JP3640140B2 - エンジン用タペットローラ支持軸受 - Google Patents

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    • F01L2305/00Valve arrangements comprising rollers
    • F01L2305/02Mounting of rollers

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るエンジン用タペットローラ支持軸受は、エンジンの動弁機構中に組み込み、動弁機構部分の摩擦を少なくして、エンジン運転時に於ける燃料消費率の低減を図る為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
エンジン内部での摩擦低減を図り、燃焼消費率を低減する事を目的として、クランクシャフトと同期したカムシャフトの回転を給気弁及び排気弁の往復運動に変換する部分に、タペットローラ支持軸受を組み込む事が一般的に行われている。図6〜7は、実開平3−108806号公報に記載されたタペットローラ支持軸受を示している。
【0003】
エンジンのクランクシャフトと同期して回転するカムシャフト1に固定したカム2に対向して、このカム2の動きを受けるロッカーアーム3を設けている。このロッカーアーム3の端部には1対の支持壁部4、4を、互いに間隔を開けて設けている。この1対の支持壁部4、4の間には、鋼製で中空又は中実の支持軸5を掛け渡している。この支持軸5の両端は焼き入れする事なく、生のままとしており、支持軸5を固定する際には、この未焼き入れ部分を、上記1対の支持壁部4、4に形成した通孔7、7の内周面に向けてかしめ付ける。上述の様にして、1対の支持壁部4、4の間に掛け渡した支持軸5の周囲にはローラ6を、回転自在に支承しており、このローラ6の外周面を、上記カム2の外周面に当接させている。
【0004】
上述の様に構成するタペットローラ支持軸受によれば、ロッカーアーム3とカム2との間に働く摩擦力を低減し、エンジン運転時に於ける燃料消費率の低減を図れる。この様なタペットローラ支持軸受の設置部分にはエンジン運転時に、エンジンオイルを供給する。そして、このエンジンオイルによって、カム2の外周面とローラ6の外周面との間、及び支持軸5の外周面とローラ6の内周面との間を潤滑する。
【0005】
尚、タペットローラ支持軸受の構成部品の材質としては、カム2を含むカムシャフト1は鋳鉄若しくは軸受鋼により、ローラ6及び支持軸5は、SUJ2の如き高炭素クロム軸受鋼により、それぞれ造る事が、必要な強度を確保しつつ材料費、加工費を抑える面から、一般的に行われている。そして、各部材の周面同士の間の隙間寸法並びに表面粗さを工夫する事により、エンジン運転時に於ける各部材同士の摺接部の潤滑性を確保する様にしている。この様な潤滑性確保をより確実に行なう為、支持軸5を燐青銅により、ローラ6を高炭素クロム軸受鋼により、それぞれ造る事も、一部で行われている。又、ロッカーアーム3及び支持軸5にエンジンオイル供給用の給油孔を開設する事も、例えば実開平4−32210号公報に記載されている様に、従来から提案されている。更に、ローラ6を窒化珪素等のセラミックにより造る事も、例えば特開平4−15296号公報、実開昭62−203911号公報、実開平3−108806号公報等に記載されている様に、従来から提案されている。
【0006】
又、ローラの内外両周面と相手面との間の潤滑が不十分な場合でも、これら転がり接触或は滑り接触する面に、著しい摩耗や焼き付き等の損傷が発生する事を防止する為の考慮も、従来から各種提案されている。例えば、特開昭59−183007号公報には、ローラの内外両周面に、軟窒化処理、酸化処理等の耐スカッフィング性表面処理を行なう事が記載されている。又、実開昭60−12604〜5号公報には、ローラを支持する支持軸の外周面とこのローラの内周面との間に、スリーブ或はリングを設ける事が記載されている。又、特開平8−74526号公報には、互いに対向するローラの内周面と支持軸の外周面とのうちの少なくとも一方に、摩擦低減用の表面処理層を形成する事が記載されている。
【0007】
又、ローラの回転抵抗を小さくする為に、このローラを二重構造とする事も、例えば実公昭46−9606号公報に記載されている様に、従来から知られている。即ち、図8に示す様に、ロッカーアーム3(図6〜7)等に支持された支持軸5の周囲に内径側ローラ8を回転自在に支持し、更にこの内径側ローラ8の周囲に外径側ローラ9を、この内径側ローラ8に対する回転自在に支持している。この様に、ローラを二重構造として、滑り面を2個所にする事により、カム2と係合する上記外径側ローラ9の回転が、円滑に行なわれる様にしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図8に示した様に、ローラを二重構造としたエンジン用タペットローラ支持軸受で、しかも潤滑が不十分な場合に、著しい摩耗や焼き付き等の損傷が発生する事を防止する為の具体的構造は、従来は知られてはいなかった。この為、上記ローラを二重構造としたタペットローラ支持軸受を組み込んだエンジンを組み立てた後、最初の起動直後で、未だこのタペットローラ支持軸受に潤滑油が送り込まれる以前に、このタペットローラ支持軸受に上記損傷が発生する可能性がある。
本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受は、前述した従来のエンジン用タペットローラ支持軸受と同様に、鋼製の支持軸と、この支持軸の周囲に回転自在に支持された、鋼製の内径側ローラと、この内径側ローラの周囲に、この内径側ローラに対する回転自在に支持された、鋼製の外径側ローラとを備える。
特に、本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受に於いては、上記支持軸の外周面と上記内径側ローラの内周面との間の隙間の径方向に関する厚さよりも、この内径側ローラの外周面と上記外径側ローラの内周面との間の隙間の径方向に関する厚さを大きくしている。これと共に、少なくとも上記内径側ローラに、相手面との潤滑性を向上させる為の表面処理を施している。
【0010】
又、好ましくは、請求項2に記載した様に、相手面との潤滑性を向上させる為の表面処理を、外径側ローラにも施す。
同様に、請求項3に記載した様に、内径側ローラ及び外径側ローラの材質を、高炭素クロム軸受鋼とし、表面処理を、固体潤滑皮膜処理と軟窒化処理とから選択される一方又は双方とする。
更に好ましくは、請求項4に記載した様に、表面処理に基づいて形成される皮膜の厚さを、当該皮膜を形成する部材の表面とこの表面が対向する相手面との間の隙間空間である支持軸受隙間の厚さの5〜60%、より好ましくは10〜60%とする。
【0011】
【作用】
上述の様に構成する本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受によれば、カムと係合する外径側ローラが支持軸に対して円滑に回転する、二重ローラの構造を採用して、しかも潤滑不良な場合にも著しい摩耗や焼き付き等の損傷が発生する事を有効に防止できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。ロッカーアーム3の端部に設けた1対の支持壁部4、4(図6〜8参照)の間に掛け渡した支持軸5の周囲に内径側ローラ8を回転自在に支持し、更にこの内径側ローラ8の周囲に外径側ローラ9を、この内径側ローラ8に対する回転自在に支持している。そして、このうちの内径側ローラ8の表面(内外両周面及び支持軸方向両端面)に、相手面である、上記支持軸5の外周面及び上記外径側ローラ9の内周面との潤滑性を向上させる為の表面処理を施して、上記内径側ローラ8の表面に潤滑性皮膜10を形成している。
【0013】
上述の様に、内径側ローラ8の表面に潤滑性皮膜10を形成する為の表面処理方法としては、固体潤滑皮膜処理と軟窒化処理とが採用可能である。又、このうちの固体潤滑皮膜処理としては、次の(1) (5) のものが使用可能である。
(1) 硫黄と鉄との化合物の反応層。
(2) 上記(1) に窒素を含有させた反応層。
(3) 燐と鉄との燐酸塩化合物の反応層。
(4) 二硫化モリブデン(MoS2)とポリ四弗化エチレン(PTFE)との単体若しくは混合物を、熱硬化性合成樹脂と共に焼成する事により得られる処理層。
(5) 上記(1) (3) のうちの何れかの反応層の表面に、二硫化モリブデンとポリ四弗化エチレンとの単体若しくは混合物を、熱硬化性合成樹脂と共に焼成する事により得られる処理層を重ね合わせたもの。
又、上記軟窒化処理としては、次の(6) (8) のもので、表面硬度がHv650以上、処理層の厚さが15μm以上のものが使用可能である。
(6) 塩浴窒化処理(タフトダイド処理)
(7) ガス軟窒化処理
(8) イオン軟窒化処理
【0014】
上述の様に構成する本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受によれば、カム2(図6〜7参照)の外周面と係合する外径側ローラ9が支持軸5に対して円滑に回転する、二重ローラの構造を採用して、しかも潤滑不良な場合にも著しい摩耗や焼き付き等の損傷が発生する事を有効に防止できる。即ち、上記支持軸5に対して上記外径側ローラ9が回転する場合には、この支持軸5の外周面と前記内径側ローラ8の内周面とが、この内径側ローラ8の外周面と上記外径側ローラ9の内周面とが、それぞれ摺動する。
【0015】
本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受を構成する、上記内径側ローラ8の内外両周面には、それぞれ上述した様な潤滑性皮膜10が存在するので、上記各周面同士の摺動を円滑に行なわせる事ができる。従って、タペットローラ支持軸受を組み込んだエンジンを組み立てた後、最初の起動直後で、未だこのタペットローラ支持軸受に潤滑油が送り込まれる以前に於いても、このタペットローラ支持軸受が損傷する事を有効に防止できる。
【0016】
次に、図3〜4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、相手面との潤滑性を向上させる為の表面処理を、内径側ローラ8だけでなく外径側ローラ9にも施し、この外径側ローラ9の表面にも、潤滑性皮膜10aを形成している。この様に、潤滑性皮膜10、10aを、内径側ローラ8と外径側ローラ9との双方の表面に形成している為、タペットローラ支持軸受を組み込んだエンジンを組み立てた後、最初の起動直後、このタペットローラ支持軸受に潤滑油が送り込まれるまでに要する時間が長くても、このタペットローラ支持軸受が損傷する事を有効に防止できる。その他の構成及び作用は、上述した第1例の場合と同様である。
【0017】
【実施例】
本発明の効果を確認する為に行なった実験の結果に就いて説明する。実験では、カム2(図6〜7)に相当する部材として、外径が60mmである、軸受鋼製で円筒状のリングを使用した。このリングを外嵌固定した回転軸の両端部を玉軸受により回転自在に支持すると共に、この回転軸を電動モータにより、ベルトを介して3000r.p.m.で回転させた。そして、耐久試験に供すべきエンジン用タペットローラ支持軸受を構成する、SUJ2製のローラを、100kgf の力で、上記リングの外周面に押し付けて、このローラを回転させた。これらローラの外周面とリングの外周面との当接部には、この当接部が焼き付かない程度に微量のエンジンオイルを滴下させた。但し、このエンジンオイルが上記ローラと、SUJ2製の支持軸との軸受部分に入り込まない様にした。
【0018】
この様な条件で、上記支持軸に対する上記ローラの軸受部分にスミアー等の異常が発生するまでの時間、或はこの軸受部分の焼き付きに伴って上記電動モータに過電流が流れるまでの時間を測定し、その時間を上記軸受部分の耐久時間とした。尚、試験に使用したタペットローラ支持軸受の寸法は、図6〜7に示す様な単体のローラ6を使用したもの(下記の表1中のローラ構造の欄には「シングル」と記載)では、支持軸5の外径を8.0mm、ローラ6の内径を8.02mm、外径を18mm、幅を10mmとした。従って、上記支持軸5の外周面とローラ6の内周面との間には、20μmの隙間が存在する。又、図1〜4及び図8に示す様な、内径側ローラ8と外径側ローラ9を使用したもの(下記の表1中のローラ構造の欄には「ダブル」と記載)では、支持軸5の外径を8.0mm、内径側ローラ8の内径を8.02mm、外径を13mm、幅を10mm、外径側ローラ9の内径を13.025mm、外径を18mm、幅を10mmとした。従って、上記支持軸5の外周面と内径側ローラ8の内周面との間には20μmの隙間が、内径側ローラ8の外周面と外径側ローラ9の内周面との間には25μmの隙間が、それぞれ存在する。この様な条件で、潤滑性皮膜10、10aを形成する場合には、この潤滑性皮膜10、10aの厚さを、当該潤滑性皮膜10、10aが存在する隙間の厚さの5%に設定した。
この様な条件の下で行なった、エンジン用タペットローラ支持軸受の耐久試験の結果を、次の表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0003640140
【0020】
この表1中、試験番号1、2、5、6、9は、本発明の技術的範囲からは外れる、比較例である。又、試験番号3、4は、請求項1に対応する、内径側ローラ8の表面にのみ、表面処理により潤滑性皮膜10を形成したものである。又、試料番号7、8は、請求項2に対応する、内径側ローラ8及び外径側ローラ9aの表面に、表面処理により潤滑性皮膜10を形成したものである。更に、試験番号10、11は、請求項3に対応するもので、表面処理による潤滑性皮膜10が、固体潤滑皮膜処理と軟窒化処理との双方からなるものである。即ち、これら試験番号10、11の場合には、軟窒化処理層を基材となるSUJ2の表面に形成した後、この軟窒化処理層の表面に、固体潤滑皮膜を形成して、二重構造を有する上記潤滑性皮膜10を形成している。
【0021】
この様な条件で行なった実験の結果から明らかな通り、本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受によれば、潤滑不良な場合にも著しい摩耗や焼き付き等の損傷が発生する事を有効に防止できる。特に、上記潤滑性皮膜10を内径側ローラ8と外径側ローラ9との双方の表面に形成したり(試験番号7、8)、上記潤滑性皮膜10を二重構造とした(試験番号10、11)場合には、より優れた耐久性を得られる。
【0022】
次に、上記潤滑性皮膜10の厚さの適正範囲を知る為に行なった実験に就いて説明する。試験条件は、上述の耐久試験のうち、試験番号3のもの、或は試験番号9のものと同様とした。この様な条件で行なった実験の結果を、図5に示す。この図5中、△印を結んだ実線aは、本発明に属する試験番号3の条件で、上記潤滑性皮膜10の厚さのみを変えたもの、○印を結んだ破線bは、本発明の範囲からは外れる試験番号9の条件で、それぞれ行なった実験の結果を示す。この様な実験の結果を示す図5から、次の(1)(2)の事が分る。
(1) 外径側ローラ9にのみ潤滑性皮膜10aを形成する場合でも、或る程度耐久性の向上を図れるが、この潤滑性皮膜10aを厚くしなければならない。
(2) 内径側ローラ8にのみ潤滑性皮膜10を形成した場合には、この潤滑性皮膜10の厚さが比較的薄くても耐久性向上効果を得られるが、この潤滑性皮膜10の厚さは、隙間の厚さの5〜60%、更に好ましくは10〜60%に設定する必要がある。
【0023】
【発明の効果】
本発明のエンジン用タペットローラ支持軸受は、以上に述べた通り構成され作用するので、組み立てたエンジンの起動直後の、きわめて潤滑条件が悪い状態でも、焼き付き等の損傷防止を図ると共に、各部にフレアー等の損傷が発生する事を防止できる。従って、潤滑油による潤滑が行なわれる様になった後も、滑り接触部分の軸受機能を良好にして、エンジンの耐久性向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す断面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】本発明の実施の形態の第2例を示す断面図。
【図4】図3のB−B断面図。
【図5】潤滑性皮膜の厚さが耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験の結果を示す線図。
【図6】従来から知られているタペットローラ支持軸受の第1例の部分切断平面図。
【図7】図6のC−C断面図。
【図8】従来から知られているタペットローラ支持軸受の第2例を示す、図6と同様の図。
【符号の説明】
1 カムシャフト
2 カム
3 ロッカーアーム
4 支持壁部
5 支持軸
6 ローラ
7 通孔
8 内径側ローラ
9 外径側ローラ
10、10a 潤滑性皮膜

Claims (4)

  1. 鋼製の支持軸と、この支持軸の周囲に回転自在に支持された、鋼製の内径側ローラと、この内径側ローラの周囲に、この内径側ローラに対する回転自在に支持された、鋼製の外径側ローラとを備えたエンジン用タペットローラ支持軸受に於いて、上記支持軸の外周面と上記内径側ローラの内周面との間の隙間の径方向に関する厚さよりも、この内径側ローラの外周面と上記外径側ローラの内周面との間の隙間の径方向に関する厚さを大きくすると共に、少なくとも上記内径側ローラに、相手面との潤滑性を向上させる為の表面処理を施した事を特徴とするエンジン用タペットローラ支持軸受。
  2. 相手面との潤滑性を向上させる為の表面処理を、外径側ローラにも施している、請求項1に記載したエンジン用タペットローラ支持軸受。
  3. 内径側ローラ及び外径側ローラの材質が、高炭素クロム軸受鋼であり、表面処理が、固体潤滑皮膜処理と軟窒化処理とから選択される一方又は双方である、請求項1〜2の何れかに記載したエンジン用タペットローラ支持軸受。
  4. 表面処理に基づいて形成される皮膜の厚さが、当該皮膜を形成する部材の表面とこの表面が対向する相手面との間の隙間空間である支持軸受隙間の厚さの5〜60%である、請求項1〜3の何れかに記載したエンジン用タペットローラ支持軸受。
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