JP3640823B2 - サーボ制御システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直接駆動型電油圧サーボバルブを用いるサーボ制御システム、特に定常偏差の低減を図ったサーボ制御システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、直接駆動型電油圧サーボバルブを用いるサーボ制御システムは、例えば航空機のフライトコントロールシステムに採用されている。このシステムにおいては、舵面制御アクチュエータを電油圧サーボバルブ(電気・油圧サーボバルブ)で制御するとともに、そのサーボバルブのバルブ変位を作動変圧器等の位置検出器により電気的に取り出してフィードバック制御を行なっている。
【0003】
この種のサーボ制御システムにおいては、優れた応答性能に加えて高度な信頼性および制御安定性が要求される。
【0004】
そこで、例えばバルブスプールの移動速度を速度検出器により検出しこれをフィードバックして、定常偏差を抑制するとともに、応答性改善を図っている。
【0005】
また、直接駆動型電油圧サーボバルブの電磁駆動部における渦電流損を増大させ、電油圧サーボバルブの二次遅れ特性の減衰係数を増加させることにより、直接駆動型電油圧サーボバルブのループ・ゲインを増大させ、これによって、直接駆動型電油圧サーボバルブの制御性(直線性、分解能等)並びに、システムの制御性(分解能)の改善が図られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のサーボ制御システムにあっては、バルブスプールの速度を検出する場合には、そのための速度センサが必要になり、コスト高を招くという問題があった。また、渦電流損を増大させる場合には、十分な補償効果を得ることができなかった。
【0007】
そこで本発明は、高い制御性の直接駆動型電油圧サーボバルブ、並びに、制御性(分解能)の優れた高信頼性、低コストのサーボ制御システムを提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、バルブスプールを有した直接駆動型の電油圧サーボバルブと、前記バルブスプールの変位に応じて変位するピストンを有した油圧アクチュエータと、指令信号と前記ピストンの変位に対応するフィードバック信号との差を求める第1の減算器と、前記第1の減算器の出力と前記バルブスプールの変位に対応する位置フィードバック信号との差を求める第2の減算器と、前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブとの間に設けられた低域の一次遅れ要素と、を備え、前記バルブスプールは、前記第2の減算器の出力に応じて変位するものである。
【0009】
この発明では、第2の減算器と電油圧サーボバルブの間に低域の一次遅れ要素を介在させ、直接駆動型電油圧サーボバルブのループ・ゲインを増大させることにより、直接駆動型電油圧サーボバルブの制御性(直線性、分解能)並びにシステムの制御性(分解能)が改善される。
【0010】
また、直接駆動型サーボバルブの基本伝達特性は、簡略化すると、略二次遅れで近似することができるが、上記一次遅れ要素の代わりに、積分器を設けたり、第2の減算器出力を積分する積分器およびこれと前記電油圧サーボバルブの間に直列に挿入される一次遅れ要素を設けたりすることによって、安定性を増強することができ、それによっても、直接駆動型電油圧サーボバルブのループ・ゲインを増大させ、直接駆動型電油圧サーボバルブの制御性(直線性、分解能等)を改善することができる。
【0011】
さらに、前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブの間の前向き回路に設けられた積分器若しくは一次遅れ要素と、該積分器又は一次遅れ要素を含む前向き回路に低域の一次遅れ特性を生じさせるよう前記位置フィードバック信号を所定の応答性を持って生成するフィードバック回路と、を併用することができ、例えば、積分器を組み込むとともに、フィードバック回路中のフィルタの特性を最適化することができる。
【0012】
すなわち、前記低域の一次遅れ要素は、前記第2の減算器の出力を積分する積分器と、該積分器を含む前向き回路に低域の一次遅れ特性を生じさせるよう前記電油圧サーボバルブのバルブ変位に対応する信号を通す際の応答性を所定値に設定したフィルタと、で構成されたもの、あるいは、前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブの間に設けられた一次遅れ要素と、前記第2の減算器および該一次遅れ要素を含む前向き回路に低域の一次遅れ特性を生じさせるよう前記電油圧サーボバルブのバルブ変位に対応する信号を通す際の応答性を所定値に設定したフィルタと、で構成されたものであってもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1および図2は一実施形態に係るサーボ制御システムを示す図である。
【0015】
同図において、11は指令信号Vcと後述するピストンの変位を示すフィードバック信号Vfbとの差を算出する第1の減算器としての減算器であり、減算器11から出力される偏差信号は第2の減算器としての減算器44にてバルブ変位信号との偏差が算出された後、積分器12、一次遅れ補償器13を介して電流アンプ14に与えられる。
【0016】
電流アンプ14は、一次遅れ補償器13からの指令信号に基づき、サーボバルブ15(直接駆動型電油圧サーボバルブ)の電磁駆動コイルに供給する駆動電流を調整する。このサーボバルブ15は、図2に示すように、電磁駆動部16とこれによって直接駆動されるバルブスプール17とを有する直接駆動型のサーボバルブであり、バルブスプール17によって油圧アクチュエータ(例えば航空機の舵面制御用油圧シリンダ)18の一対の油室18a,18bに連通する2つの制御圧室15a,15bが形成されている。これら制御圧室15a,15bには、バルブスプール17の変位に応じて図外の油圧源からの圧油Pが導入され、又は図外のリザーバが連通し、これによって油室18a,18bへの作動油の給排が制御されるようになっている。そして、油圧アクチュエータ18はこの作動油の給排制御、すなわちサーボバルブ15の油室18a,18bへの流量制御によって油室18a,18bの間に差圧を生じさせ、ピストン19(出力部材)を軸方向に変位させることができる。
【0017】
ピストン19の変位は、作動変圧器等の位置検出器21によって電気信号として検出され、その検出信号が復調器22により直流電圧に変換された後、フィルタ23によって交流成分を除去され、減算器11にフィードバックされる。
【0018】
一方、バルブスプール17の変位は、作動変圧器等の位置検出器41によって電気信号として検出され、その検出信号が復調器42により直流電圧に変換された後、フィルタ43によって交流成分を除去され、減算器44にフィードバックされる。
【0019】
本実施形態においては、減算器11の出力(サーボアンプ内の指令信号)とバルブスプール17の位置フィードバック信号Vfcとの差を求める減算器44の後段に、積分器12(積分要素)を設けているので、減算器44からの偏差信号がゼロでないときは、図3に示すように、積分器12により入力の時間積分に比例する信号が出力される。したがって、定常偏差を無限小に減少させることができる。
【0020】
また、直接駆動型サーボバルブ15の基本伝達特性は、略二次遅れで近似することができ、図4のボード線図にように表わすことができる。したがって、補償なしでループを組んだ場合には、所要のゲインマージンおよびフェーズマージンを確保するために、図5に示すようにループゲインを極端に低下させざるを得ない。
【0021】
そこで、積分器12と一次遅れ補償器13を組み込み、更に必要に応じてフィードバック回路中のフィルタ23の特性を最適化すれば、図6に示すように、図5に示した無補償の場合に比べ、ループゲインを十分に確保することができ、安定性を補償することができる。
【0022】
すなわち、本実施形態では、電油圧サーボバルブ15の入力指令信号と位置フィードバック信号Vfcの差を算出する減算器44の後段に定常偏差をなくす積分器12を設け、更に、これと直列に接続する一次遅れ補償器13を組み込んでいるので、直接駆動型電油圧サーボバルブにおけるループゲインの増大と、その直線性、分解能といった制御性の改善を図ることができ、しかも、サーボアクチュエータシステム全体の分解能を改善することができる。
【0023】
なお、上述のように積分器12と一次遅れ13による補償を行う場合、安定性については電油圧サーボバルブ15の位置検出情報のフィードバックポイント、すなわち、減算器44への帰還入力部を切ったポイントにて評価する。また、安定性の観点からは、遅れ要素を前向きに入れてもフィードバック系に入れても同じであり、さらに、一般的な直接駆動型電油圧サーボバルブの固有振動数は略100〜200(Hz)程度、その補償に必要なフィルターは略50〜140(Hz)程度となることから、一般的に必要なフィルタ定数と補償定数はほぼ同等であるということができる。したがって、前向き回路に挿入する遅れ要素の機能の一部又は全部をフィードバック用フィルタによって代用してもよい。
【0024】
前記一次遅れの挿入ポイントとしては、減算器11とする場合、その後段(減算器44の前)に設けた図示しないプリアンプとする場合、減算器44とする場合、減算器44から電流アンプ14までを含む閉ループ(以下、ループAという)の全体とする場合、電流アンプ14とする場合が考えられる。ループAを挿入ポイントとする場合には、そのループゲインと一次遅れ特性によってこのループを一次遅れとする。また、電流アンプ14とする場合には、その電流アンプ14に遅れを持たせ、ループAのループゲインを適宜設定する。
【0025】
図7は他の実施形態に係る直接駆動型サーボバルブを示す図である。
【0026】
なお、この実施形態は、上述の実施形態における積分器及び一次遅れを、これらと同様な機能を有する積分器又は一次遅れ要素に置き換えたものであり、他の構成は上述とほぼ同様であるので、上述の実施形態との相違点についてのみ詳述する。
【0027】
図7において、減算器44から出力される偏差信号は、上述の積分器12及び一遅れ補償器13と同程度の低域の一次遅れとして機能する積分器又は一次遅れ回路32に入力される。そして、この積分器又は一次遅れ回路32の出力が、電流アンプ14に与えられる。
【0028】
本実施形態においては、減算器11からの信号とバルブスプール17の位置フィードバック信号Vfcとの差を求める減算器44の後段に、積分器又は一次遅れ回路32を設けているので、積分器12及び一遅れ補償器13を設ける場合に比べると、定常偏差の抑制効果は若干低下するが、従来と比べると、十分な定常偏差抑制効果があるといえる。
【0029】
なお、積分器と一次遅れ回路を代用できるのは、図8に積分器の伝達特性を、図9に一次遅れの伝達特性を示すように、一次遅れのカットオフ周波数を超低域に設定すれば、高周波数域の周波数特性は一次遅れと積分器とでほぼ同等となるという理由による。一次遅れ要素の方が若干定常偏差の抑制という点で不利であるが、積分に近い効果が得られる。
【0030】
また、電流アンプ14の応答性を低下させ、これに、上述した低域の一次遅れ要素の機能の一部又は全部を持たせることも考えられる。
【0031】
なお、本実施形態における補償は、アナログ制御のみならずデジタル制御にも適用することができることはいうまでもない。
【0032】
【発明の効果】
第1の発明によれば、サーボアンプ内の減算器と電油圧サーボバルブの間に低域の一次遅れ要素を介在させているので、直接駆動型電油圧サーボバルブのループ・ゲインを増大させることができ、その制御性改善を図ることができる。
【0033】
また、上記一次遅れ要素に代わる積分器を設けたり、前記減算器の出力を積分する積分器およびこれと直列接続する一次遅れ要素を設けたりすることにより、安定性を増強することができるとともに、速度センサ等を使用することなく定常偏差を抑えることができ、サーボ制御システムのヒステリシスや分解能の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るサーボ制御システムの概略構成を示すブロック線図である。
【図2】 一実施形態における直接駆動型電油圧サーボバルブの概略構成図である。
【図3】 一実施形態における積分器出力の時間的変化を示すグラフである。
【図4】 一般的な直接駆動型電油圧サーボバルブのオープンループ伝達特性を示すボード線図である。
【図5】 図4の特性を有する電油圧サーボバルブを用いて補償をかけずにループを組んだ比較例の伝達特性を示すボード線図である。
【図6】 図4の特性を有する電油圧サーボバルブを用い、積分器を挿入し補償をかけてループを組んだ比較例の伝達特性を示すボード線図である。
【図7】 本発明の他の実施形態に係る直接駆動型電油圧サーボバルブの概略構成を示すブロック線図である。
【図8】 他の実施形態における減算器後段の積分器の伝達特性を示すボード線図である。
【図9】 他の実施形態における減算器後段の一次遅れの伝達特性を示すボード線図である。
【符号の説明】
11 減算器(第1の減算器)
12 積分器
13 一次遅れ補償器
14 電流アンプ
15 直接駆動型サーボバルブ
15a,15b 制御圧室
16 電磁駆動部
17 バルブスプール
18 油圧アクチュエータ(液圧アクチュエータ)
18a,18b 油室
19 ピストン(出力部材)
21 位置検出器
22 復調器
23 フィルタ
44 減算器(第2の減算器)
Vc 指令信号入力
Vfb フィードバック信号
Vfc 位置フィードバック信号

Claims (3)

  1. バルブスプールを有した直接駆動型の電油圧サーボバルブと、
    前記バルブスプールの変位に応じて変位するピストンを有した油圧アクチュエータと、
    指令信号と前記ピストンの変位に対応するフィードバック信号との差を求める第1の減算器と、
    前記第1の減算器の出力と前記バルブスプールの変位に対応する位置フィードバック信号との差を求める第2の減算器と、
    前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブとの間に設けられた低域の一次遅れ要素と、を備え
    前記バルブスプールは、前記第2の減算器の出力に応じて変位することを特徴とするサーボ制御システム。
  2. 前記低域の一次遅れ要素が、前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブの間の前向き回路に設けられた積分器若しくは一次遅れ、又は、前記第2の減算器の出力を積分する積分器および該積分器と前記電油圧サーボバルブの間に設けられた一次遅れ要素で構成された請求項1に記載のサーボ制御システム。
  3. 前記低域の一次遅れ要素が、前記第2の減算器と前記電油圧サーボバルブの間の前向き回路に設けられた積分器若しくは一次遅れ要素と、該積分器又は一次遅れ要素を含む前向き回路に低域の一次遅れ特性を生じさせるよう前記位置フィードバック信号を所定の応答性を持って生成するフィードバック回路と、で構成された請求項1に記載のサーボ制御システム。
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