JP3644021B2 - 雑音除去方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、拡散符号によりスペクトラム拡散変調した各種の伝送データ又は再生データに重畳された雑音を除去して、データを誤りなく復元する為の雑音除去方法及び装置に関する。
【0002】
本発明の雑音除去方法及び装置を適用する分野は多岐にわたるもので、元のデータに復元する手段を広義のモデムとすると、電力線を伝送路としてデータを伝送する電力線搬送通信システムのモデム、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等を含むxDSLモデム、IEEE802.11a,IEEE802.11b等による標準化された比較的近距離の無線通信システムのモデム、或いは、データを蓄積して再生する磁気ディスク装置や光ディスク装置、データを印刷してスキャナーにより読取るバーコードリーダー等もモデムの一種である。以下、高雑音環境下のシステムの一例として、電力線搬送通信システムを例に説明する。
【0003】
【従来の技術】
電力線搬送通信システムは、例えば、図18に示すように、配電変電所101に設けたアクセスノード102から光ファイバー103を、例えば、6kVの高圧配電線に沿って敷設し、この高圧配電線に接続した変圧器105により、6kVの高圧を100V又は200Vに変圧して低圧配電線106を介して配電する。この変圧器105の位置に配電線搬送モデム104を配置して、光ファイバー103と低圧配電線106との間のデータの変復調中継を行い、低圧配電線106から引込線107を介して各家庭の分電盤108に接続し、この分電盤108からの屋内配電線109に、例えば、冷蔵庫111,ファクシミリ装置112,エアコン113,コンセント110等を接続し、コンセント110に電源ケーブルを介してモデム114を接続し、このモデム114に、10BASE−T等によるLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を介してパーソナルコンピュータ(パソコン)115を接続した構成とする。
【0004】
パソコン115を接続したモデム114と配電線搬送モデム104との間は、電力線搬送通信によりデータを伝送し、配電線搬送モデム104とアクセスノード102との間は光ファイバー103を介して光信号によりデータを伝送する構成の場合を示し、パソコン115によるインターネット接続や家電機器の集中管理等を可能とする。又低圧配電線106から例えば30戸の家庭に対する引込線107を接続する場合が一般的であり、電力線搬送通信システムの伝送路に相当する低圧配電線106及び屋内配電線109は、複雑な伝送特性を有するものとなる。又エアコン113等の各種の家電機器は、インバータ制御構成が多くなっていることから、屋内配電線109に重畳される雑音成分は非常に大きいものとなる。
【0005】
又電力線搬送通信システムに於ける伝送帯域について、kHz帯は、家電機器のインピーダンスや雑音の影響を受けやすく、又その場合の帯域は、450kHz以下に制限されることから、伝送速度は低速となる。一方、MHz帯は、漏洩電界の許容値が厳しいので、適用エリアが一部制限されるが、広帯域を使用して高速伝送が可能となる。
【0006】
一般に、スペクトラム拡散通信は、雑音による影響が少ないものと考えられている。図19はスペトラム拡散通信についての概要を示すもので、(A)は送受信部の概要を示し、音声,画像,データ等の情報を情報変調部121に於いて一次変調のディジタル変調を行い、拡散変調部122に於いて、拡散符号生成部123からの拡散符号により二次変調としての拡散変調を行って送信する。この場合は、スペクトラム拡散変調した信号を無線周波数に変調してアンテナから送信し、受信部のアンテナで受信し、拡散復調部124に於いて、拡散符号生成部126からの拡散符号により逆拡散復調し、情報復調部125に於いてディジタル復調して、情報を復元する。
【0007】
又図19の(B)は拡散変調部122を乗算器127により構成した場合を示し、(C)は拡散変調の動作を示すもので、この(C)に示す±1の振幅のディジタル変調信号(a)と、±1の拡散符号(b)とを、(B)に示す乗算器127に入力して乗算すると、拡散変調信号(c)は、(C)に示す±1の振幅となる。そして、(D)に示すように、拡散前の信号の電力密度を左側に、拡散後の信号の電力密度を右側にそれぞれ示すように、拡散変調信号は、広い帯域内に拡散されたものとなる。
【0008】
前述のスペクトラム拡散通信を電力線搬送通信に適用した場合の概略仕様として、伝送速度は、9600bps、送信部は、一次変調をDPSK(Differential Phase Shift Keying)、二次変調をDS−SS(Direct Spread−Spread Spectrum)とし、受信部は、一次,二次共に帯域分割遅延検波、周波数帯域は150〜350kHz、電力密度は10mW/10kHz以下、送信電力包絡線形状は周波数軸に対して平坦、拡散符号はメサ型包絡線生成符号、受信感度は60dBμV以下とすることが知られている。
【0009】
図20は前述のスペクトラム拡散通信を適用したモデムの概要を示すもので、同図に於いて、131は差動符号化部、132は拡散変調部、133は拡散符号生成部、134はDA変換器(DAC)、135はバンドパスフィルタ(BPF)、136は増幅器(AMP)、137はカップリング部、138はバンドパスフィルタ(BPF)、139はAD変換器(A/D)、140−1〜140−nはバンドパスフィルタ(BPF)、141−1〜141−nは遅延検波部、142は合成部を示す。又SDは送信データ、RDは受信データ、CLKはクロック信号、ACは交流の屋内配電線を示す。
【0010】
送信データSDを差動符号化部131により差動符号化し、拡散変調部132に於いて拡散符号生成部133からの拡散符号を乗算して拡散変調し、DA変換器134によりアナログ信号に変換し、バンドパスフィルタ135により不要帯域を除去し、増幅器136により増幅して、高周波トランスやコンデンサ等を含むカップリング部137から屋内配電線ACにスペクトラム拡散変調信号として送出する。又屋内配電線ACを介して受信した信号をバンドパスフィルタ138により不要帯域を除去し、AD変換器139によりディジタル信号に変換し、拡散帯域をn個に分割してそれぞれの中心周波数を通過周波数としたバンドパスフィルタ140−1〜140−nにより、拡散帯域内のn個の信号成分として抽出し、遅延検波部141−1〜141−nにより遅延検波し、合成部142により合成して、受信データRD及びクロック信号CLKを出力する。
【0011】
通常のスペクトラム拡散通信に於ける雑音成分は、伝送帯域内に分散して重畳されるものであり、拡散符号との相関をとる逆拡散処理により、雑音成分は拡散符号との相関値が零となるから、雑音成分による影響は少ないものである。しかし、電力線搬送通信システムに適用した場合、伝送路の特性が不確定且つ変動し、インバータ等によるスイッチング雑音や負荷変動に伴う雑音が重畳され、雑音成分が信号成分より大きい状態となる場合も発生する。このような場合は、前述の受信スペクトラム拡散変調信号を帯域成分対応に遅延検波しても、雑音成分による影響が大きく、データを正しく復元することができないものである。
【0012】
このような電力線搬送通信システムに於ける雑音を除去して誤りのない高速データ伝送を可能としたシステムを先に提案している(例えば、特願2000−359949参照)。即ち、図21に示すように、送信信号点発生部151に於いて、送信データに対応した信号点を与える。例えば、(1)データ信号点として、I,Q軸に対して4相位相変調のような信号点とした場合を示す。次にゼロ点挿入部152に於いてゼロ点を挿入する。このゼロ点挿入により、(2)データ+ゼロ点として示すように、I,Q軸の中心に挿入したゼロ点が現れる。
【0013】
伝送路153は、前述の電力線搬送通信システムに於ける伝送路であり、その場合の雑音スペクトラムを示し、150kHz以下の雑音成分が非常に大きいものである。それにより、伝送路153を介した信号は、(4)データ+ゼロ点+雑音として示すように、大きな雑音成分によって信号点は全く不明の状態となる。そこで、ゼロ点間引部155によりゼロ点に重畳されている雑音成分を抽出し、補間予測部156により信号点上の雑音成分を予測し、雑音除去部154に於いて信号点上の雑音を除去する。それにより、(5)データ信号点として示すように、(1)データ信号点と同様な信号点を得ることができるから、受信点再生部157に於いて誤りなくデータを復元することができる。
【0014】
図22は雑音除去動作の説明図であり、前述のゼロ点挿入部152に於いて、(a)送信ゼロ点挿入として示すように、時系列上のデータ信号S1,S2,・・・にゼロ点信号を挿入する。それにより、伝送帯域としての周波数が、例えば、192kHzの時に2倍の384kHzとなる。そして、伝送路153を介して受信した受信信号は、(b)に示すように、データ信号S1,S2,・・・には雑音N1,N2,・・・が重畳され、ゼロ点には雑音Na,Nb,Nc,・・・が重畳された状態となる。ゼロ点間引部155及び補間予測部156に於いては、(c)間引き/補間予測として示すように、ゼロ点に於ける雑音Na,Nb,Nc,・・・を抽出する。そして、この雑音Na,Nb,Nc,・・・を用いて信号点S1,S2,S3,・・・に重畳された雑音N1,N2,N3,・・・を補間処理により求める。このようにして求めた雑音N1,N2,N3,・・・を用いて、(b)に示す受信信号からゼロ点を除去し、且つ補間処理により求めた雑音N1,N2,・・・を除去することにより、(d)雑音除去後として示すデータ信号を得ることができる。
【0015】
ゼロ点の挿入は、図23に示すように、各種の方式を適用することができるもので、信号点Sに対してゼロ点の挿入を、(a)3個置き挿入、(b)2個置き挿入、(c)1個毎に挿入、(d)信号点S間に2個挿入、(e)信号点S間に3個挿入の場合について示す。ゼロ点の挿入個数が多い程、雑音除去の効果が大きくなるが、伝送周波数帯域が広くなる。又同一の帯域とすると、伝送速度が低下する。
【0016】
又前述のゼロ点挿入を適用したモデムを図24に示す。同図の(A)はモデムの各部構成、(B)は信号波形の一例を示す。又SDは送信データ、241はスクランブル処理(SCR)と直並列変換部(S/P)とを含む変換部、242はグレーコード/ナチュラルコード変換部(G/N)と符号の和分処理(和分)とを含む符号変換部、243は直並列変換し更に符号変換した信号を基に信号点を形成する為の信号点発生部、244はロールオフフィルタ(ROF)、245はDA変換部(D/A)、246はローパスフィルタ(LPF)と変調部(MOD)、247はバンドパスフィルタ(BPF)、248は送信クロック発生部(TX−CLK)、TX−lineは送信回線を示す。
【0017】
又RX−lineは受信回線、251はバンドパスフィルタ(BPF)、252は復調部(DEM)とローパスフィルタ(LPF)、253はAD変換部(A/D)、254はロールオフフィルタ(ROF)、256はタイミング抽出部(TIM)、257は位相同期発振部(PLLVCXO)、258は受信クロック発生部(RX−CLK)、259は等化部(EQL)、260はキャリア自動位相制御部(CAPC)、261は判定部(DEC)、262は差分処理(差分)とナチュラルコード/グレーコード変換(N/G)との機能を含む符号変換部、263は並直列変換部(P/S)とデスクランブル処理部(DSCR)とを含む変換部、RDは受信データを示す。
【0018】
送信データSDは、変換部241に於いてスクランブル処理した後、変調信号点数等に対応した並列データに変換し、符号変換部242に於いてグレーコードからナチュラルコードに変換し、復調基準位相による影響を受けないで復調可能とするように和分処理を施し、信号点発生部243に於いて変調信号点数に従った信号点とし、ロールオフフィルタ244により高域成分を除いて、DA変換部245によりディジタル信号に変換し、ローパスフィルタ(LPF)を介して変調部(MOD)246に入力して変調し、バンドパスフィルタ247により送信帯域に制限して送信回線TX−lineに送出する。
【0019】
又受信回線RX−lineを介して受信した信号をバンドパスフィルタ251により不要帯域成分を除去し、復調部(DEM)とローパスフィルタ(LPF)252に於いて復調し、且つローパスフィルタにより高域成分を除去し、AD変換部253に於いてディジタル信号に変換し、ロールオフフィルタ254を介して等化部259に入力し、波形等化等を行い、キャリア自動位相制御部260により位相調整を行い、判定部261に於いてデータ判定を行い、符号変換部262に於いて送信部側の和分処理と符号変換との逆の差分処理とナチュラルコード/グレーコード変換処理とを行い、変換部263に於いて直列符号に変換し、且つデスクランブル処理を行って受信データRDとする。
【0020】
変調部246は、例えば、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)等のQAM変調手段を有し、復調部252は、64QAM等のQAM復調手段を有するもので、送信回線TX−lineと受信回線RX−lineとを含めて、点線枠内はQAM伝送路の機能を有することになる。又図24の(B)は、信号のピーク点を除いて伝送速度に対応した一定の周期でゼロ点が現れるナイキスト間隔で送信する場合の信号波形の一例を示し、矢印は、最大振幅となる信号点に対応したデータの場合を示している。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
家庭内等には各種の電気機器が配置され、100V又は200Vの低圧の屋内配電線に接続されている。そこで、屋内配電線を伝送路として利用したホームネットワークが提案されている。その場合に、前述の電力線搬送通信システムを適用することができる。又煙や温度等による火災検知の為のセンサ,ガス漏れ検出のセンサ,不法侵入検出のセンサ等の各種のセンサが配置されており、これらをホームネットワークに接続することも提案されている。
【0022】
又前述のホームネットワークと、前述の低圧配電線を介して、又は電話線を介して、或いは無線回線を介して、各種のサービスセンタと接続することにより、
(a)宅内機器の遠隔故障診断,保守等を行う機器リモートメンテナンスサービス、
(b)携帯電話機等からアクセスして、宅内機器の遠隔モニタ,遠隔操作,高齢者等の状態の遠隔モニタ等を行うモバイルサービス、
(c)電気使用量や料金の遠隔モニタ,省エネルギ運転制御等のエネルギサービス、
(d)ブラインド,換気扇,照明の集中操作等の快適生活支援サービス、
(e)医療機関と接続して健康管理,高齢者の状態管理等を行うホームヘルスサービス、
(f)センサの検出情報を伝送することによる防火,防災,防犯等のサービスを行うセキュリティサービス等の各種のサービスシステム、
を実現することができる。
【0023】
その場合の各種のデータの伝送手段として、図25に示すように、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、SS(Spread Spectrum)、CDMA(Code Division Mulitple Access)、マルチキャリア、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)を適用した場合、高速化の可能性と、マルチパスによる影響と、波形等化の容易性と、雑音の影響と、低コスト化及び省電力化とについて課題を検討すると、大振幅雑音の課題を解決することが最も重要であることが判る。
【0024】
前述のように、家電機器は、インバータ制御の構成が増加し、スイッチング制御による雑音源となっている。又電磁誘導炊飯器等の電磁波を放射する電気機器が増加している。その為に、ホームネットワークを構成する場合、大きなレベルの雑音が各種のデータに重畳されて伝送されることになる。その場合に、前述のように、送信側でゼロ点を挿入し、そのゼロ点に重畳される雑音を抽出することにより、信号点に重畳される雑音を補間予測して除去することができるが、送信側にゼロ点を挿入する機器が普及してない状態に於いては、受信側で雑音除去を行う必要がある。しかし、大振幅雑音が重畳された場合の雑音除去によるデータ受信処理は実現されていない。
【0025】
本発明は、スペクトラム拡散を適用して伝送し、伝送過程で重畳された大振幅雑音についても除去して、誤りのないデータの受信処理を可能とすることを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明の雑音除去方法は、拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去方法であって、スペクトラム拡散変調された信号と拡散符号とを相関フィルタ部等により相関演算するステップと、このステップで得られた相関出力信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化した後合成するタイミング補間ステップと、このタイミング補間ステップで遅延等化されて合成した前記相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して、センタ上の雑音成分を補間予測処理するステップと、この補間予測処理するステップで得られた雑音成分を用いてセンタ上の雑音成分を除去するステップとを含むものである。
【0027】
又本発明の雑音除去装置は、拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去装置であって、スペクトラム拡散変調された信号と前記拡散符号との相関演算処理する相関フィルタ部等のフィルタ手段と、このフィルタ手段からの相関出力信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化して合成するタイミング補間手段と、このタイミング補間手段により遅延等化された前記相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出してセンタ上の雑音成分を補間予測処理する補間予測手段と、この補間予測手段により得られた雑音成分を用いてセンタ上の雑音成分を除去する雑音除去部とを有する。
【0028】
又本発明の雑音除去方法は、拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去方法であって、スペクトラム拡散変調された信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化した後合成するタイミング補間ステップと、このタイミング補間ステップで得られた信号と前記拡散符号とを相関演算するステップと、この相関演算するステップで得られた相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して、センタ上の雑音成分を補間予測処理するステップと、この補間予測処理するステップで得られた雑音成分を用いて、センタ上の雑音成分を除去するステップとをふくむものである。
【0029】
又本発明の雑音除去装置は、拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去装置であって、スペクトラム拡散変調された信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化して合成するタイミング補間手段と、このタイミング補間手段で得られた信号と前記拡散符号とを相関演算処理する相関フィルタ部等のフィルタ手段と、このフィルタ手段で得られた相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して、センタ上の雑音成分を補間予測する補間予測手段と、この補間予測手段で得られた雑音成分を用いて、センタ上の雑音成分を除去する雑音除去部とを有するものである。
【0030】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態の説明図であり、1は差動符号化部、2は拡散変調部、3は拡散符号生成部、4はDA変換器(DAC)、5はバンドパスフィルタ(BPF)、6は増幅器(AMP)、7はカップリング部、8はバンドパスフィルタ(BPF)、9はAD変換器(A/D)、10は復調及びロールオフフィルタ部(DEM&ROF)、11は相関フィルタ部、12は位相同期及び電圧制御発振器(PLL/VCXO)、13はTIM(タイミング)抽出部、14は雑音除去部、15はFRM(フレーム)抽出部、16は遅延検波部、17はCLK(クロック信号)再生部、SDは送信データ、RDは受信データ、CLKはクロック信号を示し、ACは屋内配電線を示す。即ち、電力線搬送通信システムのモデムに適用した場合を示す。
【0031】
送信データSDを差動符号化部1に於いて差動符号化し、拡散変調部2に於いて拡散符号生成部3からの拡散符号を乗算して拡散変調し、DA変換器4に於いてアナログ信号に変換し、バンドパスフィルタ5により不要帯域成分を除去し、増幅器6により所定のレベルに増幅して、高周波トランス等によるカップリング部7を介して屋内配電線ACに、スペクトラム拡散変調信号として送出する。なお、拡散符号生成部3に於いて生成する拡散符号としては、M系列、ゴールド系列、Wavelet系列、アダマール系列等の各種の直交系列を用いることができる。前述の送信部に於いては、先に提案した雑音除去手段のように、ゼロ点の挿入を行っていないものである。
【0032】
又受信部に於いては、屋内配電線ACを介して受信した変調データを、カップリング部7を介してバンドパスフィルタ8に入力し、不要帯域成分を除去し、AD変換器9により受信スペクトラム拡散変調信号をディジタル信号に変換する。復調及びロールオフフィルタ部10は、伝送帯域の信号をベースバンド信号に復調処理し、且つロールオフフィルタ処理を行うもので、その出力信号を相関フィルタ部11とTIM抽出部13とに入力する。相関フィルタ部11は、通信相手の送信部の拡散符号と同一の拡散符号を用いて相関演算を行うフィルタ手段であり、相関一致の時に出力を1又は−1、相関不一致の時に出力を0(又は1/n、n=拡散系列の拡散符号数)とする構成が一般的である。
【0033】
又TIM抽出部13により抽出したタイミング信号をFRM抽出部15と位相同期及び電圧制御発振器12に入力し、この抽出したタイミング信号に位相同期した電圧制御発振器の出力信号を復調及びロールオフフィルタ部10とAD変換器9とに、それぞれのタイミング信号として入力する。
【0034】
FRM抽出部15は、相関フィルタ部11の出力信号とTIM抽出部13からのタイミング信号とを基に、スペクトラム拡散のセンタを抽出する。即ち、センタは1、その他は0の信号として抽出する。雑音除去部14は、センタ(信号点)以外の時間軸上の波形からセンタ上の雑音成分を補間予測して、減算処理によりセンタ(信号点)上の雑音成分を除去する。
【0035】
そして、遅延検波部16により遅延検波して、位相ずれを補償してデータを再生し、受信データRDとする。又CLK再生部17は、TIM抽出部13に於いて抽出した高速のタイミング信号と、FRM抽出部15に於いて抽出した低速の信号とを基にクロック信号CLKを再生する。即ち、FRM抽出部15からのスペクトラム拡散のセンタを示す同期信号を基に、TIM抽出部13から抽出したタイミング信号の位相を同期化して、クロック信号CLKを出力することができる。
【0036】
図2は復調及びロールオフフィルタ部の説明図であり、図1に於けるAD変換器(A/D)9により受信スペクトラム拡散変調信号をディジタル信号に変換して入力する復調及びロールオフフィルタ部10の構成を示し、(A)は復調器(DEM)21と、ロールオフフィルタ(ROF)22とキャリア発生回路(CRR)23とにより構成した場合を示す。又(B)は復調及びロールオフフィルタ部(DEM&ROF)24と係数発生部25とにより構成した場合を示す。
【0037】
図2の(A)に示す構成に於いて、キャリア発生回路23は、電力線搬送通信システムに適用した場合、使用帯域を10〜450kHzとすると、中心キャリア周波数は、例えば、230kHz(=(10+450)/2)とし、cosαと−sinαとの直交したキャリアを生成して復調器21に入力する。このキャリア発生回路23は、各種の構成を適用することができるもので、例えば、ROMを用い、キャリア周波数に従ったクロック信号により読出してキャリアとする構成も可能である。
【0038】
又復調器21は、キャリア発生回路23からのキャリアによりベースバンド信号に変換する。このベースバンド信号はベクトル信号であり、ロールオフフィルタ22により10〜450kHz帯域以外の不要帯域成分を除去する。なお、使用帯域を150〜350kHzとした場合は、キャリア周波数を250kHz程度に選択し、ロールオフフィルタ22の通過帯域を150〜350kHzに設定することになる。
【0039】
又図2の(B)に示す構成に於いて、係数発生部25は、図1に示すTIM抽出部13からのタイミング信号に従って復調及びロールオフフィルタ部24の係数の時間位相を制御する為のものである。復調器とロールオフフィルタとを一体化した構成は、例えば、特公平1−49225号公報に示されており、又タイミングの引込みについては、例えば、特公平2−49065号公報に示されており、このような技術を適用することができる。
【0040】
図3はTIM抽出部の説明図であり、26はパワー算出部(PWR)、27はバンドパスフィルタ(BPF)、28はTIM(タイミング)位相ベクトル化部を示す。TIM抽出部13は、スペクトラム拡散変調速度のタイミング信号を抽出するものであり、パワー算出部26により、復調及びロールオフフィルタ部(DEM&ROF)10(図1参照)からの信号はベクトル信号であり、この二乗和を求めることにより、例えば、点線矢印で示すスペクトラムを得ることができる。なお、線スペクトラムをフィルタで抽出することによりタイミング信号とするものである。
【0041】
パワー算出部26の出力信号を入力するバンドパスフィルタ27は、スペクトラム拡散変調速度成分の中心周波数を有するもので、前述の線スペクトラムを抽出し、TIM位相ベクトル化部28によりベクトル化されたタイミング信号とする。例えば、入力されたタイミング信号と1サンプル分遅延させたタイミング信号との90°位相差のタイミング信号を生成する。このTIM抽出部13については、例えば、特許第2721454号公報に示されており、このような技術を適用することができる。
【0042】
図4は図1に於ける位相同期及び電圧制御発振器(PLL/VCXO)12の構成を示すもので、31はθ変換部、32は二次系PLL(位相同期回路)、33はDA変換器(D/A)、34は水晶発振器を用いた電圧制御水晶発振器(VCXO)、35は積分回路を示す。θ変換部31は、前述のTIM抽出部13からのベクトル化されたタイミング信号を、位相角により定まるスカラ信号に変換する。このスカラ信号を二次系PLL32と積分回路35とに入力する。
【0043】
二次系PLL32は、二次系の積分回路に相当し、θ変換部31からのスカラ信号を積分して位相誤差信号とし、DA変換器33によりアナログ信号の制御電圧として電圧制御水晶発振器34に加えることにより、出力信号位相を制御する。この電圧制御水晶発振器34の出力信号をAD変換器9(図1参照)にサンプリングタイミング信号として加える。又積分回路35により、θ変換部31からのスカラ信号を積分して、復調及びロールオフフィルタ部10(図1参照)に入力する。この位相同期及び電圧制御発振器12は、例えば、特公平2−49065号公報、特開昭62−35717号公報及び特開昭62−108643号公報に示された技術を適用することもできる。それにより、タイミング位相の高速引込みも可能となる。
【0044】
図5は図1に於ける相関フィルタ部11の構成を示すもので、36は相関フィルタ、37は係数発生部を示す。係数発生部37は、相関フィルタ36の演算に必要な係数を発生するもので、例えば、ROMにより構成して、±1の直交系列係数を読出す構成とすることができる。又相関フィルタ36は、係数発生部37からの直交系列の係数を用いて時間軸上の相関をとることにより、時間軸上で、センタを1又は−1、その他を0(又は1/n、n=拡散系列の拡散符号数)とする相関出力を得ることができる。
【0045】
図6は相関演算結果の一例の説明図であり、15チップのPNパターンの直交系列の“111101011001000”を用い、“1”を1、“0”を−1として、相関フィルタ36に±1の信号が入力された場合の演算結果を、0次相関から14次相関までについてそれぞれの累算結果Σを示す。即ち、0次のみは15チップについて全て1であるから、累算結果Σは15となるが、その他は−1となる。
【0046】
図7は図1に於けるFRM抽出部15の構成を示すもので、41はパワー算出部(PWR)、42は差分算出部、43は判定部(DEC)、44は閾値算出部を示す。前述の相関フィルタ部11の出力信号は、相関が最大値となるセンタで1、その他は0の信号系列で、ベクトル信号に相当するから、パワー算出部41に於いて二乗和によりパワーを算出する。この算出したパワーを示す信号には、伝送路に於いて重畳された大きな雑音成分が含まれている。
【0047】
そこで、差分算出部42に於いて時間軸上のパワー値の差分を求める。即ち、時間軸上のサンプル間のパワー値の差分を求め、全て雑音成分の場合はゼロとなる。このようにして雑音成分を除去する。この差分算出過程に於いて前述のセンタの値は時間軸上の差分を求めることにより、正負の値として出力される。そして、閾値算出部44は、差分値の時系列信号から1フレーム間(15チップのPNパターンの場合は、15サンプル分)の積分値を求めて、判定部43に加える判定閾値とする。この判定閾値と、差分算出部42の出力信号とを比較判定し、判定閾値を超えた信号をセンタ位置信号とすることができる。なお、閾値算出部44に於いて差分値の時系列信号を複数フレーム間の積分値のフレーム間平均による判定閾値を求めることも可能であり、これにより雑音耐力を高くすることができる。
【0048】
図8は本発明の他の実施の形態の説明図であり、図1と同一符号は同一部分を示し、相関出力信号の遅延等化又は遅延等化した後に相関を求める手段として、相関フィルタ部11とタイミング補間部(TIP)18とを含む構成を用いた場合を示す。このタイミング補間部18は、複数の帯域内を分割して処理する複数のタイミング補間フィルタを含み、相関フィルタ部11からの相関出力信号を入力し、FRM抽出部15との間でタイミング信号を転送して、遅延等化を行うものである。そして、遅延等化した相関出力信号を雑音除去部14に入力する。それにより、雑音除去部14に於ける雑音除去処理が容易となる。
【0049】
図9は本発明の更に他の実施の形態の説明図であり、図8と同一符号は同一部分を示す。図8に於いては、スペクトラム拡散変調された信号を相関フィルタ部11に入力し、その相関出力信号をタイミング補間部18に入力して遅延等化を行うものであるが、図9に於いては、スペクトラム拡散変調された信号をタイミング補間部18に入力して遅延等化した後、相関フィルタ部11に入力して、拡散符号と相関を求め、相関出力信号を雑音除去部14に入力する。この実施の形態に於いては、FRM抽出部15は、相関フィルタ部11の出力信号とTIM抽出部13からのタイミング信号とを基に、スペクトラム拡散のセンタを抽出して、タイミング補間部18にそのタイミング信号を転送する。
【0050】
図10は図8及び図9に於けるタイミング補間部18の要部構成を示すもので、50−1,50−2,・・・は補間部、51はタイミング補間フィルタ(TIP1,TIP2,・・・)、52は積分回路、53は位相誤差抽出部、54はバンドパスフィルタ(BPF)、55はパワー算出部(PWR)、56は合成部を示す。即ち、複数の補間部対応のタイミング補間フィルタ51を備えて、帯域内のそれぞれの時間等化を可能としている。
【0051】
図8に於いては、相関フィルタ部11からの信号が入力され、図9に於いては、復調された信号が入力されるもので、補間部50−1,50−2,・・・のタイミング補間フィルタ51に並列的に入力される。このタイミング補間フィルタ51の出力信号をパワー算出部55に於いてパワーを算出し、バンドパスフィルタ54を介して位相誤差抽出部53に入力する。
【0052】
バンドパスフィルタ54は、例えば、9600bpsの伝送速度としたスペクトラム拡散通信に於いては、9600Hzの信号を抽出する。位相誤差抽出部53は、FRM抽出部15からのフレーム位相信号REFと比較し、比較結果の位相誤差信号を積分回路52に於いて積分し、位相誤差がゼロとなるように、タイミング補間フィルタ51を制御する。それにより、補間部50−1,50−2,・・・対応に遅延等化を行い、合成部56により合成し、図8に於いては、雑音除去部14に入力し、図9に於いては、相関フィルタ部11に入力する。
【0053】
図11は、図1,図8及び図9に於ける雑音除去部14の説明図であり、71は周波数シフト部、72は間引き部、73は補間予測部、74は周波数逆シフト部、75は遅延回路、76は加算部、77は遅延回路を示し、遅延回路75,77のTはサンプリング間隔を示す。なお、遅延回路75,77は、T/m(例えば、m=4)の遅延素子を複数接続して補間予測等の処理遅延時間を補償する為のものである。
【0054】
信号A=x+jyは、周波数シフト部71に於いてB=f0 =cosωt+jsinωtを乗算する。その乗算出力信号Cは、C=(xcosωt−ysinωt)+j(xsinωt+ycosωt)となる。そして、間引き部72に於いて、ゼロ点信号(FRM抽出部15からのFRM信号)により切替えを制御して、信号成分のタイミングに対してはゼロ点挿入を行い、雑音成分のみのタイミングに対しては、そのまま出力する。即ち、相関フィルタによる相関が最大となる信号点以外をゼロ点とし、信号点に対してはゼロ挿入を行い、ゼロ点の雑音成分はそのまま通過させる。このゼロ点は図22について説明しているゼロ点に相当し、ゼロ挿入する信号点は、信号点S1,S2,・・・に相当する。そして、相関値が最大となる信号点以外は雑音成分のみのタイミングであるから、ゼロ挿入された信号点と、雑音成分のみのゼロ点とを含む信号Dを補間予測部73に入力することになる。
【0055】
補間予測部73に於いては、雑音成分を用いて信号点(ゼロ挿入点)の雑音成分を補間処理により予測し、その信号Eを周波数逆シフト部74に入力する。この周波数逆シフト部74に於いては、遅延回路77を介した信号F(*は複素共役を示す)を信号Eに乗算する。この場合、周波数シフト部71に於いて受信信号Aに信号Bを乗算して周波数シフトを行い、その信号Bの複素共役の信号Fを補間予測部73の出力信号Eに乗算することにより、周波数逆シフトを行うことができる。そして、信号Aを遅延回路75により遅延させた信号Hから、周波数逆シフトした信号Gを加算部76に於いて減算することにより、即ち、入力された信号Hから補間予測した雑音成分の信号Gを減算して雑音除去後の信号Kを出力する。
【0056】
図12は、図11に於ける補間予測部73及び図1,図8,図9に於ける相関フィルタ部11の要部構成を示すもので、82は遅延素子(T/m)、83は乗算器、84は加算器(Σ)を示す。又C1,C2,C3,・・・Ckは、補間予測部73を構成する場合はフィルタ係数、相関フィルタ部11を構成する場合は拡散符号とする。トランスバーサル型フィルタの構成を有するものであり、補間予測部73の場合、間引き部72(図11参照)の出力信号Dを入力して、遅延素子82と乗算器83と加算器84とを含む補間フィルタ構成により、ゼロ挿入タイミング(信号点)の前後の出力信号D(ゼロ点に重畳されている雑音成分)を用いた補間予測処理により、雑音成分を示す信号Eを出力する。
【0057】
図13は、雑音除去部をバンドパスフィルタを用いて実現した場合の要部構成を示し、85は遅延回路、86は図12の周波数シフト部71に相当する位置の通過回路、87は間引き部、88は補間予測部、89は加算器を示す。相関フィルタ部の出力信号Aは、遅延回路85と間引き部87とに入力される。間引き部87は、図11に於ける間引き部72と同様に、信号成分(ゼロ点信号)のタイミングではゼロ挿入を行い、雑音成分のみのタイミングではそのまま通過させる。この間引き部87からの信号B(図11に於ける信号Dに相当する)を補間予測部88に入力する。
【0058】
補間予測部88は、雑音除去を行う周波数成分のみを抽出するバンドパスフィルタの構成とする。そして、この補間予測部88の出力信号C(図11に於ける信号Gに相当する)を加算器89に入力し、遅延回路85からの信号D(図11に於ける信号Hに相当する)から減算する。即ち、雑音成分を含む信号Dから、所望の周波数成分の雑音成分を除去した信号E(図11に於ける信号Kに相当する)として、遅延検波部16に入力することができる。この場合の補間予測部88は、例えば、図11に示すトランスバーサル型フィルタの構成により実現することができる。
【0059】
図14は、雑音除去の動作説明図であり、周波数移動・間引き部91と、補間・再移動部92と、減算部93とによる構成が、図1又は図8の雑音除去部14又は図11の雑音除去部の構成に相当し、相関フィルタ部90は、図1又は図8の相関フィルタ部11に相当し、受信信号点再生部94は、図1又は図8の遅延検波部16に相当する。又周波数移動・間引き部91は、図11の周波数シフト部71と間引き部72との機能を有し、補間・再移動部92は、図11の補間予測部73と周波数逆シフト部74との機能を有し、減算部93は、図11の加算部76の機能に相当する。
【0060】
又各部(1)〜(6)に於けるスペクトラムの概要について、(1)雑音分布、(2)+96kHzシフト、(3)間引き、(4)補間(IPL)、(5)−96kHzシフト、(6)雑音除去として示し、相関フィルタ部90から雑音除去部に入力される信号は、折り返し成分を含めて−192kHz〜0〜+192kHzの帯域を有するものとし、その場合に、前述のように、電力線搬送通信システムに於いては、高域側より低域側の雑音レベルが高いので、(1)雑音分布として示すスペクトラムとなる。この雑音分布に於ける−192kHz〜−96kHzの帯域成分をA、−96kHz〜0kHzの帯域成分をB、0kHz〜+96kHzの帯域成分をC、+96kHz〜+192kHzの帯域成分をDとして示し、帯域成分はA>B>C>Dの関係のレベルとなる。
【0061】
周波数移動・間引き部91に於いて、周波数を+96kHz移動する処理により、(2)+96kHzシフトとして示すように、各帯域成分A,B,C,Dはそれぞれ96kHz分シフトされ、帯域成分Dは折り返されて−192kHz〜−96kHzの帯域となる。そして、相関フィルタ部90による相関が最大となる信号点に対してはゼロ挿入し、それ以外(ゼロ点に相当)は雑音成分のみであるから、そのまま通過させる間引き処理により、(3)間引きとして示すように、各帯域成分がシフトされる。
【0062】
次に、補間・再移動部92に於ける補間処理により、(4)補間(IPL)として示すように、−96kHz〜+96kHzの帯域の信号となる。そして、周波数移動・間引き部91に於ける周波数シフトの逆シフトを行う再移動として、−96kHz移動する処理により、(5)+96kHzシフトとして示すように、−196kHz〜0kHzの帯域に各帯域成分がシフトされる。
【0063】
そして、(1)雑音分布として示す信号から、(5)−96kHzシフトとして示す信号を減算部93に於いて減算すると、(6)雑音除去として示すように、帯域成分C,Dのみが残る。即ち、低域側のレベルの大きい雑音成分が除去され、受信信号点再生部94に入力されて、データを復元することができる。即ち、先に提案した雑音除去手段は、送信側にゼロ点を挿入するものであるが、本発明に於いては、送信側にゼロ点を挿入しなくても、受信側に於いて等価的にゼロ点挿入と同様な手段により、大きな雑音が重畳されていても、確実に除去することができる。
【0064】
図15の(A)はCLK再生部、(B)は遅延検波部をそれぞれ示し、CLK再生部17は、TIM抽出部13からの高速のタイミング信号と、FRM抽出部15からの低速の同期信号とを基に、分周処理する分周回路95により構成することができる。又遅延検波部16は、1フレーム分の遅延時間の遅延回路96と、乗算器97とを含む構成を有し、例えば、9600bpsのモデムに適用する場合は、遅延回路95の遅延時間を1/9600(s)とすることができる。又*印は複素共役信号を示し、雑音除去部により雑音除去処理された信号が入力されて、遅延検波が行われる。この遅延検波により、位相不確定分はキャンセルされて、安定な受信データの再生が可能である。
【0065】
図16は間引き処理の説明図であり、(1)〜(4)の左側は時間軸上の振幅で示すサンプル値、右側はスペクトラムを示す。(1)信号S(n)のサンプル値とスペクトラムについて、信号S(n)のZ変換Aは、
A=S(z)=ΣS(n)z-n
で表され、スペクトラムは0〜fs/2となる。なお、fsはサンプリング周波数を示す。
【0066】
又(2)信号(−1)n *S(n)のサンプル値とスペクトラムについて、即ち、信号S(n)の反転信号のZ変換Bは、
B=Z〔(−1)n S(n)〕=S(−z)
と表すことができる。この場合、信号点に於ける信号成分のみに対して反転するもので、そのスペクトラムは右側に示すように反転したものとなる。この反転した信号と反転前の信号とを加算すると、(3)信号t(n)のサンプル値とスペクトラムとして示すものとなる。
【0067】
この加算後の信号のZ変換Cは、
C=Z〔t(n)〕=T(z)=(1/2)*〔S(z)+S(−z)〕
で表される。ここで、信号t(n)は、t(1),t(3),t(5),・・・=0であるから、
T(z)=Σt(2n)*Z-2n
と表すことができる。このt(n)=0の信号点を間引いた信号Dは、
D=u(n)=T(z1/2 )
と表すことができる。そして、最終的な信号Eは、
E=u(z)=〔S(z1/2 )+S(−z1/2 )〕/2
と表すことができる。即ち、(4)信号u(n)のサンプル値とスペクトラムとして示すものとなり、周波数帯域は1/2となる。
【0068】
図17は補間処理を示すもので、(1)信号u(n)のサンプル値とスペクトラムは、図16の(4)信号u(n)のサンプル値とスペクトラムに対応する。間引き処理による信号u(n)は雑音成分のみを有するもので、ゼロ点を挿入すると、(2)信号t(n)のサンプル値とスペクトラムとして示すものとなる。この補間信号t(n)のZ変換Fは、
F=T(z)=Σt(n)z-n
と表すことができる。そして、t(1),t(3),t(5),・・・=0であるから、
F=Σt(2n)z-n=u(n)z-2n
と表すことができるから、
T(z)=U(z2 )
となり、スペクトラムは0〜fs/4の折り返しにより、0〜fs/2の周波数帯域となる。
【0069】
この信号T(z)は、受信信号S(n)と同一速度で、雑音成分のみを含むものであるから、周波数逆シフト部74(図11参照)により受信信号の周波数帯域として、加算器76(図11参照)に於いて減算処理することにより、雑音成分を除去することができる。
【0070】
本発明は、前述の各実施の形態のみに限定されるものではなく、種々付加変更することが可能であり、雑音除去として、電力線搬送通信システムのモデムだけではなく、前述のような各種のモデムに適用することも可能である。又各部の機能をDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)の演算機能によって実現することも可能である。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、相関フィルタ部11により、スペクトラム拡散変調信号と拡散符号との相関を求め、この相関が最大となる信号点(センタ)以外の雑音成分を抽出し、且つ信号点(センタ)の雑音成分を補間予測し、この補間予測した雑音成分を用いて信号点(センタ)上の雑音成分を除去するものであり、先に提案した雑音除去手段のように、送信側に於いてゼロ点挿入を行わない場合でも、信号点(センタ)上に重畳された大きな雑音成分を除去することができる。又タイミング補間部により遅延等化を行うことにより、雑音除去が一層容易となる利点がある。従って、電力線搬送通信システムのモデムのみでなく、各種の高雑音環境下に於ける各種のモデムに適用することが可能である。又タイミング補間部により遅延等化を行うことにより、更に安定した雑音除去と誤り率低減とを実現することができる。又雑音除去部は、比較的簡単なバンドパスフィルタを用いて雑音成分のみを通過させて、信号点(センタ)に重畳された雑音成分を除去する構成とした場合は、比較的簡単な構成で済む利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の説明図である。
【図2】復調及びロールオフフィルタ部の説明図である。
【図3】TIM抽出部の説明図である。
【図4】位相同期及び電圧制御発振器の説明図である。
【図5】相関フィルタ部の説明図である。
【図6】相関演算結果の一例の説明図である。
【図7】FRM抽出部の説明図である。
【図8】本発明の他の実施の形態の説明図である。
【図9】本発明の更に他の実施の形態の説明図である。
【図10】タイミング補間部の説明図である。
【図11】雑音除去部の説明図である。
【図12】補間予測部及び相関フィルタ部の説明図である。
【図13】雑音除去部の説明図である。
【図14】雑音除去の動作説明図である。
【図15】CLK再生部及び遅延検波部の説明図である。
【図16】間引き処理の説明図である。
【図17】補間処理の説明図である。
【図18】電力線搬送通信システムの説明図である。
【図19】スペクトラム拡散通信の説明図である。
【図20】モデムの概要説明図である。
【図21】先に提案した雑音除去機能の説明図である。
【図22】雑音除去動作の説明図である。
【図23】ゼロ点挿入の説明図である。
【図24】モデムの説明図である。
【図25】課題の説明図である。
【符号の説明】
1 差動符号化部
2 拡散変調部
3 拡散符号生成部
4 DA変換器(DAC)
5 バンドパスフィルタ(BPF)
6 増幅器(AMP)
7 カップリング部
8 バンドパスフィルタ(BPF)
9 AD変換器(A/D)
10 復調及びロールオフフィルタ部(DEM&ROF)
11 相関フィルタ部
12 位相同期及び電圧制御発振器(PLL/VCXO)
13 TIM抽出部
14 雑音除去部
15 FRM抽出部
16 遅延検波部
17 CLK再生部
Claims (4)
- 拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去方法に於いて、
前記スペクトラム拡散変調された信号と前記拡散符号とを相関演算するステップと、
該ステップで得られた相関出力信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化した後合成するタイミング補間ステップと、
該タイミング補間ステップで遅延等化して合成した前記相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して前記センタ上の雑音成分を補間予測処理するステップと、
該補間予測処理するステップで得られた雑音成分を用いて前記センタ上の雑音成分を除去するステップと
を含むことを特徴とする雑音除去方法。 - 拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去装置に於いて、
前記スペクトラム拡散変調された信号と前記拡散符号との相関演算処理するフィルタ手段と、
該フィルタ手段からの相関出力信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化して合成するタイミング補間手段と、
該タイミング補間手段により遅延等化された前記相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して前記センタ上の雑音成分を補間予測処理する補間予測手段と、
該補間予測手段により得られた雑音成分を用いて前記センタ上の雑音成分を除去する雑音除去部と
を備えたことを特徴とする雑音除去装置。 - 拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去方法に於いて、
前記スペクトラム拡散変調された信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化した後合成するタイミング補間ステップと、
該タイミング補間ステップで得られた信号と前記拡散符号とを相関演算するステップと、
該相関演算するステップで得られた相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して前記センタ上の雑音成分を補間予測処理するステップと、
該補間予測処理するステップで得られた雑音成分を用いて前記センタ上の雑音成分を除去するステップと
を含むことを特徴とする雑音除去方法。 - 拡散符号によりスペクトラム拡散変調した信号に重畳された雑音を除去する雑音除去装置に於いて、
前記スペクトラム拡散変調された信号を複数の周波数成分に分割してそれぞれを遅延等化して合成するタイミング補間手段と、
該タイミング補間手段で得られた信号と前記拡散符号とを相関演算処理するフィルタ手段と、
該フィルタ手段で得られた相関出力信号の相関値が最大となるセンタ以外の雑音成分を抽出して前記センタ上の雑音成分を補間予測する補間予測手段と、
該補間予測手段で得られた雑音成分を用いて前記センタ上の雑音成分を除去する雑音除去部と
を備えたことを特徴とする雑音除去装置。
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