JP3641956B2 - 研磨スラリーの再生システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばシリコンウェーハの鏡面研磨、または、デバイスプロセスでのシリコンウェーハへ上の酸化膜などを研磨するメカノケミカルプロセスにおいて、使用済みの研磨スラリーを再生する研磨スラリーの再生システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンウェーハは鏡面加工されてデバイス工程に提供される。この鏡面研磨またはデバイス形成の際に絶縁膜として形成される酸化膜などの研磨には、研磨時に発熱による熱歪みの少ないメカノケミカル研磨が用いられている。
このメカノケミカル研磨においては、研磨剤として、粒径0.01〜0.1μmのコロイド状シリカをアルカリ性の溶液に分散させた研磨スラリーが用いられている。
図4に示す研磨装置では、研磨ブロック21にシリコンウェーハ23がワックス22等を用いて貼り付けられている。また、研磨定盤25の表面に研磨クロス24が展着され、この研磨クロス24にシリコンウェーハ23が所定の圧力で押しつけられる。
したがって、このシリコンウェーハ23の研磨は、研磨スラリーてら研磨定盤25上に供給とにながら、上記研磨ブロック21と研磨定盤25とを互いに逆方向に回転させることで行われる。
そして、この研磨装置より排出される廃研磨スラリーは、廃研磨スラリーに含まれている研磨クロス片および研磨片などがフイルタで除去されて後、いったん貯蔵タンクに溜められる。その後、その温度とpH値とが計測され、アルカリ成分、新たな研磨スラリー(コロイダルシリカスラリー)および純水等が添加され、pH値、温度が所定値となるように調整された後、再度研磨スラリーとして供給、使用されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記廃研磨スラリーの調整方法では、この廃研磨スラリーの性状を検出する側が、pH値のみの1要素であるのに対し、調整側が、アルカリ成分、研磨スラリーおよび純水の3要素と多く、これら3要素を各適量ずつ添加して廃研磨スラリーを調整するには、どうしても経験と勘に頼らざるを得ず、安定した再生研磨スラリーが得難く、自動化が難しいという問題点があった。
【0004】
そこで、この発明は、上記問題点を解決し、安定した再生研磨スラリーを自動的に得ること目的としなされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、研磨機で使用済みの廃研磨スラリーを再生する研磨スラリーの再生システムであって、この廃研磨スラリーのpH値を検出するpH値検出手段と、この廃研磨スラリーのゼータ電位を検出するゼータ電位検出手段と、この廃研磨スラリーの粒度分布を検出する粒度分布検出手段とを備え、検出したpH値に基づいて廃研磨スラリーにアルカリ成分を供給することにより、このpH値を最適値に調整するpH値調整手段と、検出したゼータ電位に基づいて廃研磨スラリーに純水を供給することにより、このゼータ電位を最適値に調整するゼータ電位調整手段と、検出した粒度分布に基づいて廃研磨スラリーに新たな研磨スラリーを供給することにより粒度分布を最適値に調整する粒度分布調整手段とを有する研磨スラリーの再生システムである。
【0006】
【作用】
この発明に係る研磨スラリーの再生システムでは、研磨機で使用済みの廃研磨スラリーのpH値、ゼータ電位、粒度分布をそれぞれ検出する。そして、検出したpH値に基づいて廃研磨スラリーにアルカリ成分を供給し、pH値を最適値に調整する。また、検出したゼータ電位に基づいて廃研磨スラリーに純水を供給し、ゼータ電位を最適値に調整する。さらに、検出した粒度分布に基づいて廃研磨スラリーに新たな研磨スラリーを供給し、その粒度分布を最適値に調整する。この結果、研磨スラリーは再生されて、再使用に供されることとなる。
【0007】
【発明の実施の態様】
より具体的には、この発明は、研磨機より排出される廃研磨スラリー中の研磨クロス片および被研磨物の研磨片等の異物をフイルタで取り除いた後、粒度分布検出手段でこの廃研磨スラリー中の砥粒(コロイダルシリカ粒)の粒度分布を測定し、この粒度分布が最適値となるように新たな研磨スラリーを添加して調整し、次いで、pH値を測定して、この測定値が最適範囲になるようにアルカリ成分を添加する。続いて、ゼータ電位を計測し、この計測値が最適範囲となるように純水を添加するものである。なお、上記各要素を調整する順序は、特に限定されない。
【0008】
砥粒として使用するコロイダルシリカは、有機ケイ素化合物を、酸またはアルカリ触媒下でアルコールと水との混合溶媒中で加水分解させて製造するものである。添加するコロイダルシリカの粒径としては、0.01〜0.1μmである。研磨スラリー中の粒径は、研磨によって概略0.005μm程度となる。
pH値の調整範囲としては、pH値8〜11である。pH値8以下ではコロイダルシリカが凝集し、研磨ウェーハについて所定の平坦度が得られない。pH値11以上では、アルカリエッチングが進行しすぎて、メカニカルな研磨作用が強くなり、平坦度を低下させる原因となる。特に好ましい範囲としてはpH値10〜11である。
ゼータ電位の調整範囲としては、−30mV〜−100mVである。−30mV未満では、コロイダルシリカが再凝集を起すので、好ましくない。−100mVを越えると、pH値が高くなりすぎ、アルカリ性エッチングが先行し、研磨布及び半導体ウェーハに好ましくない影響を与える。
また、研磨スラリーの平均粒径は、研磨スラリーの粒度分布を測定し、各粒径毎の測定値を加重平均して算出する。この平均粒径が、0.001〜0.1μmとする。平均粒径が0.001μm未満では、粒径が細かくなりすぎ、研磨効率が低下するばかりか、研磨面の温度上昇を起こすので、好ましくない。0.1μmを越えると、ウェーハ研磨面が所定の平坦度が得られないので、好ましくない。特に好ましい範囲としては、0.002〜0.005μmである。
【0009】
【実施例】
この発明の一実施例に係る研磨スラリーの再生システムは、図1〜図3に示すとおりである。
図1は、研磨スラリーの再生システムの全体概念図である。図2は、制御システムの全体図を示し、図3は、その制御のフローチャートを示す。
研磨クロス片、および被研磨物の研磨片等が、図示していないフイルタで取り除かれた廃研磨スラリーは、再生研磨スラリー槽1に供給される。再生研磨スラリー槽1に供給された廃研磨スラリーは、ポンプ2により排出され、フイルタ3にて微細な異物、例えば、粒径0.01μm以上のものが取り除かれる。この後、廃研磨スラリーは、pHメータ4(pH値検出手段)によりpH値が、ゼータ電位計測計5(ゼータ電位計測手段)でゼータ電位値が、粒度分布計測計6(粒度分布計測手段)で粒度分布値がそれぞれ計測され、再生研磨スラリー槽1に戻される。
【0010】
そして、これらの計測信号は制御装置7に入力される。この制御装置7では、図3に示すフローチャートに基づいて、計測された上記pH値が設定値内か否かを判断し、設定値範囲外であれば、設定値内となるように、アルカリ成分供給手段8(pH値調整手段)よりアルカリ成分(例えばKOH)を再生研磨スラリー槽1に供給することにより、廃研磨スラリーのpH値を調整する。
同様に、ゼータ電位の計測値が設定値範囲内となるように、純水供給手段9(ゼータ電位調整手段)により廃研磨スラリー槽1に純水を供給することにより、廃研磨スラリーのゼータ電位値が調整される。
さらに、入力された粒度分布計測値より、スラリー中のコロイダルシリカの平均粒度を算出し、その値が設定値範囲内か否かを判断し、設定値範囲内となるように、研磨スラリー供給手段10(粒度分布調整手段)において、新たな研磨スラリー10(新たなコロイダルシリカを含むスラリー)を所定量添加することにより、廃研磨スラリー中の粒度分布が調整される。図2にはこの関係を示している。
【0011】
この再生研磨スラリー槽1中のスラリー全体が上記計測値においてすべて設定値となったことが確認されると、再生研磨スラリーとしてシリコンウェーハを研磨する研磨装置に供給される。
【0012】
なお、制御装置7としては、CPU、ROM、RAM、I/Oを有する公知のコンピュータシステムを使用することが出来る。
【0013】
例えば、シリコンウェーハを鏡面研磨する研磨機より排出される廃研磨スラリーを、いったん廃研磨スラリータンク(図示せず)に貯蔵し、この廃研磨スラリータンクより開口径20〜70μmのフイルタ(図示せず)で濾過した後、図1の再生研磨スラリー槽1に移送した。この再生研磨スラリー槽1内の廃研磨スラリーを開口径20〜40μmのフイルタ3で二次濾過した後、pHメータ4、ゼータ電位計測計5、粒度分布計測計6で計測し、これらの計測値を制御装置7に入力した。入力された計測値は、あらかじめ入力している値、例えば、pH値で10〜11、ゼータ電位で−30mV〜−100mV、平均粒径で0.002〜0.005μmとなるように、濃度1mol/lの水酸化カリウム、純水、研磨スラリー(平均粒径0.005μm)を再生研磨スラリー槽1に供給する。上記各計測値が上記設定範囲内になったことが確認されると、再生作業を終了し、研磨機への供給を開始する。
【0014】
このようにして再生処理された再生研磨スラリーと、従来通りpH値のみを調整した従来再生研磨スラリーと、新たに調整した研磨スラリーとを比較した結果は、表1に示すごとく、この発明の再生システムで処理された再生研磨スラリーを使用した場合、新たに調整されたスラリーと、ウェーハ研磨面の平坦度において、何ら遜色がないことが確認された。
【0015】
【表1】
Figure 0003641956
【0016】
【発明の効果】
この発明に係る研磨スラリーの再生システムは、廃研磨スラリーの再生に有効であることが確認された。したがって、新たに使用する研磨スラリー量が削減されるため、ウェーハの製作コストの低減および省資源に有効である。また、システムの自動化を図ることが出来るばかりでなく、廃棄物の排出量が削減される等、優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施例に係る研磨スラリー再生システムの全体概念図である。
【図2】 この発明の一実施例に係る研磨スラリー再生システムの制御系統ブロック図である。
【図3】 この発明の一実施例に係る研磨スラリー再生システムの制御における手順を示すフローチャートである。
【図4】 従来からの研磨装置を示すその部分縦断面図である。
【符号の説明】
1:再生研磨スラリー槽、
4:pHメータ(pH値計測手段)、
5:ゼータ電位計測計(ゼータ電位計測手段)、
6:粒度分布計測計(粒度分布計測手段)、
7:制御装置、
8:アルカリ成分供給手段(pH値調整手段)、
9:研磨スラリー供給手段(粒度分布調整手段)、
10:純水供給手段(ゼータ電位調整手段)。

Claims (1)

  1. 研磨機で使用済みの廃研磨スラリーを再生する研磨スラリーの再生システムであって、
    この廃研磨スラリーのpH値を検出するpH値検出手段と、
    この廃研磨スラリーのゼータ電位を検出するゼータ電位検出手段と、
    この廃研磨スラリーの粒度分布を検出する粒度分布検出手段とを備え、
    検出したpH値に基づいて廃研磨スラリーにアルカリ成分を供給することにより、このpH値を最適値に調整するpH値調整手段と、
    検出したゼータ電位に基づいて廃研磨スラリーに純水を供給することにより、このゼータ電位を最適値に調整するゼータ電位調整手段と、
    検出した粒度分布に基づいて廃研磨スラリーに新たな研磨スラリーを供給することにより粒度分布を最適値に調整する粒度分布調整手段とを有する研磨スラリーの再生システム。
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