JP3641766B2 - 集積回路製造用露光装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は64Mから256Mをにらんだ集積回路製造用露光装置に係り、特にArFエキシマレーザーからのレーザ光で集積回路のパターンを照明し、石英ガラス材からなる光学系により集積回路のパターンをウエーハ上に焼き付けて集積回路を製造する為の露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光を用いてマスク上のパターンをウエーハ上に転写する光リソグラフィ技術は電子線やΧ線を用いる他の技術に比較してコスト面で優れている事から集積回路を製造する為の露光装置として広く用いられている。
従来かかる光リソグラフィ技術を利用した露光装置には光源に高圧水銀ランプから発する波長365nmのi線を用いて線幅0.5〜0.4μmのパターン形成が露光装置が開発されているが、かかる露光装置は16Mビット−DRAM以下の集積回路に対応するものである。
一方次世代の64Mビット〜256Mビットでは0.25〜0.35μmの結像性能を、更には1Gビットでは0.13〜0.20μmの解像性能を必要とするが、0.35μmという解像性能はi線の波長を下回るもので、光源としてKrF光が用いられる。そして更に0.20μmを切る領域ではKrF光に代ってArF光、特にArFエキシマレーザーが使用される。
【0003】
しかしながらArFエキシマレーザーを用いた光リソグラフィ技術には種々の課題があり、その一つが投影光学系を構成するレンズ、ミラーやプリズミを形成するための光学材料の問題である。
即ちArFの193nm波長で透過率のよい光学材料は実質的に石英ガラス、特に高純度の合成石英ガラスに限定されるが、ArF光は石英ガラスに与えるダメージがKrF光に比べて10倍以上大きい。
【0004】
さて、石英ガラスのエキシマレーザー照射に対する耐性は、本出願人の出願にかかる特願平1ー145226に示される様に含有される水素濃度に依存する。
このため従来のKrFエキシマレーザーを光源とする露光装置では光学系を構成する石英ガラスはその含有する水素濃度が5×1016分子/cm3以上あれば、十分な耐性を確保することが出来たと前記技術に記載されている。
しかしながらArFレーザー光が石英ガラスに与える影響は前記したようにKrFに比べて甚大であるために、ArFレーザー光によって合成石英ガラスに引き起こされるダメージの程度(透過率の変化及び屈折率の変化)を調べてみると、必要とされる水素分子濃度はKrFレーザー光に比べて場合によっては100〜1000倍以上も高濃度、具体的には5×1018分子/cm3以上の水素分子濃度が必要がある事が判明した。
【0005】
さてこの光学系を構成する石英ガラスに含まれる水素分子濃度は原料素材を合成する条件及び/またはその後の熱処理工程(水素dopeも含む)の条件により決定される数字であり、一般的には水素分子濃度は工程のばらつきによる範囲を無視すれば一義的に定まり、従って露光装置を構成するミラーやレンズ等の光学系に用いられる合成石英ガラス部材は水素濃度という視点からみればただ1種類の合成石英ガラスから成り立っていた。
合成石英ガラスに水素分子を含ませる方法は2つあるが、まず製造時の雰囲気を調整して常圧で合成石英ガラスに水素分子を含ませる場合、含ませうる水素分子濃度は最高で5×1018分子/cm3程度までである。またもう1つの方法として水素雰囲気での加圧熱処理により水素分子を石英ガラス中にドープする場合でも、高圧ガス取り締まり法の対象とならない上限の10気圧/cm2の水素処理において導入される水素分子濃度はやはりが5×1018分子/cm3が上限である。
【0006】
このため石英ガラス中に5×1018分子/cm3以上の水素分子を含ませようとする場合には、10気圧より遥かに高い高圧の水素圧力で熱処理を行う事が必要となる。
例えば本出願人が出願した特開平4ー164833においては、アルゴンガス100%の高圧雰囲気で、1750℃の温度を再溶融加熱処理することにより略5×1018(molecules/cm3)の程度の水素分子をドープし得る技術が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら1750℃の温度を再溶融加熱処理することは石英ガラスに新たな欠陥を誘起するために、熱処理温度は200〜800℃の範囲で行う事が好ましいが(特開平6−166528)、この温度領域で水素熱処理により石英ガラス光学部材に5×1018分子/cm3以上の多量の水素分子を導入する場合、水素分子の拡散速度があまり大きくないので大きな光学部材においては処理に非常に時間がかかるという欠点を有するうえに、高圧雰囲気で熱処理を行う事は石英ガラス光学部材の屈折率の均質性が低下し、また歪みが導入されるという問題点も有している。
従って高圧熱処理を行った場合においても再度の調整のための熱処理が必要で、このため5×1018分子/cm3以上水素分子を含有しかつ露光装置の光学系を構成するに足りる屈折率の均質性、低歪み等の光学特性を兼ね備えた石英ガラスは工業的には極めて複雑で長時間の処理を経た非常に高価なものとなってしまう。
【0008】
本発明は、水素ドープされた石英ガラスからなる光学系を用いてArFエキシマレーザー露光装置を構成する場合においても、耐久性や光透過性等の品質を劣化させる事なく、光学系全体として低コストで製造容易に構成することのできる露光装置を提供する事を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の点に着目したものである。
先ず前記したようにArFエキシマレーザー露光装置の耐久性の向上を図るために5×1018分子/cm3以上の水素分子を含有することは工業的には極めて複雑で長時間の処理を必要とし製造困難であるとともに非常に高価になってしまう。
一方文献2(New Glass VoL6 No,2(1989)191-196“ステッパ用石英ガラスについて”牛田一雄著)によればステッパ投影レンズに必要な露光装置として透過率として99.0(最低レベル)%/cm以上、屈折率分布(Δn)が≦1×10-6、複屈折量nm/cm≦1.00とされているが、前記したように加圧処理にて5×1018分子/cm3の高濃度の水素ドープを行うと、前記したように均質な屈折率を有する石英ガラスを得ることが出来ない。
一方、屈折率の面を重視して石英ガラスを製造すると、高濃度の水素ドープガラスを得ることが出来ず、ArFエキシマレーザーを照射した場合に破損に至る場合がある。
【0010】
そこで本発明は、ArFエキシマレーザーからのレーザ光で集積回路のパターンを照明し、石英ガラス材からなる光学系により集積回路のパターンをウエーハ上に投影して焼き付けて集積回路を製造する為の露光装置において、
前記光学系を構成するレンズ、ミラー、プリズム等を合成石英ガラス製光学部材で構成するとともに、該光学部材群の内、該光学部材を透過するエキシマレーザー光の1パルス当たりのエネルギー密度ε(mJ/cm2)に対応させて水素分子濃度が異なる複数の光学部材群を効果的に組合せ、光学系全体として透過率を≧99.0%/cmを達成させた事を特徴とするものである。
【0011】
即ち、より具体的には請求項2記載の発明において、前記光学系を、水素分子濃度CH2分子/cm3が1×1017≦CH2≦5×10 17 の第1の光学系群と、光学部材群の水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1018≦CH2≦5×1019の第2の光学系群を組合せ、第2の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下に設定したことを特徴とする。
さらに好ましくは請求項3記載の発明のように、前記光学系を、水素分子濃度CH2分子/cm3が1×1017≦CH2≦5×10 17 の第1の光学系群と、水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1017≦CH2≦5×1018の第2の光学系群と、水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1018≦CH2≦5×1019の第3の光学系群を組合せ、第2の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下、好ましくは15%以下に、第3の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下、好ましくは15%以下に夫々設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項4及び5記載の発明によれば、屈折率の均質性(Δn)及び複屈折量は低いが、水素濃度は高濃度の石英ガラス光学部材群と、逆に水素濃度は低いが屈折率の均質性(Δn)及び複屈折量は高品質な石英ガラス光学部材群を効果的に組合せて必要な解像特性を達成すると同時に光学系全体として高透過率を達成させたものである。
即ち請求項4記載の発明は、ArFエキシマレーザーからのレーザ光で集積回路のパターンを照明し、石英ガラス光学部材からなる光学系により集積回路のパターンをウエーハ上に投影して焼き付けて集積回路を製造する為の露光装置において、
前記石英ガラス光学部材群が、光学部材を透過するArFエキシマレーザー光の1パルス当たりのエネルギー密度ε(mJ/cm2)に対応させて下記3種に分類させ、夫々の光学部材群に含有される水素分子濃度(CH2)及び屈折率の均質性(Δn)及び複屈折量の特性の組み合わせが下表に示されるように設定し、光学系全体として透過率を≧99.0%/cmを達成させた事を特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、更に請求項4記載の発明に光路長等を組合せ本発明の目的を一層円滑に達成せんとするもので、前記3)の光学部材の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下、好ましくは15%以下で、前記2)の光学部材の光路長の合計が光学系の光路長全体の20%以下、好ましくは15%以下になるように光学系を組合せ配置した事を特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は本発明に適用されるArFエキシマレーザーを用いたリソグラフィ露光装置の概略構成図で、1はArFエキシマレーザー光源、2はウエーハ面上において回析光の干渉のないパターン像を形成するための変形照明手段で、中心部が遮光面となる例えば四重極照明若しくは輪帯照明光源状の形状を有す。
3は前記光源より照射されたエキシマレーザー光をレチクルに導く為のコンデンサレンズ、4はマスク(レチクル)、5は投影光学系で、例えば屈折力が正のレンズ群と、屈折力が負のレンズ群を組合せて光の狭帯域化を図りつつ、前記光学系中に瞳面を形成し、解像力の向上を図っている。6はウエーハステージ7上に載置されたウエーハで、前記レチクル4に形成したマスクパターンが前記投影光学系を介してウエーハ6上に結像描画される。
【0015】
かかる装置において、前記投影光学系にはウエーハ面にパターン光を結像させるために、ウエーハ面と最近接位置に配置した集光レンズ群5aと、瞳面近傍に配置したレンズ群5bが存在するが、瞳面には光源の像である二次光源が形成される。従って瞳面に光源像が離散的に表われると、そこにエネルギーが集中し、ウエーハ側とともに光学系の破損要因となる。
一方レチクル側はウエーハ側に比べ結像倍率の2乗でエネルギー密度が小さくなる為厳しい条件とはならない。
【0016】
本実施形態はかかる点に着目したのであり、
即ち、具体的に説明すると、ArFエキシマレーザーの瞳面の大きさは参考文献によるとφ30〜φ50mm程度であり、この面積に対して何倍かという基準でエネルギー密度を決める事が合理的である。
例えばレジスト感度20〜50mJとし、これを20〜30パルスのレーザー照射で露光するとすると、瞳面上のパルス当たりのエネルギー密度は 0.7〜1.7mJ/cm2、正確には露光面と瞳面ではエネルギー密度は異なり、ウエーハ面の方が僅かに大きいと仮定した場合ででも前記ウエーハ面に最も近接された位置に配置されたレンズ群のエネルギー密度はその80〜90%程度の0.6〜1.5mJ/cm2程度であると推定される。又瞳面はこれより僅かに低いものと思料される。
【0017】
一方光の狭帯域化と解像力の向上を図るために、屈折力が正のレンズ群と、屈折力が負のレンズ群を組合せて前記投影光学系を構成するが(例えば特開平3−34308参照)、この場合夫々のレンズ群は収差を極力排除する必要があり、このような場合実際の夫々のレンズ群の縮小若しくは拡大する倍率はある程度抑えて設定するのがよく、してみると前記ウエーハ(若しくは瞳面)最近接位置より次段のレンズ群のエネルギー密度は0.6〜1.5mJ/cm2の1/3程度、具体的には0.2〜0.6mJ/cm2程度であると推定される。
その他のほとんどのレンズ群、特に瞳面やレンズ群より遠い光源側のレンズは1パルス当たりのエネルギー密度ε≦0.2mJ/cm2である。
従って1パルス当たりのエネルギー密度がε≦0.2mJ/cm2であるレンズ群においては、耐久性より光透過率を重視することにより、光学系全体としての透過率の向上が図れる。そこで本実施形態においてはε:≦0.2mJ/cm2の光源側に位置する、言換えればウエーハや瞳面より離れた位置にある光学部材の場合は、水素分子濃度CH2を1×1017≦CH2≦5×10 17 分子/cm3に低く設定するも、屈折率分布(Δn)は≦1×10-6、複屈折量は≦1.00nm/cmと高品質に維持する。
【0018】
又瞳面周辺やウエーハに最も近接する側レンズ群の内、特に1パルス当たりのエネルギー密度が0.6≦ε≦1.5であるレンズ群においては、耐久性を重視することにより、光学系全体としての耐久性の向上が図れる。そこで本実施形態においては特に高光エネルギーを受光するε:0.6≦ε≦1.5mJ/cm2の光学系の場合は、水素分子濃度CH2を5×1018≦CH2≦5×1019分子/cm3に高く設定するも、屈折率分布(Δn)は≦5×10-6、複屈折量は≦5.0nm/cmと緩やかに設定し、製造の容易化を図る。
更に前記受光エネルギーが高密度レンズの次段に位置するレンズ等の光学部材は前記両者の中間を取り、ε:0.2≦ε≦0.6mJ/cm2の光学系の場合は、水素分子濃度CH2を5×1017≦CH2≦5×1018分子/cm3に、また屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦3.0nm/cmと緩やかに設定し、製造の容易化を図る。
そして0.2 ≦ε≦ 0.6 mJ/cm2の光学部材の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下、好ましくは15%以下で、前記ε:0.2 ≦ε≦ 0.6 mJ/cm2の光学部材の光路長の合計が光学系の光路長全体の20%以下、好ましくは15%以下になるように光学系を組合せ配置することにより後記実施例に示すように、耐久性を維持しつつ光学系全体として高透過率を達成させることが出来る。
【0019】
尚、本発明は前記図1に示した投影光学系露光装置のみならず、反射光学系露光装置にも適用可能である。
即ち、図2は高解像度を図るためにプリズム型のビームスプリッタを用いた反射光学系露光装置のレンズ構成を示す概略図で、その構成を簡単に説明するに、光源11より第1レンズ群12を介してビームスプリッタ13を通過した光が第2レンズ群14を通過し、その後ミラー15で変向されて、その後第3レンズ群16で集光した後、該集光光で、レチクル17をスキャンした後、再度第3レンズ群16、ミラー15、第2レンズ群14を介して再びビームスプリッタ13に戻り、今度は該スプリッタ13に変向されて第4レンズ群19で結像されてウエーハ18上に集積回路パターンを焼き付ける。
【0020】
かかる装置によれば前記スプリッタ13に変向後の第4レンズ群19は1パルス当たりのエネルギー密度0.6≦ε≦1.5mJ/cm2の最も強い光エネルギーを受ける為水素分子濃度CH2分子/cm3を5×1018≦CH2≦5×1019に設定に高く設定するも、屈折率分布(Δn)は≦5×10-6、複屈折量は≦5.0nm/cmと緩やかに設定すればよく、また本装置においてはレチクル17側で第3レンズ群16で集光スキャンされるために1パルス当たりのエネルギー密度0.2≦ε≦0.6mJ/cm2のエネルギーを受けると推定される為水素分子濃度CH2分子/cm3を5×1017≦CH2≦5×1018に設定、また屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦3.0nm/cmと緩やかに設定すればよく、そして他のレンズ、ミラー、及びプリズム型のビームスプリッタにおいては1パルス当たりのエネルギー密度ε≦0.2mJ/cm2のエネルギーしか受けない為に、そのレンズ群等の水素分子濃度CH2分子/cm3は、1×1017≦CH2≦5×10 17 に設定するも、屈折率分布(Δn)は≦1×10-6、複屈折量は≦1.00nm/cmと高品質に維持する。
【0021】
そして第4レンズ群19の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下、好ましくは15%以下で、前記第3レンズ群16の光学部材の光路長の合計が光学系の光路長全体の20%以下、好ましくは15%以下になるように光学系を組合せ配置することにより本実施形態においても、耐久性を維持しつつ光学系全体として高透過率を達成させることが出来ると推定される。
【0022】
【発明の実施例】
さて前記図1及び図2に示す露光装置において実際の操業条件における光学特性の長期にわたる安定性を確認する事は非常に時間がかかるので、レンズ、ミラー、及びプリズム等を製造するための石英ガラス光学部材のみを取り出し、実際の操業を加速したシュミレーション実験を行った。
【0023】
一般に石英ガラスのレーザー照射におけるダメージの進行速度は照射エキシマレーザーのエネルギー密度(フルエンス)の2乗に比例して早くなるが(光学 第23巻10号“エキシマレーザ用石英ガラス”藤ノ木朗著参照、以下文献1という)この事を利用して加速実験の基準とした。
【0024】
四塩化珪素を酸水素火炎で加水分解しながら回転する基体上に堆積させるいわゆるDQ法で石英ガラスインゴットを作成した。
得られた石英ガラスインゴットはOH基を800〜1000ppm含有し、かつ水素分子を5×1018分子/cm2含有していた。この石英ガラスインゴットを特開平7−267662号に示される方法で均質化処理を行い1150℃で40時間の歪取アニール為の加熱、徐冷を行った。
得られた均質な光学用石英ガラス材料の光学特性を測定したが、3方向に脈理が存在せず、また屈折率分布を干渉計(Zygo MarkIV)で測定したところΔnは1×10-6と極めて良好な値を示した。また直交ニコルの歪み測定器で複屈折量を測定したが、複屈折量は1nm/cm以下であった。
【0025】
この光学用石英ガラス材料は文献2(New Glass VoL6 No,2(1989)191-196“ステッパ用石英ガラスについて”牛田一雄著)に示されるエキシマレーザーステッパーに用いられる石英ガラス部材として必要な光学特性を満たしているために、この光学用石英ガラス材料を用いて光学部品を構成する事によりArFを光源とする半導体露光装置を作る事が可能である。
一方で該光学用石英ガラス材料に含有された水素分子濃度をレーザーラマン法にて測定したところ、5×1017分子/cm2であった。(サンプル番号A)
水素分子含有量はラマン分光光度計を用いて行なったが、これは日本分光工業社製のラマン分光光度計・NR1100を用いて、励起波長488nmのArレーザー光で出力700mW、浜松ホトニクス社製のホトマル・R943−02を使用するホストカウンティング法で行なった。なお、この水素分子含有量はこのときのラマン散乱スペクトルで800cm-1に観察されるSiO2の散乱バンドと水素の4135−40cm-1に観察される散乱バンドの面積強度比を濃度に換算して求めた。また、換算定数は文献値4135cm-1/800cm-1×1.22×1021 (Zhurnal Pri-Kladnoi Spektroskopii, Vol.46、No.6、PP987〜991,June,1987)を使用した。
【0026】
また該光学用石英ガラス材料からφ60mm×t20mmの試料を切り出し、大気雰囲気で1000℃×20時間の酸化処理を行った後、オートクレーブ中で水素ガスの高圧(50気圧)雰囲気で600℃×1000時間の水素ドープ処理を行った。処理後のサンプルの屈折率分布を測定したところΔnが4×10-6で複屈折量は5nm/cm、含有される水素分子濃度は2×1019分子/cm2であった。(サンプル番号D)
【0027】
更に該光学用石英ガラス材料からφ60mm×t20mmの試料を切り出し、大気雰囲気で1000℃×20時間の酸化処理を行った後、雰囲気炉中で水素ガスの加圧(9気圧)雰囲気で600℃×1000時間の水素ドープ処理を行った。処理後のサンプルの屈折率分布を測定したところΔnが3×10-6で複屈折量は3nm/cm、含有される水素分子濃度は5×1018分子/cm2であった。(サンプル番号C)
【0028】
再び該光学用石英ガラス材料からφ60mm×t20mmの試料を切り出し、大気雰囲気で1000℃×20時間の酸化処理を行った後、雰囲気炉中で水素ガスの加圧(3気圧)雰囲気で600℃×1000時間の水素ドープ処理を行った。処理後のサンプルの屈折率分布を測定したところΔnが2×10-6で複屈折量は2nm/cm、含有される水素分子濃度は2×1018分子/cm2であった。(サンプル番号B)
【0029】
ここで、サンプルA及びCを除いてはそれぞれ1種類の石英ガラスのみではArFエキシマレーザーを光源とする露光装置を構成するには十分な均質性を有しておらず、また複屈折量も大きすぎる事が判ったが、サンプルA、B、C、Dで代表される光学部材を図1の装置の投影光学系として光路長に換算して4:2:1:1でレンズ系を構成したとして光学系全体の屈折率の均質性を計算したところ、光路1cmあたりのΔnとしては2×10-6、複屈折の平均値は2nm/cmであり露光装置を構成するに十分な光学特性が得られている事が判った。
【0030】
尚、4つのサンプルの波長193nmの紫外線に対する透過率を紫外分光光度計で測定したところ、1cm当たりの内部透過率で99.8%と良好な値を示した。やはりエキシマレーザーステッパーを構成するのに十分な透過性を有している。
【0031】
得られた4つのサンプルに対してArFエキシマレーザーを照射して光学特性の変化を調べた。照射条件はパルス当たりのエネルギー密度が10mJ/cm2、照射周波数は300Hzで行った。これは文献1に示される様に実際の操業における光学部材を透過するレーザーの光エネルギー密度をεmJ/cm2とすると、(100/ε)2倍の加速試験に該当する。
表1に各サンプルのエキシマレーザー照射結果を示す。照射数は2.5×107ショットで、この照射に伴う193nmの透過率変化と屈折率の変化を示す。
【0032】
【表1】
【0033】
サンプルDに関しては屈折率の変化量が少なすぎるため正確な測定が行えなかった。
この結果から露光装置としての安定性を決定するパラメーターとして光学部材のArFレーザー照射による屈折率の変化が最も重要なパラメーターであることが判った。
尚、サンプルDに関しては十分な測定精度が得られなかったため、サンプルA〜Cの結果を用いて水素濃度と屈折率の上昇率の関係を求めこれを外挿して計算を行った。
【0034】
ここでこの加速シュミレーション実験の条件から、実際の露光装置の操業において石英ガラス光学部材を透過するArFエキシマレーザー光のエネルギー密度をεmJ/cm2とした場合に対する加速率は(100/ε)2倍であると考えられるので、 ArFエキシマレーザー光のエネルギー密度が0.6mJ/cm2の場合における1×1010ショット後(100Hzの連続照射で3年)の予想される屈折率の変化は各サンプルで下表のようになる。
【0035】
【表2】
サンプル番号 照射後の屈折率変化の予想値 判定
A 4.04×10-7 使用可能
B 1.60×10-7 使用可能
C 8.68×10-8 使用可能
D 3.42×10-8 使用可能
【0036】
尚、サンプルDに関しては十分な測定精度が得られなかったため、サンプルA〜Cの結果を用いて水素濃度と屈折率の上昇率の関係を求めこれを外挿して計算を行った。
【0037】
次にArFエキシマレーザー光のエネルギー密度が0.6mJ/cm2の場合における1×1010ショット後(100Hzの連続照射で3年)の予想される屈折率の変化は各サンプルで下表のようになる。
【0038】
【表3】
サンプル番号 照射後の屈折率変化の予想値 判定
A 3.63×10-6 使用不可
B 1.14×10-6 使用可能
C 7.81×10-7 使用可能
D 3.08×10-7 使用可能
【0039】
次にArFエキシマレーザー光のエネルギー密度が1.0mJ/cm2の場合における1×1010ショット後(100Hzの連続照射で3年)の予想される屈折率の変化は各サンプルで下表のようになる。
【0040】
【表4】
サンプル番号 照射後の屈折率変化の予想値 判定
A 1.01×10-5 使用不可
B 4.00×10-6 使用不可
C 2.17×10-6 使用不可
D 8.56×10-7 使用可能
【0041】
本シュミレーション実験により、請求範囲に定められた複数種類の合成石英ガラス光学部材により構成される光学系よりなる露光装置は、実際の操業においても長期にわたって十分な光学特性の安定性を実現できると予想される。
【0042】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、水素ドープされた石英ガラスからなる光学系を用いてArFエキシマレーザー露光装置を構成する場合においても、耐久性や品質を劣化させる事なく、光学系全体として低コストで製造容易に構成することのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される投影光学系を用いた集積回路製造用露光装置である。
【図2】本発明が適用される反射光学系を用いた集積回路製造用露光装置である。
【符号の説明】
1 ArFエキシマレーザー光源
2 変形照明手段
3 コンデンサレンズ
4 マスク(レチクル)
5 投影光学系
6 ウエーハ
11 光源
12 第1レンズ群12
13 ビームスプリッタ
14 第2レンズ群
15 ミラー
16 第3レンズ群
17 レチクル
19 第4レンズ群
18 ウエーハ
Claims (5)
- ArFエキシマレーザーからのレーザ光で集積回路のパターンを照明し、石英ガラス材からなる光学系により集積回路のパターンをウエーハ上に投影して焼き付けて集積回路を製造する為の露光装置において、
前記光学系を構成するレンズ、ミラー、プリズム等を合成石英ガラス製光学部材で構成するとともに、該光学部材群の内、該光学部材を透過するエキシマレーザー光の1パルス当たりのエネルギー密度ε(mJ/cm2)に対応させて水素分子濃度が異なる複数の光学部材群を効果的に組合せた事を特徴とする集積回路製造用露光装置。 - 前記光学系を、水素分子濃度CH2分子/cm3が1×1017≦CH2≦5×10 17 の第1の光学系群と、光学部材群の水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1018≦CH2≦5×1019の第2の光学系群を組合せ、第2の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下に設定したことを特徴とする請求項1記載の半導体製造用露光装置。
- 前記光学系を、水素分子濃度CH2分子/cm3が1×1017≦CH2≦5×10 17 の第1の光学系群と、水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1017≦CH2≦5×1018の第2の光学系群と、水素分子濃度CH2分子/cm3が5×1018≦CH2≦5×1019の第3の光学系群を組合せ、第2の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下に、第3の光学系群の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下に夫々設定したことを特徴とする請求項1記載の半導体製造用露光装置。
- 前記3)の光学部材の光路長さの合計が光学系全体の光路長の20%以下で、前記2)の光学部材の光路長の合計が光学系の光路長全体の20%以下になるように光学系を組合せ配置した事を特徴とする請求項4記載の半導体製造用露光装置。
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