JP3644245B2 - ルテニウムとロジウムの分離方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非鉄金属製錬工程等で発生する白金族元素を含む塩酸浸出液のような水溶液から、各白金族元素を分離精製する技術、特にルテニウム(Ru)とロジウム(Rh)を分離する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水溶液中の白金族元素の分離、特にロジウムとルテニウムを分離する方法としては、Rev. Metal. Madrid,31(4)、1995に記載されているように、主としてルテニウムの選択的蒸留法が採用されており、一部でルテニウムの溶媒抽出法も利用されている。
【0003】
上記の蒸留法は、ルテニウムをハロゲン等の強酸化剤により酸化して揮発性のRuO4を生成させた後、液を加熱してルテニウムを気体として分離し、吸収剤に捕集する方法である。しかしながら、RuO4は同様の揮発法により分離される酸化オスミウムOsO4に比べると化学的に不安定であるため、自己分解により爆発する危険性が高かった。また、RuO4は強力な酸化作用があるため、気体回収部分の装置材料が腐食しやすく、ガラス等の高度な耐食性を有する材料を使用しなければならないという問題点があった。
【0004】
更に、蒸留法において、ルテニウムを塩酸浸出液のような塩化物水溶液から完全に揮発させるためには、液のpHを4以上まで上昇させ、塩化物イオンによる還元作用を抑制する必要がある。しかし、この条件では、ルテニウム及びロジウムを含め共存する種々の金属イオンが沈澱したり、加水分解して、後工程である蒸留残液の溶媒抽出工程あるいはイオン交換工程で障害となる白金族のヒドロキソ錯体を形成しやすいという問題点があった。
【0005】
この問題を回避するためには、蒸留終了後の残液に大過剰の塩酸を添加し、長時間高温にて加熱を続け、ヒドロキソ錯体をクロロ錯体に戻すという操作が必要であった。従って、蒸留前に塩酸浸出液を中和し、蒸留後に再度酸性に戻すため、アルカリと酸の消費量が非常に大きく経済的にも問題であるばかりか、塩酸で再度酸性にする際に塩化アルカリの結晶が晶出し、白金族元素が一部沈澱して失われるという問題もあった。
【0006】
一方、溶媒抽出法は、水溶液中のルテニウム化合物を、トリブチルフォスフェイト(TBP)により抽出可能なペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の形態に変換し、TBPで抽出する方法である。共存するロジウム化合物は比較的不安定であるため、ペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩が定量的に形成できれば、この方法でロジウムとルテニウムの分離が可能である。
この溶媒抽出法の鍵となるペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の形成方法としては、新実験化学講座8「無機化合物の合成III」(日本化学会編、丸善株式会社刊)、1303頁、1979に記載されているように、▲1▼塩化ルテニウムのようなルテニウム(III)化合物の水溶液に一酸化窒素又は一酸化窒素と二酸化窒素の混合ガスを吸収させ、塩酸を添加して加熱する方法、又は、▲2▼ルテニウム(III)化合物の水溶液に亜硝酸塩を発泡が終了するまで添加し、6モル/lになるように塩酸を加えて濃縮する方法がある。
【0007】
また、「化学大辞典8」(共立出版刊)、544頁、1979に記載されているように、▲3▼ルテニウム化合物を濃硝酸と共に濃縮し、金属塩化物を加える方法、更には、Rev. Metal. Madrid、31(4)、1995に記載されているように、▲4▼還元剤の存在下でルテニウム化合物に硝酸を作用させる方法が知られている。
【0008】
しかしながら、上記▲1▼の窒素酸化物を吸収させる方法では、一酸化窒素の水への溶解度が十分高くないために吸収効率が悪く、大部分のガスが無駄に消費されてしまうという問題があった。また、▲2▼の亜硝酸塩を発泡が終了するまで添加する方法では、この方法を遊離塩酸濃度が高い浸出液に適用すると、大部分の亜硝酸塩が塩酸により分解され、ごく一部の亜硝酸塩しか有効に作用しないため、亜硝酸塩の添加量が膨大になり、経済的な方法ではなかった。
【0009】
また、上記▲3▼の濃硝酸を添加して、蒸発濃縮する方法では、通常の白金族元素を含有する塩酸浸出液には塩酸や塩化物が大過剰存在するため、硝酸は過剰の塩化物イオンと反応して分解し、窒素酸化物に変化する。その窒素酸化物は、塩酸が大過剰に存在する条件下ではルテニウムイオンと反応し難いため、通常の浸出液に適用するには液中の大部分の塩酸を駆遂するまで硝酸を添加し、加熱しつづけなければならなかった。▲4▼の硝酸と還元剤を作用させる方法でも、塩酸や塩化物が大過剰に存在する一般的な塩酸浸出液に対しては、前記▲3▼の方法と同様の理由により反応効率が悪かった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、塩酸浸出液のような白金族元素を含む水溶液からルテニウムとロジウムを分離するに際して、爆発の危険性や高度の耐食性を有する装置を必要とする蒸留法によらず、トリブチルフォスフェイトによる抽出法を用いて、ルテニウムとの反応以外に消費される高価な薬品の使用量を抑え、且つ塩酸や塩化物が大過剰に存在する条件下でも適用可能な、ルテニウムとロジウムの分離法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明が提供するルテニウムとロジウムの分離方法は、ルテニウム及びロジウムを含む水溶液のpHを0以上2以下に調整し、ルテニウムに対して8倍モル以上の亜硝酸塩を添加した後、pHを0以下に再調整し、トリブチルフォスフェイトと混合することによりルテニウムを選択的に抽出することを特徴とする。
【0012】
本発明のルテニウムとロジウムの分離方法においては、亜硝酸塩の添加後、水溶液を60℃以上に加熱することが好ましい。また、トリブチルフォスフェイトでルテニウムを抽出した有機相に塩酸を混合することにより、有機相中のロジウムを選択的に水相に分離することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明方法では、水溶液中のルテニウム化合物を亜硝酸塩及び塩酸によりペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の形態に変換して、トリブチルフォストフェイトにより抽出するが、亜硝酸塩等の無駄な消費を無くしてペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の定量的な生成及び抽出を可能にすると共に、共存するロジウムの共抽出を防止して、ルテニウムのみを選択的に抽出分離するものである。
【0014】
ルテニウム化合物を含む水溶液に添加された亜硝酸塩は、下記化学式1に示すように、クロロルテニウム(IV)酸塩の還元及びペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の形成に使用される:
【化1】
[RuCl6]2-+2NO2 -→[RuCl5(NO)]2-+Cl-+NO3 -
【0015】
しかし、水溶液が塩酸浸出液のように強酸性である場合には、亜硝酸塩は分解して二酸化窒素と一酸化窒素を生成し、生成する一酸化窒素の一部はペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の形成に使用されるが、大部分は自己分解して酸の中和剤として消費される。このため、ルテニウムとの反応以外に使用される亜硝酸塩が増大し、効率が悪く経済的にも不利である。
【0016】
そこで本発明では、水溶液のpHをアルカリの添加により予め調製し、亜硝酸塩が分解しない塩酸濃度まで低下させた後、亜硝酸塩を作用させることにより、上記化学式1のペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩の生成反応を定量的に進行させる。このためには、水溶液のpHを0以上に調製する必要があるが、pHが2を超えるとルテニウム、ロジウム及び共存不純物の一部が加水分解して沈澱する恐れがあるため、pH2を超えないことが必要である。
【0017】
亜硝酸塩の理論上の必要量は、上記化学式1によればルテニウムの2倍モルであるが、実際には、共存元素や僅かに残留する酸により亜硝酸塩が若干消費される場合があるため、3倍モル以上の添加が望ましい。亜硝酸塩濃度が高いほど錯形成はより完全に進行するが、ほぼ20倍モルの添加で既に完全にニトロシル錯体への変換が可能であるから、それ以上の添加は無駄なだけである。
【0018】
尚、使用する亜硝酸塩としては、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩では難溶性の結晶を生成しやすく、アンモニウム塩は化学的に不安定であり、それ以外の金属の塩も入手困難で高価であるため、実用的には亜硝酸ナトリウムが好ましい。
【0019】
水溶液中にルテニウムと共にロジウムが共存する場合、ルテニウムのニトロシル錯体の生成と同時に、下記化学式2に示すように、ロジウム(III)イオンのニトロ錯体も生成する:
【化2】
[RhCl6]3-+6NO2 -→[Rh(NO2)6]3-+6Cl-
【0020】
このロジウムのニトロ錯体も、上記ルテニウムのニトロシル錯体と同様に親油性の高い化合物であるから、そのままの状態では、ルテニウムと共に有機相に抽出されてしまう。また、このロジウムのニトロ錯体は、ルテニウムのニトロシル錯体と同様に非常に安定な化合物であるが、ルテニウムのニトロシル錯塩と異なり、酸性領域では配位子の亜硝酸イオンが不安定となり徐々に分解する。
【0021】
そこで本発明においては、亜硝酸塩添加後の水溶液のpHを下げる再調整を行うことにより、一旦形成されたロジウムのニトロ錯体を選択的に分解して、有機相に抽出されない形態とする。このとき再調整するpHが低いほどロジウムのニトロ錯体の分解が促進されるが、亜硝酸の酸解離定数がpKaが3.15であることを考慮すると、亜硝酸塩はpH1において99%以上、pH0において99.9%以上が不安定な遊離酸に変化するため、pHを0以下に再調整すれば良いが、反応を促進するには−0.5程度までpHを下げることが望ましい。
【0022】
しかしながら、水溶液中にルテニウムやロジウムとしばしば共存することがあるイリジウムをクロロ錯体としてルテニウムと共抽出する場合には、4.5モル/l前後程度まで塩酸濃度が高い方が有利であるが、6モル/l以上の塩酸濃度になると、塩化アルカリの結晶が晶出しやすくなるうえ、不経済であるため、一般には好ましくない。
【0023】
また、上記したロジウムのニトロ錯体の分解は、高温ほど二酸化窒素ガスの放出が促進されるため好ましく、具体的には60℃以上であれば、完全に脱気により反応を完結することが可能である。従って、亜硝酸塩の添加後に水溶液を60℃以上に加熱することが好ましいが、亜硝酸塩の添加前から加熱昇温を行えば、ルテニウムイオンと亜硝酸イオンとの反応促進、及び他の不安定な錯塩の生成防止等の効果も期待できる。尚、温度を上昇させるほかに、空気を吹き込み曝気する方法もある程度の効果があり、昇温と組み合わせるとより効果的である。
【0024】
このようにして、水溶液中に形成されたルテニウムのペンタクロロニトロシルルテニウム(III)酸塩は、その後の溶媒抽出により選択的に有機相に抽出分離することができる。使用する抽出剤としては、原理的には溶媒和型抽出剤であれば良いが、入手が容易であり、且つ溶媒和能力が高いという点で、トリブチルフォスフェイト(TBP)が最適である。
【0025】
TBPによる通常の抽出操作では、ロジウムの共抽出を完全に防止することは困難であるが、一度有機相に抽出されたルテニウムのニトロシル錯体は非常に安定であるため、この有機相を塩酸などで洗浄することにより、有機相中に共抽出されたロジウムのみを水相に選択的に分離することが可能である。また、抽出時にTBPと共に塩酸を混合しても、同様の効果を得ることができる。
【0026】
有機相に抽出されたルテニウムのニトロシル錯体は、酸や酸化剤に対しても安定であるため、逆抽出時には還元剤、錯形成剤などにより分解して、回収する必要がある。例えば、亜硫酸又は亜硫酸塩の水溶液を使用すると、ニトロシル錯体の還元分解と同時にスルフィト錯塩が形成され、水に可溶な形態で逆抽出することができる。しかも、このルテニウムのスルフィト錯塩は、酸化剤や塩酸での処理によって、一般にルテニウムを取り扱うときの形態であるヘキサクロロルテニウム(IV)酸に容易に変換することができる。
【0027】
【実施例】
実施例1
Ruの含有量が1.17g/l及びRhの含有量が34.5g/lであり、pHが−0.38の原液を用いて、Ruの錯体形成時のpHの影響を調べた。まず、上記の原液30mlに1.0gの亜硝酸ナトリウム(NaNO2)を添加し、20分間撹拌した後、新しいTBPを相比O/A=1/1にて混合し、3回繰り返し抽出した。各抽出により得られた有機相及び水相の組成を下記表1に示した。
【0028】
【表1】
抽出段数と液相 液量 (ml) Ru (g/l) Rh (g/l)
抽出1段有機相 32.5 0.34 0.43
抽出2段有機相 29.0 0.065 0.21
抽出3段有機相 27.0 0.033 0.20
抽出3段水相 24.0 0.67 5.51
【0029】
次に、上記と同じ原液を使用したが、500g/lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて液のpHを1.0に調整した。その後、上記と同様に亜硝酸ナトリウム1.0gを添加し、20分間撹拌した。更に、6.7mlの35%塩酸を添加し、液のpHを−0.5に再調整した。尚、pHの再調整時に、最大40℃まで液温度が上昇した。液量が41.5mlに増加したため、相比O/A=30/41.5にて、新しいTBPを用いて3回繰り返し抽出した。各抽出により得られた結果を下記表2に示した。
【0030】
【表2】
抽出段数と液相 液量 (ml) Ru (g/l) Rh (g/l)
抽出1段有機相 32.0 0.76 0.37
抽出2段有機相 30.5 0.021 0.19
抽出3段有機相 28.5 0.004 0.19
抽出3段水相 35.5 0.018 3.98
【0031】
これらの結果から分かるように、pH未調整の原液に亜硝酸ナトリウムを添加した場合(表1)にはルテニウムが約46.2%しか抽出されなかったのに対して、pH調整をした場合(表2)には約97.5%が抽出された。しかし、共存するロジウムは、いずれの場合でも約14%以上抽出され、選択性は十分高いとは言いがたかった。尚、pH調整をした場合には温度が40℃程度まで上昇したが、ロジウムのニトロ錯体の分解は不完全であった。
【0032】
実施例2
上記実施例1と同じ原液30mlに500g/lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを1.0に調整した後、60℃に加熱し、亜硝酸ナトリウム1.0gを添加した。この水溶液を60℃に加熱し、その温度で20分間撹拌した後、塩酸を6.7ml添加して、更に20分撹拌した。この水溶液の温度を21℃まで放冷し、pHを測定したところ−0.47であった。液量が38mlになっていたので、相比O/A=30/38にて、新しいTBPを用いて3回繰り返し抽出した。各抽出により得られた有機相及び水相の組成を下記表3に示した。
【0033】
【表3】
抽出段数と液相 液量 (ml) Ru (g/l) Rh (g/l)
抽出1段有機相 31.5 0.80 0.18
抽出2段有機相 30.5 0.012 0.097
抽出3段有機相 28.5 0.002 0.068
抽出3段水相 32.5 0.005 4.99
【0034】
上記条件のうち、加熱時の水溶液の温度を90℃に高め、また抽出時の相比をO/A=30/31.5に変えた以外は、上記と同じ試験を実施した。その結果得られた有機相及び水相の組成を下記表4に示した。
【0035】
【表4】
抽出段数と液相 液量 (ml) Ru (g/l) Rh (g/l)
抽出1段有機相 32.0 0.78 0.050
抽出2段有機相 29.5 0.077 0.019
抽出3段有機相 27.5 0.007 0.018
抽出3段水相 25.5 0.011 6.85
【0036】
上記表4において、ルテニウムの抽出率は約99.4%、ロジウムの抽出率は約6.1%である。また、表5においては、ルテニウムの抽出率は約99.0%、ロジウムの抽出率は約1.5%である。この結果から、加熱温度が高いほど、ルテニウムの抽出率を高く保ちつつ、同時にロジウムの共抽出を抑制することができ、選択性を向上できることが分かる。
【0037】
実施例3
上記実施例1で使用した原液90mlに500g/lの水酸化ナトリウムを加えてpHを1.0に調整した後、その水溶液を3等分し、各水溶液を加熱して液温を60℃に昇温した。次に、各水溶液にそれぞれ亜硝酸ナトリウムを0.05g(Ruの2倍モル)、0.20g(Ruの8倍モル)、0.5g(Ruの20倍モル)添加した。液温60℃にて15分間維持した後、塩酸6.7mlを添加して、更に20分間維持し、その後液温21℃まで冷却した。
【0038】
得られた各水溶液は39mlであったため、いずれも相比O/A=30/39にて、新しいTBPで3回繰り返し抽出した。3回抽出後の水相である抽残液の液量と組成、並びにルテニウムとロジウムの抽出率を下記表5に示した。尚、抽出率は、抽出1〜3段の各有機相中及び抽出3段の水相中のルテニウム及びロジウムの量の合計を100%として計算した。
【0039】
【表5】
【0040】
上記表5より、亜硝酸ナトリウムの添加量が理論量に相当するRuの2倍モルでは、反応は不完全であり、過剰に添加する必要があると判断される。亜硝酸ナトリウムの添加量の増大に伴い、ロジウムの共抽出量が若干増大しているが、前記実施例2の表4の結果からも分かるように、亜硝酸ナトリウムをRuに対して40倍モルも使用した場合でも、加熱温度の上昇によりロジウムの共抽出率を抑制することができる。
【0041】
実施例4
Ruの含有量が4.43g/l及びRhの含有量が6.55g/lであり、塩酸濃度が4.5N(pH−0.65)の未調整原液252mlを用い、これに500g/lの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを1.06に調整した。続いて、亜硝酸ナトリウム15.2g(Ruに対して20倍モル)を添加し、液温を60℃に昇温した後その温度で15分間維持した。その後、更に35%塩酸を97ml添加して20分間維持し、室温まで放冷した水溶液を抽出用原液とした。この抽出用原液の組成はRuが2.55g/l及びRhが3.78g/lであり、塩酸濃度が2.5N(pH−4.0)であった。
【0042】
この抽出用原液を用いて、図1に示すような、抽出5段及びスクラビング2段を想定したバッチシミュレーションを実施した。図1において、「原液」の表示は抽出用原液40mlを混合する操作を、「洗液」の表示は4.5N塩酸20mlを混合する操作を、また「TBP」の表示は抽出剤であるTBPを40ml混合する操作を表す。抽出のための混合時間は、いずれも10分間とした。
【0043】
この各抽出段及びスクラビング段における結果を下記表6に示した。尚、多段向流抽出において抽出1〜5段は、図中の▲1▼〜▲5▼にそれぞれ対応する。同様にスクラビング1〜2段は、図中の▲1▼’〜▲2▼’に対応する。
【0044】
【表6】
【0045】
上記表6により、ルテニウムの回収対象となるスクラビング2段の有機相のRu品位はRu/(Ru+Rh)として99.7%であり、ロジウムの回収対象となる抽出5段の水相のRh品位はRh/(Ru+Rh)として99.96%であることが分かる。
【0046】
また、スクラビング2段の有機相及び抽出5段の水相の液量及び濃度から計算した結果によれば、ルテニウムの収率は99.96%以上、ロジウムの収率は99.3%であった。このように、多段抽出及び有機相の洗浄を行うことにより、選択的且つ高収率でロジウムとルテニウムとの分離回収が可能である。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、爆発の危険性や高度の耐食性を有する装置を必要とする蒸留法を用いることなく、トリブチルフォスフェイトによる抽出法により、塩酸浸出液のような白金族元素を含む水溶液からルテニウムとロジウムを簡単に且つ効率良く分離することができる。
【0048】
本発明のルテニウムとロジウムの分離方法は、水溶液中の金属元素を沈澱させることなく、ルテニウムとの反応以外に消費される高価な薬品の使用量を極力抑え、且つ塩酸や塩化物が大過剰に存在する条件下でも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法による抽出5段及びスクラビング2段の多段向流抽出を想定したバッチシミュレーションの操作図である。
【符号の説明】
図1において、○は混合抽出の操作を表し、右下へ向かう矢印は有機相の混合を、左下へ向かう矢印は水相の混合を、及び真下へ向かう矢印は抽出用原液の混合をそれぞれ表す。
Claims (3)
- ルテニウム及びロジウムを含む水溶液のpHを0以上2以下に調整し、ルテニウムに対して8倍モル以上の亜硝酸塩を添加した後、pHを0以下に再調整し、トリブチルフォスフェイトと混合することによりルテニウムを選択的に抽出することを特徴とするルテニウムとロジウムの分離方法。
- 亜硝酸塩の添加後、水溶液を60℃以上に加熱することを特徴とする、請求項1に記載のルテニウムとロジウムの分離方法。
- トリブチルフォスフェイトでルテニウムを抽出した有機相に塩酸を混合し、有機相中のロジウムを選択的に水相に分離することを特徴とする、請求項1又は2に記載のルテニウムとロジウムの分離方法。
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