JP3647002B2 - 画架 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、三脚と三脚の頂部に連結した支持杆とから構成し、絵を描く際にカンバスを固定したり、絵や写真を展示したり鑑賞する際に絵などを立てかける画架に関し、詳しくはカンバスなどを容易かつ確実に固定することができるようにした画架に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より一般に使用されている画架は、三脚と三脚の頂部に鉛直方向に連結した支持杆とから構成される。手前側の2本の脚の任意の箇所には、図21及び図22に示すように、カンバスや絵、写真など(以下、「カンバス」のみ記載する。)を載せる支持部材110が取り付けられる。支持部材110は手前側の2本の脚100に外嵌するC字形の基部111と、折曲した基部111の両端部の間に挟まれる取付具112と、基部111の両端部を締結するボルト113及びナット114と、線状部材をL字形に成形し、取付具112に螺着する受け部115とから構成される。
【0003】
他方、3本の脚100の連結部には、図23に示すような頂部をL字形に折曲した支持杆107を接続する。支持杆107の頂部には押さえ部材120を固定する。押さえ部材120はカンバスCを係止する爪部材121と、爪部材を支持杆107に固定するネジ122とから構成される。爪部材121はカンバスCの上縁を係止できるように先端部が折曲され、カンバスCの様々な厚さに対応できるようにするため、ネジ122を挿通する長孔121aが穿設されている。
【0004】
従来の画架は以上のように構成し、上記の脚100に取り付けた支持部材110の受け部115にカンバスCの下縁を載せ、押さえ部材120の爪部材121にカンバスCの上縁を係止することによって、カンバスCは画架に固定される。また、画架はカンバスCのサイズに合わせて、支持部材110の取付位置や爪部材121の位置を調整することができる。
【0005】
すなわち、支持部材110は脚100に取り付けているため、小さなカンバスCを固定するときは、支持部材110を脚100の上側に固定し、大きなカンバスCを固定するときは、支持部材110を脚100の下側に固定する。支持部材110はボルト113を緩めることにより、脚100の任意の位置に移動させることができる。カンバスCの下縁は線状部材をL字形に折曲した受け部115に支持されて、脱落することがない。
【0006】
他方、押さえ部材120の爪部材121は、カンバスCが厚いときに手前に引き出し、薄いときは奥側へ押し出す。このように爪部材121を移動させることによって様々なカンバスCの厚さに対応することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の画架は、カンバスCが脱落することなく確実に係止することができるようにするため、支持部材110の受け部115と、押さえ部材120の爪部材121の先端部を折曲し、その折曲部がカンバスCの下縁と上縁とをそれぞれ係止している。したがって、カンバスCの取り付け又は取り外しに際し、支持部材110はいちいちボルト113及びナット114を緩めたり締めつけたりする操作が必要である。さらに、押さえ部材120は、カンバスCが振動によって支持部材110から脱落しないように、カンバスCと爪部材121を手で支持しながらネジ122の操作をしなければならない。
【0008】
さらに従来の画架は、以上のような操作上の不具合だけでなく、次のような課題もあった。すなわち、支持部材110の受け部115は、カンバスCが脱落しないようにするため、L字形をしている。そのため、使用時や運搬時に受け部115が衣服などに引っ掛かりやすく危険であり、特に運搬時に障害になりやすく不便であった。このような状況を避けるために、受け部115を取り付け部から抜き取ることも可能であるが、画架を運搬するたびに受け部115をいちいち抜き取る作業を行うのは煩わしい。
【0009】
また、受け部115は脚100が斜め向きであっても、確実にカンバスCの下縁を載せることができるようにするため、線状部材を折曲したものとしてある。したがって、カンバスCを安定に支持するのは困難となる。つまり、画架の支持部材110は左右一対で構成され、その左右の支持部材110の高さを正確に、同一水平面状に保持しながらカンバスCを設置する作業は困難であり、また煩わしい。そして、左右の軸部の高さが不均衡のままでの使用では、カンバスCが横滑りしやすく、折角、描いた絵画等を台無しにしかねない。
【0010】
さらに、押さえ部材120については、不注意により、爪部材121を固定するネジを紛失するという不具合もある。
【0011】
そこで本発明は、カンバスの取り付け及び取り外しの作業の簡便な押さえ部材を有するとともに、カンバスを安定的に支持することができるようにすることにより、画架の収納運搬時の利便性に優れた受部を備えた下部支持部材を有することを特徴とする画架を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための第1の手段は、脚に取り付ける支持部材を、脚に外嵌する基部と、基部に取り付ける受け部とから構成し、基部は、脚に外嵌する環状部材と環状部材に突設した球状突部とを具備し、受け部は、平面部と平面部の両側の下面に突設した垂直部とを具備し、前記垂直部に球状突部を係合する丸孔を穿設したものであり、基部に突設した球状突部の側面に突起を突設したことを特徴とする画架である。
【0013】
上記の第1の手段によれば、脚に取り付けた基部の球状突部とカンバスを載せる受け部の垂直部の丸孔とが係合することにより、受け部は任意の方向の姿勢をとることができる。したがって、基部を取り付ける脚が斜め向きであっても、受け部の平面部は水平姿勢となって、カンバスの下縁を全面で支持することができる。また、運搬時など、画架を使用しないときは、受け部を起立させた姿勢として前方に飛び出ないようにすることができる。
【0014】
上記の第1の手段によれば、球状突部の側面に突設した突起が、受け部の垂直部に穿設した丸孔内でのみ相対的に移動することができる。球状突部は基部の環状部材に突設し、基部は脚に外嵌して固定されるため、受け部が一定の範囲でのみ傾動する。したがって、基部の環状部材が斜め向きの脚に外嵌していても、受け部は水平姿勢となって、カンバスの下縁を全面で支持することができる。
【0015】
上記の第1の手段によれば、画架の使い勝手が一層向上する。
【0016】
上記の課題を解決するための第の手段は、支持の上端部に固定した押さえ部材を、スライダーと、前記スライダーの先端側を突出させて収納するケースとから構成し、スライダーとケースとに咬合部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の画架である。
【0017】
上記の第の手段によれば、スライダーの咬合部とケースの咬合部とが噛合することにより、押さえ部材のスライダーはカンバスの厚さに応じてケース内から突出した位置で仮固定される。また、運搬時など、画架を使用しないときは、スライダーをケース内に収納されるように退入させ、スライダーの咬合部とケースの咬合部とが噛合することにより、スライダーの先端側が突出していない状態で仮固定することができる。
【0018】
上記の課題を解決するための第の手段は、ケースに開口部を形成し、前記開口部の側方の内面に鋸歯形状の咬合部を形成し、ケース内に先端部を突出させて収納されるスライダーに、前記鋸歯形状の咬合部と噛合する突起状の咬合部を形成したことを特徴とする請求項2に記載の画架である。
【0019】
上記の第の手段によれば、ケースの咬合部とスライダーの咬合部が露出しないため、外観上の体裁がよくなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図1から図16を参照して説明する。図1は、本発明に係る画架の使用時の斜視図である。図2は、本発明に係る画架の使用時の正面図である。図3は、本発明に係る画架の使用時の側面図である。図4は、本発明に係る画架の図3とは別の使用態様の側面図である。
【0021】
図5は、本発明に係る画架を構成する連結具の斜視図ある。図6は、本発明に係る画架を構成するクランパの分解斜視図である。図7は、本発明に係る画架を構成するクランパを緩めたときの正面図である。図8は、本発明に係る画架を構成するクランパを締めたときの正面図である。
【0022】
図9は、本発明に係る画架を構成する支持部材の斜視図である。図10は、本発明に係る画架を構成する支持部材の分解斜視図である。図11は、本発明に係る画架を構成する支持部材を脚に固定する前の平面図である。図12は、本発明に係る画架を構成する支持部材を脚に固定した後の平面図である。
【0023】
図13は、本発明に係る画架の押さえ部材の分解斜視図である。図14は、本発明に係る画架の押さえ部材の斜視図である。図15は、本発明に係る画架の押さえ部材の正面断面図である。図16は、本発明に係る画架の押さえ部材の平面図である。
【0024】
本発明に係る画架は図1に示すように、3本の脚1が閉脚・開脚することができるように頂点で連結具3によって枢着し、その連結具3に支持杆7を昇降動自在に挿通した一般的な構造を基本とする。3本の脚1を枢着し、また支持杆7を挿通する連結具3は、図5に示すように平面形状がT字形をしており、3方向に突出している突出部31の下面には脚1を挿入する溝32を形成し、中心部には支持杆7を挿通する角筒部33を形成する。
【0025】
3つの突出部31の溝32内に挿入される脚1の上端部と、各突出部31とにはボルト(図示せず)などを挿通する連続孔(図示せず)を穿設し、前記ボルトをナット(図示せず)によって締結し、脚1が揺動できるように連結具3に枢着する。脚1が揺動できるようにすることによって、画架を使用しないときは閉脚してコンパクトに収納することができ、画架を使用するときは開脚して立設することができる。開脚した脚1は、突出部31の内壁34に当接し、一定以上に開脚することがない。脚1が当接する内壁34は円弧状の面取りをすることにより、安定した状態に開脚させることができる。
【0026】
脚1は外管10と内管20とから構成する二重管とし、内管20が外管10内に収納された状態と、外管10から任意の長さだけ突出した状態とに長さを変えることができるようにする。脚1を保持する連結具3の平面形状がT字形であるから、3本の脚1を同じ長さにすると、図3に示すように正面が鉛直方向に起立する。手前側の脚1が向こう側の脚1よりも長くすると、図4に示すように正面が傾倒した姿勢となる。
【0027】
脚1を所望の長さに調整するために、外管10内から引き出す内管20は、図6から図8に示すようなクランパ4によって仮固定する。クランパ4は外筒40と前記外筒40と同じ長さの内筒50とから構成する。外筒40の内面は下側の縮径部41と上側の拡径部42との2段になるような段差43を設ける。その段差43の境界部の1点に小孔を穿設し、その小孔内には外筒40内に突出するようなピン44を嵌入する。
【0028】
他方、内筒50の内面は、脚1の外管10の下端部11を外嵌する拡径部と、内管20の上端部を外嵌する縮径部を形成する。拡径部の開口端付近には、一対の凸部53を突設し、外管10の下端部11には、その凸部53を嵌入する一対の係合孔(図示せず)を穿設する。また、内筒50の長さ方向には、間隙部51を全長に形成し、内筒50がわずかに拡径及び縮径できるようにする。内筒50が拡径することにより、内面に凸部53が突設されていても、外管10に外嵌し、外管10の係合孔に内筒50の凸部53を嵌入することができる。
【0029】
内筒50の外面の上端部には鍔54を形成し、この鍔54が外筒40の拡径部42内でのみ相対的に移動して、内筒50の下側から外嵌した外筒40が内筒50の上側方向へ外れないようにする。内筒50の下端部52外面は、中間部から次第に拡径するテーパとする。さらに内筒50の下端部52から中間部には、上記の間隙部51から90°の間隔で3本のスリット55を等間隔に形成し、内筒50の下側が拡縮できるようにする。
【0030】
2本のスリット55の間には、外筒40の内面に突出したピン44が嵌入できる連続した溝56と案内孔57とを形成する。案内孔57は円弧部57aと円弧部57aの両端で周方向と軸方向の2つの直線部57bとを形成し、円弧部57aと直線部57bとの両境界部には案内孔57を僅かに狭める突起57cを突設したものとする。
【0031】
内筒50を外筒40内に挿入すると、当初は外筒40の内面に突出したピン44が内筒50の溝56内に嵌入し、内筒50の下端部52が撓むが、ピン44が案内孔57内に嵌入すると、撓んだ内筒50の下端部52が元の真っ直ぐな姿勢に戻る。そして、案内孔57内に嵌入したピン44は、溝56内に戻ることができなくなり、案内孔57内でのみ移動できるようになる。ただし、案内孔57に突設した突起57cによって、ピン44は案内孔57内を自由に移動できなくなり、ピン44を嵌入している外筒40は、回転力を加えられたときだけ、回転することができる。
【0032】
回転力を加えられた外筒40は、上下方向及び周方向にわずかに回転し、外筒40の内面から突出したピン44が内筒50の案内孔57内を移動することができる。ピン44が内筒50のフランジ寄りの案内孔57内に位置しているときは、図7に示すように内筒50の下端部52が外筒40の下端部45からわずかに突出する。したがって、テーパ状に拡径している内筒50の下端部52は、内筒50は縮径することがなく、内筒50内の内管20は自由に移動することができるようになる。
【0033】
外筒40を回転して、ピン44が内筒50の鍔54から離れた周方向の案内孔57内に位置しているときは、図8に示すように内筒50の下端部52が外筒40の下端部45内に収納される。内筒50の下端部52はテーパ状に拡径しているため、内筒50の下端部52が外筒40の下端部45内に収納されると、内筒50の下端部52は縮径し、内筒50の下端部52内が内管20を締めつける。したがって、内管20を外管10内から任意の長さだけ引き出して固定することができる。
【0034】
カンバスCを支持する支持部材6は図9から図12に示すように、脚1に嵌合する基部60と、基部60に枢着されてカンバスCを載せる受け部70とから構成する。基部60は可撓性を有するC字形の環状部材61と、環状部材61に枢着するレバー62と、レバー62に枢着する締結部材63とから構成する。
【0035】
環状部材61は脚1に嵌合するものであるが、定常状態において、平面形状が図11に示すように、真円ではなく、楕円形のような形状になるようにする。そして、環状部材61の両端部を強制的に外管10の直径まで拡開することにより、環状部材61が外管10を締めつけるように嵌合させる。環状部材61の形状が定常状態において、楕円形のような形状としたことにより、環状部材61が外管10を締めつける嵌合力が強くなる。環状部材61の両端部が拡開しやすいようにするため、環状部材61の中央部の内面には溝61aを形成しておくことが望ましい。
【0036】
環状部材61の一端部はレバー62の基端部を軸64によって枢着するための軸受61bを突設する。環状部材61の他端部は締結部材63の先端部を嵌合する複数の係合溝61cを形成する。締結部材63の先端部はV字形に折曲して環状部材61の係合溝61cに係合し、環状部材61の係合溝61cから容易に外れないようにする。環状部材61が外径の大きな外管10に外嵌するときは、締結部材63の先端部が環状部材61の端部側の係合溝61cに係合する。環状部材61が外径の小さな外管10に外嵌するときは、締結部材63の先端部が環状部材61の中央部寄りの係合溝61cに係合する。
【0037】
締結部材63の基端部はレバー62を挟むようにコ字形として、レバー62の中間部に軸65によって枢着する。レバー62は環状部材61の軸受61bを回転軸に揺動し、締結部材63はレバー62の中間部を回転軸に揺動する。したがって、レバー62の遊端部を環状部材61から離隔させると、図11に示すように締結部材63の先端部を環状部材61の溝から外すことができる。逆に締結部材63の先端部を環状部材61の係合溝61cに嵌合した状態で、レバー62の遊端部を環状部材61に接合すると、図12に示すように締結部材63の先端部が環状部材61の係合溝61cから外れることがないように仮固定することができる。
【0038】
環状部材61の外側の下側には図10に示すように、平坦部61eを形成する。環状部材61の外側の中間には球状突部61dを突設し、この球状突部61dに受け部70が比較的に任意の方向に向くことができるように枢着する。受け部70はある程度の弾性を有するように樹脂などで製造し、カンバスCを載せる平面部71と、平面部71の両側の下面に突設した三角形状の垂直部72と、平面部71の先端部に突設した脱落止め73とから構成する。
【0039】
垂直部72の内寸は球状突部61dの外径よりもやや狭くし、垂直部72の幅の広い基端側が拡開しないように、垂直部72の基端側の先端部はピン74によって連結する。さらに垂直部72の基端側には丸孔72aを穿設し、この丸孔72aに球状突部61dの側面が係合するようにする。受け部70は、垂直部72の内寸が球状突部61dの外径よりもやや狭くても、二枚の垂直部72の間隔を広げるようにして、球状突部61dの側面が垂直部72の丸孔72a内に係合することができる。また、平面部71の基端部にはU字形の切欠部71aを形成し、この切欠部71aに球状突部61dの上面が露出して係合するようにする。
【0040】
球状突部61dの側面と上面が、それぞれ受け部70の垂直部72の丸孔72aと平面部71の切欠部71aに係合することにより、受け部70は起立姿勢と水平姿勢とに揺動できるように連結される。垂直部72の幅の広い基端面は、受け部70が水平姿勢のときに環状部材61の平坦部61eと当接し、水平姿勢を維持することができる。
【0041】
起立姿勢にした受け部70が水平姿勢に戻らないようにするため、球状突部61dの頂部には突起61fを突設し、この突起61fが受け部70の平面部71の下面と当接するようにする。この受け部70が起立姿勢をより確実に維持できるようにするため、平面部71の切欠部の最も奥側にも、球状突部61dの頂部に突設した突起61fに係止する突起(図示せず)を突設することもできる。受け部70はある程度の弾性を有するため、わずかな力を加えることによって、球状突部61dの突起61fが受け部70の平面部71と係止して起立姿勢を維持したり、外すことによって水平姿勢とすることができるようにする。
【0042】
水平姿勢の受け部70は、垂直部72の基端面が環状部材61の平坦部と当接するため、長さ方向には水平方向を維持する。しかし、受け部70は球状突部61dに連結されているため、中心軸を回転軸にして、幅方向(図9におけるθ)に回動する。したがって脚1を開脚し、基部60が傾斜していても、受け部70は水平姿勢となる。ただし、受け部70が幅方向に360 °回転しないようにするため、球状突部61dの両側面には突起61gを突設し、この突起61gが受け部70の垂直部72に穿設した丸孔72aでのみ移動できるようにする。そうすることにより、受け部70は平面部71の中心軸を回転軸に、一定の角度内で回動することができる。このようにして、水平姿勢の受け部70は、平面部71にカンバスCの下縁を容易かつ確実に載せることができる。
【0043】
カンバスCの上縁は支持杆7の頂部に固着した押さえ部材7によって保持されるようにする。押さえ部材7は図13から図16に示すように、ケース80とスライダー90とから構成する。ケース80の上面には開口部81を形成し、開口部81の周辺の下面には鋸歯形状の咬合部82を形成する。ケース80の前面にはスライダー90が出入りする挿通孔83を穿設する。ケース80の下面には支持杆7を固着する接続凸部84を突設する。
【0044】
他方、スライダー90はケース80内に収納されて前後動する板状のものであり、手前部分がケース80の挿通孔83から突出し、その最先端は折曲して固定部91を形成する。ケース80内に収納されるスライダー90の後部の下面には、可撓性を有する2本の弾性部材92を突設する。この弾性部材92はケース80の底面内側を押圧して、ケース80内のスライダー90をケース80外へ付勢する。スライダー90の後部の上面には、波形の押部93と押部93の手前側に突設した摘まみ94とを形成し、押部93及び摘まみ94を押圧することにより、弾性部材92を撓めることができるようにする。
【0045】
摘まみ94の両側には、ケース80の咬合部82と噛合する三角形状の突起である咬合部95を突設する。スライダー90は弾性部材92によって、ケース80外へ付勢されているため、スライダー90に形成した咬合部95とケース80の咬合部82とが噛合して、スライダー90が仮固定される。スライダー90を移動させるときは、押部93及び摘まみ94を押圧して、弾性部材92を撓ませ、スライダー90の咬合部95をケース80の咬合部82から外す。
【0046】
ケース80の下面に突設した接続凸部84には、支持杆7の頂部を固着する。支持杆7の下部は図5に示すように、連結具3の中心部に形成した角筒部33に挿通する。角筒部33の後面は、ネジ孔(図示せず)と連通する。ネジ孔は連結具3の後ろ側の突出部31の天板部分に形成する。このネジ孔に固定ネジ35を挿通する。固定ネジ35の先端部分が角筒部33にの支持杆7を押圧することにより、支持杆7が所定の位置を維持するようにする。固定ネジ35を緩めると、角筒部33の後面が固定ネジ35に押圧されなくなるため、支持杆7は自在に昇降動することができる。
【0047】
本発明に係る画架は以上のように構成し、つぎにその使用方法について説明する。
【0048】
画架は収納状態において、3本の脚1が閉じられ、脚1の内管20は外管10内に収納されてコンパクトになる。したがって使用するときは、3本の脚1を開脚し、カンバスCの大きさなどに合わせて、脚1の内管20を外管10内から引き出す。
【0049】
内管20を外管10内から引き出して固定するには、クランパ4を操作する。すなわち、外筒40を回して図7に示すように、内筒50の下端部52が外筒40の下端部45から突出し、内筒50の下端部52を拡径させる。すると、内筒50は内管20を保持しなくなり、内管20が自由に移動できるようになる。
【0050】
内管20を所望の長さだけ外管10内から引き出した後、外筒40を上記とは逆方向に回し、図8に示すように内筒50の下端部52を外筒40内に収納させる。すると、内筒50が縮径して内管20を保持する。したがって内管20は仮固定された状態となって外管10内に入り込むことがなくなる。
【0051】
3本の脚1を同じ長さにすると、すなわち内筒50を外筒40内から同じ長さだけ引き出すと、前面の脚1は横方向に延びて、後ろ側の脚1は後方に延びるため、図2に示すように前面が鉛直方向に起立した姿勢となる。後ろ側の脚1の長さを、前面の脚1の長さよりも短くすると、図3に示すように傾倒した姿勢となる。このように脚1を任意の長さとすることにより、使用状態に応じた姿勢とすることができる。
【0052】
つぎに、カンバスCを支持部材6に載せる方法について説明する。収納状態における支持部材6は、受け部70が衣服に引っ掛からないようにするため、球状突部61dの頂部に突設した突起61fが、受け部70の平面部71を係止して起立姿勢にされている。したがって、受け部70の平面部71を、球状突部61dの突起61fから外して、水平姿勢にする。
【0053】
さらに、支持部材6はカンバスCのサイズに合わせて固定位置を変更する。すなわち、小さなカンバスCでは幅が狭いため、支持部材6を脚1の外管10の上側に固定し、大きなカンバスCでは幅が広いため、支持部材6を脚1の内管20の下側に固定する。支持部材6を移動させるには、図11に示すようにレバー62の遊端部を環状部材61から離隔させ、締結部材63の先端部を環状部材61の係合溝61cから外す(図11は支持部材6の環状部材61が脚1に嵌合していない状態であるが、レバー62の動きについては同じ)。すると、支持部材6は、環状部材61が単に脚1に嵌合しているだけとなり、環状部材61の保持力が弱くなるため、軽い力で移動できる。
【0054】
支持部材6が所望の位置まで移動すると、図12に示すように、締結部材63の先端部を環状部材61の係合溝61cに嵌合させて、レバー62の遊端部を環状部材61に接合させる。環状部材61の係合溝61cは、脚1の外管10と内管20の外径に合わせて2カ所に形成してある。したがって、締結部材63を脚1の外管10に固定するときは、締結部材63の先端部を環状部材61の端部側の係合溝61cに係合する。そして、締結部材63を脚1の内管20に固定するときは、締結部材63の先端部を環状部材61の中央部寄りの係合溝61cに係合する。このように支持部材6は、外管10又は内管20のそれぞれの外径に対応させて、締結部材63の先端部を環状部材61の係合溝61cに係合させることができる。
【0055】
締結部材63の先端部が環状部材61の係合溝61cに係合すると、環状部材61の両端部が接近するような力が加えられ、脚1が環状部材61に締めつけられるため、支持部材6は移動しにくくなって、受け部70の平面部71上にカンバスCを載せることができる。平面部71は前後方向にも左右方向にも水平であるから、平面部71の全面にカンバスCの下縁を載せることができる。また、カンバスCを載せた平面部71の先端部には脱落止め73を突設してあるため、カンバスCが手前方向に滑り落ちることがない。
【0056】
カンバスCが倒れないように、カンバスの上縁を保持する押さえ部材7は、収納状態において、連結具3と当接するまで最も下降してコンパクトにされている。したがって、カンバスCのサイズに合わせて押さえ部材7を上昇させる。すなわち、押さえ部材7を頂部に固着している支持杆7は、連結具3の突出部31に挿通してある固定ネジ35を緩めて上昇する。押さえ部材7が所望の位置まで上昇すると、支持杆7は固定ネジ35を締めることによって、角筒部33内に保持された状態に固定する。
【0057】
そして、押さえ部材7のスライダー90をカンバスCの厚さに合わせてケース80内から突出させる。スライダー90は収納状態において、図15に示すようにケース80内に収納され、固定部91が衣服などに引っ掛からないようにされている。そして押部93及び摘まみ94を押圧することにより、スライダー90の咬合部95がケース80の咬合部82から外れ、スライダー90は図16に示すようにケース80内を前方に引き出す。カンバスCの厚さに応じた所望の長さだけ引き出されると、押部93及び摘まみ94を押圧することを止める。すると、弾性部材92によってスライダー90がケース80の開口部81側へ付勢され、スライダー90の咬合部95がケース80の咬合部82と噛合し、スライダー90は移動しないように仮固定される。
【0058】
以上のようにしてカンバスCはどのようなサイズであっても、本発明に係る画架にセットすることができる。また、画架を使用しないときは、脚1を閉脚し、押さえ部材7を連結具3と当接するまで下降し、スライダー90をケース80内に退入することにより、画架はコンパクトに収納することができる。
【0059】
本発明は上記の実施の形態に限定することなく、本発明の要旨内において設計変更することができる。その変形例を図17から図18に示して説明する。ただし、上記の実施の形態と同一に相当する部分は、同一符号を付する。
【0060】
図17及び図18は、脚1の長さを調整するためのクランパ4の変形例を示したものであるが、このクランパ4も外筒140と内筒150などから構成する。外筒140の内面は段差を形成し、内面の下側は、下端の開口部方向に拡径するテーパ面141とする。外筒140の中間部の内面には上側に開口する環状溝142を形成する。
【0061】
他方、内筒150は上端の外周に外筒140の内面と接合するフランジ151を形成し、内筒150の外周と外筒140の内周との間に空間Sを形成する。この空間Sと上記外筒140の環状溝142との間には圧縮バネ144を収納する。内筒150の上側の内面には突起152を2カ所に突設する。この突起152は外管10の下部に穿設した小孔14に嵌入する。突起が152があっても、内筒150内に外管10を挿入しやすくするため、突起152の上側はテーパ面を形成する。
【0062】
内筒150の下側には窓穴153を穿設する。この窓穴153内には円弧状の小片154を装入する。小片154の外周は、外筒140のテーパ面141と接合するテーパ面とする。小片154の内側は凹陥部を形成し、この凹陥部内には、外管10の下端部11内から出入りする内管20と接合する滑り止め155を嵌入する。この小片154を装入する窓穴153の上側の内筒150の内面には、外管10の下端縁が当接する凸条156を突設する。
【0063】
以上のような変形例におけるクランパ4は、次のようにして脚1に取り付ける。すなわち、まず内筒150内の上側に外管10の下端部を挿入する。内筒150の内面には突起152が突設されているが、突起152の上側はテーパ面であるから、外管10は内筒150内に比較的容易に挿入することができる。外管1が内筒150内の所定の位置まで挿入されると、内筒150の突起152が外管10の小孔14に嵌入し、外管10の下端縁が内筒150の凸条156に当接する。内筒150内の下側には、外管10の下端部内にも挿入する内管20を挿入する。そして、内筒150の窓穴153内に、滑り止め155を嵌入した小片154を装入する。
【0064】
つぎに、環状溝142内に圧縮バネ144を収納した外筒140を内筒150に外嵌する。圧縮バネ144は内筒150のフランジ151と当接し、外筒140は下方へ付勢される。外筒140の下側の内面はテーパ面141であり、このテーパ面141が小片154のテーパ面と当接する。したがって、外筒140が圧縮バネ144によって下方へ付勢されることにより、小片154も下方へ付勢されるだけでなく、内管20の中心軸方向にも付勢される。すると、小片154に嵌入した滑り止め155が内管20を押圧して保持した状態を維持することができる。
【0065】
また図19は、押さえ部材7の変形例を示したものである。この押さえ部材7はケース80の開口部81の側面に鋸歯形状の咬合部82を形成したものである。したがって、この咬合部82と噛合する三角形状の咬合部95は、スライダー90の上面に形成した押部93の側方に突出するようにする。
【0066】
さらに上記の実施の形態では、脚1は外管10と内管20との2本で構成したが、図20に示すように3本以上でも構成することができる。外管10内に挿入される中間の内管21は、先端側の内管22に対しては外管となるが、ここでは便宜上、中間の内管21という。中間の内管21の下端部と先端側の内管22とは、クランパ4によって連結する。クランパ4は外筒40内に、下端部が拡径及び縮径する内筒50を挿入したものであり、内筒50内の上側に中間の内管21の下端部を固定し、内筒50の下端部が、所望の長さだけ引き出された先端側の内管22を保持する。外筒40を回すことによって、内筒50の下端部は拡径及び縮径し、先端側の内管22を保持しない状態と保持する状態とに転換する。
【0067】
上記の実施の形態のように、クランパ4の内筒50が外管10の下端部を固定しているときは、外管10の上端部が連結具3に固定されているため、クランパ4の外筒40を回しても、外管10が連られて回ることはない。しかし、中間の内管21を単に外管10内に挿入しただけでは、中間の内管21が外管10内で自由に回ることができるため、中間の内管21の下端部と先端側の内管22とを連結しているクランパ4の外筒40を回すことによって、内筒50と内筒50内の中間の内管21も回ってしまい、内筒50の下端部を拡縮及び拡径することができない。
【0068】
そこで図20に示すように、外管10、中間の内管21及び先端側の内管22に、それぞれ係合する複数の凹条10a,21a,22aを形成することにより、中間の内管21が外管10内で回らないようにすることが望ましい。中間の内管21が回らないようにすることにより、クランパ4の外筒40を回しても、内管21に固定された内筒50は回らなくなり、内筒50の下端部が拡径及び縮径し、先端側の内管22を保持しない状態と保持する状態とに転換できる。
【0069】
なお、脚1を3本以上で構成するときは、支持部材6の環状部材61に形成する係合溝61cも、脚1の外径に合わせて3カ所以上に形成し、それぞれの脚1に支持部材6を取り付けることができるようにすることも可能である。
【0070】
【実施例】
上記の実施の形態に使用する画架の材質は、脚としてアルミニウムなどの軽合金又は硬質の樹脂を使用し、他の部品としてポリプロピレンやABSなどの樹脂を使用することができる。特に、支持部材の環状部材は、両端部を拡開して脚に取り付けるため、弾力性が必要である。また、支持部材の受け部は起立姿勢を維持するために、受け部の平面部が球状突部の咬合部に係止されるように弾性変形する必要があることから、この部品も弾力性が必要である。
【0071】
また、上記の変形例における小片の内側の凹陥部内に嵌入する滑り止めは、ゴムなどの摩擦係数の大きな材質を使用することにより、クランパの内筒が脚を滑ることなく保持することができる。
【0072】
【発明の効果】
本発明の画架によれば、押さえ部材が咬合部を有するスライダーとケースとから構成されるため、カンバスを画架に載せる際に、カンバス押さ部材のスライダーの引出しが容易に行え、引き出されたスライダーはケースと噛合して仮固定される。したがって、ネジを回すなどの煩わしい作業を行うことなく、カンバスの画架への載置が迅速かつ簡便に終了する。さらに、スライダーの移動量を十分に確保した押さえ部材を備えた画架は、あらゆる厚さのカンバスにも対応が可能となる。
【0073】
また本発明の画架によれば、支持部材が脚に外嵌する基部に球状突部を形成し、前記球状突部に受け部を係合するものとしたことにより、受け部の回動の自由度が多く、カンバスを支持する際、カンバスの下縁に則して受部が十分にかつ最適に回動し、カンバスの下縁に対して受部の平面部が片当たりせず、平面部の全面で適切にかつ安定してカンバスを支持することができる。
【0074】
さらに、回動範囲を大きくした受け部を備えた画架は、受部を画架の脚に平行にも折り畳めるようになり、コンパクトに収納可能なものとなる。このような画架は、携帯に都合がよく、画架の運搬時に、受部に被服を引っ掛けることもなく、安全でかつ下部支持部材の破損の防止もできるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る画架の使用時の斜視図である。
【図2】 本発明に係る画架の使用時の正面図である。
【図3】 本発明に係る画架の使用時の側面図である。
【図4】 本発明に係る画架の図3とは別の使用態様の側面図である。
【図5】 本発明に係る画架を構成する連結具の斜視図ある。
【図6】 本発明に係る画架を構成するクランパの分解斜視図である。
【図7】 本発明に係る画架を構成するクランパを緩めたときの正面図である。
【図8】 本発明に係る画架を構成するクランパを締めたときの正面図である。
【図9】 本発明に係る画架を構成する支持部材の斜視図である。
【図10】 本発明に係る画架を構成する支持部材の分解斜視図である。
【図11】 本発明に係る画架を構成する支持部材を脚に固定する前の平面図である。
【図12】 本発明に係る画架を構成する支持部材を脚に固定した後の平面図である。
【図13】 本発明に係る画架の押さえ部材の分解斜視図である。
【図14】 本発明に係る画架の押さえ部材の斜視図である。
【図15】 本発明に係る画架の押さえ部材の正面断面図である。
【図16】 本発明に係る画架の押さえ部材の平面図である。
【図17】 本発明に係る画架の変形例を示すクランパの分解斜視図である。
【図18】 本発明に係る画架の変形例を示すクランパの断面図である。
【図19】 本発明に係る画架の変形例を示す押さえ部材の一部断面斜視図である。
【図20】 本発明の変形例を示す脚の一部断面斜視図である。
【図21】 従来の画架の支持部材を示す斜視図である。
【図22】 従来の画架の支持部材の図21とは別方向の斜視図である。
【図23】 従来の画架の押さえ部材を示す断面図である。
【符号の説明】
1 脚
6 支持部材
7 支持杆
8 押さえ部材
60 基部
61 環状部材
61d 球状突部
61g 突起
70 受け部
71 平面部
72 垂直部
72a 丸孔
80 ケース
81 開口部
82 咬合部
90 スライダー
95 咬合部

Claims (3)

  1. 脚に取り付ける支持部材を、脚に外嵌する基部と、基部に取り付ける受け部とから構成し、基部は、脚に外嵌する環状部材と環状部材に突設した球状突部とを具備し、受け部は、平面部と平面部の両側の下面に突設した垂直部とを具備し、前記垂直部に球状突部を係合する丸孔を穿設したものであり、基部に突設した球状突部の側面に突起を突設したことを特徴とする画架。
  2. 支持の上端部に固定した押さえ部材を、スライダーと、前記スライダーの先端側を突出させて収納するケースとから構成し、スライダーとケースとに咬合部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の画架。
  3. ケースに開口部を形成し、前記開口部の側方の内面に鋸歯形状の咬合部を形成し、ケース内に先端部を突出させて収納されるスライダーに、前記鋸歯形状の咬合部と噛合する突起状の咬合部を形成したことを特徴とする請求項に記載の画架。
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