JP3649134B2 - 車両用シート - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の乗員が着座可能な車両用の幅広のシートに関し、特に、このシート本体が前後位置調整可能であり、このシート本体にチャイルドシートを取り付けて、車両に前方への衝撃荷重が掛かったときに、シート本体の一定以上の変形を防止する車両用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、幼児を車両に乗車させる場合、シートベルト等での拘束は困難なため、シートにチャイルドシートを取り付けて、このチャイルドシートに幼児を着座させることが義務づけられた。
そして、このチャイルドシートで幼児を確実に拘束するために、チャイルドシートに掛かる荷重を想定して、該荷重に対してチャイルドシートを保持するシート自体が変形して幼児にダメージが発生しないように、シートが一定以上の強度を有するように要求されている。
【0003】
すなわち、現時点でのチャイルドシートを取り付けるシートのアンカー(緊締装置)に対する要求強度は、図7に示すように、シート510にダミーのチャイルドシート530を取り付けて、幼児の胸部に相当する点Pに前方へ8KNの荷重をかけたときの点Pの変位量を代替値として規定している。現在のISO(International Organization for Standardizaition;国際標準化機構)ではこの変位量は125mm以下とされている。
【0004】
ところで、例えば、図示はしないが、一人掛けの幅の狭いシートにチャイルドシート30を取り付ける場合は、該一人掛けシートは左右の脚部あるいはスライド装置の間隔が狭いため、チャイルドシート30の左右両側のアタッチメント33と一人掛けシートの左右の脚部あるいはスライド装置との距離が近い状態で車両床面に保持されるので、上記要求強度を満たすことは容易である。
しかし、複数の乗員が着座できる幅広のシート510では、図8に示すように、そのシート510の幅が広いため左右両端の脚部間の距離が大きいので、このシート510にチャイルドシート30を取り付けると、上記の要求強度を満足できない場合がある。
【0005】
上記要求強度を満たすためには、シート510の構成部材の寸法や板厚を増して強度増加を図ったり、シート510の幅方向の中間部に床面と接続する脚部を追加して構成部材の寸法や板厚を増加することなく強度を増加させること等が行われている。
具体的には、図8に示すように、シート510のシートクッション511のフレーム5111の左右両端に、側面視でハット形に形成したシートレッグ516の前後の脚部5161、5162で車両床面540に取り付けるとともに、さらにシート510の左右方向の中間部において、側面視でハット形に形成したシートレッグ616の前後の脚部6161、6162で車両床面540に取り付けたものがある。
【0006】
一方、チャイルドシート30は、図9(A)、(B)に示すように、チャイルドシート30に設けられた左右一対の固定用のアタッチメント33の先端部に形成された切欠き331と、チャイルドシート保持手段としてシート510のフレーム5111に取り付けられロック部5141がこの切欠き331内に入り込むフック514と、図示を省略した操作レバーを操作することにより上下方向に揺動して切欠き331に入り込んだロック部5141をアタッチメント33から外れないようにする断面L字状のロックレバー34とにより、シート510に取り付けられる。
【0007】
すなわち、図9(A)に示すロックレバー34が開いた状態でシート510のフック514のロック部5141に向けてアタッチメント33の先端部を移動させると、相対的にシート510のフック514のロック部5141がアタッチメント33の切欠き331に入り込み、その後、図9(B)に示すようにロックレバー34を閉じて該ロックレバー34の先端の鍵部をフック514のロック部5141に引っかけて、アタッチメント33の切欠き331とロックレバー34の先端の鍵部とにより、フック514のロック部5141を挟み込むように装着することにより、チャイルドシート30をシート510に保持する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなシート510の左右の脚部516の中間で、複数の脚部616により車両床面540に保持するタイプのシート510では、該脚部516、616が車両床面540に強固に取り付けられているため、シート510全体を車両前後にスライドして位置調整することができず、使い勝手がよくなかったという問題が生じていた。
【0009】
特に、近年、人気のある7、8人乗りのバン型乗用車では、最後部(3列目)の座席への乗降をし易くするために、あるいは2列目と3列目のシートを折り畳んで広い空間として利用するために、第2列目のシートを前後に位置調整可能な構成とする必要があり、この第2列目のシートを固定式にすると、上記の利用目的が達成できず、車両としての商品価値が低下するという問題が生じていた。
【0010】
このため、前後位置調整可能としたシートにチャイルドシートを取り付けたときの前述した要求強度を満たすためには、シートのフレームやスライドレールを強固なものにしなければならず、シートの重量やコストの増加をきたしていた。また、前後位置調整可能なシートにチャイルドシートを使用する場合は、チャイルドシートに着座した幼児の安全性を考慮して、前席とチャイルドシートとの間隙を十分確保するために、シートを前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でチャイルドシートを取り付けて使用するように指導されている。
【0011】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、重量やコストの増加をすることなく、前後位置調整可能なシートにチャイルドシートを取り付けても要求強度を満たすことができる車両用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る車両用シートは、複数の乗員が着座可能な幅広のシート本体と、該シート本体の左右両端に設けられ、シート本体を車両の床面に対して前後位置調整可能に支持するスライドレールと、シート本体に設けられ、前記シート本体に対してチャイルドシートを保持可能なチャイルドシート保持手段とを備える車両用シートにおいて、前記シート本体の幅方向中間部および車両の床面との間に、通常はシート本体と車両の床面とを互いに分離してシート本体の前後位置調整を許容し、シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でシート本体に前方への衝撃荷重が掛かったときはシート本体と車両床面とを互いに結合し、シート本体の一定以上の変形を阻止する変形阻止手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
よって、スライドレールに沿ってシート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でチャイルドシートをシート本体に取り付け、該チャイルドシートを介して前方への衝撃荷重が掛かってシート本体が変形したときに、シート本体と車両床面との間に設けた変形阻止手段により、一定以上の変形を阻止し、市場の要求する強度を達成する車両用シートを、重量、コストの増加をすることなく、提供することができる。
【0014】
また、本発明に係る車両用シートは、前記変形阻止手段が、前記シート本体の下面に設けられたシート側係合部材と、車両の床面上に設けられ、前記シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させたとき前記シート側係合部材と係合可能に対峙し、前記衝撃荷重によりシート本体が所定量変形したときに前記シート側係合部材と係合してそれ以上の変形を阻止する床面側係合部材とを備えることを特徴とする。
【0015】
よって、シート本体の下面にシート側係合部材を設け、シート本体を前後位置調整範囲の最後端位置に調整したときに前記シート側係合部材と対峙し、シート本体が所定量変形したときに前記シート側係合部材と係合してそれ以上の変形を阻止する床面側係合部材を床面に設けて変形阻止手段としたので、チャイルドシートに掛かる荷重をシート本体のシート側係合部材と車両床面の床面側係合部材を介して車両床部材に逃し、シート本体の所定量以上の変形を阻止できるため、シート本体の全体的な強度アップを必要とせず、軽量化を図りながら要求強度を満たすことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る車両用シートは、前記シート本体が、前枠、後枠、および左右の側枠で構成される略長方形のフレーム本体と、シート本体の幅方向中間部において前記前枠と前記後枠とを橋架する補強部材とで概ね構成されたシートクッションフレームを備え、前記チャイルドシート保持手段の一部が前記後枠に設けられており、前記シート側係合部材が前記補強部材に設けられていることを特徴とする
【0017】
よって、チャイルドシートに前方への衝撃荷重が掛かると、その衝撃荷重はチャイルドシート保持手段を介して後枠を前方に引っ張る方向に作用し、さらに後枠に接続された補強部材とスライドレールに分散され、補強部材に作用した荷重はシート側係合部材を介して車両床部材に逃し、スライドレールに作用した荷重はスライドロック装置を介して同じく車両床部材に逃されるので、シートクッションフレームに前枠と後枠とを橋架する補強部材を設け、この補強部材にシート側係合部材を設けるだけで荷重が分散でき、前後位置調整可能なシート本体にチャイルドシートを取り付けて必要な耐荷重を満たす車両用シートを得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る車両用シートの一の実施の形態について図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の車両用シートは、バン型自動車の第2列目のシートに適用したものである。
ここで、図1は、車両用シートのシートクッションフレームの斜視図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、チャイルドシートを取り付けた車両用シートの部分断面図である。
【0019】
(構成)
本発明に係る車両用シートの一の実施の形態の構成について説明する。
シート本体1は、図1、図2に示すように、車両の右側に二人、左側に一人が着座できる三人掛けのシートになっていて、シートクッション10と、シートクッション10に下端を回動可能に支持されたシートバック19とから構成されている。
【0020】
シート本体1は、シートクッション10の左右両端に設け、シート本体1を前後方向にスライドして位置を調整可能にするシートスライド装置13を介して、シートスライド装置13の前後に設けたシートレッグ15の前足151、後脚152により車両床面40に取り付けられる。
シートクッション10のシートクッションフレーム11は、シートクッション10の前端の幅方向に配設したパイプ状の前枠112と、後端の幅方向に配設したパイプ状の後枠113と、シートクッション10の左右端で前枠112と後枠113とを前後方向で連結して左右の側枠として機能するシートスライド装置15のアッパレール151とにより略長方形に形成されるフレーム本体111と、フレーム本体111の幅方向を略2対1に配分する中間部において、前枠112と後枠113とを車両の前後方向で橋架する下向きに開口するハット断面の補強部材12とで構成されている。
【0021】
そして、前端で前枠112の上部に、左右の側部では補強部材12のハット断面のフランジ部とアッパレール151の上面に載置して溶接されるシートパネル114と、シートパネル114の後端を補強するコ字形パイプ115によりシートクッション10の底部を構成している。
【0022】
シートスライド装置13は、前述したようにシートクッション10の左右両端下部に前後方向に設けたアッパレール131と、このアッパレール131に挿入されてその内部に設けたローラによりアッパレール131を前後位置調整可能に移動させるロアレール132と、図示は省略したがアッパレール131の前後方向の位置を調整した任意の位置で固定するスライドロック装置からなっている。
【0023】
すなわち、アッパレール131はコ字断面をその開口を互いに対向させて突き合わせ、下側のフランジを短くして下方に開口する略凹断面を呈している。
一方、ロアレール132は、上方に開口するコ字断面の上端の板端を左右に折り曲げてフランジとした略ハット断面を呈している。
そして、このロアレール132の左右のフランジがアッパレール131の凹断面内で包み込まれるように挿入されるとともに、これらアッパレール131とロアレール132の互いの底面に当接する複数のローラを挿入して、アッパレール131から受ける車両用シートや着座者の重量をこれらのローラで受けながらアッパレール131ひいては車両用シートを前後方向に移動し、その位置を調整できるようになっている。
なお、アッパレール131は前述のように、その前端で前枠112に、後端で後枠113に溶接されてフレーム本体111の側枠として機能している。
【0024】
後枠113の、シートクッション10の左右の各一人分の着座位置に対応した位置に、図1、図3に示すように、チャイルドシート保持手段としての左右一対のフック14が取り付けられている。
フック14は、丸棒を四角に折り曲げて矩形に形成し、側面視で一本の棒状に見える一端を半円形に形成して後枠113を把持するように後枠113に溶接され、他端をロック部141としてシートクッション10の表皮より若干出っ張るように後枠113に取り付けられている。
なお、フック14の、後枠113との取付は、図1に示すように、該後枠113の上面から半円形に巻き込む場合と、下面から巻き込む場合があるが、要するにフック14先端のロック部141の位置が一直線上にあれば、いずれでもかまわない。
【0025】
補強部材12はハット断面に形成され、そのハット断面の開口を下向きにして車両の前後方向に配設されており、その後方の下面に、ハット断面の開口を覆うように裏板121が溶接されている。
裏板121の下面に、図2、図3に示すように、車両床面40に向かって垂下する側面視ハット断面のシート側係合部材21が取り付けられている。
このシート側係合部材21は、図4の斜視図に示すように、側面視ハット断面の上方前後の取付部211、212で前記裏板121にボルトにより締付けられる。取付部211、212からハット断面の底部215に連続する前後の壁部213、214のうち、後方の壁部214から底部215に続いて矩形の窓216がL字状に穿設されている。
【0026】
シート側係合部材21の後方の壁部214の前面に、丸棒を角U字状に折り曲げて、その頂部を前記窓216のL字の角部を橋渡しするように溶接した係合ヒメール217が取り付けられている。
なお、このシート側係合部材21の前後の壁部213、214と底部215の左右端には、補強のフランジが設けられている。また、取付部211、212は裏板121の断面に沿うように、かつボルト1本で締め付けても回らないようにハット断面に絞られている。
【0027】
一方、シート本体1が前後位置調整範囲の最後部に位置したときに、前記シート側係合部材21の後部の壁部214の窓216から該シート側係合部材21のハット断面部に入り込み、前記係合ヒメール217と対峙する位置に臨むように、車両床面40に厚鋼板製の床面側係合部材25が取り付けられている。
このシート側係合部材21と床面側係合部材25とにより変形阻止手段20を構成する。
【0028】
床面側係合部材25は、図2乃至図4に示すように、側面視で鳶のくちばしの如く前方へ湾曲して突出するようにボルトにより車両床面40に取り付けられている。
すなわち、床面側係合部材25は、車両床面40へ取り付ける平面部251の左右両端から上方へ折り曲げられ、その途中から対称的に互いに対向する方向にZ字状に折り曲げられて、くちばし部252で両側の板が重合される。
くちばし部252の先端は、側面視で下方に突出した突出部253が形成され、該突出部253の後角部254で、シート本体1が変形したときに前記シート側係合部材21の係合ヒメール217に当接するようになっている。
【0029】
また、シートクッション10の前方で補強部材12の前端下部に、図2の断面図に示すように、該シートクッション10が前下方に変位したときに車両床面40に当接する菱形の保持ブラケット122が取り付けられている。
【0030】
(作用)
次に、上記のように構成した本発明に係る車両用シートの一の実施の形態の作用について説明する。
まず、チャイルドシート30をシート本体1に取り付けて使用するために、シート本体1を図2に示すように、そのシートスライド装置13により前後位置調整範囲の最後部に位置するように調整して、図示省略のスライドロック装置を作動させて、シート本体1を前後位置調整範囲の最後部の位置に固定する。
シート本体1を前後位置調整範囲の最後部の位置に調整すると、シートクッションフレーム11の中間の補強部材12の後部下面に設けたシート側係合部材21の後面の壁部214に設けた窓216から、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252が、シート側係合部材21の係合ヒメール217と対峙する上方の位置に窓216を通って入り込む。
【0031】
シート本体1が前後位置調整範囲の最後部の位置に調整された状態で、図3に示すように、従来と同様に、チャイルドシート30を、該チャイルドシート30の左右後方に突出する固定用アタッチメント33の先端部に形成された切欠き331に、シートクッション10の表皮からわずか突出しているフック14のロック部141が入り込むようにシート本体1のシートクッション10とシートバック19の間に差し込み、ロック部141がこの切り欠き331内に入り込んだらアタッチメント33のロックレバー34を下げてロック部141がアタッチメント33から外れないようにしてシート本体1に取り付ける。
【0032】
そして、車両に前方への衝撃荷重が加わると、その衝撃力によりチャイルドシート30に着座した幼児の体重とチャイルドシート30の自重とにより、アタッチメント33からフック14を介してシート本体1に前方への引張力が作用する。
シート本体1が前方へ引っ張られると、図示は省略したが、左右のシートスライド装置13やシートレッグ15が変形し、シート本体1は前方が下方に、後方が上方に移動する。すなわち、図5において反時計回りに回動する。
【0033】
そうすると、図5に示すように、シート本体1の前方は、シートクッション10の中間の補強部材12の前端に設けた保持ブラケット122の下面が車両床面40に当接して、それ以上の下方への移動を阻止される。
一方、シート本体1の後方は、前上方に持ち上げられるが、シートクッション10の中間の補強部材12の後方下部に設けたシート側係合部材21も前上方に持ち上げられ、シート側係合部材21に設けた係合ヒメール217と対峙している、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252の下方への突出部253の後側の後角部254に係合ヒメール217が係合して、シート本体1の後方のそれ以上の上方への移動が阻止される。
【0034】
実際の衝撃力を再現してシート本体1の強度を確認することは困難なため、上記と同様に図7に示すようにダミーのチャイルドシート530をシート本体1に取り付け、このダミーのチャイルドシート530の点Pに水平方向の8Kの荷重を加えて引っ張る。
すると、この水平方向の8KNの荷重により、前述と同様に、シートクッション10が図5に示すように反時計回りに回動して、シート本体1の前方は、シートクッション10の中間の補強部材12の前端に設けた保持ブラケット122の下面が車両床面40に当接して、それ以上の下方への移動を阻止され、シート本体1の後方は、前上方に持ち上げられるが、シートクッション10の中間の補強部材12の後方下部に設けたシート側係合部材21も前上方に持ち上げられ、シート側係合部材21に設けた係合ヒメール217と対峙している、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252の下方への突出部253の後側の後角部254に係合ヒメール217が係合して、シート本体1の後方のそれ以上の上方への移動が阻止される。
したがって、ダミーのチャイルドシート530に水平方向に8KNの荷重が掛かったときに、点Pの移動量が125mm以下となるように、シート側係合部材21と床面側係合部材25の位置関係を設定しておけば、実際のチャイルドシート30を装着したときのシート本体1に対する要求強度を満たすことになる。
【0035】
このように、シート本体1の中間部に設けた補強部材12の前端に、衝撃荷重によりシート本体1が前方へ移動したときに、車両床面40と当接する保持ブラケット122を設け、補強部材12の後方に、シート本体1を前後位置調整範囲の最後部位置に調整したときに、車両床面40に取り付けた鳶のくちばし状の床面側係合部材25と対峙するように、係合ヒメール217を有するシート側係合部材21を設けて、衝撃力によりシート本体1が前方へ移動したときに、シート側係合部材21の係合ヒメール217が床面側係合部材25の突出部253の後角部254と係合して、シート本体1のそれ以上の移動を阻止するようにしたので、シート本体を構成する各部材全体を補強することなく、かつ、前後位置調整可能なシート本体でチャイルドシート取付の要求強度を満足する幅広のシート本体を得ることが可能となった。
【0036】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施の形態では、シート側係合部材や床面側係合部材が鋼板製のもので示したが、これに限られず、図6に示すように丸棒を折り曲げて加工したものでも可能である。
また、前記実施の形態では、シート側係合部材がヒメール、床面側係合部材がメールのもので示したが、図6のように、シート側係合部材がメール、床面側係合部材がヒメールのものであってもよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、複数の乗員が着座可能な幅広のシート本体と、該シート本体の左右両端に設けられ、シート本体を車両の床面に対して前後位置調整可能に支持するスライドレールと、シート本体に設けられ、前記シート本体に対してチャイルドシートを保持可能なチャイルドシート保持手段とを備える車両用シートにおいて、前記シート本体の幅方向中間部および車両の床面との間に、通常はシート本体と車両の床面とを互いに分離してシート本体の前後位置調整を許容し、シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でシート本体に前方への衝撃荷重が掛かったときはシート本体と車両床面とを互いに結合し、シート本体の一定以上の変形を阻止する変形阻止手段を設けたので、シートの重量を増加することなく、チャイルドシートを取り付けたときの要求強度を満足する前後位置調整可能な幅広シートを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートにチャイルドシートを取り付けた状態の部分側面断面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートの変形阻止手段の斜視図である。
【図5】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートに衝撃荷重が掛かったときの図1のII−II線に沿う断面図である。
【図6】本発明の車両用シートの変形阻止手段の、他の実施の形態の斜視図である。
【図7】チャイルドシートを取り付けた車両用シートの強度要件を確認するための試験方法を示す概略図である。
【図8】チャイルドシートを取り付ける従来の幅広シートの斜視図である。
【図9】チャイルドシートのアタッチメントの作用説明図で、(A)は未係合状態、(B)は係合状態を示す。
【符号の説明】
1 シート本体
10 シートクッション
11 シートクッションフレーム
111 フレーム本体
12 補強部材
13 シートスライド装置
14 フック(チャイルドシート保持手段))
15 シートレッグ
20 変形阻止手段
21 シート側係合部材
25 床面側係合部材
30 チャイルドシート
40 車両床面
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の乗員が着座可能な車両用の幅広のシートに関し、特に、このシート本体が前後位置調整可能であり、このシート本体にチャイルドシートを取り付けて、車両に前方への衝撃荷重が掛かったときに、シート本体の一定以上の変形を防止する車両用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、幼児を車両に乗車させる場合、シートベルト等での拘束は困難なため、シートにチャイルドシートを取り付けて、このチャイルドシートに幼児を着座させることが義務づけられた。
そして、このチャイルドシートで幼児を確実に拘束するために、チャイルドシートに掛かる荷重を想定して、該荷重に対してチャイルドシートを保持するシート自体が変形して幼児にダメージが発生しないように、シートが一定以上の強度を有するように要求されている。
【0003】
すなわち、現時点でのチャイルドシートを取り付けるシートのアンカー(緊締装置)に対する要求強度は、図7に示すように、シート510にダミーのチャイルドシート530を取り付けて、幼児の胸部に相当する点Pに前方へ8KNの荷重をかけたときの点Pの変位量を代替値として規定している。現在のISO(International Organization for Standardizaition;国際標準化機構)ではこの変位量は125mm以下とされている。
【0004】
ところで、例えば、図示はしないが、一人掛けの幅の狭いシートにチャイルドシート30を取り付ける場合は、該一人掛けシートは左右の脚部あるいはスライド装置の間隔が狭いため、チャイルドシート30の左右両側のアタッチメント33と一人掛けシートの左右の脚部あるいはスライド装置との距離が近い状態で車両床面に保持されるので、上記要求強度を満たすことは容易である。
しかし、複数の乗員が着座できる幅広のシート510では、図8に示すように、そのシート510の幅が広いため左右両端の脚部間の距離が大きいので、このシート510にチャイルドシート30を取り付けると、上記の要求強度を満足できない場合がある。
【0005】
上記要求強度を満たすためには、シート510の構成部材の寸法や板厚を増して強度増加を図ったり、シート510の幅方向の中間部に床面と接続する脚部を追加して構成部材の寸法や板厚を増加することなく強度を増加させること等が行われている。
具体的には、図8に示すように、シート510のシートクッション511のフレーム5111の左右両端に、側面視でハット形に形成したシートレッグ516の前後の脚部5161、5162で車両床面540に取り付けるとともに、さらにシート510の左右方向の中間部において、側面視でハット形に形成したシートレッグ616の前後の脚部6161、6162で車両床面540に取り付けたものがある。
【0006】
一方、チャイルドシート30は、図9(A)、(B)に示すように、チャイルドシート30に設けられた左右一対の固定用のアタッチメント33の先端部に形成された切欠き331と、チャイルドシート保持手段としてシート510のフレーム5111に取り付けられロック部5141がこの切欠き331内に入り込むフック514と、図示を省略した操作レバーを操作することにより上下方向に揺動して切欠き331に入り込んだロック部5141をアタッチメント33から外れないようにする断面L字状のロックレバー34とにより、シート510に取り付けられる。
【0007】
すなわち、図9(A)に示すロックレバー34が開いた状態でシート510のフック514のロック部5141に向けてアタッチメント33の先端部を移動させると、相対的にシート510のフック514のロック部5141がアタッチメント33の切欠き331に入り込み、その後、図9(B)に示すようにロックレバー34を閉じて該ロックレバー34の先端の鍵部をフック514のロック部5141に引っかけて、アタッチメント33の切欠き331とロックレバー34の先端の鍵部とにより、フック514のロック部5141を挟み込むように装着することにより、チャイルドシート30をシート510に保持する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このようなシート510の左右の脚部516の中間で、複数の脚部616により車両床面540に保持するタイプのシート510では、該脚部516、616が車両床面540に強固に取り付けられているため、シート510全体を車両前後にスライドして位置調整することができず、使い勝手がよくなかったという問題が生じていた。
【0009】
特に、近年、人気のある7、8人乗りのバン型乗用車では、最後部(3列目)の座席への乗降をし易くするために、あるいは2列目と3列目のシートを折り畳んで広い空間として利用するために、第2列目のシートを前後に位置調整可能な構成とする必要があり、この第2列目のシートを固定式にすると、上記の利用目的が達成できず、車両としての商品価値が低下するという問題が生じていた。
【0010】
このため、前後位置調整可能としたシートにチャイルドシートを取り付けたときの前述した要求強度を満たすためには、シートのフレームやスライドレールを強固なものにしなければならず、シートの重量やコストの増加をきたしていた。また、前後位置調整可能なシートにチャイルドシートを使用する場合は、チャイルドシートに着座した幼児の安全性を考慮して、前席とチャイルドシートとの間隙を十分確保するために、シートを前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でチャイルドシートを取り付けて使用するように指導されている。
【0011】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、重量やコストの増加をすることなく、前後位置調整可能なシートにチャイルドシートを取り付けても要求強度を満たすことができる車両用シートを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る車両用シートは、複数の乗員が着座可能な幅広のシート本体と、該シート本体の左右両端に設けられ、シート本体を車両の床面に対して前後位置調整可能に支持するスライドレールと、シート本体に設けられ、前記シート本体に対してチャイルドシートを保持可能なチャイルドシート保持手段とを備える車両用シートにおいて、前記シート本体の幅方向中間部および車両の床面との間に、通常はシート本体と車両の床面とを互いに分離してシート本体の前後位置調整を許容し、シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でシート本体に前方への衝撃荷重が掛かったときはシート本体と車両床面とを互いに結合し、シート本体の一定以上の変形を阻止する変形阻止手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
よって、スライドレールに沿ってシート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でチャイルドシートをシート本体に取り付け、該チャイルドシートを介して前方への衝撃荷重が掛かってシート本体が変形したときに、シート本体と車両床面との間に設けた変形阻止手段により、一定以上の変形を阻止し、市場の要求する強度を達成する車両用シートを、重量、コストの増加をすることなく、提供することができる。
【0014】
また、本発明に係る車両用シートは、前記変形阻止手段が、前記シート本体の下面に設けられたシート側係合部材と、車両の床面上に設けられ、前記シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させたとき前記シート側係合部材と係合可能に対峙し、前記衝撃荷重によりシート本体が所定量変形したときに前記シート側係合部材と係合してそれ以上の変形を阻止する床面側係合部材とを備えることを特徴とする。
【0015】
よって、シート本体の下面にシート側係合部材を設け、シート本体を前後位置調整範囲の最後端位置に調整したときに前記シート側係合部材と対峙し、シート本体が所定量変形したときに前記シート側係合部材と係合してそれ以上の変形を阻止する床面側係合部材を床面に設けて変形阻止手段としたので、チャイルドシートに掛かる荷重をシート本体のシート側係合部材と車両床面の床面側係合部材を介して車両床部材に逃し、シート本体の所定量以上の変形を阻止できるため、シート本体の全体的な強度アップを必要とせず、軽量化を図りながら要求強度を満たすことができる。
【0016】
さらに、本発明に係る車両用シートは、前記シート本体が、前枠、後枠、および左右の側枠で構成される略長方形のフレーム本体と、シート本体の幅方向中間部において前記前枠と前記後枠とを橋架する補強部材とで概ね構成されたシートクッションフレームを備え、前記チャイルドシート保持手段の一部が前記後枠に設けられており、前記シート側係合部材が前記補強部材に設けられていることを特徴とする
【0017】
よって、チャイルドシートに前方への衝撃荷重が掛かると、その衝撃荷重はチャイルドシート保持手段を介して後枠を前方に引っ張る方向に作用し、さらに後枠に接続された補強部材とスライドレールに分散され、補強部材に作用した荷重はシート側係合部材を介して車両床部材に逃し、スライドレールに作用した荷重はスライドロック装置を介して同じく車両床部材に逃されるので、シートクッションフレームに前枠と後枠とを橋架する補強部材を設け、この補強部材にシート側係合部材を設けるだけで荷重が分散でき、前後位置調整可能なシート本体にチャイルドシートを取り付けて必要な耐荷重を満たす車両用シートを得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る車両用シートの一の実施の形態について図面を参照して以下に説明する。本実施の形態の車両用シートは、バン型自動車の第2列目のシートに適用したものである。
ここで、図1は、車両用シートのシートクッションフレームの斜視図であり、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、チャイルドシートを取り付けた車両用シートの部分断面図である。
【0019】
(構成)
本発明に係る車両用シートの一の実施の形態の構成について説明する。
シート本体1は、図1、図2に示すように、車両の右側に二人、左側に一人が着座できる三人掛けのシートになっていて、シートクッション10と、シートクッション10に下端を回動可能に支持されたシートバック19とから構成されている。
【0020】
シート本体1は、シートクッション10の左右両端に設け、シート本体1を前後方向にスライドして位置を調整可能にするシートスライド装置13を介して、シートスライド装置13の前後に設けたシートレッグ15の前足151、後脚152により車両床面40に取り付けられる。
シートクッション10のシートクッションフレーム11は、シートクッション10の前端の幅方向に配設したパイプ状の前枠112と、後端の幅方向に配設したパイプ状の後枠113と、シートクッション10の左右端で前枠112と後枠113とを前後方向で連結して左右の側枠として機能するシートスライド装置15のアッパレール151とにより略長方形に形成されるフレーム本体111と、フレーム本体111の幅方向を略2対1に配分する中間部において、前枠112と後枠113とを車両の前後方向で橋架する下向きに開口するハット断面の補強部材12とで構成されている。
【0021】
そして、前端で前枠112の上部に、左右の側部では補強部材12のハット断面のフランジ部とアッパレール151の上面に載置して溶接されるシートパネル114と、シートパネル114の後端を補強するコ字形パイプ115によりシートクッション10の底部を構成している。
【0022】
シートスライド装置13は、前述したようにシートクッション10の左右両端下部に前後方向に設けたアッパレール131と、このアッパレール131に挿入されてその内部に設けたローラによりアッパレール131を前後位置調整可能に移動させるロアレール132と、図示は省略したがアッパレール131の前後方向の位置を調整した任意の位置で固定するスライドロック装置からなっている。
【0023】
すなわち、アッパレール131はコ字断面をその開口を互いに対向させて突き合わせ、下側のフランジを短くして下方に開口する略凹断面を呈している。
一方、ロアレール132は、上方に開口するコ字断面の上端の板端を左右に折り曲げてフランジとした略ハット断面を呈している。
そして、このロアレール132の左右のフランジがアッパレール131の凹断面内で包み込まれるように挿入されるとともに、これらアッパレール131とロアレール132の互いの底面に当接する複数のローラを挿入して、アッパレール131から受ける車両用シートや着座者の重量をこれらのローラで受けながらアッパレール131ひいては車両用シートを前後方向に移動し、その位置を調整できるようになっている。
なお、アッパレール131は前述のように、その前端で前枠112に、後端で後枠113に溶接されてフレーム本体111の側枠として機能している。
【0024】
後枠113の、シートクッション10の左右の各一人分の着座位置に対応した位置に、図1、図3に示すように、チャイルドシート保持手段としての左右一対のフック14が取り付けられている。
フック14は、丸棒を四角に折り曲げて矩形に形成し、側面視で一本の棒状に見える一端を半円形に形成して後枠113を把持するように後枠113に溶接され、他端をロック部141としてシートクッション10の表皮より若干出っ張るように後枠113に取り付けられている。
なお、フック14の、後枠113との取付は、図1に示すように、該後枠113の上面から半円形に巻き込む場合と、下面から巻き込む場合があるが、要するにフック14先端のロック部141の位置が一直線上にあれば、いずれでもかまわない。
【0025】
補強部材12はハット断面に形成され、そのハット断面の開口を下向きにして車両の前後方向に配設されており、その後方の下面に、ハット断面の開口を覆うように裏板121が溶接されている。
裏板121の下面に、図2、図3に示すように、車両床面40に向かって垂下する側面視ハット断面のシート側係合部材21が取り付けられている。
このシート側係合部材21は、図4の斜視図に示すように、側面視ハット断面の上方前後の取付部211、212で前記裏板121にボルトにより締付けられる。取付部211、212からハット断面の底部215に連続する前後の壁部213、214のうち、後方の壁部214から底部215に続いて矩形の窓216がL字状に穿設されている。
【0026】
シート側係合部材21の後方の壁部214の前面に、丸棒を角U字状に折り曲げて、その頂部を前記窓216のL字の角部を橋渡しするように溶接した係合ヒメール217が取り付けられている。
なお、このシート側係合部材21の前後の壁部213、214と底部215の左右端には、補強のフランジが設けられている。また、取付部211、212は裏板121の断面に沿うように、かつボルト1本で締め付けても回らないようにハット断面に絞られている。
【0027】
一方、シート本体1が前後位置調整範囲の最後部に位置したときに、前記シート側係合部材21の後部の壁部214の窓216から該シート側係合部材21のハット断面部に入り込み、前記係合ヒメール217と対峙する位置に臨むように、車両床面40に厚鋼板製の床面側係合部材25が取り付けられている。
このシート側係合部材21と床面側係合部材25とにより変形阻止手段20を構成する。
【0028】
床面側係合部材25は、図2乃至図4に示すように、側面視で鳶のくちばしの如く前方へ湾曲して突出するようにボルトにより車両床面40に取り付けられている。
すなわち、床面側係合部材25は、車両床面40へ取り付ける平面部251の左右両端から上方へ折り曲げられ、その途中から対称的に互いに対向する方向にZ字状に折り曲げられて、くちばし部252で両側の板が重合される。
くちばし部252の先端は、側面視で下方に突出した突出部253が形成され、該突出部253の後角部254で、シート本体1が変形したときに前記シート側係合部材21の係合ヒメール217に当接するようになっている。
【0029】
また、シートクッション10の前方で補強部材12の前端下部に、図2の断面図に示すように、該シートクッション10が前下方に変位したときに車両床面40に当接する菱形の保持ブラケット122が取り付けられている。
【0030】
(作用)
次に、上記のように構成した本発明に係る車両用シートの一の実施の形態の作用について説明する。
まず、チャイルドシート30をシート本体1に取り付けて使用するために、シート本体1を図2に示すように、そのシートスライド装置13により前後位置調整範囲の最後部に位置するように調整して、図示省略のスライドロック装置を作動させて、シート本体1を前後位置調整範囲の最後部の位置に固定する。
シート本体1を前後位置調整範囲の最後部の位置に調整すると、シートクッションフレーム11の中間の補強部材12の後部下面に設けたシート側係合部材21の後面の壁部214に設けた窓216から、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252が、シート側係合部材21の係合ヒメール217と対峙する上方の位置に窓216を通って入り込む。
【0031】
シート本体1が前後位置調整範囲の最後部の位置に調整された状態で、図3に示すように、従来と同様に、チャイルドシート30を、該チャイルドシート30の左右後方に突出する固定用アタッチメント33の先端部に形成された切欠き331に、シートクッション10の表皮からわずか突出しているフック14のロック部141が入り込むようにシート本体1のシートクッション10とシートバック19の間に差し込み、ロック部141がこの切り欠き331内に入り込んだらアタッチメント33のロックレバー34を下げてロック部141がアタッチメント33から外れないようにしてシート本体1に取り付ける。
【0032】
そして、車両に前方への衝撃荷重が加わると、その衝撃力によりチャイルドシート30に着座した幼児の体重とチャイルドシート30の自重とにより、アタッチメント33からフック14を介してシート本体1に前方への引張力が作用する。
シート本体1が前方へ引っ張られると、図示は省略したが、左右のシートスライド装置13やシートレッグ15が変形し、シート本体1は前方が下方に、後方が上方に移動する。すなわち、図5において反時計回りに回動する。
【0033】
そうすると、図5に示すように、シート本体1の前方は、シートクッション10の中間の補強部材12の前端に設けた保持ブラケット122の下面が車両床面40に当接して、それ以上の下方への移動を阻止される。
一方、シート本体1の後方は、前上方に持ち上げられるが、シートクッション10の中間の補強部材12の後方下部に設けたシート側係合部材21も前上方に持ち上げられ、シート側係合部材21に設けた係合ヒメール217と対峙している、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252の下方への突出部253の後側の後角部254に係合ヒメール217が係合して、シート本体1の後方のそれ以上の上方への移動が阻止される。
【0034】
実際の衝撃力を再現してシート本体1の強度を確認することは困難なため、上記と同様に図7に示すようにダミーのチャイルドシート530をシート本体1に取り付け、このダミーのチャイルドシート530の点Pに水平方向の8Kの荷重を加えて引っ張る。
すると、この水平方向の8KNの荷重により、前述と同様に、シートクッション10が図5に示すように反時計回りに回動して、シート本体1の前方は、シートクッション10の中間の補強部材12の前端に設けた保持ブラケット122の下面が車両床面40に当接して、それ以上の下方への移動を阻止され、シート本体1の後方は、前上方に持ち上げられるが、シートクッション10の中間の補強部材12の後方下部に設けたシート側係合部材21も前上方に持ち上げられ、シート側係合部材21に設けた係合ヒメール217と対峙している、車両床面40に取り付けられた床面側係合部材25のくちばし部252の下方への突出部253の後側の後角部254に係合ヒメール217が係合して、シート本体1の後方のそれ以上の上方への移動が阻止される。
したがって、ダミーのチャイルドシート530に水平方向に8KNの荷重が掛かったときに、点Pの移動量が125mm以下となるように、シート側係合部材21と床面側係合部材25の位置関係を設定しておけば、実際のチャイルドシート30を装着したときのシート本体1に対する要求強度を満たすことになる。
【0035】
このように、シート本体1の中間部に設けた補強部材12の前端に、衝撃荷重によりシート本体1が前方へ移動したときに、車両床面40と当接する保持ブラケット122を設け、補強部材12の後方に、シート本体1を前後位置調整範囲の最後部位置に調整したときに、車両床面40に取り付けた鳶のくちばし状の床面側係合部材25と対峙するように、係合ヒメール217を有するシート側係合部材21を設けて、衝撃力によりシート本体1が前方へ移動したときに、シート側係合部材21の係合ヒメール217が床面側係合部材25の突出部253の後角部254と係合して、シート本体1のそれ以上の移動を阻止するようにしたので、シート本体を構成する各部材全体を補強することなく、かつ、前後位置調整可能なシート本体でチャイルドシート取付の要求強度を満足する幅広のシート本体を得ることが可能となった。
【0036】
なお、本発明は前記実施の形態のものに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施の形態では、シート側係合部材や床面側係合部材が鋼板製のもので示したが、これに限られず、図6に示すように丸棒を折り曲げて加工したものでも可能である。
また、前記実施の形態では、シート側係合部材がヒメール、床面側係合部材がメールのもので示したが、図6のように、シート側係合部材がメール、床面側係合部材がヒメールのものであってもよい。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、複数の乗員が着座可能な幅広のシート本体と、該シート本体の左右両端に設けられ、シート本体を車両の床面に対して前後位置調整可能に支持するスライドレールと、シート本体に設けられ、前記シート本体に対してチャイルドシートを保持可能なチャイルドシート保持手段とを備える車両用シートにおいて、前記シート本体の幅方向中間部および車両の床面との間に、通常はシート本体と車両の床面とを互いに分離してシート本体の前後位置調整を許容し、シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でシート本体に前方への衝撃荷重が掛かったときはシート本体と車両床面とを互いに結合し、シート本体の一定以上の変形を阻止する変形阻止手段を設けたので、シートの重量を増加することなく、チャイルドシートを取り付けたときの要求強度を満足する前後位置調整可能な幅広シートを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートのシートクッションフレームの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートにチャイルドシートを取り付けた状態の部分側面断面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートの変形阻止手段の斜視図である。
【図5】本発明の一の実施の形態に係る車両用シートに衝撃荷重が掛かったときの図1のII−II線に沿う断面図である。
【図6】本発明の車両用シートの変形阻止手段の、他の実施の形態の斜視図である。
【図7】チャイルドシートを取り付けた車両用シートの強度要件を確認するための試験方法を示す概略図である。
【図8】チャイルドシートを取り付ける従来の幅広シートの斜視図である。
【図9】チャイルドシートのアタッチメントの作用説明図で、(A)は未係合状態、(B)は係合状態を示す。
【符号の説明】
1 シート本体
10 シートクッション
11 シートクッションフレーム
111 フレーム本体
12 補強部材
13 シートスライド装置
14 フック(チャイルドシート保持手段))
15 シートレッグ
20 変形阻止手段
21 シート側係合部材
25 床面側係合部材
30 チャイルドシート
40 車両床面
Claims (3)
- 複数の乗員が着座可能な幅広のシート本体と、該シート本体の左右両端に設けられ、シート本体を車両の床面に対して前後位置調整可能に支持するスライドレールと、シート本体に設けられ、前記シート本体に対してチャイルドシートを保持可能なチャイルドシート保持手段とを備える車両用シートにおいて、
前記シート本体の幅方向中間部および車両の床面との間に、通常はシート本体と車両の床面とを互いに分離してシート本体の前後位置調整を許容し、シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させた状態でシート本体に前方への衝撃荷重が掛かったときはシート本体と車両床面とを互いに結合し、シート本体の一定以上の変形を阻止する変形阻止手段を設けたことを特徴とする車両用シート。 - 請求項1に記載の車両用シートにおいて、
前記変形阻止手段は、
前記シート本体の下面に設けられたシート側係合部材と、
車両の床面上に設けられ、前記シート本体を前後位置調整範囲の最後端に位置させたとき前記シート側係合部材と係合可能に対峙し、前記衝撃荷重によりシート本体が所定量変形したときに前記シート側係合部材と係合してそれ以上の変形を阻止する床面側係合部材とを備えることを特徴とする車両用シート。 - 請求項2に記載の車両用シートにおいて、
前記シート本体は、前枠、後枠、および左右の側枠で構成される略長方形のフレーム本体と、シート本体の幅方向中間部において前記前枠と前記後枠とを橋架する補強部材とで概ね構成されたシートクッションフレームを備え、前記チャイルドシート保持手段の一部が前記後枠に設けられており、前記シート側係合部材が前記補強部材に設けられていることを特徴とする車両用シート。
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