JP3646715B2 - ハイブリダイズしたアレイの解析支援方法と解析支援装置 - Google Patents
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Description
本発明は、DNAマイクロアレイ、DNAチップ、プロテインアレイ、ティッシュアレイ等のように、基板上にプローブのスポットが2次元に配置されたアレイに、物質(通常は生体由来物質であり、ターゲットと呼ばれる)がハイブリダイズした後のアレイの解析過程を支援する技術に関する。
背景技術
ヒトゲノム塩基配列の解読が完了し、現在では遺伝子情報等の持つ意味あるいは機能を解析する研究が開始されている。
そのために、DNAマイクロアレイに代表される解析技術が開発されている。アレイ技術では、基板上に、各種のDNA、各種のオリゴDNA、各種のプロテイン、あるいは各種のティッシュ等の各種のプローブのスポットを2次元に配列して固定しておく。アレイと組合せて用いられる溶液には、プローブにハイブリダイズするターゲットが含まれており、ターゲットを含む溶液をアレイに接触させる。ターゲットは、通常、アレイ上のいくつかのプローブにはハイブリダイズし、いくつかのプローブにはハイブリダイズしない。ターゲットに対するプローブ種類ごとの発現結果を解析することによって、ターゲットとプローブの機能に関する研究が進展する。この明細書では、ターゲットに接触した後のアレイをハイブリダイズしたアレイといい、アレイ中のいくつかのプローブはターゲットとハイブリダイズしており、いくつかのプローブはハイブリダイズしていない。
プローブにターゲットがハイブリダイズしたか否を測定するために、ターゲットには予め着色しておく。通常は蛍光色素を結合させておく(このことを通常は蛍光色素で標識するという)。ハイブリダイズしたアレイのスポットの色彩を測定することによって、着色されたターゲットがプローブにハイブリダイズしたか否かを調べることができる。
この明細書でいうスポットの色彩とは日常世界でいう色彩よりも広義である。ターゲットが顕微鏡等で判読できる色素で着色されている場合には、顕微鏡等でスポットを観測したときに認められる色彩がここでいう色彩であり、日常世界でいう色彩に等しい。参照光を照射してはじめて発光する色素で着色されている場合には、参照光を照射したときに認められるスポットの色彩がここでいう色彩にあたる。特定波長の励起光で照射されたときに発光する色素で着色されている場合には、発光するスポットの色彩に代えて、色素が発光するときの励起光の色彩をもって便宜的にスポットの色彩という。励起光の波長が非可視光である場合には、非可視光の波長を一定のルールで可視光の色に置き換えた色彩もここでいう色彩である。例えば波長の短い紫外線で白く発光する蛍光色素で着色されているスポットを便宜的に「青」といい、波長の長い紫外線で白く発光する蛍光色素で着色されているスポットを便宜的に「赤」という場合にも、ここでいう色彩にあたる。
着色されたターゲートがスポットのプローブにハイブリダイズしているか否かを光学的に検出するのに利用可能な波長に関する情報をここでは色彩という。波長の短い紫外線で白く発光するスポットを便宜的に「青」といい、発光しないスポットを便宜的に「青くない」という場合、「青」ければハイブリダイズしていおり、「青」くなければハイブリダイズしていないことがわかるので、それもここでいう色彩にあたる。
アレイに、それぞれに標識づけられた2種類のターゲットを反応させる方法がよく使われる。例えば、ターゲットAを励起光Aで発光する蛍光色素で着色しておき、ターゲットBを励起光Bで発光する蛍光色素で着色しておいて、ターゲットAとターゲットBを同時にアレイに接触させる。
例えば、正常遺伝子を緑で着色し(正確には緑の励起光で発光する蛍光色素を結合させておく)、異常遺伝子を赤で着色しておくと、正常遺伝子のみがハイブリダイズするプローブが固定されているスポットは緑(緑の励起光が照射されたときに発光する)となり、異常遺伝子のみがハイブリダイズするプローブが固定されているスポットは赤となり、両遺伝子がともにハイブリダイズするプローブが固定されているスポットは黄となる。この研究によって、例えば、赤のスポットに固定されているプローブが異常遺伝子のためのマーカーとなりえることがわかる。あるいは、赤のスポット群に固定されているプローブ群を配置したアレイを用意することによって、検体から異常遺伝子が採取されたか否かの診断の可能性が広げられる。
アレイの集積化が進み、通常のスライドガラス上に1万種以上のプローブを配置することが可能となっている。光リソグラフィ技術によって基板上でプローブを合成するDNAチップの場合には、それ以上の集積度が得られる。多種類のプローブに対するテストが同時に実施可能となっている。実際、生体に由来するターゲットの機能を研究する場合には、おびただしい種類のプローブに対するテストが要求される。
現時点では、おびただしい種類のプローブに対するテスト結果が得られても、そのテスト結果から有意な情報を引出す解析技術が開発されておらず、うまく解析できれば極めて有効に活用できるはずの知識が得られていない。
アレイ上に2次元で配置されているスポット群の列数がAであり、行数がBであるとする。この場合、ハイブリダイズしたアレイのスポット群の色彩を測定することで、(A列・B行)の色彩マトリクスが得られる。現在、研究者はこの色彩マトリクスを精査して有意な情報が得られそうなプローブ群を探している。しかしながら、その作業は困難を極め、研究の壁となっている。
このために、(A列・B行)の色彩マトリクスを見易い形式に変換する試みがなされ、例えば、スタンフォード大学や米国のNIHの研究者らは、(A列・B行)の色彩マトリクスを(1列・A×B行)の1次元の色彩列に変換し、同種ターゲットに対するテスト結果を列方向に繰返した表示に変換することを提案している。この場合、ターゲットの種類数をCとすると、(C列・A×B行)の色彩マトリクスに変換することになる。
(C列・A×B行)の色彩マトリクスに変換すると、同種ターゲットに共通的に現れる色彩パターンが顕著化され、研究者は同種ターゲットが共通に持つ特徴を認識しやすくなる。
発明の開示
しかしながら、(C列・A×B行)の色彩マトリクスに変換することで認識しやすくなる特徴は限られており、なおも多くの未知の情報が解析されないままに放置されている。
本発明は、このような問題意識から誕生したものであり、ハイブリダイズしたアレイに存在する色彩のマトリクスから、有意な情報を引出す過程をより有効に支援する。
本発明では、人が持つ優れたパターン認識能力あるいは特徴抽出能力を積極的に活用する。現時点では、人の能力のほうがコンピュータのそれよりも優れているのに加え、本発明によって、人の持つ優れた能力が効果的に発揮される表示に変換されることから、例えば、遺伝子発現における規則性等、アレイに秘められている未知の多くの情報が引出されるものと期待される。
本発明は、ハイブリダイズしたアレイに存在する色彩のマトリクスを、パターン認識あるいは特徴抽出しやすい表示に変換する方法に具現化される。
この方法では、ハイブリダイズしたアレイのスポット群の色彩情報を、少なくとも、n列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置して表示する。ここで、nとkは自然数である。並列配置する色彩マトリクスの個数は3個以上であってもよく、この場合には、n+3k列の行列形式、n+4k列の行列形式・・と並列配置する。
自然数nは1とすることができるが1に限定されるものでない。自然数kも1とすることができるが1に限定されるものでない。
表示の態様には格段の制約がなく、CRTや液晶ディスプレイやプラズマディスプレイや各種プロジェクタを利用して消去可能に表示しても良く、紙やフィルムや印画紙等にプリンタや露光装置によって印字・印刷してもよい。
最終的に表示される色彩マトリクスの並列配置では、アレイ上の一つのスポットの平均的色彩に対応する色彩を単位にして表示してもよいし、スポット内の色彩分布をそのまま表示してもよい。
アレイ上の一つのスポットに対応して固定的な形状(例えば正方形、長方形、円、菱形)によって色彩を表示してもよいし、スポットの実際の発光形状に対応する形状で色彩を表示してもよい。
最終的に表示される色彩マトリクスの並列配置では、アレイ上のスポットの色彩(前記したように、日常生活でいう色彩とは若干違う意味を持つ)と相違していてもよい。アレイ上のスポットの色彩情報(これにはアレイ基板に対応するバックグランド情報が重複していることがある)を各種の演算によって変換した色彩であってもよい。励起光が非可視光であってもよく、励起光の波長を一定の関係で可視光に変換した色彩で表示してもよい。
また、ここでいう「列」と「行」は数学的な定義よりも広義であり、縦方向の並びを「列」という場合には横方向の並びが「行」であり、縦方向の並びを「行」という場合には横方向の並びが「列」である。「列」と「行」は交換可能な概念である。
n列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置することによって、存在していても認識されない特徴が顕著化されることは、特開平11−066040号公報に記載されているとおりである。
この発明によると、アレイ上の(A列・B行)の色彩マトリクスの上では顕在化されていなかった特徴が、n列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクス、(さらにn+3k列の行列形式、n+4k列の行列形式・・が続くこともある)を並列配置した表示のなかに顕著に表れ、特徴抽出過程が極めて有効に支援される。
本発明は、ハイブリダイズしたアレイの解析支援装置に具現化することができる。この解析支援装置は、ハイブリダイズしたアレイのスポット群の色彩情報を記憶する手段と、記憶された色彩情報から、少なくとも、n列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置した表示を創生する手段とを有する。
色彩情報には、典型的には励起用2波長での発光強度比が挙げられる。例えば緑で標識されたターゲットと赤で標識されたターゲットでハイブリダイズしたアレイの場合、(赤の波長での強度)/(緑の波長での強度+赤の波長での強度)または、(緑の波長での強度)/(緑の波長での強度+赤の波長での強度)によって、色彩情報が記憶される。
ターゲットが1色で標識されている場合には、その色の強度もここで言う色彩である。濃い色のスポット、薄い色のスポット、色が認められないスポットが存在する場合、その色の濃さがここで言う色彩に相当する。
色彩情報はスポットごとの平均値で記憶してもよく、あるいは、スポットをさらに細かく区画した小区画(通常はピクセルと称される)毎の色彩情報を記憶してもよい。
表示創生手段は、一時的に表示する手段(例えばCRTや液晶ディスプレイやプラズマディスプレイや各種プロジェクタ)であってもよく、あるいは紙、フィルム、印画紙等に印字、印刷するプリンタや印刷機や露光装置であってもよい。これらの表示創生手段は、アレイ上のスポットを規則正しい形で表示するものであってもよいし、スポットの実際の発光領域形状に対応する形状で表示するものであってもよい。
この装置を用いると、出力される表示のなかに、アレイ上の(A列・B行)の色彩マトリクスでは顕在化されていなかった特徴が顕著に表れ、特徴抽出過程が極めて有効に支援される。
【図面の簡単な説明】
図1は、ハイブリダイズしたアレイの解析過程を模式的に示す。
図2は、スポットの色彩測定過程を詳細に示す。
図3は、測定されたスポット群の色彩を表示した色彩マトリクスの一例を示す。
図4は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の1を示す。
図5は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の2を示す。
図6は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の3を示す。
図7は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の4を示す。
図8は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の5を示す。
図9は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の6を示す。
図10は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例1を示す。
図11は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例2を示す。
図12は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例3を示す。
図13は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例4を示す。
図14は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例5を示す。
図15は、測定されたスポット群の色彩を繰返表示した色彩マトリクスの例6を示す。
図16は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例1を示す。
図17は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例2を示す。
図18は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例3を示す。
図19は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例4を示す。
図20は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例5を示す。
図21は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例6を示す。
図22は、測定されたスポット群の色彩をアレイ配置に復元した例の7を示す。
図23は、スポット群の色彩を列数を変えて並置した色彩マトリクスの例7を示す。
発明を実施するための最良の形態
例えば、正常細胞から採取された100種のターゲットと異常細胞から採取された100種のターゲットとハイブリダイズした200枚のアレイがある場合、正常ターゲットとハイブリダイズした100枚のアレイのすべてが同じ色彩マトリクスとなり、異常ターゲットとハイブリダイズした100枚のアレイもまたすべて同じ色彩マトリクスとなり、さらに、正常のものの色彩マトリクスと異常のものの色彩マトリクスが異なるものになれば、ハイブリダイズしたアレイの色彩マトリクスから正常・異常が直ちに判別できる。
しかしながら実際にはそうはならない。正常な100枚から100種の色彩マトリクスが得られ、異常な100枚から100種の色彩マトリクスが得られる。この場合、1種類の色彩マトリクスを注視しても、それが正常か異常かはわからない。200種の色彩マトリクスの全体を見比べて、正常な100種と異常な100種の間に存在する共通相違点を抽出する必要がある。正常品同士でも相違する特徴でなく、正常・異常間でのみ相違する特徴を抽出する必要がある。この特徴が抽出されてはじめて正常・異常の区別が可能となる。
(A列・B行)の色彩マトリクスを200枚見比べても、正常・異常間でのみ相違し、正常品間では相違しない特徴を抽出することは極めて困難である。
本実施の形態に従って、n列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置した200種の表示を見ると、正常品に共通的に見られる特徴、異常品に共通的に見られる特徴、異常品にあって正常品にない特徴、正常品にあって異常品にない特徴が顕著化されて現れ、非常にわかりやすくなる。
(A列・B行)のアレイ上の色彩マトリクスの各スポットを、S1−1、S1−2、・・、S2−1・・(ここで先頭の数字は行方向の数を示し、末尾の数字は列方向の数字を示す)としたとき、典型的にはS1−1、S1−2・・S1−A、S2−1、S2−2・・S2−A、S3−1、S3−2・・S3−A、・・・SB−1、SB−2・・SB−Aの順に並べることによって(1列・A×B行)の1列を得ることができる。S1−1、S2−1・・SB−1、S1−2、S2−2・・SB−2、S1−3、S2−3・・SB−3、・・・S1−A、S2−A・・SB−Aの順に並べてもよい。1個おき、1行おき、あるいは1列おきに優先的にサンプリングしても良い。要は、1個のスポットを1度使うという制約の中で任意の順に並べれば良い。
1列のスポットの並びが得られたら、特開平11−066040号公報に記載されている各種の配置パターンに従って、列数が変化するマトリクス群を並列配置する。
この発明は、典型的には、下記の形態で実施することもできる。
(形態1)赤と緑で着色された2種のターゲットとハイブリダイズしたスポットの(赤強度)/(赤強度+緑強度)の値によって赤から青までのスペクトルから色彩を選択し、選択された色彩を4角形で表し、これをマトリクス状に隙間なく表示する。
(形態2)色彩付ドットのマトリクスをコンピュータによって創生する。
(形態3)コンピュータで創生された色彩付ドットマトリクスを、プリンタで印刷する。
(形態4)色彩マトリクスの単位ドットは矩形である。
(形態5)色彩マトリクスの単位ドットは、並列配置される色彩マトリクスの全部に亘って、同一形状同一サイズである。
(形態6)色彩マトリクスの単位ドットはスポットに対応する。
(形態7)色彩マトリクスの単位ドットはピクセルに対応する。
図1は、ハイブリダイズしたアレイ1の解析過程の全体を模式的に示している。ハイブリダイズされたアレイ1の上には、プローブが固定されたスポットS1−1、S1−2、・・、S2−1、・・が2次元的に配置されている。ここで先頭の数字は行方向の数を示し、末尾の数字は列方向の数字を示す。いくつかのプローブには励起光6で発光する蛍光色素と結合したターゲットがハイブリダイズし、いくつかのプローブにはハイブリダイズしていない。また、いくつかのプローブには励起光8で発光する蛍光色素と結合したターゲットがハイブリダイズし、いくつかのプローブにはハイブリダイズしていない。
ハイブリダイズしたアレイ1は、X方向にアレイを移動するXアクチュエータ10と、Y方向にアレイを移動されるYアクチュエータ12でXY方向に移動するテーブル上に載せられる。
テーブルの上面には光学装置が設置されており、励起光6と8のいずれかを選択してアレイ1の微少範囲を照射することができる。励起光6で照射したときのアレイ上での発光強度が光検出器2で検出され、励起光8で照射したときのアレイ上での発光強度が光検出器4で検出される。
これらの光学系で測定されるアレイ1上の画素(ピクセル)はスポットサイズよりも充分に小さく、スポットS内の分布を測定することができる。一つのスポット内に、ピクセルP1−1、P1−2、・・、P2−1、・・が2次元的に配置されている。ここでも先頭の数字は行方向の数を示し、末尾の数字は列方向の数字を示す。
ここでは便宜上、励起光6で照射したときに光検出器2で検出される光強度を赤の強度といい、励起光8で照射したときに光検出器4で検出される光強度を緑の強度という。
光検出器2で検出された赤の強度と、光検出器4で検出された緑の強度は、ピクセル毎に、コンピュータの記憶装置22に記憶される。14はスポットの行番号と列番号を示し、16はピクセルの行番号と列番号を位置を示す。これらは、Xアクチュエータ10とYアクチュエータ12の位置情報から得られる。18はピクセルの緑の強度であり、20はピクセルの赤の強度である。
コンピュータは、記憶装置22に記憶されたピクセルごとの強度を平均して、スポット毎の平均発光強度を計算するプログラムを有し、得られた結果が記憶装置30に記憶される。24はスポットで平均化された緑の強度であり、26はスポットで平均化された赤の強度である。
コンピュータは、記憶装置30に記憶されたスポット毎の赤の強度と緑の強度の比を計算するプログラムを有し、得られた比(赤の強度/緑の強度)の値が28に記憶される。
コンピュータは、28に得られた比の値(赤の強度/緑の強度)によって特定の色彩を選択するプログラムを有し、このプログラムによって色彩を選択する。この実施例では、赤の強度/緑の強度が低いほど(緑が強いほど)青に近い色彩を選択し、赤の強度/緑の強度が高いほど(赤が強いほど)赤に近い色彩を選択する。
コンピュータにはプリンタ34が接続されており、プリンタ34はスポット毎に、赤の強度/緑の強度に基づいて選択された色彩のドットを印刷する。
アレイ上ではスポットがA列・B行で配置されている。この場合、最も普通の表示態様は、プリンタ34で(A列・B行)の色彩ドットのマトリクスを印刷することであろう。従来はそうしている。
しかしながらこの実施例では、A×B個の色彩ドットを、(1列・A×B行)の色彩マトリクス36、(2列・A×B/2行)の色彩マトリクス38、(3列・A×B/3行)の色彩マトリクス40、(4列・A×B/4行)の色彩マトリクス42、(5列・A×B/5行)の色彩マトリクス44・・・・と並列配置したチャート48を作成する。
必要に応じて、一列を横方向に並べ一行を縦方向に配置しても良い。チャート60がその例であり、横方向の並びを列とし縦方向の並びを行とすれば、前記の説明がそのまま適用される。通常の数学的に定義に従って表現すれば、チャート60は、(1行・A×B列)の色彩マトリクス50、(2行・A×B/2列)の色彩マトリクス52、(3行・A×B/3列)の色彩マトリクス54、(4行・A×B/4列)の色彩マトリクス56、(5行・A×B/5列)の色彩マトリクス58・・・・と並列配置した表示ということができるが、両者は同一のものである。
最終表示48において、表示領域の先頭に1列の色彩マトリクスを置く必要はなく、n(nは自然数)列の色彩マトリクスから開始しても良い。列数の増分も1である必要はなく、k(kは自然数)を増分としても良い。並列配置する色彩マトリクスの個数に格別の制約はなく、3個以上の任意に数がとりえる。通常は並列配置する個数は多いほど特徴が顕在化され、100個以上の色彩マトリクスを並列配置することが多い。
最終表示48の表示態様には格段の制約がなく、CRTや液晶ディスプレイやプラズマディスプレイや各種プロジェクタを利用して消去可能に一時的に表示しても良い。紙以外のフィルムや印画紙等にプリンタや露光装置によって印字・印刷してもよい。
この場合、コンピュータに参照番号28として記憶されている、スポット毎の赤の強度/緑の強度からドットの色が決定されていることから、最終的に表示される色彩マトリクスの並列配置48では、アレイ上の一つ一つのスポットの平均的色彩に対応する色彩を単位にして表示される。これに代えて、ピクセル単位で色彩ドットを表示しても良い。この場合、スポット内の色彩分布まで残された色彩マトリクスが表示される。
参照番号18または24に記憶される赤強度でドットの色を決定しても良い。この場合、ドットの色が、濃い赤から淡い赤を経て白(または黒)に至る中から選択される。白または黒は赤強度がゼロの場合に選択される。同様に参照番号20または26に記憶される緑強度でドットの色を決定しても良い。この場合、ドットの色が、濃い緑から淡い緑を経て白(または黒)に至る中から選択される。
アレイ上の一つのスポットに対応して一つのドットが表示される場合、ドットの形状は任意の形状でよい。例えば正方形、長方形、円形、菱形のいずれでもよい。アレイ上の一つのピクセルに対応して一つのドットが表示される場合も、ドット形状は任意の形状でよい。この場合、スポットの実際の発光形状に対応する形状で色彩が表示されることになる。
図2はハイブリダイズしたアレイの測定結果の一例を示し、14−16−18は、ピクセル単位で緑強度に対応した色の濃さを持つ緑ドットを表示した例を示し、緑強度が高いピクセルには鮮明な緑ドットを表示し、緑強度が低いピクセルには暗い緑ドットを表示し、緑強度がゼロのピクセルには黒いドットを表示している。14−16−20は、ピクセル単位で赤強度に対応した赤ドットを表示した例を示し、赤強度が高いピクセルには鮮明な赤ドットを表示し、赤強度が低いピクセルには暗い赤ドットを表示し、赤強度がゼロのピクセルには黒いドットを表示している。14−16−32は、ピクセル単位で、赤の強度/緑の強度の比から決定された色のドットを表示した例を示す。
従来技術にならって、各ドットないしピクセルに対応するドットは、アレイ上の位置に復元されている。
図3は、ピクセル単位で、赤の強度/緑の強度の比から決定された色のドットを表示した他の例を示す。従来技術にならって、各ピクセルに対応するドットはアレイ上の位置に復元されている
図4は、スポット単位で、赤の強度/緑の強度の平均比から決定された色のドットを表示した例を示す。各スポットに対応するドットは、アレイ上の位置に復元されている。各ドットは4角形輪郭を持ち、隙間なく連接する位置に配置されている。
図4から図9までは、すべて同一種類のDNAマイクロアレイを用いた例を示している。それぞれ2種類のターゲットでハイブリダイズされており、一方のターゲットには正常細胞から採取されたRNAが用いられ、これは緑の励起光で発光する蛍光色素で標識してある。他方のターゲットにはメラノーマ(皮膚ガンの一種)細胞から採取されたRNAが用いられ、これは赤の励起光で発光する蛍光色素で標識してある。
スポット単位での赤の強度/緑の強度の平均比が低いほど(緑が強いほど)青いドットで表示され、赤の強度/緑の強度の平均比が高いほど(赤が強いほど)赤いドットで表示さている。実際には、「赤の強度/緑の強度」を底を2とする対数の値に変換し、変換された値によってドットの色が決定されている。図中の下側に、log2(赤の強度/緑の強度)の値とドットの色の関係が示されている。
図4の色彩マトリクスで、赤のドットは異常RNAにハイブリダイズして正常RNAにハイブリダイズしないプローブが固定されているスポットを示す。青のドットは正常RNAにハイブリダイズして異常RNAにハイブリダイズしないプローブが固定されているスポットを示す。白のドットは正常RNAにも異常RNAにもハイブリダイズするプローブが固定されているスポットを示す。
この色彩マトリクスから、どのプローブとどのプローブが赤く発色するターゲットは異常であり、どのプローブとどのプローブで赤く発色しないターゲットは正常であるというような規則性が見出されれば、遺伝子情報のもつ意味や機能が明らかにされ、診断技術が格段に進化する。しかしながら、現状では、それができていない。
図5は、図4と同種のものである。但し、メラノーマRNAが他の検体から採取されている。明らかに、同じメラノーマRNAでも、検体が相違すると、異なる色彩マトリクスとなる。
当然ながら、メラノーマの検体は何千・何万と存在する。何千・何万の色彩マトリクスから、メラノーマに共通的に認められる色彩マトリクス上の特徴を抽出することは難しい。
図6は、6検体から採取されたメラノーマRNAに対して、図1のコラム28に示される(赤の強度/緑の強度)を平均した値によって、ドットの色を決めた表示例を示す。図6の平均した色彩マトリクスと、図3、図4の個々の色彩マトリクスを対比してみても、有意な特徴抽出ができない。
図7は、大腸ガン細胞から採取されたRNAを用いてハイブリダイズしたアレイから得られた色彩マトリクスを示す。用いたアレイ種類等の条件は図4の場合と同様である。
図8は、図7と同種のものである。但し、大腸ガンRNAが他の検体から採取されている。明らかに、同じ大腸ガンRNAでも、検体が相違すると、異なる色彩マトリクスとなる。
図9は、6検体から採取された大腸ガンRNAに対して、図1のコラム28に示される(赤の強度/緑の強度)を平均した値によって、ドットの色を決めた表示例を示す。図9の平均した色彩マトリクスと、図7、図8の個々の色彩マトリクスを対比してみても、大腸ガンRNAに有意な特徴抽出ができない。
図4から9の6枚の色彩マトリクスのうち、3枚はメラノーマのものであり、3枚は大腸ガンのものである。6枚の色彩マトリクスから、メラノーマに存在して大腸ガンに存在しない特徴や、大腸ガンに存在してメラノーマに存在しない特徴が抽出できれば、ガンの診断に直接寄与することができるし、ガンのマーカーとなるDNAマイクロアレイを作製することも可能となるし、ガンの発現パターンの研究等を格段にすすめることができる。しかし、残念ながら、図4から図9の色彩マトリクスから有意な特徴を抽出することができない。
図10は、図4の(98列・99行)色彩マトリクスを(16列・607行)の色彩マトリクスに変換し、それを列方向に繰返して並列配置した表示を示す。
図11は図5、図12は図6、図13は図7、図14は図8、図15は図9に対応する。
図10から図15の6枚を並べて見ると、幾分特徴が顕在化され、図10〜12と、図13〜15の2グループに分けられそうであるが、いまいちはっきりしない。単純に同じパターンが繰返されているだけなので、特徴がどこにあるのかが判別しづらい。
図16は、(98列・99行)色彩マトリクスを、(3列・3234行)(4列・2426行)(5列・1941行)・・・の色彩マトリクスを並列配置して表示したものである。
図17は図5、図18は図6、図19は図7、図20は図8、図21は図9に対応する。
図16から図21の6枚を並べて見ると、特徴が顕在化され、図16〜18と図19〜21の2グループにはっきり分けられる。メラノーマに対応する図16〜18では、中断高さにはっきりした赤の縞が現れ、大腸ガンに対応する図19〜21では、最下部にはっきりした赤の縞が現れる。
図4の形式で示した色彩マトリクス(3枚はメラノーマから得られ、3枚は大腸ガンから得られた)と、図10の形式で示した色彩マトリクス(3枚はメラノーマから得られ、3枚は大腸ガンから得られた)と、図16の形式で示した色彩マトリクス(3枚はメラノーマから得られ、3枚は大腸ガンから得られた)を用意し、複数の人にそれぞれ6枚の色彩マトリクスを2グループに分類するテストを行なったところ、図4の形式では殆どの人が分類できなかった。図10の形式ではおよそ半分の人が正しく分類できた。図16の形式では全員が正しく分類することができた。
明らかに、アレイに配置されたプローブに対してターゲットがハイブリダイズしたか否かを利用する研究において、図16の形式、即ち、列数を変えた色彩マトリクスを並列配置した表示に変換することは重大な利用価値が有り、ある種の異常に見られて正常には見られない発現パターンの発見が促進され、正常・異常の判断技術や、異常が異常である理由に関する研究が促進される。
図4から図21では、スポット毎に平均した色彩を用いる例を示したが、スポット内の色彩分布を生かしながら、列数を変えた色彩マトリクスを並列配置することができる。図22はアレイ上でのスポットの配置と、スポット内の色彩分布を示し、図23は、それを(2列・32行)(3列・22行)(4列・16行)(5列・13行)の色彩マトリクス群を並列配置した表示例を示す。
この明細書に添付の図面は出願手続上の制約から白黒表示となっているが、理解に必要な人にはカラー原本を提示することによって、白黒表示に起因する理解の困難性を救済するものとする。
Claims (9)
- 基板上にプローブのスポットが2次元に配置されたアレイにターゲットがハイブリダイズしたアレイの解析支援方法であり、
ハイブリダイズしたアレイのスポット群の色彩情報を、少なくとも、n(nは自然数)列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k(kは自然数)列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置して表示する方法。 - スポット群の色彩情報をコンピュータの記憶手段に記憶し、その記憶内容に基づいて色彩付ドットのマトリクスをコンピュータによって創生することを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- コンピュータで創生された色彩付ドットマトリクスを、プリンタで印刷することを特徴とする請求の範囲2に記載の表示方法。
- スポットに対応する色彩付ドットを用いて色彩付ドットマトリクスを表示することを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- スポットのピクセルに対応する色彩付ドットを用いて色彩付ドットマトリクスを表示することを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- 色彩マトリクスの単位ドットを矩形として表示することを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- 色彩マトリクスの単位ドットの大きさを、並列配置される色彩マトリクスの全部に亘って同一とすることを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- 赤と緑で着色された2種のターゲットとハイブリダイズしたスポットの(赤強度)/(赤強度+緑強度)の値によって赤から青までのスペクトルから色彩を選択し、選択された色彩を4角形で表し、これをマトリクス状に隙間なく表示することを特徴とする請求の範囲1に記載の表示方法。
- ハイブリダイズしたアレイのスポット群の色彩情報記憶手段、
記憶された色彩情報から、少なくとも、n(nは自然数)列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+k(kは自然数)列の行列形式で示した色彩マトリクス、n+2k列の行列形式で表示した色彩マトリクスを並列配置した表示を創生する手段
とを有するハイブリダイズしたアレイの解析支援装置。
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