JP3639860B2 - モルタル組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、モルタル組成物の製造方法に関連する。
【0002】
【従来の技術】
従来、既製モルタル袋とパック詰繊維とで構成するモルタル組成物としては、文献(1)、又は文献(2)に挙げられる発明が先行技術と考えられる。そこで、その内容を説明する。
【0003】
文献(1)は、特開平10−230515号のグラウト材の製造方法である。内容は、セメントと混和材とを別々に1単位として袋に充填する構成を採用することで、プレミックス型より保存性に優れ、均一混合物が得られ、施工が簡単に行え、更に運搬費を軽減できる構造を提供する。概要は、セメントと混和材とを別々に1単位として袋に充填する構成であり、この混和材が、珪砂とフライアッシュ、炭酸カルシウム又はセメントから選択された少なくとも一種を含み、更に再乳化粉末樹脂、減水剤、消泡剤、膨張剤、収縮低減剤、増粘剤、繊維又はスラグ微粉末から選択された少なくとも1種を配合した構成であり、1単位以上のセメントを袋から取り出し、水で混練した後、混和材を添加して混合して形成したことを特徴とする。
【0004】
文献(2)は、特開2002−12479の軽量ポ−ラスコンクリ−ト材である。内容は、取り扱い容易で、緑化用にも適した軽量ポ−ラスコンクリ−ト材を提供する。概要は、セメントに対し珪藻土、パ−ライト、軽石、人工骨材、その他の低比重の鉱物性軽量骨材を一種又は二種以上配合し、軽量骨材が吸水性及び保水性を備えているほか、コンクリ−トの保水性を補う保水助材として竹材、やし材、木材等を粉砕してなる繊維質材、若しくはピ−トモス、その他の植物性繊維質材のいずれか一種又は二種以上の混合物を添加してなる。このセメント、軽量骨材及び保水助材を予め所定の配合で混合して、個々に袋に充填したことを特徴とする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
文献(1)は、混和材が、珪砂とフライアッシュ、炭酸カルシウム又はセメントから選択された少なくとも一種を含む構成であるので、この混和材の均一化、又はセメントとの混合の容易化が図れること、又は各プレミックスモルタル用資材(材料)を、個別に袋詰し、この資材を袋より取出して、市販のセメントに混練することを特徴とする。しかし、この発明は、クラック防止、剥離防止等を意図しない。またこの文献(1)は、混和材が複数種類であり、この複数種類を個別に開袋し、この複数の資材をセメントに混入し、次いで水を添加する。この作業により、生成された混合物を混練する構成である。従って、袋を複数開袋し、この複数の袋から資材を添加かつ混練する作業を要するものであり、作業に手間及び熟練を要する課題がある。
【0006】
また文献(2)は、セメント、軽量骨材及び保水助材を予め所定の配合で混合して、個々に袋に充填した構成である。しかし、この発明は、クラック防止、剥離防止等を意図しない。またこの文献(2)は、保水助材とともに緑化用植物の種子を混入した構成であり、コンクリ−ト表面の緑化を意図した構成である。従って、本発明が意図するクラック防止、剥離防止等を意図しない。更に、繊維質・減水剤等の混入、又はクラック防止、剥離防止等に役立つ繊維質・減水剤等の混入物をパック詰した構成は開示されていない。従って、本発明が意図する目的とは異なることは明らかである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
【0009】
請求項1の発明は、分散性を備えた絡合状態のビニロン繊維に減水剤を添加したパック詰の繊維にし、このパック詰の繊維を、混練器に投入したプレミックスモルタル及び水に添加してモルタル組成物を構築する製造方法である。従って、絡合状態のビニロン繊維の分散のスピ−ド化が図れること、及びモルタル組成物のクラック防止、剥離防止等に役立つ特徴がある。また分散性を備えた絡合状態の繊維に減水剤を添加したパック詰の繊維としたので、施工可能なフロ−値を速やかに確保できること、又は計量のカット、及び混合率の均一化、又は施工の容易化、等に寄与できることを意図する。そして、減水剤の添加に要する注意力の軽減化、計量の正確性、又は所定量の添加の確保、等を介してモルタル組成物のクラック防止、剥離防止等に役立てることを意図する。また以上の各効果が、何処でも、何時でも、どのような条件下でも、確実にフロ−値を確保することを意図する。
【0010】
請求項1は、絡合状態のビニロン繊維に減水剤を添加したパック詰繊維を水に添加して撹拌し、この水中に分散したビニロン繊維及び減水剤を、この水とともに混練器に投入されたプレミックスモルタルに投入し、計量を省略し、又は計量に要する時間、待ち時間の省略化を図り、また絡合状態のビニロン繊維の腐蝕防止、劣化防止を図り、その後、前記プレミックスモルタルと、水、絡合状態のビニロン繊維、及び減水剤を混練し、フロ−値を確保するに要する前記混練器による混練時間の節約が図れることを特徴としたモルタル組成物の製造方法である。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の特徴を開示しつつ、従来技術との相違を具体的に説明する。
【0018】
以下、説明する如く、セメントを原料とするモルタル等のクラック低減に必要とするビニロン繊維、減水剤等を添加するには、モルタル製造時に、このビニロン繊維及び減水剤等を乾式で添加する方法より、予め、所定の量を計測(計量)して、混練時にビニロン繊維及び減水剤等を添加する方法が、確実に混練し、かつビニロン繊維と減水剤との馴染みがよく、施工に要するフロ−値への変換スピ−ドが速くなる。そのためには、このビニロン繊維と減水剤とを計量して、パック詰繊維とする。またこのビニロン繊維は、分散が早くなる絡合状態とする。この所作により、本発明では、計量を省略できること(計量に纏わる弊害、トラブル、経験等を解消できること)、又は計量に要する時間(純粋な計量時間、又はフロ−値の確保迄の時間等)、待ち時間の省略化が図れること、また絡合状態のビニロン繊維の腐蝕防止、劣化防止が図れること、等の特徴がある。
【0019】
従って、従来の難点、例えば、計量時間と、計量作業・経験等を回避できること、又はフロ−値を確保するに要するミキサ−による混練時間の節約が図れること、等の実益がある。そして、塗りの時間の長期化の回避、又は施工に要する時間の短縮化(施工期間の長期化の回避)、更には施工期間の切迫による人の問題の回避、等が図れる実益がある。
【0020】
殊に、モルタル組成物のクラック防止、剥離防止等を図るには、施工作業と、作業者の勘、経験が大きなポイントとなるが、例えば、袋に略5ミリカットし絡合状態のビニロン繊維を略150g充填し、この5ミリカットの絡合状態のビニロン繊維に所定量の減水剤を添加する構成とした既製モルタル袋を開封した時に使用するパック詰製品であれば、前記の問題点は、一気に解消できること、又はモルタル組成物のクラック防止、剥離防止等を確実になくし得る特徴がある。また人件費の節約と、劣悪な作業環境の解消、又は工期の短縮化(混練時間の短縮化)、低コスト化等に役立つことは明白である。例えば、次のような一例がある。その用途は、ラス下地、パネル工法下地、コンクリ−ト土木仕上げ・補修モルタル等である。例えば、プレミックスモルタル略20kg(1袋)に対して、水を略3L〜5L(メ−カ−指定)、パック詰製品1袋を添加する(但し、分散剤略50g、又は消泡剤等を含む)。そして、使用の好ましい一例を、「1」、「2」のプレミックスモルタルの生成方法において説明する。「1」手作業によるプレミックスモルタルの生成方法は、バケツにプレミックスモルタルを投入し、この投入後に水及びパック詰製品を添加し、棒、ハンドミキサ−等の撹拌具を介して混練する。そして、絡合状態のビニロン繊維が分散すれば、施工用のプレミックスモルタルができる。尚、混練初期・途中等において、塊が生成されても、混練の際に消滅するので心配はない。また絡合状態のビニロン繊維が分散すれば、ファイバ−ボ−ルは発生しない。「2」機械作業によるプレミックスモルタルの生成方法は、ミキサ−にプレミックスモルタルを投入し、この投入後に水及びパック詰製品を添加し、ミキサ−を所定時間駆動して混練する(メ−カ−指定時間)。そして、絡合状態のビニロン繊維が分散すれば、施工用のプレミックスモルタルができる。尚、混練初期等に塊が生成されても、混練の際に消滅するので心配はない。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明する。
【0022】
図1はプレミックスモルタルとパック詰繊維の一例(以下、省略)を示した一部欠截の斜視図、図2(イ)は集束繊維と、(ロ)は絡合状態の繊維の拡大平面図、図3(イ−1)〜(イ−3)、(ロ−1)〜(ロ−3)は、図2に示した繊維の分散状態を説明した拡大平面図、図4(1)〜(3)はプレミックスモルタルに添加する資材の一例を示した斜視図、(1−1)〜(1−3)、又は(2−1)〜(2−3)、(3−1)〜(3−3)は投入、撹拌の状態を示した斜視図、(1−4−1)〜(1−4−5)、又は(2−4−1)〜(2−4−5)、(3−4−1)〜(3−4−5)は混練後のフロ−値を示した拡大平面図、図5(1)はプレミックスモルタルの試験体、(2)は試験機、(3)〜(6−1)は絡合状態の繊維の量を変更した試験体の結果を説明したグラフ乃至図を示す。
【0023】
図1はプレミックスモルタルとパック詰繊維を示した一部欠截の斜視図であり、1はプレミックスモルタルの1袋を、2はパック詰繊維を示しており、100はプレミックスモルタル、200は絡合状態の繊維、201は減水剤を示す。このパック詰繊維2は、絡合状態の繊維200を略150g、減水剤201を含んだ分散剤を略50gとで構成し、略200gとする。このパック詰繊維2は、プレミックスモルタルの1袋1の略20kgに対応する。そして、このパック詰繊維2の配合比、分量は、プレミックスモルタルの1袋1の分量、又は配合物等により変化する。
【0024】
図2(イ)は集束繊維と、(ロ)は絡合状態の繊維200の拡大平面図であり、3は集束繊維を示す。
【0025】
図3(イ−1)〜(イ−3)、(ロ−1)〜(ロ−3)は、図2に示した集束繊維3と、絡合状態の繊維200の分散状態を説明した拡大平面図であり、図面は、各集束繊維3と、絡合状態の繊維200をそれぞれ略5gと、略20gを入れた分散状態を示しているが、(イ−1)、(ロ−1)の如く、投入直前は、略同じであるが、(イ−2)〜(イ−3)、(ロ−2)〜(ロ−3)の如く、時間の経過とともに、分散の状況が異なることが理解できる。殊に、絡合状態の繊維200の分散の状況が確実かつスム−ズに行われることが証明されている。尚、図面にコメントを付す(以下同じ)。
【0026】
図4(1)〜(3)はプレミックスモルタルに添加する資材の一例を示した斜視図であり、(1)は水に絡合状態の繊維200のみを添加し、(1−1)で投入した状態を示す、また(1−2)は投入直後、(1−3)は撹拌する状態を示す。また(2)は水に絡合状態の繊維200と減水剤201とを添加し、(2−1)で投入した状態を示す、また(2−2)は投入直後、(2−3)は撹拌する状態を示す。尚、(3)は水にパック詰繊維2を添加し、(3−1)で投入した状態を示す、また(3−2)は投入直後、(3−3)は撹拌する状態を示す。この実験では、本発明のパック詰繊維2の分散性が優れていることが証明されている。(1−4−1)〜(1−4−5)と、(2−4−1)〜(2−4−5)と、(3−4−1)〜(3−4−5)は、プレミックスモルタルに添加する資材の各例のフロ−値をそれぞれ示すが、前記(3)のパック詰繊維2を添加したモルタルの施工(左官用)に適する150×150のフロ−値(mm)が、撹拌後、略3分弱で生じており、本発明は、作業待ち時間の短縮化に寄与できる。因みに、前記他の(1)では、略5分経過で120×120であり、未だ使用できない状態であること、また(2)では、略4分経過で155×155であり、この時点で使用できる状態であることが理解できる。
【0027】
図5(1)はプレミックスモルタルの試験体であり、モルタルに絡合状態の繊維200を、略40g、略200g、略300g、略400g混入した試験体とする。試験体の内容を、下記に示す(表1)。
【0028】
表1
Figure 0003639860
その実験結果を、図5(3)〜(6)のグラフとして説明し、また(5−1)、(6−1)として図示した。
【0029】
図5(3)の結果を、下記に示す(表2)。
【0030】
表2
Figure 0003639860
図5(4)の結果を、下記に示す(表3)。
【0031】
表3
Figure 0003639860
図5(5)の結果を、下記に示す(表4)。
【0032】
表4
Figure 0003639860
図5(6)の結果を、下記に示す(表5)。
【0033】
表5
Figure 0003639860
そして、総括すると、略400gであれば「図5(6)参照」、安心できることが判明したが、あまり負荷がかからない補修用モルタルでは、略200gでも可能と考えられる「図5(4)参照」。また負荷がかかる補修用モルタルでは、略300gが望ましいと考えられる「図5(5)参照」。尚、各グラフは試験体3本によるデ−タを示す。試験機4は、フレ−ム40と、試験体5の挾持用治具41と、手動又は駆動用の圧力手段42と、変位計43と、圧力計44とで構成されている。
【0034】
図6は、試験体5の切断又はクラック発生における繊維200aの状態を示しているが、(1)で繊維200aが切断されていることは、繊維200aとモルタルの結び付の強さを示しており、(2)は逆に繊維200aが抜けている状態では、繊維200aとモルタルの結び付の弱さを示している。即ち、繊維200aとモルタルの結び付が強いので、繊維200aが切断されるのである。
【発明の効果】
【0035】
【0036】
請求項1の発明は、絡合状態のビニロン繊維に減水剤を添加したパック詰繊維を水に添加して撹拌し、この水中に分散したビニロン繊維及び減水剤を、この水とともに混練器に投入されたプレミックスモルタルに投入し、計量を省略し、又は計量に要する時間、待ち時間の省略化を図り、また絡合状態のビニロン繊維の腐蝕防止、劣化防止を図り、その後、前記プレミックスモルタルと、水、絡合状態のビニロン繊維、及び減水剤を混練し、フロ−値を確保するに要する前記混練器による混練時間の節約が図れることを特徴としたモルタル組成物の製造方法である。従って、絡合状態の繊維の分散のスピ−ド化が図れること、及びモルタル組成物のクラック防止、剥離防止等に役立つ特徴がある。また分散性を備えた絡合状態の繊維に減水剤を添加したパック詰の繊維としたので、絡合状態の繊維の分散のスピ−ド化が図れ、施工可能なフロ−値を速やかに確保できること、又は計量のカット、及び混合率の均一化、又は施工の容易化、等に寄与できる。そして、減水剤の添加に要する注意力の軽減化、計量の正確性、又は所定量の添加の確保、等を介してモルタル組成物のクラック防止、剥離防止等に役立つ特徴がある。また以上の各効果が、何処でも、何時でも、どのような条件下でも確実にフロ−値を確保できる実益がある。
【0037】
【0038】
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】 プレミックスモルタルとパック詰繊維を示した一部欠截の斜視図
【図2】 (イ)は集束繊維と、(ロ)は絡合状態の繊維の拡大平面図
【図3】 (イ−1)〜(イ−3)、(ロ−1)〜(ロ−3)は、図2に示した繊維の分散状態を説明した 拡大平面図
【図4】 (1)〜(3)はプレミックスモルタルに添加する資材の一例を示した斜視図、(1−1)〜(1−3)、又は(2−1)〜(2−3)、(3−1)〜(3−3)は投入、撹拌の状態を示した斜視図、(1−4−1)〜(1−4−5)、又は(2−4−1)〜(2−4−5)、(3−4−1)〜(3−4−5)は混練後のフロ−値を示した拡大平面図
【図5】 (1)はプレミックスモルタルの試験体、(2)は試験機、(3)〜(6−1)は絡合状態の繊維の量を変更した試験体の結果を説明したグラフ乃至図
【図6】 (1)、(2)は試験体の拡大断面図
【符号の説明】
1 プレミックスモルタルの1袋
100 プレミックスモルタル
2 パック詰繊維
200 絡合状態の繊維
200a 繊維
201 減水剤
3 集束繊維
4 試験機
40 フレ−ム
41 治具
42 圧力手段
43 変位計
44 圧力計
5 試験体

Claims (1)

  1. 絡合状態のビニロン繊維に減水剤を添加したパック詰繊維を水に添加して撹拌し、この水中に分散したビニロン繊維及び減水剤を、この水とともに混練器に投入されたプレミックスモルタルに投入し、計量を省略し、又は計量に要する時間、待ち時間の省略化を図り、また絡合状態のビニロン繊維の腐蝕防止、劣化防止を図り、その後、前記プレミックスモルタルと、水、絡合状態のビニロン繊維、及び減水剤を混練し、フロ−値を確保するに要する前記混練器による混練時間の節約が図れることを特徴としたモルタル組成物の製造方法。
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