JP3648877B2 - 車両用パワーユニットの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンからの動力を有段自動変速機に伝達するロックアップ機構付き流体伝動装置を備え、該流体伝動装置がロックアップ状態にある変速時は、該流体伝動装置のロックアップを解除するようにした車両用パワーユニットの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両用パワーユニットは、一般に、トルク増大機能やトルク変動吸収機能を必要とするために流体伝動装置を備えるが、流体伝動装置は入出力要素間でスリップを発生することから、動力伝達効率の変動を免れない。
【0003】
そこで、今日の流体伝動装置には、トルク増大機能やトルク変動吸収機能を必要としない運転状態に移行するとき、入出力要素間をスリップ制限しないコンバータ状態から、入出力要素間を機械的に直結したロックアップ状態に切り換えることができるロックアップ機構を設けることが多い。
【0004】
こうした流体伝動装置のロックアップ制御に際し、複数の変速段にそれぞれ個々にロックアップ領域を定める場合、ロックアップ状態のままでの変速が発生する。当該変速に際しては、流体伝動装置によるトルク変動吸収機能を利用できずに大きな変速ショックが生じることから、ロックアップ領域であっても変速中においては流体伝動装置を一時的にロックアップ解除するのが一般的である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、例えば、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時においては、変速のためにロックアップを解除しようとすると、エンジン出力が高いために、ロックアップ解除に伴うエンジンの吹け上がりが発生し、運転者に違和感を与えることがある。
【0006】
また、流体伝動装置がエンジンからの動力を伝達する有段自動変速機には、例えば、特開平7−27220号公報に記載されるように、従来の変速レンジ以外のマニュアル変速レンジを選択している間は、運転者によるマニュアル変速指令に対応したマニュアル変速段を選択可能にしたものがあるが、こうした構成の有段自動変速機は特に、低い車速で、しかも高いエンジン出力の場合でもロックアップ状態となり得るために、上記した問題が顕著である。
【0007】
本発明は、こうした事実に鑑みなされたもので、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速のために、流体伝動装置の入出力要素間を直結するロックアップ状態からこの直結が解かれたコンバータ状態になるときに発生するエンジンの吹け上がりを軽減して、上記問題を解消することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的から、本発明である、請求項1に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、エンジンからの動力を有段自動変速機に伝達するロックアップ機構付き流体伝動装置を備え、該流体伝動装置の入出力要素間を直結するロックアップ状態における変速時は、該流体伝動装置を、入出力要素間の直結が解かれたコンバータ状態にするようにした車両において、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時のロックアップ解除を行う場合、このロックアップ解除に伴うエンジンの吹け上がりを防止するためのエンジン出力低下の開始を、前記ロックアップ解除の開始に同期させると共に、前記アクセルペダル踏み込みを伴う変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも遅延させるように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明である、請求項2に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、請求項1において、前記有段自動変速機は、マニュアル変速レンジを選択する間は運転者によるマニュアル変速指令に対応したマニュアル変速段を選択可能にする構成であって、前記アクセルペダルの踏み込みを伴う変速は、マニュアル変速レンジを選択したときのマニュアル変速指令に対応した変速であることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、本発明である、請求項3に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、請求項1または2において、前記エンジン出力低下を、前記アクセルペダルの踏み込みを伴う変速中に終了させるように構成したことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の効果】
本発明である、請求項1に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時のロックアップ解除を行う場合、このロックアップ解除に伴うエンジンの吹け上がりを防止するためにエンジン出力を低下させ、しかも、このエンジン出力低下の開始をロックアップ解除の開始に同期させるようにしたから、
アクセルペダルの踏み込みを伴う変速のために、流体伝動装置のロックアップを解除するときに発生するエンジンの吹け上がりを防止でき、運転者に違和感を与えない。
【0013】
また、本発明である、請求項に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、前記アクセルペダルの踏み込みを伴う変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも遅延させるようにしたから、以下の作用効果が得られる。ロックアップ解除の動作中は、ロックアップクラッチ間で、少なからず滑りによる引き擦りが起きる。しかも、ロックアップ解除動作中に、変速を行うと該変速によるトルク変動が流体伝動装置の出力要素側から伝達され、ロックアップクラッチ間の引き擦りが大きくなることもある。そこで、変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも遅延させると、ロックアップ解除動作中、流体伝動装置の出力要素側には、変速によるトルク変動を伝達しない。従って、ロックアップ解除動作中に変速することにより起こる大きな引き擦りを防止し、ロックアップクラッチのフェーシングを保護することでロックアップ機構の耐久性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明である、請求項に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、請求項において、請求項1において、前記アクセルペダルの踏み込みを伴う変速は、運転者によるマニュアル変速指令に対応したマニュアル変速を可能にするマニュアル変速レンジを選択したときの変速であるから、以下の作用効果が得られる。マニュアル変速レンジによる変速では、車速が低くしかもエンジン出力の高い領域でもロックアップ可能なため、特に、このロックアップを解除するときのエンジンの吹け上がりは大きい。従って、マニュアル変速レンジによる変速では、請求項1の作用効果がさらに顕著なものになる。
【0015】
加えて、本発明である、請求項に係る、車両用パワーユニットの制御装置は、請求項1乃至のいずれか一項において、前記エンジン出力低下を、前記アクセルペダルの踏み込みを伴う変速中に終了させるようにしたから、該エンジン出力低下を終了しエンジン出力が再び上昇するときに起こるショックを、変速ショックとして吸収でき、運転者に違和感を与えない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を、添付した図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による車両用パワーユニットの制御装置を示し、1はエンジンコントローラ100によって制御可能なエンジン、2は有段自動変速機である。有段自動変速機2は、基本的には本願出願人が昭和62年3月に発行した「RE4R01A型オートマチックトランスミッション整備要領書」(A261C07)に記載のものと同じとし、流体伝動装置であるトルクコンバータ3を経てエンジン1の動力を入力され、選択変速段に応じたギア比で入力回転を変速し、出力軸4に伝達するものとする。
【0017】
このとき、有段自動変速機2は、コントロールバルブユニット5内の第一シフトソレノイド6及び第二シフトソレノイド7をON,OFF制御することにより第1速〜第4速を選択可能にし、また、トルクコンバータ3は、前記ユニット5内のロックアップソレノイド8をON,OFF制御することで、入出力要素間を直結するロックアップ状態から入出力要素間の直結が解かれたコンバータ状態にすることができる。
【0018】
これらのON,OFF信号は、コントローラ200により制御され、このコントローラ200には、運転者が操作するシフトレバー9からの位置信号を入力するほか、エンジン1のスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ 10からの信号及び、車速VSPを検出する車速センサ11からの信号をそれぞれ入力する。
【0019】
シフトレバー9は、駐車(P)レンジ位置と、後退走行(R)レンジ位置と、中立(N)レンジ位置と、前進自動変速(D)レンジ位置と、エンジンブレーキ(L)レンジ位置とを一直線上に配置した自動変速レンジに、該変速レンジからオフセットしたマニュアル変速レンジ(M)を有するレンジ上にある。マニュアル変速レンジ(M)では、シフトレバー9をアップシフト(+)位置とダウンシフト(−)位置との間に自己復帰形式に弾支し、運転者は、1段階高速側へのアップシフト変速を希望する度にシフトレバー9をアップシフト(+)位置にし、1段階低速側へのダウンシフト変速を希望する度にシフトレバー9をダウンシフト(−)位置にして、マニュアル変速指令をコントローラ200に出力するものとする。
【0020】
有段自動変速機2では、シフトレバー9がマニュアル変速レンジ(M)か否かで、コントローラ200により異なる変速制御が行われる。
マニュアル変速レンジ(M)ではないときは、自動変速レンジに基づく自動変速を行い、この自動変速は、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ及び、Lレンジにおいて、前記文献におけるとほぼ同様の変速制御及びロックアップ制御を行うものとする。
但し、Lレンジを前記文献では1レンジと記述している。
【0021】
ここで、自動変速レンジに基づく自動変速の代表として、Dレンジにおける変速制御を説明すると、コントローラ200は図4に例示する変速マップ(実線がアップシフト変速線、破線がダウンシフト変速線を示す)をもとに、車速VSP及びスロットル開度TVOから好適な変速段を検索する。次いで、現在の選択変速段が好適な変速段と一致しているか否かを判定し、不一致なら好適変速段への変速が実行されるようシフトソレノイド6,7のON,OFFを切り換え、一致していればシフトソレノイド6,7のON,OFFを現在のままに保つことにより、図4のDレンジ変速マップに沿った変速制御を自動的に実行する。
【0022】
他方、マニュアル変速レンジ(M)を選択したものと判定した場合、コントローラ200は図5に例示する各変速マップM1 〜M4 (実線がアップシフト変速線、破線がダウンシフト変速線を示す)をもとに、シフトレバー9のマニュアル変速指令から好適な変速段を検索する。但し、これら変速マップM1 〜M4 上にはそれぞれ、マニュアル変速指令により使用可能な変速段の領域を示す。
【0023】
DレンジからMレンジに切り換えた当初は、当該切り換え直前の変速段を維持するようにシフトソレノイド6,7のON,OFFは変更せずにおき、運転者がシフトレバー9をMレンジにした後は、アップシフト(+)位置にしてマニュアルアップシフト変速指令を発する度に、1段階高速側へのマニュアルアップシフト変速を行わせ、逆に運転者がシフトレバー9をダウンシフト(−)位置にしてマニュアルダウンシフト変速指令をを発する度に、1段階低速側へのマニュアルダウンシフトを行わせるように、シフトソレノイド6,7のON,OFFを切り換えるものとする。
【0024】
また、コントローラ200は、マニュアル変速(M)レンジにおけるロックアップ制御を、図5の一点鎖線に示すロックアップ領域線Lに基づいて行う。
即ち、2速選択時は、マップM2 に示すように、ロックアップ領域線L2 の右側領域において、つまり、車速VSPがロックアップ車速V2 (=34)以上である時に、ロックアップソレノイド8をONしてトルクコンバータ3をロックアップ状態にし、3速選択時は、マップM3 に示すように、ロックアップ領域線 L3 の右側領域において、つまり、車速VSPがロックアップ車速V3 (=52)以上である時に、ロックアップソレノイド8をONしてトルクコンバータ3をロックアップ状態にし、4速選択時は、マップM4 に示すように、ロックアップ領域線L4 の右側領域において、つまり、車速VSPがロックアップ車速V4 (=75)以上である時に、ロックアップソレノイド8をONしてトルクコンバータ3をロックアップ状態にするものとする。
【0025】
なお、マニュアル1速選択中は、マップM1 に示すように、トルクコンバータ3をロックアップしないこととし、また、ロックアップ車速V2 〜V4 は、マニュアル2速〜4速選択時に同じエンジン回転数でロックアップが開始されるように、低速側変速段のロックアップ車速ほど低く設定する。
【0026】
こうしたロックアップ車速V2 〜V4 の設定によれば、高いロックアップ車速V4 より低い車速のもとでも、マニュアル3速なら当該車速がロックアップ車速V3 より低くなるまでの間は、マニュアル3速でのロックアップが可能となり、当該変速段とトルクコンバータ3のロックアップ状態とで大きなエンジンブレーキを発生させることができ、また、マニュアル2速なら当該車速がロックアップ車速V2 より低くなるまでの間は、マニュアル2速でのロックアップが可能となり、当該変速段とトルクコンバータ3のロックアップ状態とで大きなエンジンブレーキを発生させることができ、エンジンブレーキを発生させ得る領域を拡大することが可能となる。
【0027】
しかし、このようにロックアップ車速V2 〜V4 を設定した場合、車速が低くしかもスロットル開度の高い領域にまでロックアップの可能な領域が拡大されるために、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速であって、特に、低車速且つ高スロットル開度領域でロックアップしているときのマニュアルアップシフト変速では、ロックアップを解除するに伴い、エンジンが大きく吹け上がる。この吹け上がりが、運転者に違和感を与える。
【0028】
そこで、本発明による車両用パワーユニットの制御装置は、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時のロックアップ解除を行う場合、このロックアップ解除に伴うエンジンの吹け上がりを防止するためにエンジン出力を低下させ、しかも、エンジン出力低下の開始をロックアップ解除の開始に同期させる。
【0029】
エンジン出力を低下させる手段としては、例えば、エンジンの点火時期を遅らせる点火時期遅角制御(リタード制御)、任意のエンジン気筒への燃料供給を停止する燃料供給停止制御(フューエルカット制御)及び、エンジンの排気を還流する排気還流量制御などによりエンジントルクを低下させるものが一般的であるが、本実施形態では、一例として、リタード制御をもって説明する。
【0030】
図2は、図1より、運転者がマニュアル変速レンジ(M)を選択し、アクセルペダルの踏み込みを伴うアップシフト変速を行う場合の作用を説明する横軸を時間軸としたタイムチャートである。
図(a)は、時間の経過と共に上昇する車速VSPを示し、符号VL はロックアップ車速である。
図(b)は、本実施形態によるトルクコンバータ3の入力要素側の回転数Ne と、出力要素側の回転数Nt とを実線で示し、破線は、従来技術による入力要素側の回転数Ne である。
図(c)は、運転者がシフトレバー9をアップシフト(+)位置にしたことを示すシフトスイッチ信号、図(d)は、ロックアップソレノイド8をON,OFFするロックアップ信号であって、ON信号では、トルクコンバータ3をロックアップ状態とし、OFF信号(ロックアップ解除信号)では、トルクコンバータ3をコンバータ状態にする。図(e)は、シフトソレノイド6,7のON,OFFによるマニュアルアップシフト変速の開始時期を示し、図(f)は、エンジン1の出力トルクTを示す。
【0031】
具体的には、図5を参照し、マニュアル2速(M2 )の車速VX (V2 <VX )で走行中、マニュアル3速に変速しようとする場合を考える。
ロックアップ状態での走行中、運転者がアクセルペダルを踏み込んでマニュアルアップシフト変速を行うとすると、図2に示すように、t=to のとき、運転者は、シフトレバー9を1回アップシフト(+)位置にするため、マニュアルアップシフト変速指令をコントローラ200に発し(図c)、コントローラ200がロックアップソレノイド8をOFFしてロックアップを解除する(図d)。このとき、このロックアップ解除信号に同期し、エンジン1では、エンジンコントローラ100によって、リタード制御が開始される(図f)。
【0032】
従って、ロックアップ状態におけるアクセルペダルの踏み込みを伴う変速、この場合、ロックアップ状態におけるマニュアルアップシフト変速では、図fに示すように、ロックアップ解除の開始に同期してエンジン1の出力トルクTが低下する。このことから、ロックアップ解除中の入力要素側回転数Ne に着目すると、図bの斜線領域Xに示す分だけ、入力要素側回転数Ne の吹け上がりが、破線で示す従来のそれよりも小さくなる。
【0033】
ところで、従来から、エンジントルクを低下させるためにリタード制御を行う場合があるが、通常、リタード制御の開始及び終了時期は、シフトソレノイド6,7のON,OFFによる変速の開始及び終了時期に同期するものであって、本発明のように、ロックアップ解除の開始に同期するものではない。
【0034】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、シフトソレノイド6,7のON,OFFによる変速の開始時期を、ロックアップ解除の開始時期t=to よりも時間t1 だけ遅延させる(図e)。
ロックアップ解除の動作中は、ロックアップクラッチ間で、少なからず滑りによる引き擦りが起きる。しかも、ロックアップ解除動作中に、変速を行うと該変速によるトルク変動がトルクコンバータ3の出力要素側から伝達され、ロックアップクラッチ間の引き擦りが大きくなることもある。
そこで、変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも時間t1 だけ遅延させると、ロックアップ解除動作中、トルクコンバータ3の出力要素側には、変速によるトルク変動を伝達しない。従って、ロックアップ解除動作中に変速することにより起こる大きな引き擦りを防止し、ロックアップクラッチのフェーシングを保護することでロックアップ機構の耐久性を向上させることができる。
【0035】
また、変速終了後は、エンジン1の出力トルクを再び正常なトルクに戻す必要があるが、リタード制御を終了しエンジントルクが再び上昇すると、エンジントルクの変動によるショックが生じてしまう。
そこで、本実施形態では、エンジン1の出力トルクを低下させるリタード制御を、図2(f)に示すように、シフトソレノイド6,7のON,OFFによる変速が終了する時間t2 までの間に終了させる。このことにより、リタード制御で抑えていたエンジントルクが再び上昇するときに起こるショックを、変速ショックとして吸収でき、運転者に違和感を与えることがない。
【0036】
こうして変速が終了した後は、図2(a),(b)に示すように、車速VSPがロックアップ車速VL (=V3 )を越えるまでの間は、トルクコンバータ3を入出力要素間がΔN=(Ne −Nt )だけスリップするコンバータ状態とする。その後、t=tL において、車速VSPがロックアップ車速VL になると(図a)、ロックアップ信号を再びONにして(図d)、入出力要素間のスリップ制限しないコンバータ状態から入出力要素間を機械的に直結させたロックアップ状態になり、動力伝達効率は安定する。
【0037】
これに対して、例えば、図3は、従来技術におけるマニュアルアップシフト変速を説明するタイムチャートであって、図2と同一の部分は、同一符号をもって説明する。
ロックアップ状態での走行中、t=to のとき、運転者がアクセルペダルを踏み込んでシフトレバー9を1回アップシフト(+)位置にしてマニュアルアップシフト変速指令を発する(図c)と、トルクコンバータ3のロックアップを解除するためにロックアップ信号がOFFになる(図d)。このロックアップ解除信号に同期して、シフトソレノイド6,7のON,OFF制御が開始され、現在の選択変速段(ギア比i)から1段階高速側の選択変速段(ギア比i+1)への変速が行われる(図e)。
【0038】
ところが、従来技術では、図bに示すように、マニュアルアップシフト変速の開始から終了までの時間t2 における入力要素側回転数Ne と、出力要素側回転数Nt との関係では、ロックアップ解除に伴い入力要素側回転数Ne が大きく吹け上がった後、ギア比(i+1)相当まで入力要素回転数Ne が低下するため、運転者に違和感を与える。
【0039】
上述のように、本実施形態では、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時のロックアップ解除を行う場合、このロックアップ解除に伴う吹け上がりを防止するためにエンジン1の出力トルクを低下させ、しかも、この出力トルク低下の開始をロックアップ解除の開始に同期させたから、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速のために、トルクコンバータ3のロックアップを解除するときに発生するエンジンの吹け上がりを防止でき、運転者に違和感を与えない。
【0040】
また、リタード制御によるエンジントルク低下を、変速中に終了させるから、リタード制御を終了しエンジントルクが再び上昇するときに起こるショックを、変速ショックとして吸収でき、運転者に違和感を与えない。
【0041】
加えて、変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも遅延させたから、ロックアップ解除動作中に変速することにより起こるロックアップクラッチ間の大きな引き擦りを防止し、ロックアップクラッチのフェーシングを保護することでロックアップ機構の耐久性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態では、アクセルペダル踏み込みを伴う変速を、マニュアル変速レンジを選択したときのマニュアルアップシフト変速で説明したが、アクセルペダルの踏み込みを伴う変速であれば、P,D,R,N,Lレンジ毎に自動変速を行う自動変速レンジによる変速であってもよい。
しかし、本実施形態で説明したように、アクセルペダル踏み込みを伴う変速が、運転者によるマニュアル変速指令に対応したマニュアル変速レンジ(M)での変速の場合は、図5に示すように、車速が低くしかもエンジン出力の高い領域でもロックアップ可能なため、特に、ロックアップを解除するときのエンジンの吹け上がりが大きい。
従って、マニュアル変速レンジ(M)によるアクセルペダル踏み込みを伴う変速では、自動変速レンジに比べて、エンジンの吹け上がりを防止することでの作用効果がさらに顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による車両用パワーユニットの制御装置を示したシステム図である。
【図2】本発明による車両用パワーユニットの制御装置を説明するタイムチャートである。
【図3】従来技術を説明するタイムチャートである。
【図4】自動変速機の自動変速(D)レンジにおいて用いる変速制御パターンを例示する線図である。
【図5】マニュアル変速レンジの変速制御パターンを例示する線図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 有段自動変速機
3 ロックアップ機構付きトルクコンバータ
4 出力軸
5 コントロールバルブユニット
6,7 シフトソレノイド
8 ロックアップソレノイド
9 シフトレバー
10 スロットル開度センサ
11 車速センサ
100 エンジンコントローラ
200 コントローラ

Claims (3)

  1. エンジンからの動力を有段自動変速機に伝達するロックアップ機構付き流体伝動装置を備え、
    該流体伝動装置の入出力要素間を直結するロックアップ状態における変速時は、該流体伝動装置を、入出力要素間の直結が解かれたコンバータ状態にするようにした車両において、
    アクセルペダルの踏み込みを伴う変速時のロックアップ解除を行う場合、このロックアップ解除に伴うエンジンの吹け上がりを防止するためのエンジン出力低下の開始を、前記ロックアップ解除の開始に同期させると共に、前記アクセルペダル踏み込みを伴う変速の開始時期をロックアップ解除の開始時期よりも遅延させるように構成したことを特徴とする車両用パワーユニットの制御装置。
  2. 請求項1において、前記有段自動変速機は、マニュアル変速レンジを選択する間は運転者によるマニュアル変速指令に対応したマニュアル変速段を選択可能にする構成であって、
    前記アクセルペダル踏み込みを伴う変速は、マニュアル変速レンジを選択したときのマニュアル変速指令に対応した変速であることを特徴とする車両用パワーユニットの制御装置。
  3. 請求項1または2において、前記エンジン出力低下を、前記アクセルペダル踏み込みを伴う変速中に終了させるように構成したことを特徴とする車両用パワーユニットの制御装置。
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