JP3644643B2 - 抄紙機におけるドライパートの汚染防止方法 - Google Patents
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ドライパートには、湿紙の乾燥のため複数の円筒状ドライヤ等が備えられており、抄 紙機の多くの部分を占める。
抄紙機において、未だ乾燥されていない湿気を含む紙が、ドライパートに供給されてくると、この紙は、カンバスによって、円筒状ドライヤ(通常、内部に蒸気等を通すことにより加熱される構造となっている)の表面に押し付けられて乾燥される。
ところで、紙には、パルプ原料自体に含まれるピッチ、タール分、各種紙が含有する添加薬剤、填料粉等の異物粉が含まれている。
特に最近は、リサイクルの観点から古紙材が原料に多く配合されるようになり、この他に、微細繊維、ホットメルト、酢酸ビニル系の背のりピッチ等の異物粉の混入が多くなる傾向にある。
このような含有物は、紙の表面に突出した状態にあるもの程、比較的簡単に円筒状ドライヤ表面に固着され易い。
円筒状ドライヤ上に固着した汚染物質を除去するために、通常、円筒状ドライヤの付属装置であるドクターの刃でかき取る方法が用いられている。
しかし、ドクター刃とドライヤ表面の摩擦により円筒状ドライヤ表面はさらに粗くなり、この粗面の凹凸部に上記の異物粉が熱や圧力を受けて入り込み固着し問題となる。
1、円筒状ドライヤ表面の熱伝導率が低下し紙の乾燥率が低下する。
2、紙表面が剥がれる、いわゆる「ピッキング」現象を生じ易くなる。
3、ドライヤ上で成長した異物粉が紙に再転移する等の欠点が発生する。
4、紙が円筒状ドライヤ表面に焼き付き、断紙を生ずる。
5、製造される紙表面の凹凸、毛羽立ち等の原因となる。
6、紙粉が製品に混入されたり、表面紙力が低下するため、特に印刷の際は紙粉が紙面へのインクの転写を阻害する、いわゆる「白抜き」現象となって現れる。
7、円筒状ドライヤの清掃の定期回数が増加し、コスト増となる。
等、の具体的な欠点が生ずる。
しかし、どちらの対策も表面処理された円筒状ドライヤを長期間使っていると、その処理面が徐々に摩擦により減耗していき、汚染防止の効果が大きく低下してくる。
そのため新しい円筒状ドライヤと交換することが必要となり、結果的に取替え時間のロスが生じ、又余計な費用が嵩む。
従って、長期間の効果は期待できなく、連続運転に適さない。
この方法は極めて効果的であるが、抄紙機の機種によってはドライパート領域の空間的な余裕が必ずしも十分ではない。
そして、中には汚染防止剤の噴霧塗布する装備(噴霧塗布装置)を配置する設置空間を確保できない場合もある。
このような状態では、円筒状ドライヤ表面の汚染防止効果にムラが生じて、異物粉が固着するのを有効に防止することはできず、必ずしも確実な汚染防止対策とはなっていない。
更に、先述したように原料として古紙の配合が増えているが、近年の古紙には粘着物質(接着剤や粘着剤等)異物が多く含有されてきており、円筒状ドライヤ表面に転移し易くなる傾向がある。
即ち、本発明の目的は、抄紙機において、簡単な方法で且つ抄紙機に散布空間が無くてもドライパートの領域、少なくとも円筒状ドライヤ表面の汚染を有効に防止することができる方法を提供することである。
ドライパートに入る前の状態にある紙体の表面に、汚染防止剤を供給付与し続けることにより、紙体の表面の微細な異物粉を封じ込むように封止膜が、常時、形成維持される。
この封止膜により、紙体から、ドライパート中の紙体の接触部、例えば円筒状
また、円筒状ドライヤに直接、汚染防止剤を噴霧塗布する場合のように、塗布ムラが生じて汚染防止効果が不確実となるようなことがなく、汚染防止が確実に遂行される。
更に、ドライパートに入る前の状態にある紙体に対して、汚染防止剤を連続的に供給付与し、更に、抄紙機のドライパートにおける紙体の接触部、例えば、ドライヤ、カンバス、カレンダーロール等に対し連続的に供給付与した場合は、装置全体の汚染防止効果をより向上させることができる。
本発明は、この抄紙機のドライパートに送り込まれる紙体に対して連続的に汚染防止剤を供給付与することで、結果的にドライパートにて紙体が接触する部分、例えば円筒状ドライヤ或いはカンバスの汚れを防止することができるというものである。
ドライヤパートに汚染防止剤を供給付与する装置を配置するための空間がなくても、十分効果を得ることが可能である。
通常、抄紙機にはプレスパートPに続いて乾燥部分(ドライパートD)が設置されており、この部分は、加熱した円筒状のドライヤD1・・・、該ドライヤに紙体Wを押し付けるカンバスK1・・・、該カンバスを案内するカンバスローラ等が備わっている。
なおプレスパートPには、プレスロールP1・・・、該プレスロールに紙体Wを押し付けて吸水するフェルトF2・・・が備わっている。
なお、この図の場合は、案内ローラとしてドライパートに入る直前に配置されているプレスロールを利用している例を示している。
汚染防止剤T1が付与された紙体Wは、プレスパートPに入ってプレスロールによって圧搾脱水され、その後、ドライパートDに送られて加熱乾燥される。
汚染防止剤槽3から塗布ロール2を介して紙体Wに汚染防止剤Tが塗布されるものである。
この場合、ドライパートDに最も近い位置に設置されたフェルトF4に対して汚染防止剤T1の希釈液を、例えば全幅の噴霧ノズルN(いわゆるスプレーノズル)で塗布して、それを紙体Wに転移させる。
この図においては、汚染防止剤T1は、紙体Wの裏面側に転移付与されることとなる。
上述した図1、図2及び図3の方法は、間接的に紙体Wに汚染防止剤Tを供給付与する方法を示した。
ここでの汚染防止剤を供給付与する方法は、全幅の噴霧ノズルで汚染防止剤Tの希釈液を供給付与する。
なお、この図4の噴霧ノズルNを配置した領域や、図2のロールコータを配設した領域は、通常の抄紙機においてはドライパートと異なって、比較的、十分な自由空間が形成されている。
さて、本発明で使用される具体的な汚染防止剤としては、オイル又はポリマーが採用される。
オイルとしては、例えば、鉱物油、植物油、動物油、合成油(シリコン油等を含む)等が好適である。
これらは、単独又は組み合わせて使用させる。
またドライヤ表面が高温(50℃〜120℃)に加熱されていることから、この温度で変性しない種類のオイルが選択される。
なお、界面活性剤の混合比は、オイルに対して5〜70重量%が採用される
具体的な散布の仕方としては、抄速や紙幅、汚染防止剤の供給付与方法等の条件に応じて、適宜、オイルの400〜20万倍の水を加えた汚染防止剤を使用する。
エチレン性二重結合を有するカチオン性単量体としては、アミノ基、アンモニウム塩基、又は4級アンモニウム塩基とエチレン性二重結合を有する単量体が挙げられる。
効果的な面から、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルメチルクロリド塩、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩がより好ましい。
効果的な面から、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。
また非イオン性(ノニオン)単量体として、炭素原子の数が6〜50であるものが効果の観点からより好ましい。
更に好ましくは、炭素原子の数が、10〜40である物がより高い効果を示す。
なお、本発明における両性電解質高分子としては、カチオン単量体が4割以上の重量割合を示すものが好ましいものとされる。
ところで、本発明における紙体Wに供給付与するための汚染防止剤Tは、紙体の表面に付与されることにより、紙体がドライパートDに至った際に、本来の機能を発揮するものである。
すなわち、ドライパートDのドライヤ表面に対して、紙体Wが含有している(特に突出状態にある)異物粉Sが転移しないように作用する機能を有する。
紙体Wに汚染防止剤Tが供給付与されることにより、紙体の表面に突出状態にある異物粉Sを覆って封じ込む封止膜T1が形成される。
紙体Wがドライパートにおける接触部である円筒状ドライヤDの表面に接触した際、封止膜T1を介して接触するために、異物粉Sは直接、ドライヤ表面に接触しない。
このような遮蔽機能を有する封止膜T1は、汚染防止剤Tとしてオイルを用いた場合に円筒状ドライヤ表面に対して有効に作用する。
一方、紙体Wが円筒状ドライヤDの表面に接触した際、封止膜T1が紙体Wに拘束される機能、すなわち「接着機能」を発揮するために、封止膜T1が剥がれずに異物粉Sを強く捕捉する結果、ドライヤへの転移固着が防止される〔図5(B)参照〕。
以上、述べた原理は、対カンバスにも当然適用できことは当然である。
ここで、本発明において適用される紙体としては、汚染防止剤Tが上述したように封止膜を形成する必要があることから、テイシュを製造する抄紙機には適用ができないことは言うまでもない。
何となれば、テイシュのような紙質では、本発明のような封止膜を形成することはできないからである。
更に言うなら、その汚染防止剤の供給量は、紙体の表面に対して、0.00001〜10mg/m2 の範囲が採用される。
この範囲であれば、封止膜の形成状態や過剰膜による紙質への悪影響を防止する観点からみて効果的である。
本発明は、今まで述べたように、ドライパートに入る前の状態にある紙体に対して、汚染防止剤を連続的に供給付与せしめることが特徴であるが、更に、ドライパートにおける紙体の接触部(例えば、ドライヤ、カンバス、カレンダーロール、案内ロール等)に対して汚染防止剤を連続的に供給付与することにより、装置全体の汚染防止効果をより向上させることができる。
なお、カレンダーロールは、通常、ドライパートの最後部に配置されており、紙体を圧接して表面を平滑性等を向上させる部分である。
そのために、ドライヤ又はカンバスに汚染防止剤を連続的に供給付与することで、それら自体の汚染を防止する(ドライヤ及びカンバスの両方に供給付与することも当然良い)。
ここで、ドライパートにおける紙体の接触部に対して供給付与する汚染防止剤としては、例えば、鉱物油、植物油、動物油、合成油( シリコン油等を含む)、ワックス、ポリマー等が使用される。
また汚染防止剤は、紙幅に渡って均一に噴霧するため、予め400〜20万倍の水で希釈し、全幅の噴霧ノズルで散布する。
本発明は、今まで述べたように、ドライパートに入る前の状態にある紙体に対して、汚染防止剤を連続的に供給付与せしめることが特徴であるが、機能上、ドライパートの領域に含まれるとされる領域にあるロール(ペーパーロールやスムーザーロール)に同様な効果を得ることができる。
この場合、「ドライパートに入る前の状態にある紙体」とは、「ペーパーロールやスムーザーロールに達する前の紙体」のこととなる。
すなわち、ペーパーロールやスムーザーロールに達する前の紙体に対して、汚染防止剤を連続的に供給付与することが必要である。
そうすることにより、封止膜が形成され、紙体に含まれている異物粉が封じ込まれる。
この封止膜の形成により、紙体が接触する部分であるペーパーロールやスムーザーロールの表面に異物粉が直接接触しなくなり、それが転移することがなく、ペーパーロールやスムーザーロールの汚染が防止されることとなる。
〔実施例1〕
また、その間に生産した紙(ここでは白板紙)の品質についても視認検査を行った。
ここで使用した汚染防止剤は、植物油、界面活性剤、及び水とを混合した乳化水溶液(10%濃度、1.0g/cc)である。
5cc/分
なお、この量を予め水で、1000倍に希釈して1L/分で噴霧する。
ここで、通過する紙の面積は、200m2 (紙幅:2m、抄速:100m/分)であり、植物油の供給量は、単位面積当たり、5cc/分×1.0g/cc×0.1÷200m2 /分=0.0025g/m2 =2.5mg/m2 である。
8時間経過後、ドライパートを観察した結果、その円筒状ドライヤの表面に、付着物はなく、鏡面の如く性状を示している。
また、紙表面の光沢度は良好である。
〔実施例2〕
この場合、ドライヤー表面(図1におけるドライヤーD1の表面)に付着した紙粉等の汚れの量を測定した。
なお、この値が小さい程、ドライヤの表面の汚染防止効果が顕著であることを示す。
ここで、汚れの量は、プレスロールP4tに汚染防止剤を全く付与しなかった場合を1として指標表示した。
また、その間に生産した紙(ここでは下級印刷紙)の品質についても視認検査を行った。
3cc/分
なお、この量を予め水で、4000倍に希釈して14L/分で噴霧する。
ここで、通過する紙の面積は、3000m2 (紙幅:4m、抄速:750m/分)、両性電解質高分子の供給量は単位面積当たりは、3cc/分×1.0g/cc×0.02÷3000m2 /分=0.00002g/m2 =0.02mg/m2 である。
ここで使用した汚染防止剤としてはポリマーを使用し、汚染防止剤A、汚染防止剤B、汚染防止剤C、汚染防止剤Dの4種類のものを紙体に付与する実験を行った。
なお、汚染防止剤A〜Dは、2%ポリマー水溶液を使った。
汚染防止剤Aはカチオン性単量体とアニオン性単量体(重量比で5:5)の重合体を主成分とする水溶性ポリマーの2重量%水溶液であり、汚染防止剤Bはカチオン性単量体とアニオン性単量体(重量比で8:2)の重合体を主成分とする水溶性ポリマーの2重量%水溶液であり、汚染防止剤Cはカチオン性単量体、アニオン性単量体、ノニオン性単量体(重量比で5:2:3)の重合体を主成分とする水溶性ポリマーの2重量%水溶液である。
汚染防止剤Dはカチオン性単量体の重合体を主成分とする水溶性ポリマーの2重量%水溶液である。
カチオン性単量体;(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルベンジルクロリド塩
アニオン性単量体;メタクリル酸
ノニオン性単量体;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート
このプレスロール対するこれらの汚染防止剤の付与方法としては、第3図に示した散布ノズルNにより、上記各汚染防止剤を水で4000倍に希釈して状態で散布し、原液ベースで毎分3ccの割合で塗布した。
(結果)
8時間経過後、ドライパートを観察した結果、その円筒状ドライヤD1の表面に付着した汚れの量は、いずれも少なくなっており、汚染防止剤CではプレスロールP4tに汚染防止剤を全く付与しなかった場合の1/10にまで減少した。 また、この間に生産した紙表面の平滑度も良好であった。
本発明者らは、ワイヤーパートにあるワイヤーを介して汚染防止剤を間接的に紙体に塗布する実験を行ったが、同様な知見を得ている。
参考までにいうと、ワイヤーパートは、図7に示すように、プレスパートの前方に位置する領域である。
そして、ワイヤーwが案内ロールによって張架されており、このワイヤーwの上にヘッドボックスHから供給されたスラリー状のパルプが、薄膜状に載ってプレスパートに運ばれる。
その際、スラリー状のパルプに含まれる水分が脱水される。
本発明は、ドライパートにおいて紙体が接触する部分であれば、十分、適用可能であり、上述したドライヤ、カンバス、カレンダーロールの他、紙体を案内するペーパーロール等の汚染防止にも当然効果がある。
また他にもドライパートには紙体のガイドロール等の部品が装備されているが、このような部品に対しても適応することも当然可能である。
この場合は、当然、紙体がペーパーロールやスムーザーロールに達する前の紙体に対して、汚染防止剤を連続的に供給付与することとなる。
2…塗布ロール
3…汚染防止剤槽
D…ドライパート
D1〜8…ドライヤ
F2〜4…フェルト
K1〜3…カンバス
P…プレスパート
P1〜4…プレスロール
W…紙体
w…ワイヤー
T…汚染防止剤
N…噴霧ノズル
Claims (7)
- 抄紙機のドライパートにおける紙体の接触部の汚染を防止する方法であって、ドライパートに入る前の状態にある紙体に対して、エチレン性二重結合を有するカチオン性単量体とエチレン性二重結合を有するアニオン性単量体とを必須成分とする混合物を付加重合してなる両性電解質高分子であるポリマーを連続的に供給付与せしめることを特徴とするドライパートの汚染防止方法。
- 紙体に対してポリマーを連続的に供給付与せしめるのは、紙体に、塗布ローラを介して間接的に塗布するものであることを特徴とする請求項1記載のドライパートの汚染防止方法。
- 紙体に対してポリマーを連続的に供給付与せしめるのは、紙体に、案内ローラを介して間接的に塗布するものであることを特徴とする請求項1記載のドライパートの汚染防止方法。
- 紙体に対してポリマーを連続的に供給付与せしめるのは、紙体に、フェルト又はワイヤーを介して間接的に塗布するものであることを特徴とする請求項1記載のドライパートの汚染防止方法。
- 紙体に対してポリマーを連続的に供給付与せしめるのは、紙体に、噴霧ノズルを使って直接的に塗布するものであることを特徴とする請求項1記載のドライパートの汚染防止方法。
- 抄紙機のドライパートにおける紙体の接触部の汚染を防止する方法であって、ドライパートに入る前の状態にある紙体に対して、エチレン性二重結合を有するカチオン性単量体とエチレン性二重結合を有するアニオン性単量体とを必須成分とする混合物を付加重合してなる両性電解質高分子であるポリマーを連続的に供給付与し、更に、ドライパートにおける紙体の接触部に対してワックス又はオイルを界面活性剤で乳化したものを連続的に供給付与することを特徴とするドライパートの汚染防止方法。
- ドライパートにおける紙体の接触部がドライヤ、カンバス、カレンダーロール、スムーザーロール又はペーパーロールであることを特徴とする請求項6記載のドライパートの汚染防止方法。
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