JP3646166B2 - アクチュエータ素子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクチュエータ素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療機器や産業用ロボット、マイクロマシンなどの分野において小型でかつ軽量で柔軟性に富むアクチュエータの必要性が高まっている。
【0003】
このようにアクチュエータを小型化すると慣性力よりも摩擦や粘性力が支配的となるため、モータやエンジンのような慣性力を利用してエネルギーを運動に変える機構は、超小型アクチュエータの動力として用いることは困難である。このため、超小型アクチュエータの作動原理としては、静電引力型、圧電型、超音波式、形状記憶合金式、高分子伸縮式などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの超小型アクチュエータには、それぞれ作動環境に制限があったり、応答性が不充分であったり、構造が複雑であったり、また柔軟性が欠如しているなどの問題点がある。たとえば、高分子伸縮式アクチュエータを作動させるには、高分子が接触している溶液を他の塩類を含む溶液に交換する必要があり、このため小型で速い応答を必要とする用途には利用困難である。
【0005】
これに対して、小型化が容易であり、かつ応答性が早く、小電力で作動するアクチュエータ素子として、イオン交換膜とこのイオン交換膜の表面で接合した電極とからなり、イオン交換膜の含水状態においてイオン交換膜に電位差をかけてイオン交換膜に湾曲および変形を生じさせるアクチュエータ素子が提案されている(特開平4−275078号公報参照)。
【0006】
このようなアクチュエータ素子では、イオン交換樹脂成形品表面に化学めっき、電気めっき、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着などの方法によって電極が形成されているが、これらの方法で電極が形成されたアクチュエータ素子は、変位量が充分とはいえなかった。
【0007】
特開平11−206162号公報には、イオン交換膜の表面に電極を有するアクチュエータの製造方法として、イオン交換樹脂成形品に、金属錯体を水溶液中で吸着させた後、吸着した金属錯体を還元剤により還元して、イオン交換樹脂成形品の表面に金属を析出させる方法が記載されている。
【0008】
この方法によれば、得られるアクチェエータ素子の変位量を増加させることが可能であるとされているが、出力圧が小さいという問題があり、ロボットハンドや人工筋肉などの負荷をかける用途に用いる場合には、十分な性能を発揮することができず、大型化や集積化が必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決することであり、変位量および変位力が大きく、構造が簡単で、小型化が容易であり、かつ応答が速く、柔軟なアクチュエータ素子の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、イオン交換樹脂として、アニオン交換樹脂を選択し、この樹脂成形品の表面に金属電極を形成した後、該金属電極上に、電解重合法によって、電子導電性高分子膜を形成する方法によれば、イオン導電性高分子と電子導電性高分子の複合体を得ることができ、得られる複合体は構造が簡単で、小型化が容易であり、しかもイオン導電性高分子の働きと電子導電性高分子の働きの相乗効果によって、応答が速く、十分な変位力及び変位量を有するアクチュエータ素子となることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記のアクチュエータ素子の製造方法及びアクチュエータ素子を提供するものである。
1. アニオン交換樹脂成形品の表面に、相互に絶縁状態で金属電極を形成し、次いで、該金属電極上に、電解重合法によって電子導電性高分子膜を形成することを特徴とするアクチュエータ素子の製造方法。
2. 金属電極を形成する方法が、金属錯体を含有する水溶液にアニオン交換樹脂成形品を接触させた後、該アニオン交換樹脂成形品を還元剤を含有する水溶液に接触させる方法である上記項1に記載の方法。
3. 金属錯体が、水溶液中でアニオン性金属錯イオンを形成する化合物である上記項2に記載の方法。
4. 金属錯体が金錯体又は白金錯体である上記項3に記載の方法。
5. 還元剤を含有する水溶液が、更に、チオ硫酸塩を含有するものである上記項2に記載の方法。
6. 電子導電性高分子膜が、ポリピロール膜、ポリアニリン膜又はポリチオフェン膜である上記項1〜5のいずれかに記載の方法。
7. 電子導電性高分子膜が、ピロール及び支持電解質を含む水溶液中で電解して得られるポリピロール膜である上記項6に記載の方法。
8. アニオン交換樹脂成形品、該アニオン交換樹脂成形品の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極、及び該金属電極上に形成された電子導電性高分子膜からなるアクチュエータ素子。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0013】
図1および図2は、本発明の製造方法で得られるアクチュエータ素子の一例の概略の構造を示す断面図である。
【0014】
図1及び図2において、アクチュエータ素子1は、細長い矩形平板状のアニオン交換樹脂成形品2、該アニオン交換樹脂成形品2の表面に相互に絶縁状態で形成された電極3a,3b、及び該電極3a,3bの表面に形成された電解重合法によって形成された電子導電性高分子膜4a,4bからなるものである。この様なアクチュエータ素子1では、電極3a,3bには、一対のリード線5a,5bの一端がそれぞれ電気的に接続されているとともに、この各リード線5a,5bは、電源6に接続されており、アニオン交換樹脂成形品2の含水状態において、前記電極間に電位差をかけてアニオン交換樹脂成形品を湾曲および変形させるようになっている。
【0015】
本発明では、イオン交換樹脂としては、アニオン交換樹脂成形品2を用いることが必要である。アニオン交換樹脂を用いる場合には、図2に示すように、該アニオン交換膜が含水状態で該アニオン交換樹脂成形品2の表面の電極3a及び3bに電位差が加わると、該アニオン交換樹脂成形品中の−イオンが陽極側に移動し、このイオンに伴われて水分子が膜内で移動するため、陽極側の水分量が陰極側の水分量より高くなり、その結果、アニオン交換樹脂製品2の陽極3a側で膨潤し、陰極3b側で収縮することによって湾曲するものと考えられる。
【0016】
また、該電極3a,3bの表面に形成された電子導電性高分子膜4a,4bについては、イオン導電体の中で電位を変化させると酸化還元状態が変化し、還元状態ではポリマーが無荷電となり、酸化状態ではプラス荷電を持ち、イオン導電体からマイナスイオンがドーピングされる。従って、還元状態では収縮し、酸化状態では膨潤する。この様な性質を有する電子導電性高分子膜を電極表面に形成する場合には、陽極3a側に形成された電子導電性高分子膜4aは、酸化状態となって膨潤し、陰極3b側に形成された電子導電性高分子膜4bは、還元状態となって収縮する。このため、アニオン交換樹脂と電子導電性高分子膜は、いずれも陽極側では膨潤し、陰極側では収縮するために両者の働きが相乗的に作用して大きな変位量及び変位力を得ることができる。
【0017】
これに対して、イオン交換樹脂形成品として、カチオン交換樹脂を用いる場合には、前記したアニオン交換樹脂とは反対にプラスイオンが陰極側に移動し、このイオンに伴われて水分子が膜内で移動するため、陰極側の水分量が陽極側の水分量より高くなり、陰極側で膨潤し、陽極側で収縮することになる。このため、電子導電性高分子膜と複合化して用いる場合には、両者の動きが相殺されて十分な変位量及び変位力を得ることができない。
【0018】
以上の様な理由により、本発明では、アニオン交換樹脂成形品を用いることが必要である。
【0019】
本発明では、アニオン交換樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂などに、4級アミン基などの官能基が導入されたものを用いることができる。これらの内で、ポリスチレン、フッ素樹脂等に4級アミン基の導入されたものが好ましく、フッ素樹脂等に4級アミン基の導入されたものが特に好ましい。このようなアニオン交換樹脂は、イオン交換容量が0.8〜2.2meq/g程度のものがアクチュエータ素子として適している。
【0020】
アニオン交換樹脂成形品2の形状については、図1に示された矩形平板状に限定されるものでではなく、膜状、円柱状、円筒状等、アクチュエータとしての具体的な用途に適した形状とすることができる。
【0021】
アニオン交換樹脂成形品の厚さについては、使用目的に応じて適宜決めればよく、大きな変位や高強度が要求される用途に関しては膜厚を厚くすればよく、高強度や大きな変位が要求されない用途に関しては膜厚を薄くすることができ、通常、50〜500μm程度の範囲から適宜決めればよい。
【0022】
本発明では、アニオン交換樹脂成形品の表面に形成する電極としては、金、白金、ロジウム、イリジウム、パラジウム、ルテニウム等の貴金属が好ましい。金属電極を形成する方法としては、特に限定はなく、例えば、化学メッキ、電気メッキ、真空蒸着、スパッタリング、塗布、圧着、溶着等の電極材料を高分子膜に付着させることが可能な公知の方法を適宜適用できる。
【0023】
特に、金属電極を形成する方法として、金属錯体を含有する水溶液にアニオン交換樹脂成形品を接触させた後、還元剤を含有する水溶液に該アニオン交換樹脂成形品を接触させる方法を採用する場合には、接合抵抗が小さく、接合強度に優れた金属電極を形成できる。
【0024】
金属錯体を含有する水溶液において使用できる金属錯体は、水溶液中でアニオン性金属錯イオンを形成できる化合物であればよい。例えば、金、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム等を含むアニオン性錯イオンを形成できる金属錯体を用いることができる。これらの内で、特に、金錯体および白金錯体がアクチュエータ素子の変位量を大きくすることできるので好ましい。金錯体の具体例としては、KAu(CN)2、NaAuCl4、HAuCl4等を挙げることができ、白金錯体の具体例としては、HPtCl4等を挙げることができる。特に、金錯体を用いる場合は、形成される金電極は、水素過電圧が大きく、導電性が良好で、柔軟である点で好ましい。
【0025】
金属錯体の濃度については、特に限定的ではないが、例えば、1mg/ml〜2mg/ml程度とすることが好ましく、1.3〜1.7mg/ml程度とすることがより好ましい。金属錯体の総量は、形成すべき金属電極における金属量より多少多くすることが好ましい。
【0026】
金属錯体を含有する水溶液をアニオン交換樹脂成形品に接触させる方法については、特に限定的ではなく、通常、該水溶液中にアニオン交換樹脂成形品を浸漬すればよいが、この方法に限定されるものではない。
【0027】
該水溶液をアニオン交換樹脂成形品に接触させる際の該水溶液の液温は、特に限定的ではないが、10〜40℃程度とすればよく、通常、室温で実施できる。処理時間は、アニオン性金属錯イオンを充分に吸着できる時間とすれば良く、通常、1〜3日程度とすればよい。
【0028】
次いで、還元剤を含有する水溶液にアニオン交換樹脂成形品を接触させることによって、アニオン樹脂成形品に吸着されている金属錯イオンを還元して、アニオン樹脂成形品の表面に金属電極を形成することができる。
【0029】
還元剤としては、吸着した金属錯イオンを還元して金属化できる化合物であればよく、使用する金属錯体の種類によって適宜選択することができる。好ましい還元剤として、NaBH4、ジメチルアミンボラン(DMAB)、Na2SO3、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩等を例示できる。また、金属錯体を還元する際に、必要に応じて、酸またはアルカリを添加してもよい。
【0030】
更に、還元剤を含有する水溶液には、チオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸塩を添加することが好ましい。チオ硫酸塩を添加することによって、析出する金属電極の電導性、密着性等がより向上する。チオ硫酸塩の添加量は、還元剤の使用量に対して、モル比として1/5〜1/25程度とすればよい。
【0031】
還元剤を含有する水溶液をアニオン交換樹脂成形品に接触させる方法については、特に限定的ではなく、通常、該水溶液中にアニオン交換樹脂成形品を浸漬すればよいが、この方法に限定されるものではない。
【0032】
該水溶液中の還元剤の濃度については、特に限定的ではないが、通常、0.2〜5mmol/l程度とすればよく、好ましくは0.5〜2mmol/l程度とすればよい。液温は40℃〜70℃程度とすれば良く、処理時間は5〜7時間程度とすればよい。還元剤を含有する水溶液を用いて処理を行う際には、上記した範囲内に還元剤の濃度が維持される様に、必要に応じて、還元剤、チオ硫酸塩等を添加しつつ処理を行えばよい。
【0033】
形成される金属電極は、十分に表面抵抗が小さいことが必要であり、例えば、面積2cm2の試料について、1cmの間隔で測定した場合の表面抵抗が3Ω程度以下であることが好ましく、1Ω程度以下であることがより好ましい。
【0034】
このためには、金属析出量は、通常、4mg/cm2〜10mg/cm2程度とすればよい。また、この場合、メッキ膜厚としては、通常、4〜10μm程度となる。
【0035】
金属錯体を含有する水溶液及び還元剤を含有する水溶液による処理を一回行っただけでは金属析出量が不足する場合には、必要に応じて、これらの処理を繰り返せばよい。
【0036】
上記した方法によれば、アニオン交換樹脂成形品に吸着した金属錯体と還元剤とが接触するアニオン交換樹脂成形品の表面から金属の析出が生じ、続いて膜内部の金属錯体が膜表面近傍(析出した金属の方に)に移動して還元されて金属が析出するものと考えられる。また、金属は、アニオン交換樹脂成形品表面だけではなく、表面近くの内部にも析出しているため、アニオン交換樹脂成形品と金属電極との接触面積は、従来の化学めっき法に比べて大きくなっていると考えられる。このため、金属錯体を含有する水溶液に接触させた後、還元剤を含有する水溶液に接触させる方法で金属電極を形成することによって、従来のアクチュエータ素子に比べて、素子の変位量を大きくすることができる。
【0037】
尚、電極間の絶縁は、金属電極が形成されたアニオン交換樹脂成形品の端部を切断することによって行うことができる。また、レーザー光または電子線を金属電極が形成されたイオン交換樹脂成形品に照射して金属電極の一部を削って、電極間に絶縁帯を設けることによって、電極間の絶縁を行うことできる。これらの操作は、後述する電子導電性高分子膜を形成した後、行なってもよい。
【0038】
次いで、金属電極上に、電解重合法によって電子導電性高分子膜を形成する。通常、電解重合を行う前に、アニオン交換樹脂成形品に付着した析出していない金属錯体および還元剤を水洗によって除去する。
【0039】
電子導電性高分子膜としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポロチオフェン等を用いることができる。これらの内で、特に、ポリピロールが水溶液中での使用に適したものであり、ポリチオフェンは有機溶媒中での使用に適したものであり、ポリアニリンは、特に酸性域で有効に利用することができる。
【0040】
電子導電性高分子膜を形成する方法については、特に限定はなく、公知の電解重合法を採用すればよい。
【0041】
電解重合法によって電子導電性高分子膜を形成する方法の例として、ポリピロール膜を形成する場合について説明すると、重合性モノマーであるピロールと支持電解質を含有する水溶液中に、陰極及び陽極を浸漬し、両極間に直流電圧を印加することによって、電解重合により陽極上にポリピロール膜が形成される。
【0042】
この場合、重合性モノマーであるピロールの濃度は、0.1mol/l〜0.3mol/l程度であることが好ましく、0.1mol/l〜0.2mol/l程度であることがより好ましい。
【0043】
支持電解質としては、HCl、HClO4、LiClO4等を用いることができる。これらの支持電解質のアニオン成分は、電解重合中に電子導電性高分子膜にドーピングされ、導電性高分子膜の特性に影響を与える場合があるので、要求される特性に応じて支持電解質の種類を適宜選択すればよい。支持電解質の濃度は、通常0.1mol/l〜0.5mol/l程度とすることが好ましく、0.2mol/l〜0.3mol/l程度とすることがより好ましい。
【0044】
電解条件については、例えば、Ag/AgCl電極を基準電極として、0.65〜0.7V程度の電位で電解を行えばよい。この場合、通常、電流は、1〜10mA/cm2程度となる。電解を行う際には、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガスのバブリングによって溶存酸素を除くことが好ましい。電解液の液温は、室温で良い。電解時間については、要求される膜厚に応じて適宜決めればよい。
【0045】
電子導電性高分子膜の膜厚については、アクチュエータ素子の用途やアニオン交換膜成形品の厚さ等に応じて、適宜決めれば良い。通常は、20μm程度以上であることが好ましく、30μm〜60μm程度であることがより好ましい。
【0046】
尚、本発明では、金属電極を形成する際に、使用するアニオン交換樹脂成形品の表面を粗化してもよい。膜表面の粗化処理としては、たとえば、サンドブラスト処理、サンドペーパー処理などが挙げれる。表面の粗化の程度は、表面層が削られている程度であればよい。
【0047】
このような粗化処理を行うことによって、アニオン交換樹脂成形品の表面と、後に形成される電極との接触面積が増大し、アクチュエータ素子の変位量を大きくすることができる。
【0048】
本発明方法で得られたアクチュエータ素子は、その作動時には、アニオン交換樹脂が含水状態である必要がある。ここで含水状態とは、十分な電導性を示す程度にアニオン交換樹脂中に水分が含まれている状態であり、通常、アニオン交換樹脂の導電率が10-4Scm-1程度以上となる量の水分が含まれていればよい。具体的な使用方法としては、アクチュエータを水中で使用する他、高湿度の大気中で使用することなどが可能である。
【0049】
このようにして得られたアクチュエータ素子は、電極間に0.1〜3Vの直流電圧をかけると、数秒以内に素子長の0.5〜1倍程度の変位を得ることができる。またこのようなアクチュエータ素子は、水中で柔軟に作用することができる。
【0050】
電極及び電子導電性高分子膜が形成されたアニオン交換樹脂成形品は、対イオンが、Cl-、ClO4 -、F-、I-などに交換されていてもよい。これらのイオンのうち、特にCl-、ClO4 -等に交換されていることが好ましい。このような対イオンの交換は、電極及び電子導電性高分子膜が形成されたアニオン交換樹脂成形品をNaCl、LiClO4等の水溶液に浸漬することによって行うことができる。
【0051】
上記した方法で得ることのできるアクチュエータ素子によれば、アニオン交換樹脂と電子導電性高分子膜が、いずれも陽極側では膨潤し、陰極側では収縮するために両者の働きが相乗的に作用して大きな変位量と変位力を得ることができる。しかも構造が簡単で、小型化が容易であり、応答が速く、小電力で作動することができる。
【0052】
本発明方法で得られるアクチュエータ素子は、例えば、各種カテーテルの用途に有用であり、また、該カテーテルをマイクロデバイスの案内部材本体の先端部に接合すると、操作制御部による操作によって、任意かつ積極的に湾曲(変形)させることができるので、案内部材本体の先端部に接続した、ハサミ、鉗子、スネア、レーザメス、スパチュラなどのマイクロサージェリーの医療器具、各種センサー、工具などのマイクロデバイスの誘導性能を向上することができ、これによって、目的部位へ任意の方向に向けることができ、その操作が熟練を要することなく、迅速かつ容易に行うことができる。
【0053】
このようなマイクロデバイスおよびそれを備えたマイクロマシンを、例えば、眼球手術、腹腔鏡下手術、微少血管縫合手術などのマイクロサージェリー技術においてピンセット、ハサミ、鉗子、スネア、レーザメス、スパチュラ、クリップなどの医療器具に適用すれば、検査や治療時における患者に与える苦痛を極力和らげ、患者に対する肉体的、精神的負担を低減することができる。
【0054】
また、このようなマイクロデバイスおよびそれを備えたマイクロマシンを、発電設備等のプラント、航空機エンジン等の機械システムの配管系統やエンジン内部等の検査、補修等を行う各種センサーや、補修用工具などに適用すれば、補修作業に手間や時間を要せず、確実に行うことが可能となる。
【0055】
また、本発明のアクチュエータ素子は、上記以外に、高周波振動によるマイクロポンプ、リハビリ用補助動力マッサージ器などの健康器具、湿度計、湿度計コントロール装置、ソフトマニュピュレーター、水中バルブ、ソフト運搬装置などの工業用機器、金魚および海草などの水中モービル、動く釣り餌および推進ヒレなどのホビー用品などにも好適に使用することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、変位量および変位力が大きく、構造が簡単で、小型化が容易であり、かつ応答が早く、柔軟なアクチュエータ素子を得ることができる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0058】
実施例1
大きさ3cm×2cm×143μm(膨潤状態)の炭素樹脂系アニオン交換膜(旭化成製、A-172)を、HAuCl4の1.5mg/ml水溶液に25℃で24時間浸漬して、該アニオン交換膜に金錯体を吸着させた。この際、液量は、該アニオン交換膜1cm2に対して、15.7mlとした。
【0059】
ついで、該アニオン交換膜を水洗した後、5wt%アスコルビン酸ナトリウム100μl、5wt%亜硫酸ナトリウム3μl、チオ硫酸ナトリウム10μl及び蒸留水50mlからなる還元剤水溶液中に浸漬して、該アニオン交換膜に吸着している金錯体を還元して金属化した。該還元剤水溶液の液温は60℃、還元剤水溶液中への浸漬時間は5時間とし、1時間毎に、5wt%アスコルビン酸ナトリウム100μl、5wt%亜硫酸ナトリウム3μl及びチオ硫酸ナトリウム10μlを添加した。
【0060】
上記した金錯体水溶液への浸漬処理と還元剤水溶液への浸漬処理を3回繰り返すことによって、アニオン交換膜表面に金電極を形成した。
【0061】
この様にして金電極を形成したアニオン交換膜の表面抵抗は、面積2cm2のアニオン交換膜について1cmの間隔で1Ω以下であった。
【0062】
また、該アニオン交換膜について、1MのNaCl水溶液中に24時間浸漬することにより対イオンをCl-に交換した後、大きさ1mm×15mmに切り出し、図3に模式的に示す装置を用いて、電場屈曲応答を測定した。結果を図4に示す。
【0063】
図4から明らかな様に、金電極を形成したアニオン交換膜は、カソード側に屈曲するものであった。これは、アニオン交換膜では、アニオンがアノード側に引き寄せられ、それと共に水もアノード側に移動するために、バイモルフの原理でカソード側に屈曲することにるものと判断できた。その際の変位量を表1に示す。
【0064】
【表1】
Figure 0003646166
【0065】
次いで、上記した方法で金電極を形成したアニオン交換膜を23mm×3mmの短冊状に切り出し、3mmの部分を金板で挟んで0.25mol/lのピロールと0.15mol/lのHClを含む水溶液中に浸漬し、両側の金電極を作用電極とし、白金線を対電極として、参照電極に対して、0.7Vの電位でポテンシオスタットを用いて定電位電解を行った。電解を始めると直ちに電解重合が開始され、金電極上に黒色のポリピロールが析出した。
【0066】
これを取り出し、蒸留水中で0.1Hz、2Vの方形波電圧を加えた時の最大変位を表2に示す。
【0067】
【表2】
Figure 0003646166
【0068】
実施例2
実施例1において金電極を形成したアニオン交換膜を、25mm×5mmの短冊状に切り出し、5mmの部分を金板で挟んで0.25mol/lのピロールと0.15mol/lのHClO4を含む水溶液中に浸漬し、両側の金電極を作用電極とし、白金線を対極として、ガルバノスタットを用いて定電流下で電解を行った。電解を始めると直ちに電解重合が開始され、金電極上に黒色のポリピロールが析出した。
【0069】
これを取り出し、蒸留水又は0.5mol/lのLiClO4水溶液中において、0.01Hz又は0.1Hzで、3Vp−pの三角波電圧を加えた時の最大変位を表3に示す。
【0070】
【表3】
Figure 0003646166
【0071】
実施例3
大きさ3cm×2cm×233μm(膨潤状態)のフッ素樹脂系アニオン交換膜(東ソー製、SF−17)を、HAuCl4の1.5mg/ml水溶液に25℃で24時間浸漬して、該アニオン交換膜に金錯体を吸着させた。この際、液量は、該アニオン交換膜1cm2に対して、15.7mlとした。
【0072】
ついで、該アニオン交換膜を水洗した後、5wt%亜硫酸ナトリウム100μl、チオ硫酸ナトリウム10μl及び蒸留水50mlからなる還元剤水溶液中に浸漬して、該アニオン交換膜に吸着している金錯体を還元して金属化した。該還元剤水溶液の液温は60℃、還元剤水溶液中への浸漬時間は5時間とし、1時間毎に、5wt%亜硫酸ナトリウム100μl及びチオ硫酸ナトリウム10μlを添加した。
【0073】
上記した金錯体水溶液への浸漬処理と還元剤水溶液への浸漬処理を3回繰り返すことによって、アニオン交換膜表面に金電極を形成した。
【0074】
この様にして金電極を形成したアニオン交換膜の表面抵抗は、1.2〜2.5Ωであり、金電極の接着性も良好であった。
【0075】
また、該アニオン交換膜について、1MのNaCl水溶液中に24時間浸漬することにより対イオンをCl-に交換した後、大きさ1mm×15mmに切り出し、図3に模式的に示す装置を用いて、蒸留水中で電場屈曲応答を測定した。変位測定結果を下記表4に示す。
【0076】
【表4】
Figure 0003646166

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で得られるアクチュエータ素子の電圧無印加状態の概略断面図。
【図2】本発明方法で得られるアクチュエータ素子の電圧印加状態の概略断面図。
【図3】実施例において電場屈曲応答試験に用いた装置を模式的に示す図面。
【図4】実施例1における電場屈曲応答試験の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
1 アクチュエータ素子
2 アニオン交換樹脂成形品
3a,3b 電極
4a,4b 電子導電性高分子膜
5a,5b リード線
6 電源

Claims (8)

  1. アニオン交換樹脂成形品の表面に、相互に絶縁状態で金属電極を形成し、次いで、該金属電極上に、電解重合法によって電子導電性高分子膜を形成することを特徴とするアクチュエータ素子の製造方法。
  2. 金属電極を形成する方法が、金属錯体を含有する水溶液にアニオン交換樹脂成形品を接触させた後、該アニオン交換樹脂成形品を還元剤を含有する水溶液に接触させる方法である請求項1に記載の方法。
  3. 金属錯体が、水溶液中でアニオン性金属錯イオンを形成する化合物である請求項2に記載の方法。
  4. 金属錯体が金錯体又は白金錯体である請求項3に記載の方法。
  5. 還元剤を含有する水溶液が、更に、チオ硫酸塩を含有するものである請求項2に記載の方法。
  6. 電子導電性高分子膜が、ポリピロール膜、ポリアニリン膜又はポリチオフェン膜である請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 電子導電性高分子膜が、ピロール及び支持電解質を含む水溶液中で電解して得られるポリピロール膜である請求項6に記載の方法。
  8. アニオン交換樹脂成形品、該アニオン交換樹脂成形品の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極、及び該金属電極上に形成された電子導電性高分子膜からなるアクチュエータ素子。
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