JP3644916B2 - 穀粒貯留設備 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、床部が通気自在で、上部から穀粒を投入可能に構成された複数の貯留ビンと、穀粒の乾燥用空気を前記貯留ビンの床部から通風する乾燥用空気通風手段と、運転を管理する管理手段とが設けられた穀粒貯留設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記構成の穀粒貯留設備は、収穫された稲、麦などの穀粒を乾燥して、貯留するのに使用されるものである。そして、この穀粒貯留設備は、貯留ビンに投入されて貯留されている穀粒が、適正な貯留状態で貯留されて品質が適正に維持されているかどうかを判断するために、貯留ビンについて、穀粒の品質を適正に維持するための条件を満たす適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを判別し、その判別結果を作業者に報知する必要があった。
ちなみに、このような穀粒貯留設備は、複数の貯留ビンを備え、穀粒の品種に応じて夫々の貯留ビンに穀粒を分けて投入して使用されるものである。
このような穀粒貯留設備としては、例えば、特開平8−155310号公報に示される構成のものがあった。この穀粒貯留設備では、各貯留ビンにて穀粒を乾燥させる乾燥運転を行いながら、各貯留ビン毎に投入される穀粒及び貯留されている穀粒の量及び水分含有率を検出して、穀粒の貯留状態が、穀粒の品質を適正に維持するための条件を満たす適正状態であるか、非適正貯留状態であるかを判別し、その判別結果を表示装置に表示するようになっていた。しかしながら、この穀粒貯留設備では、複数の貯留ビンのうちの選択された1個の貯留ビンに対して、貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示部で表示する状態表示が行われるものであり、その選択された1個の貯留ビンに対してのみ、前記判別結果を表す文字によるメッセージを表示装置の表示部に表示することによって、前記判別結果を報知できるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の穀粒貯留設備では、上述したように、貯留ビンに投入され貯留されている穀粒の貯留状態が、穀粒の品質を適正に維持するための条件を満たさない非適正貯留状態であると判別されると、その判別結果に基づいたメッセージが表示装置に表示されるようになっていたが、単なるメッセージ表示であるために、適正貯留状態であるか非適正貯留状態であるかが認識し難いものであった。また、表示装置に選択された1個の貯留ビンに対して穀粒の貯留状態が表示され、この表示されている貯留ビンが非適正貯留状態であるときにメッセージ表示が行われるものであり、選択表示された貯留ビン以外の貯留ビンで穀粒の貯留状態が非適正状態であることを判別しても、その判別結果が表示されるものでなく、穀粒の貯留状態が非適正状態である貯留ビンを即座に認識できず、その結果、非適正状態である貯留ビンに対して、乾燥速度を速める等の適正状態に戻すための作業を怠ることとなり、穀粒の乾燥を適正な貯留状態で行うことができないという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数個の貯留ビン内の穀粒の貯留状態が、品質を適正に維持するための条件を満たす適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを容易に且つ的確に判断できるとともに、いずれの貯留ビンが非適正貯留状態であるかを容易に且つ即座に認識することができる穀粒貯留設備を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1記載の発明〕
請求項1に記載の発明は、床部が通気自在で、上部から穀粒を投入可能に構成された複数の貯留ビンと、穀粒の乾燥用空気を前記貯留ビンの床部から通風する乾燥用空気通風手段と、運転を管理する管理手段とが設けられた穀粒貯留設備であって、前記管理手段は、前記複数の貯留ビンの夫々について、それに投入されている穀粒の投入データに基づいて穀粒の品質を適正に維持するための条件を満たす適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを判別する判別処理、及び、前記複数の貯留ビンの夫々に対応するビン表示部を一覧状態で表示し、且つ、前記判別処理の判別結果に基づいて前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかにより、前記ビン表示部夫々の表示色を異ならせるように、ビン表示用の表示手段を表示作動させる表示処理を実行するように構成されている点を特徴とする。
【0006】
すなわち、管理手段が、複数の貯留ビンの夫々について、それに投入されている穀粒が品質を適正に維持するための条件を満たす状態で貯留されていると適正貯留状態であると判別し、投入されている穀粒が品質を適正に維持するための条件を満たしていない状態で貯留されていると非適正貯留状態であると判別し、投入されている穀粒の貯留状態が適正貯留状態である貯留ビンと非適正貯留状態である貯留ビンとが、ビン表示用の表示手段におけるビン表示部において、その表示色が判別結果に基づいて異なるようにして、一覧状態で表示されるようになる。
【0007】
従って、複数の貯留ビンの夫々に対応するビン表示部を一覧状態で表示することによって、複数の貯留ビンの中から穀粒の貯留状態が非適正貯留状態である貯留ビンがいずれの貯留ビンであるかを、即座に認識することができるようになる。さらに、ビン表示部の表示色を異ならせることによって、貯留状態を文字を使用したメッセージによって報知するものでは、その表示されたメッセージを読解することによって穀粒の貯留状態を認識できるものであり、これに対して、穀粒の貯留状態に応じてビン表示部の表示色を異ならせることによって、その表示色を識別するだけで、穀粒の貯留状態を認識できるようになり、複数の貯留ビンの穀粒の貯留状態が、品質を適正に維持するための条件を満たす適正貯留状態で貯留されているかどうかを容易に且つ的確に判別できるようになる。その結果、非適正状態である貯留ビンに対しては、乾燥速度を速める等の適正状態に戻すための作業を怠ることが防止され、穀粒の乾燥を一層適正な貯留状態で行うことができる穀粒貯留設備が得られることとなる。また、穀粒貯留設備を構成する複数の貯留ビンの数量が多いほど、上述したような効果を一層顕著に得られるものとなる。
また、請求項1に記載の発明は、前記管理手段は、前記表示処理において、前記ビン表示部を一覧表示する警告用一覧表示と、前記複数貯留ビンのうちの選択される一つ又は複数の貯留ビンに貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示部で表示する状態表示とを併せて行うように構成され、且つ、前記状態表示において、前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかにより、前記ビン表示部と同じ色で数値表示部の表示色を異ならせるように、前記表示手段を表示作動させるように構成されている点を特徴とする。
すなわち、複数の貯留ビンのうちの適正貯留状態である貯留ビンと、非適正貯留状態である貯留ビンとをビン表示部が異なる表示色によって一覧表示し、複数貯留ビンのうちの選択される一つ又は複数の貯留ビンに貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示部で表示することになる。
従って、複数の貯留ビンのうちの適正貯留状態である貯留ビンと、非適正貯留状態である貯留ビンとが容易に区別できるとともに、非適正貯留状態である貯留ビンの状態を表す数値を数値表示部で表示するように操作することによって、その貯留ビンに貯留される穀粒の状態を数値情報によって得られることとなり、非適正貯留状態に対する対応を迅速に取ることができる穀粒貯留設備が得られることとなる。
【0008】
〔請求項2記載の発明〕
請求項2に記載の発明は、前記管理手段は、前記判別処理において、前記非適正貯留状態での非適正度合を複数の段階で判別するように構成され、且つ、前記表示処理において、前記非適正貯留状態での非適正度合に応じて前記ビン表示部の表示色を異ならせるように構成されている点を特徴とする。
【0009】
すなわち、管理手段が、複数の貯留ビンの夫々について、投入されている穀粒の貯留状態が非適正貯留状態である貯留ビンの非適正度合を複数の段階で判別し、その判別結果を非適性度合に応じた異なる表示色で、ビン表示用の表示手段に表示することになる。
ちなみに、このような穀粒貯留設備では、標準的な判別基準に基づいて得られた穀粒の投入可能量を越えて投入されたときに、穀粒の貯留状態が非適正貯留状態であると判別されるときがある。標準的な判別基準に基づいて得られた判別結果によって、穀粒の投入を中止するように示されても、さらに穀粒を投入する必要があるときがある。特に、稲や麦などの穀粒の刈り入れ時期には、荷受する穀粒が極度に増加し、穀粒を標準的な判別基準に基づいた判別結果による投入可能量を超えても、穀粒を投入して乾燥を行わなければ、穀粒の乾燥が遅れることによって、穀粒の品質が劣化することがある。また、このような穀粒貯留設備では、標準的な判別基準に基づいた判別結果による投入可能量を越えて穀粒を投入し、通常の乾燥運転では穀粒の品質を維持するのが困難な危険度が高くなるときには、乾燥能力が増加するような乾燥運転方法によって乾燥を行うことによって、穀粒の品質が悪化することを回避できるようになっている。
しかしながら、通常の乾燥運転による乾燥より、乾燥能力を増加させて乾燥運転を行うようにしても、穀粒を投入できる量には限度があり、この限度を超えて穀粒を投入してしまうと、どのような対応をしても穀粒の品質を維持することができないこととなる。すなわち、標準的な判別基準に基づく判別処理だけを行う穀粒貯留設備において、標準的な判別基準に基づいた判別結果による投入可能量を越えて穀粒を投入するときには、経験による判断によって、投入量を判断することとなり、穀粒の品質を維持する条件を満たさない非適正貯留状態となってしまう危険性が高いものであった。
つまり、標準的な判別基準に基づいた判別結果による投入可能量を判別でき、さらに、乾燥能力が増加するような乾燥運転方法によって乾燥を行う等によって、穀粒の品質を維持することができるさらに多くの投入可能量を判別できるようにすることで、実際の運用方法に沿った乾燥貯留設備が得られることとなる。
【0010】
従って、例えば、通常の乾燥運転で穀粒の品質を維持できる貯留状態、あるいは、乾燥能力を増加させるように乾燥運転を制御することによって穀粒の品質を維持できる貯留状態等に段階分けして判別できるようにすることによって、標準的な判別基準に基づいた判別結果による投入可能量を越える量の穀粒の納入を荷受することができながらも、貯留ビンへの無理な穀粒の投入を行うことによって穀粒の品質を低下させるという問題を確実に防止できるといった、一層実際の運用方法に沿った穀粒貯留設備が得られることとなる。
【0011】
〔請求項3記載の発明〕
請求項3に記載の発明は、前記投入データが、前記貯留ビンに通風される乾燥用空気の風量を前記貯留ビンに貯留された穀粒の全量にて除した風量比と、前記貯留ビンに貯留された穀粒全体の平均水分であり、前記管理手段が、前記判別処理において、前記風量比と前記平均水分とに基づいて、前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかを判別するように構成されている点を特徴とする。
【0012】
すなわち、管理手段が、複数の貯留ビンの夫々について、投入されている穀粒の貯留状態が適正貯留状態であるか非適正貯留状態であるかを、貯留ビンに通風される乾燥用空気の風量を貯留ビンに貯留された穀粒の全量にて除した風量比と、貯留ビンに貯留された穀粒全体の平均水分とに基づいて判別するようになる。
【0013】
風量比と穀粒全体の平均水分の2つの要因を把握することによって、貯留されている穀粒の貯留状態を正確に把握することができるものとなる。従って、風量比と穀粒全体の平均水分に基づいて判別することによって、貯留されている穀粒の貯留状態を的確に判別できるものとなり、請求項1又は請求項2における穀粒貯留設備の管理手段による判別が一層的確に行われる穀粒貯留設備が得られることとなる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る穀粒貯留設備の実施の形態を図面に基づいて説明する。
穀粒貯留設備は、収穫した穀粒を水分含有率が16〜18%程度の予備乾燥状態にまで予備乾燥して貯留し、その後、予備乾燥されて貯留されている穀粒を仕上げ水分(例えば14%)に乾燥して貯留し、さらには、乾燥して貯留されている穀粒を籾摺り調整して出荷するものであるが、本実施形態では、穀粒を受け入れて予備乾燥して貯留するための構成並びにその運転処理について説明する。
図1に示すように、穀粒貯留設備は、収穫した穀粒を受け入れる荷受け部G、荷受した穀粒を乾燥しながら貯留する乾燥貯留部D、及び、荷受け部Gや乾燥貯留部Dの運転を管理する管理部Kを主要部として備えている。
荷受け部Gは、生産者から納入される穀粒を荷受けする荷受ホッパー21と、荷受ホッパー21から搬送される穀粒の量を荷受量として計量するための荷受計量装置2と、その荷受計量装置2から排出される穀粒を揚上搬送する荷受け用バケットエレベータ3とを備えている。
乾燥貯留部Dは、複数個(本実施形態では20個)の円筒形状の貯留ビン1を備えると共に、それら貯留ビン1の夫々に、乾燥用空気を通風する乾燥用空気通風手段としての乾燥装置Aを備えさせて、各貯留ビン1に穀粒を貯留し、且つ、貯留した穀粒を乾燥できるように構成されている。そして、前記荷受け用バケットエレベータ3からの穀粒を横搬送して、各貯留ビン1に選択的に投入する投入用コンベア4を備えて、前記荷受け部Gからの穀粒を各貯留ビン1に貯留できるようになっている。
前記管理部Kは、荷受計量装置2からの計量信号に基づいて荷受け量等を演算管理する荷受管理装置6と、予備乾燥状態にまで予備乾燥可能な荷受け可能量の演算等を実行する管理手段としての乾燥管理装置7と、各種情報を表示する表示装置8と、各種運転指令を行うための操作盤9と、穀粒貯留設備に備えさせた各種装置の運転を制御しながら、設備全体の運転を管理する制御装置Cとによって構成されている。
【0018】
次に、乾燥貯留部Dについて説明を加える。
図2に示すように、前記貯留ビン1における貯留空間Diの上部に、乾燥用空気を外部に排気する上部通風路13が連通接続され、貯留ビン1の床部1bが通気自在に構成され、床部1bの下方には、乾燥装置Aからの乾燥用空気を導く導風路1dが設けられている。
前記貯留空間Diの上部には、投入用コンベヤ4から投入される穀粒を放射して、貯留ビン1の横断面の全面にわたって分散させるための均分機10が設けられている。
前記貯留空間Di内には、貯留ビン1内に貯留されている穀粒を上下方向に攪拌移動させる攪拌装置11が設けられている。この攪拌装置11は、貯留ビン1の横断面の中心に位置する公転軸芯周りに公転しながら、上下方向の自転軸芯周りで自転する攪拌スクリュー20によって、貯留ビン1内の穀粒を上下方向に攪拌移動させるように構成されている。
前記床部1bには、貯留ビン1の径方向に並べて4個の穀粒排出口1cが形成され、それら穀粒排出口1cから流下する穀粒を受けて貯留ビン1の外部に搬送する排出用コンベア5が設けられている。また、穀粒排出口1cから排出用コンベア5への穀粒の排出を制御するロータリーバルブ36が設けられ、床部1bの上部には、貯留ビン1内に貯留されている穀粒を穀粒排出口1cに寄せ集めて排出するスクリュー式の排出装置12が設けられている。
【0019】
又、図1に明示するように、前記排出用コンベア5から排出される穀粒を受けて揚上搬送する循環用バケットエレベータ19が設けられている。この循環用バケットエレベータ19は、揚上搬送して穀粒を投入コンベヤ4に供給して、貯留ビン1内の穀粒を循環させるために使用されるともに、詳述はしないが、穀粒を籾摺り調整して出荷する際の搬送にも使用されるものであり、揚上搬送した穀粒を投入コンベヤ4に供給する状態と、揚上搬送した穀粒を籾摺り調整部に搬送する搬送コンベヤ(図示せず)に供給する状態とに切り換えることができるように構成されている。
【0020】
前記乾燥装置Aは、外気を乾燥用空気として貯留ビン1の導風路1dに送風する送風機17を備えて、基本的には、外気を乾燥用空気として通風するように構成されている。但し、燃焼ガスを送風機17の吸気部に供給する燃焼バーナ16が、乾燥用空気の加温手段として設けられて、送風機17により、燃焼ガスと外気との混合ガスを乾燥用空気として供給できるように構成されている。したがって、外気の通風では適正な乾燥を行えないときにはバーナ16を燃焼状態に切り換えることにより、適正な乾燥を行えるようになっている。
【0021】
上述した如く構成される穀粒貯留設備は、生産者から納入される穀粒を荷受けして、貯留ビン1に貯留して予備乾燥することになり、そして、先に荷受けして貯留ビン1に貯留した穀粒の上に、新たに荷受けした穀粒を貯留する、いわゆる累積貯留形態で貯留することになる。尚、荷受けした穀粒は、品種などの貯留条件に応じて、投入される貯留ビン1が選択されて貯留されることになる。
そして、前記制御装置Cは、前記操作盤9にて、複数の貯留ビン1のうちで対象とする貯留ビン1の選択と共に、それに貯留している穀粒を乾燥することが指令されると、対象とする貯留ビン1の乾燥装置Aを作動させて、貯留ビン1に乾燥用空気を通風させることになる。ちなみに、穀粒を乾燥するときには、攪拌装置11を作動させて、貯留ビン1の穀粒の全体が極力均一な水分になるようにしてある。
【0022】
荷受けされた穀粒は、その品質保持のために、短期間で予備乾燥する必要があり、そのために貯留ビン1に貯留された穀粒の乾燥作業を行い易くするために、前記乾燥管理装置7にて各種の情報を管理する管理処理、及び、その管理内容を前記表示装置8に表示する表示処理が行われるようになっており、以下、それについて説明する。
つまり、この穀粒貯留設備では、穀粒の貯留ビン1への投入、及び、投入された穀粒の予備乾燥については、24時間を1サイクルとし管理するようにしてあり、1サイクルの間に、穀粒を投入する投入時間帯(例えば、午前8時からその日の正午まで)と、穀粒を乾燥する乾燥時間帯(例えば、その日の正午から次の日の午前8時まで)とを設定してあり、これらの投入時間帯での荷受け処理や、乾燥時間帯での乾燥処理を適切に行えるようにするために、前記管理処理及び表示処理が行われるようになっている。
尚、以下の説明において、荷受部Gにて荷受けした穀粒の重量を荷受量S1、荷受けした穀粒の水分含有率を荷受水分U1とし、これら荷受量S1と荷受水分U1とを荷受データと総称する。さらに、前日までに貯留ビン1投入されて累積して貯留されている穀粒の重量を累積量Tr、及び、その累積して貯留されている穀粒全体の水分含有率を平均水分Wrとする。尚、本実施形態では、累積量Tr及び平均水分Wrは、図9に基づいて後述する如く、乾燥後における状態に対応するものである。
【0023】
上記管理処理を行うために、各種の情報が検出されるようになっており、先ずそれについて説明する。
前記循環用バケットエレベータ19には、貯留ビン1から排出される穀粒の水分含有率を測定する水分計J1が設けられている。この水分計J1によって、前記平均水分Wrが検出される。つまり、平均水分Wrは、貯留ビン1のそのものに備えさせることになる水分計(図示せず)にても求めることができるが、本実施形態では、平均水分Wrを検出するときには、排出用コンベヤ5、循環用バケットエレベータ19、及び、投入用コンベヤ4を作動させて穀粒を循環させながら、水分計J1にて計測するようになっており、この検出情報は、乾燥管理装置7に入力される。
【0024】
前記送風機17と貯留ビン1の導風路1dとの接続箇所には、乾燥用空気の風量を検出する風量センサM、温度を検出する温度センサT1、及び、湿度を検出する湿度センサH1が夫々設けられ、これらセンサM、T1,H1の検出情報が乾燥管理装置7に入力される。また、前記上部通風路13にも、その内部を通流する乾燥用空気の温度を検出する温度センサT2、及び、湿度を検出する湿度センサH2が夫々設けられており、これらセンサT2,H2の検出情報が乾燥管理装置7に入力される。
【0025】
前記荷受計量装置2には、荷受けした穀粒の荷受水分U1を測定する水分計J2が設けられ、荷受計量装置2にて計量された計量信号及び水分計J1の検出情報が荷受管理装置6に送信されるようになっており、さらに、この荷受管理装置6から、荷受量S1及び荷受水分U1が乾燥管理装置7に通信されるようになっている。
荷受管理装置6による荷受量W1の演算について説明すると、荷受計量装置2は穀粒を貯留しながら、その重量が設定重量に達するごとに排出する、いわゆるバッチ計量式に構成されるものであり、荷受管理装置6は、重量が設定量になった回数と、設定重量以下の重量が設定時間以上継続したときの端量とに基づいて、荷受量S1を演算するようになっている。
【0026】
乾燥管理装置7は、前記管理処理として、貯留状態判別用の判別処理、加温条件判別用の判別処理、及び、投入可能量演算用の演算処理の夫々を実行し、前記表示処理として、貯留状態表示用の表示処理、加温条件表示用の表示処理、および、投入可能量表示用の表示処理を実行するように構成されている。尚、表示処理においては、入力される各種情報を表示装置8に表示することも行うように構成されている。
【0027】
前記貯留状態判別用の判別処理は、複数の貯留ビン1の夫々について、それに投入されている穀粒の投入データに基づいて穀粒の品質を維持するための条件を満たす適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを判別するものであり、詳しくは、前記投入データが、貯留ビン1に通風される乾燥用空気の風量Mzを貯留ビン1に貯留された穀粒の全量(Tr+S1)にて除した風量比Mxと、貯留ビン1に貯留された穀粒全体の平均水分 (以下「全体水分Me」と記載する)であり、風量比Mxと全体水分Meとに基づいて、適正貯留状態であるか、非適正状態であるかを判別するように構成されている。さらに、非適正状態での非適正度合を複数の段階で判別するように構成されている。
詳述すると、荷受量S1及び荷受水分U1の荷受データが、新たに荷受する等によって更新されると、累積量Tr、荷受量S1、及び、風量Mzから風量比Mxを算出し、さらに、荷受けした穀粒と累積させている穀粒を合わせた全体の水分含有率となる全体水分Meを算出し、この全体水分Meから安全風量比W1を算出し、前記風量比Mxと前記安全風量比W1との比較結果と、前記全体水分Meと設定水分Ma(本実施形態では18%に設定)との比較結果によって、各貯留ビン1毎に荷受量S1が投入可能量Fであるか否かを判別するようになっている。また、この判別を2段階にて行うように、品質保持風量比となる3−4日間の安全風量比W1と1日間の安全風量比W2を算出し、これらの安全風量比W1、W2と風量比Mxを比較するようになっている。尚、投入可能量Fの演算方法については、図10に基づいて後述する。
さらに、気候の異なる地域での使用に対応するために、A地域、B地域の2つの地域を設定し、それぞれに適応した判別基準によって判別が行なわれるように、1日間の安全風量比について、さらに異なる算出方法によって、安全風量比を算出する。つまり、A地域の3−4日間の安全風量比とB地域の2−3日間の安全風量比とを、両地域の品質保持風量比Wとして安全風量比W1とし、A地域の1日間の安全風量比を安全風量比W2とし、B地域の1日間の安全風量比を安全風量比W3としている。
そして、全体水分Meが18%以下、あるいは、全体水分Meが18%を越えていても、A地域及びB地域とも風量比Mxが安全風量比W1を確保できる荷受量であれば、その荷受量S1が投入可能量Fであり正常と判断し、全体水分Meが18%を越え、投入可能量Fを超えていても、風量比MxがA地域では1日間の安全風量比W2を確保でき、B地域では1日間の安全風量費W3を確保できる荷受量S1であれば、要注意と判断し、全体水分Meが18%を越え、風量比MxがA地域では1日間の安全風量比W2を確保できず、B地域では1日間の安全風量比W3を確保できない荷受量S1であれば、品質事故に至る可能性が高いものと判断する。尚、上述の地域設定は、操作部7Aにて入力できるようになっている。
【0028】
前記貯留状態表示用の表示処理は、図3に示すように、複数の貯留ビン1の夫々に対応するビン表示部bを一覧状態(101c参照)で表示し、且つ、前記判別処理の判別結果に基づいて適正貯留状態であるか、非適正状態であるかにより、ビン表示部b夫々の表示色を異ならせるように、前記表示装置8を表示作動させるように構成されている。また、非適正状態での非適正度合に応じてビン表示部bの表示色を異ならせるように構成されている。さらに、ビン表示部bを一覧表示する一覧表示と、複数の貯留ビン1のうちの選択される6個の貯留ビン1に貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示部101aで表示する状態表示とを併せて行うように構成され、そして、その状態表示において、適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかにより、ビン表示部bと同じ色で数値表示部101aの表示色を異ならせるように構成されている。
【0029】
前記加温条件判別用の判別処理は、複数の貯留ビン1の夫々について、それに投入されている穀粒の投入データ、並びに、乾燥用空気としての外気の温度t及び湿度φに基づいて、前記バーナ16を燃焼作動させる加温作動条件を満たしているか否かを判別するものであって、詳しくは、前記投入データが、前記貯留ビンに貯留された穀粒全体の平均水分Meであり、前記平均水分Meが設定水分Md以上で、且つ、前記乾燥用空気にて穀粒を乾燥したときの平衡水分(以下「送風平衡水分Mew」と記載する)が設定水分Mbよりも高いときに、前記送風平衡水分Mewに較べて前記平均水分Meが設定値Mc以上高くないと、前記加温作動条件を満たしていると判別するように構成されている。
具体的には、乾燥管理装置7が、荷受量S1、荷受水分U1、累積量Tr、及び、平均水分Wr等の投入データ、または、送風温度t・湿度φ情報が更新されると、全体水分Me及び送風平衡水分Mewを算出し、全体水分Meが18%以下、あるいは、全体水分Meが18%を越えていても、(全体水分Me―2)<送風平衡水分Mewでなければ、加温が不要な状態と判断し、全体水分Meが18%を越え、且つ、(全体水分Me―2)<送風平衡水分Mewであれば、加温が必要な状態であると判断し、さらに、送風平衡水分Mewが10%以下であれば、加温が不要な状態であると判断するようになっている。
【0030】
前記加温条件表示用の表示処理は、図3に示すように、上述した加温条件判別用の判別処理の判別結果を加温作動警告用表示部101eに表示する加温作動表示と、前記貯留状態表示用の表示処理にて述べた、貯留ビン1に貯留されている穀粒の状態を表す数値を数値表示部101aで表示する状態表示とを併せて行うように構成されている。つまり、複数の貯留ビン1のうちの選択される6個の貯留ビン1について、前記加温作動表示と前記状態表示とを行うように構成されている。さらに、前記加温作動警告用表示部101eの表示色を、加温作動を必要とする警告状態と非警告状態とで異ならせるように構成されている。
【0031】
前記投入可能量演算用の演算処理は、複数の貯留ビン1の夫々について、それに対して投入された穀粒全体の平均水分Meと、予測される乾減率とから、前記貯留ビン1に貯留されている穀粒全体の設定時間後の予測水分Mpを求め、且つ、前記貯留ビン1に対して前記設定時間後において新たに投入する穀粒の投入可能量Fを、前記予測水分Mpであるときに穀粒の品質を適正に維持することが可能な条件を満たす穀粒量として求めるものであって、詳しくは、前記投入可能量Fとしての、前記予測水分Mpであるときに穀粒の品質を適正に維持することが可能な条件を満たす穀粒量を、貯留された穀粒全体の平均水分Meを前記貯留ビン1に貯留された穀粒の全量にて除した風量比Mxが、前記貯留ビン1に貯留された穀粒全体の平均水分Meに対応して予め設定した品質保持風量比Wを満足する穀粒量として、新たに投入される穀粒の水分の変化に応じて求めるように構成され、その際、新たに投入される穀粒の水分を複数段階に変化させた複数の前記投入可能量Fを求めるように構成されている。さらには、前記予測水分を変化させたときの前記投入可能量Fを、予測水分変化投入可能量Fsとして求めるように構成され、加えて、前記予測水分Mpを複数段階に変化させたときの複数の前記予測水分変化投入可能量Fsを求めるように構成されている。さらに加えて、前記設定時間を変更設定する変更設定手段にて設定された設定時間に基づいて、前記予測水分Mp及び前記投入可能量Fを求めるように構成されている。ちなみに、変更設定手段は、乾燥管理装置7に対する操作部7Aにて構成される。そして、本実施形態では、設定時間後の時刻を入力するようになっている。尚、前述した予測される乾減率は、図11のグラフに示すように、風量比Mxに対応するものであって、風量比Mxに対応する乾減率が予め記憶されており、乾燥管理装置7が風量比Mxに対応する乾減率を求めることになる。
【0032】
前記投入可能量表示用の表示処理は、前記投入可能量演算用の演算処理にて求めた前記予測水分Mp及び前記投入可能量Fを表示させるように前記表示装置8を表示作動させるものであって、詳しくは、図6に示すように、前記複数の貯留ビン1のうちの選択した6個について、前記予測水分Mp及び前記投入可能量Fを一覧状(101b参照)に表示するように構成されている。その際、前記投入可能量Fを、新たに投入される穀粒の水分の変化と対応付けて表示させるように構成され、加えて、前記複数の投入可能量Fを、新たに投入される穀粒の複数段階の水分と対応付けて一覧状態で表示するように構成されている。さらに加えて、表示状態選択手段の選択情報に基づいて、前記投入可能量Fを表示する投入可能量表示状態と、図7に示すように、前記予測水変化投入可能量Fsを表示する投入可能量表示状態とに切り換えるように構成される共に、前記複数の予測水分変化投入可能量Fsを、複数段階の前記複数段階の予測水分Mpと対応付けて一覧状態で表示するように構成されている。
前記表示状態選択手段は、操作部7Aの操作により、表示画面上の水分予測欄18をクリックすることに行えるものであって、操作部7Aにて構成される。
【0033】
次に、図3〜図7に基づいて、乾燥管理装置7の表示処理について説明を加える。
乾燥管理装置7は、図3に示すように、起動時の初期画面として乾燥支援基本情報画面101を表示するようになっている。この乾燥支援基本情報画面101では、複数貯留ビン1のうちの選択される複数の貯留ビン1に貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示する各貯留ビン毎の数値表示部(以下、貯留状態表示部と記載)101aに荷受量S1、荷受水分U1、累積量Tr、平均水分Wr、送風空気の温度t、湿度φ、及び、送風平衡水分Mewが数値表示され、また、貯留状態表示部101aに表示されている各貯留ビンに対応して、作業日当日に投入可能な穀粒の量となる本日の荷受可能量一覧表101bが表示され、さらに、複数の貯留ビン1夫々の貯留状態を表示するビン表示部を一覧状態で表示する警告用一覧表101c、及び、外気の温度X1・湿度X2、並びに、平衡水分X3の一覧表104が表示されるようになっている。
乾燥支援基本情報画面101では、各貯留ビン1毎の貯留状態表示部101a及び本日の荷受可能量一覧表101bは、上記した如く、6個の貯留ビン1について表示されるようになっており、画面上で順送りさせることによって、他の貯留ビン1についての表示ができるようになっている。
警告用一覧表101cは、上述した如く、貯留状態表示部101a及び投入可能量一覧表101bと同一画面上にて、全貯留ビン1に相当する20個の貯留ビン1に対する表示がされるようになっている。
【0034】
本日の荷受可能量一覧表101bの表示内容について、説明を加えると、各貯留ビン毎の本日の荷受可能量一覧表101bでは、累積量Tr、平均水分Wrに基づいて、本日中に、貯留ビン1に投入可能な穀粒の量を、投入する穀粒の投入可能量Fを、新たに投入する穀粒の水分を16%から29%まで1%刻みで分けて算出し、一覧表示するようになっている。
【0035】
また、前記乾燥支援基本情報画面101では、前述したように、乾燥管理装置7が判別した、各貯留ビン1へ供給される穀粒の量が投入可能量Fであるか否かのその判別結果を、各貯留ビン毎の穀粒の貯留状態表示部101aと警告用一覧表101cの背部表示色を異ならせることによって、各貯留ビン1の状態が認識できるようにもなっている。
【0036】
つまり、前述した如く、全体水分Meが18%以下、あるいは、全体水分Meが18%を越えていても、A地域及びB地域とも風量比Mxが安全風量比W1を確保できる荷受量S1であれば、その荷受量S1が投入可能量Fであり正常と判断されることになり、その場合には、図4(イ)に示すように、前記背部表示色を緑色で表示し、平均水分Meが18%を越え、投入可能量Fを超えていても、風量比MxがA地域では1日間の安全風量比W2を確保でき、B地域では1日間の安全風量費W3を確保できる荷受量S1であれば、要注意と判断されることになり、その場合には、図4(ロ)に示すように、前記背部表示色を黄色で表示し、平均水分Meが18%を越え、風量比MxがA地域では1日間の安全風量比W2を確保できず、B地域では1日間の安全風量比W3を確保できない荷受量S1であれば、品質事故に至る可能性が高いものと判断されることになり、その場合には、図4(ハ)に示すように、背部表示色を赤色で表示する。
【0037】
さらに、乾燥支援基本情報画面101では、前述の如く、乾燥管理装置7が判別した、各貯留ビン1についての乾燥装置Aからの乾燥用空気を加温する必要があるか否かの判別結果を、対応する貯留ビン1の穀粒の貯留状態情報表示部101aの下段のメッセージ表示部左側の加温作動警告用表示部101eに背部表示色を異ならせてメッセージ表示し、さらに、警告用一覧表101cにて、相当するビン表示部の背部表示色を同様に異ならせて表示するようになっている。
つまり、全体水分Meが18%以下、あるいは、全体水分Meが18%を越えていても、(全体水分Me―2)<送風平衡水分Mewでなければ、加温が不要な状態と判断されることになり、その場合には、警告の表示は行わずに通常画面を表示させておき、全体水分が18%Meを越え、且つ、(全体水分Me―2)<送風平衡水分Mewであれば、加温が必要な状態であると判断されることになり、その場合には、図5(イ)に示すように、加温作動警告用表示部101eに「加温運転」という文字を背部表示色を黄色にした警告表示を行い、警告用一覧表101cの相当するビン表示部の背部表示色を黄色に変更し、さらに、送風平衡水分Mewが10%以下であれば、加温が不要な状態であると判断されることになり、その場合には、図5(ロ)に示すように、加温作動警告用表示部101eに「加温停止」という文字を背部表示色を赤色にした警告表示を行い、警告用一覧表101cの相当するビン表示部の背部表示色を赤色に変更するようになっている。
【0038】
つまり、この穀粒貯留設備では、乾燥支援基本情報画面101にて、貯留状態表示部101a及び警告用一覧表101cを表示させ、乾燥管理装置7が上述したような管理処理及び表示処理を行うことによって、複数個ある貯留ビン1のうちの、選択されている6個の貯留ビン1についての穀粒の貯留状態の数値情報と加温指示情報、及び、全ての貯留ビン1について適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを、同一画面上で同時に確認することができるものとなっている。
【0039】
乾燥支援基本情報画面101にて、前述の如く水分予測欄18を選択操作することによって、図6に示すように、水分予測画面102を表示するようになっている。
この水分予測画面102では、各貯留ビン1毎の乾燥作業の進行に伴う穀粒の水分の変化を予測して、各貯留ビン毎の設定時間後(例示図では9:00)の予測水分値Mpと、その設定時間において新たに投入する穀粒の投入可能量Fを、前記予測水分値Mpに基づいて、後述する投入可能量Fの演算手順に従って、新たに投入する穀粒の水分を16%から29%まで1%刻みに分けて算出し、一覧表示されるようになっている。さらに、いずれか1個の貯留ビン1を表示対象とするように選択操作することによって、図7に示すように、その選択された貯留ビン1における予測水分変化投入可能量Fsを表示する荷受可能量一覧表103が表示され、貯留されている穀粒の水分の変化を16%から28%まで1%刻みで設定し、夫々の水分値に対応して、新たに投入する穀粒の荷受可能量Fを、新たに投入する穀粒の水分を16%から29%まで1%刻みに分けて算出し、一覧表示されるようになっている。
【0040】
次に、全体水分Me、安全風量比W1〜W3、風量Mz及び投入可能量Fの演算手順の詳細について説明する。
本実施形態では、図8に示すように、風量Mz及び風量比Mxを算出するときに、貯留ビン1内の累積されて貯留されている乾燥後の穀粒の累積量Tr(以下「荷受実量Tr」と記載する)、及び、攪拌装置11によって攪拌されない領域の穀粒の累積量Br(以下「乾燥後未攪拌域量Br」と記載する)を除いた、攪拌装置11によって攪拌される攪拌領域の穀粒の累積量Ar(以下「乾燥後攪拌域量Ar」と記載する)を算出し、これらに基づいて風量Mz及び風量比Mxを求めている。
まず、この荷受実量Tr及び乾燥後攪拌域量Arの算出方法について説明する。尚、乾燥前の穀粒の累積量(以下「前荷受量Tn」と記載する)が、乾燥前の攪拌装置11によって攪拌されない領域の穀粒の累積量(以下「乾燥前未攪拌域量Bn」と記載する)より多い場合についてのみ説明する。他に、乾燥前の攪拌装置11によって攪拌される領域の穀粒の累積量を「乾燥前攪拌領域量An」、乾燥前の平均水分を「前荷受水分Wn」、乾燥後の攪拌装置11によって攪拌される攪拌領域の穀粒の平均水分を「平均水分Wr」と記載する。
【0041】
乾燥後未攪拌域量Brは、常に乾燥風が通過し、15%程度まで乾燥すると想定する。また、攪拌装置11の攪拌スクリュー20の高さが一定であることから、貯留ビン1内の未攪拌域高さは、定数として求められる。従って、乾燥後未攪拌領域量Brも、下記演算式にて定数として求められる。
Br=領域高さ×床面積×かさ密度
次に、前荷受水分Wn及び前荷受量Tnが荷受データより求められるので、乾燥前未攪拌域量Bn及び乾燥前攪拌領域量Anを下記演算式にて求める。
Bn=Br×(100−15)/(100−Wn)
An=Tn−Bn
そして、乾燥前未攪拌域量Bnと乾燥後未攪拌域量Brの乾燥前後の量の関係が、乾燥前攪拌領域量Anと乾燥後攪拌域量Arにも成り立つので、乾燥後攪拌域量Arが下記演算式にて求められる。
Ar=An×(100−Wn)/(100−Wr)
さらに、乾燥後未攪拌域量Brが定数として求められているので、荷受実量Trが下記演算式にて求められる。
Tr=Ar+Br
このようにして求めた乾燥後攪拌域量Ar、累積実量Trより、全体水分、安全風量比W1〜W3、風量Mz及び投入可能量Fを以下の手順にて算出する。
【0042】
まず、全体水分Meは、以下の演算式によって求められる。
Me=(S1×U1+Ar×Wr)/(S1+Ar)
そして、送風平衡水分Mewは、以下の計算式より算出される。
温度:t[℃]
湿度:φ[%]
送風平衡水分:Mew[%]
【0043】
次に、安全風量比W1〜W3の演算手順を、以下に説明する。
品質保持風量比Wである安全風量比W1は、下記演算式によって求められる。
W1=8.24×10-5×e(0.3279 ×Me)
また、A地域の1日間の安全風量費W2は、下記演算式によって求められる。
a=−0.014×Me2 +0.8597×Me−14.122
W2=10a
B地域の1日間の安全風量費W3は下記演算式によって求められる。
a=−0.0103×Me2 +0.6796×Me−11.19
W3=10a
【0044】
次に、風量Mzの演算手順を、図9のフローチャートに基づいて、以下に説明する。
ステップ#21において、下記夫々の演算式にて、風量を仮定するとともに、変化量を設定する。
仮定風量=最大風量/2
変化量=風量/2
続いて、ステップ#22において、送風機17における風量と静圧の関係を示す性能曲線(図示せず)に基づいて、ステップ#21で仮定した風量のときの送風機静圧を求める。
続いて、ステップ#23において、下記の演算式にて、空塔速度を求める。
空塔速度=仮定風量÷床面積
続いて、ステップ#24において、空塔速度と穀粒の堆積高さ1m当たりの静圧との関係に基づいて、ステップ#23で求めた空塔速度のときの前記静圧を求める。尚、前述した穀粒の堆積高さ1m当たりの静圧は、図12のグラフに示すように、空塔速度に対応するものであって、空塔速度に対応する乾減率が予め記憶されており、乾燥管理装置7が空塔速度に対応する前記静圧を求めることになる。
続いて、ステップ#25において、下記の演算式にて、穀粒の静圧を求める。
穀粒の静圧=(堆積高さ+床面通風抵抗)×堆積高さ1m当たりの静圧
続いて、ステップ#26で、送風機静圧が穀粒の静圧よりも小さいときは、ステップ#27において、下記夫々の演算式にて、仮定する風量を減少するとともに、変化量を変更設定する。
仮定風量=仮定風量−変化量
変化量=変化量/2
また、ステップ#26で、送風機静圧が穀粒の静圧よりも大きいときは、ステップ#28において、下記夫々の演算式にて、仮定する風量を増加するとともに、変化量を変更設定する。
仮定風量=仮定風量+変化量
変化量=変化量÷2
上記の手順を、ステップ#26で送風機静圧と穀粒の静圧とが等しくなるまで、あるいは、ステップ#29で変化量が1m3 /分よりも小さくなるまで繰り返す。そして、ステップ#26において、ステップ#22で求めた送風機静圧と穀粒の静圧とを比較し、両者が等しいとき、あるいは、ステップ#29で変化量が1m3 /分よりも小さくなったときに仮定した風量を求める風量Mzとする。
【0045】
次に、投入可能量Fの演算手順について、図10のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステップ#1にて、下記夫々の演算式にて、投入可能量Fを仮定するとともに、変化量を設定する。
仮定投入可能量=(ビン容量−Tr)/2
変化量=仮定投入可能量/2
次に、ステップ#2において、下記夫々の演算式にて、堆積高さを求める。
堆積高さ=(Tr+仮定投入可能量)/かさ密度/床面積
続いて、ステップ#3において、風量演算サブルーチンにて、演算した堆積高さのときの風量Mzを演算し、ステップ#4において、下記の演算式にて、総投入量に対する風量比Mxを求める。尚、前述したように、乾燥後攪拌域量Arに基づいて算出する。
Mx=Mz/(Ar+仮定投入可能量)
次に、ステップ#5にて、攪拌域水分Meを求める。
Me={仮定投入可能量×U1+Ar×Wr}/(Ar+仮定投入可能量)
この攪拌域水分Meから、品質保持風量比Wを下記演算式より求める。この品質保持風量比Wは、上述したように、安全風量比W1であるので、安全風量比W1を算出する演算式によって求められる。そして、ステップ#7において、ステップ#4で求めた風量比Mxが品質保持風量比Wよりも小さいときは、ステップ#8に進み、下記夫々の演算式にて、仮定する投入可能量を増加するとともに、変化量を変更設定する。
仮定投入可能量=仮定投入可能量+変化量
変化量=変化量/2
また、ステップ#7において、ステップ#4で求めた風量比Mxが品質保持風量比Wよりも大きいときは、ステップ#9に進み、下記夫々の演算式にて、仮定する投入可能量を減少するとともに、変化量を変更設定する。
仮定投入可能量=仮定投入可能量−変化量
変化量=変化量/2
上記の手順を、ステップ#7において、ステップ#4で求めた風量比Mxと品質保持風量比Wとが等しくなるまで、あるいは、ステップ#10で変化量が50kgよりも小さくなるまで繰り返す。そして、ステップ#7において、この品質保持風量比Wとステップ#4にて求めた風量比Mxとを比較し、両者が等しいとき、あるいは、ステップ#10で変化量が50kgよりも小さくなったとき仮定した投入可能量を求める投入可能量Fとする。
【0046】
次に、この穀粒貯留設備の運転手順について説明する。
この穀粒貯留設備では、上述した如く、24時間を1サイクルとして、穀粒を投入する投入時間帯(例えば、午前8時からその日の正午まで)と、穀粒を乾燥する乾燥時間帯 (例えば、その日の正午から次の日の午前8時まで)とが設定されている。
【0047】
投入時間帯においては、表示装置8に表示された乾燥支援基本情報画面101にて各貯留ビン1の貯留状態を確認しながら、作業者が投入する貯留ビン1を選択し、荷受計量装置2にて荷受けした穀粒が、選択された貯留ビン1に、前日までに投入されて貯留されている穀粒の上に上積みする状態で順次投入される。ここで、各貯留ビン毎の穀粒の貯留状態表示部あるいは警告用一覧表にて、注意、あるいは、警告の表示がされると、その表示のあった貯留ビン1への穀粒の投入を減らす、あるいは、中止することになる。
そして、貯留ビン1が穀粒で満杯になる、あるいは、穀粒をすべて投入し、乾燥時間帯になると、操作盤9にて、乾燥運転を行う貯留ビン1を選択し、通風モードを選択することによって、選択された貯留ビン1では、送風機17から外気が貯留ビン1内の穀粒に通風され、攪拌装置11によって貯留空間Di内の穀粒が攪拌されて、次の日の投入時間帯までの間乾燥運転が行われる。また、乾燥運転中に、加温運転の警告が表示されると、バーナー16による送風機17からの通流空気を加温する操作を行い、加温停止の警告が中止されると、バーナー16による送風機17からの通流空気の加温を停止させる操作を行うようにする。
【0048】
尚、この穀粒貯留設備は、詳述しないが、以下の構成も備えている。
その日の荷受けが終了した時点で、あるいは、投入時間帯の終了時点で、荷受データを確定させる操作を行うことによって、各作業日の荷受データが、乾燥管理装置7内の記憶手段にて保存されるようになっている。その保存されたデータは、作業履歴確認や、データ編集ができるようにもなっている。
【0049】
上述したように、貯留ビン1毎の水分が測定されるようになっており、この測定された貯留ビン1毎の水分が、表示装置8に貯留ビン1毎に表示されるようになっている。この水分の測定は、手動操作によって随時測定できるようになっており、さらに、時刻、測定時間を設定することによって、自動的に水分測定が行われるようになっており、また、水分測定データの補正を行うことも可能となっているので、所定時間毎に補正されたデータを自動的に表示装置8に表示することができる。
また、測定された水分データは、過去所定期間分を制御装置内の記憶手段にて保存されるようになっている。この保存されたデータは、作業終了後などにデータ分析するために、一定期間(例えば、1週間)分のデータ一覧表、あるいは、グラフを表示及び印刷等の編集機能を備えており、統計データを確認できるようになっている。
【0050】
複数種の貯留ビン1と乾燥装置Aによって構成された穀粒貯留乾燥設備に対応できるように、貯留ビン1及び乾燥装置Aの仕様が複数設定できるようになっている。つまり、仕様の異なる貯留ビン1及び乾燥装置Aによって構成されている穀粒貯留設備においても、その複数種の仕様を設定しておくことによって、上述したような乾燥管理ができるようになっている。
【0051】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(1)上記実施形態では、安全風量比を2段階に分けて算出し、貯留状態の非適正度合いを2段階で判別するようにしたが、これに限定されるものではない。また、対応する地域数を2地域で設定したが、これに限定されるものではない。
たとえば、非適正度合いは、3段階以上に設定しても良い。さらに、対応する地域数も、3地域以上に設定してもよい。
【0052】
(2)上記実施形態では、乾燥用空気をバーナーにて加温する場合について例示したが、乾燥用空気はこれ以外に、例えば、ヒートポンプや除湿器にて乾燥及び除湿するようにしてもよい。
【0053】
(3)上記実施形態では、投入可能量の判別結果について、表示装置に表示されている各表示部の背部表示色が異なるようにしたが、これに限定されるものではない。
例えば、水分計測の異常、機械異常などについても、同様に表示装置に表示されている各表示部の背部表示色が異なるように表示するようにしてもよい。
【0054】
尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】穀粒貯留設備の概略構成図
【図2】乾燥貯留部の主要構成を示す断面図
【図3】表示装置における乾燥支援基本情報画面を示す図
【図4】表示装置における乾燥支援基本情報画面の貯留状態表示部における穀粒の投入可能量判別結果の表示内容を示す図
【図5】表示装置における乾燥支援基本情報画面の貯留状態表示部における加温運転指示の表示内容を示す図
【図6】表示装置における水分予測画面を示す図
【図7】表示装置における荷受可能量一覧表画面を示す図
【図8】荷受量の変化を示す図
【図9】風量を求める手順を示すフローチャート
【図10】投入可能量を求める手順を示すフローチャート
【図11】風量比と毎時乾減率との関係を示す図
【図12】空塔速度と籾の堆積高さ1m当たりの静圧との関係を示す図
【符号の説明】
1 貯留ビン
1b 床部
7 管理手段
8 表示手段
101a 数値表示部
A 乾燥用空気通風手段
b ビン表示部
Me 貯留ビンに貯留された穀粒全体の平均水分
Mx 風量比
Mz 風量
Claims (3)
- 床部が通気自在で、上部から穀粒を投入可能に構成された複数の貯留ビンと、穀粒の乾燥用空気を前記貯留ビンの床部から通風する乾燥用空気通風手段と、運転を管理する管理手段とが設けられた穀粒貯留設備であって、
前記管理手段は、
前記複数の貯留ビンの夫々について、それに投入されている穀粒の投入データに基づいて穀粒の品質を適正に維持するための条件を満たす適正貯留状態であるか、非適正貯留状態であるかを判別する判別処理、及び、前記複数の貯留ビンの夫々に対応するビン表示部を一覧状態で表示し、且つ、前記判別処理の判別結果に基づいて前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかにより、前記ビン表示部夫々の表示色を異ならせるように、ビン表示用の表示手段を表示作動させる表示処理を実行するように構成され、
前記管理手段は、前記表示処理において、前記ビン表示部を一覧表示する警告用一覧表示と、前記複数貯留ビンのうちの選択される一つ、又は、複数の貯留ビンのうちから、他の貯留ビンを残す状態で選択される複数の貯留ビンに貯留される穀粒の状態を表す数値を数値表示部で表示する状態表示とを併せて行うように構成され、且つ、前記状態表示において、前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかにより、前記ビン表示部と同じ色で数値表示部の表示色を異ならせるように、前記表示手段を表示作動させるように構成されている穀粒貯留設備。 - 前記管理手段は、
前記判別処理において、前記非適正貯留状態での非適正度合を複数の段階で判別するように構成され、且つ、前記表示処理において、前記非適正貯留状態での非適正度合に応じて前記ビン表示部の表示色を異ならせるように構成されている請求項1記載の穀粒貯留設備。 - 前記投入データが、前記貯留ビンに通風される乾燥用空気の風量を前記貯留ビンに貯留された穀粒の全量にて除した風量比と、前記貯留ビンに貯留された穀粒全体の平均水分であり、
前記管理手段が、前記判別処理において、前記風量比と前記平均水分とに基づいて、前記適正貯留状態であるか、前記非適正貯留状態であるかを判別するように構成されている請求項1又は2記載の穀粒貯留設備。
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