JP3640133B2 - 印刷処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷処理装置に関し、特に単色印刷時に高速印刷を可能にしたタンデム方式カラー画像形成装置の印刷処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、カラー印刷を行う場合、コンピュータは生成した高速転送可能な中間データを所望のカラープリンタへ転送し、そのプリンタ内の処理部が所望のコード化されたデータを色成分ごとにラスタ画像、すなわちYMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)データに変換したのち、画像出力装置に供給し、印字している。
【0003】
図20は従来のカラーレーザープリンタの構成の概略を示したブロック図である。図において、カラーレーザープリンタは、コンピュータ1001の出力を入力するインタフェース部1002と、中央演算処理装置(CPU)1003と、RAM(Random Access Memory)1004と、フレームバッファメモリ1005と、プリント制御装置1006と、YMCK印字部1007と、バスライン1008とから構成されている。
【0004】
コンピュータ1001で生成された中間データはインタフェース1002を通り、バスライン1008を介してRAM1004に格納され、その中間データはCPU1003によりYMCKに対応するビットマップデータに変換された後フレームバッファメモリ1005に格納される。この格納されたMCKYデータはプリント制御装置1006によりYMCK印字部1007に順次転送され、YMCK印字部1007を介して印字出力される。ここでYMCK印字部1007は一般的な構成のものであり、各用紙ごとにCMYKデータを順次印字していくものである。
【0005】
近年のカラープリンタにおいては、単一の感光体で複数色の印字を行うシングル方式に比べ、高速印字が可能であるタンデム方式を採用しているものが見られる。画像出力部のタンデム方式は、用紙を一定方向に搬送する用紙搬送機構と、各色に対して1フレーム分の出力画像を格納するフレームメモリと、用紙搬送経路に沿って所定の間隔を離して設けられた一色の印字を行う複数の印字部から構成される。
【0006】
タンデム方式の機能特徴は、各色ごとに印字が行われ、1回のパスで印刷が完了することである。各色の感光体は搬送経路に対して所定の間隔で順次配列している。そのため、各色の感光体の間隔に依存した各色転写開始時間の差が存在し、その印字時間差を調整する必要が生じる。ここで、感光体ドラムが用紙搬送方向にYMCKの順に配置されている場合であって、色ごとの転写プロセスの転写開始時間を以下にタイムチャートで示す。
【0007】
図21はタンデム式転写プロセスの転写開始時間差を示すタイムチャートである。感光体ドラムがYMCKの順に配置されている場合、用紙には最初にYのトナー画像の転写が行われ、その用紙には続いて、M、C、Kのトナー画像の転写が行われる。この列配置された各色感光体ドラムごとのトナー画像の転写開始タイムラグは、従来よりプリンタ中に用いられたRAMとは別にラスタ画像データを各色転写開始時まで格納しておくバッファメモリを各色ごとに用意し、各色転写開始時にラスタ画像データをメモリバッファよりトナー画像として出力し、転写を行っている。
【0008】
近年、低コスト化のもとで各色ごとのバッファメモリを削減するために、各色の感光体ドラム間の距離に対応するようにラスタ画像データを走査方向にバンド分割したデータを生成し、バンドごとにデータを取り扱うようになった。このバンドごとのデータの取り扱いは、これまで多くの印字処理方法で採用されている。
【0009】
たとえば特開平8−192542号公報には、ワークステーション用カラープリンタとしてタンデム方式を用いる場合に所要メモリ内容を少なくする技術を用いたカラー画像形成装置が開示されている。このカラー画像形成装置によれば、ワークステーションからコード化されて送られてきたデータファイルは、ディスク装置に蓄積され、その蓄積されたコード化されたデータを中央演算処理装置がラスタ画像データに変換し、フレームバッファメモリに複数ページのYMCKそれぞれのデータを格納する。これら色ごとのデータはシステムバスを介してそれぞれY中間メモリバッファ、M中間メモリバッファ、C中間メモリバッファおよびK中間メモリバッファへバンド単位に転送され、印字装置部内部の各色プリント制御部はそれぞれ各色印字部の印字速度に合わせてYMCKのデータを並列に転送する。単色の印字時、たとえばKの単色の印字を行うとき、フルカラーのときと同様にコード化されたデータはディスク装置に蓄積され、その後、中央演算処理装置によってラスタ画像に変換され、フレームバッファメモリに格納される。格納されたKのデータはバンド単位に分割され、K中間メモリバッファへ移されて処理される。この間、他の色の中間メモリバッファは使用されず、エンプティー状態となる。
【0010】
また、特開平6−227049号公報には、ページメモリ容量を1ページ分とする技術を用いたカラー画像形成装置が開示されている。このカラー画像形成装置によれば、インタフェース回路から入力されたページ記述言語(PDL)データは一時RAMに格納され、その格納されたPDLデータは中央演算処理装置がROM(Read Only Memory)より読み出したプログラムを実行することでPDLデータに含まれたコマンドの解析より解析したデータをバンドに分割して各ページメモリに格納し、ビデオインタフェース回路は中央演算処理装置により指定されたページメモリの先頭アドレスから格納された印刷データを読み出し、ビデオインタフェース回路が分割してある各ページメモリから各色バンドごとにデータを抽出し、YMCKの順に1ページ目の印字を行い、1ページ目の印字が完了すると、次の2ページ目をページメモリに書き込み、1ページ目と同様にカラー画像の印字を行う。単色印字のときは、たとえばKの場合、K露光制御部に接続されているビデオインタフェース回路はCPUの命令によってバンドに分かれたすべてのデータを処理する。このとき、その他の色のビデオインタフェース回路は一切駆動しない。
【0011】
上記の従来技術では、タンデム方式フルカラー印字での印刷処理方法はそれぞれ異なっており、高速、低コスト化につながっている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術のように、フルカラー印字においてタンデム方式はシングル方式に比べ高速印字ができるという利点から多く取り扱われている。しかし、単色印字であっても、単色で印字する色の処理機構は他の色の処理機構と同じであるため、フルカラー印字時と大きな処理速度の差はない。このことは使用する色数と同数設けられた展開処理部の内、単色として選択された一つを使用するため、その色の展開処理部の処理速度に依存するためである。すなわち、タンデム方式での単色印字は、この処理形態では大きな高速化は望めないという問題がある。
【0013】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであり、複数の展開処理部を持つタンデム式のフルカラープリンタにおいて、タンデム式の特徴を生かし、単色印字をリアルタイムに分割展開処理を行うことで従来のフルカラープリンタより高速にした印刷処理装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明では上記問題を解決するために、印字データのN色の色成分を個々に展開処理し、展開された個々の画像データをカラー画像出力手段にて色成分ごとに対応して画像をそれぞれ形成するN個の画像形成部に出力する印刷処理装置において、前記カラー画像出力手段のN個の画像形成部に対応したN個の展開処理部を有し、入力された印字データを各展開処理部で展開処理する展開処理手段と、前記印字データのフルカラー印字時には前記展開処理手段のN個の展開処理部に対してそれぞれ同時に並列的展開処理を行うようにし、単色印字時には単色として指定された色以外のN−1個の展開処理部を単色指定色の仕様に変更するとともに前記印字データを前記N個の展開処理部が分担して同時に並列的分散処理を行うようにする単色指定時処理手段と、単色印字時に前記単色指定時処理手段による指示を受けて前記展開処理手段の各展開処理部にて同時に並列的分散処理された各画像データを再構成して前記カラー画像出力手段において単色指定色の画像を形成する画像形成部に出力するデータ再構成出力手段と、を備えていることを特徴とする印刷処理装置が提供される。
【0015】
このような印刷処理装置によれば、フルカラー印字時には展開処理手段のN個の展開処理部はそれぞれ印字データのN色の色成分を展開処理し、展開されたそれぞれの画像データはカラー画像出力手段の対応する色成分の画像をそれぞれ形成する画像形成部にそれぞれ直接出力する。このとき、データ再構成手段は各展開処理部の画像データ出力をスルー処理することになる。印字データに単色印字指定があるときには、単色指定時処理手段は展開処理手段の各展開処理部を単色指定色の仕様に変更し、印字データを各展開処理部が分担して展開処理し、分担して展開処理された画像データをデータ再構成出力手段が再構成してカラー画像出力手段の単色指定された色の画像を形成する画像形成部だけに出力する。これにより、単色印字時に、単色指定色の印字データの展開処理を担当する展開処理部以外の展開処理部を使って単色印字データの分散処理をするようにしたことにより、展開処理を高速にすることができ、高速な印字処理が可能になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明による印刷処理装置の原理図である。本発明の印刷処理装置は、N個の画像形成部にて順次N色のカラー画像を形成していくことにより記録媒体上に一つのフルカラー画像を形成するタンデム方式のカラー画像出力手段5に接続して使用するものであって、N個の展開処理部を有する展開処理手段1と、単色指定時処理手段2と、データ再構成出力手段3と、画像形成部駆動抑制手段4とを備えている。
【0017】
中間データの形式で入力された印字データは展開処理手段1に入力され、通常使用時のフルカラー印字時には、N個の展開処理部にてそれぞれの色成分の印字データの展開処理が行われ、展開処理されたN個の画像データはデータ再構成出力手段3および画像形成部駆動抑制手段4をそのまま通過してカラー画像出力手段5の対応する色成分の画像を形成する画像形成部にそれぞれ出力される。
【0018】
単色印字のときは、単色指定時処理手段2が単色として指定された色以外のN−1個の展開処理部を単色指定色の仕様に変更する。これによりN個の展開処理部は印字データの展開処理を同時に並列的分散処理が可能になる。分散処理された各画像データはデータ再構成出力手段3にて再構成され、カラー画像出力手段の単色指定色の画像を形成する画像形成部に出力される。このとき、画像形成部駆動抑制手段4はカラー画像出力手段に対し単色として指定された色以外のN−1個の画像形成部を駆動しないよう制御する。これにより、単色印字時に、単色指定色の印字データの展開処理を担当する展開処理部以外の展開処理部の使用が可能になり、すべての展開処理部を使って単色印字データの分散処理をするようにしたことにより、展開処理を高速にすることができ、高速な印字処理が可能になる。
【0019】
次に、本発明の印刷処理装置を4色(YMCK)の印刷部を用紙の搬送方向に沿って配置されたタンデム式フルカラー印刷処理システムに適用した場合の実施の形態について説明する。
【0020】
図2は印刷処理システムの一構成例を示すブロック図である。図2において、印刷処理システムは、大きく三つのブロックに分けられる。一つは出力非同期処理部11、一つは出力同期処理部12、一つは展開前処理部13である。出力非同期処理部11は、ドキュメント作成部14、スプール部15、字句解釈部16、中間データ生成部17、中間データ記憶部18からなり、出力同期処理部12と非同期的に動作する処理部であって、クライアントホスト計算機およびサーバホスト計算機上に実現される処理装置あるいは処理部である。ここでの処理は、処理結果を記憶装置に保存しておくことにより、出力同期処理部12における処理とは非同期的に行われる。出力同期処理部12は、一時記憶部19、展開処理部20、出力部21からなり、出力部21に同期して処理を行う専用ハードウェア処理装置からなる。また、展開前処理部13は、出力同期処理部12内部にある記憶部を利用して、ある場合には出力部21と非同期的な処理を行い、またある場合には出力部21と同期的な処理を行う専用ハードウェア処理装置である。
【0021】
出力非同期処理部11において、ドキュメント作成部14は、パーソナルコンピュータやワークステーション内部において、文書作成や編集などを処理するアプリケーションプログラムで生成された文書データから記述言語で記述された印刷データを作成する機能を備えたものである。本実施の形態で対象とする記述言語は、たとえばGDI(Graphical Device Interface、Microsoft社商標)、Acrobat(Adobe Systems社商標)で代表されるPDF(Portable Document Format)、PostScript(Adobe Systems社商標)などのページ記述言語(Page Description Language)である。
【0022】
スプール部15は、ドキュメント作成部14で生成された印刷データを入力するための通信機能、あるいは字句解釈部16へ出力されるまでの間印刷データを一時記憶する機能などを備えたものである。
【0023】
字句解析部16は、スプール部15より入力された印刷データを定められた記述言語のシンタックスに従ってトークンとして切り出し、そのトークンを中間データ生成部17に出力するものである。
【0024】
中間データ生成部17は、字句解析部16から出力されるトークンを受け取って解釈し、描画命令を実行し、各描画命令に対する台形を基本単位としたデータを生成し、中間データ記憶部18あるいは出力同期処理部12の一時記憶部19へ送る。中間データを生成する目的は、展開処理部20での出力部21に同期した高速な展開処理を可能にし、また、展開処理部20における展開処理時間があらかじめ定められた時間以内に終わることを保証するためである。そのため、中間データは描画時間が予測可能な程度に簡単化されている。
【0025】
中間データ記憶部18は、中間データ生成部17から入力される中間データをバンドごとに1ページ分記憶し、一時記憶部19からの要求に応じて1バンド分ずつ中間データを送出する。
【0026】
出力同期処理部12において、一時記憶部19は、中間データ記憶部18に記憶される中間データの一部を一時的に記憶するためのバッファである。
展開処理部20は、一時記憶部19に一時的に記憶される中間データを入力し、出力部21の出力処理に同期して、それを出力部21が直接印刷できるビットマップデータに展開して出力する。また、単色印字において、展開処理部20は中間データを分割し、同時に並行的に展開処理を施し、出力する。
【0027】
出力部21は、展開処理部20のバンドバッファメモリから出力される印字データを受け取って、記録用紙に印字し、出力するものである。さらに詳しくは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの色ごとに露光、現像、転写を並列的に行い、フルカラー画像を出力できるレーザー走査方式の電子写真方式を用いたカラーページプリンタである。次に、出力部21の構成例として、レーザー走査方式の電子写真方式を用いた基本的なタンデム型カラー画像形成装置について説明する。
【0028】
図3はカラー画像形成装置の全体構成を示す図である。カラー画像形成装置は、システム制御部211と、展開処理部20の出力およびシステム制御部211に接続された四つのインタフェース部212y,212m,212c,212kと、四つの画像データ書き込み装置(Raster Output Scanner;ROS)213y,213m,213c,213kと、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の印字に対応した四つの画像形成ユニットY,M,C,Kと、用紙を搬送する用紙搬送部とから構成されている。各画像データ書き込み装置213y,213m,213c,213kは、図示しないコントローラからの制御によりレーザー光を走査するポリゴンミラーとレーザー光学系とを有し、その下部には図示しないレーザー光照射窓が設けられている。カラー画像形成装置の各色の画像形成ユニットY,M,C,Kは、構成上同一であるので、ここでは主にイエローの画像形成ユニットYについてのみ説明する。画像形成ユニットYは、感光体ドラム214、帯電器215、現像器216、除電ランプ217、転写器218、除電器219、およびクリーニング装置220から構成されている。感光体ドラム214は光導電性感光体および誘電体を使用することができ、キャリアの材質に応じた有機感光体、誘電体を用いることもできる。用紙搬送部は、密着ローラ221,222、帯電器223、転写ベルト224、除電器225、ローラ部226、ベルトクリーニング部227、定着器228から構成されている。
【0029】
展開処理部20で展開された画像データはインタフェース部212yを介して画像データ書き込み装置213yに入力される。画像データ書き込み装置213yはシステム制御部211の信号によって駆動され、画像形成ユニットYは画像データの転写を行う。画像データ書き込み装置213yは感光体ドラム214の特性に応じてLD、LEDおよびLCDなどの光学素子を用い、また感光体ドラム214が誘電体のときはイオンフローなどの直接書き込みを用いて、感光体ドラム214に潜像を形成する。
【0030】
画像データ書き込み装置213yの下部に配置された感光体ドラム214は図のように配置される帯電器215によりマイナスに帯電され、その後、画像データ書き込み装置213yにより潜像が形成される。感光体ドラム214の周囲の特定の位置に設置されている現像器216は、潜像を形成した感光体ドラム214へトナーを供給し、感光体ドラム214に形成された潜像はトナー画像として可視像化される。
【0031】
一方、用紙搬送部の上流側端部では、転写ベルト224を支持するローラ部226と、用紙229の搬送方向に対して下流部には用紙229を転写ベルト224に密着させる密着ローラ222と、前記ローラに対して転写ベルト裏面に配置された帯電器223とから構成され、用紙229を転写ベルト224に対して静電的に吸着させるための吸着装置が設けられてており、この吸着装置によって転写ベルト224に用紙229を吸着させている。
【0032】
また、用紙搬送部には、用紙搬送方向に対して転写ベルトを支持するローラ部226の上流部にクリーニングブラシとブレードとから構成されるベルトクリーニング部227が設けられ、転写ベルト224の表面に付着した残留トナーなどの汚れを除去する。このローラ部226の転写ベルト駆動方向に対して上流に配置された除電器225は、転写ベルト224の電位をゼロにするためのものである。転写ベルト224は、用紙229を転写ベルト224に密着させておくための電荷とトナー画像を転写する際に転写ベルト224に印加された電荷とがその除電器225で除去され、その後、ベルトクリーニング部227で清掃され、新たな別の用紙を保持させる作用を良好にするようにする。
【0033】
感光体ドラム214に可視像化されたトナー画像に対して除電ランプ217による光照射でトナーの付着力が弱められ、転写器218の放電により転写ベルト224によって搬送されている用紙229に転写される。トナー画像を用紙229に転写した後に感光体ドラム214の表面に残留したトナーは、除電器219が感光体ドラム214の残留電位をゼロにした後、感光体ドラム214の回転後半部に配置されるクリーニング装置221により除去される。そして、新たに帯電器215により一様な帯電が行われるようにする。画像形成ユニットYの工程が完了すると、この画像形成ユニットYと同様の工程で、画像形成ユニットM、画像形成ユニットC、画像形成ユニットKがそれぞれ残りの色の転写を行う。
【0034】
このようにして、各色のトナー画像が転写ベルト224で搬送されている用紙229に転写され、用紙229には所望のトナー画像が形成される。この後、トナー画像の形成された用紙229は、二つのローラを有する定着器228でトナー画像が定着される。定着器228は所望の熱と圧力により、用紙229に形成されたカラー画像のトナーを融解させることで用紙229に転写されたトナー画像を定着させ、これによって、カラー画像が用紙に印字される。
【0035】
以上、印刷処理システムの概要について記述した。次に、この印刷処理システムの主要部の詳細について説明する。
初めに、出力非同期処理部11における中間データ生成部17について詳細を説明する。
【0036】
図4は中間データ生成部の構成例を示すブロック図である。中間データ生成部17は、トークン解釈部17aと、命令実行部17bと、画像処理部17cと、描画状態記憶部17dと、ベクタデータ生成部17eと、フォント管理部17fと、マトリックス変換部17gと、ショートベクタ生成部17hと、台形データ生成部17iと、バンド分解部17j、バンド管理部17kから構成される。
【0037】
トークン解釈部17aは、字句解釈部16から入力されたトークンを解釈し、内部命令に変換して命令実行部17bへ送る。命令実行部17bは、トークン解釈部17aから送られてきた命令に応じて画像処理部17c、描画状態記憶部17d、ベクタデータ生成部17eへ転送する。画像処理部17cは、入力された画像ヘッダと画像データとをもとに各種の画像処理を行って出力画像ヘッダと出力画像データとを生成し、バンド管理部17kへ転送する。描画状態記憶部17dは、命令実行部17bの命令によって与えられる描画に必要な情報を記憶する。ベクタデータ生成部17eは、命令実行部17bの命令とそれに付加された情報、描画状態記憶部17dからの情報、フォント管理部17fからの情報を使用して描画すべきベクタデータを生成し、マトリックス変換部17gへ転送する。フォント管理部17fは、各種フォントのアウトラインデータを管理記憶し、要求に応じて文字のアウトラインデータを提供する。マトリックス変換部17gは、ベクタデータ生成部17eから入力されたベクタデータを描画状態記憶部17dの変換マトリックスによってアフィン変換し、ショートベクタ生成部17hへ転送する。ショートベクタ生成部17hは、入力されたベクタ中の曲線に対するベクタを複数の直線のベクタ集合(ショートベクタ)で近似し、台形データ生成部17iへ送る。台形データ生成部17iは、入力されたショートベクタから描画する台形データを生成して、バンド分解部17jへ転送する。バンド分解部17jは、入力された台形データのうち複数のバンドにまたがる台形データをそれぞれのバンドの台形データに分割し、バンド単位にバンド管理部17kへ送る。バンド管理部17kでは、バンド単位に入力された台形データに、管理情報と描画状態記憶部17dや画像処理部17cから入力された色情報とを付加し、中間データとして中間データ記憶部18へ出力する。なお、上記に説明したトークン解釈部17aから中間データ記憶部18への書き込みまでの処理は、描画命令が入力されるたびに繰り返し行われる。また中間データ記憶部18から出力同期処理部12への中間データの転送は、1ページ分の中間データが記憶された後に行われる。
【0038】
以下では、実際のデータ構造を示しながら、中間データ生成部17の各部の動作をより詳細に説明する。
トークン解釈部17aは、字句解釈部16から入力されたトークンを解釈し、内部命令やその引数に変換し、それら内部命令と引数との組を命令実行部17bへ転送する。たとえば内部命令には、文字/図形/画像の描画を実行する描画命令や、色や線属性など描画必要な情報を設定する描画状態命令などがある。
【0039】
命令実行部17bは、トークン解釈部17aから送られてきた内部命令を実行する。ここで実行する命令は、主に描画命令と描画状態命令がある。たとえば描画命令には、以下の表1に示すように3種類の描画命令があり、それぞれの描画に必要な情報が示されている。このうちアンダーラインがある情報については、描画命令中の引数として与えられ、その他の情報はあらかじめ初期設定や先行する命令などにより描画状態記憶部17dに記憶されている。描画命令の実行は、画像描画以外は受け取った描画命令をそのままベクタデータ生成部17eへ転送する。画像描画の場合は、受け取った描画命令を画像処理部17cへ転送するとともに、画像ヘッダの縦および横の大きさをベクタデータ生成部17eへ転送する。また描画状態命令については、命令を描画状態記憶部17dへ転送する。
【0040】
【表1】
【0041】
画像処理部17cは、命令実行部17bから入力された命令の引数である入力画像ヘッダと入力画像データを、描画状態記憶部17dから獲得した変換マトリックスや色空間情報などを用いて、出力同期処理部12へ出力するためのデータ構造を生成してバンド管理部17kへ転送する。このデータ構造については以下の台形データ生成部17iの説明で詳述する。
【0042】
描画状態記憶部17dは、命令実行部17bから受け取った命令に含まれる引数の値で、たとえば表1に示したアンダーラインのない情報についての値の設定を行い、それらを記憶する。また、画像処理部17c、ベクタデータ生成部17e、マトリックス変換部17g、ショートベクタ生成部17h、バンド管理部17kなどの要求に従って、それらの値を転送する。
【0043】
ベクタデータ生成部17eでは、命令実行部17bから送られてきた命令と引数、描画状態記憶部17dの値を使用して、塗りつぶし描画を除く、新たに描画するためのベクタデータを生成する。まず文字描画の場合について説明する。引数で与えられた文字コードと描画状態記憶部から獲得したフォントIDをフォント管理部17fへ転送して、文字のアウトラインデータを獲得する。獲得したアウトラインデータには、描画原点(カレントポイント)の情報が含まれていないので、描画状態記憶部17dから獲得したカレントポイントのオフセットをアウトラインデータに加えることによって、目的のベクタデータを生成する。画像描画の場合には、引数で与えられた画像ヘッダの縦と横のサイズからそれに対する矩形ベクタを生成し、描画状態記憶部17dから獲得したカレントポイントのオフセットを加えることで目的のベクタデータを生成する。ストローク描画の場合は、引数で与えられたベクタと描画状態記憶部17dから獲得した各種の線属性とから、アウトラインベクタを生成する。
【0044】
図5はアウトラインベクタの説明図である。ストローク描画によって、2本のつながった直線L1,L2を描画しようとするときには、破線で示した中心線の引数で与えられたベクタと描画状態記憶部17dから獲得した輪郭データの各種線属性とからアウトラインベクタを生成する。すなわち、中心線とその太さと2本の直線L1,L2のつなぎの処理(図示の例では、中心線の交差位置に円を配置している)とを指定することにより、図5に示すような太さを持った線のアウトラインベクタが生成される。このように生成したベクタ(塗りつぶし描画の場合は命令実行部17bから直接受け取ったベクタ)を、マトリックス変換部17gへ転送する。
【0045】
フォント管理部17fは、各種フォントに対するアウトラインベクタデータを記憶するとともに、与えられた文字コードとフォントIDとによって、その文字に対するアウトラインベクタデータを提供する。
【0046】
マトリックス変換部17gは、ベクタデータ生成部17eから受け取ったベクタデータを、描画状態記憶部17dから獲得した変換マトリックスによってアフィン変換する。このアフィン変換の主な目的は、アプリケーションの解像度(座標系)からプリンタの解像度(座標系)に変換するためのものである。変換マトリックスには下式(1)に示すような3×3のものが使われ、入力ベクタデータ(Xn,Yn)は、出力ベクタデータ(Xn’,Yn’)に変換されてショートベクタ生成部17hへ送られる。
【0047】
【数1】
【0048】
ショートベクタ生成部17hは、入力されたベクタの中に曲線のベクタがある場合にその曲線のベクタを、誤差が描画状態記憶部17dから獲得したflatness値より小さくなるように、複数のショートベクタで近似する処理を行う。これを図6を参照して説明する。
【0049】
図6は曲線の再帰的な分割を示す説明図である。たとえば曲線のベクタには、図6に黒丸で示した四つの制御点で表現されるベジエ曲線が使われる。この場合、ショートベクタ化の処理は、黒丸で示した元のベジエ曲線の制御点の間の距離を中点分割していき、その分割位置を新たなベジエ曲線の制御点とする。この制御点は黒四角の記号で示してある。さらに、この制御点に対して、それらの間の距離をさらに中点分割していくことにより、ベジエ曲線をより短い複数のベクタで表現することができる。このように、ベジエ曲線を再帰的に分割し、分割された制御点で作られる三角の高さ(距離d)がflatnessで与えられた値より小さくなった時点で分割を終了する。そして分割された各ベジエ曲線の始点と終点を順番に結ぶことにより、ショートベクタ化が完了する。生成されたショートベクタは、台形データ生成部17iへ送られる。
【0050】
台形データ生成部17iは、入力されたベクタデータから、描画領域を示す台形データの集合を生成する。このベクタデータから台形データを生成する例を図7を参照して説明する。
【0051】
図7は多角形を台形データで表現する説明図であって、(A)は多角形を台形に分割した状態を示し、(B)は台形を表現するデータを示している。たとえば図7(A)に示す太線で示された多角形のベクタは、それらの頂点を通る水平線で分割することによって四つの台形からなる描画領域に分解される。なお、これらの台形は出力部21のスキャンラインに平行な2辺を持った台形である。一つの台形は、図7(B)に示すように、底辺の始点座標(sx,sy)、底辺の長さ(x0)、底辺の両端点のx座標から頂辺の両端点のx座標までの距離(x1,x2)、および底辺のy座標から頂辺のy座標までの距離(h)の6つのデータ(sx,sy,x0,x1,x2,h)によって表現される。分割された描画領域が三角形の場合もあるが、三角形は条件「x0=x1+x2」が成立する台形の特別な形状であるので、データ構造は台形と同じである。生成された台形データは、次に、バンド分解部17jへ送られる。
【0052】
バンド分解部17jは、入力された台形データのうち複数のバンドにまたがる台形データをバンドごとの台形データに分割し、バンドごとに台形データをバンド管理部17kへ転送する。
【0053】
図8は台形データのバンド分割の説明図であって、(A)はバンド境界が台形を横切っている状態を示し、(B)はバンド境界でさらに分割された台形を示している。この図8によれば、(A)には四つの台形によって分割された前述の多角形が示されており、分割された台形の二つがバンド境界上にあることを示している。このような場合、バンド分解部17jが四つの台形データからなる多角形をバンド境界で分割することによって、(B)に示したように、多角形は6つの台形データに分割されることになる。
【0054】
バンド管理部17kは、バンドごとに入力された台形データに付加情報を付けて中間データを生成し、バンドごとに中間データを中間データ記憶部18に書き込む処理を行う。ここで、付加情報は、中間データを管理するための管理情報と、台形データを何色で塗りつぶすかを示す色情報である。管理情報は、そのバンド全体に関するものと各描画オブジェクトごとに異なるものとがある。バンド全体に関する管理情報は、そのバンドの中間データのデータサイズである。また、文字/図形の描画命令に対する管理情報は、オブジェクトID(識別子)、オブジェクトの種類、台形数のデータであり、たとえばCMYKの値が色情報である。
【0055】
図9は描画命令によって生成される画像およびその中間データを示した図であって、(A)は文字/図形命令に対するデータを示し、(B)は画像命令に対するデータを示している。まず、文字/図形の描画命令が、たとえば(A)に示したような変形した四角形を描画する命令であり、その四角形が台形データ生成部17iにより三つの台形データに分割されたとする。その場合のデータ形式は、まず、四角形を識別するオブジェクトID(OID)、文字か図形かのオブジェクトの種類(OType)、色情報(Color)、および分割された台形の数の情報が管理情報として付加され、その後に分割された各台形のデータが続く。オブジェクトIDは描画命令順にインクリメントされた値が入り、オブジェクトの種類はここでは図形オブジェクトの識別子が入り、色情報はCMYKの値が入り、台形の数はここでは「3」が入る。
一方、画像の描画命令によって生成される画像が(B)に示したような平行四辺形であり、それが三つの台形データに分割される場合、そのデータ形式は、その画像のオブジェクトID(OID)、画像オブジェクト(OType)および台形数のデータが管理情報としてあり、その後に分割された台形データごとに、展開前処理部13で行う処理に対するパラメータを含む画像ヘッダRHと色情報である画像データRDとが追加されている。画像ヘッダRHおよび画像データRDは、描画命令によって生成されたバンドごとの台形データそれぞれに対して一つずつ付加される。画像ヘッダRHは、必要に応じて、画像に対するアフィ変換係数や色空間変換係数などからなる。画像ヘッダRHおよび画像データRDは画像処理部17cから入力される。
【0056】
図10は中間データとして付加される画像データを示した図であって、(A)はベクタの最小矩形に対する画像データを示し、(B)は台形データの最小矩形に対する画像データを示している。画像ヘッダRHおよび画像データRDは画像処理部17cから入力されるが、中間データとして付加される画像データは、(A)に示すように変換された画像を示すベクタの最小矩形に対する画像データである。また、画像処理部17cで変換された画像データは、(B)に示したように、各台形ごとの最小矩形に対する画像データでもよい。さらに、画像データは容量が大きくなるため、圧縮された形で格納されていてもよい。
【0057】
以上の各台形データはバンドごとにまとめられ、各バンドの最終データにEOD(End Of Data)を表すデータを付加して、バンドデータの終了を明確にしている。
【0058】
次に、出力同期処理部12のさらに詳しい構成について説明する。
図11は出力同期処理部の構成例を示すブロック図である。図11おいて、一時記憶部19は、通信部19aと、作業用メモリ19bと、作業用メモリ管理部19cと、中間データバッファ管理部19dと、中間データバッファ部19eとによって構成され、作業用メモリ管理部19cは展開前処理部13に接続されている。展開処理部20は、Y展開処理部20aと、M展開処理部20bと、C展開処理部20cと、K展開処理部20dと、ビデオ信号選択回路20eと、印字抑制回路20fと、展開制御回路部20gとによって構成され、展開制御回路部20gは色指定信号線20hによって一時記憶部19の通信部19aに接続され、印字抑制回路20fはタンデム型カラー出力装置とする出力部21に接続される。
【0059】
通信部19aは中間データ生成部17または中間データ記憶部18と通信を行い、中間データを作業用メモリ19bまたは中間データバッファ部19eへ格納するために、それぞれの場合について作業用メモリ管理部19cまたは中間データバッファ管理部19dにデータを出力する。
【0060】
作業用メモリ19bは展開前処理部13がたとえば圧縮データの伸長処理を行うときに作業用領域として用いる記憶域である。作業用メモリ管理部19cは、中間データ生成部17または中間データ記憶部18と作業用メモリ19bとの間のデータ通信と、作業用メモリ19bと展開前処理部13との間のデータ通信と、作業用メモリ19bと中間データバッファ部19eとの間のデータ通信とを管理する。
【0061】
中間データバッファ部19eは、展開処理部20で展開される中間データを一時的に記憶するバッファメモリからなる。中間データバッファ管理部19dは、中間データ生成部17または中間データ記憶部18と中間データバッファ部19eとの間のデータ通信と、中間データバッファ部19eと展開処理部20とのデータ通信と、中間データバッファ部19eと作業用メモリ19bとの間のデータ通信とを管理する。
【0062】
展開処理部20において、フルカラー印字時には、Y展開処理部20a、M展開処理部20b、C展開処理部20c、K展開処理部20dはそれぞれ中間データバッファ部19eから展開する中間データを読み出して、その中間データを展開し、対応する色成分を抽出してビデオ信号を生成し、出力部21に出力する。また、単色印字時には、展開制御回路部20gは一時記憶部19の通信部19aから色指定信号線20hを介して単色指定される。この単色指定を受けた展開制御回路部20gは、各色成分の展開処理部20a〜20dを単色指定された色(通常はブラック)の仕様に変更する。各展開処理部20a〜20dはそれぞれ中間データバッファ部19eから展開する中間データを読み出す。K展開処理部20dは自身が展開すべき中間データを展開するのはもちろんであるが、他のY展開処理部20a、M展開処理部20b、C展開処理部20cは、本来K展開処理部20dが展開すべき中間データを展開する。中間データを展開することによって生成されたビデオ信号はビデオ信号選択回路20eにより抽出され、出力部21へ出力される。このとき、印字抑制回路20fは単色指定された色以外の色の画像を形成する出力部21の画像形成ユニットを動作させないようにする。
【0063】
次に、展開処理部20について詳細に説明する。
図12は展開処理部の構成例を示すブロック図である。展開処理部20は、一時記憶部19の出力を受けるよう接続されたY展開処理部20a、M展開処理部20b、C展開処理部20c、およびK展開処理部20dと、各色の展開処理部の出力に接続されたビデオ信号選択回路20eと、フルカラー印字指定または単色印字指定の中間データの解析結果を出力する色指定信号線20hと、単色印字時に単色印字される色以外を出力させないための印字抑制回路20fと、展開制御回路部20gとを有している。この展開制御回路部20gは、中央演算処理装置(CPU)201と、プログラムおよびスクリーン処理用ルックアップテーブル(以下、スクリーン処理用LUTと記す)を格納している記憶装置(ROM)202と、出力用クロック切換回路203と、各展開処理部が領域ごとに展開したデータの読み出し用の32ビットカウンタ204と、各色の展開処理部の出力データを選択するための2ビットカウンタ205とで構成される。
【0064】
中間データ生成部17から中間データが入力された一時記憶部19はその中間データがフルカラーであるか単色であるかを解析し、色指定信号線20hを通じてCPU201に通知される。
【0065】
フルカラー印字の場合、フルカラーを指示する色指定信号は一時記憶部19から色指定信号線20hによりCPU201へ入力され、CPU201はROM202に格納されたプログラムを実行することで出力用クロック切換回路203でカラー印字用クロックを選択し、2ビットカウンタ205にリセット信号RSTを入力することでフルカラー印字の設定を行う。さらに、印字抑制回路20fは図示しないバスを介してCPU201の命令によりリセット信号RSTが入力され、タンデム型カラー画像出力装置である出力部21はすべて駆動可能となる。一時記憶部19はY展開処理部20a〜K展開処理部20dへ中間データを転送し、Y展開処理部20a〜K展開処理部20dはその中間データから同時に各Y展開処理部20a〜K展開処理部20dが展開処理すべきデータの抽出を行った後、各Y展開処理部20a〜K展開処理部20d内の図示していないROMに格納された各色変換ルックアップテーブルとROM202からのスクリーン処理用LUTなどを用いて展開を行い、出力部21内の対応する各色の出力装置においてそれぞれ展開データが出力される。
【0066】
また、単色(ここでは、黒とする)印字の場合には、一時記憶部19から単色指定信号が色指定信号線20hを介してCPU201に転送される。CPU201はROM202に格納された色選択プログラムを実行し、指定された黒色用のK展開処理部20d以外のY展開処理部20a、M展開処理部20bおよびC展開処理部20c内の図示していないRAMに、ROM202内に格納された黒色用のスクリーン処理用LUTを書き込み、展開処理時にそのスクリーン処理用LUTを使用するように変更する。このとき、Y展開処理部20a、M展開処理部20bおよびC展開処理部20c内のフルカラー印字をするための各色用のスクリーン処理用LUTは、CPU201の命令によってサスペンドされる。一時記憶部19はY展開処理部20a〜K展開処理部20dへ中間データを転送し、Y展開処理部20a〜K展開処理部20dは中間データから同時にそれぞれが展開処理すべき領域ごとのデータの抽出を行った後、それぞれの中の図示していないRAMに書き込まれたスクリーン処理用LUTなどを用いて展開を行い、展開データを出力する。出力用クロック切換回路203は本来、出力部21の動作クロックに同期するようなっているが、単色指定の場合、CPU201によってフルカラー印字時の場合の4倍のクロックに切り換えるようセットされる。Y展開処理部20a〜K展開処理部20dは各領域ごとに展開したデータを、フルカラー印字時の4倍のクロックに同期して出力する。ビデオ信号選択回路20eは、Y展開処理部20a〜K展開処理部20dで領域ごとに展開されたデータを2ビットカウンタ205でY展開処理部20a〜K展開処理部20dを選択して順に呼び出す。また、印字抑制回路20fは、単色印字時に選択された色以外の色を出力する出力部21の出力装置を停止する。
【0067】
次に、各色を展開処理するY展開処理部20a〜K展開処理部20dについて説明する。Y成分を展開処理するY展開処理部20a、M成分を展開処理するM展開処理部20b、C成分を展開処理するC展開処理部20c、K成分を展開処理するK展開処理部20dは、すべて同様の構成をとるためここではその内のY展開処理部20aの内部構成および動作について説明する。
【0068】
図13はY展開処理部の構成例を示すブロック図である。Y展開処理部20aは、描画部231と、リフレッシュ制御部232と、中間データ転送制御部233と、印字データ転送制御部234と、アービトレーション部235と、メモリ部236とからなり、このメモリ部236は二つのバンドバッファA237およびバンドバッファB238と、ワーク領域239とからなる。
【0069】
一時記憶部19の中間データバッファ部19eに格納された中間データは、中間データ転送制御部233により描画部231へ読み込まれる。描画部231は入力された中間データを展開してメモリ部236のバンドバッファA237あるいはバンドバッファB238へ描画する。また、描画部231は外部にある展開制御回路部20gのCPU201によって内部のスクリーン処理用LUTがフルカラー印字用、単色印字用に使い分けられる。印字データ転送制御部234は、描画済みのバンドバッファA237あるいはバンドバッファB238から展開された印字データを読み込み、これを読み込んだワードごとにシリアル変換し、シリアル出力クロック信号に同期して出力部21へ出力する。リフレッシュ制御部232は、メモリ部236のバンドバッファA237、バンドバッファB238およびワーク領域239をリフレッシュ制御する。アービトレーション部235は、描画部231、リフレッシュ制御部232、中間データ転送制御部233、および印字データ転送制御部234のそれぞれがメモリ部236をアクセスする際に、それぞれのブロックのアクセスのプライオリティに応じてアービトレーション制御を行う。
【0070】
二つのバンドバッファA237およびバンドバッファB238の使用方法について説明する。あるバンドiに対する中間データを描画部231が一方のバンドバッファに描画しているとき、他方のバンドバッファにはその前のバンド(i−1)に対する描画済ビットマップデータが格納されており、印字データ転送制御部234はここからデータを読み出して出力部21へ出力している。この印字データ転送制御部234によるデータの出力が終了すると、二つのバンドバッファA237およびバンドバッファB238の役割は交代し、一方のバンドバッファは印字データ転送制御部234によるデータ出力に用いられ、他方のバンドバッファは次のバンド(i+1)の描画に用いられる。
【0071】
描画部231は入力された中間データをなす台形データをもとに台形領域を描画するが、次に、その描画部231の構成および動作について説明する。
図14は描画部の構成例を示すブロック図、図15は描画部で変換された台形データを示す説明図である。描画部231は中間データ入力部241と、座標計算部A242および座標計算部B243と、エッジ描画部244とから構成される。
【0072】
描画部231は、入力された中間データをなす台形データ(sx,sy,x0,x1,x2,h)を、図15に示されるような4点(P0 ,P1 ,P2 ,P3 )からなるデータ形式に変換して台形領域を描画する。まず、中間データ入力部241は、一時記憶部19から一つ一つの台形をなすデータを読み込んで、座標計算部A242および座標計算部B243に台形データを出力する。座標計算部A242は、台形の左側のエッジ(エッジP0 −P1 )の座標計算を担当し、エッジ上の座標値をP0 からP1 に向かって順に出力する。座標計算部B243は、台形の右側のエッジ(エッジP2 −P3 )の座標計算を担当し、エッジ上の座標値をP2 からP3 に向かって順に出力する。エッジ描画部244は、座標計算部A242および座標計算部B243から入力される座標値により、台形のx軸に平行な直線を描画する。ここで、座標計算部A242および座標計算部B243、およびエッジ描画部244の詳細な構成を以下に示す。まず、座標計算部A242および座標計算部B243は同一構成なので、その一方を代表して説明する。
【0073】
図16は座標計算部の構成例を示すブロック図である。座標計算部は、DDA(Digital Differential Analyzer)パラメータ計算部251と、DDA処理部252と、座標更新部253とから構成されている。
【0074】
DDAパラメータ計算部251は入力された台形データ(sx,sy,x0,x1,x2,h)を4点の台形データ(P0 ,P1 ,P2 ,P3 )に変換して、傾きや残差(直線の座標計算に用いる1次差分係数)の初期値などのDDAのパラメータを計算し、DDA処理部252に出力する。DDA処理部252は、入力されたパラメータに基づいてDDA処理を行い、最後に求めた点に対する移動方向と移動量とを出力する。座標更新部253は、入力された移動方向と移動量とから現在保持している座標値を更新して出力する。座標の初期値は、図示されていないCPUなどであらかじめ設定されているものとする。
【0075】
図17はエッジ描画部の構成例を示すブロック図である。エッジ描画部244は、アドレス計算部261と、マスク演算部262と、データ演算部263と、RmodW(Read modify and Write)処理部264とから構成されている。アドレス計算部261は選択回路2611と、フルカラー印字用のフルカラーアドレス計算部2612と、単色印字用の単色アドレス計算部2613とを有している。
【0076】
エッジ描画部244は、座標値A/Bおよび画像データを入力して台形の内部領域を塗りつぶす。まず、アドレス計算部261において、選択回路2611はフルカラー印字時には単色信号が入力されず、フルカラーアドレス計算部2612がアドレス計算部として使用される。ここで選択されたフルカラーアドレス計算部2612は、座標値A/Bを入力して、描画するエッジ成分のアドレスを計算する。
【0077】
また、単色印字時には、描画部231内の図示しないRAMへのCPU201よる指定色のスクリーン処理用LUTの書き込みと同時に単色の色指定信号が選択回路2611へ入力され、単色アドレス計算部2613がアドレス計算部として使用されるように切り換えられる。選択された単色アドレス計算部2613は、各展開処理部ごとに分割展開処理すべきデータのアドレス計算と座標値A/Bとを入力して、描画するエッジ成分のアドレスを計算する。
【0078】
図18は各展開処理部における展開データ分割処理とワードアドレスとの関係を示す図である。ここでは、展開処理されたデータをワードごとに区切って処理するものとし、1ワードは32ビットとし、出力部21は4色のタンデム方式の場合で説明する。
【0079】
Y展開処理部20a〜K展開処理部20dはそれぞれが展開を受け持つワードアドレスにあるワードの展開処理を行い、したがって、一つの展開処理部ではワードアドレスが4アドレスおきに行われる。図では、データ全体をワードごとに区切ったときの中間データの開始ワードアドレスを「0000」、「0001」、「0002」、「0003」で示している。ここで、ワードアドレスの下位2桁が「00h」のワードアドレスはK展開処理部20dが扱い、下位2桁が「01h」のワードアドレスはCPU201によってK成分のスクリーン処理用LUTに切り換えられたC展開処理部20cが扱い、下位2桁が「10h」のワードアドレスはCPU201によってK成分のスクリーン処理用LUTに切り換えられたM展開処理部20bが扱い、下位2桁が「11h」のワードアドレスはCPU201によってK成分のスクリーン処理用LUTに切り換えられたY展開処理部20aが扱うようにして、各展開処理部は4アドレスごとに展開処理をそれぞれ行う。ワードアドレスごとの処理は、4アドレスごとに限らず感光体数に対応したアドレスごとで行うことも可能である。
【0080】
図17に戻って、マスク演算部262は、座標値A/Bの値を入力して、描画するワード中の有効なビットを表すマスクを出力する。データ演算部263は、入力されたデータが文字/図形の場合には台形領域によって固定的な色を表す色データを入力し、この値を用いてスクリーン処理をして出力する。入力されたデータが画像データの場合には、画像データ入力に対してスクリーン処理をして出力する。単色印字時には、スクリーン処理用LUTは、単色指定された色以外の図示しないROMに常駐された各色のスクリーン処理用LUTをサスペンドした後、CPU201によって外部のROM202から図示していないRAMに単色指定された色のスクリーン処理用LUTが書き込まれ、スクリーン処理にこのLUTが使用される。RmodW部264は、入力されたアドレス、マスク、データを用いて以下の処理をすることにより描画を行う。まず、アドレスにより、バンドバッファを読み出す。これにより読み込まれたデータをSource、マスクデータをMask、描画データをDataとすると、(Mask*Data+Mask#*Source)の値を演算して同一アドレスに書き戻す。ただし、*は論理積、+は論理和、#は論理否定をそれぞれ表す。この処理は、描画するエッジが含まれるワードごとに繰り返し行われる。
【0081】
図19はビデオ信号選択回路およびその周辺回路を示す図である。ここでは、単色印字の色を黒に限定した場合の例を示している。ビデオ信号選択回路20eは単色用データ選択回路206を有している。この単色用データ選択回路206は入力にY展開処理部20a、M展開処理部20b、C展開処理部20c、およびK展開処理部20dの各出力が接続され、出力は直接出力部21のK成分印字用の出力装置に接続され、さらに制御入力にはデータ入力を切り換えるための2ビット信号を受ける2ビットカウンタ205の出力が接続されている。また、印字抑制回路20fは画像出力抑制回路207を有し、この画像出力抑制回路207はY展開処理部20a、M展開処理部20bおよびC展開処理部20cの各出力と対応する色成分印字用の各出力装置との間に配置されている。
【0082】
ビデオ信号選択回路20eの単色用データ選択回路206は、ワードごとの読み取りのための32ビットカウンタ204とデータ入力切り換えのための2ビットカウンタ205とによって画像データの出力制御を行う。単色用データ選択回路206は、2ビットカウンタ205により各展開処理部で出力されるその時点で印字すべきワードデータを選択する。その選択されたワードデータはワードデータの幅が32ビットカウンタ204によってカウントされ、出力部21の出力装置に転送される。この動作は各展開処理部のワードデータごとに繰り返えされ、各々展開処理を行ったワードデータが印字処理順に出力部21に転送される。さらに、画像出力抑制回路207は、単色印字時に、使用されない色の出力部21の駆動を抑制するものであって、出力部21内のROSのみまたはROSと感光体ドラムとの駆動を停止させる機能を有する。また、フルカラー印字時には、2ビットカウンタ205にリセット信号RSTが入力されることで、単色用データ選択回路206はサスペンドされ、さらに画像出力抑制回路207はリセット信号の入力により、出力部21へ展開データ印字の許可を出す。
【0083】
以上、本発明をその好適な実施の形態について詳述したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。たとえば、単色印字の色は黒の場合を例にして説明したが、黒に限らず他の色でも可能である。
【0084】
また、ワードごとの読み取りおよびデータ入力切り換えのためのそれぞれのカウンタのビット数は、32ビットおよび2ビットとしたが、これらのビット数に限らずそれぞれワード単位の数と感光体に対応した数としてもよい。
【0085】
さらに、上記の実施の形態では、それぞれの色の展開処理部で扱うデータは領域ごとに分割されたデータとしたが、文字、図形または画像のオブジェクトごとであってもよい。
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では単色印字時にすべての色成分の展開処理部を単色指定された色成分の中間データを分散して展開処理させるように構成した。これにより、単色データの展開処理を高速にすることができ、高速な印字処理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による印刷処理装置の原理図である。
【図2】印刷処理システムの一構成例を示すブロック図である。
【図3】カラー画像形成装置の全体構成を示す図である。
【図4】中間データ生成部の構成例を示すブロック図である。
【図5】アウトラインベクタの説明図である。
【図6】曲線の再帰的な分割を示す説明図である。
【図7】多角形を台形データで表現する説明図であって、(A)は多角形を台形に分割した状態を示し、(B)は台形を表現するデータを示している。
【図8】台形データのバンド分割の説明図であって、(A)はバンド境界が台形を横切っている状態を示し、(B)はバンド境界でさらに分割された台形を示している。
【図9】描画命令によって生成される画像およびその中間データを示した図であって、(A)は文字/図形命令に対するデータを示し、(B)は画像命令に対するデータを示している。
【図10】中間データとして付加される画像データを示した図であって、(A)はベクタの最小矩形に対する画像データを示し、(B)は台形データの最小矩形に対する画像データを示している。
【図11】出力同期処理部の構成例を示すブロック図である。
【図12】展開処理部の構成例を示すブロック図である。
【図13】Y展開処理部の構成例を示すブロック図である。
【図14】描画部の構成例を示すブロック図である。
【図15】描画部で変換された台形データを示す説明図である。
【図16】座標計算部の構成例を示すブロック図である。
【図17】エッジ描画部の構成例を示すブロック図である。
【図18】各展開処理部における展開データ分割処理とワードアドレスとの関係を示す図である。
【図19】ビデオ信号選択回路およびその周辺回路を示す図である。
【図20】従来のカラーレーザープリンタの構成の概略を示したブロック図である。
【図21】タンデム式転写プロセスの転写開始時間差を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 展開処理手段
2 単色指定時処理手段
3 データ再構成出力手段
4 画像形成部駆動抑制手段
5 カラー画像出力手段
Claims (7)
- 印字データのN色の色成分を個々に展開処理し、展開された個々の画像データをカラー画像出力手段にて色成分ごとに対応して画像をそれぞれ形成するN個の画像形成部に出力する印刷処理装置において、
前記カラー画像出力手段のN個の画像形成部に対応したN個の展開処理部を有し、入力された印字データを各展開処理部で展開処理する展開処理手段と、
前記印字データのフルカラー印字時には前記展開処理手段のN個の展開処理部に対してそれぞれ同時に並列的展開処理を行うようにし、単色印字時には単色として指定された色以外のN−1個の展開処理部を単色指定色の仕様に変更するとともに前記印字データを前記N個の展開処理部が分担して同時に並列的分散処理を行うようにする単色指定時処理手段と、
単色印字時に前記単色指定時処理手段による指示を受けて前記展開処理手段の各展開処理部にて同時に並列的分散処理された各画像データを再構成して前記カラー画像出力手段において単色指定色の画像を形成する画像形成部に出力するデータ再構成出力手段と、
を備えていることを特徴とする印刷処理装置。 - 単色印字時に前記単色指定時処理手段による指示を受けて前記カラー画像出力手段に対し単色として指定された色以外のN−1個の画像形成部を駆動しないようにする画像形成部駆動抑制手段をさらに有することを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
- 前記単色指定時処理手段は、単色印字時に前記展開処理手段の各展開処理部が展開処理するデータ量をカウントするとともに前記データ再構成出力手段に対して各展開処理部からの画像データ入力を選択指示する信号を出力するカウンタ部と、単色印字時に前記展開処理手段に対して前記カラー画像出力手段に同期して前記画像データを出力するクロックをフルカラー印字時のN倍に切り換える出力クロック切換部とを有することを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
- 前記展開処理手段は、単色印字時に各展開処理部にて印字データを領域ごとに同時に分割処理し、各展開処理部で領域ごとに展開処理された画像データを前記データ再構成出力手段に出力することを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
- 前記展開処理手段は、単色印字時に各展開処理部にて印字データをオブジェクトごとに同時に分割処理し、各展開処理部でオブジェクトごとに展開処理された画像データを前記データ再構成出力手段に出力することを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
- 前記単色指定時処理手段は、単色印字時に前記展開処理手段の各展開処理部が展開時に参照するデータテーブルと前記データテーブルの各展開処理部への書き込みを行うプログラムとを格納した記憶手段と、単色印字時に前記記憶手段に格納されたプログラム実行して各展開処理部内の記憶装置に前記データテーブルを書き込むとともに前記展開処理手段に対して各展開処理部内のフルカラー印字用のデータテーブルを参照しないよう制御する中央演算装置とを有していることを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
- 前記単色は、黒であることを特徴とする請求項1記載の印刷処理装置。
Priority Applications (1)
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1997
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