JP3649206B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム二次電池に関し、特に高温環境下での電流遮断機構の誤動作が無く、放電レート特性に優れたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高容量の非水電解液二次電池として、リチウムを吸蔵放出するリチウムイオン電池が実用化されている。正極活物質としては、リチウム含有複合金属酸化物、負極活物質としては金属リチウム、リチウム合金やカーボンファイバー、グラファイトなどの炭素材料を用い、4V級の高電圧で高エネルギー密度を持つ電池として実用化されている。この電池の主用途である携帯機器の高機能化に伴い消費電力が増える傾向にあり、機器の小型化に伴い各構成要素が高密度で実装されているために電池は、60℃以上の高温環境下にさらされることがある。
【0003】
高温環境下に長時間さらされると電池内部では、正極活物質の結晶構造が不安定となり、酸素ガスが発生して酸化雰囲気になるために非水電解液が分解してさらにガスが発生すると、本来過充電時に作動すべき電流遮断機構が誤作動に至る場合がある。
【0004】
そこで、特開平7−134985号公報には、正極活物質に対して所定量のニッケル酸化物および/またはコバルト酸化物を添加することにより、特開2000−200605号公報には、正極活物質のコバルト酸リチウム粒子の表面にチタン粒子および/またはチタン化合物を付着させることにより、長期保存や高温保存でのガス発生を抑えることができると開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法では正極活物質の反応性を低下させる方法を採用している為に、高温環境下でのガス発生抑制効果はあるが、放電レート特性の低下を招いていた。
【0006】
ところで、特開平11−49519号公報には、CuKα線によるX線回折でCo34の311面に相当する回折ピークの半値幅が0.31度より大きく、結晶性の悪いコバルト化合物を用いると固相反応が良好に進行し、リチウムコバルト複合酸化物を効率良く製造する方法が開示されているが、高温環境下での安定性については記載されていない。
【0007】
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたもので、放電レート特性を損なうことなく、かつ高温環境下でのガス発生を抑制し、電流遮断機構の誤動作のないリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、リチウム化合物とCo34から合成される正極活物質であって、前記Co34のCuKα線によるX線回折での311面の半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下であり、Co 3 4 の粒度分布がD(30%)=2.5μm〜6.0μm、D(50%)=4.0μm〜7.5μm、D(90%)=13.0μm〜16.0μmの範囲であることを特徴とする。
【0009】
半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下のCo34とリチウム化合物から得られるリチウム含有コバルト酸化物は、結晶性の高い骨格を形成することができるので、高温環境下でもガス発生が抑制され、放電レート特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【0010】
そして、前記Co34の粒度分布がD(30%)=2.5μm〜6.0μm、D(50%)=4.0μm〜7.5μm、D(90%)=13.0μm〜16.0μmの範囲であるものを用いることにより、高温環境下でのガス発生抑制効果や放電レート特性がより向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下に示す実施形態は本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
図1に円筒形リチウム二次電池の縦断面図を示す。電池ケース1には、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して渦巻状に巻回した極板群4と非水電解液が収容されており、電池ケース1の底部と負極リ−ド6aが絶縁板8を介して溶接されている。極板群4の上部には絶縁板8が挿入され、正極リード5aと封口板2が溶接されている。封口板2は、絶縁ガスケット3を介して電池ケース1の上端部を内側に折り曲げてかしめることで電池ケース1の内部が密封口される。
【0013】
正極板5は、アルミニウム製の箔やラス加工やエッチング処理された厚み10μm〜60μmの箔からなる集電体の片側または両面に正極活物質と結着剤、必要に応じて導電剤、増粘剤を溶剤に混練分散させたペーストを塗着、乾燥、圧延して活物質層を作製し、この活物質層に無地部を設け、正極リード5aを溶接したものである。
【0014】
正極活物質としては、CuKα線によるX線回折での311面の半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下のCo34とリチウム化合物とを混合し、焼成して得られるリチウム含有コバルト酸化物を用いる。
【0015】
CuKα線によるX線回折での311面の半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下のCo34は、Co(OH)2を100℃〜120℃で2時間〜15時間予熱を行なった後、1℃/min.〜4℃/min.の昇温速度でCo(OH)2の脱水温度である150℃〜180℃に昇温させ、2時間〜24時間、好ましくは5時間〜15時間空気雰囲気中で脱水することによって得ることができる。
【0016】
Co3O4とリチウム化合物のLiとCoの原子比は、1:0.97〜1:1.05の範囲が、電池特性の観点から好ましい。
【0017】
半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下のCo34とリチウム化合物から得られるリチウム含有コバルト酸化物は、結晶性の高い骨格を形成することができるので、高温環境下でもガス発生が抑制され、放電レート特性に優れたリチウム二次電池を得ることができる。
【0018】
半値幅が0.366deg.を越える場合には、Co34の結晶性が低下しているので、得られるリチウム含有コバルト酸化物の骨格をなす部分の結晶性が低下するため、高温環境下において不安定になり、非水電解液と反応してガス発生量が増加し、電流遮断機構の誤作動を招くので、好ましくない。
【0019】
逆に、半値幅が0.350deg.未満になると、リチウム化合物との反応性が低下し、生産性が低下するので好ましくない。
【0020】
そして、Co34の粒度分布がD(30%)=2.5μm〜6.0μm、D(50%)=4.0μm〜7.5μm、D(90%)=13.0μm〜16.0μmの範囲であるものを用いる。
【0021】
粒度分布D(30%)が2.5μm未満の場合、得られるリチウム含有コバルト酸化物の骨格が小さく、比表面積が大きくなり、非水電解液との反応性が高くなり、ガス発生の抑制効果が低下するので好ましくない。逆に、6.0μmを越える場合、反応性が低下するので放電レート特性が低下し好ましくない。
【0022】
粒度分布D(50%)が4.0μm未満の場合、得られるリチウム含有コバルト酸化物の骨格が小さく、比表面積が大きくなり、非水電解液との反応性が高くなり、ガス発生の抑制効果が低下するので好ましくない。逆に、7.5μmを越える場合、反応性が低下するので放電レート特性が低下し好ましくない。
【0023】
粒度分布D(90%)が13.0μ未満の場合、得られるリチウム含有コバルト酸化物の骨格が小さく、比表面積が大きくなり、非水電解液との反応性が高くなり、ガス発生の抑制効果が低下するので好ましくない。逆に、16.0μmを越える場合、反応性が低下するので放電レート特性が低下し好ましくない。
【0024】
リチウム化合物としては、特に限定されるものではないが、LiCO3、LiOH、LiNO3、Li2SO4から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0025】
結着剤としては、溶剤に混練分散できるものであれば、特に限定されないが、例えば、フッ素系結着剤やアクリルゴム、変性アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリル系重合体、ビニル系重合体等を単独、あるいは、二種類以上の混合物または共重合体として用いることができる。フッ素系結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体やポリテトラフルオロエチレン樹脂のディスパージョンが好ましい。
【0026】
必要に応じて導電剤、増粘剤を加えることができ、導電剤としてはアセチレンブラック、グラファイト、炭素繊維等を単独、あるいは二種類以上の混合物で用いることが好ましく、増粘剤としてはエチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどが好ましい。
【0027】
溶剤としては、結着剤が溶解可能な溶剤が適切で、有機系結着剤の場合は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホルアミド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤を単独またはこれらを混合した混合溶剤が好ましく、水系結着剤の場合は水や温水が好ましい。
【0028】
また、上記ペースト状合剤の混練分散時に、各種分散剤、界面活性剤、安定剤等を必要に応じて添加することも可能である。
【0029】
塗着乾燥は、特に限定されるものではなく、上記のように混練分散させたペースト状合剤を、例えば、スリットダイコーター、リバースロールコーター、リップコーター、ブレードコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ディップコーター等を用いて、容易に塗着することができ、自然乾燥に近い乾燥が好ましいが、生産性を考慮すると70℃〜200℃で5時間〜10分間乾燥させることが好ましい。
【0030】
圧延は、ローラープレス機によって所定の厚みになるまで、線圧1000kg/cm〜2000kg/cmで数回圧延を行うが、線圧を変えて圧延するのが好ましい。
【0031】
負極板6は、集電体の一面に負極活物質、結着剤、必要に応じて導電補助剤を有機溶剤に混練分散させたペースト状の合剤を塗着、乾燥し、集電体の他面にも塗着、乾燥した後、圧延して作製される。
【0032】
負極板6の集電体としては、銅製の箔、ラス加工した箔、またはエッチング加工を施した箔からなり、厚みは10μm〜50μmの範囲が好ましい。
【0033】
負極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、有機高分子化合物(フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース等)を焼成することにより得られる炭素材料、コークスやピッチを焼成することにより得られる炭素材料、あるいは人造グラファイト、天然グラファイト等をその形状としては、球状、鱗片状、塊状のものを用いることができる。
【0034】
結着剤、増粘剤としては、正極板と同様のものを用いることができる。
【0035】
セパレータ7としては、厚さ15μm〜30μmのポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの微多孔性ポリオレフィン樹脂またはそれらの積層体を用いることができる。
【0036】
非水電解液としては、非水溶媒に電解質を溶解することにより、調製される。前記非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジクロロエタン、1,3−ジメトキシプロパン、4−メチル−2−ペンタノン、1,4−ジオキサン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、スルホラン、3−メチル−スルホラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等を単独あるいは二種類以上の混合溶媒として使用することができる。
【0037】
非水溶媒中に添加する電解質としては、電子吸引性の強いリチウム塩を使用し、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33等を単独あるいは二種類以上組み合わせて使用することができる。これらの電解質は、前記非水溶媒に対して、0.5mol/l〜2.0mol/lの濃度で溶解させることが好ましい。
【0038】
【実施例】
以下本発明を、実施例と比較例を用いて詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。本実施例では、図1に示す円筒形リチウム二次電池を作製し、評価を行った。
【0039】
(実施例)
まず、正極活物質を次のようにして作製した。
【0040】
Co34は、Co(OH)2を100℃で10時間予熱を行った後、昇温速度3℃/min.でCo(OH)2の脱水温度である180℃まで昇温させ、10時間空気雰囲気中で脱水して得た。得られたCo34を粉砕、分級することにより、表1に示す種々のCuKα線によるX線回折での311面の半値幅と粒度分布を持つCo34、a1〜a4の実施例のものとa5〜a7の参考例のものを得た。
【0041】
【表1】
Figure 0003649206
【0042】
次に、表1に示す種々のCo34とLi2CO3をそれぞれ精秤し、LiとCoの原子比が1:1になるように混合した後、空気中、900℃で6時間焼成して、リチウム含有コバルト酸化物LiCoO2を得た。
【0043】
このようにして得られたLiCoO2100重量部に対して、導電剤としてアセチレンブラック3重量部、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のディスパージョンを固形分で4重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分として0.8重量部をミキサー中で混練分散し、正極合剤ペーストを得た。この正極合剤ペーストを厚さ20μmのアルミニウム合金箔集電体の両面に連続的に間欠塗布乾燥した後、ローラープレス機で厚さを180μmに圧延し、所定の寸法に裁断し、正極板5を作製した。
【0044】
負極板6は、負極活物質である人造黒鉛100重量部に対して、結着剤としてスチレン−ブタジエンゴム(SBR)の水溶性ディスパージョンを固形分として4重量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース水溶液を固形分として0.8重量部を混練し、負極合剤ペーストを得た。この負極合剤ペーストを厚さ14μmの銅箔集電体の両面に連続的に間欠塗布した後、乾燥したものをローラープレス機で厚さを195μmに圧延し、所定の寸法に裁断し、負極板6を作製した。
【0045】
このようにして得られた正極板5と負極板6とを厚さ25μmの微孔性ポリエチレンフィルム製のセパレータ7を介して渦巻き状に巻回して極板群4を作製した。
【0046】
この極板群4を負極端子を兼ねるステンレス製の有底円筒形電池ケース1に収容し、負極リード6aを電池ケース1の底部に溶接した。更に、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネートの混合溶媒中に電解質として1.25mol/lのLiPF6を溶解させた電解液を電池ケース1内に注入した後、正極リード5aに溶接された封口板2を、絶縁ガスケット3を介して電池ケース1と封口板2とを密封口した。さらに電池電圧を4.1Vまで定電流で充電を行った後、45℃に保持した恒温槽に1週間保存してエージング処理を行い、a1〜a7のCo34に対応する直径18mm、高さ65mm、電池容量2000mAhの電池A1〜A4の実施例の電池とA5〜A7の参考例の電池を得た。
【0047】
(比較例)
表1に示す種々のCuKα線によるX線回折での311面の半値幅と粒度分布のCo34b1〜b5を用いたこと以外は実施例と同様にしてb1〜b5のCo34に対応する比較例電池B1〜B5を作製した。
【0048】
このようにして得られた実施例、参考例及び比較例の電池A1〜A7、B1〜B6各5個を用いて、放電レート特性と高温環境下での保存試験を評価し、その結果を表2に示す。
【0049】
放電レート特性は、各電池を3.0Vの終止電圧まで、2000mA(1.0ItA)の定電流で残存放電した後、電池電圧が4.2Vに達するまでは1400mA(0.7ItA)の定電流充電を行い、その後電流値が減衰して100mA(0.05ItA)になるまで充電して満充電状態とした。
【0050】
そして、上記満充電状態の電池を20℃において放電電流400mA(0.2ItA)で終止電圧3.0Vまで放電した時の電池容量に対する放電電流4000mA(2.0ItA)で放電した時の電池容量の比率である放電レート比率=(2.0ItAの放電容量)/(0.2ItAの放電容量)×100(%)を算出し、その平均値を求めた。
【0051】
高温環境下での保存試験は、上記の満充電状態の電池を85℃に保持されている恒温槽に3日間保存した後、蛍光X線により電流遮断機構の誤動作の有無を評価した。
【0052】
【表2】
Figure 0003649206
【0053】
表2の結果から明らかなように、CuKα線によるX線回折での311面の半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下のCo34とリチウム化合物から得られるリチウム含有コバルト酸化物を正極活物質に用いた電池A1〜A7は、結晶性の高い骨格を形成しているので、高温環境下において安定であり、電流遮断機構の誤動作はなかったが、比較例電池B1〜B6は電流遮断機構の誤動作に至るものがあった。
【0054】
また、Co34の粒度分布がD(30%)=2.5〜6.0μm、D(50%)=4.0〜7.5μm、D(90%)=13.0〜16.0μmの範囲にある電池A1〜A4は、電池A5〜A7と比較して、より均一で堅固な結晶性の高い正極活物質が得られるので、より放電レート特性に優れていることが明らかになった。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のCo34とリチウム化合物から合成される正極活物質を用いたリチウム二次電池は、放電レート特性を損なうことなく、かつ高温環境下でのガス発生を抑制し、電流遮断機構の誤動作のないリチウム二次電池を得ることができ、その工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による非水電解液二次電池の縦断面図
【符号の説明】
1 電池ケース
2 封口板
3 絶縁ガスケット
4 極板群
5 正極板
5a 正極リード
6 負極板
6a 負極リード
7 セパレータ
8 絶縁板

Claims (1)

  1. リチウム化合物とCo34から合成される正極活物質を用いたリチウム二次電池であって、前記Co34のCuKα線によるX線回折での311面の半値幅が0.350deg.以上0.366deg.以下であり、Co 3 4 の粒度分布がD(30%)=2.5μm〜6.0μm、D(50%)=4.0μm〜7.5μm、D(90%)=13.0μm〜16.0μmの範囲であることを特徴とするリチウム二次電池。
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