JP3644620B2 - X線トポグラフィック装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料の結晶格子面に関して回折条件を満足するようなX線を試料の全面に照射し、そのときに得られる回折X線をX線フィルム等といったX線検出手段によって検出し、その検出結果に基づいて試料内部の結晶格子状態を観察するX線トポグラフィック装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上記のX線トポグラフィック装置に関しては、従来より、Berg-Barrett 法、Lang 法、その他各種の方法に基づくものが知られている。例えば、Lang法に基づくX線トポグラフィック装置では、図4に示すように、点焦点のX線源Fから発散するX線の高さ寸法を高さ制限スリット51によって制限し、さらにその幅寸法を幅制限スリット52によって制限し、こうして得られる長細い断面形状のX線ビームを試料Sに照射する。このときのX線の入射角度は、試料Sの内部の結晶格子面に対して回折条件を満足する角度θに設定される。試料Sの結晶格子面で回折したX線は、試料Sの後段に配置した散乱線規制スリット53を通ってX線フィルム54に到達してそのX線フィルム54を感光して回折像を結像する。
【0003】
以上の状態のまま試料S及びX線フィルム54を試料移動装置56を用いて一体的に矢印Aで示すように試料Sの表面に対して平行に移動する。これにより、長細い断面形状のX線ビームが回折条件を満足する状態のまま、試料Sの全面を走査し、その結果、試料Sの全面に関する回折X線像がX線フィルム54に得られる。そして、このX線像を観察することにより、試料S内の格子欠陥、格子歪み分布、格子歪みの形等といった格子状態を知ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の Lang 法の光学系からもわかるように、X線トポグラフィック装置では、図5に示すように、X線源Fから発散するX線の断面寸法を高さ制限スリット51及び幅制限スリット52によって制限する。この場合、幅制限スリット52の幅寸法は、X線源Fの大きさと回折条件を満足する要素等によって決定される。そして一方、高さ制限スリット51の寸法は、試料Sの最大径に合わせて決定される。
【0005】
ところが、X線トポグラフィック装置では、試料Sが矢印Aのように走査移動するので、スリット51及び52によって形成されるX線ビームが、図6に示すように試料Sの走査移動に従って試料Sの端部を照射するようになると、試料S以外の構造物、例えばホルダ57や回転機構等にX線が当たり、そこから回折線、散乱線等が発生して、測定に悪い影響を与えるという問題があった。
【0006】
このため従来は、試料Sが小さいときには、高さ制限スリット51を高さ寸法Lh の小さいものと交換したり、試料Sの大きさに対応した丸穴58を備えた散乱防止スクリーン59を試料Sと幅制限スリット52の間に配設して散乱線等の発生を防止しようとしていた。しかしながらこれらの方法では、試料Sが走査移動するときにその試料S以外の物体にX線が当たることを完全に防止することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、試料を走査移動させる方式のX線トポグラフィック装置において、試料以外の物体にX線が当たることを防止して、得られる回折X線像が散乱線等によって悪影響を受けるのを防止することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係るX線トポグラフィック装置は、X線を発散するX線源と、試料及びX線検出手段を一体的に走査移動させる試料移動手段と、X線源から発散して試料へ入射するX線に関して試料の走査移動方向と直角方向の高さを制限する高さ制限スリットとを有するX線トポグラフィック装置において、試料の走査移動に対応させて上記高さ制限スリットの高さ寸法を変化させることを特徴とする。
【0009】
このX線トポグラフィック装置によれば、X線照射領域の所の試料寸法が試料の移動に従って変化する場合でも、その寸法変化に合わせてX線照射領域自体を調整できるので、試料以外の部分にX線が当たってそこから散乱線等といったノイズ要素が発生することを防止できる。
【0010】
上記のX線トポグラフィック装置の望ましい実施態様として、以下のようないくつかの態様が考えられる。
(1)試料の移動量を検出する試料移動量検出手段と、高さ制限スリットの高さ寸法を変化させるスリット高さ変更手段と、そして、試料移動量検出手段の出力情報に基づいてスリット高さ変更手段を動作させる制御部とを含んでX線トポグラフィック装置を構成できる。また、
【0011】
(2)上記のスリット高さ変更手段は、モータによって駆動されて回転するネジ軸と、そのネジ軸にネジ嵌合すると共に高さ制限スリットを支持するスリットホルダとを含んで構成できる。また、
【0012】
(3)(a)円形状の物質を試料として供し、そして(b)高さ制限スリットの高さ寸法を、X線が試料の直径部分を照射するときに最も大きく、X線照射領域が直径部分から離れるに従って小さくするという制御態様を採ることができる。この制御態様によれば、半導体ウエハ等といった円形状の物質を測定対象とする場合に特に有利である。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るX線トポグラフィック装置の一実施形態を示している。ここに示すX線トポグラフィック装置は、図4に示すような Lang 法に基づく光学系配置を有するものである。このX線トポグラフィック装置は、点焦点のX線源Fと、発散制限スリット1と、上下一対の高さ制限スリット2と、幅制限スリット3と、試料Sを支持するための試料ホルダ4とを有する。試料Sよりも後段側に配設される光学要素は図4に示した装置と同じであるので、説明を省略する。
【0014】
一対の高さ制限スリット2は、それぞれ、スリットホルダ6によって支持され、それらのホルダ6はネジ軸7にネジ嵌合する。ネジ軸7はパルスモータ8の出力軸に連結され、そのネジ軸7の上半分は例えば右ネジによって構成され、その下半分はそれと反対の左ネジによって構成されている。パルスモータ8の入力端子は制御部9を構成するCPU(中央処理装置)11の出力ポートに接続されている。
【0015】
試料ホルダ4による試料Sの支持の仕方には種々の方法が考えられるが、本実施形態では、X線透過率の高い一対の高張力フィルム12の間に試料Sを挟むことによってその試料Sを支持する。試料ホルダ4は、スライドテーブル13の上に固定されており、そのスライドテーブル13は搬送装置14によって駆動されて矢印Aのように直線状に往復移動する。スライドテーブル13の矢印A方向の移動は、図4における試料S及びX線フィルム54の矢印A方向への走査移動方向に相当している。搬送装置14は、例えばその内部にパルスモータを内蔵し、そのパルスモータの入力端子はCPU11の出力ポートに接続される。
【0016】
制御部9は、CPU11及びメモリ16を含んで構成される。メモリ16の内部には、X線トポグラフィック撮影の手順に対応したプログラムを格納したメインプログラム領域、各種の演算の際のテンポラリファイルとして使用される記憶領域等といった各種のメモリ領域が含まれる。また、メモリ部16の中には図3に示すようなデータが演算式の形、あるいは、テーブル形式で格納されている。このデータは、横軸に試料Sの半径方向の移動量Dを示し、縦軸に高さ制限スリット2のスリット寸法の変位量δを示している。
【0017】
CPU11は、メモリ部16に格納されたプログラムに従ってX線トポグラフィック測定のための手順を演算し、その演算の中には、搬送装置14によって駆動されて移動する試料Sの移動量に対応させて高さ制限スリット2の高さ寸法を調節するための演算も含まれる。
【0018】
本実施形態では、試料Sの移動量を検出する試料移動量検出手段として、搬送装置14内のパルスモータへ供給するパルス数をカウントするカウント装置を用いる。また、高さ制限スリット2の高さ寸法を変化させるスリット高さ変更手段として、パルスモータ8によって駆動されるネジ軸7及びそのネジ軸7にネジ嵌合するスリットホルダ6を含む構造を用いる。また、試料移動量検出手段の出力情報に基づいてスリット高さ変更手段を動作させる制御部として、CPU11及びメモリ部16を含んで構成されるコンピュータを用いる。
【0019】
本実施形態のX線トポグラフィック装置は以上のように構成されているので、搬送装置14はCPU11からの指令に従ってスライドテーブル13を矢印A方向へ移動させ、これにより、試料SがX線フィルム(図4の符号54参照)と共に図4の矢印A方向へ走査移動する。このとき、CPU11は図3に示すデータに基づいて試料Sの半径方向移動量Dからスリット変位量δを演算する。そして、求められた変位量δに基づいてパルスモータ8に回転用パルス信号を供給し、これにより、ネジ軸7が所定角度だけ回転する。このネジ軸7の回転により、スリット2の高さ寸法Hが小さく又は大きくなるように変化する。
【0020】
具体的には、図1に示すようにX線照射領域Eが試料Sの最大径部分に一致するときの試料Sの移動量をD=150mmと設定し、他方、図2に示すように試料Sの水平方向の片端位置における移動量をD=0mmと設定したとき、スリット2の高さ寸法の変位量δは図3で表すような曲線Gを描く。ここにいう変位量δというのは、試料SがD=1mmだけ移動したときに、それに対応させて動かすべきスリット2の変位量のことである。試料Sが円周形状を有することから考えても分かるように、最大径位置D=150mmの位置で試料Sを水平半径方向に移動したとき、δの値はほとんど0に近く、一方、試料Sが移動量最大の0に近づくとき、δの値は急激に増加し、最終的にはδ=10mmを越える変位量となる。
【0021】
このようにスリット寸法を変化させる際には、図3の曲線Gに沿って滑らかな曲線状に変化させても良いし、あるいは、曲線Gに沿って細かな段階状にステップ的に寸法変化させても良い。なお、本実施形態では、試料Sの直径を300mmと考えて図3に示すようなD=0〜150mmまでのスリット高さ制御データを用意したが、試料Sの大きさが変更される場合には、それに応じて制御データにも変更を加える。
【0022】
以上のように、高さ制限スリット2の高さ寸法Hを試料Sの半径方向への移動量に対応させて変化させれば、試料Sに対するX線照射領域Eの高さ寸法を、そのX線照射領域Eの所の試料Sの弦寸法に常に一致させることができ、その結果、X線が試料S以外の部分、例えば試料ホルダ4に当たることを防止できる。そしてその結果、試料ホルダ4等から測定に悪影響を及ぼす散乱線等の発生を未然に防止でき、よって、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0023】
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、図1の実施形態では、Lang法に基づくX線トポグラフィック装置に本発明を適用したが、Berg-Barrett法、あるいはその他各種のX線トポグラフィック装置に対しても本発明を適用できることはもちろんである。また、高さ制限スリット2の高さ寸法を調節するための構造として、図1では、パルスモータ8によって駆動されて回転するネジ軸7を用いたが、必要に応じてそれ以外の任意の構造を用いることができるのはもちろんである。また、図3に示した制御用のデータは好ましい一つの例示であり、必要に応じてこれ以外の他の制御用データを用いることもできる。
【0024】
【発明の効果】
請求項1記載のX線トポグラフィック装置によれば、X線照射領域の所の試料寸法が試料の移動に従って変化する場合でも、その寸法変化に合わせてX線照射領域自体を調整できるので、試料以外の部分にX線が当たってその部分から測定に悪影響を及ぼす散乱線等といったノイズ要素が発生することを防止できる。
【0025】
請求項2及び請求項3記載のX線トポグラフィック装置によれば、請求項1記載のX線トポグラフィック装置を複雑な構造とすることなく簡単に構成でき、しかも常に安定した動作を得ることができる。
【0026】
請求項4記載のX線トポグラフィック装置によれば、半導体ウエハ等といった円形状の試料を測定対象とする場合に、散乱線等の影響を受けない信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0027】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るX線トポグラフィック装置の一実施形態の要部を示す斜視図である。
【図2】図1の装置において、試料が半径方向へ移動するのに対応して高さ制限スリットの高さ寸法が変化する様子を示す斜視図である。
【図3】試料の移動に対応させて高さ制限スリットの高さ寸法を調節する際の制御用データの一例を示すグラフである。
【図4】X線トポグラフィック装置の一例を模式的に示す図である。
【図5】従来のX線トポグラフィック装置の一例の要部を示す斜視図である。
【図6】図5の装置において試料が半径方向へ移動した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 発散制限スリット
2 高さ制限スリット
3 幅制限スリット
4 試料ホルダ
6 スリットホルダ
7 ネジ軸
8 パルスモータ
9 制御部
12 高張力フィルム
13 スライドテーブル
14 搬送装置
D 試料移動量
E X線照射領域
F X線源
S 試料
δ スリット変位量

Claims (4)

  1. X線を発散するX線源と、試料及びX線検出手段を一体的に走査移動させる試料移動手段と、X線源から発散して試料へ入射するX線に関して試料の走査移動方向と直角方向の高さを制限する高さ制限スリットとを有するX線トポグラフィック装置において、
    上記高さ制限スリットの高さ寸法は、試料の走査移動に対応して変化することを特徴とするX線トポグラフィック装置。
  2. 請求項1記載のX線トポグラフィック装置において、試料の移動量を検出する試料移動量検出手段と、高さ制限スリットの高さ寸法を変化させるスリット高さ変更手段と、そして、試料移動量検出手段の出力情報に基づいてスリット高さ変更手段の動作を制御する制御部とを有することを特徴とするX線トポグラフィック装置。
  3. 請求項2記載のX線トポグラフィック装置において、スリット高さ変更手段は、モータによって駆動されて回転するネジ軸と、そのネジ軸にネジ嵌合すると共に高さ制限スリットを支持するスリットホルダとを含んで構成されることを特徴とするX線トポグラフィック装置。
  4. 請求項1から請求項3のうちの少なくともいずれか1つに記載のX線トポグラフィック装置において、試料は円形状であり、高さ制限スリットの高さ寸法は、X線が試料の直径部分を照射するときに最も大きく、X線照射領域が直径部分から離れるに従って小さくなることを特徴とするX線トポグラフィック装置。
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