JP3648045B2 - 攪拌装置付掘削装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、地盤を柱状に掘削すると共に、掘削土をセメントミルクと攪拌混合して、ソイルセメントを充填した状態の掘削孔を形成する攪拌装置付掘削装置に関するもので、特に掘削土とセメントミルクの良好な混合状態が得られる攪拌装置付掘削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ソイルセメントを充填した状態の掘削孔を形成する攪拌装置付掘削装置としては、掘削土をセメントミルクと混合攪拌するために、停止翼と攪拌翼を備えたものが知られている。
【0003】
例えば特公昭58−29374号公報には、掘削翼と攪拌翼が取り付けられた掘削軸に、掘削翼と攪拌翼の間および/または攪拌翼と攪拌翼の間に位置し、掘削翼による掘削径より大きな径の共まわり防止翼を、ボスを介して回転自在に装着した攪拌装置付掘削装置が開示されている。
【0004】
上記攪拌装置付掘削装置は、共まわり防止翼を掘削孔壁に食い込ませて係止し、掘削軸を共まわり防止翼に対して空転させることで共まわり防止翼を停止させておき、掘削軸と共に回転する攪拌翼と共まわりしようとする掘削土の塊をこの停止している共まわり防止翼で押さえ、掘削土の共まわりによるセメントミルクとの混合不良を防止しようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の攪拌装置付掘削装置の場合、攪拌翼による攪拌領域が、攪拌翼が回転移動して掘削土を水平方向に剪断する円形領域に限られ、広い範囲の掘削土を流動させて攪拌することができない。つまり、攪拌翼が位置する領域の掘削土を輪切り状に剪断攪拌するにすぎないもので、高い攪拌効率が得にくい問題がある。また、共まわり防止翼が掘削孔壁に食い込んだ状態で掘削軸が上げ下げされることになるので、掘削孔壁が共まわり防止翼で掻き崩されやすいという問題もある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点にかんがみてなされたもので、攪拌装置付掘削装置において、掘削孔壁を保護しつつ掘削土の攪拌効率を向上させることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このために本発明は、正逆回転可能な掘削ロッドを中心にして囲んで、掘削される掘削孔とほぼ外径で、内周にスクリュ羽根を有する造壁管が設けられており、掘削ロッドの周囲には、造壁管内周のスクリュ羽根の内側で掘削ロッドと共に回転可能なスクリュ羽根が設けられており、しかも掘削ロッドが正回転される時には造壁管が共に回転し、掘削ロッドが逆回転される時には掘削ロッドと造壁管が回転自在となる攪拌装置を有することを特徴とする攪拌装置付掘削装置を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1〜図4に基づいて、本発明に係る攪拌装置付掘削装置の一例を説明する。
【0009】
図1は掘削ロッド1の先端部分の分解状態を示し、図2は組み立て状態を示す。掘削ロッド1は正・逆回転可能なもので、本体部2とヘッド部3に分割されている。掘削ロッド1のヘッド部3は、本体部2に対して着脱可能なもので、本例においては、その連結部4を本体部2に差し込んで固定されるものとなっている。掘削ロッド1は、本体部2とヘッド部3を一連一体としたものでもよいが、掘削時に損傷しやすいヘッド部3の保守や交換を行いやすくする上で、本体部2に対してヘッド部3を着脱可能としておくことが好ましい。また、掘削ロッド1の本体部2とヘッド部3には、各々中心部を軸方向に貫通して、掘削孔にセメントミルクを注入するための注入路5(図2参照)が形成されているものである。
【0010】
掘削ロッド1のヘッド部3は、先端に掘削刃6を有するもので、その先端側周囲には2条のスクリュ羽根7が設けられている。この2条のスクリュ羽根7は、それぞれ下部側(ヘッド部3の先端側)の張出幅(ヘッド部3の外面からスクリュ羽根7の外周縁までの間隔)が広く、上部側(ヘッド部3の後端側)に向かって徐々に張出幅が狭くなった形状となっている。なお、8は前記注入路5(図2参照)への石等の侵入を防止するための保護バーである。
【0011】
スクリュ羽根7は、掘削刃6で掘削した掘削土を上方へ移動させる役割の他、後述するように、掘削土を攪拌する役割をもなすものである。このスクリュ羽根7は、1条でもよいが、上記のように2条のスクリュ羽根7を設けておくと、掘削土をより攪拌しやすく、しかも掘削時に掘削ロッド1に加わる負荷を分散させて掘削ロッド1を垂直に保持しやすくなるので好ましい。また、スクリュ羽根7は3条以上とすることもできる。
【0012】
造壁管9は、掘削ロッド1を中心にして囲んで位置するもので、掘削刃6により掘削される掘削孔の直径とほぼ等しい外径を有し、その内周には2条のスクリュ羽根10が設けられている。また、造壁管9の上部側中心部には内管11が設けられている。この内管11は、スクリュ羽根10の造壁管9の上部側が、造壁管9と内管11とに亘って取り付けられていることにより、造壁管9に一体に保持されている。
【0013】
造壁管9は、掘削ロッド1のヘッド部3が、その鍔部12が内管11の下端面に当接する位置まで下方から内管11に差し込まれて本体部2に接続され、これによって内管11を回転自在に貫通することになる掘削ロッド1に保持されるものである。また、掘削ロッド1の本体部2の先端部には、上下方向にスライド可能で、内蔵されたスプリング(図示されていない)によって下方に付勢されたスライドリング13が設けられている。スライドリング13には直角三角形状の係合溝14が形成されている。この係合溝14は、掘削ロッド1の本体部2にヘッド部3を連結した時に、内管11の上端部に突出した直角三角形状の係合突出部15と嵌り合うものとなっている。この係合溝14と係合突出部15は、掘削ロッド1が正回転する時に係合状態となり、掘削ロッド1が逆回転すると、スライドリング13を下方への付勢力に逆らって上方にスライドさせつつ斜面同士が滑り合ってすり抜けることができるものである。
【0014】
スクリュ羽根10が2条となっているのは、前記スクリュ羽根7が2条であることに合わせたもので、スクリュ羽根7が1条の場合にはそれに合わせて1条とし、前記スクリュ羽根7が3条以上である場合にはそれに合わせて3条以上とすることが好ましい。また、スクリュ羽根10は、造壁管9の上部側は造壁管9と内管11とに亘って設けられているものであるが、造壁管9の下部側は、前記スクリュ羽根7とは反対に、下部側の張出幅(造壁管9内面からスクリュ羽根10の内周縁までの間隔)が狭く、上部側に向かって徐々に張出幅が広くなっている。
【0015】
前記スクリュ羽根7は、内管11から下方に突出する掘削ロッド1のヘッド部3部分に取り付けられているもので、スクリュ羽根10の造壁管9の下部側と対応する位置に位置されるものである。このスクリュ羽根7は、スクリュ羽根7が下部から上部に向かって張出幅が漸減し、造壁管9下部側のスクリュ羽根10が下部から上部に向かって張出幅が漸増していることにより、スクリュ羽根10の造壁管9下部側の内側で掘削ロッド1と共に回転可能なものとなっている。つまり、掘削ロッド1(ヘッド部3)の周囲に設けられたスクリュ羽根7と、スクリュ羽根10の造壁管9下部側とは、相互にすり抜けて回転可能な形状となっている。
【0016】
上記掘削ロッド1(ヘッド部3)の周囲に設けられたスクリュ羽根7と、スクリュ羽根10の造壁管9下部側とについてさらに説明すると、本例におけるスクリュ羽根7とスクリュ羽根10の下部側は、特に図2に示されるように、一枚のスクリュ羽根を、相互にすり抜けながら回転可能な外周側(スクリュ羽根10の造壁管9下部側)と内周側(スクリュ羽根7)に分割した形状をなしているものである。スクリュ羽根7とスクリュ羽根10の造壁管9下部側とは、一枚のスクリュ羽根を同心円状に二枚に分割した形状とすることもできるが、本例のように、外周側と内周側の各スクリュ羽根7,9の張出幅を周方向に変化させて分割した形状とすると、後述するように、攪拌できる範囲が広がることから好ましい。また、本例のようにスクリュ羽根7,9の張出幅を漸減または漸増させる分割の他、波線状に分割することでも、スクリュ羽根7.9の張出幅を周方向に変化させることができる。
【0017】
次に、図3および図4に基づいて、図1および図2で説明した装置の作動状態について説明する。
【0018】
まず、図3に示されるように、スクリュ羽根7とスクリュ羽根10の造壁管9下部側とが合わさった状態で掘削ロッド1を正回転させ、係合溝14と係合突出部15の係合によって、造壁管9を掘削ロッド1と共に回転させながら、掘削刃6によって必要な深さの掘削孔を掘削する。造壁管9は、その外径が掘削刃6によって掘削される掘削孔の径とほぼ等しいことから、掘削孔に嵌り合った状態で回転し、掘削孔壁16を均しつつ前進することになる。また、スクリュ羽根7,9は、掘削面付近から掘削土を上部へ移動させて掘削を助ける役割をなすが、スクリュ羽根7とスクリュ羽根10の造壁管9下部側とが合わさった状態で、両者間の隙間は小さいもので済むことから、この掘削土の搬送作用も妨げられることがない。
【0019】
必要な深さの掘削孔を形成した後、掘削ロッド1を逆回転させつつ、注入路5(図2参照)からセメントミルクを掘削孔内に注入する。掘削ロッド1が逆回転すると、造壁管9が掘削孔に嵌り込んで回転抵抗が加わっていることから、係合溝14と係合突出部15が、スライドリング13を上方にスライドさせつつ互いにすり抜け、造壁管9の回転が押えられた状態で掘削ロッド1のみが逆回転する。従って、掘削ロッド1のスクリュ羽根7の周囲に掘削土の塊がまとわり付いていたとしても、回転が押えられている造壁管9内周のスクリュ羽根10に当たることにより、スクリュ羽根7と共まわりしてしまうことが防止される。また、掘削ロッド1を逆回転させた時の造壁管9の回転防止は、上記のように、造壁管9の外周面と掘削孔壁16間の接触抵抗によるものであるので、掘削孔壁16を傷付けて崩壊させる心配がない。
【0020】
ところで、図3と、図3の状態から掘削ロッド1を90度逆回転させた状態の図4とから分かるように、造壁管9の回転が押えられた状態で掘削ロッド1が逆回転されると、停止している造壁管9内周のスクリュ羽根10と、掘削ロッド1と共に回転するスクリュ羽根7とによって、掘削土が上下に剪断されつつ攪拌されることになる。従って、上下に広い層の掘削土を流動化させて攪拌することができる。特に本例のように、スクリュ羽根7,10の張出幅が周方向に変化していると、切削土の剪断位置が平面方向に経時的に変化することになり、上下方向のみならず横方向の攪拌を図ることもできる。
【0021】
このようにして切削土を攪拌してセメントミルクと合わせてソイルセメント化しつつ、徐々に掘削ロッド1および造壁管9を引き上げる。この掘削ロッド1の引き上げに際して、逆回転しているスクリュ羽根7は、掘削ロッド1および造壁管9と共に持ち上げられようとするソイルセメントを押し戻す働きをなすものでもある。この押し戻し力を高めるためには、掘削ロッド1の本体部2の下端付近に、スクリュ羽根7,9と同じ捻じれ方向のスクリュ羽根(図示されていない)を設けてもよい。
【0022】
なお、ソイルセメントで満たされた掘削孔を形成した後は、そのままソイルセメントを硬化させて地盤強化を図ってもよいが、さらに杭を沈設した後にソイルセメントを硬化させると、一層強固な地盤強化を図ることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明は、以上説明した通りのものであり、次の効果を奏するものである。
【0024】
(1)停止している造壁管9内周のスクリュ羽根10と、掘削ロッド1と共に回転するスクリュ羽根7とによって、掘削土を上下に剪断しつつ攪拌することができ、上下に広い層の掘削土を流動化させて攪拌できるので、掘削土の攪拌効率かよい。
【0025】
(2)掘削ロッド1を逆回転させた時の造壁管9の回転防止は、造壁管9の外周面と掘削孔壁16間の接触抵抗によるので、掘削孔壁16を傷付けて崩壊させる心配がない。従って、掘削孔壁16の崩壊により、掘削土とセメントミルクの混合不良を生じたり、杭の沈設を行う場合に杭が挿入しにくくなったりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る攪拌装置付掘削装置の一例における掘削ロッドの先端部分の分解状態を示す図である。
【図2】図1に示される掘削ロッドの先端部分の組み立て状態を示す図である。
【図3】図1および図2に示される攪拌装置付掘削装置の作動状態の説明図である。
【図4】図3の状態から掘削ロッドを90度逆回転させた状態を示す図である。
【符号の説明】
1 掘削ロッド
2 掘削ロッドの本体部
3 掘削ロッドのヘッド部
4 連結部
5 注入路
6 掘削刃
7 スクリュ羽根(掘削ロッド側)
8 保護バー
9 造壁管
10 スクリュ羽根(造壁管側)
11 内管
12 鍔部
13 スライドリング
14 係合溝
15 係合突出部
16 掘削孔壁
Claims (4)
- 正逆回転可能な掘削ロッドを中心にして囲んで、掘削される掘削孔とほぼ等しい外径で、内周にスクリュ羽根を有する造壁管が設けられており、掘削ロッドの周囲には、造壁管内周のスクリュ羽根の内側で掘削ロッドと共に回転可能なスクリュ羽根が設けられており、しかも掘削ロッドが正回転される時には造壁管が共に回転し、掘削ロッドが逆回転される時には掘削ロッドと造壁管が回転自在となる攪拌装置を有することを特徴とする攪拌装置付掘削装置。
- 造壁管の上部側中心部に位置する内管が、造壁管内周の上部側のスクリュ羽根が造壁管と内管とに亘って取り付けられていることによって造壁管に一体に保持されており、この内管を掘削ロッドが回転自在に貫通していると共に、内管から造壁管の下部側内に突出した掘削ロッドの周囲に、造壁管内周の下部側のスクリュ羽根の内側で回転可能なスクリュ羽根が設けられていることを特徴とする請求項1の攪拌装置付掘削装置。
- 掘削ロッドのスクリュ羽根と、この掘削ロッドのスクリュ羽根と対応する位置にある造壁管のスクリュ羽根とが、一枚のスクリュ羽根を、相互にすり抜けながら回転可能な外周側と内周側に分割した形状であることを特徴とする請求項1または2の攪拌装置付掘削装置。
- 一枚のスクリュ羽根を、外周側と内周側の各スクリュ羽根の張出幅を周方向に変化させて分割した形状であることを特徴とする請求項3の攪拌装置付掘削装置。
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