JP3645790B2 - 光ファイバの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカガラスファイバの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリカガラスファイバを使用した光ファイバは、例えばエキシマレーザリソグラフィー用フォトマスク、紫外線硬化樹脂の照射用の紫外光伝送用ライトガイド、微細加工分野や医療分野などにおいて紫外光(特にエキシマレーザ光)の伝送用に使用されている。
【0003】
紫外光の伝送用に使用する場合、例えば紫外線硬化樹脂の照射用に使用した場合、紫外光の短波長化および光パワーの増大により、樹脂の硬化時間短縮につながるなど、短波長高出力の紫外光の特性を最大限に活かすことができるので、より短波長で且つ光パワーの大きな紫外光を伝送させることが要求されている。
【0004】
しかし、シリカガラスに紫外光を伝送させると、シリカガラス中に構造欠陥が生じて透過率が悪化するという問題がある。このシリカガラスの透過率の悪化は、紫外光が短波長であるほど、また、光パワーが大きいほど顕著にあらわれる。そのため、光源としてエキシマレーザを使用する際には、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)→ArFエキシマレーザ(波長:193nm)→F2エキシマレーザ(波長:157nm)の順番で透過率は悪化する。また、光源として光パワーの小さなランプ類(ハロゲンランプ、重水素ランプなど)を使用する場合よりも、光パワーの大きなレーザ(KrF,ArF、F2などの各種エキシマレーザ)を使用する場合の方が透過率は悪化する。
【0005】
そこで、紫外光の照射によるシリカガラスの透過率の悪化を抑制する(すなわち、紫外線耐性を向上させる)ために、シリカガラス中の水酸基濃度を高める技術が提案されたが(特開平4−342427号、特開平4−342436号など)、シリカガラス中の水酸基濃度が高くなると紫外吸収端の波長が長くなるため、短波長(特に真空紫外域)の紫外光を伝送させることができなくなるという問題があった。
【0006】
この問題は、シリカガラスに紫外線を照射してシリカガラス中に多くの構造欠陥を積極的に発生させ、その紫外線照射の後に又は紫外線照射と同時に熱処理を施して構造欠陥を取り除く方法(特開2000−86258号公報)により解決された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開2000−86258号公報に開示される方法をシリカガラスファイバに適用するに当たって、次のような問題が生じた。
まず構造欠陥を発生させるためにファイバの端面からハイパワーの紫外線を繰り返し照射すると、照射された端部側だけに劣化が発生し、紫外線が他の端部まで到達しない。よって、短いファイバならともかく長いファイバの場合にはファイバの全長にわたっての処理ができない。また、ファイバを短く(例えば1m程度に)切断して処理することも考えられるが、1本ずつ処理するのでコストアップになり、長尺対応ができないという問題もある。
【0008】
一方、紫外線のパワーを落として照射すればより長いファイバを処理できるが、かなりの時間をかける必要があるので量産には向かない。
或いは光ファイバの側面側から紫外線を照射することも考えられるが、樹脂製のバッファコーティング(外面保護膜)の場合には紫外線の照射熱で溶融されるという問題があり、金属コーティングの場合には紫外線を透過させないという問題がある。
【0009】
本発明は、紫外線照射と熱処理により改質されたシリカガラスを使用する光ファイバの製造に当たって、長尺の光ファイバを効率よく量産することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の光ファイバの製造方法は、シリカガラスファイバに金属でバッファコーティングした光ファイバの製造に際して、シリカガラス母材から紡糸され前記バッファコーティングされる前のシリカガラスファイバに側面から紫外線を照射して該シリカガラスファイバ中に多くの構造欠陥を積極的に発生させ、前記バッファコーティングを施した後に近赤外線による加熱により前記構造欠陥を取り除くことによって前記シリカガラスファイバの紫外線耐性を向上させることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の光ファイバの製造方法は、シリカガラスファイバにバッファコーティングした光ファイバの製造に際して、シリカガラス母材から紡糸され前記バッファコーティングされる前で前記紡糸時の余熱でシリカガラスファイバの温度が100℃〜1600℃のときに該シリカガラスファイバの側面から紫外線を照射して該シリカガラスファイバ中に多くの構造欠陥を積極的に発生させ、前記余熱により前記構造欠陥を取り除くことによって前記シリカガラスファイバの紫外線耐性を向上させることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
請求項1又は2記載の製造方法は、例えば図1に例示する装置にて実施される。
この図1(a)の例では、紡糸加熱炉にてシリカガラスの母材を加熱し、その先端からシリカガラスファイバを引き出して紡糸する。紫外線照射域において、紡糸されたシリカガラスファイバに側面から紫外線を照射する。これによってシリカガラスファイバ中に多くの構造欠陥が発生する。
【0014】
これらの構造欠陥は熱処理によって取り除かれ、シリカガラス中のSi−O−Siネットワークの結合角の平均が熱処理前の値に比べて広がり、構造緩和が進んで構造的に安定なガラスとなり、紫外線照射による欠陥の生成が抑制される。つまり、紫外線耐性の高いシリカガラスファイバとなる。なお、この方法により紫外線耐性を高めると、放射線の照射によるシリカガラスの透過率の悪化を抑制する(すなわち、放射線耐性を向上させる)こともできる。
【0015】
紡糸に伴う加熱の余熱が上記の熱処理に十分であれば改めてシリカガラスファイバを加熱する必要はないが、余熱だけでは不十分なら、図1(b)に例示するように、紫外線照射域に続けて加熱域を設け、ここで加熱してもよい。
紫外線照射を(図1(b)の例では加熱処理も)受けたシリカガラスファイバは、線径測定器を通過する際に線形を測定され、この測定値に基づいて線形制御回路がキャプスタンの回転速度(紡糸速度)を制御する。また、線径測定器を通過後にバッファコーティングが施されて光ファイバとして完成し、巻き取り機によって巻き取られる。線径測定器、コーティング装置、線径制御回路、キャプスタン及び巻き取り機は公知ものと変わるところはなく、またこれらの動作も公知の場合と同様である。
【0016】
シリカガラスファイバに対する紫外線照射処理および熱処理については、以下の条件および特徴があげられる。
照射する紫外線の波長は、50nm〜300nmが適当であり、望ましくは130nm〜250nm、特に望ましくは150nm〜200nmである。この波長範囲より長くなると紫外線耐性・放射線耐性向上効果は小さくなる傾向があり、短くなると紫外線耐性・放射線耐性向上効果は飽和する傾向がある。
【0017】
照射する紫外線の強度は、0.01mJ/cm2〜1000mJ/cm2が適当であり、望ましくは1mJ/cm2〜500mJ/cm2、特に望ましくは10mJ/cm2〜300mJ/cm2である。この強度範囲より強くなるとシリカガラスの劣化が大きくなる傾向があり、弱くなると紫外線耐性・放射線耐性向上効果は小さくなる傾向がある。
【0018】
紫外線源には特に限定はなく、例えばArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ、重水素ランプ等を使用できる。
紫外線の照射は構造欠陥が発生するのに十分なだけ(これは紫外線透過率の減少として確認できる。)行う必要があり、紫外線透過率の減少が飽和するまで照射すればよいといえる。
【0019】
ただし、本発明の場合、シリカガラスファイバを紡糸しながら紫外線を照射するので、照射(紡糸)しながら紫外線透過率の減少を確認するのは難しい。
したがって、紫外線の強度、紡糸速度、シリカガラスファイバの材質、サイズなどにより、予め実験などで適切な照射条件を求めておき、その条件に従って紫外線の照射を行うのが望ましい。
【0020】
熱処理温度は、100℃〜1600℃が適当であり、望ましくは200℃〜1400℃、特に望ましくは300℃〜1300℃である。この温度範囲を外れると紫外線耐性・放射線耐性向上効果は小さくなる傾向がある。したがって、上述の加熱域を設けるか否かは、十分な紫外線の照射が行われた時点以後のシリカガラスファイバの温度(紡糸の余熱温度)が、前記の温度範囲にあるか否かで決めればよい。シリカガラスファイバの温度(紡糸の余熱温度)が、前記の温度範囲にあるなら請求項2記載の方法を採用できる。
【0021】
熱処理(余熱または加熱)によるSi−O−Siネットワークの結合角の変化は、赤外吸収測定による2260cm-1付近の赤外吸収ピーク位置を分析すれば明らかにできる。具体的には、シリカガラスの構造緩和が進むほど(すなわち、紫外線耐性が向上するほど)赤外吸収測定による2260cm-1付近の赤外吸収ピーク位置は、約2255cm-1〜約2275cm-1の範囲で高波数側(低波長側)にシフトする。
【0022】
ただし、本発明の場合、シリカガラスファイバを紡糸しながらの熱処理となるので、赤外吸収ピーク位置をリアルタイムで分析してSi−O−Siネットワークの結合角の変化を確認するのは難しい。
このため、加熱域を設ける場合には、シリカガラスファイバの紡糸速度を考慮して、熱源温度や加熱域の全長などを設定する必要がある。これも、紫外線照射と同様に、予め実験などで適切な加熱条件を求めておき、その条件に従って加熱を行うのが望ましい。
【0023】
公知のシリカガラスの光ファイバの構造は、心部からコア、クラッド、バッファコーティングの3層構造で、クラッドにはフッ素添加シリカガラスが、コアには純粋シリカガラス、OH添加シリカガラスまたはクラッドより低濃度のフッ素を添加したシリカガラスが使用されているが、本発明はこのような公知の構造の光ファイバに適用可能であることは勿論であり、他の種類のシリカガラスファイバを使用する光ファイバであっても適用できる。
【0024】
また、コーティングの材質等にも特に限定はないが、熱処理のために比較的高温を要するので、耐熱性に劣るバッファコーティングの場合(例えば樹脂コーティングの場合)には、請求項2記載のように、構造欠陥を取り除くための加熱をバッファコーティングに先立って実施するのが好ましい(図1(b)参照)。
【0025】
一方、耐熱性に優れる材料(例えばアルミニウムや金などの金属)のバッファコーティングは熱処理のための高温にも十分に耐えるから、図1(a)に破線で示した位置(コーティング後)に例えば加熱炉を配置して、ここで熱処理するとよい(請求項1記載の構成を採用できる。)。もちろん、コーティングに先立って加熱処理することも可能である。つまり、耐熱性のバッファコーティングの場合には、加熱位置を選択する上での自由度が高いといえる。
【0026】
なお、紫外線照射後の加熱は電気炉、赤外線ランプや赤外線レーザによる照射が推奨されるが、これらに限定されない。ただし、放射(ラジエーション)による非接触型の加熱が望ましい。
また金属コーティングは近赤外線を良好に吸収するので、金属コーティング後に加熱する場合には近赤外線を使用するとよい。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明の光ファイバの製造方法によれば、母材からの紡糸時にシリカガラスファイバに紫外線を照射して構造欠陥を発生させ、紡糸時の余熱または別途行う加熱によって構造欠陥を取り除いて、シリカガラス中のSi−O−Siネットワークの結合角の平均を熱処理前の値に比べて広げることで、光ファイバを構成するシリカガラスファイバの紫外線耐性を高めることができる。
【0028】
紫外線をシリカガラスファイバの側面から照射すればよいから、シリカガラスファイバの長さには制限はなくなる。これにより紫外線耐性が高いシリカガラスファイバを使用した長尺の光ファイバを製造できる。
しかも、従来の光ファイバの製造工程に紫外線照射域を設けるだけでよく、また余熱による熱処理が十分ではないときに限って別途加熱域をもうければよいから、既設の光ファイバ製造設備をそのまま活用することが可能になり、新規な設備投資は(紫外線照射のための設備、場合によって加熱設備)は最低限で済む。
【0029】
請求項1記載の発明は、耐熱性に優れる材料(例えばアルミニウムや金などの金属)のバッファコーティングを用いる場合に適している。
請求項2記載の発明は、紡糸時の余熱を利用するので加熱処理のための構成が不要である。
【0030】
なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の説明図である。
Claims (2)
- シリカガラスファイバに金属でバッファコーティングした光ファイバの製造に際して、
シリカガラス母材から紡糸され前記バッファコーティングされる前のシリカガラスファイバに側面から紫外線を照射して該シリカガラスファイバ中に多くの構造欠陥を積極的に発生させ、
前記バッファコーティングを施した後に近赤外線による加熱により前記構造欠陥を取り除くことによって前記シリカガラスファイバの紫外線耐性を向上させる
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。 - シリカガラスファイバにバッファコーティングした光ファイバの製造に際して、
シリカガラス母材から紡糸され前記バッファコーティングされる前で前記紡糸時の余熱でシリカガラスファイバの温度が100℃〜1600℃のときに該シリカガラスファイバの側面から紫外線を照射して該シリカガラスファイバ中に多くの構造欠陥を積極的に発生させ、前記余熱により前記構造欠陥を取り除くことによって前記シリカガラスファイバの紫外線耐性を向上させる
ことを特徴とする光ファイバの製造方法。
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