…移動手段を形成するラチェット爪、28…移動手段を形成するラチェット板、31…解除手段としての回転軸体、34…規制手段としての解除部材。
Claims (4)
- 合成樹脂材料製の流体管を被接続体に接続させるために当該流体管の接続端部を拡径するための拡径工具であって、
工具本体と、
前記工具本体の端部に設けられ、流体管の接続端部に挿入可能に形成された複数の分割体よりなる拡径部と、
前記工具本体に移動可能に設けられ、前記拡径部側へ移動することにより各分割体を外方に向けて放射状に移動させ、流体管の接続端部内に挿入された拡径部を拡径させて当該流体管の接続端部を拡径させる移動体と、
流体管の接続端部内に拡径部を挿入した状態で、前記移動体を拡径部内へ速やかに移動させるための押圧操作される摘み部材と、
ハンドル体の反復操作により前記移動体を拡径部方向へ一定量ずつ移動させる移動手段と、
拡径部側に移動した移動体を拡径部から離間する方向へ付勢する付勢手段と、
を備え、前記摘み部材を押圧することにより移動体を拡径部側へ移動させ、前記移動手段の一定量ずつの動作によりその移動した移動体を拡径部側へ一定距離ずつ移動させて拡径部を一定量ずつ拡径可能に形成するとともに、拡径部側へ移動した移動体を付勢手段の付勢力により当該拡径部から離間する方向へ移動させて拡径部を拡径状態から非拡径状態に変位可能に形成したことを特徴とする流体管の拡径工具。 - 前記摘み部材は、前記移動体の端部に取り付けられると共に工具本体の他端部に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体管の拡径工具。
- 前記拡径部側へ移動した移動体に係止して付勢手段の付勢力による当該移動体の拡径部から離間する方向への移動を規制する規制手段を設け、移動体に対する規制手段の係止を解除する解除手段を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体管の拡径工具。
- 前記移動手段を移動体に形成されたラチェット歯と、同ラチェット歯に係止可能なラチェット爪を備えたラチェット板と、同ラチェット板が回動可能に取り付けられ、当該ラチェット板を回動させて移動体を移動させるべく工具本体に回動可能に取り付けられたハンドル体とより形成し、ハンドル体の反復操作により移動体を拡径部側へのみ移動可能に形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の流体管の拡径工具。
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