JP5510882B2 - 水硬性組成物の作製方法 - Google Patents
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Description
かかるRC構造物等の耐久性向上を図るためには、初期欠陥となるひび割れを防止することが有効であり、このひび割れの主たる発生原因が乾燥収縮、自己収縮および温度応力等であることが知られている。
従って、RC構造物等においては,初期の養生過程における乾燥収縮、自己収縮および温度応力に起因するひび割れを抑制させることが求められている。
特に最近では従来の3分の2程度の使用量で従来のものと同等の性能(膨張率)が発揮される膨張材が開発されたりしている。
このような高性能な膨張材については、通常の性能を有する膨張材(以下「通常膨張材」ともいう)と区別して「高性能膨張材」などとも呼ばれており、例えば、下記特許文献1、2には、この高性能膨張材に関する技術事項が記載されている。
しかしながら、通常膨張材や高性能膨張材を一般の生コンプラントで使用する場合、材料単価の増加に加えて、膨張材の専用供給・計量装置が必要であり、装置が設けられない場合には、人力によって投入しなければならずコストがかかる状況となっている。
また、コンクリートなどの水硬性組成物の製造時には練り混ぜ時間を延長するなど措置が必要であり、このような点からも生コンプラントにおける製造単価を増加させている。
さらに、膨張材を投入した際に、膨張材が単独にミキサー内のライナーや羽根に固着し、それが塊のままコンクリート中に混入するとポップアウトを発生させるおそれを有する。
これらの問題によって膨張材の普及促進に歯止めがかかっており、生コンプラントなどにおいての使用が一般化するまでに至っていない。
膨張セメントは、予め膨張材がセメントに分散されていることから、水硬性組成物における膨張材の分散が不均一になってポップアウトなどが発生するおそれを抑制し得る。
このことに対し、膨張セメントは、膨張材とセメントとが一定の質量割合で含まれるために、この水硬性組成物における単位セメント量を定めることで同時に単位膨張材量も決定されてしまうことになる。
そのため、膨張セメントを使用する場合には、例えば、作製する水硬性組成物の膨張率を所定の範囲(例えば、収縮補償目的であれば、150〜250×10-6)に制御することが困難になる場合があり、膨張材の過剰添加に伴う強度低下などの問題を発生させるおそれを有する。
しかし、その場合には膨張材を十分に分散させないと硬化体にポップアウトなどの問題を生じさせるおそれがある。
すなわち、上記のような課題を解決するための水硬性組成物の作製方法に係る本発明は、セメントと膨張材とが含有されている水硬性組成物におけるセメントと膨張材との合計質量に占めるセメント質量の割合をαとし、
セメントと膨張材との合計質量に占めるセメント質量の割合がβ(ただし、α>β)になるようにセメントと膨張材と混合することで、全量に対する前記膨張材の割合が6.5質量%以上7.3質量%以下になるようにセメント組成物を作製し、
該セメント組成物と水とを混合する際において新たにセメントを添加することによって前記セメントの質量の割合がαとなるように調整して水硬性組成物を作製することを特徴としている。
すなわち、このセメント組成物を求められる単位膨張材量となるように水硬性組成物に含有させるとセメント量が不足することとなるが、この不足分は、後からセメントが添加されて補われるため、水硬性組成物の単位膨張材量及び単位セメント量は、所望の値に調整されうる。
なお、本発明においては、練り混ぜ時においてセメントを添加することになるが、このセメントを硬化体に影響を与えない程度に分散させるのに要する手間は、膨張材を分散させる手間に比べて僅かで、練り混ぜの工程全体に与える影響が小さい。
したがって、練り混ぜ時に膨張材そのものを添加するような場合に比べて練り混ぜ時間の短縮を図りつつも膨張材の分散が不均一となることを抑制させ得る。
すなわち、本発明によれば、ひび割れやポップアウトなどの発生を抑制し得る水硬性組成物を簡便なる方法にて作製することができるという優れた効果がより顕著に発揮されることとなる。
図1は、本実施形態に係る膨張コンクリートの製造設備を模式的に示したものであり、膨張材とセメントとが予め混合分散されてなる膨張セメントを収容している膨張セメント用サイロ11が、膨張材を含んでいない通常のセメントを収容している通常セメント用サイロ12に併設されている点を除いて、本実施形態において用いられる膨張コンクリート製造設備1は、一般的なフレッシュコンクリートを作製する設備と大きく異なってはいない。
また、膨張コンクリート製造設備1は、前記骨材サイロ21からベルトコンベア22を通じて供給される細骨材及び粗骨材を計量するための細骨材計量器42と粗骨材計量器43とを備えている。
さらに、本実施形態における膨張コンクリート製造設備1は、セメントや骨材を練り混ぜるための水を計量する水計量器44と、前記混和剤槽31から供給される混和剤を計量する混和剤計量器45とを備えている。
また、前記ミキサー61は、前記集合ホッパー51の下部シュート51aの開口に接続させた上部開口を通じてセメント、骨材、混和剤、水などを内部に収容させ、例えば、二軸攪拌翼などの攪拌機構によってこれらの練り混ぜを行った後に下部ダンパーを開状態として、このミキサー61の下方に設けられた供給ホッパー71を通じて前記練り混ぜによって作製された水硬性組成物をアジテータトラック81に供給し得るように備えられている。
この膨張セメントは、予め、所定の割合でセメントと膨張材とを混合分散させて作製させることができる。
この膨張材としては、例えば、生石灰等の石灰系膨張材、カルシウムサルホアルミネート等のエトリンガイト系膨張材、エトリンガイト−石灰複合系膨張材、鉄粉系、マグネシウム系及びアルミニウム粉末などを挙げることができ、前記膨張セメントには、これらを単独あるいは二種以上混合して用いることができる。
低添加型膨張材とは、20kg/m3の単位膨張材量でJIS A6202「コンクリート用膨張材−1997」に基づく性能試験を行った際に一軸拘束膨張試験(付属書2のA法)の値が、通常、150×10-6以上250×10-6以下となるもので高炉セメントとの併用時などにおける膨張性能の改善が図られたものである。
すなわち、膨張コンクリートにおけるセメントと膨張材との合計量に占めるセメント質量の割合をα質量%とし、前記膨張セメントに占めるセメントの割合をβ質量%とした場合に、α>βの関係を満足させるようになっていれば膨張コンクリートにおけるセメントと膨張材との割合は、特に限定されるものではない。
すなわち、セメントの割合が最も小さい膨張コンクリートにおけるセメントと膨張材との合計量に占めるセメント質量の割合をγ質量%とした場合に、前記膨張セメントにおける前記割合βは、γ>βの関係を満足させることが好ましい。
このようにしてセメントの割合が最も小さい膨張コンクリートを基準とすることで、例えば、設計の異なる膨張コンクリートを作製する際には、練り混ぜ時に添加する通常のセメント量を調整するだけで所望の単位セメント量ならびに単位膨張材量の膨張コンクリートを作製することができ、作業の簡略化を図ることができる。
このようなことから、RC構造物等の形成において有用性の高い膨張コンクリートが得られやすい点において、前記のような膨張材が膨張セメントに占める重量割合は6.5質量%以上7.3質量%以下である。
すなわち、セメントと膨張材からなる膨張セメント組成物における前記割合(β)の値は、92.7%以上93.5%以下とする。
例えば、セメントと膨張材とをセメント製造プラントなどで用いられている混合装置などで攪拌混合して膨張セメント中に膨張材を分散させる方法などが挙げられる。
(1)前記膨張セメントを膨張セメント用サイロ11から空気圧送するなどしてセメント供給経路L1を通じてセメント計量器41に供給し該セメント計量器41に所定量収容させる工程、
(2)細骨材をベルトコンベア22から細骨材供給経路L2を通じて細骨材計量器42に供給し該細骨材計量器42に所定量収容させる工程、
(3)粗骨材をベルトコンベア22か粗骨材供給経路L3を通じて粗骨材計量器43に供給し該粗骨材計量器43に所定量収容させる工程、
(4)前記水計量器44に水供給経路L4を通じて所定量の水を収容させる工程、
(5)前記混和剤槽から混和剤供給ラインを通じて所定量の混和剤を混和剤計量器45に収容させる工程、
(6)前記通常のセメントを通常セメント用サイロ12から空気圧送するなどしてセメント供給経路L1を通じてセメント計量器41に供給し該セメント計量器41に所定量収容させる工程、
をそれぞれ実施した後にこれらの計量された材料をミキサー61で練り混ぜることによって膨張コンクリートを作製することができる。
そして、膨張セメントは、作製する膨張コンクリートにおけるセメントと膨張材との合計量に占めるセメント質量の割合をα質量%とすると、それよりもセメントの割合の少ないβ質量%でしかセメント分が含有されていないことから、その差を算出して工程(6)における通常のセメント量を決定する。
工程(2)〜(5)における細骨材、粗骨材、混和剤及び水の量の決定は膨張コンクリートの単位量に基づいて決定すればよい。
また、例えば、粗骨材としては、石灰石、砂利や砕石等の公知の粗骨材を用いることができ、混和剤としては、例えば、AE剤、減水剤、高性能AE減水剤などJIS A 6204に規定されている化学混和剤等を使用することが可能である。
すなわち、本発明において、“セメント組成物と水とを混合する際において新たにセメントを添加する”とは、上記“膨張セメント”と水との練り混ぜ開始前における所望のタイミングで新たなセメントを添加する場合や、練り混ぜ開始直後において新たなセメントを添加する場合などをも含むものである。
例えば、工程(1)と工程(6)とを実施して、所定量の膨張セメントと通常セメントとをミキサー61に供給して加水しない状態で、一旦空練りを実施した後に、(2)〜(5)の工程を実施して骨材や水をミキサー61に供給し、これらをミキサー61で練り混ぜて膨張コンクリートを作製することもできる。
または、(1)〜(6)の工程を全て実施して全材料をミキサー61に供給して練り混ぜを行って膨張コンクリートを作製することもできる。
さらには、これらに限定されず、膨張セメントおよびセメントがコンクリート中に大きな塊として残存しない限り、種々の手順で膨張コンクリートを作製することができる。
以上のように、本実施形態における膨張コンクリートの作製方法においては、ひび割れやポップアウトなどの発生を抑制し得る膨張コンクリートを簡便なる方法にて作製することができる。
また、本実施形態においては、最初に計量する膨張セメントの量と後から添加するセメント量との算定を簡単に実施させ得る点において、後から添加するセメントとして膨張材を含有していない通常のセメント(セメント含有割合が100質量%のもの)を添加する場合を例示しているが、前記膨張材よりもセメントの含有割合が高い膨張セメントを通常のセメントに代えて使用することも可能である。
例えば、膨張コンクリートにおけるセメントと膨張材との合計量に占めるセメント質量の割合をα質量%とし、最初に用いる膨張セメントに占めるセメントの割合をβ質量%とした場合に、後から、セメントの割合が100質量%未満、α質量%を超える状態で含まれている膨張セメントを利用する場合も本発明の意図する範囲である。
すなわち、セメント割合がδ質量%(ただし、100>δ>α)の関係を満足させる膨張コンクリートと、セメント割合がβ質量%(ただしα>β)の膨張コンクリートとを用いてセメント割合がα質量%の水硬性組成物を作製させる場合も本発明の意図する範囲である。
また、ここでは詳細を例示しないが、水硬性組成物を作製するために従来公知の技術事項を、本発明の効果が著しく損なわれない範囲において適宜採用することができる。
水硬性組成物の作製方法についての評価を表1に示す配合の膨張コンクリートを用いて行った。
それぞれ、表1に配合1〜3として示すものを実機プラントにて、全量投入後40秒かけて練り混ぜを実施し、得られた膨張コンクリート用いてJIS A6202附属書2(参考)のA法に基づいて7日間に渡って膨張率を測定した。
また、JIS A1108による圧縮強度を測定した。なお、測定は、打込み後2日から標準水中養生を行ったものに対して実施し、材齢3日、7日、28日における圧縮強度を測定した。
さらに、得られた膨張コンクリート用いて作製したブロック体を作製し、3ヶ月間にわたってポップアウトの発生有無を確認すべく表面観察を実施した。
なお、この実施例1〜3では、予め普通ポルトランドセメントと低添加型膨張材とを質量比で93.3:6.7となる割合で混合した膨張セメントを用いた。
練り混ぜ時間を40秒から25秒に短縮したこと以外は実施例2と同様に膨張コンクリートを作製し、膨張率と圧縮強度とを測定しポップアウトの発生有無を確認した。
配合1〜3と配合内容的には同じものではあるが、膨張材を練り混ぜ時に添加する態様とした(配合4〜6)以外は、実施例1〜4と同様にして膨張コンクリートを作製し、膨張率と圧縮強度とを測定しポップアウトの発生有無を確認した。
また、練り混ぜ時間を25秒に短縮した場合(実施例4)でも膨張材を練り混ぜ時に添加し、40秒の練り混ぜを実施した比較例2と同等の膨張率、圧縮強度が得られていることがこの表2からわかる。
一方で、膨張材を練り混ぜ時に混合する場合(比較例4)では,練り混ぜ時間を25秒に短縮すると、膨張率および圧縮強度における変化は比較的軽微であるが、ブロック試験体にポップアウトの発生が認められた。
11 膨張セメント用サイロ
12 通常セメント用サイロ
21 骨材サイロ
22 ベルトコンベア
31 混和剤槽
41 セメント計量器
42 細骨材計量器
43 粗骨材計量器
44 水計量器
45 混和剤計量器
51 集合ホッパー
51a 下部シュート
61 ミキサー
71 供給ホッパー
81 アジテータトラック
Claims (2)
- セメントと膨張材とが含有されている水硬性組成物におけるセメントと膨張材との合計質量に占めるセメント質量の割合をαとし、
セメントと膨張材との合計質量に占めるセメント質量の割合がβ(ただし、α>β)になるようにセメントと膨張材と混合することで、全量に対する前記膨張材の割合が6.5質量%以上7.3質量%以下になるようにセメント組成物を作製し、
該セメント組成物と水とを混合する際において新たにセメントを添加することによって前記セメントの質量の割合がαとなるように調整して水硬性組成物を作製することを特徴とする水硬性組成物の作製方法。 - 前記膨張材が、JIS A6202「コンクリート用膨張材−1997」付属書2に記載の一軸拘束膨張試験(A法)で得られる値(単位膨張材量20kg/m 3 )が150×10 -6 以上250×10 -6 以下の低添加型膨張材である請求項1記載の水硬性組成物の作製方法。
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