JP3976083B2 - 回路パターン露光用光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は64Mから256Mをにらんだ集積回路製造用露光装置に使用される露光光学系に係り、特に約190〜250nmの短波長エキシマレーザ、より好ましくは狭帯化したArF紫外レーザ光により照明された回路パターンを被露光体上に露光せしめる回路パターン露光用光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、光を用いてマスク上のパターンをウエーハ上に転写する光リソグラフィ技術は電子線やΧ線を用いる他の技術に比較してコスト面で優れている事から集積回路を製造する為の露光装置として広く用いられている。
従来かかる光リソグラフィ技術を利用した露光装置には光源に高圧水銀ランプから発する波長365nmのi線を用いて線幅0.5〜0.4μmのパターン形成が露光装置が開発されているが、かかる露光装置は16Mビット−DRAM以下の集積回路に対応するものである。
一方次世代の64Mビット〜256Mビットでは0.25〜0.35μmの結像性能を、更には1Gビットでは0.13〜0.20μmの解像性能を必要とするが、0.35μmという解像性能はi線の波長を上回るもので、光源としてKrF光が用いられる。そして更に0.20μmを切る領域ではKrF光に代ってArF光、特にArFエキシマレーザが使用される。
【0003】
しかしながらArFエキシマレーザを用いた光リソグラフィ技術には種々の課題があり、その一つが投影光学系を構成するレンズ、ミラーやプリズムを形成するための光学材料の問題である。
即ちArFの193nm波長で透過率のよい光学材料は実質的に石英ガラス、特に高純度の合成石英ガラスに限定されるが、ArF光は石英ガラスに与えるダメージがKrF光に比べて10倍以上大きい。
【0004】
さて、石英ガラスのエキシマレーザ照射に対する耐性は、本出願人の出願にかかる特願平1−145226号に示されるように含有される水素濃度に依存する。
このため従来のKrFエキシマレーザを光源とする露光装置では光学系を構成する石英ガラスはその含有する水素濃度が5×1016分子/cm3 以上あれば、十分な耐性を確保することが出来たと前記出願に記載されている。
しかしながらArFレーザ光が石英ガラスに与える影響は前記したようにKrFに比べて甚大であるために、ArFレーザ光によって合成石英ガラスに引き起こされるダメージの程度(透過率の変化及び屈折率の変化)を調べてみると、必要とされる水素分子濃度はKrFレーザ光に比べて場合によっては100〜1000倍以上も高濃度、具体的には5×1018分子/cm3 以上の水素分子濃度が必要である事が判明した。
【0005】
合成石英ガラスに水素分子を含ませる方法は2つあるが、まず製造時の雰囲気を調整して常圧で合成石英ガラスに水素分子を含ませる場合、含ませうる水素分子濃度は最高で5×1018分子/cm3 程度までである。またもう1つの方法として水素雰囲気での加圧熱処理により水素分子を石英ガラス中にドープする場合でも、高圧ガス取締法の対象とならない上限の10気圧/cm2 の水素処理において導入される水素分子濃度はやはり5×1018分子/cm3 が上限である。
【0006】
このため石英ガラス中に5×1018分子/cm3 以上の水素分子を含ませようとする場合には、10気圧より遥かに高い例えば100気圧以上の高圧水素圧力で且つ1000℃以上の温度で熱処理を行う事が必要となる。(特開平4−164833号他)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら100気圧以上の高圧水素圧力で且つ1000℃以上の温度で加熱処理することは石英ガラスに新たな欠陥を誘起するために、熱処理温度は200〜800℃の範囲で行う事が好ましいが(特開平6−166528号)、この温度領域で水素熱処理により石英ガラス光学体に5×1018分子/cm3 以上の多量の水素分子を導入する場合、水素分子の拡散速度があまり大きくないので大きな光学体においては処理に非常に時間がかかるという欠点を有するうえに、高圧雰囲気で熱処理を行う事は石英ガラス光学体の屈折率の均質性が低下し、また歪みが導入されるという問題点も有している。
従って高圧熱処理を行った場合においても再度の調整のための熱処理が必要で、このため5×1018分子/cm3 以上水素分子を含有しかつ露光装置の光学系を構成するに足りる屈折率の均質性、低歪み等の光学特性を兼ね備えた石英ガラスは工業的には極めて複雑で長時間の処理を経た非常に高価なものとなってしまう。
【0008】
又5×1018分子/cm3 以上水素分子を含有しかつ屈折率の均質性、低歪み等の光学特性を兼ね備えた石英ガラスが提供できたにしても、ArFエキシマレーザ光はKrFに比べて石英ガラスに与えるダメージが10倍程度大きい為に、そのダメージにより石英ガラスの屈折率変化をもたらす体積収縮(compaction)が経年的に生じるのを避けられない。
【0009】
本発明は、狭帯化した短波長紫外レーザ光、特にArFエキシマレーザを照明した場合においても、耐久性や光透過性等の品質を劣化させる事なく、光学系全体として低コストで製造容易に構成することのできる露光光学系を提供する事を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、次の点に着目したものである。
前記したようにArFエキシマレーザが照明される露光光学系の耐久性の向上を図るために5×1018分子/cm3 以上の水素分子を含有することは工業的には極めて複雑で長時間の処理を必要とし製造困難であるとともに非常に高価になってしまう。
そこで本発明は合成石英ガラスと蛍石の組み合わせにより前記光学系を構成したことを要旨とする。
【0011】
このような露光光学系に合成石英ガラスと蛍石とを組み合わせた技術は、特開平8−78319号(第一従来技術)にも開示されているが、その技術思想が全く異なり異質な発明である。
【0012】
すなわち前記第一従来技術は、前記光学系を正のパワーを有する回析光学素子と負のパワーを有する石英レンズと正のパワーを有する蛍石レンズとで構成したものであるが、かかる技術は色収差を補正するために前記構造を取るもので、本従来技術においては、前記パワーの回析光学素子と屈折レンズである石英レンズや蛍石レンズを組み合わせて用いる事で、互いに異なる分散をもつ光学素子を利用して色収差の補正を行うものであり、特にこれらを組み合わせて、色収差の二次スペクトルの小さい結像特性を有する光学系を実現し、これによりレンズの曲率半径を大きくでき、光学設計上は大NA化、大フィールド化等の仕様向上の余裕が生れるのみならず、製造上も偏心公差が緩くなり、製造容易性を高めるものである。
従って前記従来技術においては設計上及び製造上の問題より負のパワーを有する石英レンズと正のパワーを有する蛍石レンズを組み合わせたもので、本発明のように高出力レーザ照射による耐レーザ劣化を防止する事を目的とするもので、従って本発明と従来技術は、前記目的の相違に起因してその構成も異なる。
【0013】
すなわち本発明は耐レーザ性を向上するために、請求項1記載の発明は、
約190〜250nmの短波長エキシマレーザにより照明された回路パターンを被露光体上に露光せしめる回路パターン露光用光学系において、前記光学系を構成するレンズ、ミラー、プリズム等の光学体を適切な濃度の水素を含有する合成石英ガラス製光学体と単結晶蛍石の組み合わせで構成するとともに、該光学体を透過するArFエキシマレーザ光の1パルス当たりのエネルギー密度をε(mJ/cm2 )として、
ε≦0.1mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
水素分子濃度CH2分子/cm3 が1×1017≦CH2≦5×1018、屈折率の均質性Δnが2×10-6/1cm以下で且つ複屈折量が1nm/cm以下で更にArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.5%以上である第1の合成石英ガラス光学体で、
ε:0.1≦ε≦0.4mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
水素分子濃度CH2を5×1017≦CH2≦5×1018分子/cm3 、屈折率の均質性Δnが2×10-6/1cm以下で且つ複屈折量が1nm/cm以下で更にArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.5%以上である第2の合成石英ガラス光学体で、
ε≧0.4mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦2.0nm/cm、ArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.8%以上に維持してなる単結晶蛍石光学体を用いて構成し、
光学系全体としての平均透過率、略98.0%/cm以上を達成させた事を特徴とするものである。
【0015】
すなわち本発明は、レーザの高エネルギレベル領域においては、石英ガラス光学体を用いる代わりにレーザの透過率変化に対する耐性を有する蛍石、特に単結晶蛍石を用い、compactionが全く生じない光学体を用いるも、蛍石においてもリソグラフィに用いる大口径のものについては屈折率の均質性や低い複屈折率といった光学特性を達成するのは著しく困難である。
そこでレーザの低エネルギレベル領域においては常圧でドープ可能で且つ高均質性の合成石英ガラスを用いる事により光学系全体としての耐透過率性と高均質性を維持できる。
【0016】
尚、 エキシマレーザ光は一般に発振波長に幅を持っており、通常のレーザ光を用い、構成レンズ部材が石英のみの単色レンズ系では発振波長幅を狭帯化しないと、色収差が生じてしまう。そこで本発明は前提条件で狭帯化したArFエキシマレーザを用いる事も特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
図1は本発明に適用されるArFエキシマレーザを用いたリソグラフィ露光装置の概略構成図(基本構成はNo.182・O plus E,特集リソグラフィ技術の最先端1)光リソグラフィにおける光解像技術参照)で、1はArFエキシマレーザ光源、2はウエーハ面上において回析光の干渉のないパターン像を形成するための変形照明手段で、中心部が遮光面となる例えば四重極照明若しくは輪帯照明光源状の形状を有す。
【0018】
3は前記光源より照射されたArFエキシマレーザ光をレチクルに導く為のコンデンサレンズ、4はマスク(レチクル)、5は投影光学系で、例えば屈折力が正のレンズ群と、屈折力が負のレンズ群を組合せて光の狭帯域化を図りつつ、前記光学系中に瞳面を形成し、解像力の向上を図っている。6はウエーハステージ7上に載置されたウエーハで、前記レチクル4に形成したマスクパターンが前記投影光学系を介してウエーハ6上に結像描画される。
【0019】
かかる装置において、前記ArFエキシマレーザ光源は、公知の様にレーザの共振器内にプリズム、回析格子、エタロンなどの波長選択素子を配置する事により、1.0〜1.5pmスペクトル幅をもつ狭帯化エキシマレーザを得る事が出来る。(Optical and Quantum Electronics Vol.25(1993)p.293〜 310参照)
【0020】
投影光学系5にはウエーハ面にパターン光を結像させるために、ウエーハ面と最近接位置に配置した集光レンズ群5bと、瞳面近傍に配置したレンズ群5aが存在するが、瞳面には光源の像である二次光源が形成される。従って瞳面に光源像が離散的に表われると、そこにエネルギーが集中し、ウエーハ側とともに光学系の破損要因となる。
一方レチクル側はウエーハ側に比べ結像倍率の2乗でエネルギー密度が小さくなる為厳しい条件とはならない。
【0021】
本実施形態はかかる点に着目したのであり、
即ち、具体的に説明すると、ArFエキシマレーザの瞳面の大きさは参考文献によるとφ30〜φ50mm程度であり、この面積に対して何倍かという基準でエネルギー密度を決める事が合理的である。
例えばレチクル感度20〜50mJとし、これを20〜30パルスのレーザ照射で露光するとすると、瞳面上のパルス当たりのエネルギー密度は 0.6〜1.7mJ/cm2 、正確には露光面と瞳面ではエネルギー密度は異なり、ウエーハ面の方が僅かに大きいと仮定した場合ででも前記ウエーハ面に最も近接された位置に配置されたウエーハ側レンズ群のエネルギー密度はその75〜90%程度の0.4〜1.5mJ/cm2 程度であると推定される。又瞳面はこれより僅かに低いものと思料される。
【0022】
一方、解像力の向上を図るために、屈折力が正のレンズ群と、屈折力が負のレンズ群を組合せて前記投影光学系を構成するが(例えば前記従来技術や特開平3−34308号参照)、この場合夫々のレンズ群は収差を極力排除する必要があり、このような場合実際の夫々のレンズ群の縮小若しくは拡大する倍率はある程度抑えて設定するのがよく、してみると前記ウエーハ側若しくは瞳面最近接位置より次段のレンズ群のエネルギー密度は0.4〜1.5mJ/cm2 の1/3程度、具体的には0.1〜0.4mJ/cm2 程度であると推定される。
その他のほとんどのレンズ群(光源側レンズも含めて)は1パルス当たりのエネルギー密度ε≦0.1mJ/cm2 である。
従ってウエーハ側レンズ群のうち1パルス当たりのエネルギー密度がε≦0.1mJ/cm2 であるレンズ群においては、耐久性より光学的均質性を重視することにより、光学系全体としての解像度の向上が図れる。
【0023】
そこで、本実施形態においてはε:≦0.1mJ/cm2 の光源側光学体を構成する合成石英ガラスの場合は、水素分子濃度CH2を1×1017≦CH2≦5×1018分子/cm3 に低く設定するも、屈折率分布(Δn)は≦1×10-6、複屈折量は≦1.00nm/cmと高品質に維持するもArFレーザの波長である193nmにおける透過率は99.5%以上と緩やかに設定させている。
【0024】
また、瞳面周辺やウエーハに最も近接するウエーハ側レンズ群において、1パルス当たりのエネルギー密度が0.4≦ε(mJ/cm2 )であるレンズ群においては、耐久性を重視することにより、光学系全体としての耐久性の向上が図れる。
そこで、本実施形態においてはε:0.4≦εの光学体の場合は単結晶蛍石製のレンズを用い、屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦2.0nm/cmと緩やかに設定し、製造の容易化を図るも、光透過率については、ArFレーザの波長である193nmにおける透過率は99.8%以上に維持させている。
【0025】
更に前記受光エネルギーが高密度レンズ等の次段に位置するレンズ等の光学体は前記両者の中間を取り、ε:0.1≦ε≦0.4mJ/cm2 の範囲に位置する光学体の場合は、水素分子濃度CH2を5×1017≦CH2≦5×1018分子/cm3 に、又屈折率分布(Δn)は≦2×10-6、複屈折量は≦1.0nm/cm、ArFレーザの波長である193nmにおける透過率は99.5%以上と僅かに緩やかに設定し、製造の容易化を図る。
そして、好ましくは0.4≦ε≦1.5mJ/cm2 の光学体の光路長さの合計は、光学系全体の光路長の25%以下で、前記0.1≦ε≦0.4(mJ/cm2 )の光学体の光路長の合計が光学系の光路長全体の25%以下になるように光学系を組合せ配置することにより後記実施例に示すように、耐久性を維持しつつ光学系全体として高透過率を達成させることが出来る。
【0026】
さて前記投影光学系を構成するレンズ材を考えるとき、レンズ等の径がいくらの時、劣化の程度が激しいかという事を決めなければならないが、前記した参考文献によるとArFエキシマレーザの瞳面の大きさはφ30〜φ50mm程度であり、この面積に対して何倍かという基準で決める事が合理的である。
即ち、瞳面やウエーハ面に近接する位置で前記した0.4≦ε(mJ/cm2 )、より具体的には0.4≦ε≦1.5(mJ/cm2 )のエネルギー密度のArFエキシマレーザを受光するレンズ径は使用面積を80%とすると瞳面の最大値がφ50mmであることを考慮すると、そのレンズ口径が最大φ80mm程度であり、従ってε:0.4≦ε≦1.5mJ/cm2 の光学体のレンズ径は略80φ以下であると推定される。
更に同様の計算により、ε:0.1≦ε≦0.4mJ/cm2 のレンズ等の場合は前記瞳面に対し、拡大率が2〜3倍程度であり、従ってそのレンズ直径はφ80〜100mm前後のレンズに対応する。
【0027】
そしてこれ以上(100mm)のレンズ径では当然エネルギ密度ε:≦0.1mJ/cm2 と低くなる。
そしてこの場合も、直径φ80mm以下のレンズ等光学体の光路長さの合計が光学系全体の25%以下で、直径φ80mm以上φ100mm以下のレンズ等光学体の光路長の合計が光学系の光路長全体の25%以下に設定するのが良い。
【0028】
尚、本発明は前記図1に示した投影光学系露光装置のみならず、反射光学系露光装置にも適用可能である。
即ち、図2は高解像度を図るためにプリズム型のビームスプリッタを用いた反射光学系露光装置(基本構成はNo.182・O plus E,特集リソグラフィ技術の最先端1)光リソグラフィにおける光解像技術参照)のレンズ等構成を示す概略図で、その構成を簡単に説明するに、光源11より第1レンズ群12を介してビームスプリッタ13を通過した光が第2レンズ群14を通過し、その後ミラー15で変向されて、その後第3レンズ群16で集光した後、該集光光で、レチクル17をスキャンした後、再度第3レンズ群16、ミラー15、第2レンズ群14を介して再びビームスプリッタ13に戻り、今度は該スプリッタ13に変向されて第4レンズ群19で結像されてウエーハ18上に集積回路パターンを焼き付ける。
【0029】
かかる装置においても、前記ArFエキシマレーザ光源は、公知のようにレーザの共振器内にプリズム、回析格子、エタロンなどの波長選択素子を配置する事により、1.0〜1.5pmスペクトル幅をもつ狭帯化エキシマレーザを得る事が出来る。
又前記スプリッタ13に変向後のウエーハに最も近い第4レンズ群19は1パルス当たりのエネルギー密度0.4≦ε≦1.5mJ/cm2 の最も強い光エネルギーを受ける為単結晶蛍石製のレンズを用い、屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦2.0nm/cmと緩やかに設定し、製造の容易化を図るも光透過率については、ArFレーザの波長である193nmにおける透過率は99.8%以上に維持させている。
【0030】
また、本装置においてはレチクル17側で第3レンズ群16については集光/スキャンされるために1パルス当たりのエネルギー密度0.1≦ε≦0.4mJ/cm2 のエネルギーを受けると推定される為水素分子濃度CH2分子/cm3 を5×1017≦CH2≦5×1018に設定、又屈折率分布(Δn)は≦2×10-6、複屈折量は≦1.0nm/cmと緩やかに設定すればよく、そして他のレンズ、ミラー、及びプリズム型のビームスプリッタ、特に光源側に近い光学体においては1パルス当たりのエネルギー密度ε≦0.1mJ/cm2 のエネルギーしか受けない為に、そのレンズ群等の水素分子濃度CH2分子/cm3 は、1×1017≦CH2≦5×1018に設定するも、屈折率分布(Δn)は≦1×10-6、複屈折量は≦1nm/cmと高品質に維持する。
【0031】
そしてレンズ径の関係は前記と同様で、更にレンズ口径をφ80mm以下に設定した第4レンズ群19の光路長さの合計が光学系全体の光路長の25%以下で、前記レンズ口径をφ80〜100mmに設定した第3レンズ群16の光学体の光路長の合計が光学系の光路長全体の25%以下になるように光学系を組合せ配置することにより本実施形態においても、耐久性を維持しつつ光学系全体として透過率99.8%/cmを達成させることが出来ると推定される。
【0032】
【発明の実施例】
さて前記図1及び図2に示す露光装置において実際の操業条件における光学特性の長期にわたる安定性を確認する事は非常に時間がかかるので、レンズ、ミラー、及びプリズム等を製造するための石英ガラス光学体のみを取り出し、実際の操業を加速したシュミレーション実験を行った。
【0033】
一般に石英ガラスのレーザ照射におけるダメージの進行速度は照射エキシマレーザのエネルギー密度(フルエンス)の2乗に比例して早くなるが(光学 第23巻10号“エキシマレーザ用石英ガラス”藤ノ木朗著参照、以下文献1という)この事を利用して加速実験の基準とした。
【0034】
先ず使用する光学材料について説明する。
四塩化珪素を酸水素火炎で加水分解しながら回転する基体上に堆積させるいわゆるDQ法で石英ガラスインゴットを作成した。
得られた石英ガラスインゴットはOH基を800〜1000ppm含有し、かつ水素分子を5×1018分子/cm2 含有していた。この石英ガラスインゴットを特開平7−267662号に示される方法で均質化処理を行い1150℃で40時間の歪取アニール為の加熱、徐冷を行った。
得られた均質な光学用石英ガラス材料の光学特性を測定したが、3方向に脈理が存在せず、また屈折率分布を干渉計(Zygo MarkIV )で測定したところΔnは1×10-6と極めて良好な値を示した。また直交ニコルの歪み測定器で複屈折量を測定したが、複屈折量は1nm/cm以下であった。
【0035】
この光学用石英ガラス材料は文献(New Glass VoL6 No,2(1989)191-196“ステッパ用石英ガラスについて”)に示されるエキシマレーザステッパーに用いられる石英ガラス部材として必要な光学特性を満たしているために、この光学用石英ガラス材料を用いて光学部品を構成する事によりArFを光源とする半導体露光装置を作る事が可能である。
一方で該光学用石英ガラス材料に含有された水素分子濃度をレーザラマン法にて測定したところ、5×1017分子/cm2 であった。(サンプル番号A)
【0036】
水素分子含有量はラマン分光光度計を用いて行なったが、これは日本分光工業社製のラマン分光光度計・NR1100を用いて、励起波長488nmのArレーザ光で出力700mW、浜松ホトニクス社製のホトマル・R943−02を使用するホストカウンティング法で行なった。なお、この水素分子含有量はこのときのラマン散乱スペクトルで800cm-1に観察されるSiO2 の散乱バンドと水素の4135−40cm-1に観察される散乱バンドの面積強度比を濃度に換算して求めた。また、換算定数は文献値4135cm-1/800cm-1×1.22×1021(Zhurnal Pri-Kladnoi Spektroskopii, Vol.46、No.6、PP987〜991,June,1987)を使用した。
【0037】
また該光学用石英ガラス材料からφ60mm×t20mmの試料を切り出し、大気雰囲気で1000℃×20時間の酸化処理を行った後、雰囲気炉中で水素ガスの加圧(8気圧)雰囲気で600℃×1000時間の水素ドープ処理を行った。処理後のサンプルの屈折率分布を測定したところΔnが2×10-6で複屈折量は2nm/cm、含有される水素分子濃度は4×1018分子/cm2 であった。
(サンプル番号B)
【0038】
一方、φ60×t20の高純度光学用蛍石の内、UVグレード品(例、応用光研CaF2/UVグレード、オプトロンCaF2/UVグレード等)を用意し、レーザ特性の評価を行った。
評価は1.0〜1.5pmスペクトル幅をもつ狭帯化ArFエキシマレーザを用い、パルス当たりのエネルギー密度50mJ/cm2 p、300Hzで106ショットの照射による透過率の変化により行った。
【0039】
同じUVグレードであってもレーザ照射により200nmに小さな吸収、320nm及び380nmに大きな吸収が現れるものとそうでないものがある事が判った。図3に示すようにサンプルCにおいては、上記エキシマレーザ照射後の透過率は193nmで99.0%と良好な数値を示したが、図4に示すサンプルDにおいては、250nm及び370nmに非常に大きな吸収バンドが発現し、193nmにおける透過率は95.3%であった。
尚、サンプルC,D共に屈折率の均質性Δnは2×10-6以下であり、複屈折量は2nm/cm以下であった。更にレーザ照射以前の193nmの透過率は99.8%と良好な数値を示した。
【0040】
次に前記サンプルA〜Dの光学体を用いて、露光装置を構成した場合の光学系の寿命を予測するための実験を行った。
寿命予測実験は、サンプルA〜DにArFエキシマレーザをエネルギー密度50mJ/cm2 p、300Hzで1×106 ショット照射し(加速試験)生じる光学特性の変化を193nmにおける透過率の変化及び屈折率の変化として測定を行った。
これは文献1に示される様に実際の操業における光学体を透過するレーザの光エネルギー密度をεmJ/cm2 とすると、(100/ε)2 倍の加速試験に該当する。
結果を表1に示す。尚、表中の想定エネルギー密度とは透過率変化の予測のために想定される実際に光学体が使用される際のエネルギー密度を現し、透過率変化及び屈折率変化の予測値は、その想定エネルギー密度で5×1010ショットレーザを照射した際の透過率の変化及び屈折率の変化の予測値である。
【0041】
【表1】
【0042】
この実験結果からこれらの光学体を組み合わせて、縮小光学系を構成した場合、長期にわたって高い透過率を維持し、かつ屈折率の安定性を維持しうる組み合わせについて調べた結果を下記表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
本表2より理解されるように、エネルギー密度(mJ/cm2 )に対応して小(0.1≧ε)、中(0.1≦ε≦0.4、大(0.4≦ε)とした場合、No.5で[A+B+C]の構成を取る事により、全体の平均透過率が98.6%/cm、平均屈折率変化が1.3×10-6/1cmと目的とする基準値を満足している。
【0045】
又No.3の[A+A+C]の構成を取った場合には、全体の平均透過率が97.1%/cm、平均屈折率変化が2.2×10-6/1cmと目的とする基準値を僅かにオーバしている。
更にNo.6は前記No.5と同様の複数種の合成石英ガラス[A+B]と蛍石Dの組み合わせ[A+B+D]であるが、全体の平均透過率が95.6%/cmと目的とする基準値よりオーバしている。これは図4に示すサンプルDにおいて、250nm及び370nmに非常に大きな吸収バンドが発現し、193nmにおける透過率は95.3%であったことに起因する。
従って請求項1に記載のように光学系全体としての平均透過率、略98.0%/cm以上を達成させるという条件が必要になる。
尚、本実験により、レーザの照射による透過率低下を問題ないレベルに抑えるためには、パルス当たりのレーザエネルギー密度が0.1mJ/cm2 以下の領域にある合成石英ガラス光学体の厚さの総和が、少なくとも全体の光路長の50%以上である事が必要であり、又エネルギー密度(mJ/cm2 )が0.4≦εの領域にある蛍石光学体配設部位の光路長が、全体光路長の25%以下である事が必要である事が判った。
【0046】
尚、計算のため各エネルギー密度における光路長は前記エネルギー密度の小:中:大でそれぞれ約2(50%):1(25%):1(25%)と想定した。
【0047】
本シュミレーション実験により、請求範囲に定められた合成石英ガラス光学体と蛍石光学体により構成される光学系よりなる露光装置は、実際の操業においても長期にわたって十分な光学特性の安定性を実現できると予想される。
【0048】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、耐久性や品質を劣化させる事なく、光学系全体として低コストで製造容易に構成することのできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される投影光学系を用いた集積回路製造用露光装置である。
【図2】本発明が適用される反射光学系を用いた集積回路製造用露光装置である。
【図3】本発明の実施例たるサンプルCの蛍石のレーザ照射による吸収バンドを示すグラフ図である。
【図4】本発明の比較例たるサンプルDの蛍石のレーザ照射による吸収バンドを示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 ArFエキシマレーザ光源
2 変形照明手段
3 コンデンサレンズ
4 マスク(レチクル)
5 投影光学系
6 ウエーハ
11 光源
12 第1レンズ群(合成石英ガラス光学体)
13 ビームスプリッタ
14 第2レンズ群(合成石英ガラス光学体)
15 ミラー
16 第3レンズ群(合成石英ガラス光学体)
17 レチクル
19 第4レンズ群 (蛍石光学体)
18 ウエーハ
Claims (1)
- 約190〜250nmの短波長エキシマレーザにより照明された回路パターンを被露光体上に露光せしめる回路パターン露光用光学系において、
前記光学系を構成するレンズ、ミラー、プリズム等の光学体を水素ドープされた合成石英ガラス製光学体と単結晶蛍石の組み合わせで構成するとともに、該光学体を透過するArFエキシマレーザ光の1パルス当たりのエネルギー密度をε(mJ/cm2 )として、
ε≦0.1mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
水素分子濃度CH2分子/cm3 が1×1017≦CH2≦5×1018、屈折率の均質性Δnが2×10-6/1cm以下で且つ複屈折量が1nm/cm以下で更にArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.5%以上である第1の合成石英ガラス光学体で、
ε:0.1≦ε≦0.4mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
水素分子濃度CH2を5×1017≦CH2≦5×1018分子/cm3 、屈折率の均質性Δnが2×10-6/1cm以下で且つ複屈折量が1nm/cm以下で更にArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.5%以上である第2の合成石英ガラス光学体で、
ε≧0.4mJ/cm2 の範囲に位置する光学体においては、
屈折率分布(Δn)は≦3×10-6、複屈折量は≦2.0nm/cm、ArFレーザの波長である193nmにおける透過率が99.8%以上に維持してなる単結晶蛍石光学体を用いて構成し、
光学系全体としての平均透過率、略98.0%/cm以上を達成させた事を特徴とする回路パターン露光用光学系。
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