JP3644139B2 - 高圧放電ランプの電力供給電線及びその製造方法並びに高圧放電ランプを用いた照明装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体育館の照明等に用いられる民生用高圧放電ランプに対して電力を供給するための電力供給電線及びその製造方法並びに当該ランプを用いた照明装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、体育館や球場、トンネル内、街路の照明等に用いられる民生用ランプとして、従来の白熱真空ランプやハロゲンランプに代え、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプといった高圧放電ランプが注目されている。この高圧放電ランプは、HID(High Intensity Discharge)ランプとも称され、比較的小型で大光束を出し、効率が高く、寿命が長いという利点を有する。
【0003】
この高圧放電ランプを用いた照明装置の一例を図1に示す。図において、光源である高圧放電ランプ2は、下方にのみ開口する金属製のフード4内に配され、このフード4の下端開口には、ガラス等の透明もしくは半透明材料からなる透光板6が装着されている。フード4には、これを貫通する状態でコネクタ8が取付けられており、このコネクタ8を介して上記高圧放電ランプ2と電力供給電線10の一端とが接続されている。各電力供給電線10の他端は図略の電源に接続されており、これら電力供給電線10を通じて上記高圧放電ランプ2に電力が供給されるようになっている。各電力供給電線10は、単線や撚線等からなる導体を有し、この導体の周囲に高い耐電圧性をもつシリコン製の絶縁層が形成された構成となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記図1に示す装置では、コネクタ8がフード4を貫通しており、電力供給電線10はその全体がフード4の外部に配線されているが、フード4の大型化や、フード4内での高圧放電ランプ2のレイアウト変更、配線の向き等の関係上、図2に示すようにフード4に上記コネクタ8でなく電力供給電線10を貫通させ、この電力供給電線10の一部をフード4内に配さなければならない場合がある。
【0005】
しかし、上記高圧放電ランプ10は、その点灯時に比較的強い紫外線を放射するので、この紫外線により、上記絶縁層を構成するシリコンの劣化が促進され、絶縁層に亀裂が発生する等の不都合が生じ得る。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、安価な構造でフード内での使用にも十分耐え得る高圧放電ランプの電力供給電線と、この電力供給電線を簡単に製造できる製造方法と、上記高圧放電ランプ及び電力供給電線を用いた照明装置とを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、高圧放電ランプを収容するフードを貫通する状態で上記高圧放電ランプに接続され、この高圧放電ランプに電力を供給する高圧放電ランプの電力供給電線において、導体の周囲にシリコンからなる絶縁層が形成されることにより電線本体が構成され、かつ、この電線本体において上記フード内に配線される部分と略同等の部分のみその絶縁層の表面が紫外線を遮断する無機質材料で覆われているものである。
【0008】
上記無機質材料としては、シリカ、鉄やクロム、ジルコニウム等の金属の酸化物、炭化珪素、リン酸アルミニウム、各種セラミック混合体等が好適であるが、その他、紫外線遮断機能を有していて上記絶縁層の表面に付着させることができるものであれば、何でもよい。
【0009】
この電力供給電線では、その電線本体において上記フード内に配される部分と略同等の部分におけるシリコン製絶縁層が無機質材料で覆われているので、上記絶縁層を構成するシリコンが紫外線から有効に保護され、その劣化が防がれる。また、上記無機質材料は耐熱性にも優れているので、高圧放電ランプの発熱に起因する不都合、例えば電線の引張強度や耐電圧性等の性能の低下も防ぐことができる。一方、上記電線本体において上記フードの外側に配される部分と略同等の部分には無機質材料が付着していないので、その分材料が節約できる上、電線の太径化を回避でき、また、電線本来の柔軟性も確保できる。
【0010】
そして、上記電力供給電線は、例えば、上記導体の周囲にシリコンからなる絶縁層を形成して電線本体を製造した後、この絶縁層の表面に上記無機質材料を含有する無機質溶液(例えば無機質材料の水溶液)を付着させ、これを乾燥させる方法により、簡単に製造することができる。
【0011】
なお、上記無機質溶液を絶縁層表面に付着させる方法は特に問わず、刷毛等で無機質溶液を塗布するようにしてもよいし、無機質溶液槽内に電線本体を浸漬させるようにしてもよい。この場合、無機質溶液の付着及び乾燥をした後は、電線の柔軟性がある程度低下するので、その前に予め電線本体を切断し、少なくとも上記高圧放電ランプ側の端末加工(すなわち無機質溶液の塗布等がなされる側の端末加工)をしておくことが好ましい。
【0012】
また本発明は、光源である高圧放電ランプと、この高圧放電ランプを収容するフードと、このフードを貫通する状態で上記高圧放電ランプに接続され、この高圧放電ランプに電力を供給する電力供給電線とを備えた照明装置において、上記電力供給電線の本体が、導体の周囲にシリコンからなる絶縁層が形成されてなり、かつ、この電線本体において上記フード内に配線される部分と略同等の部分のみその絶縁層の表面が上記無機質材料で覆われているものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施の形態における照明装置全体の概要は前記図2に示したものと全く同等であり、各電力供給電線10は、高圧放電ランプ2を収容するフード4を貫通する状態で上記高圧放電ランプ2に接続され、各電力供給電線10には上記フード4内に配される部分(以下、フード内部分と称する)Aが存在する。
【0014】
上記電力供給電線10の本体は、図3(a)に示すように、単線や撚線等で構成された導体11の周囲にシリコンからなる絶縁層12が形成されてなっている。そして、この実施の形態の特徴として、上記電力供給電線10のうち、上記フード内部分Aもしくはこれと略同等の部分にのみ、図3(b)に示すように、その絶縁層12の表面が無機質材料からなる紫外線遮断層14で覆われている。この紫外線遮断層14の具体的な材質は、前述の通りであり、その層厚は0.1〜0.5mm程度が好適である。
【0015】
この電力供給電線10及びこれを用いた照明装置によれば、電力供給電線10の本体において、上記フード内部分Aもしくはこれと略同等の部分では絶縁層12が紫外線遮断層14で覆われているので、上記高圧放電ランプ2より放射される紫外線から絶縁層12が有効に保護され、この絶縁層12を構成するシリコンの劣化が阻止される。また、上記紫外線遮断層14を構成する各種無機質材料は耐熱性にも優れているので、高圧放電ランプ2の使用によりフード4内の温度が上昇しても(例えば200℃)、その熱に起因する電線の各種性能(例えば引張強度や耐電圧性)の低下が大幅に抑制される。
【0016】
一方、フード4の外側に配線される部分もしくはこれと略同等の部分、すなわち高圧放電ランプ2からの紫外線を直接受けない部分では、上記紫外線遮断層14を配していないので、その分材料費を節約できるのに加え、電線太径化を避けることができ、また電線本来のもつ柔軟性を維持することができる。
【0017】
しかも、上記電力供給電線10は、例えば次の方法によって簡単に製造することが可能である。
▲1▼ 導体11の周囲にシリコンからなる絶縁層12を押出し成形し、これを加硫した後、巻取る(電線本体の製造)。
▲2▼ ▲1▼で製造した電線本体を適当に切断し、その端末加工(例えば皮剥ぎ処理や端子の圧着)をする。
▲3▼ 前記フード内部分Aにおける絶縁層12の表面に無機質溶液を塗布し、もしくは無機質溶液層内に電線本体を浸漬する等して、絶縁層12の表面に無機質溶液を付着させる。その後、この電線本体を常温もしくは高温下に放置して乾燥させる(高温放置では吸水性が残るため、その前に常温放置をしてから150℃〜300℃の雰囲気下で30〜60分程度放置するのが好ましい。)ことにより、本発明にかかる電力供給電線10を完成することができる。
【0018】
この方法によれば、電線本体におけるフード内部分Aのみに簡単に無機質材料を付着させることができる。また、電線本体の端末加工を終了してから無機質溶液の塗布等と乾燥とを行っているので、この塗布等及び乾燥が終了した段階、すなわち電線本体の柔軟性が低下した段階で端末加工を行う場合に比べ、その端末加工をより容易に行うことができる利点が得られる。
【0019】
なお、この利点は、少なくとも高圧放電ランプ2側の端末加工を無機質材料の付着工程よりも先に行っておくことにより得られるものであり、例えばこの高圧放電ランプ2側の端末加工のみを行ってから上記無機質溶液の塗布等及び乾燥を行い、その後に他方の端末加工をするようにしても、上記利点が得られる。
【0020】
【発明の効果】
以上のように本発明は、フード内に収容される民生用の高圧放電ランプに電力を供給する電力供給電線のうち、上記フード内に配線される部分もしくはこれと略同等の部分のみ、シリコン製絶縁層の表面を紫外線遮断作用をもつ無機質材料で覆うようにしたものであるので、上記高圧放電ランプの発する紫外線からシリコン製絶縁層を有効に保護し、その劣化を防止できる効果がある。また、上記無機質材料は耐熱性にも優れるため、高圧放電ランプの発する熱で電線の性能が低下する不都合も防止できる。しかも、フード外部分では上記無機質材料を付着させていないので、安価でかつ細径の構造を維持でき、また本来の柔軟性も確保できる。
【0021】
そして、上記電力供給電線の製造方法として、上記導体の周囲にシリコンからなる絶縁層を形成して電線本体を製造した後、この絶縁層の表面に上記無機質材料を含有する無機質溶液を付着させ、これを乾燥させる方法によれば、上記電線を簡単にかつ能率よく製造することができる効果が得られる。
【0022】
特に、上記絶縁層を形成して電線本体を製造した後、この電線本体を切断し、少なくとも上記高圧放電ランプ側の端末加工をしてから上記絶縁層の表面に上記無機質溶液を付着させるようにすれば、無機質材料付着前の状態、すなわち電線の柔軟性が低下していない状態で端末加工ができ、その作業をより容易に行うことができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フード内に電力供給電線が配線されない照明装置の概要を示す説明図である。
【図2】フード内に電力供給電線の一部が配線される照明装置の概要を示す説明図である。
【図3】(a)は本発明にかかる高圧放電ランプの電力供給電線におけるフード内部分以外の部分の断面図、(b)はフード内部分の断面図である。
【符号の説明】
2 高圧放電ランプ
4 フード
10 高圧放電ランプの電力供給電線
11 導体
12 絶縁層
14 紫外線遮断層
Claims (4)
- 高圧放電ランプを収容するフードを貫通する状態で上記高圧放電ランプに接続され、この高圧放電ランプに電力を供給する高圧放電ランプの電力供給電線において、導体の周囲にシリコンからなる絶縁層が形成されることにより電線本体が構成され、かつ、この電線本体において上記フード内に配線される部分と略同等の部分のみその絶縁層の表面が紫外線を遮断する無機質材料で覆われていることを特徴とする高圧放電ランプの電力供給電線。
- 請求項1記載の高圧放電ランプの電力供給電線を製造するための方法であって、上記導体の周囲にシリコンからなる絶縁層を形成して電線本体を製造した後、この絶縁層の表面に上記無機質材料を含有する無機質溶液を付着させ、これを乾燥させることを特徴とする高圧放電ランプの電力供給電線の製造方法。
- 請求項2記載の高圧放電ランプの電力供給電線の製造方法において、上記絶縁層を形成して電線本体を製造した後、この電線本体を切断し、少なくとも上記高圧放電ランプ側の端末加工をしてから上記絶縁層の表面に上記無機質溶液を付着させることを特徴とする高圧放電ランプの電力供給電線の製造方法。
- 光源である高圧放電ランプと、この高圧放電ランプを収容するフードと、このフードを貫通する状態で上記高圧放電ランプに接続され、この高圧放電ランプに電力を供給する電力供給電線とを備えた照明装置において、上記電力供給電線の本体が、導体の周囲にシリコンからなる絶縁層が形成されてなり、かつ、この電線本体において上記フード内に配線される部分と略同等の部分のみその絶縁層の表面が紫外線を遮断する無機質材料で覆われていることを特徴とする高圧放電ランプを用いた照明装置。
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