JP3647475B2 - 車両の走行制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、エンジン出力を調整することにより、自動車の車速を運転者が設定した所望の車速に維持する車両の走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の車速を運転者が設定した所望の車速に維持する定速走行装置が実用化されている。この定速走行装置は、例えば実開平2−112535号公報で示されるように、実車速が所望の車速になった時点で、その車速をスイッチ操作等により定速走行制御の目標車速として設定し、実車速を上記目標車速に維持するようにエンジン出力を制御する構成とされている。
【0003】
そして、この定速走行装置は、車速を検出する車速センサ、目標車速を設定するセットスイッチ、スロットル開度が1/4未満でオンするスロットルスイッチ、および定速走行の制御を行なうASCDコントロールユニット等を有している。
【0004】
上記ASCDコントロールユニットには、実車速が目標車速から所定車速以上降下した場合にオーバードライブから3速にシフトダウンするステップと、上記スロットルスイッチが上記シフトダウン後にオンになったか否かを確認するステップと、このステップによりエンジン負荷が所定値より小さくなった場合(スロットル開度が1/4以下になった場合)に3速からオーバードライブの位置へシフトアップするステップとが設けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この定速走行装置は、シフトアップを行なうか否かの判定を、上記スロットルスイッチによるエンジンの負荷状態(スロットル開度)のみで行なう構成となっているため、例えば瞬間的な負荷の減少で一時的にスロットル開度が減少した場合に、シフトアップが行なわれると、その後の車速の上昇が正常に行なわれず、再びシフトダウンが行なわれ、所謂シフトビジーに陥ることがあった。
【0006】
また、エンジンの負荷状態の検出が上記スロットルスイッチで行なわれる場合、そのスイッチの作動ポイントが固定されているため、最も厳しい条件下でもシフトビジーになることなくシフトアップが行なえるように、スロットルスイッチの作動ポイントを小さいスロットル開度に調整しておくことが必要となる。
【0007】
その結果、この定速走行装置によるシフトダウン後において、例えば車両の走行が登坂路から平坦路の走行になった場合、シフトアップはスロットル開度が小さくなるまで行なわれないため、平坦路になってからもしばらくの間3速で走行することになり、負荷の減少に対するシフトアップの応答が遅れることとなる。特に、高地を走行する場合、酸素濃度が稀薄となってエンジンの出力が低下するため、車両は一層高負荷状態となる。このため、登坂路から平坦路の走行に変わった後も車速の上昇が徐々にしか行なわれず、スロットル開度が上記のように小さな値になるまで一層長い時間が必要となり、上記応答性の鈍化が更に顕著になるということがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車両が高負荷状態にある場合でも走行負荷状態を正確に判定しシフトタイミングを適正に選択することにより、シフトビジーになることを抑制しながら、走行負荷の減少に対し素早くシフトアップできる車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記請求項に係る発明は、車速を検出する車速センサと、目標とする車速を設定してこれを記憶する車速設定手段と、エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部と、変速機のシフト位置を変更するシフト切換部と、上記目標車速に基づいて設定された目標車速範囲内で車両を走行させるように制御する制御手段とを有する車両の走行制御装置において、上記制御手段には、車速と目標車速との速度差に応じた出力調整信号を上記エンジン出力調整部等に送信する定速走行制御手段と、車速が上記目標車速範囲より低い場合、上記シフト切換部に変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段と、車速が目標車速を越えたことを確認するオーバーシュート確認手段と、このオーバーシュートが確認された場合に、車速が上記目標車速範囲内で安定していることを確認する定常走行判定手段と、この定常走行状態が確認されたときに、走行負荷に相当するパラメーターと、予め設定された第一比較基準値とを比較して、その比較に基づき、走行負荷が上記第一比較基準値に相当する所定量よりも減少した場合に変速機をシフトアップさせ、走行負荷が所定量以上の場合には、この比較を行なった時点での走行負荷を基準にした走行負荷減少分に相当するパラメーターと、予め設定された第二比較基準値とを比較して、その比較に基づき、上記走行負荷減少分が上記第二比較基準値に相当する量を超えたときに変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段とを設ける構成とした。
【0010】
【作用】
上記構成の発明によれば、車速の降下により変速機がシフトダウンされた場合、オーバーシュート確認手段が車速の回復により目標車速を越えたことを確認し、その後定常走行判定手段が安定した走行状態を確認し、この定常走行状態が確認されてからシフトアップ制御手段が機能することにより、シフトビジーになることが抑制され、一方このシフトアップ制御手段では、走行負荷に相当するパラメーターと、シフトビジーを生じない範囲で大きな値に設定された比較基準値とを比較することにより、走行負荷の減少状態を確認する判定結果が迅速に得られ、変速機が遅滞なくシフトアップされることになる。とくに、上記の2つの比較基準値を用い、走行負荷の減少状態を2つの状況に場合分けして判定することにより、この判定結果に基づいて行なわれるシフトアップが一層遅滞無く行なわれる。また、上記の第一比較基準値,第二比較基準値を予め車両の種類や用途によって適正な値に設定することにより、その車両にとって最適な応答性で変速機のシフトアップを行なうことができる。
【0011】
【実施例】
図1は、本発明に係る車両の走行制御装置の概略構成を示している。この車両の走行制御装置には、制御手段1と、実車速を検出する車速センサ2と、上記目標とする車速を設定し、これを記憶する車速設定手段3と、図外のスロットルバルブの開度を調整することによりエンジンの出力を調整するエンジン出力調整部4と、変速機のシフト位置を切り換えるシフト切換部5とが設けられている。
【0012】
上記のエンジン出力調整部4は、図外のスロットルバルブの開閉を上記制御手段1からの信号に応じて段階的に行なうことにより、エンジンの出力を調整するようになっている。また、シフト切換部5は、上記制御手段1からの信号によりその内部でオーバードライブ信号をオン,オフすることにより、変速機(図示省略)をオーバードライブ、あるいは3速の位置へ切り換えるようになっている。
【0013】
一方、上記制御手段1は、上記車速センサ2や車速設定手段3からの信号に基づいて各種処理判定を行ない、その結果を信号として上記エンジン出力調整部4やシフト切換部5へ出力するようになっている。この制御手段1には、定速走行制御手段11と、シフトダウン制御手段12と、オーバーシュート確認手段13と、定常走行判定手段14と、シフトアップ制御手段15と、開度演算手段16とが設けられている。
【0014】
上記定速走行制御手段11は、基準となる目標車速と実車速とを比較することにより実車速の方が小さい場合、エンジンの出力を増大させる出力増大信号を車速の不足量に応じて送信し、一方実車速の方が大きい場合、エンジン出力を減少させる出力減少信号を実車速の超過量に応じて送信し、これらの信号を上記エンジン出力調整部4に送信することにより、実車速を前記目標車速範囲内に維持しながら目標車速に収束させるようになっている。そして、この出力増大信号と出力減少信号(これらが前記の出力調整信号)は、スロットルバルブの開閉量を演算する開度演算手段16にも送信されるようになっている。
【0015】
この開度演算手段16は、定速走行制御手段11から送信された出力増大信号と出力減少信号とに基づいて走行負荷に相当する開度演算値(パラメーター)を算出するようになっている。この開度演算値は出力増大信号を加算し、出力減少信号を減算することにより求められるため、この開度演算値がゼロにクリアされると、その時点の走行負荷が基準走行負荷となる。従って、この開度演算値が正の値の場合、その時点の走行負荷は上記基準走行負荷より大きくなっていると判定することができ、逆にこの開度演算値が負の場合、その時点での走行負荷は上記基準走行負荷より軽減されていると判定することができる。
【0016】
一方、上記シフトダウン制御手段12は、実車速が目標車速より所定量以上小さい場合にシフトダウン信号を送信することにより、シフト切換部5にシフトダウンを行なわせるようになっている。また、このシフトダウン信号を送信する際には、上記開度演算手段16に対してクリア信号を送信し、その開度演算値をゼロに設定するようになっている。
【0017】
上記オーバーシュート確認手段13は、上記シフトダウン後に実車速と目標車速とを比較することにより、実車速が目標車速を越え、その後再び目標車速に到達する、所謂車速のオーバーシュートを確認するように構成されている。
【0018】
また、定常走行判定手段14は、実車速と目標車速とを比較して、実車速が目標車速に基づいて定められた目標車速範囲内で、しかも時間に対する車速の変化率が所定値以下であるか否かを判定することにより、実車速が目標車速範囲内で安定し、定常走行状態であることを確認するようになっている。
【0019】
一方、シフトアップ制御手段15では、上記開度演算手段16によって求められた開度演算値と、後述するように予め負の値に設定された第一比較基準値あるいは第二比較基準値とを比較することにより走行負荷の減少状態を判定し、これらの判定結果に応じてシフト切換部5にシフトアップ信号を送信して変速機をシフトアップさせるようになっている。実際には、シフトダウン制御手段12でシフトダウンが行なわれた後、実車速のオーバーシュートを確認し、その後定常走行状態を確認したのち、車両の走行負荷状態を表す上記開度演算値が上記第一比較基準値より小さいとき、つまり走行負荷が上記シフトダウン後に減少して充分小さくなっている場合にシフトアップ信号を発信する。
【0020】
もし、この比較において走行負荷が充分小さくなっていない場合には、開度演算値を一旦クリアして新たにこの時点での走行負荷を基準走行負荷として設定し、その後の開度演算値と第二比較基準値との比較を開始する。そして、走行負荷がこの新たに設定された基準走行負荷より充分に減少し、その結果、開度演算値が第二比較基準値より小さくなったことが確認された場合には、このシフトアップ制御手段15からシフトアップ信号をシフト切換部5に発信するようになっている。
【0021】
次に、上記車両の走行制御装置の制御動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0022】
車両が登坂路の走行状態となる等により、車両の走行負荷が大きくなると、実車速Vは降下し始める。すると、ステップS1で目標車速Vsから実車速Vを引いて求めた車速の偏差が所定値Vcより大きいか否かを判定し、この結果YESと判定されるとステップS2へ移行する。このステップ2では、シフト切換部5にシフトダウン信号を送信することにより、シフト切換部5内のオーバードライブ信号をオフし、変速機をオーバードライブから3速にシフトダウンさせて車輪の回転トルクを増大させる。このシフトダウンと同時に、このステップS2では開度演算手段16に開度演算値をクリアさせ、このクリアによってシフトダウン時の走行負荷が基準走行負荷とされる。
【0023】
上記ステップS2でのシフトダウン後、上記定速走行制御手段11により上昇しつつある実車速VをステップS3で監視することにより、実車速Vが目標車速Vsを越え、再び目標車速Vsに到達することによりオーバーシュートが確認される。そして、定常走行判定手段14を構成するステップS4では、実車速Vが目標車速Vs付近で安定し、車両が定常走行状態であることを確認する。このことにより、実車速Vが目標車速Vsに向かって収束する状態となり、車両が安定した走行状態になっていることが確認される。
【0024】
この定常走行状態の確認後、ステップS5で上記開度演算手段16による開度演算値をスロットル開度Kとして設定し、このスロットル開度Kが予め適正に設定した負の値の第一比較基準値K1より小さいか否かを判定する。この第一比較基準値K1は、ステップS2でシフトダウンされた際に設定された基準走行負荷に対してどれだけ走行負荷が減少したかを判定するための比較基準値であり、この第一比較基準値K1は、この判定結果によりシフトアップされてもシフトビジーとならない範囲内で予め大きな値に設定されている。このステップS5での判定の結果、上記シフトダウン時の走行負荷に比較して走行負荷が依然として大きく、まだスロットル開度Kが充分に小さくなっていないためにNOと判定されるとステップ6へ移行し、開度演算手段16にクリア信号を送信することにより開度演算値をゼロに設定し、この時点での走行負荷を新たな基準走行負荷とする。
【0025】
そして、ステップS7では、上記開度演算手段16の開度演算値をスロットル戻り量Lとして設定し、このスロットル戻り量Lが予め適正に設定した負の値の第二比較基準値L1より小さいか否かを判定する。この第二比較基準値は、上記ステップS6で新たに設定された基準走行負荷からどれだけ走行負荷が減少したかを判定するための比較基準値であり、この第二比較基準値L1も、上記第一比較基準値K1と同様にシフトビジーとならない範囲の大きな値に設定されている。従って、上記ステップS6で行なわれたクリア時の基準走行負荷に比較して、走行負荷が充分減少した結果、スロットル戻り量Lが上記第二比較基準値L1より小さくなると、このステップS7でYESと判定され、ステップS8へ移行する。このステップS8では、上記シフト切換部5にシフトアップ信号を送信して、変速機をオーバードライブの位置に切り換える。
【0026】
なお、上記ステップS5において、その判定時点で走行負荷が充分に減少しており、その結果スロットル開度Kが充分小さくなっている場合にはYESと判定され、ステップS8へ移行してシフトアップ信号が送信され、変速機はオーバードライブに切り換えられる。
【0027】
ところで、上記第一比較基準値K1は、実際には上記第二比較基準値L1に比較して一層小さな値とされ、より大きな走行負荷の減少が判定できるように設定されるものであり、これら比較基準値K1,L1は車両の種類等に応じて予め適正に設定される。
【0028】
次に、上記フローチャートによって行なわれる制御動作を、図3に示すタイムチャートに基づいて説明する。まず、図3に示すT1時点でこの制御動作が開始されると、その車両は定速走行制御手段11により定速走行状態となり、上記目標車速範囲内の車速で走行することになる。その後、図3のT2時点から、車両が登坂路の走行を開始するため走行負荷は大きくなり、この結果、実車速Vが下降し始める。そこで、上記ステップS1により車速Vが目標車速Vsより所定値Vc以上降下したと判定されると、上記ステップS2によりシフトダウン信号が送信されてオーバードライブ信号がオフされ、図3のT3時点で示すように変速機が3速にシフトダウンされる。このとき、開度演算手段16の開度演算値が一旦クリアされてゼロになり、この時点の走行負荷が基準走行負荷とされ、再び開度演算値の算出が開始される。
【0029】
そして、上記シフトダウンによって車輪の回転トルクが大きくなると共に、前記定速走行制御手段11が出力増大信号を送信するため、図3で示すT3時点から車速が上昇し始める。その結果、この実車速Vが目標車速Vsを越えて、その後図3のT4で示すように再び目標車速Vsに到達すると、上記ステップS3によりオーバーシュートが確認され、実車速Vが目標車速範囲内で安定すると、ステップS4により図3のT4の時点で定常走行状態と判定される。そして、ステップS5で走行負荷を判定した結果、開度演算値に基づくスロットル開度Kが第一基準値K1より小さくないと判定された場合、図3のT4で示すようにシフトアップを行なうことなく引き続き走行するが、上記開度演算値は再びクリアされる。
【0030】
その後、車両は定速走行制御手段11によって目標車速範囲内の車速で走行し、図3のT5時点から平坦路を走行することになる。すると、走行負荷が減少するため、実際のスロットルバルブの開度を表すバルブ開度が図3で示すT6時点から減少し、演算で求められる開度演算値も同様に小さくなる。そして、図3で示すT7時点で、走行負荷が小さくなったために前記ステップS7により前記スロットル戻り量Lが第二比較基準値L1より小さくなったと判定されると、ステップS8がシフト切換部5にシフトアップ信号を送信することによりオーバードライブ信号をオンさせ、その結果変速機はオーバードライブ位置に切り換られる。
【0031】
このように、本発明に係る車両の走行制御装置は、登坂路を定速走行している車両の実車速Vが目標車速Vsを越えてオーバーシュートしたことを確認したのち、定常走行判定手段14(ステップS4)において定常走行状態を確認し、その後シフトアップ制御手段15によって変速機のシフトアップを行なうように構成しているため、定常走行状態の誤判定によりシフトビジーになることを防止しつつ、適正時期にシフトアップを行なうことができる。
【0032】
例えば、上記オーバーシュートの確認を行なうことなく、定常走行状態の判定を実行すると図4のタイムチャートで示すような事態を生じることがある。例えば、高地の登坂路等を走行することによりエンジン出力が低下して高負荷状態となっている場合、シフトダウンが行なわれた後でも(図4のT11時点)、車速Vは徐々にしか上昇しない。このことにより、図4で示すT12時点でも、この実車速Vの変化率が小さな値となり、しかも実車速Vが上記目標車速範囲内であるため定常走行状態と誤判定される。この判定に基づいて、図4のT13時点で変速機をオーバードライブ位置にシフトすると、実際には実車速Vがまだ収束していないため不安定な状態であり、しかも登坂路の途中で走行負荷は依然とし大きなままであるため、この結果図4のT14時点から実車速Vが減少する。そして、この後再びシフトダウンされることとなり、その結果シフトビジーの状態となる。
【0033】
また、定常走行状態を確認後、このシフトアップ制御手段15では、開度演算値に基づいて求められたスロットル開度Kと上記の第一比較基準値K1とを比較判定することにより、既に走行負荷が充分減少されている場合にはすぐにシフトアップを実行する。一方、走行負荷が大きな状態のままである場合には、一旦開度演算値をクリアした後、算出される開度演算値に基づいて求められたスロットル戻り量Lと上記第二比較基準値L1とを比較判定し、スロットル戻り量Lの方が小さくなり走行負荷が充分に減少されたことを確認してシフトアップする。
【0034】
このように2つの比較基準値K1,L1を用いることにより、走行負荷の減少状態を2つの状況に場合分けして判定することにより、この判定結果に基づいて行なわれるシフトアップが一層遅滞無く行なわれる。また、上記の第一比較基準値K1,第二比較基準値L1を予め車両の種類や用途によって適正な値に設定することにより、その車両にとって最適な応答性で変速機のシフトアップを行なうことができる。
【0035】
なお、エンジンの負荷状態をセンサではなく、定速走行制御手段11からの出力増大信号と出力減少信号とに基づいて演算によって求めるように構成してもよく、この場合にはセンサの調整ずれや破損によりエンジンの負荷状態が誤判定されることに起因するシフトビジーの発生が防止される。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る車両の走行制御装置は、車速の降下により変速機がシフトダウンされた場合、オーバーシュート確認手段によって車速のオーバーシュートを確認し、このオーバーシュートが確認された場合、定常走行判定手段が安定した走行状態を確認し、その後シフトアップ制御手段において、予め適正な値に設定した比較基準値と、走行負荷に相当するパラメーターとを比較するように構成したため、走行状態が安定したことを確認した後で走行負荷の減少状態が判定されることとなり、シフトビジーになるのが確実に抑制される。この結果、従来の場合と比較して負荷の少ない減少でシフトアップできるように上記比較基準値に対する余裕を小さく設定することができる。このため、走行負荷が減少したことを確認する判定結果を迅速に得ることができ、変速機のシフトアップを遅滞なく行なうことができる。こうして、走行負荷の減少に対してシフトアップが適正な時期に行なわれることにより、ドライバーに快適なドライブフィーリングを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の走行制御装置の実施例を示す概略説明図である。
【図2】上記走行制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】上記走行制御装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【図4】オーバーシュート確認手段を設けない場合の上記走行制御装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 制御手段
2 車速センサ
3 車速設定手段
4 エンジン出力調整部
5 シフト切換部
11 定速走行制御手段
12 シフトダウン制御手段
13 オーバーシュート確認手段
14 定常走行判定手段
15 シフトアップ制御手段
16 開度演算手段
【産業上の利用分野】
本発明は、エンジン出力を調整することにより、自動車の車速を運転者が設定した所望の車速に維持する車両の走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車の車速を運転者が設定した所望の車速に維持する定速走行装置が実用化されている。この定速走行装置は、例えば実開平2−112535号公報で示されるように、実車速が所望の車速になった時点で、その車速をスイッチ操作等により定速走行制御の目標車速として設定し、実車速を上記目標車速に維持するようにエンジン出力を制御する構成とされている。
【0003】
そして、この定速走行装置は、車速を検出する車速センサ、目標車速を設定するセットスイッチ、スロットル開度が1/4未満でオンするスロットルスイッチ、および定速走行の制御を行なうASCDコントロールユニット等を有している。
【0004】
上記ASCDコントロールユニットには、実車速が目標車速から所定車速以上降下した場合にオーバードライブから3速にシフトダウンするステップと、上記スロットルスイッチが上記シフトダウン後にオンになったか否かを確認するステップと、このステップによりエンジン負荷が所定値より小さくなった場合(スロットル開度が1/4以下になった場合)に3速からオーバードライブの位置へシフトアップするステップとが設けられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この定速走行装置は、シフトアップを行なうか否かの判定を、上記スロットルスイッチによるエンジンの負荷状態(スロットル開度)のみで行なう構成となっているため、例えば瞬間的な負荷の減少で一時的にスロットル開度が減少した場合に、シフトアップが行なわれると、その後の車速の上昇が正常に行なわれず、再びシフトダウンが行なわれ、所謂シフトビジーに陥ることがあった。
【0006】
また、エンジンの負荷状態の検出が上記スロットルスイッチで行なわれる場合、そのスイッチの作動ポイントが固定されているため、最も厳しい条件下でもシフトビジーになることなくシフトアップが行なえるように、スロットルスイッチの作動ポイントを小さいスロットル開度に調整しておくことが必要となる。
【0007】
その結果、この定速走行装置によるシフトダウン後において、例えば車両の走行が登坂路から平坦路の走行になった場合、シフトアップはスロットル開度が小さくなるまで行なわれないため、平坦路になってからもしばらくの間3速で走行することになり、負荷の減少に対するシフトアップの応答が遅れることとなる。特に、高地を走行する場合、酸素濃度が稀薄となってエンジンの出力が低下するため、車両は一層高負荷状態となる。このため、登坂路から平坦路の走行に変わった後も車速の上昇が徐々にしか行なわれず、スロットル開度が上記のように小さな値になるまで一層長い時間が必要となり、上記応答性の鈍化が更に顕著になるということがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車両が高負荷状態にある場合でも走行負荷状態を正確に判定しシフトタイミングを適正に選択することにより、シフトビジーになることを抑制しながら、走行負荷の減少に対し素早くシフトアップできる車両の走行制御装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記請求項に係る発明は、車速を検出する車速センサと、目標とする車速を設定してこれを記憶する車速設定手段と、エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部と、変速機のシフト位置を変更するシフト切換部と、上記目標車速に基づいて設定された目標車速範囲内で車両を走行させるように制御する制御手段とを有する車両の走行制御装置において、上記制御手段には、車速と目標車速との速度差に応じた出力調整信号を上記エンジン出力調整部等に送信する定速走行制御手段と、車速が上記目標車速範囲より低い場合、上記シフト切換部に変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段と、車速が目標車速を越えたことを確認するオーバーシュート確認手段と、このオーバーシュートが確認された場合に、車速が上記目標車速範囲内で安定していることを確認する定常走行判定手段と、この定常走行状態が確認されたときに、走行負荷に相当するパラメーターと、予め設定された第一比較基準値とを比較して、その比較に基づき、走行負荷が上記第一比較基準値に相当する所定量よりも減少した場合に変速機をシフトアップさせ、走行負荷が所定量以上の場合には、この比較を行なった時点での走行負荷を基準にした走行負荷減少分に相当するパラメーターと、予め設定された第二比較基準値とを比較して、その比較に基づき、上記走行負荷減少分が上記第二比較基準値に相当する量を超えたときに変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段とを設ける構成とした。
【0010】
【作用】
上記構成の発明によれば、車速の降下により変速機がシフトダウンされた場合、オーバーシュート確認手段が車速の回復により目標車速を越えたことを確認し、その後定常走行判定手段が安定した走行状態を確認し、この定常走行状態が確認されてからシフトアップ制御手段が機能することにより、シフトビジーになることが抑制され、一方このシフトアップ制御手段では、走行負荷に相当するパラメーターと、シフトビジーを生じない範囲で大きな値に設定された比較基準値とを比較することにより、走行負荷の減少状態を確認する判定結果が迅速に得られ、変速機が遅滞なくシフトアップされることになる。とくに、上記の2つの比較基準値を用い、走行負荷の減少状態を2つの状況に場合分けして判定することにより、この判定結果に基づいて行なわれるシフトアップが一層遅滞無く行なわれる。また、上記の第一比較基準値,第二比較基準値を予め車両の種類や用途によって適正な値に設定することにより、その車両にとって最適な応答性で変速機のシフトアップを行なうことができる。
【0011】
【実施例】
図1は、本発明に係る車両の走行制御装置の概略構成を示している。この車両の走行制御装置には、制御手段1と、実車速を検出する車速センサ2と、上記目標とする車速を設定し、これを記憶する車速設定手段3と、図外のスロットルバルブの開度を調整することによりエンジンの出力を調整するエンジン出力調整部4と、変速機のシフト位置を切り換えるシフト切換部5とが設けられている。
【0012】
上記のエンジン出力調整部4は、図外のスロットルバルブの開閉を上記制御手段1からの信号に応じて段階的に行なうことにより、エンジンの出力を調整するようになっている。また、シフト切換部5は、上記制御手段1からの信号によりその内部でオーバードライブ信号をオン,オフすることにより、変速機(図示省略)をオーバードライブ、あるいは3速の位置へ切り換えるようになっている。
【0013】
一方、上記制御手段1は、上記車速センサ2や車速設定手段3からの信号に基づいて各種処理判定を行ない、その結果を信号として上記エンジン出力調整部4やシフト切換部5へ出力するようになっている。この制御手段1には、定速走行制御手段11と、シフトダウン制御手段12と、オーバーシュート確認手段13と、定常走行判定手段14と、シフトアップ制御手段15と、開度演算手段16とが設けられている。
【0014】
上記定速走行制御手段11は、基準となる目標車速と実車速とを比較することにより実車速の方が小さい場合、エンジンの出力を増大させる出力増大信号を車速の不足量に応じて送信し、一方実車速の方が大きい場合、エンジン出力を減少させる出力減少信号を実車速の超過量に応じて送信し、これらの信号を上記エンジン出力調整部4に送信することにより、実車速を前記目標車速範囲内に維持しながら目標車速に収束させるようになっている。そして、この出力増大信号と出力減少信号(これらが前記の出力調整信号)は、スロットルバルブの開閉量を演算する開度演算手段16にも送信されるようになっている。
【0015】
この開度演算手段16は、定速走行制御手段11から送信された出力増大信号と出力減少信号とに基づいて走行負荷に相当する開度演算値(パラメーター)を算出するようになっている。この開度演算値は出力増大信号を加算し、出力減少信号を減算することにより求められるため、この開度演算値がゼロにクリアされると、その時点の走行負荷が基準走行負荷となる。従って、この開度演算値が正の値の場合、その時点の走行負荷は上記基準走行負荷より大きくなっていると判定することができ、逆にこの開度演算値が負の場合、その時点での走行負荷は上記基準走行負荷より軽減されていると判定することができる。
【0016】
一方、上記シフトダウン制御手段12は、実車速が目標車速より所定量以上小さい場合にシフトダウン信号を送信することにより、シフト切換部5にシフトダウンを行なわせるようになっている。また、このシフトダウン信号を送信する際には、上記開度演算手段16に対してクリア信号を送信し、その開度演算値をゼロに設定するようになっている。
【0017】
上記オーバーシュート確認手段13は、上記シフトダウン後に実車速と目標車速とを比較することにより、実車速が目標車速を越え、その後再び目標車速に到達する、所謂車速のオーバーシュートを確認するように構成されている。
【0018】
また、定常走行判定手段14は、実車速と目標車速とを比較して、実車速が目標車速に基づいて定められた目標車速範囲内で、しかも時間に対する車速の変化率が所定値以下であるか否かを判定することにより、実車速が目標車速範囲内で安定し、定常走行状態であることを確認するようになっている。
【0019】
一方、シフトアップ制御手段15では、上記開度演算手段16によって求められた開度演算値と、後述するように予め負の値に設定された第一比較基準値あるいは第二比較基準値とを比較することにより走行負荷の減少状態を判定し、これらの判定結果に応じてシフト切換部5にシフトアップ信号を送信して変速機をシフトアップさせるようになっている。実際には、シフトダウン制御手段12でシフトダウンが行なわれた後、実車速のオーバーシュートを確認し、その後定常走行状態を確認したのち、車両の走行負荷状態を表す上記開度演算値が上記第一比較基準値より小さいとき、つまり走行負荷が上記シフトダウン後に減少して充分小さくなっている場合にシフトアップ信号を発信する。
【0020】
もし、この比較において走行負荷が充分小さくなっていない場合には、開度演算値を一旦クリアして新たにこの時点での走行負荷を基準走行負荷として設定し、その後の開度演算値と第二比較基準値との比較を開始する。そして、走行負荷がこの新たに設定された基準走行負荷より充分に減少し、その結果、開度演算値が第二比較基準値より小さくなったことが確認された場合には、このシフトアップ制御手段15からシフトアップ信号をシフト切換部5に発信するようになっている。
【0021】
次に、上記車両の走行制御装置の制御動作を、図2に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0022】
車両が登坂路の走行状態となる等により、車両の走行負荷が大きくなると、実車速Vは降下し始める。すると、ステップS1で目標車速Vsから実車速Vを引いて求めた車速の偏差が所定値Vcより大きいか否かを判定し、この結果YESと判定されるとステップS2へ移行する。このステップ2では、シフト切換部5にシフトダウン信号を送信することにより、シフト切換部5内のオーバードライブ信号をオフし、変速機をオーバードライブから3速にシフトダウンさせて車輪の回転トルクを増大させる。このシフトダウンと同時に、このステップS2では開度演算手段16に開度演算値をクリアさせ、このクリアによってシフトダウン時の走行負荷が基準走行負荷とされる。
【0023】
上記ステップS2でのシフトダウン後、上記定速走行制御手段11により上昇しつつある実車速VをステップS3で監視することにより、実車速Vが目標車速Vsを越え、再び目標車速Vsに到達することによりオーバーシュートが確認される。そして、定常走行判定手段14を構成するステップS4では、実車速Vが目標車速Vs付近で安定し、車両が定常走行状態であることを確認する。このことにより、実車速Vが目標車速Vsに向かって収束する状態となり、車両が安定した走行状態になっていることが確認される。
【0024】
この定常走行状態の確認後、ステップS5で上記開度演算手段16による開度演算値をスロットル開度Kとして設定し、このスロットル開度Kが予め適正に設定した負の値の第一比較基準値K1より小さいか否かを判定する。この第一比較基準値K1は、ステップS2でシフトダウンされた際に設定された基準走行負荷に対してどれだけ走行負荷が減少したかを判定するための比較基準値であり、この第一比較基準値K1は、この判定結果によりシフトアップされてもシフトビジーとならない範囲内で予め大きな値に設定されている。このステップS5での判定の結果、上記シフトダウン時の走行負荷に比較して走行負荷が依然として大きく、まだスロットル開度Kが充分に小さくなっていないためにNOと判定されるとステップ6へ移行し、開度演算手段16にクリア信号を送信することにより開度演算値をゼロに設定し、この時点での走行負荷を新たな基準走行負荷とする。
【0025】
そして、ステップS7では、上記開度演算手段16の開度演算値をスロットル戻り量Lとして設定し、このスロットル戻り量Lが予め適正に設定した負の値の第二比較基準値L1より小さいか否かを判定する。この第二比較基準値は、上記ステップS6で新たに設定された基準走行負荷からどれだけ走行負荷が減少したかを判定するための比較基準値であり、この第二比較基準値L1も、上記第一比較基準値K1と同様にシフトビジーとならない範囲の大きな値に設定されている。従って、上記ステップS6で行なわれたクリア時の基準走行負荷に比較して、走行負荷が充分減少した結果、スロットル戻り量Lが上記第二比較基準値L1より小さくなると、このステップS7でYESと判定され、ステップS8へ移行する。このステップS8では、上記シフト切換部5にシフトアップ信号を送信して、変速機をオーバードライブの位置に切り換える。
【0026】
なお、上記ステップS5において、その判定時点で走行負荷が充分に減少しており、その結果スロットル開度Kが充分小さくなっている場合にはYESと判定され、ステップS8へ移行してシフトアップ信号が送信され、変速機はオーバードライブに切り換えられる。
【0027】
ところで、上記第一比較基準値K1は、実際には上記第二比較基準値L1に比較して一層小さな値とされ、より大きな走行負荷の減少が判定できるように設定されるものであり、これら比較基準値K1,L1は車両の種類等に応じて予め適正に設定される。
【0028】
次に、上記フローチャートによって行なわれる制御動作を、図3に示すタイムチャートに基づいて説明する。まず、図3に示すT1時点でこの制御動作が開始されると、その車両は定速走行制御手段11により定速走行状態となり、上記目標車速範囲内の車速で走行することになる。その後、図3のT2時点から、車両が登坂路の走行を開始するため走行負荷は大きくなり、この結果、実車速Vが下降し始める。そこで、上記ステップS1により車速Vが目標車速Vsより所定値Vc以上降下したと判定されると、上記ステップS2によりシフトダウン信号が送信されてオーバードライブ信号がオフされ、図3のT3時点で示すように変速機が3速にシフトダウンされる。このとき、開度演算手段16の開度演算値が一旦クリアされてゼロになり、この時点の走行負荷が基準走行負荷とされ、再び開度演算値の算出が開始される。
【0029】
そして、上記シフトダウンによって車輪の回転トルクが大きくなると共に、前記定速走行制御手段11が出力増大信号を送信するため、図3で示すT3時点から車速が上昇し始める。その結果、この実車速Vが目標車速Vsを越えて、その後図3のT4で示すように再び目標車速Vsに到達すると、上記ステップS3によりオーバーシュートが確認され、実車速Vが目標車速範囲内で安定すると、ステップS4により図3のT4の時点で定常走行状態と判定される。そして、ステップS5で走行負荷を判定した結果、開度演算値に基づくスロットル開度Kが第一基準値K1より小さくないと判定された場合、図3のT4で示すようにシフトアップを行なうことなく引き続き走行するが、上記開度演算値は再びクリアされる。
【0030】
その後、車両は定速走行制御手段11によって目標車速範囲内の車速で走行し、図3のT5時点から平坦路を走行することになる。すると、走行負荷が減少するため、実際のスロットルバルブの開度を表すバルブ開度が図3で示すT6時点から減少し、演算で求められる開度演算値も同様に小さくなる。そして、図3で示すT7時点で、走行負荷が小さくなったために前記ステップS7により前記スロットル戻り量Lが第二比較基準値L1より小さくなったと判定されると、ステップS8がシフト切換部5にシフトアップ信号を送信することによりオーバードライブ信号をオンさせ、その結果変速機はオーバードライブ位置に切り換られる。
【0031】
このように、本発明に係る車両の走行制御装置は、登坂路を定速走行している車両の実車速Vが目標車速Vsを越えてオーバーシュートしたことを確認したのち、定常走行判定手段14(ステップS4)において定常走行状態を確認し、その後シフトアップ制御手段15によって変速機のシフトアップを行なうように構成しているため、定常走行状態の誤判定によりシフトビジーになることを防止しつつ、適正時期にシフトアップを行なうことができる。
【0032】
例えば、上記オーバーシュートの確認を行なうことなく、定常走行状態の判定を実行すると図4のタイムチャートで示すような事態を生じることがある。例えば、高地の登坂路等を走行することによりエンジン出力が低下して高負荷状態となっている場合、シフトダウンが行なわれた後でも(図4のT11時点)、車速Vは徐々にしか上昇しない。このことにより、図4で示すT12時点でも、この実車速Vの変化率が小さな値となり、しかも実車速Vが上記目標車速範囲内であるため定常走行状態と誤判定される。この判定に基づいて、図4のT13時点で変速機をオーバードライブ位置にシフトすると、実際には実車速Vがまだ収束していないため不安定な状態であり、しかも登坂路の途中で走行負荷は依然とし大きなままであるため、この結果図4のT14時点から実車速Vが減少する。そして、この後再びシフトダウンされることとなり、その結果シフトビジーの状態となる。
【0033】
また、定常走行状態を確認後、このシフトアップ制御手段15では、開度演算値に基づいて求められたスロットル開度Kと上記の第一比較基準値K1とを比較判定することにより、既に走行負荷が充分減少されている場合にはすぐにシフトアップを実行する。一方、走行負荷が大きな状態のままである場合には、一旦開度演算値をクリアした後、算出される開度演算値に基づいて求められたスロットル戻り量Lと上記第二比較基準値L1とを比較判定し、スロットル戻り量Lの方が小さくなり走行負荷が充分に減少されたことを確認してシフトアップする。
【0034】
このように2つの比較基準値K1,L1を用いることにより、走行負荷の減少状態を2つの状況に場合分けして判定することにより、この判定結果に基づいて行なわれるシフトアップが一層遅滞無く行なわれる。また、上記の第一比較基準値K1,第二比較基準値L1を予め車両の種類や用途によって適正な値に設定することにより、その車両にとって最適な応答性で変速機のシフトアップを行なうことができる。
【0035】
なお、エンジンの負荷状態をセンサではなく、定速走行制御手段11からの出力増大信号と出力減少信号とに基づいて演算によって求めるように構成してもよく、この場合にはセンサの調整ずれや破損によりエンジンの負荷状態が誤判定されることに起因するシフトビジーの発生が防止される。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る車両の走行制御装置は、車速の降下により変速機がシフトダウンされた場合、オーバーシュート確認手段によって車速のオーバーシュートを確認し、このオーバーシュートが確認された場合、定常走行判定手段が安定した走行状態を確認し、その後シフトアップ制御手段において、予め適正な値に設定した比較基準値と、走行負荷に相当するパラメーターとを比較するように構成したため、走行状態が安定したことを確認した後で走行負荷の減少状態が判定されることとなり、シフトビジーになるのが確実に抑制される。この結果、従来の場合と比較して負荷の少ない減少でシフトアップできるように上記比較基準値に対する余裕を小さく設定することができる。このため、走行負荷が減少したことを確認する判定結果を迅速に得ることができ、変速機のシフトアップを遅滞なく行なうことができる。こうして、走行負荷の減少に対してシフトアップが適正な時期に行なわれることにより、ドライバーに快適なドライブフィーリングを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の走行制御装置の実施例を示す概略説明図である。
【図2】上記走行制御装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】上記走行制御装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【図4】オーバーシュート確認手段を設けない場合の上記走行制御装置の制御動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 制御手段
2 車速センサ
3 車速設定手段
4 エンジン出力調整部
5 シフト切換部
11 定速走行制御手段
12 シフトダウン制御手段
13 オーバーシュート確認手段
14 定常走行判定手段
15 シフトアップ制御手段
16 開度演算手段
Claims (1)
- 車速を検出する車速センサと、目標とする車速を設定してこれを記憶する車速設定手段と、エンジンの出力を調整するエンジン出力調整部と、変速機のシフト位置を変更するシフト切換部と、上記目標車速に基づいて設定された目標車速範囲内で車両を走行させるように制御する制御手段とを有する車両の走行制御装置において、
上記制御手段には、車速と目標車速との速度差に応じた出力調整信号を上記エンジン出力調整部等に送信する定速走行制御手段と、車速が上記目標車速範囲より低い場合、上記シフト切換部に変速機をシフトダウンさせるシフトダウン制御手段と、
車速が目標車速を越えたことを確認するオーバーシュート確認手段と、
このオーバーシュートが確認された場合に、車速が上記目標車速範囲内で安定していることを確認する定常走行判定手段と、
この定常走行状態が確認されたときに、走行負荷に相当するパラメーターと、予め設定された第一比較基準値とを比較して、その比較に基づき、走行負荷が上記第一比較基準値に相当する所定量よりも減少した場合に変速機をシフトアップさせ、走行負荷が所定量以上の場合には、この比較を行なった時点での走行負荷を基準にした走行負荷減少分に相当するパラメーターと、予め設定された第二比較基準値とを比較して、その比較に基づき、上記走行負荷減少分が上記第二比較基準値に相当する量を超えたときに変速機をシフトアップさせるシフトアップ制御手段とを設けたことを特徴とする車両の走行制御装置。
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- 1993-09-03 JP JP22016993A patent/JP3647475B2/ja not_active Expired - Fee Related
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