JP3641198B2 - 釣糸ユニットおよび釣糸巻取装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術の分野】
この発明は、スプールに釣糸を巻き取った状態で販売される釣糸ユニットおよびこれを製造するための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来から釣糸は、150m程度の所定長さに裁断され、これを樹脂製等のスプールに巻き取ったかたちで販売されている。このようにスプールに釣糸を巻き取ったものを釣糸ユニットと称する。
【0003】
釣糸ユニットは、一般に釣糸巻取装置によってスプールに巻き取られる。釣糸巻取装置は、予め長尺の釣糸をストックしておき、これに張力を与えた状態で順次繰り出し、スプールを回転させることによって釣糸の巻き取りを行うものである。
【0004】
このようにして製造された釣糸ユニットでは、釣糸に常時張力がかかった状態となる。つまり、釣糸は、ユーザに購入され使用されるまで常に引張力が加わっている。したがって、釣糸に引張力が加わっている期間が長期間となると、釣糸の弾性が低下してその強度が低下するほか、釣糸ユニットが保存されている環境の温度変化等によってスプールが破壊する場合もある。
【0005】
かかる問題を解決するためには、釣糸に張力がかからない状態でスプールに巻き取るようにすればよいが、単に張力を与えないでスプールに巻き取ると、釣糸を実際に使用する際にスプールから釣糸を引き出すと、引き出される釣糸がスプールに巻き取られている糸に食い込んで、釣糸のもつれ等が生じる。これでは、ユーザーが使用する際に非常に不便であり、釣糸ユニットとして実用に耐えることはできない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、釣糸に0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で巻き取ると共に釣糸のもつれ等を防止した使用に便利な釣糸ユニットを提供すること、また、かかる釣糸ユニットを製造するための釣糸巻取装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) 本願出願人は、既に釣糸をスプールに対して整列させた状態で平行に巻き取ることができる装置について出願し、特許を受けている(特許第2539756号、特許第2966374号、特許第3076805号等)。そして、本願出願人は、上記目的を達成するために、釣糸を整列平行巻きすることによって、釣糸を0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で巻き取ってもスプールから引き出される釣糸がスプールに巻き取られている釣糸に食い込むことを防止できることを知得した。
【0008】
(2) そこで、本願に係る釣糸ユニットは、釣糸を巻き取るためのスプールと、当該スプールに0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で巻き取られた所定長さの釣糸とを有し、当該釣糸は、スプールの端部から順に整列して平行に巻き取られていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によれば、釣糸は0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態でスプールに巻き取られているから、釣糸を長期間にわたってスプールに巻き取った状態にしても、釣糸の弾性の低下や劣化による強度低下等の不都合は起こらない。しかも、釣糸はスプールに対して整列平行巻きされているから、スプールに巻かれた下段の釣糸の上に隙間なく上段の釣糸が整列された状態で巻き取られる。したがって、釣糸をスプールから引き出す際に釣糸に張力が加わっても、引き出される釣糸がスプールに巻かれた下段の釣糸に食い込むことがない。
【0010】
(3) また、本願に係る釣糸巻取装置は、上記釣糸ユニットを製造するためのものであって、長尺の釣糸が繰り出し自在な状態で予めストックされた原糸部と、原糸部から送られる釣糸を所定長さごとにスプールに巻き取るための巻取部と、原糸部から巻取部へ釣糸を強制的に送給するための送給部と、上記送給部から送られる釣糸が上記巻取部によって巻き取られる際に、当該釣糸を上記スプールの幅方向にスライドさせるスライド機構と、上記送給部から送られる釣糸の速度と上記巻取部により巻き取られる釣糸の速度を一致させるように制御する制御装置とが備えられていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、釣糸が送給部によって原糸部から強制的に引き出されて巻取部へと送られる。巻取部は、送られた釣糸をスプールに巻き取る。このとき、スライド機構により、釣糸がスプールの幅方向にスライドされ、これにより、釣糸はスプールに対して整列した状態で平行に巻き取られる。しかも、制御装置によって送給部から強制的に送られる釣糸の速度と巻取部により巻き取られる釣糸の速度とが一致されるので、スプールに巻き取られる釣糸に0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力が生じるだけである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣糸巻取装置の構成を模式的に示した図である。
【0014】
同図を参照して、釣糸巻取装置10は、スプール14に釣糸11を巻き取って後述する釣糸ユニット18(図3参照)を製造するためのものである。この釣糸巻取装置10は、長尺の釣糸(原糸)11が予めストックされた原糸部12と、原糸部12から釣糸11を強制的に引き出す送給部13と、送給部13により引き出された釣糸11をスプール14に巻き取るための巻取部15と、巻取部15によって釣糸11を巻き取る際に釣糸11をスプール14の幅方向にスライドさせるスライド機構16と、送給部13によって強制的に送られる釣糸11の速度と巻取部15により巻き取られる釣糸11の速度を一致させる等の制御を行う制御装置17とを備えている。
【0015】
原糸部12は、大型スプール19を備えており、この大型スプール19に長尺(たとえば4000m程度)の釣糸11(「原糸」と称する。)が予め巻き取られている。なお、この釣糸11は、繊維メーカ等から購入することができる。また、大型スプール19は回転軸20を備えており、この回転軸20のまわりに回転することによって釣糸11が順次引き出されるようになっている。引き出された釣糸11は、案内ローラ21を介して送給部13側へと導かれる。
【0016】
送給部13は、アキュームレータ22と、張力調整装置23と、給糸装置24とを備えている。
【0017】
アキュームレータ22は、原糸部12から繰り出された釣糸11を一旦貯めた後に順次連続的に送り出すものである。このアキュームレータ22は公知のものを採用している。アキュームレータ22から送り出された釣糸11は、案内ローラ25に案内されて張力調整装置23へと導かれる。
【0018】
張力調整装置23は、支持ローラ26,27と、テンションローラ機構28とを備えている。テンションローラ機構28は、テンションローラ29と、これを図中下向きに付勢する付勢部材30とを有している。釣糸11は、支持ローラ26,テンションローラ29および支持ローラ27に順に掛け回され、下向きに付勢されたテンションローラ29によって所定の張力が生じるように設定されている。釣糸11は、所定の張力のもとで案内ローラ31を介して給糸装置24に導かれる。
【0019】
給糸装置24は、釣糸11を強制的にスライド機構16側へ送るものであり、その機構は種々のものが考えられる。一例として本実施形態としては、一対の送りローラを用いて釣糸11を強制的に送るようにしている。
【0020】
具体的には、給糸装置24は、駆動ローラ32と従動ローラ33とを備えており、これらによって釣糸11を挟み込んで送るようになっている。駆動ローラ32はモータ34により回転される。従動ローラ33は駆動ローラ32に対向して配置され、釣糸11を挟み込む。そして、駆動ローラ32が回転されると、釣糸11がスライド機構16側へ送られるようになっている。また、この駆動ローラ32は制御装置17によってその回転が制御されるようになっている。制御の内容については後述する。
【0021】
本実施形態では、送られる釣糸11の長さを計測する測長装置35が給糸装置24に備えられている。この測長装置35は、スライド機構16の手前に配置されている。測長装置35は、プーリ36と光センサ(図示せず)とにより構成することができる。一例として次のようにして釣糸11の長さを計測することができる。
【0022】
プーリ36の鍔部の周縁部に等間隔で複数の小孔を開けておく。そして、この鍔部を挟んで発光素子と受光素子とを配置する。釣糸11がプーリ36を通過するとプーリ36が回転するが、このとき、上記小孔によって、発光素子から発せられる光がパルス状に受光素子に達する。つまり、受光素子は、発光素子から発せられる光をパルス信号として受信する。
【0023】
そして、このパルスの数によってプーリ36を通過した釣糸11の長さを測定することができ、所定回数パルスを受信した場合に釣糸11が所定長さだけ送られたことを示す測長信号37が発せられるようになっている。この測長信号37は、制御装置17によって受信される。これにより、制御装置17は、一つのスプール14に巻き取る釣糸11の長さ(定尺)を判断するようになっている。
【0024】
なお、本実施形態ではスライド機構16の上流側に測長装置35を設けたが、この測長装置35は上記巻取部14に設けることもできる。その場合、後述する巻取部15の駆動軸38に上記小孔と同様の小孔が設けられた円盤を配置し、上記と同様の発光素子および受光素子を用いて測長装置35を構成することができる。そして、本実施形態では、この測長装置35と同様の構成の巻取速度監視装置(図示せず)が巻取部15に設けられている。これにより、スプール14の回転速度を検出することができる。その速度検出信号44が制御装置17により受信されるようになっており、その結果、巻取部15による釣糸11の巻取速度を把握することができるようになっている。
【0025】
次に、スライド機構16は、釣糸巻取装置10のフレーム39に固定されたスライドベース40と、スライドベース40にボールねじ機構を介してスライド自在に設けられたスライダ41とを備えている。このスライド機構16は、スライダ40を紙面に垂直な方向にスライドさせることにより、釣糸11をスプール14の幅方向(紙面に垂直な方向)に移動させながら良好にスプール14に巻き取るためのものである。
【0026】
上記ボールねじ機構は、ボールねじが形成されたボールねじ軸42と、このボールねじ軸42を回転させるためのモータ(図示せず)とを有しており、このボールねじ機構によってスライダ41がスライドできるようになっている。また、スライダ41には給糸ローラ43が備えられており、測長装置35を通過した釣糸11は、この給糸ローラ43を経て巻取部14のスプール14に導かれるようになっている。
【0027】
巻取部14は、駆動軸38と、駆動軸38に取り付けられたスプール14とを備えている。駆動軸38は、駆動モータ45(図2参照)に連結されており、図中右回り(釣糸11を巻き取る方向)に回転されるようになっている。また、スプール14は、紙面に垂直な方向に複数並列されており、一のスプール14に釣糸11が巻き取られた後は、続いて隣のスプール14に巻き取られるようになっている。一のスプール14に巻き取る釣糸11の長さ(定尺)は、制御装置17によって予め設定することができる。
【0028】
制御装置27はいわゆるマイクロコンピュータを備えており、巻き取る釣糸11の定尺の決定、上記給糸装置24による釣糸11の送り速度の制御、巻取部15による釣糸11の巻取速度の制御、スプール14への釣糸11の巻取長さの制御等を行うようになっている。制御装置27には図示していないが操作部が設けられており、この操作部を操作することによって上記定尺の決定等の他、スプールに巻き取る釣糸12の号数等の設定も行うようになっている。
【0029】
次に、この釣糸巻取装置10を用いて釣糸ユニット18を製造する手順について説明する。
【0030】
まず、制御装置17の操作部を操作して、釣糸11の号数(線径)および定尺(本実施形態では150m)を設定する。
【0031】
巻き取りが開始されると、制御装置17によって巻取部15の駆動モータの回転と給糸装置24のモータの回転とが制御され、釣糸11が同一の速度で送られ、且つ巻き取られる。
【0032】
図2は、釣糸11が巻き取られる要領を示した図である。
【0033】
同図を参照して、給糸ローラ43を出た釣糸11は、スプール14に送られるが、このときスライド機構16によってスプール14が左右に(図中矢印の方向)移動される。この移動速度は、釣糸11がスプール14に一回巻き取られるごとに釣糸11の線径分だけスライドする速度である。なお、この給糸ローラ43のスライド(すなわちスライド機構16のスライド)は、上記巻取部15から発せられる速度検出信号44に基づいて制御装置17により制御されている。
【0034】
このようにスライド機構16により釣糸11をスプール14に巻き取ることにより、同図に示すように、釣糸11をスプール14に対して整列させた状態で平行に巻き取ることができる。また、測長装置35により釣糸11の所定長さが検出されて測長信号37が出力された場合には、釣糸11は、隣のスプール14に引き続いて巻き取られていく。
【0035】
ここで、釣糸11の巻取速度は、駆動モータ45が一定速度で回転すれば釣糸11の巻き取りがすすむにつれて高速になる。この速度は、測長装置35または巻取部15の上記光センサにより検出することができ、制御装置17がこれを把握する。そして、制御装置17は、モータ制御信号46(図1参照)を出力し、検出された巻取速度と同一の送り速度となるように、給糸装置24のモータの回転を制御する。
【0036】
これにより、釣糸11は、給糸装置24により送られる速度と巻取部15により巻き取られる速度とが一致し、0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態でスプール14に巻き取られる。このようにして図3に示すような0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で釣糸11が巻き取られた釣糸ユニット18が製造される。
【0037】
したがって、本実施形態によれば、釣糸11は0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態でスプール14に巻き取られているから、釣糸11を長期間にわたってスプール14に巻き取った状態にしても、釣糸11の弾性の低下や劣化による強度低下等の不都合は起こらない。しかも、釣糸11はスプール14に対して整列平行巻きされているから、スプール14に巻かれた下段の釣糸47の上に隙間なく上段の釣糸48が整列された状態で巻き取られる(図2参照)。よって、釣糸11をスプール14から引き出す際に釣糸11に張力が加わっても、引き出される釣糸11がスプール14に巻かれた下段の釣糸47に食い込むことがない。加えて、かかる0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で釣糸11を巻くことができるから、スプール14に加わる力が非常に小さくなる。その結果、スプール14をたとえば紙等で製造することができ、釣糸ユニットの製造コストをさらに低減することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、給糸装置24により送られる速度と巻取部15により巻き取られる速度とを一致させるように制御しているが、両者の速度が一致しなくなったことを検出するテンショナーを設けることができる。このテンショナーは、図1において給糸ローラ43とスプール14との間に配設することができ、給糸装置24により送られる速度と巻取部15により巻き取られる速度との間に差異が生じたときにこれを検出するようにすればよい。そして、両者の速度が異なる場合には、給糸装置24を制御して釣糸11の送り速度を調節することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本願発明によれば、スプールに対して0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で釣糸を整列平行巻きした釣糸ユニットを提供することができるから、釣糸の強度低下やスプールの損傷等の不都合が起こらず、しかも、釣糸をスプールから引き出す際に釣糸がスプールに巻かれた釣糸に食い込むことがなく、使い勝手の良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る釣糸巻取装置の構成示した模式図である。
【図2】釣糸が巻き取られる要領を示した図である。
【図3】釣糸ユニットの斜視図である。
【符号の説明】
10 釣糸巻取装置
11 釣糸
12 原糸部
13 送給部
14 スプール
15 巻取部
16 スライド機構
17 制御装置
18 釣糸ユニット
Claims (2)
- 釣糸を巻き取るためのスプールと、当該スプールに0.1グラムないし3.0グラムの範囲の張力状態で巻き取られた所定長さの釣糸とを有し、当該釣糸は、スプールの端部から順に整列して平行に巻き取られていることを特徴とする釣糸ユニット。
- 請求項1記載の釣糸ユニットを製造するための釣糸巻取装置であって、
長尺の釣糸が繰り出し自在な状態で予めストックされた原糸部と、
原糸部から送られる釣糸を所定長さごとにスプールに巻き取るための巻取部と、
原糸部から巻取部へ釣糸を強制的に送給するための送給部と、
上記送給部から送られる釣糸が上記巻取部によって巻き取られる際に、当該釣糸を上記スプールの幅方向にスライドさせるスライド機構と、
上記送給部から送られる釣糸の速度と上記巻取部により巻き取られる釣糸の速度を一致させるように制御する制御装置とが備えられていることを特徴とする釣糸巻取装置。
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