JP3646301B2 - 有機塩素化合物の処理方法及び処理構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トリクロロエチレンなどの有機塩素化合物を含む汚染土壌を処理する方法及び処理構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
工場跡地内の土壌には、発ガン性物質であるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの有機塩素化合物が含まれていることがあり、このような土壌をそのまま放置すると地下水等を介して有機塩素化合物が環境に拡散するおそれがある。そのため、このような汚染土壌に対しては所定の浄化処理を行なわねばならない。
【0003】
一方、最近では、微生物の活性を利用して環境中の汚染物質を分解無害化する技術、すなわちバイオレメディエーションの研究が進んできており、上述したような汚染土壌への適用も研究されるようになってきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような微生物を利用した汚染物質の処理方法は、少なくとも実験室レベルでは十分な成果が確認されており、現実的な対応についても今後大いに期待されるところである。
【0005】
しかしながら、土質状況によっては、分解菌の活性を十分上げることができず、該汚染土内の汚染物質を分解するのに長時間を要したり、場合によっては微生物分解自体が実質的に不可能になるという問題が懸念される。
【0006】
また、汚染土に生石灰を混合することで、汚染土内に含まれている水分と生石灰との化学反応に伴う水和熱を発生させ、かかる水和熱を利用して汚染物質である有機塩素化合物を気化処理する方法も検討開発されている(特開平7−275837号公報参照)が、かかる方法では、汚染土が生石灰により強アルカリ性となり、埋め戻した後でアルカリ成分が地下水等に拡散したり生態系に悪影響を及ぼすといった事態が懸念される。
【0007】
さらには、汚染土壌から土壌内空気を吸引したり土壌内地下水を揚水する方法、汚染土壌を高温に加熱する方法、鉄粉の還元作用を利用した方法などがあるが、空気吸引若しくは地下水揚水は、長時間を要するとともにその間に設備の維持にコストがかかる、高温加熱方法は土壌の生態系に悪影響を残す、鉄粉による還元方法は適用できる状況に制約が大きいなどの問題をそれぞれ生じていた。
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、処理済みの土壌に悪影響を残すことなく確実かつ短期間にしかもどんな汚染土壌に対しても有機塩素化合物を除去処理可能な有機塩素化合物の処理方法及び処理構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法は請求項1に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌に中空多孔管を埋設し、該中空多孔管又はその内側に一対の電極を設け、前記中空多孔管内に電解質を供給することなしに、該一対の電極に電源を電気接続して該電極間に通電するとともに、前記中空多孔管の透水孔から地下水を自然流入させて該地下水により前記中空多孔管内の地下水を攪拌させるものである。
【0010】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理構造は請求項2に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続された電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成したものである(前記中空多孔管内に電解質を供給する手段を有するものを除く)。
【0011】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理構造は請求項3に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を間隔を設けることなく柱列状に連続構築したものである。
【0012】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理構造は請求項4に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を所定の間隔をおいて構築するとともに隣り合う中空多孔管同士を不透水壁で接合したものである。
【0013】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理構造は、前記中空多孔管を前記汚染土壌内の汚染領域を取り囲むように閉鎖状に形成したものである。
【0014】
また、本発明に係る有機塩素化合物の処理構造は請求項6に記載したように、有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を鋼管で形成するとともに該中空多孔管を前記一対の電極のうちの陰極としたものである。
【0015】
本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造においては、まず、有機塩素化合物を含む汚染土壌に中空多孔管を埋設する。
【0016】
次に、中空多孔管又はその内側に一対の電極を設ける。
【0017】
次に、一対の電極に電源を電気接続して該電極間に通電する。
【0018】
このようにすると、中空多孔管内に貯留された地下水に含まれるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、主として陰極表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0019】
一方、中空多孔管の透水孔から地下水を自然流入させ、該地下水により中空多孔管内の地下水を攪拌させる。
【0020】
このようにすると、中空多孔管内に貯留された地下水に含まれる有機塩素化合物は電極と接触しやすくなり、電極面積や電圧を高くせずとも電気分解反応が促進されるとともに、電気分解反応で生じた反応生成物が攪拌によって常時又はすみやかに電極から離間されるため、該反応生成物が電極近傍での電気分解反応を阻害する懸念もなくなる。
【0021】
透水孔から自然流入させた地下水については、他の透水孔から自然流出させるように構成すればよい。
【0022】
中空多孔管の長さ、ひいては埋設深度は、有機塩素化合物が分布している深さを考慮して適宜設定すればよいし、中空多孔管の径や材質、透水孔の数や孔径についても任意であり、一対の電極を設けるにあたっても、一対の電極を中空多孔管内の対向位置に吊持する、中空多孔管の内面に貼り付けるなどの方法が考えられるが、中空多孔管を鋼管で形成するとともに該中空多孔管を前記一対の電極のうちの陰極としたならば、土圧に対する強度を高く設定できる分だけ、有機塩素化合物が深層に分布している場合にも適用することができるだけでなく、他方の電極である陽極だけを中空多孔管内に配置すればよいだけなので、電極を容易に配置することが可能となる。
【0023】
汚染土壌に埋設される中空多孔管の数や配置の仕方についても任意であり、地下水の流れが集中しやすい箇所を選んで大口径の中空多孔管を一本だけ埋設する、地下水の流れに直交する配置ラインに沿って一定の間隔で複数の中空多孔管を埋設するなどの方法が考えられるが、かかる中空多孔管を間隔を設けることなく柱列状に連続構築したならば、中空多孔管が柱列壁のような状態となるため、有機塩素化合物を含んだ地下水が電気分解処理されずに下流側に逸散してしまう懸念がなくなる。なお、かかる構成の場合、中空多孔管を鋼管矢板とすることが考えられる。
【0024】
また、中空多孔管を所定の間隔をおいて構築するとともに隣り合う中空多孔管同士を不透水壁で接合したならば、中空多孔管に直接流入しなかった地下水についても、不透水壁でいったん遮水された後、該不透水壁に沿って側方に流れ、最終的にはいずれかの中空多孔管に流入することととなるため、有機塩素化合物を含んだ地下水が下流側に逸散してしまう懸念はやはり生じない。
【0025】
一方、請求項3又は請求項4の発明において、中空多孔管を汚染土壌内の汚染領域を取り囲むように閉鎖状に形成したならば、中空多孔管が柱列状に連続構築されていることにより、又は不透水壁で相互に接合されていることにより、それらの内側は閉鎖空間となり、雨水又は給水によって地下水の水位が上がり、放射方向への地下水流、つまり中空多孔管の透水孔に流入する地下水の流れを人工的に作り出すことが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。なお、従来技術と実質的に同一の部品等については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理構造を示した鉛直断面図である。同図でわかるように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理構造は、有機塩素化合物を含む汚染土壌1に埋設された中空多孔管2と、該中空多孔管内に設置された一対の電極としての陽極3a及び陰極3bと、該陽極及び陰極に電気接続された電源4とから構成してなる。
【0028】
ここで、中空多孔管2は、ストレーナ管とも呼ばれているものであり、その管体に穿孔された透水孔6から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水5が攪拌されるように形成してあり、流入した地下水は、別の透水孔6から自然流出するように形成してある。
【0029】
中空多孔管2をこのように構築するには、構築予定の地盤性状や地下水の流れを事前に調査し、その調査を踏まえて構築位置等を適宜設定すればよい。
【0030】
なお、中空多孔管2の長さひいては埋設深度は、有機塩素化合物が分布している深さを考慮して適宜設定すればよいし、中空多孔管2の径や材質、透水孔6の数や孔径についても地下水の流入速度と後述する電気分解の反応速度との兼ね合い等を考慮して適宜設定すればよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法の手順を示したものである。同図でわかるように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法においては、まず、図1に示すように有機塩素化合物を含む汚染土壌1に中空多孔管2を埋設する(ステップ101)。
【0032】
汚染土壌1に中空多孔管2を埋設するにあたっては、例えば図3の平面図に示すように、地下水の流れが集中しやすい箇所を選び、その地下水の流れに直交する配置ラインに沿って、後述する電気分解の反応速度との兼ね合いや地下水の流れ速度等を考慮して所定の間隔で複数埋設するのがよい。
【0033】
次に、各中空多孔管2内に陽極3a及び陰極3bを設置する(ステップ102)。陽極3a及び陰極3bは、例えば数cm〜数十cm離間して配置し、電源4は、例えば10〜30ボルト程度の直流電圧を印加できるように構成しておくのがよい。
【0034】
次に、陽極3a及び陰極3bに電源4を電気接続して該電極間に通電する(ステップ103)。
【0035】
このようにすると、中空多孔管2内に貯留された地下水5に含まれるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった有害な有機塩素化合物は、主として陰極表面の還元反応によって塩素イオン等の塩化物と、エチレン、エタンなどの炭化水素に電気分解される。そして、これらの塩化物や炭化水素はいずれも無害物質であるため、結局、有害な有機塩素化合物が無害化されることとなる。
【0036】
ここで、通電量が増加すると、電気分解による有機塩素化合物の処理速度が速くなる反面、ジュール熱が発生してエネルギー効率が低下するとともに、発生熱による水温上昇によって有機塩素化合物が電気分解されずに気化し、気化ガスを処理するための設備が別途必要となる。
【0037】
そのため、上述した通電作業を行うにあたっては、有機塩素化合物の気化が抑制される範囲で電気分解による処理速度ができるだけ向上するよう、電圧や電流の大きさ、通電時間を適宜調整するのが望ましい。
【0038】
ちなみに、地下水5は、一般的には0.1〜0.3mS/cm程度の電気伝導度であるので、電流値は小さく、したがって消費電力もわずかである。
【0039】
一方、中空多孔管2の透水孔6から地下水を自然流入させて該地下水により中空多孔管2内の地下水5を攪拌させる(ステップ104)。このとき、通電処理を継続するかいったん中断するかは任意である。
【0040】
このようにすると、中空多孔管2内に貯留された地下水5に含まれる有機塩素化合物は電極と接触しやすくなり、電極面積や電圧を高くせずとも電気分解反応が促進されるとともに、電気分解反応で生じた反応生成物が攪拌によって常時又はすみやかに電極から離間されるため、該反応生成物が電極近傍での電気分解反応を阻害する懸念もなくなる。
【0041】
次に、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造における通電に関する作用効果を実験で確認したので、その概略を以下に説明する。
【0042】
まず、有機塩素化合物であるトリクロロエチレン(以下TCEという)が100mg/L含まれた汚染水を容器に入れ、該容器内に電極を設置して直流電流を流し(電流値0.05A、電圧値30V)、そのときに発生する塩素ガスの量とTCEの残存量とを計測した。なお、TCEの揮発による損失をできるだけ減らすため、上述したように容器を冷却水の中に入れて冷却した。
【0043】
計測にあたっては、通電時間が異なるケースを4回行い、それぞれ通電終了後に試料液を採取して液中のTCE濃度、塩化物イオン(Cl-)濃度及び塩素(Cl2)濃度を測定した。
【0044】
実験の結果をグラフにして図4に示す。同図でわかるように、通電を行った場合には、通電時間とともにTCE濃度(TCE残存率として表示)が減少するとともに、塩化物イオン濃度(TCE塩素化率として表示)が増大することがわかる。これは、主に陰極表面での還元反応によってTCEの構成成分の一つである塩素がTCEから脱離する、すなわち脱塩素反応が生じ、TCEが減少したものと考えられる。なお、塩素濃度は、いずれもほとんどゼロであった。
【0045】
以上の実験結果から、汚染水中のTCEを通電時間に比例して確実に分解・無害化できるとともにそれに要する電力もわずかであることがわかった。なお、通電を行わずに放置した場合、TCE濃度はほとんど不変で、塩化物イオンも検出されなかった。また、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、テトラクロロエチレンといった他の有機塩素化合物についても同様の処理効果を示すことを確認済みである。
【0046】
次に、攪拌による作用効果を実験で確認したので、その概略を以下に説明する。
【0047】
まず、TCEが100mg/L 含まれた汚染水を容器に入れ、該容器内に電極を設置して直流電流を流し(電流値0.1A)、そのときのTCEの残存量を計測した。
【0048】
実験の結果をグラフにして図5に示す。同図でわかるように、通電を行いつつ攪拌をした場合には、攪拌をしない場合よりもTCE濃度(TCE残存率として表示)の減少量が大きくなることがわかる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造によれば、中空多孔管2内に貯留された有機塩素化合物を含む地下水5に陽極3a及び陰極3bを設けて通電するようにしたので、有機塩素化合物は、塩化物と炭化水素とに電気分解され、かくして、有機塩素化合物をわずかな電力でかつ通電時間に比例した形で無害化処理することが可能となる。しかも、中空多孔管2の長さや管径を適宜調整すれば、有機塩素化合物が分布している汚染領域が深い場合にもこれに十分適用することが可能である。
【0050】
また、本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造によれば、中空多孔管2内の地下水5に通電を行いつつ、該中空多孔管の透水孔6から地下水を自然流入させて該地下水により中空多孔管2内の地下水を攪拌させるようにしたので、地下水5中の有機塩素化合物は、陽極3a及び陰極3bと接触しやすくなり、電極面積や電圧を高くせずとも電気分解反応を促進させることができるとともに、電気分解反応で生じた反応生成物が攪拌によって常時又はすみやかに陽極3aや陰極3bから離間されるため、該反応生成物が電極近傍での電気分解反応を阻害するのを未然に防止することも可能となり、高濃度汚染や短時間処理に適したものとなる。
【0051】
本実施形態では、複数の中空多孔管2を配置したが、地下構造等の関係によって地下水の流れが局所的に集中している場合には、図6に示すように単一かつ大口径の中空多孔管11を埋設することが考えられる。
【0052】
なお、中空多孔管11にも透水孔6を設けてあるのをはじめ、中空多孔管2と実質同一に構成してあるとともに、本変形例に係る作用効果についても上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0053】
また、本実施形態では中空多孔管2の材質について特に言及しなかったが、図7に示すように中空多孔管2に代えて、鋼管で形成された中空多孔管12を使用するとともに該中空多孔管を陰極3bとし、陽極3aについては、例えば同図に示すように、中央近傍に吊持するようにしてもよい。
【0054】
かかる構成によれば、土圧に対する強度を高く設定できる分だけ、有機塩素化合物が深層に分布している場合にも適用することができるだけでなく、他方の電極である陽極3aだけを中空多孔管12内に配置すればよいだけなので、陽極3aを容易に配置することが可能となる。
【0055】
なお、中空多孔管12にも透水孔6を設けてあるのをはじめ、中空多孔管2と実質同一に構成してあるとともに、本変形例に係る作用効果についても上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0056】
また、本実施形態では、中空多孔管2を所定間隔で埋設するようにしたが、これに代えて図8に示すように、中空多孔管2を間隔を設けることなく柱列状に連続埋設するようにしてもよい。
【0057】
かかる構成によれば、中空多孔管2が柱列壁のような状態となるため、有機塩素化合物を含んだ地下水が電気分解処理されずに下流側に逸散してしまう懸念がなくなる。なお、かかる構成の場合、中空多孔管2を鋼管矢板で構成することが考えられる。
【0058】
また、本実施形態によれば、中空多孔管2を所定間隔で埋設するようにしたが、これに代えて図9に示すように、中空多孔管2を所定の間隔をおいて構築するとともに隣り合う中空多孔管2同士を、泥水掘削による薄型止水壁、原位置攪拌によるソイルセメント壁、鋼矢板等として構築された不透水壁21で接合するようにしてもよい。
【0059】
かかる構成によれば、中空多孔管2に直接流入しなかった地下水についても、不透水壁21でいったん遮水された後、該不透水壁に沿って側方に流れ、最終的にはいずれかの中空多孔管2に流入することととなるため、有機塩素化合物を含んだ地下水が電気分解処理されずに下流側に逸散してしまう懸念がなくなる。
【0060】
また、本実施形態では、専ら地下水の自然の流れを利用することを想定したが、これに代えて、地下水の流れを人工的に作るようにしてもよい。
【0061】
図10(a)は、汚染土壌1内の汚染領域31を取り囲むように図8の構造を環状に形成したもの、すなわち中空多孔管2を隙間なく柱列状に環状配置したものであり、同図(b)は、図9の構造を環状に形成したもの、すなわち中空多孔管2を所定間隔で環状配置するとともに各中空多孔管同士を不透水壁21で接合したものであり、いずれの変形例においても、各中空多孔管2には上述の実施形態と同様に陽極3a及び陰極3bを配置してある。
【0062】
これらの構成においても、通電に関しては上述したと同様の作用効果が得られるとともに、中空多孔管2の内側が閉鎖空間となるため、雨水又は給水によって地下水の水位が上がり、放射方向への地下水流、つまり中空多孔管2の透水孔6から流入する地下水の流れを人工的に作り出すことが可能となり、地下水の自然の流れがない場所であっても、地下水の流れを利用した攪拌を行うことが可能となる。なお、給水の場合には、閉鎖状に形成された中空多孔管2の外側の水(処理済の水)を揚水し、これを該中空多孔管で囲まれた閉鎖空間内に戻して循環させるようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、地下水流による自然攪拌作用のみによって中空多孔管2内の地下水5を攪拌するようにしたが、地下水流による自然攪拌だけでは攪拌作用が不足する場合には、中空多孔管2内に攪拌用水中ポンプを設置する、中空多孔管2内に空気を送り込む等の方法で中空多孔管2内の攪拌水流を強制的に作り出し、地下水流による自然攪拌を補うようにしてもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造によれば、周辺への汚染拡散を防ぎつつ処理済みの土壌にも悪影響を残さず確実かつ短期間に、しかもどんな汚染土壌に対しても有機塩素化合物を除去処理することが可能となる。
【0065】
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理構造を示した鉛直断面図。
【図2】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法の手順を示したフローチャート。
【図3】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理構造を示した平面図。
【図4】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造における通電作用を示したグラフ。
【図5】本実施形態に係る有機塩素化合物の処理方法及び処理構造における攪拌作用を示したグラフ。
【図6】変形例に係る有機塩素化合物の処理構造を示した平面図。
【図7】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理構造を示した鉛直断面図。
【図8】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理構造を示した平面図。
【図9】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理構造を示した平面図。
【図10】別の変形例に係る有機塩素化合物の処理構造を示した平面図。
【符号の説明】
1 汚染土壌
2、11、12 中空多孔管
3a、3b 電極
4 電源
5 地下水
6 透水孔
21 遮水壁
31 汚染領域
Claims (6)
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌に中空多孔管を埋設し、該中空多孔管又はその内側に一対の電極を設け、前記中空多孔管内に電解質を供給することなしに、該一対の電極に電源を電気接続して該電極間に通電するとともに、前記中空多孔管の透水孔から地下水を自然流入させて該地下水により前記中空多孔管内の地下水を攪拌させることを特徴とする有機塩素化合物の処理方法。
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続された電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成したことを特徴とする有機塩素化合物の処理構造(前記中空多孔管内に電解質を供給する手段を有するものを除く)。
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を間隔を設けることなく柱列状に連続構築したことを特徴とする有機塩素化合物の処理構造。
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を所定の間隔をおいて構築するとともに隣り合う中空多孔管同士を不透水壁で接合したことを特徴とする有機塩素化合物の処理構造。
- 前記中空多孔管を前記汚染土壌内の汚染領域を取り囲むように閉鎖状に形成した請求項3又は請求項4記載の有機塩素化合物の処理構造。
- 有機塩素化合物を含む汚染土壌内に埋設された中空多孔管と、該中空多孔管又はその内側に設置された一対の電極と、該一対の電極に電気接続され通電によって前記有機塩素化合物を電気分解する電源とから構成するとともに、前記中空多孔管をその透水孔から地下水が自然流入するようにかつ該地下水によって内部に貯留された地下水が攪拌されるように形成した有機塩素化合物の処理構造であって、前記中空多孔管を鋼管で形成するとともに該中空多孔管を前記一対の電極のうちの陰極としたことを特徴とする有機塩素化合物の処理構造。
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