JP4717400B2 - 空中駆動高分子アクチュエータ素子 - Google Patents

空中駆動高分子アクチュエータ素子 Download PDF

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Description

本発明は、イオン交換樹脂を含む電解質と接するように形成された対の金属電極に電圧を印加することにより変位乃至変形させることによりアクチュエータ素子として機能する高分子アクチュエータ素子に関する。
従来、高分子アクチュエータ素子として、イオン交換樹脂成形品と、該イオン交換樹脂成形品の表面に相互に絶縁状態で形成された金属電極とを備え、前記イオン交換樹脂成形品の含水状態において、前記金属電極間に電位差をかけて、イオン交換樹脂成形品に変位および変形を生じさせることによりアクチュエータ素子として機能する高分子アクチュエータ素子が提供されている(例えば、特許文献1)。
この高分子アクチュエータ素子は、軽量であって、柔軟であることから、カテーテル等の医療用デバイスの導入部等として、好適に用いることがでる。さらには、前記高分子アクチュエータ素子は、軽量で構成が簡単であることから、種々の駆動装置または押圧装置としての応用が期待される。
特許第2961125号公報
前記高分子アクチュエータ素子は、ナトリウムイオンや4級アンモニウムイオンなどのイオンを含む水溶液中では、一対の金属電極に電圧を印加して、大きな変位乃至変位を長時間駆動することが可能である。しかし、水溶液中から前記高分子アクチュエータ素子を取り出して、空気中に前記高分子アクチュエータ素子を設置した状態では、水が蒸発してしまって、電荷のキャリアであるイオンの移動を生じなくなる。そのため、前記高分子アクチュエータ素子は、被覆無しに空気に曝した状態では水が蒸発するために、初期の駆動(変位量)を1時間も維持することができない。
前記高分子アクチュエータ素子は、屈曲乃至変位をするために、各種機器における駆動装置に用いることが可能である。しかし、前記高分子アクチュエータ素子は、初期の駆動を1時間も維持することができないために、実質的には、水の蒸発による水溶液中以外での環境下での駆動は、実質的に困難である。したがって、前記高分子アクチュエータ素子を各種機器の駆動装置に用いる場合においては、用途に制限がある。
また、前記高分子アクチュエータ素子を、可撓性を有する高分子で被覆して、素子からの水の蒸発を防止した場合であっても、前記高分子アクチュエータ素子の駆動により被覆層にワレなどが生じると、水が前記高分子アクチュエータ素子から蒸発する。そのため、前記高分子アクチュエータ素子は、被覆層を設けない場合には大気中では20分程度しか初期の変位量を維持することができないので、被覆層を設けた場合であっても被覆層のワレの発生により数時間程度で初期の変位量から大きく低下をする。つまり、前記高分子アクチュエータ素子を被覆した場合であっても、駆動に際しては、被覆樹脂のワレが無いことを確認しながら駆動させなければならない。そのために、前記高分子アクチュエータ素子を用いた駆動装置は、可撓性を有する樹脂で被覆された場合であっても、監視負担のために、長期間用いる用途には不向きであり、用途が制限される。
本発明の目的は、大気圧下の空気中での環境下において、覆い無しであっても、1日以上駆動することができる高分子アクチュエータ素子を提供することである。さらに、本発明の目的は、大気中に1時間放置しても初期の屈曲量または変位量とほぼ同等を示すことができる高分子アクチュエータ素子を提供することでもある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明の高分子アクチュエータ素子を用いることにより、上記課題を解決することを見出した。本発明は、金属電極と高分子電解質を含む電解質とを含む高分子アクチュエータ素子であって、前記金属電極が対を形成することができるように形成され、前記金属電極が前記電解質と接し、前記電解質中に沸点または分解温度が180℃以上であり、常温常圧で液状の有機化合物を含み、前記電解質が前記有機化合物で膨潤した状態である高分子アクチュエータ素子である。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、特定の極性溶媒を用いているので、高沸点であるために、屈曲若しくは変位の変形をする駆動を、空気中など水溶液中以外の環境で用いることができるので、多種多様の実用的用途に容易に用いることができる。特に、前記高分子アクチュエータ素子は長期間の駆動を必要とする用途に好適である。前記高分子アクチュエータ素子は、駆動させるために電圧を3.0Vより高い特定の電圧を金属電極に印加しても、溶媒の電気分解が生じることがないために気泡も発生しない。
本発明は、金属電極と高分子電解質を含む電解質とを含む高分子アクチュエータ素子であって、前記金属電極が対を形成することができるように形成され、前記金属電極が前記電解質と接し、前記電解質中に沸点または分解温度が180℃以上であり、常温常圧で液状の有機化合物を含み、前記電解質が前記有機化合物で膨潤した状態である高分子アクチュエータ素子である。前記高分子アクチュエータ素子は、特定の液状有機化合物を含むことによって、アクチュエータ素子の屈曲量または変位量の変化が生じにくい。そのため、前記高分子アクチュエータ素子は、溶液中の外、即ち空気中での駆動も可能であり、しかも溶液の蒸発がほとんど無いので長期間の駆動に好適である。
本発明の高分子アクチュエータ素子に含まれる沸点または分解温度が180℃以上であって常温常圧で液状の有機化合物は、電解質中に含まれる。電解質中に前記有機化合物が含まれることにより、前記アクチュエータ素子は、常温常圧下で被覆無しでの1時間後においても、膨潤状態の変化を少なく保つことができ、屈曲量または変位量が少ない。前記有機溶媒を含む事により電解質が膨潤した状態となり、前記高分子アクチュエータ素子の屈曲若しくは変位を容易に行うことができる。また、なお、本願の沸点とは、当然の事ながら、常圧下での測定される沸点である。
前記有機化合物は、180℃以上の沸点または分解温度を有し、常温常圧下で液状であれば、特に限定されるものでない。前記有機化合物は、溶媒としての機能も有することが好ましい。前記有機化合物としては、電荷のキャリアとなるイオンを含む塩の溶媒となることができる有機化合物、または電荷のキャリアとなることができる有機化合物であればよい。前記有機化合物は、極性有機溶媒及び/またはイオン性液体が好ましい。
前記極性有機溶媒は、180℃以上の沸点または分解温度を有する極性有機溶媒であれば、特に限定されるものではないが、245℃以上の沸点を有する極性有機溶媒であることがより好ましい。前記極性溶媒としては、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン又はこれらの混合物であることが更に好ましく、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン又はこれらの混合物であることが特に好ましい。前記高分子アクチュエータ素子に含まれる溶液の溶媒成分が前記極性溶媒であることにより、前記高分子アクチュエータ素子を密閉しない状態でも1日後に50°以上の屈曲を行うことができる。
また、従来の高分子アクチュエータ素子は、比較的低い電圧である1.2Vの印加電圧では、例えば角度が270°以上の屈曲を生じさせるためには、イオン交換樹脂との界面における金属電極の表面積を大きくするため、製造時に複雑な前処理を施す必要がある。しかし、本発明の高分子アクチュエータ素子は、3.0Vより大きい特定の電圧を印加しても水の電気分解による気体の発生が一定時間ほとんど無い場合がある。このような条件において用いる場合には、本発明の高分子アクチュエータ素子は、より簡単に電極を形成することができるので、製造が容易である。なお、本願において、屈曲乃至変位の程度を表す角度(°)は、高分子アクチュエータ素子の先端における屈曲乃至変位凸面の接線方向と重力方向とのなす角(変位角)を測定することにより求められるものである。
本発明で用いられる沸点または分解温度が180℃以上である常温常圧で液状の有機化合物は、イオン性液体を用いることができる。前記イオン性液体は、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、室温での蒸気圧がほとんどない。そのため、前記電解質がイオン交換樹脂を含み、該イオン交換樹脂がイオン性液体で膨潤した状態である本発明の高分子アクチュエータ素子は、1ヶ月の長期間でも、初期とほぼ同等の屈曲または変位をすることができる。
前記イオン性液体は、テトラアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、及びピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、
PF 、BF 、AlCl 、ClO 、及び下式(1)で表されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオン
との組み合わせからなる塩である請求項2に記載の高分子アクチュエータ素子。
(C(2n+1)SO)(C(2m+1)SO)N (1)
(ここで、n及びmは任意の整数。)
前記テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、特に限定されるものではないが、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウムを用いることができる。
前記イミダゾリウムカチオンは、ジアルキルイミダゾリウムイオン及び/またはトリアルキルイミダゾリウムイオンを用いることができる。例えば、前記イミダゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−ヘキシル−3メチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンを例示することができる。
前記アルキルピリジニウムイオンは、特に限定されるものではないが、N−ブチルピリジニウムイオン、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウム、を用いることができる。
前記ピロリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオンを用いることができる。
前記ピラゾリウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオンを用いることができる。
前記ピロリニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオンを用いることができる。
前記ピロリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオンを用いることができる。
前記ピペリジニウムカチオンは、特に限定されるものではないが、1,1−ジメチルピぺリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピぺリジニウムイオンを用いることができる。
前記イオン性液体は、上記アニオンと上記カチオンとの組み合わせが特に限定されるものではないが、例えば、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミド(EMITFSI)、1−メチル−3−イミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIBF)、1−メチル−3−イミダゾリウムヘキサフルオロリン酸(EMIPF)、トリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホイミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホイミドを用いることができる。
本発明の高分子アクチュエータ素子において、前記電解質が前記イオン交換樹脂と前記イオン性液体を含むことにより、前記イオン交換樹脂が前記イオン性液体で膨潤した状態となったゲル電解質となることができる。前記電解質がイオン交換樹脂とイオン性液体とを含むことにより、大気圧下で1ヶ月放置しても、前記高分子アクチュエータ素子は駆動することができる。更に、イオン交換樹脂とイオン性液体とを含んだゲル電解質は、可撓性があり、高濃度の電解質を保持することが可能であるために、アクチュエータ素子及びキャパシタの電解質として好適である。
前記イオン交換樹脂と前記イオン性液体とを含む電解質は、その製造方法は特に限定されるものではないが、沸点が100℃以下の公知の極性溶媒中にイオン性液体を1〜90重量%の割合含む混合溶液にイオン交換樹脂を浸漬し、室温にて、寸法若しくは重量の変化がなくなるまで放置、または時間以上放置することにより、容易に得ることができる。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、金属電極とイオン交換樹脂を電解質とを含み、前記金属電極が対を形成することができるように形成され、前記金属電極が電解質と接し高分子アクチュエータ素子であって、前記金属電極を複数備えた構造を有している。また、前記アクチュエータ素子は、イオン交換樹脂層を挟んで両側に電極層を1つずつ備えても良く、両側若しくは片側に電極層を複数備えていても良い。前記アクチュエータ素子の具体的な構造としては、例えば、一対の電極層がイオン交換樹脂層を挟んで電極対を形成したアクチュエータ素子を用いることもできるし、管状のイオン交換樹脂の外側面及び/又は内側面の表面上に複数の金属電極を備えていても良い。
前記の電極層がイオン交換樹脂を挟んで電極対を形成した高分子アクチュエータ素子としては、公知の方法により得ることができる。例えば、膜状、板状、若しくは管状の形状を有するイオン交換樹脂有体物に無電解メッキをすることにより、イオン交換樹脂有体物表面又はイオン交換樹脂有体物表面から内側の範囲に金属層を形成させて、該金属層金属を電極層として用いることにより、前記高分子アクチュエータ素子である金属−イオン交換樹脂接合体を得ることもできる。
前記無電解メッキとしては、例えば、次の様な無電解メッキ方法を好適に用いることができる。粗面化処理を行った後に、イオン交換樹脂を、水中に浸漬して膨潤させた状態で、イオン交換樹脂に白金錯体や金錯体等の金属錯体を吸着させる吸着工程を行う。次いで吸着された金属錯体を還元剤により還元させて金属を析出させる還元工程を行い、還元工程後に所望により還元剤を洗浄除去する洗浄工程を行う。
この無電解メッキでは、電極である金属層を通電や屈曲乃至変位に充分な厚さとするために、吸着工程、還元工程及び洗浄工程を1サイクルとして繰り返し行うことができる。このようにして得られたアクチュエータ素子は、イオン交換樹脂の内部方向に電極層が成長して電極が形成され、イオン交換樹脂と電極層との界面において、電極層の断面がフラクタル状の構造を形成しているので、前記電極層と前記イオン交換樹脂層との界面で大きな電気二重層を持つことができる。更に、前記電極層がイオン交換樹脂層の内部方向にフラクタル状の構造を形成しているので、アンカー効果が働くために、前記イオン交換樹脂接合体は、繰り返し曲げても耐久性を有する。
本発明の高分子アクチュエータ素子の電解質に含まれるイオン交換樹脂は、特に限定されるものではない。前記イオン交換樹脂としては、特に限定されるものではなく、公知のイオン交換樹脂を用いることができ、陽イオン交換樹脂を用いる場合には、ポリエチレン、ポリスチレン、フッ素樹脂などにスルホン酸基、カルボキシル基などの親水性官能基を導入したものを用いることができる。このような樹脂としては、例えばパーフルオロスルホン酸樹脂(商品名「Nafion」、DuPont社製)、パーフルオロカルボン酸樹脂(商品名「フレミオン」、旭硝子社製)、ACIPLEX(旭化成工業社製)、NEOSEPTA(トクヤマ社製)を用いることができる。
無電解メッキの吸着工程に用いられる金属錯体溶液は、還元されることにより形成される金属層が電極層として機能することができる金属の錯体を含むものであれば、特に限定されるものではない。前記金属錯体は、イオン化傾向の小さい金属が電気化学的に安定であるために金錯体、白金錯体、パラジウム錯体、ロジウム錯体、又はルテニウム錯体等の金属錯体を使用することが好ましく、析出した金属が電極として使用されるため、通電性が良好で電気化学的な安定性に富んだ貴金属からなる金属錯体が好ましく、さらに電気分解が比較的起こり難い金からなる金錯体が好ましい。前記金属塩溶液は、溶媒が特に限定されるものではないが、金属塩の溶解が容易であって取り扱いが容易であることから溶媒が水を主成分とすることが好ましく、前記金属塩溶液が金属塩水溶液であることが好ましい。したがって、前記金属錯体溶液としては、金属錯体水溶液であることが好ましく、特に金錯体水溶液または白金錯体水溶液であることが好ましく、さらに金錯体水溶液が好ましい。
無電解メッキの還元工程に用いられる還元剤としては、イオン交換樹脂に吸着される金属錯体溶液に使用される金属錯体の種類に応じて、種類を適宜選択して使用することができ、例えば亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム、亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等を用いることができる。
前記還元剤は析出させる金属種によって、適宜選択することもできる。還元により析出させる金属がニッケルまたはコバルトの場合には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム、ジメチルアミノボラン、ヒドラジン、テトラヒドロホウ酸カリウムを用いることができる。還元により析出させる金属がパラジウムの場合には、還元剤として、ホスフィン酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウムを用いることができる。還元により析出させる金属が銅の場合には、還元剤として、ホルマリン、ホスホン酸ナトリウム、テトラヒドロホウ酸カリウムを用いることができる。還元により析出させる金属が銀または金の場合には、還元剤として、ジメチルアミノボラン、テトラヒドロホウ酸カリウムを用いることができる。還元により析出させる金属が白金の場合には、還元剤として、ヒドラジン、テトラヒドロホウ酸ナトリウムを用いることができる。還元により析出させる金属が錫の場合には、還元剤として、三塩化チタンを用いることができる。さらに、還元剤は、上記の種類に限られるものではなく、白金黒などの触媒と共に用いられる水素、HgS、HIやIなどの非金属の酸またはイオン、Na(HPO)やNaなどの低級酸素酸塩、COやSO2などの低級酸化物、Li、Na,Cu、Mg、Zn、Fe、Fe(II)、Sn(II)、Ti(III)、Cr(II)などのイオン化傾向の大きい金属またはそれらのアマルガム及び低原子価金属塩、AlH〔(CH3)2CHCH2〕2や水素化リチウムアルミニウムなどの水素化物、ジイミド、ギ酸、アルデヒド、糖類及びL−アスコルビン酸などを、適宜用いることもできる。
前記還元剤は、還元される金属種に応じて、適宜選択することもできるが、メッキの成長速度、析出した金属の粒子サイズ、フラクタル構造の金属電極とイオン交換樹脂の接触面積、電極構造並びにメッキ後の樹脂の可撓性を変えるために、最適な還元剤の種類を選択して用いることができる。また、還元工程における還元浴を所望のpHとするために、前記還元剤の種類を適宜選択することもできる。
なお、金属錯体を還元する際に、必要に応じて、酸またはアルカリを添加してもよい。前記還元剤溶液の濃度は、金属錯体の還元により析出させる金属量を得ることができるのに十分な量の還元剤を含んでいればよく、特に限定されるものではないが、通常の無電解メッキにより電極を形成する場合に用いられる金属塩溶液と同等の濃度を用いることも可能である。また、還元剤溶液中には、イオン交換樹脂の良溶媒を含むことができる。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、対を形成することができるように形成された金属電極と接する電解質の内部に溶媒と塩とを含む。前記高分子アクチュエータ素子が屈曲乃至変位をすることができるように、前記高分子アクチュエータ素子は、柔軟性が有ることが好ましい。当該柔軟性を得るために、前記高分子アクチュエータ素子は、イオン交換樹脂が常温常圧で液状の有機化合物により膨潤している。前記膨潤の度合いは、特に限定されるものではないが、前記高分子アクチュエータ素子の膨潤度、つまり、前記高分子電解質が乾燥した状態での厚さに対して高分子アクチュエータ素子の膨潤した状態での厚さの増加率が、3〜200%であることが好ましく、5〜60%であることがより好ましい。前記膨潤度が3%未満である場合には、変位屈曲性能が劣り、前記膨潤度が200%よりも大きい場合にも、変位屈曲性能が劣り、さらに大きく引張り強度が低下することとなってしまう。なお、前記有機化合物は、電解質中に含まれるが、電極層が多孔性の電極である場合には、前記溶媒の一部が塩とともに、前金属電極層に含まれても良い。
また、本発明の高分子アクチュエータ素子は、前記電解質が前記有機化合物が極性有機溶媒である場合には、イオン性液体を用いた場合に比べて膨潤の度合いを大きくすることから、大きな屈曲または変位が必要な用途に好適に用いることができる。一方、前記有機化合物としてイオン性液体を用いた場合には、極性有機溶媒を用いた場合に比べて膨潤度合いは小さいが、常温常圧で1ヶ月程度の期間で開放系として放置しても膨潤による体積変化が少ないので、前記高分子アクチュエータ素子は、覆いを設ける必要なしに、1ヶ月程度の期間中に屈曲量若しくは変位量の大きな変化をせずに駆動することができる。前記電解質を得るためには、イオン交換樹脂層を前記有機化合物の液中に浸漬することにより得ることができる。例えば、前記高分子アクチュエータ素子がイオン交換樹脂に無電解メッキを施すことにより金属電極が形成された素子である場合には、前記高分子アクチュエータ素子を、前記有機化合物中の液中に一晩程度浸漬することにより、イオン交換樹脂が前記有機化合物により膨潤した状態の素子を得ることができる。
本発明の高分子アクチュエータ素子の電解質は、イオン交換樹脂が上記のイオン性液体により膨潤した状態としてもよい。イオン性液体によりイオン交換樹脂が膨潤状態とする場合において、イオン性液体にイオン交換樹脂を浸漬してもイオン交換樹脂が膨潤しない場合には、膨潤用溶媒とイオン性液体との混合溶液でイオン交換樹脂を膨潤させた後に、膨潤用溶媒を蒸発させることで、イオン交換樹脂がイオン性液体で膨潤した電解質を容易に得ることができる。また、前記膨潤用溶媒として高沸点極性有機溶媒を使用し、素子内に残すこともできる。前記膨潤用溶媒は、イオン交換樹脂を膨潤させることが可能であり、イオン性液体を溶解することができる溶媒である。なお、上述の膨潤は、本願においては、無限膨潤を含まない。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、対を形成することができるように形成された金属電極と接する電解質の内部に含まれる塩は、上記の常温常圧で液状の有機化合物に溶解できるものであれば特に限定されるものではないが、前記高分子電解質がカチオンと対イオンを形成する場合には、1〜3価のカチオンの塩を用いることができ、Na+、K+、Li+等の1価のカチオンを用いることが大きな屈曲若しくは変位をすることができるために好ましく、イオン半径の大きなアルキルアンモニウムイオンを用いることがより大きな屈曲若しくは変位をすることができるために更に好ましい。前記アルキルアンモニウムイオンとしては、CH3+3、C25+3、(CH3)2+2、(C25)2+2、(CH3)3+H、(C25)3+H、(CH3)4+、(C25)4+、(C37)4+、(C49)4+、H3+(CH2)4+3、H2C=CHCH2+HCH3、H3+(CH2)4+2(CH2)4+3、HC≡CCH2+2、CH3CH(OH)CH2+3、H3+(CH2)5OH、H3+CH(CH2OH)2、(HOCH2)2C(CH2+3)2、C25OCH2CH2+3や脂肪族炭化水素を置換基として備えるアンモニウムイオン、または官能基として炭化水素の他に脂環式の環状炭化水素をも有するアンモニウムイオンを用いることができる。このとき、前記の塩の濃度としては、イオン交換樹脂の官能基と等量以上の濃度として含まれていればよく、十分な屈曲乃至変位を得るために0.01〜10mol/lであることが好ましく、0.1〜1.0mol/lであることがより好ましい。なお、常温常圧での液状の有機化合物として、イオン性液体を用いる場合には、上記の塩を用いなくても良い。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、上記の極性溶媒を含むために、樹脂による被覆なしに、1日以上駆動することができるが、更に、可撓性を有する樹脂で被覆されてもよい。前記樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂及び/又はシリコン樹脂を用いることができる。前記ポリウレタン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟な熱可塑性ポリウレタンを用いることが、柔軟度が大きく密着性が良好であるために特に好ましい。柔軟な熱可塑性ポリウレタンとしては、商品名「アサフレックス 825」(柔軟度200%、旭化成社製)、商品名「ペレセン 2363−80A」(柔軟度550%)、「ペレセン 2363−80AE」(柔軟度650%)、「ペレセン 2363−90A」(柔軟度500%)、「ペレセン 2363−90AE」(柔軟度550%)、(以上、ダウ・ケミカル社製)を用いることができる。また、前記シリコン樹脂は、特に限定されるものではないが、柔軟度が50%以上である樹脂が、柔軟度が大きいので密着性が良好であるために、特に好ましい。前記シリコン樹脂としては、例えば、「シラシール3FW」、「シラシールDC738RTV」、「DC3145」、及び「DC3140」(以上、ダウコーニング社製)を用いることができる。なお、本願において、柔軟度とは、ASTM D412に準拠する引張破断伸び(Ultimate Elongation%)をいうものである。
(駆動方法)
また、本発明は、高分子アクチュエータ素子の駆動方法でもある。前記高分子アクチュエータ素子は、イオン交換樹脂を挟んで対向する様に形成された一対の金属電極を備えた高分子アクチュエータ素子であって、一対の金属電極を備えた高分子アクチュエータ素子であって、イオン交換樹脂中に、180℃以上の沸点を有する極性溶媒を含む高分子アクチュエータ素子であるので、160°以上の屈曲乃至変位を生じさせるために、3.0Vより高い電圧を印加した場合であっても、気泡を発生することなく、しかも溶媒の蒸発が生じにくいので、樹脂による被覆なしに1日以上駆動することが可能である。
前記駆動方法は、上述のように、前記高分子アクチュエータ素子に、該素子を膨潤し、電荷のキャリアとしてのイオンを溶解する溶媒として、180℃以上の沸点を有する極性溶媒を用いていれば、特に限定されるものではない。前記極性溶媒は、特に、ジエチレングリコール及び/またはグリセリンである場合には、160°以上の屈曲をすることができるために好ましい。
以下、本発明の実施例及び比較例を記載するが、本願発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
乾燥時の膜厚0.2mmのイオン交換樹脂膜(フッ素樹脂系イオン交換樹脂:パーフルオロカルボン酸樹脂、商品名「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量1.4meq/g)を、下記(1)〜(3)の工程を6サイクル繰り返して実施しイオン交換樹脂を挟んで形成された一対の金属電極を備えたイオン交換樹脂膜を得た。(1)吸着工程:ジクロロフェナントロリン金塩化物水溶液に12時間浸漬し、成形品内にジクロロフェナントロリン金錯体を吸着させた。(2)還元工程:亜硫酸ナトリウムを含む水溶液中で、吸着したジクロロフェナントロリン金錯体を還元して、前記膜状高分子電解質に金電極を形成させた。このとき、水溶液の温度を60〜80℃とし、亜硫酸ナトリウムを徐々に添加しながら、6時間ジクロロフェナントリン金錯体の還元を行った。次いで、(3)洗浄工程:表面に金電極が形成した膜状高分子電解質を取り出し、70℃の水で1時間洗浄した。上記無電解メッキにより一対の金属電極が形成されたイオン交換樹脂膜を長さ22mm、幅1.5mmに切断した。ついで、前記イオン交換樹脂膜を0.5mol/lの塩化テトラエチルアンモニウム塩の水溶液に浸漬し、乾燥させた後に、膨潤度が約15%となるように0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に24時間浸漬して実施例1の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例2)
切断された前記イオン交換樹脂膜を浸漬する溶媒を、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に替えて、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのプロピレンカーボネート溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例3)
切断された前記イオン交換樹脂膜を浸漬する溶媒を、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に替えて、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのグリセリン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例4)
切断された前記イオン交換樹脂膜を浸漬する溶媒を、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に替えて、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのスルホラン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例5)
切断された前記イオン交換樹脂膜を浸漬する溶媒を、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に替えて、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのブチロラクトン溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例6)
乾燥時の膜厚0.2mmのイオン交換樹脂膜(フッ素樹脂系イオン交換樹脂:パーフルオロカルボン酸樹脂、商品名「フレミオン」、旭硝子社製、イオン交換容量1.4meq/g)を、下記(1)〜(3)の工程を6サイクル繰り返して実施しイオン交換樹脂を挟んで形成された一対の金属電極を備えたイオン交換樹脂膜を得た。(1)吸着工程:ジクロロフェナントロリン金塩化物水溶液に12時間浸漬し、成形品内にジクロロフェナントロリン金錯体を吸着させた。(2)還元工程:亜硫酸ナトリウムを含む水溶液中で、吸着したジクロロフェナントロリン金錯体を還元して、前記膜状高分子電解質に金電極を形成させた。このとき、水溶液の温度を60〜80℃とし、亜硫酸ナトリウムを徐々に添加しながら、6時間ジクロロフェナントリン金錯体の還元を行った。次いで、(3)洗浄工程:表面に金電極が形成した膜状高分子電解質を取り出し、70℃の水で1時間洗浄した。上記無電解メッキにより一対の金属電極が形成されたイオン交換樹脂膜を長さ22mm、幅1.5mmに切断した。ついで、前記イオン交換樹脂膜を0.5mol/lの塩化テトラエチルアンモニウム塩の水溶液に浸漬し、乾燥させた後に、0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩(EMITFSI)の水溶液に室温にて一晩浸漬して、2時間以上室温で風乾させて水を蒸発させることにより実施例6の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例7)
0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩の水溶液に替えて、0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムヘキサフルオロリン酸塩(EMIPF)の水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例7の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例8)
0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミドイミド塩水溶液に替えて、0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩(EMIBF)の水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例8の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例9)
0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩水溶液に替えて、0.2mol/lのトリメチルプロピルアンモニウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩(TMPATFSI)の水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例9の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例10)
0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩水溶液に替えて、0.2mol/lの1−ブチル3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩(BMIBF)の水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例10の高分子アクチュエータ素子を得た。
(実施例11)
0.2mol/lのエチルメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホンイミド塩水溶液に替えて、0.2mol/lの1−ヘキシル3−メチルイミダゾリウムヘキサオロリン酸塩(HMIPF)の水溶液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして実施例11の高分子アクチュエータ素子を得た。
(比較例)
切断された前記イオン交換樹脂膜を浸漬する溶媒を、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムのジエチレングリコール溶液に替えて、0.5mol/lの塩化テトラエチレンアンモニウムの水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例の高分子アクチュエータ素子を得た。
〔評価〕
実施例1〜11及び比較例の高分子アクチュエータ素子について、空気中での変位角、及び3.0V電圧印加での素子性状を、下記の方法により評価した。結果を表1に示す。
(空気中での変位角)
実施例1〜11及び比較例の高分子アクチュエータ素子のそれぞれについて、一方の端部から2mm内側の位置において、一対の金属電極のそれぞれに通電できるように、白金端子にて高分子アクチュエータ素子の厚さ方向に挟んで、膜面が重力方向と平行になるように握持した。一対の金属電極の一方が正極となり、他方が負極となるようにポテンショスタッタト(DCモード、商品名「ポテンショ・ガルバノースタット HA−501」、北斗電工(株)社製)を用いて1.5Vの電圧を印加し、0.1Hz周期で各金属電極に反対電圧が印加されるように電圧を印加して、左右に往復する変位運動をさせた。この往復変位運動の3往復目で屈曲乃至変位した状態における、高分子アクチュエータ素子の先端における変位凸面の接線方向と重力方向とのなす角を、右側変位と左側変位とにおいて測定し、平均して変位角を求めた。この測定を各高分子アクチュエータ素子について、白金端子による握持したときから、1分後、1時間後、及び24時間後のそれぞれにおいて測定を実施した。
Figure 0004717400

Figure 0004717400

(結果)
実施例1の高分子アクチュエータ素子は、沸点245℃の極性溶媒であるジエチレングリコールが溶媒として素子に含まれるために、24時間後、つまり1日後であっても、印加電圧1.2Vにおいて100°以上の変位角を示した。これに対して、比較例の高分子アクチュエータ素子は、沸点が100℃である極性溶媒の水を溶媒として含むために、24時間後の変位を生じなかった。
実施例2〜5の高分子アクチュエータ素子は、沸点204〜290℃の極性溶媒をそれぞれ溶媒として素子に含まれるために、24時間後であっても、印加電圧1.2Vにおいて50°以上の変位角を示した。特に、実施例4においては、24時間後の変位角が1分後の変位角の80%であり、変位の減少が少なく、良好であった。
実施例6〜11の高分子アクチュエータ素子は、膨潤度が14.0〜22.1%で、変位角が大きくないが、変位の減少がほとんど無かった。また、実施例6〜11の高分子アクチュエータ素子は、覆いをすること無しに、室温の開放系において1ヶ月間放置しても、変位の減少が少なく、良好であった。イオン性液体を用いた高分子アクチュエータ素子は、大きな変位量が要求される用途にはあまり適していないが、スイッチングデバイスなどの小さな変位量が要求される用途に好適に用いられる。
実施例1〜11の高分子アクチュエータ素子が示すように、室温解放系において1日の駆動が可能であって、1時間後の変位量の低下がほとんど無い経時的性能で十分であり、大きな変位量が要求される用途には、沸点が180℃以上である常圧室温で液状の有機化合物としては、極性有機溶媒を好適に用いることができる。一方、大きな変位量は必要ないが、室温解放系において1日放置しても変位量の変化がほとんどなく、1ヶ月後においても変位をすることができる用途には、沸点が180℃以上である常圧室温で液状の有機化合物としては、イオン性液体を好適に用いることができる。なお、変位量と経時的な変位量の変化を制御するために、任意の割合で前記極性有機溶媒とイオン性液体とを混合しても良い。
実施例1〜11の高分子アクチュエータ素子は、被覆されることにより、傷が付いた場合でも、比較例1のような水溶媒を用いた高分子アクチュエータ素子に比べて、傷により解放系となった状態であっても長時間駆動することができる。また、実施例1〜11の高分子アクチュエータ素子被覆しない場合には、被覆層が屈曲を阻害することがないので、素子本来が有する屈曲をすることもできる。
本発明の高分子アクチュエータ素子は、変位若しくは屈曲の変位を生じるアクチュエータ素子として用いることができる。また、前記積層体を、屈曲運動を直線的な運動に変換する装置と組合わせることにより、直線的が変位を生じるアクチュエータとすることもできる。直線的な変位若しくは屈曲の変位を生じるアクチュエータは、直線的な駆動力を発生する駆動部、または円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部として用いることができる。さらに、前記アクチュエータは、直線的な動作をする押圧部として用いることもできる。
即ち、前記アクチュエータは、OA機器、アンテナ、ベッドや椅子等の人を乗せる装置、医療機器、エンジン、光学機器、固定具、サイドトリマ、車両、昇降器械、食品加工装置、清掃装置、測定機器、検査機器、制御機器、工作機械、加工機械、電子機器、電子顕微鏡、電気かみそり、電動歯ブラシ、マニピュレータ、マスト、遊戯装置、アミューズメント機器、乗車用シミュレーション装置、車両乗員の押さえ装置及び航空機用付属装備展張装置において、直線的な駆動力を発生する駆動部若しくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作若しくは曲線的な動作をする押圧部として好適に用いることができる。前記アクチュエータは、例えば、OA機器や測定機器等の上記機器等を含む機械全般に用いられる弁、ブレーキ及びロック装置において、直線的な駆動力を発生する駆動部もしくは円弧部からなるトラック型の軌道を移動するための駆動力を発生する駆動部、または直線的な動作をする押圧部として用いることができる。また、前記の装置、機器、器械等以外においても、機械機器類全般において、位置決め装置の駆動部、姿勢制御装置の駆動部、昇降装置の駆動部、搬送装置の駆動部、移動装置の駆動部、量や方向等の調節装置の駆動部、軸等の調整装置の駆動部、誘導装置の駆動部、及び押圧装置の押圧部として好適に用いることができる。また、前記アクチュエータは、回転的な運動をすることができるので、切替え装置の駆動部、搬送物等の反転装置の駆動部、ワイヤ−等の巻取り装置の駆動部、牽引装置の駆動部、及び首振り等の左右方向への旋回装置の駆動部としても用いることができる。

Claims (5)

  1. 金属電極と高分子電解質を含む電解質とを含む高分子アクチュエータ素子であって、
    前記金属電極が対を形成することができるように形成され、
    前記金属電極が前記電解質と接し、
    前記電解質中に沸点または分解温度が180℃以上であり、常温常圧で液状の有機化合物を含み
    前記有機化合物が、極性有機溶媒及び/またはイオン性液体であり、
    前記高分子電解質が、イオン交換樹脂であり、
    前記電解質が前記有機化合物により、前記イオン交換樹脂が膨潤した状態であることを特徴とする高分子アクチュエータ素子。
  2. 前記イオン性液体が、テトラアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルイミダゾリウムイオン、トリアルキルイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリウムイオン、ピロリニウムイオン、ピロリジニウムイオン、及びピペリジニウムイオンからなる群より少なくとも一種選ばれたカチオンと、PF 、BF 、AlCl 、ClO 、及び下式(1)で表されるスルホニウムイミドアニオンからなる群より少なくとも一種選ばれたアニオンとの組み合わせからなる塩であることを特徴とする請求項1に記載の高分子アクチュエータ素子。
    (C(2n+1)SO)(C(2m+1)SO)N(1)
    (ここで、n及びmは任意の整数。)
  3. 前記高分子アクチュエータ素子が前記有機化合物により膨潤した状態であり、膨潤度が3〜200%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高分子アクチュエータ素子。
  4. 前記高分子アクチュエータ素子を、可撓性を有する樹脂で被覆されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高分子アクチュエータ素子。
  5. 前記極性有機溶媒が、ジエチレングリコール、グリセリン、スルホラン、プロピレンカーボネート、ブチロラクトン又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高分子アクチュエータ素子。
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