JP3645301B2 - 対面係合ファスナー部材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、対面係合ファスナー部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
それぞれの基部の主要面に相互係合可能な係合手段を配設した一対の対面係合ファスナー部材を、各々の主要面を対向させて相互に圧着することにより、それらファスナー部材をそれぞれに固定した二物体を脱着可能に係着するファスナーは、多様な種類のものが知られている。その係合手段としては、フックとループとの組合せ、茸状の有頭突子とループとの組合せ、有頭突子同士、等、様々な形式のものが使用されている。
【0003】
この種の対面係合ファスナー部材を物体の表面に固定する場合、一般に接着剤、感圧両面粘着テープ、ボルト、クリップ等の固定手段が使用される。従来、物体表面への固定作業を迅速に行うために、基部の主要面の反対側の裏面に接着剤や感圧両面粘着テープを被着したり、基部に別体の樹脂製クリップを溶接したり、基部に別体の金属製クリップをかしめて固着したりすることにより、物体表面への固定に先立って対面係合ファスナー部材と固定手段とを連結していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、対面係合ファスナー部材の基部に固定手段を連結するための上記のような作業は、製造工程を煩雑にし、製造時間及びコストを増加させるだけでなく、手作業により連結の結果にばらつきを生じ易く、多数の対面係合ファスナー部材に均等な固定機能を付与できないという課題が生じていた。本願出願人は、そのような課題を解決できる関連技術として、特願平5−221234号明細書において、基部を成形する際に基部に一体的に連結された固定手段を備える対面係合ファスナー部材を開示している。
【0005】
特願平5−221234号明細書に記載した対面係合ファスナー部材は、複数の有頭突子を備えた樹脂製対面係合ファスナー部材であって、固定手段は、対面係合ファスナー部材の射出成形工程において基部の成形時に基部に一体成形される。それにより、固定手段を基部に容易かつ正確に連結でき、多数の対面係合ファスナー部材に均等な固定機能を付与することができるという利点を有する。
【0006】
例えば固定手段が、一端で基部に連結され他の自由端で所定間隙を介して基部の裏面に対向配置される延長部を備えたクリップ状部材からなる場合、基部と延長部との間の間隙に物体を挿入し、延長部の弾性復元力によって物体を挟持することにより、対面係合ファスナー部材が物体に固定される。しかしながら、仮に延長部の弾性復元力が充分に得られたとしても、物体が例えば金属板、特に表面塗装した鉄板や、ガラス板等の、平滑で摩擦抵抗の低い表面を有した高剛性材料からなる場合には、対面係合ファスナー部材を物体に固定したときに基部の裏面及び延長部の表面とそれらに接触する物体の各表面との間の摩擦が小さく、対面係合ファスナー部材が物体から容易に抜け落ちてしまう危惧がある。
【0007】
本発明は、従来技術における前述の課題を解決するために鋭意、工夫改善を行ったものであり、その目的は、基部を物体表面に迅速かつ確実に固定でき、しかも多数の対面係合ファスナー部材に均等な固定機能を付与できる固定手段を備えた対面係合ファスナー部材を提供することにある。本発明のさらなる目的は、そのような固定手段を備えた対面係合ファスナー部材において、固定手段による物体への固定保持力を一層向上させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、主要面及び主要面の反対側の裏面を有した基部と、基部の主要面に設けられ、他のファスナー部材に係合可能な係合手段と、基部に設けられ、基部を物体に固定する固定手段とを具備した対面係合ファスナー部材において、固定手段は、裏面から先端を突出させて基部に形成され、少なくとも先端が弾性変形可能な突部と、一端で基部に連結され、他の自由端に隣接する部分で所定間隙を介して裏面に対向配置される弾性変形可能な延長部と、突部以外の部分で基部の裏面に設けられ、物体を保持したときに物体の表面に面接触可能な平坦面とを具備し、基部と延長部との間隙に物体を挿入したときに、延長部がその弾性復元力によって物体を突部及び平坦面に押し付け、それにより突部が弾性変形した状態で、物体を基部と延長部との間に保持することを特徴とする対面係合ファスナー部材を提供する。
【0009】
この対面係合ファスナー部材では、基部の裏面が、突部に隣接して形成された凹部を備えることは有利である。さらに、突部の少なくとも裏面から突出する部分が、延長部の一端へ接近する方向へ傾斜して延びることが好ましい。
【0010】
延長部が自由端に隣接して、基部の裏面に接近する方向へ隆起する隆起部を備えることが好ましい。さらに、突部の先端が、延長部の一端と隆起部との間の部分に対向して配置されることが望ましい。
【0011】
このような構成は、係合手段が、基部の主要面から突出する脚部及び脚部の先端に連結される頭部を各々に備えて基部の主要面に離間配置で立設される複数の有頭突子からなる対面係合ファスナー部材に適用できる。
【0013】
【作用】
物体を基部の裏面と延長部との間隙に挿入することにより、対面係合ファスナー部材が物体に固定される。このとき、延長部は物体により裏面から離れる方向へ押されて弾性変形し、同時に延長部の弾性復元力によって物体は裏面に接近する方向へ付勢される。その結果、突部は、物体に圧迫されて先端近傍部分が弾性変形する。この状態で物体は、突部と延長部とに接触する両表面において、突部及び延長部の弾性復元力を受け、それにより基部と延長部との間に強固に保持される。
【0014】
基部の裏面に設けた平坦面は、物体の表面に面接触して対面係合ファスナー部材のがたつきを防止する。突部に隣接して形成した凹部は、突部の弾性変形を容易にする。突部が延長部の一端へ接近する方向へ傾斜していると、基部と延長部との間隙から物体を抜き取る力に対する抵抗力が増す。
【0015】
延長部に設けた隆起部は、延長部の弾性変形を容易にする。隆起部は延長部の屈曲部分から容易に形成できる。突部の先端が、延長部の一端と隆起部との間の部分に対向していると、基部と延長部との間隙への物体の挿入が容易であり、間隙から物体を抜き取る力に対する抵抗力が増す。
【0016】
【実施例】
以下、添付図面に示した好適な実施例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。各図において、同一又は類似の構成要素には共通の参照番号を付す。
図面を参照すると、図1及び図2(a)、(b)は本発明の実施例による対面係合ファスナー部材10を示す。対面係合ファスナー部材10は、高分子材料の一体成形品からなり、略平坦な板状の基部12と、基部12に所定の離間配置で立設される複数の有頭突子14とを備える。各有頭突子14は、他のファスナー部材に係合可能な係合手段であり、基部12の主要面16から略直立状に突出する脚部18と、脚部18の先端に脚部18の外周面から膨出する輪郭を有して形成される頭部20とを備える。
【0017】
なお、本発明に係る対面係合ファスナー部材は、このように基部と有頭突子とが高分子材料から一体成形されるものだけでなく、例えば布帛製又はポリプロピレン等のプラスチック製の基部と、基部に植設される複数の樹脂製モノフィラメントからなる有頭突子とを備えたものにも適用できる。(プラスチック製の基部とモノフィラメント有頭突子とを備えた対面係合ファスナー部材は、「デュアルロック」(3M社の商標名)として知られている。)また係合手段として、周知のフックアンドループ式ファスナーに用いられるフック又はループを有した対面係合ファスナー部材(「スコッチメイト」(3M社の商標名)として知られている)や、相互に噛合可能な突部と凹部との一方を有した対面係合ファスナー部材(特開昭63−71206号公報参照)にも、本発明を適用できる。
【0018】
対面係合ファスナー部材10は、基部12を物体に固定する固定手段として、基部12の裏面22から先端を突出させて基部12に一体成形される突部24と、第1端で基部12に一体的に連結され、第2自由端の近傍部分で所定間隙を介して裏面22に対向配置される延長部26とを備える。
【0019】
突部24は、対面係合ファスナー部材10の成形工程において、基部12の成形と同時に基部12と同一の高分子材料から形成される。図1に示すように突部24は、基部12に連結される基端から裏面22から突出する先端へ向かって徐々に薄肉になっている。また図2(b)に示すように、突部24は基部12の長手方向全長に亙って連続して形成される。突部24は弾性変形可能であり、その形状から特に先端に近い部分ほど容易に変形する。
【0020】
延長部26は、対面係合ファスナー部材10の成形工程において、基部12の成形と同時に基部12と同一の高分子材料から成形される。延長部26は、前述の第1端を有して基部12の裏面22に略直交して延びる連結部分28と、前述の第2自由端を有して連結部分28の下端から裏面22に沿って延長される挟持部分30とを備え、全体として弾性変形可能である。また図2(b)に示すように、延長部26は基部12の長手方向全長に亙って連続して形成される。
【0021】
図3に示すように、対面係合ファスナー部材10は、例えば金属板やガラス板等の物体32を、基部12の裏面22と延長部26の挟持部分30との間隙に挿入することにより、物体32に固定される。このとき、挟持部分30が物体32により裏面22から離れる方向へ押されて延長部26が弾性変形し、同時に延長部26の弾性復元力によって物体32は裏面22に接近する方向へ付勢される。その結果、突部24は、物体32に圧迫されて先端近傍部分が図示のように弾性変形する。この状態で物体32は、裏面22と挟持部分30とに接触する両表面において、突部24及び延長部26の弾性復元力を受け、それにより基部12と延長部26との間に強固に保持される。
【0022】
このような構成によれば、対面係合ファスナー部材10を図3に示す固定位置から移動して物体32から取り外そうとするときに、裏面22と物体表面との間の摩擦力に突部24の弾性復元力が付加された複合的抵抗力が作用するので、突部24を有しないものに比べて取り外しにさらに大きな力が必要となる。すなわち、対面係合ファスナー部材10を物体32に固定保持する力が大きくなるのである。
【0023】
対面係合ファスナー部材10においては、図1に示すように基部12の裏面22は、固定対象の物体表面に対して充分な摩擦力を生じるように、物体表面に接触する面積がなるべく大きいことが好ましい。そこで、裏面22の突部24以外の部分を、同一平面上に配置される平坦面として形成することが好適である。このような構成によれば、基部12と延長部26との間に物体を保持したときに、裏面22は所定圧力下で物体の表面に面接触できるので、物体に固定した対面係合ファスナー部材10のがたつきを防止することも容易となる。
【0024】
基部12の裏面22には、突部24に隣接して凹部34が形成されることが好ましい。凹部34は、突部24の弾性変形を容易にする作用を果たす。また好ましくは突部24は、その基端から先端へ、延長部26の連結部分28から遠い側で連結部分28に接近する方向へ傾斜して延びる表面36と、連結部分28に近い側で裏面22に略直交して延びる表面38とを有する。このような形状を有することにより、突部24は延長部26の連結部分28に接近する方向へ変形し易く、その逆方向へは比較的変形し難くなるので、対面係合ファスナー部材10を物体32から取り外そうとする力に対する抵抗力がさらに大きくなる。
【0025】
延長部26の挟持部分30には、物体32を基部12の裏面22に押し付けるに充分な弾性復元力を得るために、裏面22に接近する方向へ隆起する隆起部40が形成される。隆起部40は、例えば図示のように挟持部分30の屈曲部分からなることができる。この場合、突部24の先端が、延長部26の連結部分28と隆起部40との間の挟持部分30に対向して配置されるように、突部24及び隆起部40の位置を設定することが望ましい。このような構成によれば、基部12と延長部26の隆起部40との間隙への物体32の挿入が容易になるとともに、この間隙からの物体32の抜き取りに対する抵抗力が高められる。
【0026】
上記の対面係合ファスナー部材10は、表面塗装した鉄板等の金属板や、ガラス板等の、平滑で摩擦抵抗の低い表面を有した高剛性材料からなる物体に対し、強固な固定保持力のもとに取り付けることができる。そのような物体としては、車両の本体パネルや窓ガラスがあげられる。特に、物体の厚みが基部12の裏面22と延長部26の挟持部分30に適合しさえすれば、対面係合ファスナー部材を取り付けるための穴等を物体に設ける必要がないので、所望の場所に所望個数の対面係合ファスナー部材10を迅速に取り付けることができる。
【0027】
対面係合ファスナー部材10による物体への固定保持力の増強効果を明確にするために、1.6mmの厚みを有する鉄板からなる物体に、対面係合ファスナー部材10と、突部24及び凹部34を省略して延長部26のみを固定手段として備えた対面係合ファスナー部材とを取り付け、各対面係合ファスナー部材を物体から抜き取るに要した力をプッシュプルゲージで測定した。測定結果は、対面係合ファスナー部材10では10Nであり、延長部26のみを固定手段として備えた対面係合ファスナー部材では5Nであった。なおこの試験において、対面係合ファスナー部材10は、カーボンブラック含有の6−ナイロンを材料とし、基部12の寸法が9mm(図2(a)の横方向)×24mm(図2(a)の縦方向)×3mm(厚み)(ただし突部24に関して延長部26の連結部分28から遠い側の裏面22の横方向寸法が4mm)、裏面22からの突部24の突出長さが0.2mm、裏面22と延長部26の隆起部40との間の距離が0.5mm、及び延長部26の厚みが1.3mmの寸法諸元を有するものを使用した。
【0028】
本発明に係る対面係合ファスナー部材は、上記以外の様々な形状を有することができる。例えば対面係合ファスナー部材10の基部12は、図2(a)に示す略矩形平面形状の他に、複数の有頭突子14を固定的に保持可能な様々な寸法及び形状に形成することができる。なお基部12の厚み(主要面16と裏面22との間の距離)は、0.5mm〜5.0mmの範囲にあることが好ましい。有頭突子14の脚部18は、円柱、角柱、円錐台等の多様な形状を有することができ、1つの頭部20に対し複数個設けることもできる。頭部20は、図示の半球状の他に、球状、錐体状、笠状等の様々な形状を有することができる。例えば、円柱状脚部18と半球状頭部20とを有する有頭突子14において、脚部18の直径は、係着相手のファスナー部材との充分な係着保持力を得るために、頭部20の直径の20%〜70%の範囲にあることが好ましい。さらに、有頭突子14の個数は、基部12の主要面16の面積で6.45cm2 当りに、50個〜500個であることが好ましい。
【0029】
固定手段に関すれば、図4(a)に示すように、基部12の裏面22に複数の突部24を形成することができる。それにより、対面係合ファスナー部材10を物体から取り外そうとする力に対する突部24による抵抗力が増加する。この場合、図4(b)に示すように、突部24が基部12の長手方向へ部分的かつ分離して延びるように構成することにより、裏面22と物体表面との接触面積を確保することもできる。また同様に、延長部26も基部12の長手方向へ部分的かつ分離して配置することができる。さらに、上記のような畝状の突部24に限らず、1個以上の柱状の突部を用いることも本発明の範囲内である。その場合、柱状突部は図1の突部24と同様の断面形状を有することが好ましい。また、全体に畝状や柱状の突部を多数設けた粗面として裏面を形成することにより、固定手段を構成することもできる。
【0030】
図5に示すように、基部12の裏面22には、延長部26の連結部分28から遠い方の端縁部に隣接して、前述の凹部34よりも大きな第2の凹部42を設けることができる。第2の凹部42は、基部12の裏面22と延長部26の挟持部分30との間隙に物体32を挿入する際に、物体32の挿入端を受け入れ(図6(a)参照)、裏面22と挟持部分30との間隙を拡大する延長部26の弾性変形を円滑かつ容易に生じさせるように作用する。したがって第2の凹部42は、突部24(図示実施例では凹部34)に至る面が図示のように円滑に延びることが好ましい。
【0031】
さらにこの場合、突部24と第2の凹部42との間には、物体表面に対する支持及び摩擦の観点から裏面22の一部分44が残されることが望ましい。この部分44は、物体表面に線接触する形状(図6(b)参照)でも、物体表面に面接触する形状(図7参照)でもよい。同様に、延長部26の連結部分28から遠い方の基部12の端縁部には、裏面22の一部分46が残されることが望ましい。この部分46も、物体表面に線接触する形状(図7参照)でも、物体表面に面接触する形状(図6(b)参照)でもよい。
【0032】
また第2の凹部42の代わりに、図8に示すように、延長部26の連結部分28から遠い方の基部12の端縁部に薄肉部分48を形成することもできる。このような薄肉部分48によっても、対面係合ファスナー部材の物体への取付けを容易にすることができる。
【0033】
図7に示すように、延長部26の挟持部分30に設けた隆起部40は、挟持部分30を部分的に厚肉にすることによっても形成できる。なお、基部12の裏面22と延長部26の挟持部分30との間隙への物体32の挿入を容易にするために、隆起部40は、挟持部分30の屈曲部分からなる場合も厚肉部分からなる場合も、連結部分28から離れた側の表面が図示のように円滑に延びることが望ましい。
【0034】
さらに図7に示すように、突部24は、基部12の裏面22の部分44と延長部26の隆起部40との間隙寸法よりも長く、裏面22から突出することができる。そのような構成によれば、部分44と隆起部40との間隙寸法より小さい厚みを有する物体にも、対面係合ファスナー部材を取り付けることが可能となる。裏面22からの突部24の突出長さは、突部24の材料の弾性率や裏面22と挟持部分30との間隙寸法に対応して最適化されるが、好ましくは0.01mm〜0.5mm、特に好ましくは0.05mm〜0.3mmの範囲で選択される。突部24の突出長さがこの範囲より小さいと、対面係合ファスナー部材を物体から取り外そうとする力に対する抵抗力が高まらない傾向があり、この範囲より大きいと物体に固定したときの対面係合ファスナー部材のがたつきを防止することが困難になる傾向がある。
【0035】
上記各実施例では、突部24は、基部12の成形と同時に基部12と同一の高分子材料から形成される構成とした。このような構成によれば、突部24を容易に形成できるだけでなく、弾性変形を繰り返す突部24の破壊強度が高水準に維持される。しかしながら、例えば別工程で成形された別体の突部を基部の成形時にインサートとして型内に配置し、基部に連結する構成とすることもできる。この場合、基部とは異なる材料から突部を形成できるので、基部等の対面係合ファスナー部材の他部分の弾性とは独立して突部の弾性の調整が容易となる。
【0036】
同様に上記各実施例では、延長部26は、基部12の成形と同時に基部12と同一の高分子材料から成形される構成とした。このような構成によれば、基部12の材料及び延長部26の寸法の選択により、基部12と延長部26との連結部位及び延長部全体の破壊強度を低減することなく、延長部全体の充分な弾性復元力を得ることが容易になる。しかしながら、例えば図9(a)、(b)に示すように、延長部として基部とは別の材料からなる部材を使用することもできる。
【0037】
図9(a)に示す対面係合ファスナー部材50は、略平坦な板状の基部52と、基部52に所定の離間配置で立設される複数の有頭突子54とを備える。各有頭突子54は、基部52の主要面56から略直立状に突出する脚部58と、脚部58の末端に連結される頭部60とを備える。さらに対面係合ファスナー部材50は、基部52を物体に固定する固定手段として、基部52の裏面62から先端を突出させて基部52に一体成形される突部64と、基部52に固定的に連結される保持部材66からなる延長部とを備える。なお突部64は、図1の対面係合ファスナー部材10における突部24と同様の構成を有するものであり、説明は省略する。
【0038】
保持部材66は、図9(b)に示すように、基部52に埋設される支持部分68と、支持部分68の一縁部から支持部分68に略直交して延びる連結部分70と、連結部分70の他端から支持部分68に略平行に延びる挟持部分72とを備える。保持部材66は、好ましくは板金からプレス成形され、全体として弾性変形可能である。プレス成形により、例えば支持部分68には複数の穴74を、また挟持部分72には係止爪76を形成できる。保持部材66は、対面係合ファスナー部材50の成形工程において、基部52を成形するための型内にインサートとして配置され、高分子材料から基部52を成形することにより基部52に一体的に連結される。このとき、支持部分68に複数の穴74を設けておけば、穴74に高分子材料が侵入し、それにより保持部材66が基部52に強固に固定される。
【0039】
対面係合ファスナー部材50は、物体を基部52の裏面62と保持部材66の挟持部分72との間隙に挿入することにより、物体に固定される。このとき、挟持部分72が物体により裏面62から離れる方向へ押されて保持部材66が弾性変形し、同時に保持部材66の弾性復元力によって物体が裏面62に接近する方向へ付勢される。その結果、突部64は、物体に圧迫されて先端近傍部分が弾性変形する。この状態で物体は、裏面62と挟持部分72とに接触する両表面において、突部64及び保持部材66の弾性復元力を受け、それにより基部52と保持部材66との間に強固に保持される。このとき、挟持部分72に係止爪76を設けておけば、保持部材66の弾性復元力が高められる。
【0040】
このような構成によっても、対面係合ファスナー部材50を物体から取り外そうとするときに、裏面62と物体表面との間の摩擦力に突部64の弾性復元力が付加された複合的抵抗力が作用するので、突部64を有しないものに比べて取り外しにさらに大きな力が必要となる。すなわち、対面係合ファスナー部材50を物体に固定保持する力が大きくなるのである。
【0041】
本発明に係る対面係合ファスナー部材は、様々な材料から形成することができる。しかしながら本発明において、固定手段を構成する突部は、基部と延長部との間隙に物体を挿入したときに、少なくとも先端が容易に弾性変形する材料からなることが必要である。このような突部の材料に要求される曲げ弾性率は、好ましくは9800N/cm2 〜245000N/cm2 、特に好ましくは49000N/cm2 〜196000N/cm2 の範囲である。突部の曲げ弾性率がこの範囲より小さいと、対面係合ファスナー部材を物体から取り外そうとする力に対する抵抗力が高まらない傾向があり、この範囲より大きいと物体に固定したときの対面係合ファスナー部材のがたつきを防止することが困難になる傾向がある。
【0042】
このような曲げ弾性率を要求される突部を形成するために、基部の好適な材料として、ポリアミド(6−ナイロン、6,6−ナイロン等)、ポリプロピレン、ポリエチレン、アイオノマー、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリアリレートがあげられる。このうち特に好適な材料は、6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリプロピレンである。
【0043】
またこのような樹脂材料に、カーボンブラック、グラスファイバー、酸化チタン、酸化鉄等の充填材を添加して、曲げ弾性率を好適な範囲に制御することもできる。特に好適な充填材はカーボンブラックである。この場合、カーボンブラックの含有量は、好ましくは100重量部の樹脂に対して0.01〜10重量部、特に好ましくは1〜5重量部の範囲である。カーボンブラックの含有量がこの範囲より少ないと弾性率の制御が困難になる傾向があり、この範囲より多いとカーボンブラックによる潤滑効果が顕著になり、対面係合ファスナー部材を物体から取り外そうとする力に対する抵抗力が減少する傾向がある。
【0044】
本発明に係る対面係合ファスナー部材は、様々な方法によって形成することができる。しかしながら、複雑形状の有頭突子群及び突部を基部に一体成形するために、米国特許第5,242,646号に開示される脚部型のような破壊的に脱離可能な型を使用した射出成形工程によって、基部、有頭突子、及び突部、並びに好ましくは延長部を、上記のような高分子材料から一体的に形成する方法が有利である。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、基部を物体表面に迅速かつ確実に固定でき、しかも多数の対面係合ファスナー部材に均等な固定機能を付与できる固定手段を備えた対面係合ファスナー部材が提供される。また、そのような固定手段を備えた対面係合ファスナー部材において、固定手段による物体への固定保持力が一層向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例による対面係合ファスナー部材の正面図である。
【図2】図1の対面係合ファスナー部材の、(a)矢印aから見た平面図、及び(b)矢印bから見た側面図、である。
【図3】図1の対面係合ファスナー部材を物体に取り付けた状態で示す正面図である。
【図4】他の実施例による対面係合ファスナー部材の、(a)正面図、及び(b)側面図、である。
【図5】さらに他の実施例による対面係合ファスナー部材の正面図である。
【図6】図5の対面係合ファスナー部材の物体への取り付け方法を説明する図で、(a)取り付けの初期段階を示す正面図、及び(b)取り付け完了時の正面図、である。
【図7】さらに他の実施例による対面係合ファスナー部材の正面図である。
【図8】さらに他の実施例による対面係合ファスナー部材の正面図である。
【図9】さらに他の実施例による対面係合ファスナー部材の、(a)断面正面図、及び(b)保持部材の斜視図、である。
【符号の説明】
10、50…対面係合ファスナー部材
12、52…基部
14、54…有頭突子
16、56…主要面
22、62…裏面
24、64…突部
26、66…延長部
28、70…連結部分
30、72…挟持部分
34…凹部
40…隆起部
42…第2の凹部
Claims (6)
- 主要面及び該主要面の反対側の裏面を有した基部と、該基部の該主要面に設けられ、他のファスナー部材に係合可能な係合手段と、該基部に設けられ、該基部を物体に固定する固定手段とを具備した対面係合ファスナー部材において、
前記固定手段は、
前記裏面から先端を突出させて前記基部に形成され、少なくとも該先端が弾性変形可能な突部と、
一端で前記基部に連結され、他の自由端に隣接する部分で所定間隙を介して前記裏面に対向配置される弾性変形可能な延長部と、
前記突部以外の部分で前記基部の前記裏面に設けられ、前記物体を保持したときに該物体の表面に面接触可能な平坦面とを具備し、
前記基部と前記延長部との間隙に物体を挿入したときに、該延長部がその弾性復元力によって該物体を前記突部及び前記平坦面に押し付け、それにより該突部が弾性変形した状態で、該物体を該基部と該延長部との間に保持すること、
を特徴とする対面係合ファスナー部材。 - 前記基部の前記裏面が、前記突部に隣接して形成された凹部を備える請求項1に記載の対面係合ファスナー部材。
- 前記突部の少なくとも前記裏面から突出する部分が、前記延長部の前記一端へ接近する方向へ傾斜して延びる請求項1又は2に記載の対面係合ファスナー部材。
- 前記延長部が前記自由端に隣接して、前記基部の前記裏面に接近する方向へ隆起する隆起部を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の対面係合ファスナー部材。
- 前記突部の前記先端が、前記延長部の前記一端と前記隆起部との間の部分に対向して配置される請求項4に記載の対面係合ファスナー部材。
- 前記係合手段が、前記基部の前記主要面から突出する脚部及び該脚部の先端に連結される頭部を各々に備えて該基部の該主要面に離間配置で立設される複数の有頭突子からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の対面係合ファスナー部材。
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