JP3644227B2 - シリコン単結晶の製造方法及び製造装置 - Google Patents

シリコン単結晶の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原料となる粒状多結晶シリコンを連続的に供給してシリコン単結晶のインゴットを得るFZ法(フロートゾーン法、浮遊帯域溶融法)によるシリコン単結晶の製造方法とその製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
FZ法によりシリコン単結晶を製造する方法としては、上軸に棒状の原料多結晶を、下軸に直径の小さな単結晶の種を保持し、前記原料多結晶の周囲を囲繞した高周波誘導加熱コイルにより前記原料多結晶棒の一端を溶融しながら前記種結晶に融着して種付けした後、種絞りにより無転位化しつつ、前記高周波誘導加熱コイルと前記原料多結晶とを相対的に回転し且つ軸線方向に相対移動させながら前記原料多結晶を帯域溶融させて、棒状のシリコン単結晶を製造する方法(以下、シーメンス法という。)が公知である。
【0003】
かかるシーメンス法においては、気相成長法により製造された棒状の多結晶を原料として使用するが、その外径精度が悪く、使用に際しては前記原料多結晶の外面を研削して直径を均一化する作業が必要がある。そして、その為の研削加工設備が必要であり、また、原料多結晶の外面を研削することにより結晶の損失も生ずる。
また、製造するシリコン単結晶の直径や長さが大型化するに伴い、原料多結晶棒の保持機構や保持室も同時に大型化しなければならないという問題があった。
【0004】
かかる欠点を解消する為に、原料に粒状多結晶シリコンを用いたFZ法が種々提案されている(特開平5−286791号、特開平6−199589号)。この粒状多結晶シリコンを原料としてFZ法により棒状のシリコン単結晶を製造する方法は、原料の粒状多結晶シリコンが安価であり、使用の前に研削加工が不必要であることから結晶の損失も無く、また、原料が粒状であることから予備加熱の必要が無いので所要電力が小さく、さらに、原料多結晶棒の保持機構や保持室が必要ないので設備も小型化することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粒状多結晶シリコンを原料として用いる前記各従来技術によって棒状のシリコン単結晶を製造する際には、次に示すような問題が生じてしまう。
【0006】
まず、特開平5−286791号公報は、原料となる粒状多結晶シリコンの飛散を防止するための隔壁を設けた製造方法を提供するものであり、その構成を図2に基づいて簡単に説明する。
【0007】
図2において、半導体インゴット101の上面は高周波誘導コイル104で加熱溶融され、溶融帯102が形成される。溶融帯102の近くに、先端が該溶融帯102の表面より僅か離れるか一致するか僅か浸漬する程度に、石英等からなる障壁囲い105を設け、この中に上方からパイプ107を通じて粒径0.5〜5.0mmの粒状結晶106を供給する。この粒状結晶106は容易に融解して原料シリコン融液として連続供給され、インゴット101を回転しながら下降するにつれて溶融帯102が固化し、単結晶等が成長する。
【0008】
この従来技術においては、障壁囲い105により粒状結晶106の飛散を防止することはできるが、障壁囲い105の下端は開口しており、該障壁囲い105内で粒状結晶106が融解してなる原料シリコン融液が溶融帯102と直接連通する構成を採るために、前記原料シリコン融液が溶融帯102へ流出する量を制御することは困難である。
また、この従来技術において、障壁囲い105の開口部に孔の開いた底板を設け、この孔から原料シリコン融液を流出させてもよいとの技術も示唆されているが、この場合、孔の開いた底板により原料シリコン融液の流出速度をある一定値に制限することはできても、原料シリコン融液の流出速度を増加させたり減少させたりする制御は困難である。
【0009】
さらに、障壁囲い105の開口部に設けられた孔の開いた底板が溶融帯102と接触すると、この方法により製造されたシリコン単結晶は底板の材料物質により汚染される可能性が極めて高い。これは障壁囲い105自体についても同様であり、該障壁囲い105の先端が溶融帯102の表面と一致するか僅かに浸漬する場合にもやはり、この方法により製造されたシリコン単結晶が障壁囲い105の材料物質により汚染される可能性が極めて高いのである。
【0010】
次に、特開平6−199589号公報は、粒状多結晶シリコンをシリコン単結晶に転化する際、シリコンの溶融帯と接触したシリコン製の導管を通して、粒状多結晶シリコンを一定の供給速度で供給するFZ法を提供するものであり、その構成を図3に基づいて簡単に説明する。
【0011】
図3において、111は不活性ガス雰囲気若しくは真空を維持するハウジングで、該ハウジング111内の上部にはシリコン製の導管113を保持するチャック112を内蔵する。
粒状多結晶シリコンは、ホッパー118から連結導管119及びシリコン製の導管113を経由して溶融帯115へ供給される。シリコン製の導管113の下部は、誘導加熱コイル114により囲繞され加熱溶融された溶融帯115に接触している。溶融帯115から下方には生成されたシリコン単結晶116が延在し、その下端には昇降機構117上に支持されたシリコン単結晶の種結晶が位置している。
【0012】
この従来技術において、シリコン製の導管113の下部は溶融帯115に接触している為、生成されるシリコン単結晶116の純度は、シリコン製の導管113の純度により左右される。シリコン製の導管113の純度を下げると、生成されるシリコン単結晶116の純度も落ちるのである。
【0013】
また、この従来技術において、シリコン単結晶の成長速度は、ホッパー118から連結導管119及びシリコン製の導管113を経由して溶融帯115へ供給される粒状多結晶シリコンの供給速度により制御される。しかし、粒状多結晶シリコンの供給速度を一定にした場合においても、粒状多結晶シリコンの粒径は一定でないので多結晶シリコンの供給量は一定にならない。また、粒状多結晶シリコンの溶融速度も粒径により異なる。
【0014】
また、シリコン単結晶の成長領域と粒状多結晶シリコンの供給位置とが近接していないために、フィードバックに時間がかかる。例えば、シリコン単結晶の成長速度を即座に上げようとしても、ホッパー118から連結導管119及びシリコン製の導管113を経由して、粒状多結晶シリコンが溶融帯115に供給され、さらに、該溶融帯115中で多結晶シリコンが溶融されるまでに時間がかかってしまう。
【0015】
さらに、特開平5−286791号および特開平6−199589号は、原料の粒状多結晶シリコンを溶融帯中で融解する技術であり、完全に融解したシリコン融液を溶融帯に供給する技術について開示するものではない。粒状多結晶シリコンを溶融帯中で融解する場合、該粒状多結晶シリコンが完全に融解せずに単結晶の成長界面に到達してしまうと、成長中のシリコン単結晶が多結晶化するという問題がある。
【0016】
本発明は、かかる従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、完全に融解したシリコン融液を溶融帯に供給する技術を提供するとともに、粒状多結晶シリコンの溶融したシリコン融液が溶融帯へ流出する量を効果的且つ確実に制御でき、製造するシリコン単結晶が汚染される事が無く、これにより高純度且つ高品質のシリコン単結晶を得ることのできるシリコン単結晶の製造方法及び製造装置を提供する事を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のシリコン単結晶の製造方法は、粒状多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を形成し、該シリコン融液を溶融帯域に供給しながら浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶を製造する方法において、前記溶融帯域の上方に位置するシリコン融液に磁場を印加することを特徴とする。
【0018】
前記磁場は、前記シリコン融液に対して水平方向に印加されることが好ましい。前記シリコン融液はルツボ内に保持され、前記磁場は、前記ルツボからシリコン融液を溶融帯域に供給するために該ルツボの下端部に設けられた開口部を含む領域に形成されることが好ましい。また、前記シリコン融液は、該シリコン融液を保持するルツボの内壁面と非接触の状態に維持される。また、前記ルツボは、前記溶融帯域に接触しないことが好ましい。
【0019】
本発明のシリコン単結晶の製造装置は、浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶を製造する装置であって、粒状多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を形成し、該シリコン融液を保持するとともに該シリコン融液を溶融帯域に供給するルツボと、前記溶融帯域の周囲を囲繞する高周波誘導加熱コイルと、前記溶融帯域の上方に位置するシリコン融液に対して水平方向に磁場を印加できるように配置された磁極とを有することを特徴とする。
【0020】
前記磁極は、前記ルツボからシリコン融液を溶融帯域に供給するために該ルツボの下端部に設けられた開口部を含む領域に磁場が形成されるように配置されることが好ましい。例えば、前記磁極は電磁石であり、該電磁石に接続された電圧可変器により印加電圧を変化させて前記磁場の大きさを制御可能に構成される。また、前記ルツボは、高周波電流が流れるコイルにより囲繞されることが好ましい。さらに、前記ルツボは、前記溶融帯域に接触しないように配置されることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を例示的に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、相対配置などは特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶11を製造する装置を示す。この製造装置は、粒状多結晶シリコン1を加熱溶融してシリコン融液2を形成し、該シリコン融液2を保持するとともに該シリコン融液2を溶融帯域80に供給するルツボ3と、前記溶融帯域80の周囲を囲繞する高周波誘導加熱コイル9と、前記シリコン融液2に対して水平方向に直流磁場6を印加できるように配置された磁極60N,60Sと、前記直流磁場6の制御手段61とを有する。
溶融帯域80の下方には、単結晶成長界面81を介して成長したシリコン単結晶11が位置し、さらにその下端には、種絞り部10を介して種結晶7が配置されている。
【0023】
原料となる粒状多結晶シリコン1は、例えば化学蒸着式流動床法で形成された半導体等級純度のものである。粒状多結晶シリコン1の粒径は、加熱されたルツボ3内に供給されると速やかに溶融すれば良く、特に限定は無いが、通常10μmφから10mmφ程度の粒径のものを用いる。
【0024】
前記ルツボ3は導電性の材料、具体的には銅、銀、金、又はステンレス等からなり、下面が縮径されて開口する開口部5を有する逆円筒ドーム状に構成される。前記ルツボ3は、シリコン単結晶11の回転軸に対して軸対称に、分割された壁31を容器状に配列させて構成される。各分割された壁31の内部には、該分割された壁31を十分に冷却する冷却水還流部32が設けられている。
前記ルツボ3の下端部に設けられた開口部5からは、シリコン融液2が溶融帯ネック部8を介して溶融帯域80に向けて供給され、前記ルツボ3は溶融帯域80に直接接触しない構成になっている。
【0025】
前記ルツボ3の外周には、該ルツボ3を囲繞して螺旋状に巻回したコイル4が配置される。該コイル4に高周波電流を流すと、ルツボ3の表面にコイル4とは逆方向に流れる高周波の渦電流が誘導される。この高周波の渦電流は、ルツボ3を加熱して粒状多結晶シリコン1を融解してシリコン融液2を形成すると同時に、シリコン融液2の表面に、ルツボ3とは逆方向に流れる高周波の渦電流を誘導する。
そして、ルツボ3の表面とシリコン融液2の表面には、逆方向の渦電流が流れるために、該ルツボ3の表面とシリコン融液2の表面との間に電磁気的な反撥力が生じ、シリコン融液2はわずかに浮揚する。この結果、シリコン融液2はルツボ3の内壁面と非接触の状態に維持されるので、ルツボ3により汚染されることがない。また、シリコン融液2は表面張力作用によりルツボ3内に保持され、分割された壁31の間から洩れることがない。
【0026】
前記シリコン融液2には、対流が発生する。対流が発生すると、ルツボ3内に供給された粒状多結晶シリコン1が、対流により加速されてルツボ3内で完全に融解しないまま、単結晶の成長界面81に到達する可能性が高くなってしまう。
【0027】
そこで、本発明ではルツボ3内に保持されたシリコン融液2に、磁場を印加するのである。印加する磁場としては、直流磁場のほうが、常に一定の大きさをシリコン融液2に供給することができる点で、交流磁場よりも好ましい。
【0028】
電気伝導性を有する流体すなわちシリコン融液2が、対流によって磁界内を移動すると、フレミングの右手の法則により、シリコン融液2の移動方向および磁場の印加方向の両者に直交する方向に電場が発生し、誘導電流が流れる。
シリコン融液2中に誘導電流が流れると、前記磁場との相互作用によりフレミングの左手の法則に従って、電流の流れ方向および磁場の印加方向の両者に直交する方向にローレンツ力が働くのである。このローレンツ力は、シリコン融液2の移動方向とは正反対の方向に働くので、シリコン融液2の流れが鈍くなり、見かけ上の粘性が高くなる。
【0029】
この結果、シリコン融液2の対流とともに移動する未溶融の多結晶シリコン1の移動速度が遅くなり、単結晶の成長界面81に到達するまでに該多結晶シリコン1を完全に融解することができるので、成長中のシリコン単結晶11の多結晶化を抑制することができる。
【0030】
シリコン融液2は導電性のルツボ3内に保持されており、該ルツボ3の外側から内部のシリコン融液2に磁場を印加しても、導電性のルツボ3により遮蔽されてシリコン融液2には磁場が形成されない。そのため、ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に磁場を形成するとよい。
【0031】
前記開口部5からは、シリコン融液2が溶融帯域80に向けて供給されるが、この領域はルツボ3により遮蔽されていないので、磁場を形成することができるのである。
ただし、溶融帯域80には磁場を印加しないほうが好ましい。溶融帯域80に磁場を印加すると、該溶融帯域80の対流が抑制されるので、好ましくないファセットが形成されてしまうことがあるからである。
【0032】
そこで、ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に磁場が形成されるようにして、ルツボ3の底面左右両側にN極とS極の磁極60N,60Sを配置する。該磁極60N,60Sは電磁石であり、電圧可変器61により印加電圧を可変に構成される。
【0033】
印加電圧を高くすると磁極60N,60Sにより形成される磁場が強くなり、溶融帯域80の対流が大きく抑制されるので、見かけ上の粘性が高くなる。一方、印加電圧を低くすると見かけ上の粘性が小さくなる。このようにして、電磁石60N,60Sに接続された電圧可変器61により印加電圧を変化させて磁場の大きさを制御すると、シリコン融液2の見かけ上の粘性を調節することができる。
【0034】
ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に形成される磁場は、シリコン融液2の対流を抑制できればよく、水平磁場、垂直磁場、あるいは斜め方向から印加される磁場であってもよい。ただし、図1のように、シリコン融液2がルツボ3の下端部に設けられた開口部5から溶融帯域80へ下方向に供給される構成の場合、水平磁場が最も効率的である。
【0035】
また、図1の構成の場合、ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に水平磁場を形成することにより、シリコン融液2の見かけ上の粘性を調節すると同時に、ルツボ3から溶融帯域80へ下方向に供給されるシリコン融液2の供給量も制御することもできる。
【0036】
ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に形成された水平磁場内を、シリコン融液2が溶融帯域80に向けて下方向に移動すると、フレミングの右手の法則により、シリコン融液2の供給方向である下方向および磁場の印加方向である水平方向の両者に直交する水平方向に電場が発生し、誘導電流が流れる。
【0037】
シリコン融液2中に誘導電流が流れると、前記磁場との相互作用によりフレミングの左手の法則に従って、電流の流れ方向および磁場の印加方向の両者に直交する上方向にローレンツ力が働くのである。このローレンツ力は、シリコン融液2の供給方向とは正反対の方向であるので、シリコン融液2の流れが鈍くなり、シリコン融液2の供給を抑制することができるのである。
【0038】
このようにして、溶融帯域80に向けて下方向に供給されるシリコン融液2に印加する水平磁場の大きさを調節することにより、ルツボ3から溶融帯域80へ供給されるシリコン融液2の供給量を制御することができるので、シリコン単結晶11の成長速度を調整することができる。
【0039】
溶融帯域80のネック部8の周囲には、偏平単巻状の高周波誘導加熱コイル9が配設されている。高周波誘導加熱コイル9は、該高周波誘導加熱コイル9の内周径が製造すべきシリコン単結晶11の外径より小さく、且つ内周側に向けて断面先細り状に形成される。
高周波誘導加熱コイル9は、シリコン融液2および溶融帯域80を加熱して固化を防止すると同時に、溶融帯域80を高周波で押圧することにより該溶融帯域80をシリコン単結晶11上に保持する。高周波による溶融帯域80の押圧を中止すると、該溶融帯域80は、シリコン単結晶11上から直ちに滴下してしまう。
【0040】
【実施例】
次に、発明の実施の形態で説明したシリコン単結晶製造装置を用いて、本発明にかかる実施形態のシリコン単結晶11を製造する方法について、具体的に説明する。
【0041】
まず、図1に示す構成のシリコン単結晶製造装置に配設された、内径が40mmで銅製のルツボ3内に、図示しない原料供給管を介して、0.2mmφ〜5mmφ程度の粒径を有する粒状多結晶シリコン1を供給する。
【0042】
次に、ルツボ3の外周に該ルツボ3を囲繞し螺旋状に巻回して配置されたコイル4に、約2MHzの高周波を印加して、前記粒状多結晶シリコン1を約150mlのシリコン融液2に融解する。そして、ルツボ3の下端部に設けられた直径15mmの開口部5から供給される融解したシリコン融液2に種結晶7を接触させ、該種結晶7の一端部を融解させて種付けを行う。
【0043】
次に、種結晶7を5〜10rpmの速度で回転させつつ下方に移動させると同時に、溶融帯ネック部8に配置した外径100mm、内径20mmの銅製の高周波誘導加熱コイル9により加熱出力を調節しながら、転位を除去するための種絞り部10を形成する。
この時、ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に、250〜500ガウスの水平磁場を形成して、種結晶7上に形成されるシリコン単結晶11が多結晶化しないように、シリコン融液2の見かけ上の粘性を調節する。種絞り部10が細くなりすぎる場合には、水平磁場の印加を小さくして成長速度を大きくする。
【0044】
種絞り部10を形成した後に、種結晶7を5〜10rpmの速度で回転させつつ高周波誘導加熱コイル9の出力を増加させ、シリコン単結晶11の直径を増大させていく。この時、晶癖線が大きく成長するならば、水平磁場の印加を小さくしてシリコン融液2の見かけ上の粘性を小さくする。
該シリコン単結晶11の直径が目的とする30mmとなる少し前に、高周波誘導加熱コイル9の出力増大の割合を徐々に減少させる。そして、シリコン単結晶11の直径が目的とする直径になった後は、一定の出力で誘導加熱を行う。
【0045】
シリコン単結晶11を成長させる間、ルツボ3内のシリコン融液2の量が一定に保たれるように、粒状多結晶シリコン1をルツボ3内に供給する。直径30mmのシリコン単結晶11を2.0〜3.0mm/minで成長する場合、シリコン融液2は、およそ2ml/minの割合で溶融帯域80に供給される。また、シリコン単結晶11の成長速度に応じて、ルツボ3の下端部に設けられた開口部5を含む領域に印加する水平磁場の強度を、250〜1000ガウスの間で調節する。水平磁場の強度は、250ガウスより小さいとその効果は無いが、1000ガウスよりも大きくすると単結晶成長界面81にファセットが形成され、抵抗率の面内分布が著しく悪化するため、好ましくない。
本実施例によると、直径30mmのシリコン単結晶11を50cmの長さまで成長することができた。
【0046】
【発明の効果】
以上記載の如く、本発明によれば、完全に融解したシリコン融液を溶融帯域に供給することができるので、成長するシリコン単結晶の多結晶化を防止することができる。また、粒状多結晶シリコンの溶融したシリコン融液が溶融帯へ流出する量を効果的且つ確実に制御できる。さらに、シリコン融液はルツボの内壁面と非接触の状態に維持されるので、製造するシリコン単結晶が汚染される事が無く、これにより高純度且つ高品質のシリコン単結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様にかかる、粒状多結晶シリコンを原料とするシリコン単結晶の製造装置の概念図である。
【図2】従来技術にかかる、粒状多結晶シリコンを原料とするシリコン単結晶の製造装置の概念図である。
【図3】他の従来技術にかかる、粒状多結晶シリコンを原料とするシリコン単結晶の製造装置の概念図である。
【符号の説明】
1 粒状多結晶シリコン
2 シリコン融液
3 ルツボ
4 コイル
5 ルツボの下端部に設けられた開口部
6 磁場
7 種結晶
8 溶融帯ネック部
9 高周波誘導加熱コイル
10 種絞り部
11 シリコン単結晶

Claims (10)

  1. 粒状多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を形成し、該シリコン融液を溶融帯域に供給しながら浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶を製造する方法において、前記溶融帯域の上方に位置するシリコン融液に磁場を印加することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
  2. 前記磁場は、前記シリコン融液に対して水平方向に印加されることを特徴とする請求項1記載のシリコン単結晶の製造方法。
  3. 前記シリコン融液はルツボ内に保持され、前記磁場は、前記ルツボからシリコン融液を溶融帯域に供給するために該ルツボの下端部に設けられた開口部を含む領域に形成されることを特徴とする請求項1若しくは2記載のシリコン単結晶の製造方法。
  4. 前記シリコン融液は、該シリコン融液を保持するルツボの内壁面と非接触の状態に維持されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のシリコン単結晶の製造方法。
  5. 前記ルツボは、前記溶融帯域に接触しないことを特徴とする請求項3または4記載のシリコン単結晶の製造方法。
  6. 浮遊帯域溶融法によりシリコン単結晶を製造する装置であって、粒状多結晶シリコンを加熱溶融してシリコン融液を形成し、該シリコン融液を保持するとともに該シリコン融液を溶融帯域に供給するルツボと、前記溶融帯域の周囲を囲繞する高周波誘導加熱コイルと、前記溶融帯域の上方に位置するシリコン融液に対して水平方向に磁場を印加できるように配置された磁極とを有することを特徴とするシリコン単結晶の製造装置。
  7. 前記磁極は、前記ルツボからシリコン融液を溶融帯域に供給するために該ルツボの下端部に設けられた開口部を含む領域に磁場が形成されるように配置されたことを特徴とする請求項6記載のシリコン単結晶の製造装置。
  8. 前記磁極は電磁石であり、該電磁石に接続された電圧可変器により印加電圧を変化させて前記磁場の大きさを制御可能に構成されることを特徴とする請求項6若しくは7記載のシリコン単結晶の製造装置。
  9. 前記ルツボは、高周波電流が流れるコイルにより囲繞されることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造装置。
  10. 前記ルツボは、前記溶融帯域に接触しないように配置されることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載のシリコン単結晶の製造装置。
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