JP7160767B2 - 打込式注入管、打込式注入管用二重管、および土壌浄化方法 - Google Patents
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Description
土壌加熱法は、浄化対象とする地盤の温度を確実に設定した温度まで上昇させることができれば、他の浄化工法と比べても安定して浄化を行える技術である。一方、効率を高めるためには温度が高い方が有利であるが、使用する電力も多くなるため、コストが割高になることが課題である。電力消費量を削減する方法として、特許文献2には、電極の一部の外周に非導電部を設け、汚染されていない領域を加熱しない技術が提案されている。
1.先端コーン、無孔鋼管、有孔鋼管、二重管、異径管継手を有し、
前記二重管が、内側の小径無孔鋼管、外側の非導電性樹脂パイプからなり、
前記異径管継手が導電性であり、前記小径無孔鋼管と、前記無孔鋼管または前記有孔鋼管とを接続することを特徴とする打込式注入管。
2.前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管の外径が、いずれも61mm以下であることを特徴とする1.に記載の打込式注入管。
3.前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管の外径の最大値と最小値との差が、1mm以下であることを特徴とする1.または2.に記載の打込式注入管。
4.内側に小径無孔鋼管、外側に非導電性樹脂パイプを備える二重管であることを特徴とする打込式注入管用二重管。
5.有機化合物で汚染された土壌について、土壌調査を実施し、低透水性汚染層、高透水性汚染層、非汚染層の深さ位置を確認する調査工程、
複数本の1.~3.のいずれかに記載の打込式注入管を、前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管が、それぞれ前記低透水性汚染層、前記高透水性汚染層、前記非汚染層の深さ位置となるように接続しながら、土壌に打込む打込工程、
前記複数本の打込式注入管に電圧を印加して、前記低透水性汚染層と前記高透水性汚染層を加温する加温工程、
前記打込式注入管の前記有孔鋼管から、前記高透水性汚染層に浄化剤を注入する注入工程、
を有することを特徴とする土壌浄化方法。
6.前記加温工程において、前記低透水性汚染層を35℃以上、前記高透水性汚染層を20℃以上35℃以下に加温することを特徴とする5.に記載の土壌浄化方法。
7.前記有機化合物が、揮発性有機塩素化合物であることを特徴とする5.または6.に記載の土壌浄化方法。
8.前記浄化剤が、デハロコッコイデス(Dehalococcoides)属細菌を含むことを特徴とする5.~7.のいずれかに記載の土壌浄化方法。
9.前記注入工程において、前記有孔鋼管から、前記高透水性汚染層に空気を供給することを特徴とする5.または6.に記載の土壌浄化方法。
無孔鋼管、有孔鋼管、二重管の外径が、いずれも61mm以下である打込式注入管は、比較的小さな力で地盤に打込むことができるため、打込に使用する機械の小型化と、機械の小型化に伴う騒音、振動の低減を実現することができる。無孔鋼管、有孔鋼管、二重管の外径の最大値と最小値との差が1mm以下である打込式注入管は、その外径が略同一で側面の段差が小さいため、地盤に打込む際の抵抗を最小限にすることが可能であり、管の破損を防ぐことができる。
図1に本発明の打込式注入管の一実施態様である模式図を示す。
一実施態様である打込式注入管1は、先端コーン15、無孔鋼管11、有孔鋼管12、二重管13、異径管継手14を有し、二重管13が、内側の小径無孔鋼管131と外側の非導電性樹脂パイプ132からなり、異径管継手14が、導電性であり、小径無孔鋼管131と、無孔鋼管11または有孔鋼管12とを接続する。
なお、図1に示す打込式注入管1は一実施態様であり、本発明の打込式注入管において、無孔鋼管、有孔鋼管、二重管の接続数、接続順は、下記で詳述するように、無孔鋼管が低透水性汚染層、有孔鋼管が高透水性汚染層、二重管が非汚染層に設置されるように選択される。
無孔鋼管11は、黒管(亜鉛メッキが施されていない炭素鋼鋼管)、白管(亜鉛メッキが施されている炭素鋼鋼管)等の導電性の鋼管を特に制限することなく使用することができる。
有孔鋼管12は、黒管、白管等の導電性の鋼管の側面に、開口を備えるものである。有孔鋼管としては、開口を通じて浄化剤を土壌中に注入できるものを特に制限することなく使用することができる。例えば、特開2012-193534号公報に記載の管体の外周に、管体の長尺方向が長さ方向となる細長い矩形状のスリットが複数形成され、スリット幅が0.2mm以上0.6mm以下であり、複数のスリットの総開口面積が管体の内空断面積の3倍以下である有孔管材を好適に使用することができる。
異径管継手14は、大径部141と小径部142とを備え、大径部141は小径無孔鋼管131と、小径部142は無孔鋼管11または有孔鋼管12と接続される。なお、図1に示す異径管継手14は一態様であり、例えば、非汚染層より上方に低透水性汚染層または高透水性汚染層が位置する場合は、下方の小径無孔鋼管と、上方の無孔鋼管または有孔鋼管を接続できる異径管継手を用いる。
図2に、本発明の土壌浄化方法の概略図を示す。
本発明の土壌浄化方法は、本発明の打込式注入管1を用いるものであり、複数本の打込式注入管1(図2には1本のみ記載)を、無孔鋼管11、有孔鋼管12、二重管13が、それぞれ低透水性汚染層、高透水性汚染層、非汚染層の深さ位置となるよう土壌に打込み、この打込式注入管1に電圧を印加して、低透水性汚染層と高透水性汚染層を加温する土壌加熱法と、有孔鋼管12から浄化剤を注入するバイオレメディエーションとを併用するものである。
・調査工程
まず、有機化合物で汚染された土壌について、ボーリング調査を実施し、低透水性汚染層、高透水性汚染層、非汚染層の深さ位置を確認する。
低透水性汚染層とは、その上下に位置する層よりも透水性が低く、有機化合物が濃縮される層である。粘土層、シルト層等が、低透水性汚染層となり得る。
高透水性汚染層とは、低透水性汚染層よりも透水性の高い、有機化合物で汚染された層、または、隣接した低透水性汚染層よりも透水性が高く、隣接した低透水性汚染層の加温によって有機化合物が移行するおそれのある層である。砂層、礫層、砂礫層等が、高透水性汚染層となり得る。
非汚染層は、有機化合物に汚染されていない層である。
調査工程の結果に応じて、複数本の打込式注入管1を打込む。打込式注入管を打込む範囲、位置、間隔、数等は、特に制限されず、土壌加熱法における常法に従って打込むことができる。例えば、1辺が2m以上10m以内の正三角形からなる三角格子の頂点位置に打込むことができる。また、必要に応じて、打込位置近傍、例えば、三角格子の頂点位置に打込まれた打込式注入管が形成する三角形の中心点を削孔し、このボーリング孔に異なる深さ位置での土壌温度を測定する温度センサーを設置することもできる。
打込式注入管1を、地上に設置した電源装置と接続し、複数本の打込式注入管の間に電圧を印加し、無孔鋼管11が接する低透水性汚染層と、有孔鋼管12が接する高透水性汚染層とを加温する。打込式注入管1は、小径無孔鋼管131、異径管継手14、有孔鋼管12、無孔鋼管11が導電性であるため、打込式注入管と電源装置との接続作業は、打込完了後に地上で行うことができる。打込式注入管が打込まれた領域内を効率的に加温することができる。電源装置は、交流電源、特に、3相交流電源であることが好ましい。また、印加する電圧は、隣接する打込式注入管どうしの間隔、処理対象である有機化合物の沸点等に応じて調整することができ、例えば、80V以上250V以下とすることができる。
打込式注入管1の有孔鋼管12から、高透水性汚染層に浄化剤を注入する。
本発明の打込式注入管1は、無孔鋼管11、有孔鋼管12、二重管13、異径管継手14のいずれも管形状であり、長さ方向全体に亘って中空が挿通している。そのため、地上から打込式注入管1の内部に浄化剤を注入することにより、有孔鋼管12の開口から高透水性汚染層に浄化剤を浸透させることができる。浄化剤としては、浄化対象である有機化合物の微生物による分解を促進できるものであれば特に制限されず、微生物の増殖、活動に必要な窒素やリンなどの栄養塩、水素供与体となる各種有機物(糖、有機酸(脂肪酸)、タンパク質、アミノ酸など)、分解微生物そのもの、及びこれらの混合物等が挙げられる。
全量82mlの広口バイアル瓶に、汚染サイトから採取した汚染地下水50mlと汚染土壌10g、0.1%レサズリンナトリウム溶液0.1ml、ビール酵母エキスを主成分とする有機資材(特許第5841001号公報参照)0.7ml(終濃度225mgC/L)を添加した。また、地下水の塩素化エチレン類濃度が低濃度であったため、各バイアル瓶にTCE溶液を濃度1.5mg/Lとなるように添加してブチルゴム栓とアルミシールで密栓し、15℃~40℃まで5℃ごとに設定した恒温槽に入れ静置培養を実施した。有機資材を添加して培養24日目に、別途培養していたUCH007株とUCH001株の共培養液(UCH007株:2.7×104copies/ml)を0.5ml植菌した。
定期的に各バイアル瓶からシリンジを用いて地下水を1ml採取し、パージ&トラップGCMS(島津製作所:GCMS-QP2010 Ultra)により塩素化エチレン類濃度を測定した。結果を図3に示す。
非汚染領域において、本発明の打込式注入管を打込み、土壌を加温して、土壌温度の経時変化を測定した。図4に実施現場における土壌断面の概略図、図5に実施現場の平面概略図を示す。以下、図4、5を使用して説明する。
過去に標準貫入試験を実施して、地盤のN値が確認済みである場所において、自走式の振動貫入装置(バイブロドリル)を持つ小型ボーリングマシン(株式会社ワイビーエム製、ECO-1VIV)を用いて無水コアボーリングにより土壌試料を採取して土質性状を確認した。
図4に示すとおり、地表からGL-14~-16mが粘土層、GL-8~-14mが砂礫層、GL-4~-8mがシルト層、GL-2~-4mが粘土層、GL0~-2mが埋土であった。また、GL-11~-14mに礫混じり細砂からなる硬い地盤が存在した。
汚染現場であると想定し、GL-14~-16mの粘土層を低透水性汚染層、砂礫層のうちGL-12~-14mの部分を高透水性汚染層、その他の層を非汚染層と仮定した。
(1)無孔鋼管と有孔鋼管として40A、小径無孔鋼管として32A、非導電性樹脂パイプとしてVU40(塩ビ薄肉管)を組み合わせた打込式注入管1、(2)無孔鋼管と有孔鋼管として50A、小径無孔鋼管として40A、非導電性樹脂パイプとしてVP50(塩ビ厚肉管)を組み合わせた打込式注入管2を用いた。各鋼管は、長さ1mで、その一端が雄ねじ、他端が雌ねじとなっており、螺合により接続できる。
打込式注入管を構成する管のうち、最上部に接続された二重管(小径無孔鋼管)の内側に溶接により設けた接続端子と、3相交流110Vの電源装置を接続して電圧を印加し、低透水性汚染層と前記高透水性汚染層を加温した。電圧印加条件は、以下の通りである。
0~35日目:印加電圧110V-AC、出力75%で供給(各電極に均等に供給)
35~37日目:停止
37~73日目:印加電圧110V-AC、出力100%で供給(各電極に均等に供給)
43-45日目:停止
73~96日目:印加電圧110V-AC、出力を電極ごとに調整
1-1:100%、1-2: 77%、1-3: 79%
2-1: 70%、2-2:100%、2-3: 80%
打込式注入管1を打込んだエリア(以下、エリア1という)と、打込式注入管2を打込んだエリア(以下、エリア2という)を比較すると、両エリアとも温度の上昇が確認できた。
エリア1では低透水性汚染層と仮定した粘土層(GL-15.6m、-14.5m)の温度は、70日経過後に60~70℃まで上昇したが、高透水性汚染層と仮定した砂礫層(GL-13.5m、-11.5m)の温度は、30℃前後に維持された。すなわち、何ら特別な操作、制御を行うことなく、電圧を印加するだけで、低透水性汚染層をより高温に、高透水性汚染層をより低温に、約30℃の温度差を有する状態に加温できることが確かめられた。そして、高透水性汚染層の温度が30℃前後であるため、微生物による生分解処理が促進されることが示唆された。
Claims (5)
- 先端コーン、無孔鋼管、有孔鋼管、二重管、異径管継手を有し、
前記二重管が、内側の小径無孔鋼管、外側の非導電性樹脂パイプからなり、
前記異径管継手が導電性であり、前記小径無孔鋼管と、前記無孔鋼管または前記有孔鋼管とを接続することを特徴とする打込式注入管。 - 前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管の外径が、いずれも61mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の打込式注入管。
- 前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管の外径の最大値と最小値との差が、1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の打込式注入管。
- 内側に小径無孔鋼管、外側に非導電性樹脂パイプを備える二重管であることを特徴とする打込式注入管用二重管。
- 有機化合物で汚染された土壌について、土壌調査を実施し、低透水性汚染層、高透水性汚染層、非汚染層の深さ位置を確認する調査工程、
複数本の請求項1~3のいずれかに記載の打込式注入管を、前記無孔鋼管、前記有孔鋼管、前記二重管が、それぞれ前記低透水性汚染層、前記高透水性汚染層、前記非汚染層の深さ位置となるように接続しながら、土壌に打込む打込工程、
前記複数本の打込式注入管に電圧を印加して、前記低透水性汚染層と前記高透水性汚染層を加温する加温工程、
前記打込式注入管の前記有孔鋼管から、前記高透水性汚染層に浄化剤を注入する注入工程、
を有することを特徴とする土壌浄化方法。
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