JP3643604B2 - 内面研削盤における研削方法 - Google Patents

内面研削盤における研削方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は内面研削盤の研削方法に関し、特に最終加工精度の向上を図るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、この種の内面研削盤としては図2に示すように2つの主軸台1,2および砥石台3,4を備えるタイプ(このタイプは同時2軸内面研削盤と称されている。)が知られており、各主軸台1,2は図3および図4に示す如くそれぞれ回転可能な主軸100,200を有し、一方の主軸100(以下、第1軸という。)と他方の主軸200(以下、第2軸という。)は互いに平行に配置されている。
【0003】
一方の砥石台3は第1の砥石300を、また他方の砥石台4は第2の砥石400を備えており、第1の砥石300は第1軸100の先端と対向し、かつ砥石台3が内蔵する回転軸にクイルを介して取り付けられている一方、第2の砥石400は第2軸200の先端と対向し、かつ砥石台4が内蔵する回転軸にクイルを介して取り付けられている。
【0004】
両主軸台1,2はインデックスユニット5に装着されており、インデックスユニット5は両主軸台1,2を支持しかつ180゜反転させるもので、このような反転動作により、第1の砥石300と対向していた第1軸100の先端は第2の砥石400と対向し、また第2の砥石400と対向していた第2軸200の先端は第1の砥石300と対向する。
【0005】
なお、一方の砥石台3は図中矢印で示すSZ方向に移動可能なSZテーブル6と、SX方向に移動可能なSXテーブル7とにより、また他方の砥石台4はBZ方向に移動可能なBZテーブル8と、BX方向に移動可能なBXテーブル9とにより、その方向に移動できるように構成されている。
【0006】
このような内面研削盤にあっては、第1および第2の砥石300,400による同時研削が可能であるとともに、特にインデックスユニット5の反転動作によるだけで、第1軸100にセットした被加工物を第1の砥石300で研削した後、そのまま第2の砥石400でも研削でき、第1および第2の砥石300,400による2工程の研削がワンチャッキング加工となることから、研削部位の2カ所に高精度な同芯を要する部品、例えば図1に示すような被加工物(燃料噴射ノズル)の穴部W1 と、その先端の円錐部W2 とを研削するのに好適である。
【0007】
また、この内面研削盤において、被加工物Wの穴部W1 および円錐部W2 を研削するときは、第1軸100にセットした被加工物Wの円錐部W2 を第1の砥石300で研削して仕上げた後、インデックスユニット5の反転動作により第1軸100の先端と第2の砥石400とを対向させ、その後、被加工物Wの穴部W1 を第2の砥石400で研削して仕上げている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来は、上記の如く被加工物Wの円錐部W2 については第1の砥石300が、また被加工物Wの穴部W1 については第2の砥石400がその仕上げまで全て担当しかつ研削するため、このような研削では穴部W1 の前加工による円筒形状のばらつきを完全に除去することができず、所望の加工精度が得られない。
【0009】
特に、前加工による円筒形状のばらつきは第2の砥石400を保持するクイルの撓み量を変化させることから、その第2の砥石400による研削時にあってはクイルの撓み量を常時一定とする安定な研削状態を得ることができず、このように不安定な状態で研削したのでは高精度な最終仕上げは期待できない。
【0010】
また、第1軸100の回転中心に対する穴部W1 の振れは、剛性の低いクイルにとって振動の原因となることから、やはり最終仕上げの加工精度に悪影響を及ぼす。
【0011】
なお、前加工による取代のばらつきは、第2の砥石400についてのドレッシングの間隔を決定する上で、その間隔の予想を困難とする要因となっている。
【0012】
この発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは最終加工精度の向上を図るのに好適な内面研削盤の研削方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、2つの主軸と、これらの2つの主軸の先端とそれぞれ対向する第1および第2の砥石と、上記2つの主軸あるいは第1および第2の砥石のいずれか一方を反転することにより主軸と砥石との対向関係を入れ替える反転手段とを備え、上記2つの主軸にそれぞれセットした被加工物を対向する砥石で同時に研削する内面研削盤において、
上記一方の主軸にセットした被加工物を第1の砥石に対向させて、被加工物の穴部の荒研削を第1の砥石の胴部円筒体で、円錐部の研削を第1の砥石の先端円錐体で順次実行する第1の研削工程と、他方の主軸にセットした上記第1の研削工程を終了した被加工物を第2の砥石に対向させて、被加工物の穴部の仕上げ研削を第2の砥石で実行する第2の研削工程とを同時進行させる2軸同時研削工程と、
この2軸同時研削工程終了後に、上記第1および第2の砥石を2つの主軸に対して相対的に反転対向させる反転工程と、
を繰り返すことを特徴とする。
【0014】
【作用】
この発明によれば、第1の砥石による荒研削のとき、第2の砥石による仕上げ研削に都合のよい形状、例えば前加工による円筒形状のばらつきを除去した形状等を作ることができ、また第2の砥石による仕上げ研削のための残り取り代を一定値に安定させることもできる。また、荒研削は大きな切り込みで短時間で終了するものであるから、仕上げ研削よりも所要時間が短いものである。それ故、第1の砥石で被加工物の穴部の荒研削と円錐部の研削とを行うことで、同時に並行して行われる第2の砥石による被加工物の穴部の仕上げ研削との所要時間のバランスが取れる。
【0015】
【実施例】
以下、この発明に係る内面研削盤の研削方法について図1を基に図2を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
なお、内面研削盤の基本的な構成、例えば、2つの主軸台1,2および砥石台3,4を備え、一方の主軸台1に有する第1軸100と他方の主軸台2に有する第2軸200は互いに平行に配置されていること、当初は、一方の砥石台3が備える第1の砥石300は第1軸100の先端と対向し、他方の砥石台4が備える第2の砥石400は第2軸200の先端と対向すること、第1軸100と第2軸200はインデックスユニット5により反転すること等は従来例と同様であるため、それと同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0017】
この発明に係る研削方法は図1に示すように第1工程A、段取り工程Bおよび第2工程Cの順に進行して被加工物Wを研削して仕上げる。
【0018】
また、ここで用いる第1の砥石300は円筒体301の先端に円錐体302を備えるもので、このような円筒体301と円錐体302はともにその外周面が被加工物を研削するための切刃面として設けられている。そして、このような第1の砥石300は荒研削専用の砥石であり、第2の砥石400は仕上げ研削専用の砥石である。
【0019】
第1工程Aは、先ず被加工物Wを第1軸100の先端にセットした後、この被加工物Wの穴部W1 と円錐部W2 のうち、円錐部W2 の第2の被加工面を第1の砥石300の円錐体302で研削し、次に、穴部W1 被加工面(第1の被加工面)の荒研削を第1の砥石300の円筒体301により実行する。このように、穴部W1 は荒研削専用の砥石で研削することにしており、また、この荒研削では、第2の砥石400による穴部W1 の仕上げ研削に都合のよい形状、例えば前加工のばらつきを除去した形状、あるいは第1軸100の回転中心に対し振れない形状等を作る。
【0020】
段取り工程Bは、インデックスユニット5の反転動作により第1軸100の先端と第2の砥石400とを、また第2軸200の先端と第1の砥石300とを対向させる。そして、第2軸200の先端にはこれから研削しようとする新しい被加工物をセットする。
【0021】
第2工程Cは、上記の如く第1軸100の先端にセットした被加工物Wを研削するが、ここでは前述の第1工程Aにおいて既に穴部W1 の荒研削が完了した被加工物Wを研削の対象し、その荒研削済み穴部W1 の仕上げ研削を第2の砥石400により実行する。
【0022】
このような第2工程Cが完了すると、インデックスユニット5の反転動作により第1軸100を元の位置に戻し、かつ第1軸100にセットされている被加工物Wを排出した後、第1軸100に新たに被加工物をセットする。
【0023】
また、第1軸100にセットした被加工物Wが第2工程Bにあるとき、第2軸200に被加工物がセットされている場合は、この被加工物の円錐部を第1の砥石300の円錐体302で研削し、次に、その被加工物の穴部の荒研削を第1の砥石300の円筒体301により実行する。
【0024】
一方、第1軸100にセットした被加工物が第1工程Aにあるとき、上記のように既に穴部の荒研削が完了した被加工物が第2軸200にセットされたまま存在する場合は、その荒研削済み穴部の仕上げ研削を第2の砥石400により実行する。
【0025】
なお、第1工程Aにおける荒研削時の切込み量は、これから荒研削が実行されようとする被加工物よりも1つ前に荒研削が終了した被加工物、即ち第1工程Aから第2工程Cに移行した別の被加工物について、その第1工程Aが終了したときの穴部の径をインプロセスで測定し、この測定結果と設定目標値との差がゼロに近づくように決めている。
【0026】
したがって、この実施例の研削方法によれば、第1の砥石による穴部の荒研削のとき、次の第2の砥石による穴部の仕上げ研削に都合のよい形状、例えば前加工のばらつきを除去した形状、または第1軸の回転中心に対し振れない形状等を作るので、前加工のばらつきによって第2の砥石を保持するクイルに生じる撓み量の変化や、第1軸の回転中心に対する振れによって上記クイルに生じる振動が可及的に減少し、被加工物の最終加工精度(表面粗さ、円筒度)が向上する。
【0027】
しかも、第1の砥石は荒研削専用の砥石であることから、上記の如く第2の砥石による穴部の仕上げ研削に都合のよい形状を作るのに好適である。
【0028】
また、この研削方法によると、第1の砥石による穴部の荒研削のときに、次の第2の砥石による仕上げ研削のための残り取り代を一定値に安定させることもできるので、第2の砥石についてのドレッシングの間隔を決定する上で都合がよい。
【0029】
図5に示す内面研削盤は1つの主軸台1および2つの砥石台3,4を具備するもので、主軸台1は回転可能な主軸100を、一方の砥石台3は第1の砥石300を、他方の砥石台4は第2の砥石400を備えており、これらの砥石300,400は主軸100の先端側に配設されている。
【0030】
そして、2つの砥石台3,4はSZ方向にスライド可能なSZテーブル6と、SX方向にスライド可能なSXテーブル7とにより、また主軸台1は図中矢印で示すWX方向にスライド可能なWXテーブル10により、その方向にスライドできるように構成されており、WXテーブル10はそのWX方向へのスライド動作により主軸100の先端と第1の砥石300または第2の砥石400とを対向させる。
【0031】
このような構成の内面研削盤においても、第1の砥石300は荒研削専用の砥石であり、第2の砥石400は仕上げ研削専用の砥石であること、および図1に示すように第1工程A、段取り工程Bおよび第2工程Cの順に進行するという工程の基本的な流れは第1の実施例と同様である。しかし、この内面研削盤と第1の実施例に係る内面研削盤(図2参照)ではその基本的な構成が異なることから、段取り工程Bは、第1の実施例の研削方法ではインデックスユニット5の反転動作であるのに対し、この内面研削盤の研削方法ではWXテーブル10によるスライド動作とする。
【0032】
つまり、このような内面研削盤において、図1に示すような被加工物Wの穴部W1 と円錐部W2 を研削するときは、被加工物Wを主軸100の先端にセットした後、この被加工物Wの穴部W1 と円錐部W2 のうち、円錐部W2 を第1の砥石300の円錐体302で研削し、次に、穴部W1 の荒研削を第1の砥石300の円筒体301により実行する。
【0033】
その後、WXテーブル10のスライド動作により主軸100の先端と第2の砥石400とを対向させた後、第1工程Aにおいて既に穴部W1 の荒研削が完了した被加工物Wを研削の対象し、その荒研削済み穴部W1 の仕上げ研削を第2の砥石400により実行する。
【0034】
したがって、この実施例の研削方法にあっても、第1の砥石による穴部の荒研削のとき、次の第2の砥石による穴部の仕上げ研削に都合のよい形状、例えば前加工のばらつきを除去した形状、または第1軸の回転中心に対し振れない形状等を作ることができ、また第2の砥石による仕上げ研削のための残り取り代を一定値に安定させることができるので、第1の実施例と同様な効果を有する。
【0035】
なお、第1および第2の実施例における第1工程Aでは先に円錐部W2 を研削し、後から穴部W1 の荒研削を実行したが、この順序は逆でもよい。
【0036】
第1の実施例における段取り工程Bでは第1軸100と第2軸200を反転させることにしたが、これに代えて、第1の砥石300と第2の砥石400を反転させてもよい。
【0037】
第2の実施例における段取り工程BではWXテーブル9により主軸100をスライドさせることにしたが、これに代えて、WXテーブル9のスライドと同じ方向に第1の砥石300と第2の砥石400を一体にスライドさせてもよい。
【0038】
【発明の効果】
この発明にあっては、上記の如く、第1の砥石の先端円錐面で被加工物の円錐部研削を、胴部円筒面で穴部荒研削を行うようにしたから、先端円錐面、胴部円筒面と、第1の砥石が研削に有効に使用されるようになる。
また、ひとつの被加工物を一方の砥石で研削し、これと並行して、もうひとつの被加工物を他方の砥石で研削する同時2軸内面研削盤において、本願発明は、第1の砥石の胴部円筒体で穴部を荒研削して第2の砥石による仕上げ研削の研削量(被加工物材料の除去体積)を減らして仕上げ研削時間を短縮し、円錐部研削と穴部荒研削を行う第1の砥石の研削時間と、穴部仕上げ研削を行う第2の砥石の研削時間とのバランスを取って、待ち時間をなくし、トータルの研削加工時間を短縮することができる。
また、被加工物の荒研削を第1の砥石により実行するため、第1の砥石による荒研削のとき、次の第2の砥石による仕上げ研削に都合のよい形状、例えば前加工のばらつきを除去した形状、あるいは主軸の回転中心に対し振れない形状等を作ることができ、また第2の砥石による仕上げ研削のための残り取り代を一定値に安定させることもできる。
【0039】
このため、前加工のばらつきによって砥石を保持するクイルに生じる撓み量の変化や、主軸の回転中心に対する振れによって上記クイルに生じる振動が可及的に減少すること等から、被加工物の最終加工精度が向上する。
【0040】
しかも、この発明によると、上記の如く第2の砥石による仕上げ研削のための残り取り代を一定値に安定させることができるので、第2の砥石についてのドレッシングの間隔を決定する上で都合がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る研削方法の説明図。
【図2】内面研削盤の平面図。
【図3】図2に示すA矢視図。
【図4】図3に示すB矢視図。
【図5】他の内面研削盤の平面図。
【符号の説明】
5 インデックスユニット(反転手段)
9 WXテーブル(スライド手段)
100 第1軸(主軸)
200 第2軸(主軸)
300 第1の砥石
400 第2の砥石

Claims (1)

  1. 2つの主軸と、これらの2つの主軸の先端とそれぞれ対向する第1および第2の砥石と、上記2つの主軸あるいは第1および第2の砥石のいずれか一方を反転することにより主軸と砥石との対向関係を入れ替える反転手段とを備え、上記2つの主軸にそれぞれセットした被加工物を対向する砥石で同時に研削する内面研削盤において、
    上記一方の主軸にセットした被加工物を第1の砥石に対向させて、被加工物の穴部の荒研削を第1の砥石の胴部円筒体で、円錐部の研削を第1の砥石の先端円錐体で順次実行する第1の研削工程と、他方の主軸にセットした上記第1の研削工程を終了した被加工物を第2の砥石に対向させて、被加工物の穴部の仕上げ研削を第2の砥石で実行する第2の研削工程とを同時進行させる2軸同時研削工程と、
    この2軸同時研削工程終了後に、上記第1および第2の砥石を2つの主軸に対して相対的に反転対向させる反転工程と、
    を繰り返すことを特徴とする内面研削盤における研削方法。
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