JP3647114B2 - マイクロポンプおよびこれを用いた液体噴射記録ヘッドならびに該液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子の外径が数μmないし数mmであるマイクロポンプおよびこれを用いた液体噴射記録ヘッドならびに該液体噴射記録ヘッドを搭載する液体憤射記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にバブルジェットプリンタと呼ばれているバブルジェット方式の液体噴射記録装置においては、印字開始前や印字中定期的に液体噴射記録ヘッドのノズル(液流路)を負圧吸引し、印字中にノズル内に溜まった泡を除去して吐出性能を回復させるメンテナンスを必要とする。
【0003】
そこで液体噴射記録ヘッドの共通液室のインク(記録液)を吸引するためのポンプが必要であり、また、吸引されたインクを回収するためのタンクやインク吸収体等を液体噴射記録ヘッドに搭載しなければならず、このために液体噴射記録ヘッドが大型化かつ高コスト化する傾向にある。
【0004】
図12は一従来例による液体噴射記録ヘッドE0 の主要部を示すもので、これは、一列に配設された発熱部1001aとこれに接続されたリード電極1001b等を有するヒーターボード1000と、その表面に積層された樹脂層1010と、該樹脂層1010の頂部を覆う天板1020を有し、樹脂層1010は、ヒーターボード1000の各発熱部1001aに面したノズル1011とこれらに連通する共通液室1012を形成し、また、天板1020の開口1020aには共通液室1012にインクを供給するためのインク供給管1021が接続される。
【0005】
図示しない駆動回路からリード電極1001bを経て発熱部1001aに電流が供給されると、ノズル1011内のインクが加熱され膜沸騰によって飛翔液滴となってノズル1011から吐出され、印字が行なわれる。
【0006】
このような印字を繰り返えすと駆動条件によってはノズル1011内に泡が溜まり、このためにノズル1011内に充分なインクが補給されない状態となって不吐出部が発生し、不良印字となるおそれがある。
【0007】
従って、前述のようにノズル1011内のインクを負圧吸引し、溜まった泡を除去するメンテナンスが必要であり、このための吸引ポンプを別途用意しておくのが一般的であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術によれば、液体噴射記録ヘッドのノズルを負圧吸引するためのポンプを別途用意しておき、必要に応じて天板のインク供給管に接続してメンテナンスを行なうものであるために、装置の複雑化やランニングコストの上昇を招き、加えて、負圧吸引した廃インクを回収して処理するためのタンクやインク吸収体等を搭載しなければならず、装置が大型化するという未解決の課題がある。
【0009】
そこで、小型の吸引ポンプを内蔵した液体噴射記録ヘッドの開発が望まれているが、市販されているダイヤフラム式、ギヤ式の定量注入ポンプあるいはこれより小型のベロー式やチューブ式等の微量定量ポンプ等は、小さいものでも外寸(縦、横、高さ)が100〜200mmであり、また、動力源として外部電源を必要とするため、これらを液体噴射記録ヘッドに搭載すると液体噴射記録ヘッドの大型化を避けることができず、また、組立工程も著しく複雑になる。
【0010】
さらに、近年では、高速印字のためにマルチノズル化が進み、液体噴射記録ヘッドの共通液室が大きくなってこれに収容されるインク量が増大する傾向にあるが、共通液室内のインク量が増大すると、インクの温度や粘度等にバラつきを生じ、印字の濃度ムラ等の印字品位の劣化を招きやすいという未解決の課題がある。
【0011】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、超小型で部品の製造コストが低くしかも組み付けも簡単であるマイクロポンプおよびこれを用いた液体噴射記録ヘッドならびに該液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明のマイクロポンプは、基板の表面に設けられた少なくとも1個の発熱部と、該発熱部に沿った液体収容部を有する液体収容手段と、該液体収容手段の前記液体収容部に回転自在に支持された第1の回転子と、該第1の回転子と一体である第2の回転子を有し、前記第1の回転子が、前記発熱部の発熱に伴う前記液体収容部の液体の沸騰によって回転することによって前記第2の回転子を回転駆動し、そのまわりの流体を流動させるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
各回転子が、プラスチック材料を射出成形することによって一体成形されたものであるとよい。
【0014】
また、本発明の液体噴射記録ヘッドは、複数の液滴吐出用の発熱部を有する基板と、該基板の各発熱部に沿った液流路とこれに連通する共通液室を有する液流路構成手段と、該液流路構成手段の前記共通液室の液体を強制流動させる少なくとも1個のマイクロポンプを有し、該マイクロポンプが、前記基板の所定の部位に設けられた第2の発熱部と、その発熱に伴う前記液体の沸騰によって回転する第1の回転子と、該第1の回転子の回転によって回転駆動される第2の回転子を備えていることを特徴とする。
【0015】
マイクロポンプが一対設けられており、一方のマイクロポンプが共通液室に液体を供給し、他方のマイクロポンプが排出するように構成されているとよい。
【0016】
【作用】
基板の発熱部の発熱によって液体収容部の液体を加熱して沸騰させ、発生した気泡を回転子の羽根に受けて第1の回転子を回転させ、これによって第2の回転子を回転駆動する。第2の回転子の回転によってそのまわりの液体を強制流動させ、該液体の供給、排出や撹拌等を行なう。
【0017】
基板の発熱部は、液体噴射記録ヘッドの電気熱変換体と同様の工程で容易に製作されるものであり、液体収容手段の液体収容部にら旋状等の羽根を有する第1の回転子を嵌合させるだけであるから、組立工程が極めて簡単であり、装置全体が著しく大型化するおそれもない。
【0018】
また、各回転子自体も、プラスチック材料を用いた射出成形等によって超小型のものを低コストで製作できる。
【0019】
このようなマイクロポンプを液体噴射記録ヘッドに組み込んで液体を強制循環させることで、常時良好な液体吐出性能を維持することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は一実施例によるマイクロポンプをその一部分を破断した状態で示す斜視図である。これは、所定の軸Oのまわりに等間隔で配設された3個の発熱部1a〜1c(発熱部1cは図示せず)を有する基板1と、その表面に接着された液体収容手段である天板2と、天板2の底部に形成された液体収容部である円筒状のモータ室2aに回転自在に嵌合する第1の回転子3を有し、図1においては、天板2の上部と図示左側の側部を破断した状態で示されている。
【0022】
図2に示すように、天板2の上部には液室2bが設けられ、液室2bの上端は、天板2を図示上向きに貫通する図示しない配管に開口している。第1の回転子3はスピンドル4を介して第2の回転子5と一体的に結合されており、第2の回転子5は液室2b内に配設され、第2の回転子5の回転によって、液室2b内の液体が撹拌あるいは供給、排出される。
【0023】
基板1の各発熱部1a〜1cは、基板1の端縁に露出する個別端子11a〜11cおよび共通端子11dに接続されており、これらを介して所定のタイミングで逐次または同時に通電されて発熱し、モータ室2a内の液体を加熱し、これを沸騰させる。
【0024】
第1の回転子3は基板1の発熱部1a〜1cと同数すなわち、3個の羽根3a〜3cを有し、これらは、各発熱部1a〜1cの発熱によって発生した気泡の膨張圧を受けて第1の回転子3を回転させる。これによって第2の回転子5が回転駆動され、前述のように液室2b内の液体を供給、排出あるいは撹拌するポンプ作用を行なう。
【0025】
本実施例によるマイクロポンプは液体噴射記録ヘッドの記録液であるインクを強制的に循環あるいは撹拌するために開発されたものであり、基板1の内部構造は、図3に示すように、シリコン基板からなる本体12を有し、その表面を熱酸化することで、SiO2 層13を略1.2μm形成させ、そのうえに層間絶縁膜として膜厚略1.2μmのSiO2 膜14をPE−CVD法等によって成膜し、次いで膜厚1000Åの窒化タンタル膜からなる発熱抵抗体15を反応性スパッタリング法によって積層し、さらに、膜厚5500ÅのAl配線層16をスパッタリング法によって積層してパターニングし、パターニングされたAl配線層16の中断部分から露出する発熱抵抗体15によって発熱部1a〜1cを構成するものである。
【0026】
Al配線層16および発熱抵抗体15の露出表面は、PE−CVD法によって成膜された膜厚1μmのSi3 N4 層(窒化シリコン層)17とこれに積層された膜厚2300ÅのTa層(タンタル層)18からなる保護層によって覆われる。
【0027】
各発熱部1a〜1cの個別端子11a〜11cおよび共通端子11dは、図4に示すように、パターニングされたAl配線層16の端部に配設され、前記保護層に設けられたスルーホールから露出する。
【0028】
なお、本実施例においては基板1の本体にシリコン基板を用いたが、これに替えて、ガラス板やAl2 O3 等のセラミック板を用いることもできる。
【0029】
各発熱部1a〜1cの大きさは、幅200μm、長さ300μmであり、発熱抵抗体15のシート抵抗は21Ω/口、抵抗値31.5Ωである。そこで図5に示すように、共通端子11dを印加電圧30Vの電源VHに接続し、各個別端子11a〜11cをそれぞれオン時間が20μsecであるトランジスタ41に接続すれば、モータ室2a内の液体(インク)を発泡させるのに充分なエネルギーを得ることができる。
【0030】
第1の回転子3の各羽根3a〜3cは、図1に示すように、第1の回転子3の軸部のまわりに等間隔で配設され、基板1の各発熱部1a〜1cにおいて液体の沸騰によって発生する気泡の膨張圧を回転トルクに変換しやすいように、極めて薄い板状体を軸部のまわりにら旋状に巻き付けて得られる形状を有する。
【0031】
また、第1の回転子3と一体である第2の回転子5も同様に3個の羽根5a〜5cを有し、これらの形状は第1の回転子3の各羽根3a〜3cと同様である。
【0032】
第1の回転子3とスピンドル4と第2の回転子5からなる回転体の材質は、比重が小さくて射出成形等による一体成形の容易なプラスチック材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等が望ましい。
【0033】
第1の回転子3の寸法は、例えば、その最大外径が2mm、軸部の直径が0.5mm、各羽根3a〜3cの厚さが0.2mm、軸部の長さが0.4mmに設定される。第2の回転子5の寸法もこれと同様である。
【0034】
液室2b内の液体が、例えば水を主成分とし、粘度が4〜5cp程度のインク等の液体であれば、第2の回転子5によるポンプ作用によって液室2b内の液体を略0.1〜5cc/minの速度でくみ上げることができる。
【0035】
また、液体の発泡を動力源とするものであるからポンプ作用の立ち上がりや立ち下がりが極めて迅速であり、液体を一定のインターバルで間欠的にくみ上げたり、撹拌するのに好適である。
【0036】
さらに、ポンプ作用も安定しており、一定の流量をむらなくくみ上げることができる。
【0037】
加えて、各回転子の製作も容易であり、材料も高価なものを必要とせず、従って部品コストが低く、超小型でしかも安価なマイクロマシンを実現できる。
【0038】
図6は、本実施例と同様のマイクロポンプM1 ,M2 を一対用いた液体噴射記録ヘッドE1 の主要部を示す部分斜視図であって、これは、前述の基板1と同様の内部構造を有する基板81と、その表面に後述する弾性部材によって押圧されたプラスチック製の液流路構成手段である天板82を有し、基板81は、その一端に近接して一列に配設された液滴吐出用の発熱部81aと、中央部分に設けられた一対のマイクロポンプ用の第2の発熱部(図示せず)を有し、基板81の他端には、液滴吐出用の発熱部81aとマイクロポンプ用の発熱部にそれぞれ所定のタイミングで通電するための個別端子81bと図示しない共通端子が露出している。
【0039】
天板82は、一対の管状の突出部82a(一方は図示せず)と、一列に配設されたオリフィスを有するオリフィスプレート部82bを有し、天板82の本体部分82cには、オリフィスプレート部82bの各オリフィス82dに連通する液流路(ノズル)82eと、共通液室82fが形成されている。共通液室82f内にはマイクロポンプM1 ,M2 が配設され、これらはそれぞれ、前述の回転子3,5と同様の第1、第2の回転子を有する。
【0040】
天板82のオリフィスプレート部82bの各オリフィス82dは、例えば、約4.5mmにわたって等間隔で約360dpi(dotts per inch)の高密度で配設されている。
【0041】
基板81の液滴吐出用の発熱部81aおよびマイクロポンプ用の発熱部は同じ内部構造を示し、面積が異なるだけであるから、同一工程で製作される。なお、マイクロポンプ用の発熱部の寸法は例えば105×40μm2 であり、液滴吐出用の発熱部81aは前述のドット数を実現する極めて微小な面積を有する。
【0042】
天板82は前述の天板1と同様に射出成形によって一体成形したうえで、オリフィスプレート部82bの表面に撥水性被膜(サイトップCTX 旭ガラス製)を塗布する。必要であれば、これを塗布する前に、密着性を向上させるための密着性向上剤(シランカップリング剤 A1110 日本ユニカ製)を塗布するとよい。
【0043】
なお、基板81は、液滴吐出用の発熱部81aやマイクロポンプ用の発熱部を所定のタイミングで駆動するための図示しない駆動回路を搭載したプリント基板84とともに放熱板85に支持されている。
【0044】
記録液であるインクは、インク供給側のマイクロポンプM1 によって共通液室82fに吸入され、インク排出側のマイクロポンプM2 によって排出される。
【0045】
共通液室82fから各液流路82eに流入したインクは前述の駆動回路によって選択的に発熱する液滴吐出用の発熱部81aによって加熱されて発泡し、飛翔液滴としてオリフィスプレート部82bのオリフィス82dから吐出され、図示しない記録紙等に被着して印刷が行なわれる。
【0046】
さらに、排出側のマイクロポンプM2 を一時的に停止あるいは減速させることで共通液室82f内のインクの圧力を上昇させ、各液流路82eから強制的にインクを押し出すことで液流路82e内の付着物を除去し、液滴吐出性能を回復することができる。従来は、液滴吐出性能の回復を、別途用意されたポンプによって行なっていたが、本実施例によれば液体噴射記録ヘッド内に内蔵されたマイクロポンプを用いることができる。従って、液体噴射記録装置の組立工程やメンテナンスを大幅に簡略化できる。
【0047】
図7および図8は本実施例による液体噴射記録ヘッドE1 を搭載した液体噴射記録ヘッドカートリッジの全体の組み立てを説明するもので、まず、天板82を弾性部材86によって基板81に押圧してこれらを一体化したうえで、基板81とプリント基板84を放熱板85にビス止めし、天板82の各突出部82aに嵌合する供給管と排出管を有するインク供給部材87を天板82に組み付ける。
【0048】
このように組み立てたものを、インク(記録液)をしみ込ませるためのスポンジ88aを内蔵するインクタンク88の凹所88bに位置させ、側板89をインクタンク88にビス止めし、反対側をフタ90によって閉塞する。なお、必要であれば、インク供給部材87を天板82に組み付けたうえで各部の漏れ止めと保護のためにシリコーンシーラントTES−399(東芝シリコーン製)等やウレタン系あるいはエポキシ系の封止剤を注入する。
【0049】
次に、本実施例による液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置について図9を参照して説明する。
【0050】
液体噴射記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」という)103とインクタンクであるインク容器とを接合した記録ヘッドカートリッジを搭載したキャリッジ101はガイド軸104および螺旋溝105aをもつリードスクリュ105に案内され、キヤリッジ101上には、インク容器が内装されたインク容器カセット102を装着することが可能である。
【0051】
リードスクリュ105は、正逆回転する駆動モータ106によって歯車列106a,106b,106c,106dを介して正逆回転され、その螺旋溝105aに先端部が係合したキャリッジ101に設けられているピン(図示せず)を介してキャリッジ101を矢印方向および反矢印方向へ往復移動させる。駆動モータ106の正逆回転の切換は、キャリッジ101がホームポジションにあることをキャリッジ101に設けられたレバー115とフォトカプラ116とで検出することにより行なう。
【0052】
他方、被記録媒体である記録紙109は、プラテン107に押え板108によって押圧され、被記録媒体を記録紙ヘッドに対向するように搬送する搬送手段である紙送りモータ110によって駆動される紙送りローラ(図示せず)によって記録ヘッド103に対向するように搬送される。
【0053】
図10および図11は、本実施例による液体噴射記録ヘッドを搭載した別の液体噴射記録装置の全体図で、記録媒体の記録幅に対応した幅を有するいわゆるフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドおよびそのインクジェット記録ヘッドを使用したインクジェット記録装置の模式的概略説明図である。フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドは、その性質上、吐出口の数が多数であって、本発明の効果が最も顕著にあらわれるものである。
【0054】
この記録装置では、フルラインタイプのインクジェット記録ヘッド200は、記録媒体搬送ローラ300によって搬送される紙や布等の記録媒体400に対向して配置されている。そして、記録媒体400を搬送しながら、フルラインタイプのインクジェット記録ヘッド200から記録信号に応じてインクを記録媒体400に向けてインクを吐出することにより、長尺の記録媒体400に記録がなされる。本発明の場合、吐出エネルギー発生素子を設けたヒータボードを複数個並べることでインクジェット記録ヘッドを製造するので、フルラインタイプの記録ヘッドのような長いインクジェット記録ヘッドでも容易に製造することができる。
【0055】
本発明は、特に液体噴射記録方式の中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を行なう、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0056】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。
【0057】
この記録方式を簡単に説明すると、記録液(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている発熱部である電気熱変換体に電気信号を供給して発熱させる駆動手段である駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記録情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越え、膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与えるための少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)から電気熱変換体に付与する駆動信号に一対一に対応した気泡を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0058】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書に開示されているように、熱作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものにも本発明は有効である。
【0059】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成を有するものにおいても本発明は有効である。
【0060】
さらに、本発明が有効に利用される記録ヘッドとしては、記録装置が記録可能である記録媒体の最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッドがある。このフルラインタイプの記録ヘッドは、上述した明細書に開示されているような記録ヘッドを複数組み合わせることによってフルライン構成にしたものや、一体的に形成された一個のフルラインタイプの記録ヘッドであってもよい。
【0061】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0062】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせで構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0063】
本発明において、上述した各インクにたいして最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0064】
さらに加えて、本発明のインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0066】
超小型で部品の製造コストが低くしかも組み付けが簡単であるマイクロポンプを実現できる。このようなマイクロポンプを液体噴射記録ヘッドに組み込むことで、常時良好な記録液(インク)吐出性能を維持する液体噴射記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例によるマイクロポンプをその一部を破断した状態で示す一部破断斜視図である。
【図2】図1の装置を示す模式断面図である。
【図3】図1の装置の基板の内部構造を示す模式断面図である。
【図4】図1の装置の発熱部とその接続配線を説明する説明図である。
【図5】図1の装置の発熱部の電気回路を説明する説明図である。
【図6】図1の装置と同様のマイクロポンプを用いた液体噴射記録ヘッドの主要部を一部破断して示す一部破断斜視図である。
【図7】図6の液体噴射記録ヘッドを用いた液体噴射記録ヘッドカートリッジを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図8】図7の液体噴射記録ヘッドカートリッジを組み立てた状態で示す斜視図である。
【図9】液体噴射記録装置の全体を示す斜視図である。
【図10】フルラインタイプの液体噴射記録ヘッドを示す模式斜視図である。
【図11】図10の液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置を示す模式斜視図である。
【図12】従来例による液体噴射記録ヘッドの主要部を一部破断した状態で示す一部破断部分斜視図である。
【符号の説明】
M1 ,M2 マイクロポンプ
1,81 基板
1a,1b,1c,81a 発熱部
2,82 天板
3,5 回転子
3a〜3c,5a〜5c 羽根
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転子の外径が数μmないし数mmであるマイクロポンプおよびこれを用いた液体噴射記録ヘッドならびに該液体噴射記録ヘッドを搭載する液体憤射記録装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的にバブルジェットプリンタと呼ばれているバブルジェット方式の液体噴射記録装置においては、印字開始前や印字中定期的に液体噴射記録ヘッドのノズル(液流路)を負圧吸引し、印字中にノズル内に溜まった泡を除去して吐出性能を回復させるメンテナンスを必要とする。
【0003】
そこで液体噴射記録ヘッドの共通液室のインク(記録液)を吸引するためのポンプが必要であり、また、吸引されたインクを回収するためのタンクやインク吸収体等を液体噴射記録ヘッドに搭載しなければならず、このために液体噴射記録ヘッドが大型化かつ高コスト化する傾向にある。
【0004】
図12は一従来例による液体噴射記録ヘッドE0 の主要部を示すもので、これは、一列に配設された発熱部1001aとこれに接続されたリード電極1001b等を有するヒーターボード1000と、その表面に積層された樹脂層1010と、該樹脂層1010の頂部を覆う天板1020を有し、樹脂層1010は、ヒーターボード1000の各発熱部1001aに面したノズル1011とこれらに連通する共通液室1012を形成し、また、天板1020の開口1020aには共通液室1012にインクを供給するためのインク供給管1021が接続される。
【0005】
図示しない駆動回路からリード電極1001bを経て発熱部1001aに電流が供給されると、ノズル1011内のインクが加熱され膜沸騰によって飛翔液滴となってノズル1011から吐出され、印字が行なわれる。
【0006】
このような印字を繰り返えすと駆動条件によってはノズル1011内に泡が溜まり、このためにノズル1011内に充分なインクが補給されない状態となって不吐出部が発生し、不良印字となるおそれがある。
【0007】
従って、前述のようにノズル1011内のインクを負圧吸引し、溜まった泡を除去するメンテナンスが必要であり、このための吸引ポンプを別途用意しておくのが一般的であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の技術によれば、液体噴射記録ヘッドのノズルを負圧吸引するためのポンプを別途用意しておき、必要に応じて天板のインク供給管に接続してメンテナンスを行なうものであるために、装置の複雑化やランニングコストの上昇を招き、加えて、負圧吸引した廃インクを回収して処理するためのタンクやインク吸収体等を搭載しなければならず、装置が大型化するという未解決の課題がある。
【0009】
そこで、小型の吸引ポンプを内蔵した液体噴射記録ヘッドの開発が望まれているが、市販されているダイヤフラム式、ギヤ式の定量注入ポンプあるいはこれより小型のベロー式やチューブ式等の微量定量ポンプ等は、小さいものでも外寸(縦、横、高さ)が100〜200mmであり、また、動力源として外部電源を必要とするため、これらを液体噴射記録ヘッドに搭載すると液体噴射記録ヘッドの大型化を避けることができず、また、組立工程も著しく複雑になる。
【0010】
さらに、近年では、高速印字のためにマルチノズル化が進み、液体噴射記録ヘッドの共通液室が大きくなってこれに収容されるインク量が増大する傾向にあるが、共通液室内のインク量が増大すると、インクの温度や粘度等にバラつきを生じ、印字の濃度ムラ等の印字品位の劣化を招きやすいという未解決の課題がある。
【0011】
本発明は上記従来の技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、超小型で部品の製造コストが低くしかも組み付けも簡単であるマイクロポンプおよびこれを用いた液体噴射記録ヘッドならびに該液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明のマイクロポンプは、基板の表面に設けられた少なくとも1個の発熱部と、該発熱部に沿った液体収容部を有する液体収容手段と、該液体収容手段の前記液体収容部に回転自在に支持された第1の回転子と、該第1の回転子と一体である第2の回転子を有し、前記第1の回転子が、前記発熱部の発熱に伴う前記液体収容部の液体の沸騰によって回転することによって前記第2の回転子を回転駆動し、そのまわりの流体を流動させるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
各回転子が、プラスチック材料を射出成形することによって一体成形されたものであるとよい。
【0014】
また、本発明の液体噴射記録ヘッドは、複数の液滴吐出用の発熱部を有する基板と、該基板の各発熱部に沿った液流路とこれに連通する共通液室を有する液流路構成手段と、該液流路構成手段の前記共通液室の液体を強制流動させる少なくとも1個のマイクロポンプを有し、該マイクロポンプが、前記基板の所定の部位に設けられた第2の発熱部と、その発熱に伴う前記液体の沸騰によって回転する第1の回転子と、該第1の回転子の回転によって回転駆動される第2の回転子を備えていることを特徴とする。
【0015】
マイクロポンプが一対設けられており、一方のマイクロポンプが共通液室に液体を供給し、他方のマイクロポンプが排出するように構成されているとよい。
【0016】
【作用】
基板の発熱部の発熱によって液体収容部の液体を加熱して沸騰させ、発生した気泡を回転子の羽根に受けて第1の回転子を回転させ、これによって第2の回転子を回転駆動する。第2の回転子の回転によってそのまわりの液体を強制流動させ、該液体の供給、排出や撹拌等を行なう。
【0017】
基板の発熱部は、液体噴射記録ヘッドの電気熱変換体と同様の工程で容易に製作されるものであり、液体収容手段の液体収容部にら旋状等の羽根を有する第1の回転子を嵌合させるだけであるから、組立工程が極めて簡単であり、装置全体が著しく大型化するおそれもない。
【0018】
また、各回転子自体も、プラスチック材料を用いた射出成形等によって超小型のものを低コストで製作できる。
【0019】
このようなマイクロポンプを液体噴射記録ヘッドに組み込んで液体を強制循環させることで、常時良好な液体吐出性能を維持することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は一実施例によるマイクロポンプをその一部分を破断した状態で示す斜視図である。これは、所定の軸Oのまわりに等間隔で配設された3個の発熱部1a〜1c(発熱部1cは図示せず)を有する基板1と、その表面に接着された液体収容手段である天板2と、天板2の底部に形成された液体収容部である円筒状のモータ室2aに回転自在に嵌合する第1の回転子3を有し、図1においては、天板2の上部と図示左側の側部を破断した状態で示されている。
【0022】
図2に示すように、天板2の上部には液室2bが設けられ、液室2bの上端は、天板2を図示上向きに貫通する図示しない配管に開口している。第1の回転子3はスピンドル4を介して第2の回転子5と一体的に結合されており、第2の回転子5は液室2b内に配設され、第2の回転子5の回転によって、液室2b内の液体が撹拌あるいは供給、排出される。
【0023】
基板1の各発熱部1a〜1cは、基板1の端縁に露出する個別端子11a〜11cおよび共通端子11dに接続されており、これらを介して所定のタイミングで逐次または同時に通電されて発熱し、モータ室2a内の液体を加熱し、これを沸騰させる。
【0024】
第1の回転子3は基板1の発熱部1a〜1cと同数すなわち、3個の羽根3a〜3cを有し、これらは、各発熱部1a〜1cの発熱によって発生した気泡の膨張圧を受けて第1の回転子3を回転させる。これによって第2の回転子5が回転駆動され、前述のように液室2b内の液体を供給、排出あるいは撹拌するポンプ作用を行なう。
【0025】
本実施例によるマイクロポンプは液体噴射記録ヘッドの記録液であるインクを強制的に循環あるいは撹拌するために開発されたものであり、基板1の内部構造は、図3に示すように、シリコン基板からなる本体12を有し、その表面を熱酸化することで、SiO2 層13を略1.2μm形成させ、そのうえに層間絶縁膜として膜厚略1.2μmのSiO2 膜14をPE−CVD法等によって成膜し、次いで膜厚1000Åの窒化タンタル膜からなる発熱抵抗体15を反応性スパッタリング法によって積層し、さらに、膜厚5500ÅのAl配線層16をスパッタリング法によって積層してパターニングし、パターニングされたAl配線層16の中断部分から露出する発熱抵抗体15によって発熱部1a〜1cを構成するものである。
【0026】
Al配線層16および発熱抵抗体15の露出表面は、PE−CVD法によって成膜された膜厚1μmのSi3 N4 層(窒化シリコン層)17とこれに積層された膜厚2300ÅのTa層(タンタル層)18からなる保護層によって覆われる。
【0027】
各発熱部1a〜1cの個別端子11a〜11cおよび共通端子11dは、図4に示すように、パターニングされたAl配線層16の端部に配設され、前記保護層に設けられたスルーホールから露出する。
【0028】
なお、本実施例においては基板1の本体にシリコン基板を用いたが、これに替えて、ガラス板やAl2 O3 等のセラミック板を用いることもできる。
【0029】
各発熱部1a〜1cの大きさは、幅200μm、長さ300μmであり、発熱抵抗体15のシート抵抗は21Ω/口、抵抗値31.5Ωである。そこで図5に示すように、共通端子11dを印加電圧30Vの電源VHに接続し、各個別端子11a〜11cをそれぞれオン時間が20μsecであるトランジスタ41に接続すれば、モータ室2a内の液体(インク)を発泡させるのに充分なエネルギーを得ることができる。
【0030】
第1の回転子3の各羽根3a〜3cは、図1に示すように、第1の回転子3の軸部のまわりに等間隔で配設され、基板1の各発熱部1a〜1cにおいて液体の沸騰によって発生する気泡の膨張圧を回転トルクに変換しやすいように、極めて薄い板状体を軸部のまわりにら旋状に巻き付けて得られる形状を有する。
【0031】
また、第1の回転子3と一体である第2の回転子5も同様に3個の羽根5a〜5cを有し、これらの形状は第1の回転子3の各羽根3a〜3cと同様である。
【0032】
第1の回転子3とスピンドル4と第2の回転子5からなる回転体の材質は、比重が小さくて射出成形等による一体成形の容易なプラスチック材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等が望ましい。
【0033】
第1の回転子3の寸法は、例えば、その最大外径が2mm、軸部の直径が0.5mm、各羽根3a〜3cの厚さが0.2mm、軸部の長さが0.4mmに設定される。第2の回転子5の寸法もこれと同様である。
【0034】
液室2b内の液体が、例えば水を主成分とし、粘度が4〜5cp程度のインク等の液体であれば、第2の回転子5によるポンプ作用によって液室2b内の液体を略0.1〜5cc/minの速度でくみ上げることができる。
【0035】
また、液体の発泡を動力源とするものであるからポンプ作用の立ち上がりや立ち下がりが極めて迅速であり、液体を一定のインターバルで間欠的にくみ上げたり、撹拌するのに好適である。
【0036】
さらに、ポンプ作用も安定しており、一定の流量をむらなくくみ上げることができる。
【0037】
加えて、各回転子の製作も容易であり、材料も高価なものを必要とせず、従って部品コストが低く、超小型でしかも安価なマイクロマシンを実現できる。
【0038】
図6は、本実施例と同様のマイクロポンプM1 ,M2 を一対用いた液体噴射記録ヘッドE1 の主要部を示す部分斜視図であって、これは、前述の基板1と同様の内部構造を有する基板81と、その表面に後述する弾性部材によって押圧されたプラスチック製の液流路構成手段である天板82を有し、基板81は、その一端に近接して一列に配設された液滴吐出用の発熱部81aと、中央部分に設けられた一対のマイクロポンプ用の第2の発熱部(図示せず)を有し、基板81の他端には、液滴吐出用の発熱部81aとマイクロポンプ用の発熱部にそれぞれ所定のタイミングで通電するための個別端子81bと図示しない共通端子が露出している。
【0039】
天板82は、一対の管状の突出部82a(一方は図示せず)と、一列に配設されたオリフィスを有するオリフィスプレート部82bを有し、天板82の本体部分82cには、オリフィスプレート部82bの各オリフィス82dに連通する液流路(ノズル)82eと、共通液室82fが形成されている。共通液室82f内にはマイクロポンプM1 ,M2 が配設され、これらはそれぞれ、前述の回転子3,5と同様の第1、第2の回転子を有する。
【0040】
天板82のオリフィスプレート部82bの各オリフィス82dは、例えば、約4.5mmにわたって等間隔で約360dpi(dotts per inch)の高密度で配設されている。
【0041】
基板81の液滴吐出用の発熱部81aおよびマイクロポンプ用の発熱部は同じ内部構造を示し、面積が異なるだけであるから、同一工程で製作される。なお、マイクロポンプ用の発熱部の寸法は例えば105×40μm2 であり、液滴吐出用の発熱部81aは前述のドット数を実現する極めて微小な面積を有する。
【0042】
天板82は前述の天板1と同様に射出成形によって一体成形したうえで、オリフィスプレート部82bの表面に撥水性被膜(サイトップCTX 旭ガラス製)を塗布する。必要であれば、これを塗布する前に、密着性を向上させるための密着性向上剤(シランカップリング剤 A1110 日本ユニカ製)を塗布するとよい。
【0043】
なお、基板81は、液滴吐出用の発熱部81aやマイクロポンプ用の発熱部を所定のタイミングで駆動するための図示しない駆動回路を搭載したプリント基板84とともに放熱板85に支持されている。
【0044】
記録液であるインクは、インク供給側のマイクロポンプM1 によって共通液室82fに吸入され、インク排出側のマイクロポンプM2 によって排出される。
【0045】
共通液室82fから各液流路82eに流入したインクは前述の駆動回路によって選択的に発熱する液滴吐出用の発熱部81aによって加熱されて発泡し、飛翔液滴としてオリフィスプレート部82bのオリフィス82dから吐出され、図示しない記録紙等に被着して印刷が行なわれる。
【0046】
さらに、排出側のマイクロポンプM2 を一時的に停止あるいは減速させることで共通液室82f内のインクの圧力を上昇させ、各液流路82eから強制的にインクを押し出すことで液流路82e内の付着物を除去し、液滴吐出性能を回復することができる。従来は、液滴吐出性能の回復を、別途用意されたポンプによって行なっていたが、本実施例によれば液体噴射記録ヘッド内に内蔵されたマイクロポンプを用いることができる。従って、液体噴射記録装置の組立工程やメンテナンスを大幅に簡略化できる。
【0047】
図7および図8は本実施例による液体噴射記録ヘッドE1 を搭載した液体噴射記録ヘッドカートリッジの全体の組み立てを説明するもので、まず、天板82を弾性部材86によって基板81に押圧してこれらを一体化したうえで、基板81とプリント基板84を放熱板85にビス止めし、天板82の各突出部82aに嵌合する供給管と排出管を有するインク供給部材87を天板82に組み付ける。
【0048】
このように組み立てたものを、インク(記録液)をしみ込ませるためのスポンジ88aを内蔵するインクタンク88の凹所88bに位置させ、側板89をインクタンク88にビス止めし、反対側をフタ90によって閉塞する。なお、必要であれば、インク供給部材87を天板82に組み付けたうえで各部の漏れ止めと保護のためにシリコーンシーラントTES−399(東芝シリコーン製)等やウレタン系あるいはエポキシ系の封止剤を注入する。
【0049】
次に、本実施例による液体噴射記録ヘッドを搭載した液体噴射記録装置について図9を参照して説明する。
【0050】
液体噴射記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」という)103とインクタンクであるインク容器とを接合した記録ヘッドカートリッジを搭載したキャリッジ101はガイド軸104および螺旋溝105aをもつリードスクリュ105に案内され、キヤリッジ101上には、インク容器が内装されたインク容器カセット102を装着することが可能である。
【0051】
リードスクリュ105は、正逆回転する駆動モータ106によって歯車列106a,106b,106c,106dを介して正逆回転され、その螺旋溝105aに先端部が係合したキャリッジ101に設けられているピン(図示せず)を介してキャリッジ101を矢印方向および反矢印方向へ往復移動させる。駆動モータ106の正逆回転の切換は、キャリッジ101がホームポジションにあることをキャリッジ101に設けられたレバー115とフォトカプラ116とで検出することにより行なう。
【0052】
他方、被記録媒体である記録紙109は、プラテン107に押え板108によって押圧され、被記録媒体を記録紙ヘッドに対向するように搬送する搬送手段である紙送りモータ110によって駆動される紙送りローラ(図示せず)によって記録ヘッド103に対向するように搬送される。
【0053】
図10および図11は、本実施例による液体噴射記録ヘッドを搭載した別の液体噴射記録装置の全体図で、記録媒体の記録幅に対応した幅を有するいわゆるフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドおよびそのインクジェット記録ヘッドを使用したインクジェット記録装置の模式的概略説明図である。フルラインタイプのインクジェット記録ヘッドは、その性質上、吐出口の数が多数であって、本発明の効果が最も顕著にあらわれるものである。
【0054】
この記録装置では、フルラインタイプのインクジェット記録ヘッド200は、記録媒体搬送ローラ300によって搬送される紙や布等の記録媒体400に対向して配置されている。そして、記録媒体400を搬送しながら、フルラインタイプのインクジェット記録ヘッド200から記録信号に応じてインクを記録媒体400に向けてインクを吐出することにより、長尺の記録媒体400に記録がなされる。本発明の場合、吐出エネルギー発生素子を設けたヒータボードを複数個並べることでインクジェット記録ヘッドを製造するので、フルラインタイプの記録ヘッドのような長いインクジェット記録ヘッドでも容易に製造することができる。
【0055】
本発明は、特に液体噴射記録方式の中で熱エネルギーを利用して飛翔液滴を形成し、記録を行なう、いわゆるインクジェット記録方式の記録ヘッド、記録装置において、優れた効果をもたらすものである。
【0056】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されており、本発明はこれらの基本的な原理を用いて行なうものが好ましい。この記録方式は所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。
【0057】
この記録方式を簡単に説明すると、記録液(インク)が保持されているシートや液流路に対応して配置されている発熱部である電気熱変換体に電気信号を供給して発熱させる駆動手段である駆動回路より吐出信号を供給する、つまり、記録情報に対応して記録液(インク)に核沸騰現象を越え、膜沸騰現象を生じるような急速な温度上昇を与えるための少なくとも一つの駆動信号を印加することによって、熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせる。このように記録液(インク)から電気熱変換体に付与する駆動信号に一対一に対応した気泡を形成できるため、特にオンデマンド型の記録法には有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介して記録液(インク)を吐出させて、少なくとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるので、特に応答性に優れた記録液(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行なうことができる。
【0058】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液流路、電気熱変換体を組み合わせた構成(直線状液流路又は直角液流路)の他に、米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書に開示されているように、熱作用部が屈曲する領域に配置された構成を持つものにも本発明は有効である。
【0059】
加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出口とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成を有するものにおいても本発明は有効である。
【0060】
さらに、本発明が有効に利用される記録ヘッドとしては、記録装置が記録可能である記録媒体の最大幅に対応した長さのフルラインタイプの記録ヘッドがある。このフルラインタイプの記録ヘッドは、上述した明細書に開示されているような記録ヘッドを複数組み合わせることによってフルライン構成にしたものや、一体的に形成された一個のフルラインタイプの記録ヘッドであってもよい。
【0061】
加えて、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
【0062】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみを記録するモードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成したものか、複数個の組み合わせで構成したものかのいずれでもよいが、異なる色の複色カラーまたは、混色によるフルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は極めて有効である。
【0063】
本発明において、上述した各インクにたいして最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0064】
さらに加えて、本発明のインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るものであってもよい。
【0065】
【発明の効果】
本発明は上述のように構成されているので、以下に記載するような効果を奏する。
【0066】
超小型で部品の製造コストが低くしかも組み付けが簡単であるマイクロポンプを実現できる。このようなマイクロポンプを液体噴射記録ヘッドに組み込むことで、常時良好な記録液(インク)吐出性能を維持する液体噴射記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例によるマイクロポンプをその一部を破断した状態で示す一部破断斜視図である。
【図2】図1の装置を示す模式断面図である。
【図3】図1の装置の基板の内部構造を示す模式断面図である。
【図4】図1の装置の発熱部とその接続配線を説明する説明図である。
【図5】図1の装置の発熱部の電気回路を説明する説明図である。
【図6】図1の装置と同様のマイクロポンプを用いた液体噴射記録ヘッドの主要部を一部破断して示す一部破断斜視図である。
【図7】図6の液体噴射記録ヘッドを用いた液体噴射記録ヘッドカートリッジを分解した状態で示す分解斜視図である。
【図8】図7の液体噴射記録ヘッドカートリッジを組み立てた状態で示す斜視図である。
【図9】液体噴射記録装置の全体を示す斜視図である。
【図10】フルラインタイプの液体噴射記録ヘッドを示す模式斜視図である。
【図11】図10の液体噴射記録ヘッドを搭載する液体噴射記録装置を示す模式斜視図である。
【図12】従来例による液体噴射記録ヘッドの主要部を一部破断した状態で示す一部破断部分斜視図である。
【符号の説明】
M1 ,M2 マイクロポンプ
1,81 基板
1a,1b,1c,81a 発熱部
2,82 天板
3,5 回転子
3a〜3c,5a〜5c 羽根
Claims (6)
- 基板の表面に設けられた少なくとも1個の発熱部と、該発熱部に沿った液体収容部を有する液体収容手段と、該液体収容手段の前記液体収容部に回転自在に支持された第1の回転子と、該第1の回転子と一体である第2の回転子を有し、前記第1の回転子が、前記発熱部の発熱に伴う前記液体収容部の液体の沸騰によって回転することによって前記第2の回転子を回転駆動し、そのまわりの流体を流動させるように構成されていることを特徴とするマイクロポンプ。
- 各回転子が、プラスチック材料を射出成形することによって一体成形されたものであることを特徴とする請求項1記載のマイクロポンプ。
- 複数の液滴吐出用の発熱部を有する基板と、該基板の各発熱部に沿った液流路とこれに連通する共通液室を有する液流路構成手段と、該液流路構成手段の前記共通液室の液体を強制流動させる少なくとも1個のマイクロポンプを有し、該マイクロポンプが、前記基板の所定の部位に設けられた第2の発熱部と、その発熱に伴う前記液体の沸騰によって回転する第1の回転子と、該第1の回転子の回転によって回転駆動される第2の回転子を備えていることを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
- マイクロポンプが一対設けられており、一方のマイクロポンプが共通液室に液体を供給し、他方のマイクロポンプが排出するように構成されていることを特徴とする請求項3記載の液体噴射記録ヘッド。
- 請求項3または4記載の液体噴射記録ヘッドと、該液体噴射記録ヘッドの発熱部に電気信号を供給して発熱させる駆動手段を備えた液体噴射記録装置。
- 請求項3または4記載の液体噴射記録ヘッドと、該液体噴射記録ヘッドから吐出される液体によって記録がなされる被記録媒体を搬送するための搬送手段を備えた液体噴射記録装置。
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